説明

低級オレフィンの製造方法

【課題】本発明は、ジメチルエーテルを含む原料ガスから低級オレフィンを製造する場合において、実機運転条件においても効率的にプロピレン収率を向上させることのできる方法を提供することを課題としている。
【解決手段】本発明の低級オレフィンの製造方法は、直列に接続された複数のオレフィン製造反応器を用いて、ジメチルエーテルを含有する原料ガスから、ゼオライト触媒を用いてプロピレンを含有する低級オレフィンを製造する方法であって、原料ガスが2基以上のオレフィン製造反応器に分割して供給され、全オレフィン製造反応器中の触媒量の総計に対する、単位時間あたりの全原料ガスの供給速度で表される空間速度が、ジメチルエーテルを基準としたWHSVで0.5〜50h-1の範囲であることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジメチルエーテルを含む原料ガスから、プロピレンなどの低級オレフィンを製造する方法に関する。詳しくは、本発明は、ジメチルエーテルを含む原料ガスから、触媒を用いて、高収率でプロピレンを得ることのできる低級オレフィンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低級オレフィンは、従来から、石油系原料の熱分解や接触分解などにより製造されている。
一方、ジメチルエーテルやメタノールなどを固体酸触媒と接触させて炭化水素化合物を製造することも古くから検討されており、たとえば非特許文献1には、アルミナ触媒を使用した方法が記載されている。しかしながらこの触媒は、低級オレフィン選択性が悪く、コーキングによる劣化が著しいことから、実用には向いていない。1970年代に入ると、この反応の触媒として、ZSM−5を使用した例が報告されるようになった(たとえば、特許文献1,2および非特許文献3,4)。ZSM−5は、従来の触媒よりも選択性や触媒寿命にすぐれるものであり、これを触媒として用いた工業プロセスが検討された。
【0003】
このように、ジメチルエーテルやメタノールから、触媒を用いてプロピレンやエチレンなどの低級オレフィンを製造する反応は、従来から知られているが、反応には多大な発熱を伴うため、反応装置の構築にあたっては触媒の劣化や熱による損傷を抑える観点から、また、装置を安全に運転する観点から、その熱対策が重要な課題となる。このため、触媒層の温度上昇を低減させるために種々の方法が提案されている。
【0004】
たとえば、非特許文献3には、炭化水素合成反応器の前に、メタノールをジメチルエーテルに転換する反応器を設置して、発熱を分散させる方法が記載されており、また特許文献3には、原料ガス中に希釈ガスを添加して温度上昇を低減させる方法が記載されている。また、これと触媒の型は異なるが、SAPO−34触媒を使用した低級オレフィン製造プロセスにおいて、熱対策として流動床反応器が用いられている。
【0005】
反応による発熱量は、原料供給量に比例することから、反応器を多段に分割して、原料を分割供給することも触媒層の温度上昇低減に効果的である。特許文献4には、複数の反応器を直列に用い、原料を各反応器に分割供給して多段階で反応させる方法が提案されており、費用のかかる管状反応器を用いずに、プロピレンの収率を増加させることができると記載されている(特許文献4参照)。この方法では、少なくとも2つのシャフト反応器を用いることにより、反応器1基あたりの温度上昇の緩和が期待される。
【0006】
特許文献4には、プロピレン収率が向上する理由については特に述べられていないが、特許文献4に記載の方法において、プロピレン収率の増加は、原料分圧の低減によって達成されているものと考えられる。複数の反応器を用いる場合、並列に設置しても温度上昇の低減効果はあるが、直列に設置した方が、各反応器における原料の分圧を低減できるため、生成する低級オレフィン中のプロピレン収率の向上が期待できる。このことは、例えば非特許文献4などに報告されているように、ジメチルエーテルからプロピレンを製造する場合に、原料分圧を低減させることによって、生成する低級オレフィンの芳香族などへの逐次反応が抑制されることに起因すると考えられる。
【0007】
しかしながら、本発明者が実機運転条件を模擬可能な試験装置でデータを取得し、解析した結果、実機運転条件においては、単に反応を多段にし、原料を分割供給して原料分圧
を低減させるのみでは、十分なプロピレン収率の増加は生じないことが明らかになった。このため、さらに効果的にプロピレン収率を向上させた低級オレフィンの製造方法の出現が望まれていた。
【特許文献1】特開昭51−122003号公報
【特許文献2】米国特許第3894106号
【特許文献3】米国特許第4083888号
【特許文献4】特表2003−535069号公報
【非特許文献1】Journal of the Society of Chemical Industry, 67 (1948) 142.
【非特許文献2】Journal of Catalysis, 47 (1977) 249.
【非特許文献3】Chemical Engineering, 1980 (8) 87.
