説明

作業機械のエンジン始動制御装置

【課題】従来から知られている燃料性状検出技術では、性状検出の結果として不正燃料であることが判別された場合にも、エンジンの始動を確実に禁止することができなかった。
【解決手段】タンク重量測定器206からの検出信号に基づいて燃料タンクの重量が既定値以上に達していると判明したときには、燃料性状センサ204の出力を用いて燃料タンク内の燃料性状を識別する。その結果、不正燃料であると判定されたときには遠隔の作業指令所272に対して識別結果を送信する。作業指令所272から送信された遠隔操作信号に応答して、制御回路220から回動ロック機構216にロック指示信号が出力される。このことにより、エンジン始動キー208の回動操作が禁止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に搭載されているエンジンの始動を制御する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル,ホイールローダ,クローラクレーン等の建設機械(日本建設機械工業会による定義)あるいは物資運搬機械などの各種作業機械に搭載されているエンジンを始動するのに先立ち、燃料タンクに供給された燃料の性状を検出することにより、不正燃料であるか正規燃料であるかを判別する技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、給油された燃料の一部を収容するための測定室を燃料タンク内に設け、給油キャップセンサによって給油口の施蓋が検出された場合、または燃料残量センサによって燃料残量の増加が検出された場合、またはエンジンが始動された場合に、燃料性状検出センサを用いて燃料性状を測定することが記載されている。
また、ガソリンあるいは軽油の性状を検出するものではないが、特許文献2には、運転者が車両に乗り込んだことを各種センサで検知したとき、エンジンを始動させて車両が走りだすまでに液体還元剤の濃度を測定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−14741号公報
【特許文献2】特開2006−138275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来から知られているこの種の性状検出技術では、性状検出の結果として不正燃料であることが判別された場合にも、エンジンの始動を確実に禁止することができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る作業機械は、作業機械の燃料タンク内に取り付けられた燃料性状センサと、前記燃料タンクの燃料注入口に取り付けられている燃料キャップの開閉を検知するキャップ開閉センサと、前記燃料タンクの外面底部に取り付けられている振動吸収部材を介して前記燃料タンクの重量を測定する重量測定器と、前記キャップ開閉センサの出力をモニタすることにより前記燃料注入口が開かれたことを検知する開口検知手段と、前記開口検知手段により前記燃料注入口が開かれたことを検知したときには前記燃料タンクの重量が既定値以上に達しているか否かを前記重量測定器の出力により判定する判定手段と、前記判定手段により前記燃料タンクの重量が既定値以上に達していると判定された場合には前記燃料性状センサからの出力を用いて前記燃料タンク内の燃料性状を識別する性状識別手段と、前記性状識別手段による識別結果を遠隔の作業指令所に対して送信する送信手段と、前記作業指令所から送信された遠隔操作信号を受信する受信手段と、前記受信手段から得られた遠隔操作信号が前記作業機械のエンジン始動を許可する信号の場合はエンジン始動を許可し、エンジン始動を禁止する信号の場合はエンジン始動を禁止するエンジン制御手段とを備えている。さらに、前記性状識別手段により前記燃料タンク内の燃料が不正燃料であると識別されたときには、燃料が不正である旨を報知させるための信号を運転室内もしくは運転室外に設けた報知手段に送出する報知制御手段を備えることもできる。
