説明

住宅

【課題】車椅子使用者が心身共に快適に安心して居住できる環境を実現することができる住宅を提供する。
【構成】車椅子使用者15が外部から住宅1内に入る場合には、玄関ポーチ2−1から玄関土間2−2に入り、蔵型階段・踊り場室10内側のスロープ10−5を通過し、玄関2のホール2−3における上り框2−4近傍に至ることができる。その過程では、スロープ10−5には1/15の昇り勾配はあるものの特に通行の障害となる段差はなく、車椅子使用者15は車椅子16に着座したまま特に困難無く住宅1内に入ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玄関の玄関土間と段差のある第1の床に玄関と隣接して踊り場を介して第二の床に至る階段が設けられた住宅に関し、特に居住空間内外において車椅子の使用が必要である車椅子使用者が居住するために階段及び踊り場空間の構造に配慮した住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
本格的長寿社会を迎え、高齢者に限らず、保護されるべき被介護者は歩行の困難を補うために車椅子の使用が不可避である場合がしばしばであり、したがって係る被介護者の暮らす住宅は、床の段差を可能な限り小さくすることによって、車椅子の使用を安全かつ容易にする必要がある。
【0003】
このような要請に向けて本出願人は特許文献1において玄関領域の高低差や段差を可能な限り小さくし、具体的には建物の一階に設けられる玄関の沓みずりと、玄関外側の段差及び沓みずりと玄関土間の段差が具体的に検討され、車椅子での通過も比較的容易にされた住宅を提案した。
【0004】
【特許文献1】特開2002−309784
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で提案された住宅にあっては、玄関で靴を脱ぐために腰を下ろす上り框と玄関土間との段差を車椅子で楽に登ることができる様にするためには勾配の緩いスロープを設置する必要があり、係るスロープを設置するための専用スペースを玄関領域に設けることは面積に制約のある一般住宅では容易ではなかった。
【0006】
したがって本発明は以上の従来技術における問題点に鑑み、面積に制約のある一般住宅における空間の有効利用を図って、車椅子使用者が心身共に快適に安心して居住できる環境を実現することができる住宅を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明の住宅は、玄関の玄関土間と段差のある第1の床に玄関と隣接して踊り場を介して第二の床に至る階段が設けられ、その階段及び踊り場下方には玄関土間と第1の床とを連絡するスロープが設けられることを特徴とする。
【0008】
前記スロープが円弧状部分を有し、その円弧状部分は内周側縁の半径rが1m以上に形成されてなる様にすることができ、しかもこのスロープに沿ってガイドレールや手すりを設ける様にすることができる。
【0009】
また前記スロープに沿って階段及び踊り場棚を配置し、その階段及び踊り場棚の端部に手すりを設ける様にしても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明の住宅によれば、踊り場を介して第二の床に至る階段の下方に玄関土間と第1の床とを連絡するスロープが設けられ、このスロープを利用することによって車椅子使用者は容易に上り框と玄関土間との間を安全に上下して玄関からの出入りを行うことができ、一般住宅における空間を有効に活用して車椅子使用者が快適な生活を送ることができる居住環境を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の住宅を実施するための最良の形態につき図面を参照して説明する。
図1及び図2は本発明の第一の実施の形態に係る住宅1の第1の床9と踊り場11と第2の床12の一部切り欠き斜視図であり、図3は図1及び図2に示す住宅1の部分拡大斜視図である。図4は図3矢視A図、同じく部分拡大側面図である。図5は図1矢視B図、図6は図2矢視C図である。
【0012】
住宅1からの出入りに供する空間を構成して、蔵型階段・踊り場室10に隣接される玄関2は、玄関ポーチ2−1と玄関土間2−2と玄関ホール2−3とを有して構成され、玄関土間2−2とホール2−3との境界領域に上り框2−4を具える。
玄関2の玄関ポーチ2−1と玄関土間2−2とに生じる段差は、可能な限り平らにされ、くつずり、すなわちドア(図示せず)の下枠と玄関ポーチ2−1との高低差は2cm以下、くつずりと玄関土間2−2の高低差は5mm以下とされている。
【0013】
この玄関2と隣接して設けられる蔵型階段・踊り場室10は、玄関2及び居間・食事室6に隣り合う位置に設けられ、その蔵型階段・踊り場室10内側には、第1の床9と玄関土間2−2とを緩やかな傾斜で連絡するスロープ10−5が設けられる。
【0014】
スロープ10−5には玄関土間2−2から第1の床9に向かって1/15の昇り勾配であって、これはすなわち第1の床9から玄関土間2−2に向かって3m間で20cm低くなる下り勾配が形成される。
スロープ10−5は円弧状部分10−5aを有し、その円弧状部分10−5aは内周の半径rが1m以上となるように形成されてなる。この円弧状部分10−5aはスロープ10−5の中間領域に設けられる。
【0015】
また、蔵型階段・踊り場室10の床より半階高い位置には踊り場11が設けられ、居間・食事室6には、踊り場11に上がる階段13が設けられる。
さらにこの踊り場11よりも半階上がった位置の第2の床12には居室12−1が設けられる。また踊り場11には、第2の床12への階段14が設けられる。
【0016】
蔵型階段・踊り場室10にはスロープ10−5に沿って収納棚10−6が配置され、かつ収納棚10−6のスロープ10−5側の端部に沿って手すり10−7が設けられる。この手すり10−7は図に示される様に収納棚10−6の上面に設けることができ、また図上破線で示す手すり10−7aの様に、収納棚10−6の側端面からスロープ10−5側に張り出す態様で設けることもできる。さらに図上手すり10−7bとして示す様にスロープ10−5側縁部分に立設する態様で張り渡すこともできる。