【非特許文献4】Journal of Catalysis, 56 (1979) 169.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ジメチルエーテルを含む原料ガスから低級オレフィンを製造する場合において、実機運転条件においても効率的にプロピレン収率を向上させることのできる方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の低級オレフィンの製造方法は、
直列に接続された複数のオレフィン製造反応器を用いて、ジメチルエーテルを含有する原料ガスから、プロピレンを含有する低級オレフィンを製造する方法であって、
各オレフィン製造反応器がゼオライト触媒を具備しており、
原料ガスが2基以上のオレフィン製造反応器に分割して供給され、
全オレフィン製造反応器中の触媒量の総計に対する、単位時間あたりの全原料ガスの供給速度で表される空間速度が、ジメチルエーテルを基準としたWHSVで0.5〜50h-1の範囲であることを特徴としている。
【0010】
このような本発明の低級オレフィンの製造方法では、前記空間速度が、1.0〜10h-1の範囲であることが好ましい。
本発明の低級オレフィンの製造方法では、原料ガスが、ジメチルエーテルとメタノールとを含有することが好ましい。
【0011】
本発明の低級オレフィンの製造方法では、全ての反応器に導入される原料ガスおよび添加ガスの総量であるフィードガス中における、スチームの割合が、5〜30vol%であることが好ましい。
【0012】
本発明の低級オレフィンの製造方法では、添加ガスが、最下流のオレフィン製造反応器あるいは、炭化水素の熱分解および/または接触分解によってオレフィンを生成するオレフィン生成装置より得られた生成物から、プロピレンを含む低級オレフィンを分離した残分である炭化水素の少なくとも一部を含むことが好ましい。
【0013】
本発明の低級オレフィンの製造方法では、直列に接続された複数のオレフィン製造反応器のうち、最上流のオレフィン製造反応器のみに添加ガスを導入することが好ましい。
本発明の低級オレフィンの製造方法では、前記ゼオライト触媒が、MFI構造を有することが好ましく、前記ゼオライト触媒中のケイ素とアルミニウムの原子比(Si/Al)がモル比で10〜300の範囲であることも好ましく、また、前記ゼオライト触媒が、アルカリ土類金属Mを含み、ゼオライト触媒中のアルカリ土類金属Mとアルミニウムの原子比(M/Al)がモル比で0.5以上であることも好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡便な方法により、実機運転条件においても効率的にプロピレン収率を向上させることのできる、ジメチルエーテルを含む原料ガスから低級オレフィンを製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の低級オレフィンの製造方法においては、ジメチルエーテルを含む原料ガスを、複数のオレフィン製造反応器を用いて、反応器中でゼオライト触媒に接触させて、C2
5程度の低級オレフィンを含む炭化水素生成物に転化する。
<原料ガス>
本発明において、原料ガスは、ジメチルエーテルを含有するガスであればよく、全量がジメチルエーテルであるガスであっても、ジメチルエーテルとその他の成分との混合ガスであってもよい。本発明で用いられる原料ガスは、反応成分として、ジメチルエーテルのみか、または、ジメチルエーテルとメタノールとを含有するガスであるのが好ましい。原料ガスは、反応成分以外の成分として、スチーム(水蒸気)や窒素などの反応に不活性なガスを含有していてもよい。このような本発明で用いられる原料ガスとしては、ジメチルエーテル単独で構成されるガス、ジメチルエーテルとメタノールとから構成されるガス、これらと反応に不活性なガスの混合ガスなどが挙げられる。このような原料ガスとしては、たとえば、メタノールからジメチルエーテルを製造する反応で得られた粗生成物である混合ガス(ジメチルエーテル、未反応のメタノールおよびスチームとを含有する)などを好適に用いることができる。メタノールからのジメチルエーテルの製造は、例えば、メタノールをアルミナなどの触媒を用いて脱水する反応により行うことができる。
【0016】
本発明においては、原料ガス中の反応成分は、その、ジメチルエーテルとメタノールとのモル比(ジメチルエーテル:メタノール)が、6:0〜6:5の範囲を満たすことが好ましい。メタノールの含有割合が上記範囲よりも大きい場合には、触媒層温度の上昇が過大となり、温度上昇の抑制を十分に達成できない場合がある。
【0017】
原料ガス中にしめる反応成分の割合は、添加ガスの使用量にもよるものであって特に限定されるものではないが、50容量%以上、好ましくは75〜100容量%程度であるのが望ましい。
<添加ガス>
本発明において、添加ガスとは、前記原料ガスとは別個のラインを通じて供給されるガスである。
【0018】
添加ガスは、前述した原料ガスが、比較的多量の不活性成分(反応成分以外の成分)を含有している場合には、用いられなくてもよいが、好ましくは、原料ガスとともに反応系に導入されるのが望ましい。添加ガスの反応系への導入は、反応器に直接行われてもよく、反応器に導入する前の原料ガスに混合する形式で行われてもよい。
【0019】
添加ガスとしては、具体的には、窒素などの低級オレフィン製造の反応に不活性なガスを主成分としたガスを好適に用いることができる。
また、添加ガスとしては、C4、C5オレフィンなどの炭化水素を含有するガスも好適に用いることができる。
