説明

作業システム

【課題】作業システムの設備コストを抑えること。
【解決手段】作業システム1は、作業対象であるワークに対して所定の作業を行うロボット12と、ワークに対する所定の作業が行われる場所である複数の作業ステーション13a〜13dとを備える。そして、ロボット12は、作業ステーション13b,13cにおいてワークに対して圧入作業やネジ締め作業といった所定の作業を行うだけでなく、作業ステーション13a〜13d間でのワークの搬送も併せて行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人手によって行われていた組立作業や加工作業といった作業を産業用ロボット等を用いて自動的に行う作業システムが知られている。
【0003】
この種の作業システムでは、作業対象であるワークをベルトコンベア等の搬送装置によって搬送しつつ、搬送装置に沿って設けられた各作業ステーションにおいて産業用ロボット等が所定の作業を行うのが一般的である(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−162652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の作業システムのように、ワークを搬送するためにベルトコンベア等の搬送装置を用いることとすると、設備コストが高くなるという問題があった。
【0006】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、設備コストを抑えることのできる作業システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の開示する作業システムは、作業対象であるワークに対して所定の作業を行うロボットと、前記ワークに対する所定の作業が行われる場所である複数の作業ステーションとを備え、前記ロボットは、前記作業ステーション間での前記ワークの搬送を行う。
【発明の効果】
【0008】
本願の開示する作業システムの一つの態様によれば、設備コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】図1Aは、実施例1に係る作業システムの概要説明図(その1)である。
【図1B】図1Bは、実施例1に係る作業システムの概要説明図(その2)である。
【図2】図2は、実施例1に係る作業システムのレイアウトを示す模式平面図である。
【図3】図3は、レールおよびスライダ等の模式側面図である。
【図4】図4は、実施例1に係る作業システムのネットワーク構成を示す図である。
【図5】図5は、実施例1に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【図6A】図6Aは、ロボットによる搬送動作の動作例を示す図(その1)である。
【図6B】図6Bは、ロボットによる搬送動作の動作例を示す図(その2)である。
【図7A】図7Aは、ロボットによる作業動作の動作例を示す図(その1)である。
【図7B】図7Bは、ロボットによる作業動作の動作例を示す図(その2)である。
【図8A】図8Aは、ロボットによる搬送動作の動作例を示す図(その3)である。
【図8B】図8Bは、ロボットによる返却動作の動作例を示す図(その1)である。
【図8C】図8Cは、ロボットによる返却動作の動作例を示す図(その2)である。
【図9A】図9Aは、エリアセンサのオンオフ制御の説明図(その1)である。
【図9B】図9Bは、エリアセンサのオンオフ制御の説明図(その2)である。
【図10】図10は、制御装置が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図11】図11は、実施例2に係る作業システムの配置を示す模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、本願の開示する作業システムのいくつかの実施例を詳細に説明する。ただし、これらの実施例における例示で本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0011】
[作業システムの概要]
まず、実施例1に係る作業システムの概要について図1Aおよび図1Bを用いて簡単に説明する。図1Aおよび図1Bは、実施例1に係る作業システムの概要説明図である。図1Aおよび図1Bに示すように、本実施例に係る作業システムは、作業対象であるワークに対する所定の作業をロボット等を用いて自動的に行うシステムである。
【0012】
具体的には、本実施例に係る作業システムは、ロボットと、複数の作業ステーションとを備える。ロボットは、たとえば単腕型の産業用ロボットである。また、作業ステーションとは、ワークに対する所定の作業が行われる場所である。
【0013】
たとえば、図1Aに示すように、ロボットは、作業台に設置された部品を把持し、作業ステーションにおける所定位置まで移動させる。そして、ロボットは、作業ステーションに設置された作業装置(たとえば、圧入装置)と協働してワークに対して部品を圧入する作業を行う。
【0014】
ここで、従来の作業システムでは、1つの作業ステーションでの作業が完了すると、ワークを次の作業ステーションへ搬送するために、ベルトコンベア等の搬送装置を用いていた。しかしながら、ベルトコンベア等の搬送装置を用いることとすると、設備コストが高くなるという問題があった。また、搬送装置を用いることで設備が複雑化し、電気配線や設備調整といった設備の立ち上げに要する工数が増加するおそれもある。
【0015】
そこで、本実施例に係る作業システムでは、ロボットが、ワークに対する所定の作業だけでなく、作業ステーション間でのワークの搬送も併せて行うこととした。
【0016】
たとえば、図1Bに示すように、ロボットは、ワークに対する圧入作業を終えると、圧入作業後のワークを次の作業ステーションへ搬送する。そして、ロボットは、次の作業ステーションにおいて、かかる作業ステーションに設置された作業装置とともにワークに対する更なる作業(たとえば、ネジ締め作業など)を行う。
【0017】
このように、本実施例に係る作業システムでは、作業対象であるワークに対して所定の作業を行うロボットと、ワークに対する所定の作業が行われる場所である複数の作業ステーションとを備え、ロボットが、作業ステーション間でのワークの搬送を行うこととした。これにより、搬送装置を別途設けなくとも作業ステーション間でのワークの搬送を行うことができるため、設備コストを抑えることができる。