【0017】
さらに、図4〜図6に示すように蔵型階段・踊り場室10内則の天井面を形成する踊り場11の下面側にスロープ10−5に沿って張り渡す態様で手すり10−7cを設ける様にすることができる。
【0018】
踊り場11の高さは玄関土間2−2より半階高くされており、平均的な身長の大人が車椅子に座った状態で蔵型階段・踊り場室10のスロープ10−5を移動して車椅子に乗ったまま階段及び踊り場11に設けられた収納棚10−6の物品を容易に取り出すことができ、物品の搬入や搬出に不自由はない。一方、踊り場11に至るための階段13の上り下りも健常者には特に負担となるものではない。
ここで半階とは、平均的な身長の大人が車椅子に座った状態で蔵型階段・踊り場室10内を自由に移動することができる高さであって、1,400mm以下の高さを標準とする。
この様に蔵型階段・踊り場室10の天井高は車椅子に乗ったまま手が届く様に低く抑えられている。
【0019】
以上の実施の形態の住宅1によれば、車椅子使用者15が外部から住宅1内に入る場合には、玄関ポーチ2−1から玄関土間2−2に入り、玄関土間2−2から蔵型階段・踊り場室10内側のスロープ10−5を通過し引き戸(図示せず)を開いて玄関2のホール2−3における上り框2−4近傍に至ることができる。
その過程では、スロープ10−5には1/15の昇り勾配はあるものの特に通行の障害となる段差はなく、車椅子使用者15は車椅子16に着座したまま特に困難無く住宅1内に入ることができる。
【0020】
またスロープ10−5は円弧状部分10−5aを有するものの特に方向転換が困難となる角張ったコーナーは有さず、しかも円弧状部分10−5a自体はスロープ10−5の中間領域に内周の半径rが1m以上となる様に形成されてなるので、車椅子使用者15はスムーズに円弧状部分10−5aを通過することができる。
【0021】
さらにスロープ10−5に沿って収納棚10−6が配置され、かつ収納棚10−6のスロープ10−5側の端部に沿って手すり10−7が設けられているので、手すり10−7を伝っていくことでスロープ10−5の通過を安全に行うことができるだけでなく、その過程で収納棚に収納してある物を簡便に取得し、若しくは外出に際して携行した物具を簡便に階段及び踊り場11することができる。さらに、このスロープ10−5に沿ってガイドレールが設けられた場合には、スロープ10−5の通過をより安全に行うことができる。
【0022】
一方、車椅子使用者15が住宅1内から外部に出る場合には、図6に示されるように、玄関2のホール2−3における上り框2−4近傍から引き戸を開いて蔵型階段・踊り場室10内側のスロープ10−5を通過して玄関土間2−2に至り玄関ポーチ2−1から外部に出ることができる。
その過程では、スロープ10−5には特に通行の障害となる段差はなく、1/15の下り勾配はあるものの特に危険を生じる下り勾配ではなく、むしろ下り勾配を利用して移動できるため体力消費は少なくなり、車椅子使用者15には便宜である。
【0023】
また、スロープ10−5は中間領域に円弧状部分10−5aを有するので、車椅子16の下降移動の速度はこの円弧状部分10−5aで強制的に緩和され、その点からも特に危険のない移動が可能となる。
しかも、スロープ10−5を通過する過程で収納棚10−6のスロープ10−5側の端部に沿って設けられた手すり10−7を伝っていくことで車椅子使用者15自身が速度を調整してゆっくりと移動することができ、その点からも安全な移動が可能となる。
【0024】
さらにスロープ10−5を通過して安全に外出することができるだけでなく、その過程で収納棚に収納してある防寒具や雨具、さらにはゲートボールを行うための用具など外出する際に必要となる物を車椅子に乗ったまま、簡便に取得して外出することが可能となる。さらに、このスロープ10−5に沿ってガイドレールが設けられた場合には、スロープ10−5の通過をより安全に行うことができることは言うまでもない。なお、スロープ10−5の幅員は車椅子16による円滑な通行を可能とすると共に、収納棚10−6における充分な階段及び踊り場11容量を確保するために800〜850mmとされる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係る住宅の一部切り欠き斜視図である。
【図2】図1に示す実施の形態に係る住宅の別の一部切り欠き斜視図である。
【図3】図1に示す実施の形態に係る住宅の部分拡大斜視図である。
【図4】図3矢視A図である。
【図5】図5は図1矢視B図である。
【図6】図6は図2矢視C図である。
【符号の説明】
【0026】
1・・・住宅、2・・・玄関、2−2・・・玄関土間、2−3・・・玄関ホール、2−4・・・上り框、9・・・第1の床、11・・・踊り場、12・・・第2の床、10・・・蔵型階段・踊り場室、10−5・・・スロープ、10−5a・・・円弧状部分、10−6・・・収納棚、10−7・・・手すり、6・・・居間・食事室、15・・・車椅子使用者、16・・・車椅子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
玄関の玄関土間と段差のある第1の床に玄関と隣接して踊り場を介して第二の床に至る階段が設けられ、その階段及び踊り場下方には玄関土間と第1の床とを連絡するスロープが設けられることを特徴とする住宅。
【請求項2】
前記スロープが円弧状部分を有し、その円弧状部分は内周側縁の半径rが1m以上となる様に形成されてなる請求項1記載の住宅。
【請求項3】
前記スロープに沿ってガイドレールが設けられる請求項1記載の住宅。
【請求項4】
前記スロープに沿って手すりが設けられる請求項1記載の住宅。
【請求項5】
前記スロープに沿って階段及び踊り場棚が配置されてなる請求項1記載の住宅。
【請求項6】
前記階段及び踊り場棚の端部に手すりが設けられる請求項5記載の住宅。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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