【0020】
4、C5オレフィンなどの炭化水素を含有するガスとしては、本発明に係る最下流のオレフィン製造反応器より得られた生成物から、プロピレンを含む低級オレフィンを分離した残分である炭化水素の少なくとも一部である、いわゆるリサイクルガスを、好適に用いることができる。
【0021】
また、C4、C5オレフィンなどの炭化水素を含有するガスとして、本発明に係る低級オレフィンの製造の系外から導入されるガスを用いることも好ましく、たとえば、炭化水素の熱分解および/または接触分解によってオレフィンを生成するオレフィン生成装置より得られた生成物から、プロピレンを含む低級オレフィンを分離した残分である炭化水素の少なくとも一部のガスを好適に用いることができる。すなわち、炭化水素の熱分解および/または接触分解によってオレフィンを生成するオレフィン生成装置、例えばナフサクラッカーや流動接触分解(Fluid Catalytic Cracking、FCC)装置などより得られた生成物から、プロピレンなどの低級オレフィン製品を分離した残分の一部もしくは全部を、添加ガスまたはその一部として利用することができる。
【0022】
リサイクルガスあるいは系外から導入するガスである、これらのC4、C5オレフィンなどの炭化水素を含有するガスは、いずれも低級オレフィンを製造する反応で得られた生成物から、低級オレフィン製品を分離した残分を含むガスであり、通常、C4および/また
はC5オレフィン、スチーム、メタンなどの軽質パラフィン、ならびに芳香族などの混合
ガスであるか、またはこれらの一部の成分からなる。このようなガスは、好ましくは、反応で得られた生成物から、目的とする低級オレフィンであるプロピレンおよび必要に応じてエチレンを分離した残分である炭化水素の少なくとも一部、具体的には、C4および/
またはC5オレフィン留分を主成分とするガスである。
【0023】
本発明で用いる添加ガスは、系外から導入する反応に不活性なガスのみであってもよく、炭化水素の熱分解および/または接触分解によってオレフィンを生成するオレフィン生成装置のような系外の装置から導入するC4および/またはC5オレフィンを含むガスのみであってもよく、最下流のオレフィン製造反応器のような系内の反応器から導入するリサイクルガスのみであってもよく、これら系内外から導入するガスの混合ガスであってもよい。好ましくは、本発明で用いる添加ガスは、系外の装置から導入するC4および/また
はC5オレフィンを含むガスあるいはリサイクルガスに由来する成分を、添加ガスの50
vol%以上、好ましくは60〜100vol%程度の割合で含むことが望ましい。
【0024】
4および/またはC5オレフィンが、添加ガス中に含まれている場合には、C4、C5オレフィンの反応により、プロピレンの収率を一層向上させることができる。このため、本発明では、添加ガスが、C4および/またはC5オレフィンを含有することが好ましい。添加ガスがC4および/またはC5オレフィンを含有する場合、該オレフィンは最下流のオレフィン製造反応器からのリサイクルガス、あるいは、炭化水素の熱分解および/または接触分解によってオレフィンを生成するオレフィン生成装置より得られるガスに由来するものであるのが好ましいが、その他の系外の装置から得られるガスに由来するものであってもよい。
<フィードガス>
本発明では、直列に接続された複数のオレフィン製造反応器を用いるが、本発明において、フィードガスとは、全ての反応器に導入される原料ガスと添加ガスとの合計を意味する。
【0025】
本発明では、フィードガス中にスチームが含まれていることが好ましく、フィードガス中におけるスチームの割合が、5〜30vol%、好ましくは8〜25vol%の範囲である。反応系内にスチームが存在すると、炭素質生成が抑制される結果、一時失活までの触媒寿命が延びることが期待される。ここで言う一時失活とは、反応中に副生した炭素質の蓄積に起因する触媒の失活であり、空気中での焼成処理などによって再生が可能な失活を示す。一方反応系内に多量のスチームが存在すると、ゼオライト触媒中のアルミニウムの脱離による永久失活が生じるため好ましくない。永久失活とはいかなる処理によっても再生が不可能な失活を示す。このため、フィードガス中のスチーム量を、原料ガスおよび
添加ガスの組成ならびに使用量の制御により、上記範囲の割合とすることが好ましい。このようなフィードガス中のスチーム量は、スチームを含む添加ガスを用いる従来公知の方法と比較して格段に少ないものではあるが、ゼオライト触媒の表面に炭素質が析出するのを抑制するという効果を十分に発揮することができ、しかもスチームによるゼオライト触媒の永久失活を効果的に抑制することができる。
【0026】
本発明では、特に限定されるものではないが、フィードガス中において、反応成分(ジメチルエーテルとメタノールとの総量)に対する、スチームを除いた反応成分以外の成分の割合が、スチームを除いた反応成分以外の成分のモル数/反応成分の炭素基準のモル数で0.2〜5.0の範囲であることが好ましい。
【0027】