【0018】
また、搬送装置を用いないことで設備を簡略化することができるため、電気配線や設備調整といった設備の立ち上げに要する工数を削減することができる。したがって、搬送装置を用いた場合と比較して、設備を短時間で立ち上げることが可能となる。
【0019】
なお、図1Aおよび図1Bに示すように、本実施例に係る作業システムは、作業ステーションに沿って設けられたレールと、レール上をスライドするスライダとをさらに備える。そして、ロボットは、ワークが載置されたスライダをレール上でスライドさせることによって作業ステーション間でのワークの搬送を行う。
【0020】
このように、レールとスライダを用いてワークを搬送することで、ロボットは、可搬質量を超えるワークであっても搬送することが可能となる。言い換えれば、可搬質量が比較的小さい小型のロボットを用いてワークを搬送させることが可能となるため、作業システムの設置面積を小さくすることができる。
【0021】
[作業システムの配置]
次に、本実施例に係る作業システムの構成について具体的に説明する。まず、本実施例に係る作業システムのレイアウトについて図2を用いて説明する。図2は、実施例1に係る作業システムのレイアウトを示す模式平面図である。
【0022】
図2に示すように、作業システム1は、セル11と、ロボット12と、作業ステーション13a〜13dと、作業装置14a〜14cと、レール15と、スライダ16と、スライダ置き場17と、作業台18と、操作盤19と、制御装置20と、エリアセンサ21a〜21hを備える。
【0023】
セル11は、ロボット12の作業区域を取り囲むように設置された仕切り枠である。セル11は、操作盤19およびエリアセンサ21a,21b,21e,21f以外を取り囲むように設置される。
【0024】
また、セル11は、エリアセンサ21a,21b間およびエリアセンサ21e,21f間に開口部を有する。作業者は、エリアセンサ21a,21b間に形成された開口部を介してワークや部品のセットを行ったり、エリアセンサ21e,21f間に形成された開口部を介してワーク(完成品)の取り出しを行ったりする。なお、以下では、エリアセンサ21a,21b間に形成された開口部を「入り口」と呼び、エリアセンサ21e,21f間に形成された開口部を「出口」と呼ぶこととする。
【0025】
ロボット12は、ワークに対して所定の作業を行う単腕型のロボットであり、セル11の略中央に設置される。かかるロボット12の構成については、図4を用いて後述する。
【0026】
作業ステーション13a〜13dは、ワークに対する所定の作業が行われる場所である。作業ステーション13a〜13dは、セル11の入り口から出口へ向けて直線状に配置される。
【0027】
本実施例において、作業ステーション13aは、作業者によるワークのセットが行われる作業ステーションであり、作業ステーション13bは、ワークに対する部品Aの圧入作業が行われる作業ステーションであるとする。また、本実施例において、作業ステーション13cは、ワークと部品Bとのネジ締め作業が行われる作業ステーションであり、作業ステーション13dは、作業者によるワーク(完成品)の取り出しが行われる作業ステーションであるとする。
【0028】
以下では、作業ステーション13a〜13dを、それぞれ「ワークセットステーション」、「圧入ステーション」、「ネジ締めステーション」、「取り出しステーション」と呼ぶ場合もある。
【0029】
なお、図2では図示を省略したが、各作業ステーション13a〜13dには、後述するスライダ16を固定しておくためのクランプ部が設けられる。かかるクランプ部については、図3を用いて後述する。
【0030】
作業装置14a,14bは、それぞれ作業ステーション13b,13cに設置される装置であり、ロボット12と共にワークに対する作業を行う。たとえば、作業装置14aは、ワークに対する圧入作業を行う圧入装置である。また、作業装置14b近傍の所定位置には、ワークに対するネジ締め作業を行うための電動ドライバー等のネジ締め工具が着脱可能に備えられている。
【0031】
また、作業装置14cは、部品の加工を行う装置であり、作業ステーション13a〜13d以外の場所に設置される。たとえば、作業装置14cは、部品Aを研磨するための研磨装置である。なお、以下では、説明をわかりやすくする観点から、作業装置14cを用いて行われる作業については省略して説明する。
【0032】
レール15は、作業ステーション13a〜13dに沿って設けられた直線状のレールである。また、スライダ16は、レール15の長手方向に沿ってスライド可能な移動体であり、台座部分にワークが載置される。
【0033】
ここで、レール15およびスライダ16等の構成について図3を用いて説明する。図3は、レール15およびスライダ16等の模式側面図である。
【0034】
図3に示すように、レール15は、作業台50に所定間隔を空けて設置された2つのレール部材151a,151bを備える。なお、レール部材151a,151bの間隔は、作業対象となるワークの形状や大きさに応じて適宜変更可能である。
【0035】
スライダ16は、台座161と、車輪162a,162bと、取手部163と、係合凹部165とを備える。台座161は、ワークが載置される台である。車輪162a,162bは、レール部材151a,151bの間隔に合わせて台座161の下部に設置された車輪であり、それぞれレール部材151a,151bと当接する。これにより、スライダ16は、レール15に沿ってスライド可能となる。
【0036】
取手部163は、台座161の上面から上方へ向けて突出した板状部材である。なお、ロボット12は、ロボットアームの先端に取り付けられたロボットハンド124を用いて取手部163の先端部を把持する。
【0037】
検知板164は、台座161の下面に突設された鉄板等の金属板であり、後述する近接センサ23を用いてスライダ16を検知するために設けられる。なお、近接センサ23は、金属センサであり、検知板164を検知することによってスライダ16を検知することとなる。
【0038】
係合凹部165は、台座161の上面に形成された凹部である。かかる係合凹部165が、後述するクランプ部22の係合凸部224と係合することによって、スライダ16が固定されることとなる。
【0039】