前記作業指令所から送信される遠隔操作信号に応答して前記エンジン制御手段は、エンジン始動キーの操作を不能にするロック機構に対し前記エンジン始動キーの回動を禁止させる構成をとることもできる。あるいは、前記作業指令所から送信される遠隔操作信号に応答して前記エンジン制御手段は、エンジンへの燃料供給量を制御する燃料供給系に対し燃料供給停止を指示することもできる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、燃料性状の識別結果に応じた遠隔操作信号を外部から受信し、その遠隔操作信号に基づいてエンジンの始動を許可もしくは禁止する構成としてあるので、不正燃料の検出時にはエンジンの始動を確実に禁止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態による油圧ショベル全体を示す側面図である。
【図2】図1の油圧ショベルに搭載されているエンジン始動制御装置を示すブロック図である。
【図3】図2に示したタンク重量測定器と燃料タンクとの関係を摸式的に描いた説明図である。
【図4】図2に示したエンジン始動制御装置の制御回路により実行されるメインルーチンを示すフローチャートである。
【図5】図4に示した不正燃料処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】図2に示したエンジン始動制御装置の制御回路により実行される他のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図7】図2に示したエンジン始動制御装置の制御回路により実行される他のメインルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態による油圧ショベル全体を示す側面図である。本図に示した油圧ショベルは、垂直方向に回動するブーム,アーム,バケットを有する多関節型のフロント作業部140と、上部旋回体100と、下部走行体150とで構成される。上部旋回体100の左前部には運転室(キャブ)120が設けられている。
【0010】
運転室120内には、給油された燃料が不正である旨をオペレータに報知する(後に詳述する)スピーカ付き表示ユニット170が設けられている。運転室120の屋根には、遠隔の作業指令所(後に詳述する)と通信をするためのアンテナが設置されている。さらに、上部旋回体110からは、燃料タンクキャップ(以下、単にキャップという)110の装着基部(図示せず)を備えた給油筒112が突出している。給油筒112の下方には燃料タンクを設けてあるが、図1では描いていない(図3には燃料タンク310を示してある)。さらに、給油筒112の傍には、警告灯160を設けてある。この警告灯160は、給油された燃料が不正燃料であると識別されたとき、間欠的に点灯する(詳細は、後に説明する)。
【0011】
図2は、油圧ショベルに搭載されている各種制御装置のうち、エンジン始動制御装置200を示すブロック図である。本図において、202はキャップ開閉センサであり、キャップ110(図1参照)の内部に装着されている押しボタン式スイッチ(図示せず)のオン/オフによりキャップ110が給油筒112に装着されているか、あるいは、給油筒112から取り外されているかを検知することができる。キャップの開閉を検知するための押しボタン式スイッチは、たとえば特開2008−189035号公報に記載されているように公知であるので、詳細な説明は省略する。このキャップ開閉センサ202からは、制御回路220(後に詳述する)に対してキャップ開閉信号が出力される。
【0012】
204は燃料性状センサであり、給油筒112の下方にある燃料タンクの内側底面にネジ留め(図示せず)してある。燃料の性状としては、密度(=比重),動粘度,残留炭素,水分,硫黄分,バナジウム、ナトリウム,アスファルテン,オクタン価,セタン価、炭化水素塑性など種々のものが知られているが、本実施の形態では正規な軽油であるか、あるいは、不正な軽油であるかを検出するために、燃料性状センサ204として密度計を用いる。燃料性状センサ204に接続されているセンサ出力用リード線(図示せず)は、燃料タンク内の側面に沿って給油筒112の上部から外部に導出する。なお、燃料タンクの内側底面にネジ留めする手法に替えて、燃料タンクの内側底面もしくは底面付近の側面に貫通口を設け、その貫通口に燃料性状センサ204を取り付けることも可能である。この取り付け手法をとる場合には、燃料タンクの外側に露出している接続端子にセンサ出力用リード線を直接取り付けることができる。燃料性状センサ204からは、制御回路220に対して性状検知信号が出力される。
【0013】
206はタンク重量測定器であり、燃料タンク自体の重量および給油された燃料の重量を含むタンク全体の重量を検知して重量検知信号を出力する。このタンク重量測定器206と重量タンクとの位置関係は、図3に示してある。