また本発明では、フィードガスが、C4および/またはC5オレフィンを含有することも好ましい。フィードガス中のC4および/またはC5オレフィンは、通常、添加ガスに由来するが、原料ガス中に反応成分以外の成分としてあらかじめ含有されていてもよい。フィードガス中における、C4、C5オレフィン量は、特に限定されるものではないが、反応成分の量に対して、炭素基準のモル比で0.3〜5.0程度の割合であると、プロピレン収率の向上に特に効果的であるため好ましい。フィードガス中にC4および/またはC5オレフィンが含まれていると、これら炭化水素がプロピレン原料となることからプロセスとしてのプロピレン収率が向上するばかりでなく、希釈効果により触媒層の発熱量が低減され、さらに、触媒寿命が長くなるという効果をもたらす。すなわち、本発明においては、フィードガスが、C4および/またはC5オレフィンを含有する場合には、プロピレン収率の向上、触媒層温度の安定効果、触媒寿命の延命効果が一層期待できる。
<触媒>
本発明の低級オレフィンの製造方法では、複数のオレフィン製造反応器が、それぞれゼオライト触媒を具備している。各オレフィン製造反応器が具備しているゼオライト触媒は、全て同種であってもよく、反応器毎に異なっていてもよいが、同種の触媒であることが好ましい。
【0028】
ゼオライト触媒としては、ジメチルエーテルを低級オレフィンに転化し得るゼオライト触媒をいずれも用いることができるが、ZSM−5などのMFI構造を有するゼオライト触媒が好ましく用いられる。なお、ゼオライトには、その結晶構造中にシリカおよびアルミナ以外のほかの酸化物などを含んでいてもよい。また、本発明で用いるゼオライト触媒は、触媒中のケイ素とアルミニウムの原子比(Si/Al)がモル比で10〜300、好ましくは50〜200の範囲内にあるのが好ましい。
【0029】
また、本発明で用いるゼオライト触媒は、カルシウム、ストロンチウムなどのアルカリ土類金属Mを含み、触媒中の該アルカリ土類金属Mとアルミニウムの原子比(M/Al)がモル比で0.5以上、好ましくは0.75〜15、より好ましくは2〜8であることが望ましい。このようなアルカリ土類金属Mを含むゼオライト触媒は、公知の方法で調製することができ、たとえば、特開2005−138000号に記載の方法により好適に調製することができる。
【0030】
ここで、原子比Si/AlおよびM/Alは、例えば原子吸光分析法や誘導結合型プラズマ発光分析法などのような従来の分析法により求めるか、あるいはそのゼオライトの合成に使用したシリコン含有化合物とアルミニウム含有化合物との化学量論比、あるいはアルカリ土類金属Mを含有する化合物とアルミニウム含有化合物との化学量論比により求めることができる。
<低級オレフィンの製造>
本発明の低級オレフィンの製造方法では、直列に接続した複数のオレフィン製造反応器を用いる。接続された各オレフィン製造反応器は、同等の処理能力を有するものであって
もよく、異なっていてもよい。すなわち接続された各オレフィン製造反応器は、それぞれ同量のゼオライト触媒を具備していてもよく、また、それぞれ異なる量のゼオライト触媒を具備していてもよい。
【0031】
本発明において、直列に接続とは、例えば本発明の好ましい態様の概略を図示した図1〜3に示されるように、上流の反応器から排出される成分の全量が、接続された隣接する下流の反応器に供給される状態である。上流の反応器から排出される成分には、上流の反応器で原料ガス中の反応成分が反応して生成した反応生成物、原料ガスおよび添加ガス中の非反応成分、および場合により未反応成分が含まれる。
【0032】
接続された各オレフィン製造反応器の間には、熱交換器などの冷却装置が設けられていてもよく、これにより上流のオレフィン製造反応器からの生成物を冷却して、下流のオレフィン製造反応器に導入してもよい。
【0033】
本発明では、2基以上のオレフィン製造反応器に、原料ガスを分割して供給する。すなわち、2基のオレフィン製造反応器が直列に接続されている場合には2基の反応器それぞれに、3基以上のオレフィン製造反応器が直列に接続されている場合にはそれらの2基以上に、原料ガスを導入する。直列に接続された3基以上のオレフィン製造反応器を用いる場合においては、分割された原料ガスが新規に供給されない反応器があってもよいが、少なくとも最上流の反応器には原料ガスを供給する必要があり、好ましくは、全ての反応器に分割された原料ガスを供給する。
【0034】
原料ガスは、それぞれのオレフィン製造反応器に、等分して供給してもよく、また、異なった比率で分割して供給してもよいが、接続された各オレフィン製造反応器が同種、同量の触媒を具備している場合には、等分して供給することが好ましい。各オレフィン製造反応器に充填された触媒の種類または量あるいはその両方が異なり、処理能力に差を有する場合には、処理能力に応じた比率で原料ガスを分割して供給することも好ましい。
【0035】
本発明では、全オレフィン製造反応器中の触媒量の総計(g)に対する、単位時間あたりの全原料ガス(全オレフィン製造反応器に供給する原料ガスの総計)の供給速度(g/h)で表される空間速度が、ジメチルエーテルを基準としたWHSVで0.5〜50h-1であることが肝要であり、好ましくは1.0〜10h-1、より好ましくは1.0〜5.0h-1の範囲であることが望ましい。
【0036】
ここで、前記空間速度(WHSV)は、言い換えると、単位時間(h)、単位触媒重量(g−cat)あたりの、ジメチルエーテルに換算した反応成分(ジメチルエーテルとメタノールとの合計)の供給重量(g−DME)であって、
(g−DME)/(g−cat)/(h)
により求められる値(単位はh-1)である。
【0037】
前記空間速度(WHSV)が1.0h-1未満である場合には、低級オレフィン製造の効率が悪く、生成する低級オレフィンのプロピレン選択率が低く、原料ガスを分割して供給することに起因する本発明の効果が得られないため、工業生産を行う実機運転には不向きである。
【0038】