また、作業台50には、クランプ部22および近接センサ23が設けられている。クランプ部22は、スライダ16を固定するための固定機構であり、各作業ステーション13a〜13dの所定位置に設けられている。具体的には、クランプ部22は、ベース部221と、軸部222と、鉤部223と、係合凸部224とを備える。
【0040】
ベース部221は、作業台50の上面に固定されたベース部材である。軸部222は、レール15の長手方向に沿って伸延する回転軸であり、ベース部221に取り付けられる。鉤部223は、軸部222に取り付けられたL字状の部材である。係合凸部224は、鉤部223の先端に形成された突状部材である。
【0041】
かかるクランプ部22は、軸部222を回転させることによって軸部222に取り付けられた鉤部223を回転させて、鉤部223の先端に形成された係合凸部224をスライダ16の係合凹部165と係合させる。これにより、スライダ16は、各作業ステーション13a〜13dの所定位置において固定される。
【0042】
近接センサ23は、レール15に沿って搬送されるスライダ16を検知する金属センサであり、レール部材151a,151b間に設置される。かかる近接センサ23は、作業ステーション13a〜13dごとに設置される。
【0043】
近接センサ23は、スライダ16に設けられた検知板164を検知することによってスライダ16を検知する。たとえば、近接センサ23は、高周波磁界を発生する検出コイルを備える。検知板164が高周波磁界に接近すると、電磁誘導によって検知板164に誘導電流が流れる。この結果、かかる誘導電流によって検出コイルのインピーダンスが変化して発振が停止する。近接センサ23は、かかる発振の停止を契機として検知板164、すなわち、スライダ16を検知する。
【0044】
図2へ戻り、作業システム1の配置についての説明を続ける。スライダ置き場17は、使用しないスライダ16を載置しておくための台座である。かかるスライダ置き場17は、たとえば、最上流の作業ステーション13aの近傍に設置される。なお、スライダ置き場17には、近接センサ23(図示せず)が設けられており、制御装置20は、かかる近接センサ23によってスライダ置き場17にスライダ16が載置されているか否かを特定することができる。
【0045】
作業台18は、ワークに組み付けられる部品Aおよび部品Bを設置するための台である。かかる作業台18は、セル11の入り口に近い位置に設けられる。なお、部品Aおよび部品Bの設置は、作業者が行うものとする。
【0046】
操作盤19は、セル11の外側に取り付けられた操作部である。かかる操作盤19は、作業システム1に関する各種操作を受け付けるとともに、受け付けた操作を制御装置20へ通知する操作部である。たとえば、操作盤19には、作業開始ボタンの他、ワークおよび部品A,Bのセットが完了した後に作業者によって押下されるセット完了ボタン、ワーク(完成品)の取り出しが完了した後に作業者によって押下される取り出し完了ボタン等が設けられる。なお、操作盤19には、作業システム1の緊急停止ボタン等も設けられる。
【0047】
制御装置20は、ロボット12や作業装置14a〜14cを含む作業システム1全体の制御装置である。かかる制御装置20の構成については、図4を用いて後述する。
【0048】
エリアセンサ21a〜21hは、作業者の危険防止のために、セル11の出入り口等に設置された侵入者検知用のセンサである。具体的には、エリアセンサ21a,21c,21e,21gが投光部であり、エリアセンサ21b,21d,21f,21hが、エリアセンサ21a,21c,21e,21gにそれぞれ対応する受光部である。そして、投光部および受光部間に形成される光路が遮られた場合に、物体の侵入を検知し、検知信号を制御装置20へ送信する。
【0049】
エリアセンサ21a,21bは、セル11の入り口の両サイドに設置される。また、エリアセンサ21c,21dは、エリアセンサ21a,21bよりもセル11の内側に設置される。具体的には、エリアセンサ21c,21dは、エリアセンサ21a,21bとの間で、作業ステーション13aおよび作業台18を挟み込むような位置に設置される。すなわち、作業ステーション13aおよび作業台18は、エリアセンサ21a,21bおよびエリアセンサ21c,21d間に位置することとなる。
【0050】
エリアセンサ21e,21fは、セル11の出口の両サイドに設置される。また、エリアセンサ21g,21hは、エリアセンサ21e,21fよりもセル11の内側に設置される。具体的には、エリアセンサ21g,21hは、エリアセンサ21e,21fとの間で、作業ステーション13dを挟み込むような位置に設置される。すなわち、作業ステーション13dは、エリアセンサ21e,21fおよびエリアセンサ21g,21h間に位置することとなる。
【0051】
なお、以下では、エリアセンサ21a,21b間およびエリアセンサ21e,21f間を第1の境界部と呼び、エリアセンサ21c,21d間およびエリアセンサ21g、21h間を第2の境界部と呼ぶ場合がある。
【0052】
また、ここでは、投光部と受光部とを有するエリアセンサを用いて物体の侵入を検知することとしたが、これに限ったものではなく、第1の境界部や第2の境界部への物体の侵入を検知できるセンサであれば、他のセンサであってもよい。たとえば、周囲の温度変化を検知して動作する赤外線センサ等を用いることもできる。
【0053】
[作業システムのネットワーク構成]
次に、作業システム1のネットワーク構成について図4を用いて説明する。図4は、実施例1に係る作業システムのネットワーク構成を示す図である。なお、以下では、説明をわかり易くする観点から、作業ステーション13a〜13dのうち任意の作業ステーション13a〜13dを単に「作業ステーション13」と呼び、作業装置14a〜14cのうち任意の作業装置14a〜14cを単に「作業装置14」と呼び、エリアセンサ21a〜21hのうち任意のエリアセンサを単に「エリアセンサ21」と呼ぶ場合もある。
【0054】
図4に示すように、制御装置20は、ロボット12、作業装置14、操作盤19、エリアセンサ21、クランプ部22、近接センサ23とネットワーク70を介して接続される。なお、ネットワーク70としては、有線LAN(Local Area Network)や無線LANといった一般的なネットワークを用いることができる。
【0055】