【0014】
図3において、310は燃料タンクであり、その上部には給油筒112が設けられている。給油筒112の給油口にはキャップ110が取り付けられている。燃料タンク310内の丸印は、既述の燃料性状センサ204を表している。燃料タンク310の外側底面には平板形状の振動吸収板(例えば、ゴム板あるいはゲル状平板)320を張り付けてある。さらに振動吸収板320とタンク重量測定器206との間には、燃料タンク310の微動を吸収するために、複数のバネ330を取り付けてある。
【0015】
再び図2に戻り、各ブロックを説明していく。
208はエンジン始動キーであり、オペレータが手動で回動することにより、制御回路220に対してイグニッションスタート信号を送出する。但し、後に詳述する回動ロックが掛かっているときにはエンジン始動キー自体の回動がロックされてしまうので、イグニッションスタート信号が送出されることはない。
【0016】
210はエンジンユニットであり、制御回路220から出力される始動許可信号およびイグニッション信号の論理積(=アンドゲートANDの出力)が論理1となったときに、エンジンを始動させる。なお、図4および図5を参照して後に詳述する燃料性状識別の結果、不正燃料であることが識別された場合には、制御回路220から始動許可信号は送出されない。
【0017】
212は送信ユニットであり、燃料性状識別の結果(図4および図5を参照して後に詳述する)を表す性状識別を、アンテナ130から通信衛星250を介して管理センター270に送信する。214は受信ユニットであり、管理センター270にある遠隔作業指令所272からの遠隔操作信号を、通信衛星250を介して受信する。
【0018】
216は、エンジン始動キー208の回動をロックするための回動ロック機構である。この回動ロック機構216は、制御回路220からロック指示信号(図4および図5を参照して後に詳述する)が出力されたとき、エンジン始動キー208の回動をロックする。
【0019】
制御回路220は、キャップ開閉センサ202から出力されるキャップ開閉信号,燃料性状センサ204から出力される性状検知信号,タンク重量測定器206から出力される重量検知信号,イグニッション始動キー208から出力されるイグニッションスタート信号,受信ユニット212から出力される遠隔操作信号をそれぞれ受信する入力インタフェース(図示せず)を備えている。同様に、制御回路220は、エンジンユニット210に対する始動許可信号およびイグニッション信号,スピーカ付き表示ユニット170(図1参照)に対する表示制御信号および音声信号,警告灯160に対する点灯信号,送信ユニット212に対する性状識別信号,回動ロック機構216に対するロック指示信号をそれぞれ送出する出力インタフェース(図示せず)を備えている。さらに制御回路220は、図4および図5に示した制御手順を実行するためのCPU222およびメモリ224を備えている。
【0020】
図4は、制御回路220により実行されるメインルーチンを示すフローチャートである。図5は、図4に示した不正燃料処理ルーチンを示すフローチャートである。まずステップS1において、エンジンが始動されているか否かを判定する。本実施の形態では、エンジンが停止されているとき(S1:YESのとき)にのみ、ステップS2以降に制御が移る。
【0021】
ステップS2においては、キャップ開閉センサ202から出力されているキャップ開閉信号を制御回路220がモニタすることにより、キャップ110が開かれたこと(S2:YES)を判定する。このステップS2では、ひとたびキャップ110が開かれれば、その後にキャップ110が閉じられたとしても次のステップS3に制御が移る。換言すると、次のステップS3を実行するためには、キャップ110が開かれ続けていることは必要でない。キャップ110が開かれていないとき(S2:NO)には、ステップS1に制御が戻る。
【0022】
ステップS3では、タンク重量測定器206から出力される重量検知信号を制御回路220がモニタすることにより、予め設定してある規定重量以上に達しているか否かを判定する。その判定結果、予め設定してある規定重量以上に達していないとき(S3:NO)には、ステップS4において、燃料給油が行われるまで待機する。燃料給油が行われたか否かは、重量検知信号を制御回路220がモニタすることにより判定する。重量検知信号をモニタすることによりタンク重量の増加が検出されたときには燃料給油が行われたと判断し(S4:YES)、再びステップS3の判定処理を実行する。