前記空間速度(WHSV)が1.0〜4.0h-1程度の範囲では、WHSVの増加に伴ってプロピレン収率が向上し、4.0h-1程度より大では、WHSVの増加に応じたプロピレン収率の更なる増加は期待できないものの、高いプロピレン収率を維持するとともに、WHSVの増加に応じて空時収率が向上する。ただしWHSVが50h-1より大では、炭素質析出による触媒の一時失活までの時間が短くなるため実用的ではない。
【0039】
本発明では、反応系内に添加ガスを導入する場合、添加ガスを各オレフィン製造反応器に導入してもよいが、好ましくは、直列に接続された複数のオレフィン製造反応器のうち、最上流の反応器のみに導入することが好ましい。本発明では、オレフィン製造反応器が直列に接続されており、上流の反応器に供給された添加ガスおよび生成物の全量が連続的に下流の反応器に導入されるため、最上流の反応器のみに添加ガスを導入することによって、各反応器における原料の分圧を最も効率的に低減でき、その結果プロピレン収率の向上が期待でき、また、1つの反応器のみに添加ガスを供給すればよいことで、設備および運転制御を簡素にすることができる。
【0040】
各オレフィン製造反応器において、反応系内の圧力は、原料ガスの分圧として0.005〜1.5MPaであることが好ましく、より好ましくは0.02〜1.0MPaである。また、反応温度は、好ましくは350〜750℃、より好ましくは350〜650℃、さらに好ましくは350〜600℃である。
【0041】
本発明では、低級オレフィンを含む反応後の生成物は、全て最下流のオレフィン製造反応器から得られる。最下流のオレフィン製造反応器から得られる、反応生成物を含む混合物からは、エチレンおよびプロピレン、またはプロピレンのみを、低級オレフィン製品として分離し回収する。本発明では、所望により、生成物を含む混合物からエチレンおよび/またはプロピレン以外の成分をも分離・回収してもよい。生成物を含む混合物からのエチレンおよび/またはプロピレンの分離・回収は、公知の方法で行うことができ、例えば、スプリッターなどの分離精製系により、分留することにより行うことができる。
【0042】
生成物を含む混合物から、プロピレンなどの低級オレフィン製品を分離した残分は、メタン等の軽質パラフィンや、C4およびC5オレフィン、芳香族化合物、スチームを含む。本発明では、この残分の少なくとも一部を、前述した添加ガスの少なくとも一部として、いわゆるリサイクルガスとして用いることができる。低級オレフィン製品としてプロピレンのみを分離・回収する場合には、残分中のエチレンはそのままリサイクルガスとして、添加ガスの成分として用いてもよく、また、二量化するなど炭素数4以上の炭化水素に転化して、添加ガスの成分として用いてもよい。
【0043】
本発明の低級オレフィンの製造方法では、工業的な実機運転上では、原料ガスとして導入される反応成分、すなわちジメチルエーテルおよび必要に応じてメタノールが、生成物中に存在しないことが好ましく、反応成分の転化率が95%以上、好ましくは99%以上、さらに好ましくは99.9%以上であるのが望ましい。ここで、転化率は、下記式で求めることができ、後述する実施例においては、下記式により転化率を求めている。
【0044】
【数1】

【0045】
上記式中、反応成分とは、ジメチルエーテルとメタノールとの合計を意味し、供給速度および出口速度は、炭素基準の速度を意味する。
本発明においては、このように高度な反応成分の転化率で、低級オレフィンが製造されることが望ましいため、所定の転化率を達成できなくなった時点を触媒寿命として扱うことができる。
【0046】
本発明は、たとえば、図1〜図3に示すような構成の装置により、好適に実施することができる。これらの装置構成では、原料ガスが、ライン(1)および(2)により分割さ
れて、各オレフィン製造反応器に導入されている。
【0047】
実施例
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
なお、以下の実施例においては、反応成分の転化率が99.9%を下回るまでの時間、すなわち、最下流のオレフィン製造反応器から得られる低級オレフィンを含む混合物中に、原料として用いた反応成分(ジメチルエーテルとメタノールの総量)の0.1%が混入するまでの時間を触媒寿命とした。
【0049】
[調製例1(ゼオライト触媒の調製)]
9.50gのA1(NO33・9H2Oと、10.92gのCa(CH3COO)2・H2Oとからなるゼオライト原料液を750gの水に溶かし、これに、水333g中に500gのキャタロイドSi−30水ガラス(触媒化成工業製)を溶かした溶液と、6質量%NaOH水溶液177.5gと、21.3質量%臭化テトラプロピルアンモニウム水溶液317.6gと、ゼオライト種結晶として平均粒子径0.5μmのアンモニウム型のMFI構造ゼオライト(Zeolyst社製、Si/Al原子比は70)15.0g(種結晶を添加せずに合成したゼオライト触媒量の10質量%に相当する量)とを攪拌しながら加えて、水性ゲル混合物を得た。
【0050】
次いで、この水性ゲル混合物を3Lオートクレーブ容器に入れ、自己圧力下で160℃で18時間攪拌して水熱合成を行った。
水熱合成による白色固体生成物を濾過・水洗した後、120℃で5時間乾燥し、空気中、520℃で10時間焼成した。次いで焼成したものを0.6N塩酸中へ浸漬させ、室温で24時間攪拌させてゼオライトの型をプロトン型とした。
【0051】
その後、生成物を濾過・水洗の後、120℃で5時間乾燥し、空気中520℃で10時間焼成して、プロトン型アルカリ土類金属含有MFI構造ゼオライト触媒Aを得た。