制御装置20は、操作盤19から受け取った操作情報や近接センサ23の検知結果等に基づいてロボット12、作業装置14、クランプ部22等の動作制御を行う。また、制御装置20は、ロボット12の作業状況に応じてエリアセンサ21のオンオフ制御を行ったりもする。
【0056】
[ロボットの構成]
ここで、ロボット12の構成について説明する。ロボット12は、ベース部121を介して床面などに固定される。また、ロボット12は、複数のロボットアーム122を有しており、各ロボットアーム122は、サーボモータを備えた関節部123を介して他のロボットアーム122と接続される。
【0057】
なお、図4に示す関節部123には、「円」で示したものと、「菱形」で示したものとがあるが、両者は、単に、回転軸の向きの違いをあらわす。たとえば、「円」で示した関節部123は、両側のロボットアーム122のなす角を変化させるように回転する。また、「菱形」で示した関節部123は、両側のロボットアーム122のなす角を保持したまま回転する。
【0058】
また、関節部123を介して相互に接続されたロボットアーム122のうち、ベース部121に最も近いロボットアーム122の先端はベース部121に固定され、最も遠いロボットアーム122の先端にはロボットハンド124が接続される。ロボットハンド124は、物体を把持するエンドエフェクタである。ロボットハンド124およびスライダ16は、合計質量がロボット12の可搬質量を超えないように設計される。
【0059】
ロボット12は、制御装置20からの指示に従い、各サーボモータを個別に任意の角度だけ回転させることで、ロボットハンド124を任意の位置へ移動させる。
【0060】
なお、ここでは、ロボット12が、7軸の関節を有するロボットであるものとするが、ロボット12の関節数は7軸に限ったものではない。
【0061】
[制御装置の構成]
次に、制御装置20の構成について図5を用いて説明する。なお、図5では、制御装置20の特徴を説明するために必要な構成要素のみを示しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0062】
図5に示すように、制御装置20は、記憶部201と、制御部202とを備える。また、記憶部201は、作業情報201aを記憶する。また、制御部202は、ロボット制御部202aと、クランプ制御部202bと、作業装置制御部202cと、エリアセンサ制御部202dとを備える。
【0063】
記憶部201は、不揮発性メモリや、ハードディスクドライブといった記憶デバイスで構成される記憶部であり、作業情報201aを記憶する。作業情報201aは、作業システム1においてロボット12や作業装置14等に対して実行させる作業内容や作業条件といった情報である。制御部202は、この作業情報201aに基づいてロボット12や作業装置14等を制御することとなる。
【0064】
制御部202は、制御装置20の全体制御を行う制御部である。ロボット制御部202aは、操作盤19から受け付けた操作情報や記憶部201に記憶された作業情報201aに基づいてロボット12の動作制御を行う処理部である。
【0065】
なお、ロボット制御部202aは、ロボット12の現在位置や作業の進捗状況などを常にモニタリングしているものとする。かかるモニタリングの結果は、作業装置制御部202cおよびエリアセンサ制御部202dへ出力される。
【0066】
クランプ制御部202bは、近接センサ23からスライダ16の検知信号を受け取った場合に、かかる近接センサ23と同一の作業ステーション13に設置されたクランプ部22の駆動制御を行う処理部である。
【0067】
たとえば、スライダ16が作業ステーション13bへ搬送されると、作業ステーション13bに設置された近接センサ23がスライダ16を検知することとなる。かかる場合、クランプ制御部202bは、作業ステーション13bに設置されたクランプ部22を駆動させる。この結果、クランプ部22の係合凸部224とスライダ16の係合凹部165とが係合し、スライダ16が作業ステーション13bの所定位置で固定されることとなる(図3参照)。
【0068】
なお、本実施例では、近接センサ23がスライダ16を検知した場合にクランプ部22を駆動させる場合の例について説明するが、これに限ったものではない。たとえば、クランプ制御部202bは、ロボット12からクランプ指令を受信し、かつ、近接センサ23がスライダ16を検知している場合に、クランプ部22の駆動させることとしてもよい。また、クランプ制御部202bは、ロボット12からクランプ指令を受信した場合に、近接センサ23がスライダ16を検知していなければ、異常と判定し、たとえば警報を鳴らす等の異常対策処理を行ってもよい。このように、クランプ制御部202bは、近接センサ23の検知結果をスライダ16の所在確認のために用いるようにしてもよい。
【0069】
クランプ制御部202bは、作業ステーション13における作業が完了すると、クランプ部22を駆動させて、クランプ部22の係合凸部224とスライダ16の係合凹部165との係合状態を解除させる。これにより、スライダ16は、次の作業ステーション13へ移動可能な状態となる。
【0070】
作業装置制御部202cは、ロボット12の作業状況および記憶部201に記憶された作業情報201aに基づいて作業装置14の動作制御を行う処理部である。たとえば、スライダ16が作業ステーション13bに位置している状態において、ロボット12が部品Aを把持して所定位置まで移動させ旨の通知をロボット制御部202aから受け取ると、作業装置制御部202cは、作業装置14aに対して圧入作業を開始させる。
【0071】
エリアセンサ制御部202dは、ロボット12の作業状況に応じてエリアセンサ21のオンオフ制御を行う処理部である。かかるエリアセンサ制御部202dの動作例については、図9A,9Bを用いて後述することとする。
【0072】
なお、上記した制御装置20は、たとえば、コンピュータで構成することができる。この場合、制御部202は、CPU(Central Processing Unit)であり、記憶部201は、メモリである。また、制御部202の各機能は、あらかじめ作成されたプログラムを制御部202へロードして実行させることによって実現することができる。
【0073】
[ロボット12の動作例]