【0023】
ステップS3において、タンク重量が予め設定してある規定重量以上に達していると判定されたときには、ステップS5を実行する。このステップS5では、燃料性状センサ204から出力されている性状検知信号をモニタすることにより、燃料の性状を測定する。既述の通り本実施の形態では、燃料性状センサ204として密度計を用いているので、測定された密度(=比重)が適正な範囲内に入っているか否かをステップS6で判定する。ステップS6において、燃料性状の測定結果が適正範囲内に含まれていると判定されたときには(S6:YES)、ステップS7に制御が移る。
【0024】
ステップS7では、制御回路220からエンジンユニット210に対して始動許可信号を出力する。このとき、回動ロック機構216に供給されているロック指示信号はディセーブル状態となる。
図2から明らかなように、始動許可信号が出力されていないときには、たとえ制御回路220からイグニッション信号が出力されたとしても、エンジンユニット210はエンジンを始動させない。換言すると、イグニッション信号と始動許可信号の論理積をとることにより、より安全なエンジン始動制御を実現している。なお、図2では説明の都合上、アンドゲートANDをエンジンユニット210の外側に描いてあるが、エンジンユニット210内に含ませてもよい。同様に、ANDゲートを制御回路220内に含ませてもよいことは勿論である。
【0025】
ステップS7では、燃料性状測定結果が適正範囲内にあることを送信ユニット220から送信してもよい。このことにより、遠隔地の管理センター270では、給油ごとの燃料性状を記録することができる。
【0026】
ステップS6において、燃料性状の測定結果が適正範囲内に含まれていないと判定されたとき(S6:NO)、すなわち給油された燃料が不正燃料であると判定されたときには、ステップS8のサブルーチンを実行する。ステップS8は、図5の処理を実行するための不正燃料処理ルーチンである。次に図5を参照しながら、この不正燃料処理ルーチンを説明する。
【0027】
ステップS11では、制御回路220から表示制御信号を出力することにより、運転室120内に載置してあるスピーカ付き表示ユニット170に燃料が不正である旨を表示する。この表示と同時に、制御回路220から音声信号を出力することにより、燃料が不正である旨の警告音をスピーカから発する。但し、運転室120内にあるロックレバー(図示せず)の操作が検知されていないとき、あるいは、他のスイッチ類・センサ類(図示せず)の出力がないときにはオペレータが乗り込んでいないことになるので、警告灯160(図1参照)を間欠的に点灯させる。なお、燃料が不正である旨の表示と警告灯160の間欠的点灯とを常に同時実行させることも可能である。
【0028】
ステップS12では、送信ユニット212およびアンテナ130を介して、遠隔地にある管理センター270へ性状識別結果を送信する。このステップS12では、性状識別結果として、燃料が不正である旨を送信する。この性状識別結果を受信した管理センター270では、センター内にある遠隔作業指令所272からエンジン始動を禁止するための遠隔操作信号を送信する。なお、遠隔作業指令所272は運行管理者による手動応答のほか、ホストコンピュータによる全自動応答としてもよい。
【0029】
ステップS13において、受信ユニット214は遠隔操作信号を受信するまで待機する。遠隔作業指令所272から遠隔操作信号を受信すると(S13:YES)、ステップS14において、遠隔操作信号の内容がエンジン始動禁止指示であるか否かを判定する。
【0030】
遠隔操作信号の内容がエンジン始動禁止指示であると判定されたとき(S14:YES)にはステップS15に制御が移り、制御回路220から回動ロック機構216に対してロック指示信号(ロック指示=イネーブル)が出力される。このことにより、エンジン始動キー208の回動がロックされる。
【0031】
他方、ステップS14において、遠隔操作信号の内容がエンジン始動禁止指示でないと判定された場合(S14:NO)には、ステップS16において、予め設定してあるエラー処理を行う。すなわちこの場合には、油圧ショベル本体側と管理センターとの間の通信に何らかの障害があるか、あるいは、その他の事情(例えば、燃料性状センサ204の測定結果を無視するに足りる事情)があることになるので、管理センターと連絡すべき旨のエラー表示を行う。