[比較例1]
調製例1で得たゼオライト触媒Aを充填したオレフィン製造反応器2基が直列に接続された、図4に示す構成の装置を用い、低級オレフィンの製造を行った。なお、オレフィン製造反応器−1と、オレフィン製造反応器−2とは同規模であり、同量のゼオライト触媒Aを具備している。
【0052】
原料ガスとして、ジメチルエーテル、メタノールおよびスチームからなる混合ガスを、添加ガスとして窒素を、表1に示すフィードガス組成となる割合で、ジメチルエーテルを基準とした空間速度(WHSV)が0.42h-1の条件で、全量オレフィン製造反応器−1に導入した。オレフィン製造反応器−1から、出口温度550℃で得られた反応混合物をオレフィン製造反応器−2に全量導入し、反応生成物含有混合物を得た。オレフィン製造反応器−2の出口温度は550℃であった。
【0053】
得られた反応生成物含有混合物を、ガスクロマトグラフィーにより分析して、原料混入量およびプロピレンの含有量を求めた。この結果、反応生成物含有混合物中に原料であるジメチルエーテルおよびメタノールは存在せず、転化率が100%であることがわかった。
【0054】
また、引き続いて連続的に反応を行い、転化率が99.9%となるまでの時間(触媒寿命)を求めた。
[実施例1]
調製例1で得たゼオライト触媒Aを充填したオレフィン製造反応器2基が、熱交換器を介して直列に接続された、図5に示す構成の装置を用いて、原料ガスを1:1に分割してオレフィン製造反応器−1およびオレフィン製造反応器−2にそれぞれ50%ずつ導入して、低級オレフィンの製造反応を行った。フィードガス組成は表1に示すとおり、添加ガスの導入はオレフィン製造反応器−1のみとし、ジメチルエーテルを基準とした空間速度(WHSV)が1.0h-1の条件で原料を系内に導入して反応を行った。なお、用いたオレフィン製造反応器−1と、オレフィン製造反応器−2とは同規模であり、同量のゼオライト触媒Aを具備しているものであって、それぞれ比較例1で用いたものと同様である。
【0055】
オレフィン製造反応器−1から、出口温度550℃で得られた反応混合物を熱交換器(4)で除熱し、分割した原料ガスとともにオレフィン製造反応器−2に導入した。オレフィン製造反応器−2の出口温度を550℃とした。
【0056】
オレフィン製造反応器−2より得られた反応生成物含有混合物を、比較例1と同様にして分析した。また、比較例1と同様にして触媒寿命を求めた。
得られた結果より、プロピレン収率および触媒寿命を、比較例1を100%とした場合の相対値でそれぞれ表し、表1に示した。
【0057】
[実施例2]
実施例1において、原料ガスの導入速度を、ジメチルエーテルを基準とした空間速度(WHSV)で4.0h-1としたことのほかは、実施例1と同様にして低級オレフィンの製造反応を行った。
【0058】
オレフィン製造反応器−1の出口温度を550℃、オレフィン製造反応器−2の出口温度を550℃とした。
オレフィン製造反応器−2より得られた反応生成物含有混合物を、比較例1と同様にして分析した。また、比較例1と同様にして触媒寿命を求めた。
【0059】
得られた結果より、プロピレン収率および触媒寿命を、比較例1を100%とした場合の相対値でそれぞれ表し、表1に示した。
[実施例3]
実施例1において、原料ガスの導入速度を、ジメチルエーテルを基準とした空間速度(WHSV)で10.0h-1としたことのほかは、実施例1と同様にして低級オレフィンの製造反応を行った。
【0060】
オレフィン製造反応器−1の出口温度を550℃、オレフィン製造反応器−2の出口温度を550℃とした。
オレフィン製造反応器−2より得られた反応生成物含有混合物を、比較例1と同様にして分析した。また、比較例1と同様にして触媒寿命を求めた。
【0061】
得られた結果より、プロピレン収率および触媒寿命を、比較例1を100%とした場合の相対値でそれぞれ表し、表1に示した。
[実施例4]
実施例1において、原料ガスの導入速度を、ジメチルエーテルを基準とした空間速度(WHSV)で30.0h-1としたことのほかは、実施例1と同様にして低級オレフィンの製造反応を行った。
【0062】
オレフィン製造反応器−1の出口温度を550℃、オレフィン製造反応器−2の出口温度を550℃とした。
オレフィン製造反応器−2より得られた反応生成物含有混合物を、比較例1と同様にし
て分析した。また、比較例1と同様にして触媒寿命を求めた。
【0063】
得られた結果より、プロピレン収率および触媒寿命を、比較例1を100%とした場合の相対値でそれぞれ表し、表1に示した。
[実施例5]
実施例1において、添加ガスとして、窒素およびイソブテンを表1に記載の割合で含むガスを用いたことの他は、実施例1と同様にして低級オレフィンの製造反応を行った。ここで、イソブテンを含有する添加ガスを用いた本実施例は、C4オレフィンを含むリサイ
クルガスを添加ガスとして用いた場合の効果を示す実験となっている。
【0064】
オレフィン製造反応器−1の出口温度を550℃、オレフィン製造反応器−2の出口温度を550℃とした。
オレフィン製造反応器−2より得られた反応生成物含有混合物を、比較例1と同様にして分析した。また、比較例1と同様にして触媒寿命を求めた。
【0065】
得られた結果より、プロピレン収率および触媒寿命を、比較例1を100%とした場合の相対値でそれぞれ表し、表1に示した。
[比較例2]