次に、ロボット12の動作例について説明する。本実施例では、ロボット12が、ワークに対する所定の作業だけでなく、作業ステーション13間でのワークの搬送も併せて行う。先ずは、ロボット12の搬送動作について図6A,6Bを用いて説明する。図6A,6Bは、ロボットによる搬送動作の動作例を示す図である。
【0074】
なお、図6Aに示すように、スライダ16にワークが載置され、作業台18に部品Aおよび部品Bが載置されているが、これらワークおよび部品のセッティングは作業者が行うものとする。作業者は、ワークおよび部品のセッティングが完了すると、操作盤19に設けられた「セット完了ボタン」を押下し、ロボット12および作業装置14等の作業を開始させる。
【0075】
作業者により「セット完了ボタン」が押下されると、ロボット12は、ロボット制御部202aからの指示に従ってスライダ16を作業ステーション13b(圧入ステーション)へ搬送する。具体的には、ロボット12は、スライダ16の取手部163の先端をロボットハンド124を用いて把持した後(図6A参照)、スライダ16をレール15上でスライドさせつつ作業ステーション13bまで移動させる(図6B参照)。
【0076】
ロボット12がスライダ16を作業ステーション13bの所定位置まで移動させると、作業ステーション13bに設置された近接センサ23がスライダ16を検知し、作業ステーション13bに設置されたクランプ部22がスライダ16を固定する。
【0077】
つづいて、ロボット12の作業動作について図7A,7Bを用いて説明する。図7A,7Bは、ロボットによる作業動作の動作例を示す図である。
【0078】
図7Aに示すように、ロボット12は、スライダ16を作業ステーション13bまで搬送すると、作業台18に載置された部品Aをロボットハンド124を用いて把持する。また、図7Bに示すように、ロボット12は、把持した部品Aを作業ステーション13bの所定位置まで移動させる。このように、ロボット12は、スライダ16上のワークに対する部品Aの位置決めを行って作業ステーション13bでの作業を完了する。そして、その後、圧入装置である作業装置14aが部品Aをワークへ圧入することとなる。
【0079】
なお、作業ステーション13bでの圧入作業が完了すると、クランプ部22は、スライダ16の固定を解除する。これにより、スライダ16は、次の作業ステーション13cへ移動可能な状態となる。そして、ロボット12は、スライダ16の取手部163を把持し、スライダ16を次の作業ステーションである作業ステーション13cへ搬送する。
【0080】
また、ロボット12は、作業ステーション13cへスライダ16を搬送した後、作業台18に載置された部品Bを把持してワークの上面へ載置する。そして、ロボット12は、作業装置14b近傍の所定位置に備えられたネジ締め工具をロボットハンド124により把持したうえで、かかるネジ締め工具を用いてワークと部品Bとのネジ締め作業を行う。かかるネジ締め作業を完了すると、ロボット12は、ネジ締め工具を所定位置へ戻す。ここでは、かかるネジ締め作業を終えたワークを完成品とする。
【0081】
このように、本実施例に係る作業システム1では、ロボット12が、ワークに対する所定の作業だけでなく、作業ステーション13間でのワークの搬送も併せて行うこととした。これにより、搬送装置を別途設けなくとも、作業ステーション13間でのワークの搬送を行うことができるため、設備コストを抑えることができる。
【0082】
また、本実施例に係る作業システム1では、レール15とスライダ16を用い、ワークを滑らせるようにして搬送することとした。このため、ロボット12の可搬質量を超える質量のワークであっても搬送することが可能となる。言い換えれば、可搬質量が比較的小さい小型のロボットを用いてワークを搬送させることが可能となるため、作業システムの設置面積を小さくすることができる。
【0083】
また、本実施例に係る作業システム1では、クランプ部22を用いてスライダ16を作業ステーション13の所定位置で固定することしたため、スライダ16の位置決めを容易に行うことができる。また、作業中におけるスライダ16の位置ずれを防止することもできる。
【0084】
つづいて、ロボット12によるスライダ16の返却動作について図8A〜8Cを用いて説明する。図8Aは、ロボットによる搬送動作の動作例を示す図であり、図8B,8Cは、ロボットによる返却動作の動作例を示す図である。
【0085】
図8Aに示すように、作業ステーション13cにおけるネジ締め作業が完了しクランプ部22によるスライダ16の固定が解除されると、ロボット12は、スライダ16の取手部163の先端をロボットハンド124を用いて把持した後、スライダ16をレール15上でスライドさせつつ作業ステーション13dまで移動させる。
【0086】
なお、スライダ16が取り出しステーション(作業ステーション13d)まで搬送されると、作業者は、ワーク(完成品)の取り出しを行う。そして、作業者は、ワーク(完成品)の取り出しを終えると、操作盤19の「取り出し完了ボタン」を押下する。
【0087】
そして、ロボット12は、操作盤19の「取り出し完了ボタン」が押下されると、スライダ16の返却動作を開始する。具体的には、ロボット12は、スライダ16の取手部163の先端をロボットハンド124を用いて把持した後、最上流の作業ステーションである作業ステーション13aまでスライダ16を移動させる(図8B参照)。
【0088】
このように、ロボット12が、最下流の作業ステーション13dまで搬送したスライダ16を最上流の作業ステーション13aへ戻すこととした。したがって、作業者が最下流の作業ステーション13dからスライダ16を取り出す作業や最上流の作業ステーション13aにスライダ16を設置する作業を行う必要がないため、作業者の負担を軽減することができる。また、作業者によるワーク(完成品)の取り出しを契機として返却動作が行われるため、最下流の作業ステーション13dにスライダ16が溜まることなく、作業を円滑に行うことができる。
【0089】
また、ロボット12は、レール15を用いずにスライダ16を作業ステーション13aまで戻すこととしている。具体的には、ロボット12は、スライダ16を持ち上げ、レール15に干渉しない経路で作業ステーション13aまで戻す。
【0090】
このように、本実施例では、スライダ16を上流の作業ステーション13aから下流の作業ステーション13dへ搬送する経路と、最下流まで搬送されたスライダ16を最上流の作業ステーション13aへ戻す経路とを異ならせることとしたため、ワークに対する作業をより効率的に行うことができる。
【0091】
なお、ロボット12は、スライダ16を作業ステーション13aへ戻す際に、作業ステーション13aに対して既に他のスライダ16’が設置されている場合には、スライダ16を作業ステーション13aではなく、スライダ置き場17へ移動させる(図8C参照)。このようにすれば、複数(たとえば、3つ以上)のワークに対する作業を平行して行うことが可能となる。
【0092】
[エリアセンサのオンオフ制御]
ところで、ベルトコンベア等の搬送装置ではなく、ロボット12を用いてワークの搬送を行うこととすると、セル11内にワークや部品を搬入する作業やワーク(完成品)をセル11外へ搬出する作業が必要となる。
【0093】
ここで、セル11内にワーク等を搬入する搬送装置やワーク(完成品)をセル11外へ搬出する搬送装置を部分的に設置してもよいが、このような搬送装置の設置によって設備コストが増大してしまうおそれがある。一方、作業者が、セル11内に手を入れるなどしてワーク等の搬入・搬出を行うことも考えられる。しかし、かかる場合には、作業者とロボット12とが接触する危険性がある。
【0094】
そこで、本実施例に係る作業システム1では、セル11の出入り口(第1の境界部)に設置されたエリアセンサ21a,21b,21e,21fおよびセル11の内側(第2の境界部)に設置されたエリアセンサ21c,21d,21g,21hのオンオフをロボット12の作業状況に応じて切り替えることで、作業者がセル11内に安全に侵入することができるようにした。
【0095】
以下、エリアセンサ21a〜21hのオンオフ制御について図9A,9Bを用いて説明する。図9A,9Bは、エリアセンサ21a〜21dのオンオフ制御の説明図である。なお、図9Aには、エリアセンサ21a,21bがオン、エリアセンサ21c,21dがオフの状態を示している。また、図9Bには、エリアセンサ21a,21bがオフ、エリアセンサ21c,21dがオンの状態を示している。
【0096】
たとえば、図9Aに示すように、ロボット12が部品Aを把持して作業ステーション13bへ搬送する動作など、ロボット12が作業台18や作業ステーション13a上を通過するおそれのある動作を行っているとする。このような場合、制御装置20のエリアセンサ制御部202dは、セル11の出入り口である第1の境界部に設置されたエリアセンサ21a,21bをオン状態とし、セル11内部における第2の境界部に設置されたエリアセンサ21c,21dをオフ状態とする。
【0097】
このような状態において、作業者がセル11内へ侵入した場合、エリアセンサ21a,21bが作業者の侵入を検知し、制御装置20によって警報を鳴らす等の安全措置が講じられる。これにより、作業者は、危険を察知することができる。
【0098】
一方、図9Bに示すように、ロボット12がセル11の入り口から遠く離れた場所(たとえば、作業ステーション13c)で作業を行う場合など、所定時間以上セル11の入り口付近へ戻ってこないとする。このような場合、エリアセンサ制御部202dは、第2の境界部に設置されたエリアセンサ21c,21dをオン状態とし、セル11の第1の境界部に設置されたエリアセンサ21a,21bをオフ状態とする。
【0099】
これにより、作業者は、セル11の内部へ安全に侵入することができる。すなわち、作業者は、作業ステーション13aや作業台18に対してワークや部品A、部品Bを安全に設置することが可能となる。
【0100】
このように、作業システム1では、セル11と外部との境界部である第1の境界部に第1のセンサ(たとえば、エリアセンサ21a,21b)を設置するとともに、第1の境界部よりもセル11の内側である第2の境界部に第2のセンサ(たとえば、エリアセンサ21c,21d)を設置した。そして、作業システム1では、エリアセンサ制御部202dが、ロボット12の動作に応じて第1のセンサ(たとえば、エリアセンサ21a,21b)および第2のセンサ(たとえば、エリアセンサ21c,21d)のオンオフを制御することとした。
【0101】
したがって、ワークや部品のセル11内への搬入およびワーク(完成品)のセル11外への搬出を安全かつ低コストに行うことができる。
【0102】
なお、ここでは、セル11の入り口側に設置されたエリアセンサ21a〜21dのオンオフ制御を例に挙げて説明したが、セル11の出口側に設置されたエリアセンサ21e〜21hについても同様のオンオフ制御が行われる。
【0103】
[制御装置の具体的動作]
次に、制御装置20の具体的動作について図10を用いて説明する。図10は、制御装置20が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、図10においては、操作盤19の作業開始ボタンが押下されてから、ロボット12が取り出しステーション(作業ステーション13d)まで搬送し終えたスライダ16を返却するまでの処理手順について示している。また、図10においては、エリアセンサのオンオフ制御の処理手順を省略して示している。
【0104】
図10に示すように、制御装置20では、ロボット制御部202aが、作業開始ボタンが押下された旨の通知を操作盤19から受け取ると、スライダ16をワークセットステーション(作業ステーション13a)へ設置するようにロボット12に対して指示する(ステップS101)。なお、ロボット12は、ロボット制御部202aからの指示に従い、スライダ置き場17に設置されたスライダ16を把持してワークセットステーション(作業ステーション13a)前方のレール15上へ設置することとなる。
【0105】
つづいて、ロボット制御部202aは、作業者によるワークセットが完了したか否かを判定する(ステップS102)。かかる判定は、セット完了ボタンが押下された旨の通知を操作盤19から受け取ったか否かにより行われる。そして、ワークセットが完了していない場合(ステップS102,No)、すなわち、セット完了ボタンが押下された旨の通知を操作盤19から受け取るまでは、ロボット12を待機させる。
【0106】
一方、ワークセットが完了したと判定した場合(ステップS102,Yes)、すなわち、セット完了ボタンが押下された旨の通知を操作盤19から受け取った場合、ロボット制御部202aは、スライダ16を圧入ステーション(作業ステーション13b)へ搬送するように指示する(ステップS103)。
【0107】