実施例1において、原料ガスの導入速度を、ジメチルエーテルを基準とした空間速度(WHSV)で0.42h-1としたことのほかは、実施例1と同様にして低級オレフィンの製造反応を行った。
【0066】
オレフィン製造反応器−1の出口温度を550℃、オレフィン製造反応器−2の出口温度を550℃とした。
オレフィン製造反応器−2より得られた反応生成物含有混合物を、比較例1と同様にして分析した。また、比較例1と同様にして触媒寿命を求めた。
【0067】
得られた結果より、プロピレン収率および触媒寿命を、比較例1を100%とした場合の相対値でそれぞれ表し、表1に示した。
[比較例3]
比較例1において、原料ガスの導入速度を、ジメチルエーテルを基準とした空間速度(WHSV)で1.0h-1としたことのほかは、比較例1と同様にして低級オレフィンの製造反応を行った。
【0068】
オレフィン製造反応器−1の出口温度は550℃、オレフィン製造反応器−2の出口温度は550℃であった。
オレフィン製造反応器−2より得られた反応生成物含有混合物を、比較例1と同様にして分析した。また、比較例1と同様にして触媒寿命を求めた。
【0069】
得られた結果より、プロピレン収率および触媒寿命を、比較例1を100%とした場合の相対値でそれぞれ表し、表1に示した。
[比較例4]
実施例1において、原料ガスの導入速度を、ジメチルエーテルを基準とした空間速度(WHSV)で75.0h-1としたことのほかは、実施例1と同様にして低級オレフィンの製造反応を行った。
【0070】
オレフィン製造反応器−1の出口温度を550℃、オレフィン製造反応器−2の出口温度を550℃とした。
オレフィン製造反応器−2より得られた反応生成物含有混合物を、比較例1と同様にして分析した。また、比較例1と同様にして触媒寿命を求めた。
【0071】
得られた結果より、プロピレン収率および触媒寿命を、比較例1を100%とした場合の相対値でそれぞれ表し、表1に示した。
[実施例6]
実施例1において、原料ガスとしてジメチルエーテルのみからなるガスを用い、フィードガスの組成が表1に示す割合となる条件としたことの他は、実施例1と同様にして低級オレフィンの製造反応を行った。
【0072】
オレフィン製造反応器−1の出口温度を550℃、オレフィン製造反応器−2の出口温度を550℃とした。
オレフィン製造反応器−2より得られた反応生成物含有混合物を、比較例1と同様にして分析した。また、比較例1と同様にして触媒寿命を求めた。
【0073】
得られた結果より、プロピレン収率および触媒寿命を、比較例1を100%とした場合の相対値でそれぞれ表し、表1に示した。
[実施例7]
実施例1において、原料ガスを表1に示す組成とし、フィードガスの組成が表1に示す割合となる条件としたことの他は、実施例1と同様にして低級オレフィンの製造反応を行った。
【0074】
オレフィン製造反応器−1の出口温度を550℃、オレフィン製造反応器−2の出口温度を550℃とした。
オレフィン製造反応器−2より得られた反応生成物含有混合物を、比較例1と同様にして分析した。また、比較例1と同様にして触媒寿命を求めた。
【0075】
得られた結果より、プロピレン収率および触媒寿命を、比較例1を100%とした場合の相対値でそれぞれ表し、表1に示した。
【0076】
【表1】

【0077】
上記表1に示される、これらの実施例および比較例の結果から、以下のことが確認された。
1.比較例1と比較例3との比較から、WHSVを0.42h-1から1.0h-1に増加させることで、プロピレン収率が向上していることがわかり、WHSVの増加がプロピレン収率の向上に効果的であることがわかった。
【0078】
2.比較例1と比較例2との比較から、WHSVが0.42h-1の条件では、原料ガスを一括して上流のオレフィン製造反応器のみに供給しても、原料ガスを分割して直列した
各反応器に供給しても、プロピレン収率はほとんど向上しないことがわかった。
【0079】
3.実施例1と比較例3との比較から、WHSVが1.0h-1の条件では、原料ガスを一括して上流のオレフィン製造反応器のみに供給した場合と比較して、原料ガスを分割して直列した各反応器に供給すると、プロピレン収率が大幅に向上することがわかった。
【0080】
4.比較例2、実施例1および実施例2の結果より、原料を分割して供給した場合にも、本実施例および比較例の条件において、WHSVが4.0h-1以下の範囲では、WHSVの増加にしたがいプロピレン収率が向上することがわかった。
【0081】
5.実施例3、実施例4と、比較例2、比較例4と、実施例1および実施例2の結果より、WHSVが4.0h-1以上の範囲では、WHSVの増加にしたがってのプロピレン収率の向上はないものの、WHSVが4.0h-1より低い場合よりも高いプロピレン収率が維持されることがわかった。しかしながら比較例4の結果から、WHSVが50h-1を超えて大きい場合には、触媒寿命が非常に短いものとなり、工業的に採用できる運転条件ではないことがわかった。
【0082】
6.実施例1と実施例6の結果より、フィードガス中のスチーム濃度が5vol%以上である場合と、5vol%未満である場合とでは、プロピレンの収率は同等であるものの、スチーム濃度が5vol%以上の場合の方が、触媒寿命が長いことがわかった。
【0083】
7.実施例1と実施例7の結果より、フィードガス中のスチーム濃度が30vol%を超える場合と、30vol%以下の場合とでは、プロピレン収率は同等であるものの、スチーム濃度30vol%を超えて大きい実施例7の場合では、当初から転化率が不足することがわかった。これは、スチーム濃度が著しく高い場合には、触媒の酸点が部分的に覆われ、酸密度が減少したことによるものと考えられる。