なお、ロボット12は、ロボット制御部202aからの指示に従い、ワークセットステーション(作業ステーション13a)に設置されたスライダ16を把持して圧入ステーション(作業ステーション13b)まで搬送することとなる。
【0108】
ロボット12がスライダ16を圧入ステーション(作業ステーション13b)まで搬送すると、圧入ステーション(作業ステーション13b)においてスライダ16の位置決めが行われる(ステップS104)。すなわち、圧入ステーション(作業ステーション13b)に設置された近接センサ23がスライダ16を検知し、クランプ部22がスライダ16を固定する。
【0109】
つづいて、ロボット制御部202aがロボット12に対して指示を行うとともに、作業装置制御部202cが作業装置14aに対して指示を行うことによって、ロボット12および作業装置14aに対して圧入作業を実行させる(ステップS105)。
【0110】
圧入作業が完了すると、ロボット制御部202aは、スライダ16をネジ締めステーション(作業ステーション13c)へ搬送するように指示する(ステップS106)。なお、ロボット12は、ロボット制御部202aからの指示に従い、圧入ステーション(作業ステーション13b)に設置されたスライダ16を把持してネジ締めステーション(作業ステーション13c)まで搬送することとなる。
【0111】
ロボット12がスライダ16をネジ締めステーション(作業ステーション13c)まで搬送すると、ネジ締めステーション(作業ステーション13c)においてスライダ16の位置決めが行われる(ステップS107)。すなわち、ネジ締めステーション(作業ステーション13c)に設置された近接センサ23がスライダ16を検知し、クランプ部22がスライダ16を固定する。
【0112】
つづいて、ロボット制御部202aがロボット12に対して指示を行うとともに、作業装置制御部202cが作業装置14bに対して指示を行うことによって、ロボット12および作業装置14bに対してネジ締め作業を実行させる(ステップS108)。
【0113】
ネジ締め作業が完了すると、ロボット制御部202aは、スライダ16を取り出しステーション(作業ステーション13d)へ搬送するように指示する(ステップS109)。なお、ロボット12は、ロボット制御部202aからの指示に従い、ネジ締めステーション(作業ステーション13c)に設置されたスライダ16を把持して取り出しステーション(作業ステーション13d)まで搬送することとなる。
【0114】
つづいて、ロボット制御部202aは、ワーク(完成品)が取り出されたか否かを判定する(ステップS110)。かかる判定は、取り出し完了ボタンが押下された旨の通知を操作盤19から受け取ったか否かにより行われる。そして、ワーク(完成品)の取り出しが完了していない場合(ステップS110,No)、すなわち、取り出し完了ボタンが押下された旨の通知を操作盤19から受け取るまでは、ロボット12を待機させる。
【0115】
一方、ワーク(完成品)の取り出しが完了したと判定した場合(ステップS110,Yes)、すなわち、取り出し完了ボタンが押下された旨の通知を操作盤19から受け取った場合、ロボット制御部202aは、ワークセットステーション(作業ステーション13a)に対して既にスライダ16が設置済みか否かを判定する(ステップS111)。かかる判定は、ワークセットステーション(作業ステーション13a)に設置された近接センサ23がスライダ16を検知しているか否かによって行われる。
【0116】
そして、ワークセットステーション(作業ステーション13a)に対してスライダ16が設置済みではない場合(ステップS111,No)、ロボット制御部202aは、取り出しステーション(作業ステーション13d)まで搬送し終えたスライダ16をワークセットステーション(作業ステーション13a)へ返却して(ステップS112)、処理を終える。
【0117】
一方、ワークセットステーション(作業ステーション13a)に対して既にスライダ16が設置済みであると判定した場合(ステップS111,Yes)、ロボット制御部202aは、取り出しステーション(作業ステーション13d)まで搬送し終えたスライダ16をスライダ置き場17へ返却して(ステップS113)、処理を終える。
【0118】
上述してきたように、実施例1では、作業対象であるワークに対して所定の作業を行うロボット12と、ワークに対する所定の作業が行われる場所である複数の作業ステーション13a〜13dとを備え、ロボット12が、作業ステーション13a〜13d間でのワークの搬送を行うこととした。したがって、ワークを搬送するための搬送装置を別途設ける必要がないため、設備コストを抑えることができる。
【0119】
また、搬送装置を用いないことで設備を簡略化することができるため、電気配線や設備調整といった設備の立ち上げに要する工数を削減することができる。したがって、搬送装置を用いた場合と比較して、設備を短時間で立ち上げることが可能となる。
【0120】
また、実施例1では、ロボット12が物体を把持するロボットハンド124を備え、かかるロボットハンド124を用いてワークに対する所定の作業および搬送の双方を行うこととした。すなわち、ワークを搬送するための特別なエンドエフェクタを用いることなく、ワークの搬送を行うこととしたため、設備コストをさらに抑えることができる。
【実施例2】
【0121】
ところで、実施例1では、全ての作業ステーション13a〜13d間に対してレール15を設置することとした。すなわち、最上流の作業ステーション13aから最下流の作業ステーション13dまでのスライダ16の搬送をレール15を用いて行うこととしたが、これに限ったものではない。たとえば、レール15は、ワーク、スライダ16およびロボットハンド124の合計質量がロボット12の可搬質量を超える作業ステーション13から設置することとしてもよい。
【0122】
以下では、ワーク等の質量とロボット12の可搬質量とに応じてレール15の設置範囲を決定する場合の実施例2について図11を用いて説明する。図11は、実施例2に係る作業システム1’の配置を示す模式平面図である。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同様の部分については、既に説明した部分と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下では、ワーク、スライダ16およびロボットハンド124を「被搬送物」と呼ぶ。
【0123】