【0084】
8.実施例1と実施例5の結果より、リサイクルガスとしてC4、C5オレフィンを含むガスを用いた場合のモデルである、添加ガス中にイソブテンを含有するケース(実施例5)では、プロピレン収率が大幅に向上し、触媒寿命も長くなることがわかった。
【0085】
これらの結果より、本発明の低級オレフィンの製造方法が、簡便な制御方法でプロピレン収率よく低級オレフィンを製造できる、実用性に優れた方法であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、工業的に、高いプロピレン収率で、ジメチルエーテルを含む原料から低級オレフィンを効率よく製造する方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】図1は、本発明の低級オレフィンの製造方法を実施するのに好適な態様の概略の一例を示す。
【図2】図2は、本発明の低級オレフィンの製造方法を実施するのに好適な態様の概略の一例であって、リサイクルガスを添加ガスに用いる態様を示す。
【図3】図3は、本発明の低級オレフィンの製造方法を実施するのに好適な態様の概略の一例であって、系外のオレフィン生成装置から得られた生成物由来の炭化水素を添加ガスに用いる態様を示す。
【図4】図4は、比較例1および3の低級オレフィン製造の態様を示す。
【図5】図5は、実施例1〜7および比較例2,4の低級オレフィン製造の態様を示す。
【符号の説明】
【0088】
1:原料ガス供給ライン
2:原料ガス供給ライン
3:リサイクルガス供給ライン
4:熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数のオレフィン製造反応器を用いて、ジメチルエーテルを含有する原料ガスから、プロピレンを含有する低級オレフィンを製造する方法であって、
各オレフィン製造反応器がゼオライト触媒を具備しており、
原料ガスが2基以上のオレフィン製造反応器に分割して供給され、
全オレフィン製造反応器中の触媒量の総計に対する、単位時間あたりの全原料ガスの供給速度で表される空間速度が、ジメチルエーテルを基準としたWHSVで.0.5〜50h-1の範囲であることを特徴とする低級オレフィンの製造方法。
【請求項2】
前記空間速度が、1.0〜10h-1の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の低級オレフィンの製造方法。
【請求項3】
原料ガスが、ジメチルエーテルとメタノールとを含有することを特徴とする請求項1または2に記載の低級オレフィンの製造方法。
【請求項4】
全ての反応器に導入される原料ガスおよび添加ガスの総量であるフィードガス中における、スチームの割合が、5〜30vol%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の低級オレフィンの製造方法。
【請求項5】
添加ガスが、最下流のオレフィン製造反応器より得られた生成物から、プロピレンを含む低級オレフィンを分離した残分である炭化水素の少なくとも一部を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の低級オレフィンの製造方法。
【請求項6】
添加ガスが、炭化水素の熱分解および/または接触分解によってオレフィンを生成するオレフィン生成装置より得られた生成物から、プロピレンを含む低級オレフィンを分離した残分である炭化水素の少なくとも一部を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の低級オレフィンの製造方法。
【請求項7】
直列に接続された複数のオレフィン製造反応器のうち、最上流のオレフィン製造反応器のみに添加ガスを導入することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の低級オレフィンの製造方法。
【請求項8】
前記ゼオライト触媒が、MFI構造を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の低級オレフィンの製造方法。
【請求項9】
前記ゼオライト触媒中のケイ素とアルミニウムの原子比(Si/Al)がモル比で10〜300の範囲であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の低級オレフィンの製造方法。
【請求項10】
前記ゼオライト触媒が、アルカリ土類金属Mを含み、ゼオライト触媒中のアルカリ土類金属Mとアルミニウムの原子比(M/Al)がモル比で0.5以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の低級オレフィンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−74791(P2008−74791A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257708(P2006−257708)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構「提案公募事業/天然ガスの有効利用技術」に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける出願
【出願人】(000004411)日揮株式会社 (94)
【Fターム(参考)】