図11に示すように、ワークの質量は、作業ステーション13bにおいて部品Aが組み付けられることによって増加する。また、ワークの質量は、作業ステーション13cにおいて部品Bが組み付けられることによってさらに増加する。このように、被搬送物の質量は、上流の作業ステーション13から下流の作業ステーション13へ向かうほど増加する。
【0124】
ここで、被搬送物の質量が、作業ステーション13cにおいてロボット12の可搬質量を超えるとする。このような場合、ロボット12は、作業ステーション13cから作業ステーション13dへのスライダ16の搬送をレール15なしでは行うことができないが、作業ステーション13aから作業ステーション13cまではレール15なしでもスライダ16を搬送することが可能である。
【0125】
そこで、このような場合には、レール15’を作業ステーション13cから作業ステーション13d間にのみ設置することとしてもよい。なお、レール15’が設置されない作業ステーション13a,13bには、それぞれ作業台50a,50bが設置される。これら作業台50a,50bの高さは、ロボット12の動作範囲内であればよく、レール15’の高さに揃える必要はない。
【0126】
なお、ここでは、被搬送物の質量がロボット12の可搬質量を超える作業ステーション13からレール15’を設置することとしたが、これに限ったものではない。たとえば、安全性等を考慮して、ロボット12の可搬質量に基づく許容質量(たとえば、可搬質量の70%の質量)を超える作業ステーション13からレール15’を設置することとしてもよい。
【0127】
上述してきたように、実施例2では、レール15’が、複数の作業ステーション13a〜13dのうち、被搬送物の質量がロボット12の可搬質量に基づく許容質量を超える作業ステーション13およびかかる作業ステーション13よりも下流の作業ステーション13に沿って設けられることとした。したがって、設備コストをより一層削減することができる。
【0128】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施例に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【0129】
たとえば、上述してきた実施例1および実施例2では、単腕型のロボットを用いる場合について説明したが、ロボットのタイプは単腕型に限らず、双腕型であっても構わない。
【符号の説明】
【0130】
1,1’ 作業システム
11 セル
12 ロボット
121 ベース部
122 ロボットアーム
123 関節部
124 ロボットハンド
13a〜13d 作業ステーション
14a〜14c 作業装置
15,15’ レール
151a,151b レール部材
16 スライダ
161 台座
162a,162b 車輪
163 取手部
164 検知板
165 係合凹部
17 スライダ置き場
18 作業台
19 操作盤
20 制御装置
201 記憶部
201a 作業情報
202 制御部
202a ロボット制御部
202b クランプ制御部
202c 作業装置制御部
202d エリアセンサ制御部
21a〜21h エリアセンサ
22 クランプ部
221 ベース部
222 軸部
223 鉤部
224 係合凸部
23 近接センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業対象であるワークに対して所定の作業を行うロボットと、
前記ワークに対する所定の作業が行われる場所である複数の作業ステーションと
を備え、
前記ロボットは、
前記作業ステーション間での前記ワークの搬送を行うことを特徴とする作業システム。
【請求項2】
前記作業ステーションに沿って設けられたレールと、
前記ワークが載置され、前記レール上をスライドするスライダと
をさらに備え、
前記ロボットは、
前記スライダを前記レール上でスライドさせることによって前記ワークの前記作業ステーション間の搬送を行うことを特徴とする請求項1に記載の作業システム。
【請求項3】
前記レールは、
前記複数の作業ステーションのうち、前記ワークおよび前記スライダを含む被搬送物の質量が前記ロボットの可搬質量に基づく許容質量を超える前記作業ステーションおよび当該作業ステーションよりも下流の作業ステーションに沿って設けられることを特徴とする請求項2に記載の作業システム。
【請求項4】
前記スライダを前記作業ステーションにおける所定の位置で固定する固定手段
をさらに備えることを特徴とする請求項2または3に記載の作業システム。
【請求項5】
前記ロボットは、
最下流の前記作業ステーションまで搬送した前記スライダを最上流の前記作業ステーションへ戻すことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一つに記載の作業システム。
【請求項6】
前記ロボットは、
最上流の前記作業ステーションに対して既に前記スライダが設置されている場合には、最下流の前記作業ステーションまで搬送した前記スライダを特定の場所へ移動させることを特徴とする請求項5に記載の作業システム。
【請求項7】
前記ロボットは、
物体を把持するロボットハンドを備えており、当該ロボットハンドを用いて前記所定の作業および前記搬送の双方を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の作業システム。
【請求項8】
前記作業ステーションおよび前記ロボットを含む所定の作業区域と外部との境界部である第1の境界部において物体の侵入を検知する第1のセンサと、
前記第1の境界部よりも前記所定の作業区域の内側に設けられた第2の境界部において物体の侵入を検知する第2のセンサと、
前記ロボットの動作に応じて前記第1のセンサおよび前記第2のセンサのオンオフを制御するセンサ制御手段と
をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の作業システム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−176457(P2012−176457A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40613(P2011−40613)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】