【0032】
−実施の形態による作用・効果−
本実施の形態によれば、以下のような作用・効果を奏することができる。
(1)作業機械の燃料タンク310内に取り付けられた燃料性状センサ204と、燃料タンク310の燃料注入口に取り付けられている燃料キャップ110の開閉を検知するキャップ開閉センサ202と、燃料タンク310の外面底部に取り付けられている振動吸収板320およびバネ330を介して燃料タンク310の重量を測定する重量測定器206と、キャップ開閉センサ202の出力をモニタすることにより燃料注入口が開かれたことを検知する制御回路220(ステップS2)と、制御回路220(ステップS2)により燃料注入口が開かれたことを検知したときには、燃料タンク310の重量が既定値以上に達しているか否かを重量測定器206の出力により判定する制御回路220(ステップS3)と、制御回路220(ステップS3)により燃料タンク310の重量が既定値以上に達していると判定されたときには燃料性状センサ204からの出力を用いて燃料タンク310内の燃料性状を識別する制御回路220(ステップS5)と、制御回路220(ステップS5)による識別結果を遠隔の作業指令所272に対して送信する送信ユニット212と、作業指令所272から送信された遠隔操作信号を受信する受信ユニット214と、受信ユニット214から得られた遠隔操作信号に応答して作業機械のエンジン始動を禁止する制御回路220(ステップS14,S15)とを備えているので、不正燃料検出時にはエンジンの始動を確実に禁止することができる。
【0033】
(2)制御回路220は、燃料タンク310内の燃料が不正燃料であると識別されたとき、燃料が不正である旨を報知させるための信号を運転室内に設けた表示ユニット170もしくは運転室外に設けた警告灯160に送出するので、オペレータのみならず作業現場にいる他の人にも不正燃料が供給されたことを知らせることができる。
【0034】
(3)制御回路220は、遠隔作業指令所272から送信される遠隔操作信号に応答して、エンジン始動キー208の回動を禁止するロック指示信号を送出するので、強制的にエンジン始動キーの操作自体を禁止することができる。
【0035】
−実施の形態における変形例−
上述した油圧ショベルについて、以下のように変形することができる。
(1)図2に示したエンジン始動制御装置では、エンジン始動キー208の回動操作をロックさせるためにロック指示信号を回動ロック機構216に供給する構成としてあるが、回動ロック機構216の使用に替えて、燃料の供給自体を停止させることも可能である。すなわち、制御回路220は、遠隔作業指令所272から送信される遠隔操作信号に応答して、エンジンへの燃料供給量を制御する燃料供給系(図示せず)に対し燃料供給停止を指示することができる。たとえば、フューエルイグニッション遮断システムに対して、遮断指示信号を供給することにより実現することができる。
【0036】
(2)図2に示したエンジン始動制御装置では、燃料性状センサ204として密度計を用いているが、密度計の替わりに動粘度計または水分計などを用いることもできる。さらに、複数種の燃料性状センサを燃料タンク内に設置し、複数種類の性状検知信号を制御回路220に取り込むことも可能である。この場合には、送信ユニット212から複数種類の性状識別信号を管理センター270に送信することも可能である。そして、管理センター内の遠隔作業所272では、予め設定した基準に基づいて複数種類の性状識別信号に対する判定処理を行うことができる。例えば、3種類ある性状識別信号のうち、ひとつの性状識別信号に異常が見られたとしても、エンジンの始動許可を与えるか否かを選択することができる。
【0037】
(3)図2に示したエンジン始動制御装置では、通信衛星250を介した通信を前提としているが、有線・無線に限らず、いかなる通信手法も取り得ることは勿論である。
【0038】
(4)図2に示したエンジン始動制御装置は油圧ショベルに搭載した事例であるが、ホイールローダ,クローラクレーン等の建設機械あるいは物資運搬機械など各種の作業機械に適用することができる。
【0039】
(5)図2に示した表示ユニット170として、いわゆるマルチモニタを用いることができる。
【0040】
(6)図3に示したタンク重量測定器206は、ゴム板あるいはゲル状平板などの振動吸収板320と、複数のバネ330の両方を介して燃料タンク310を支えているが、燃料タンク310の外面底部に取り付ける振動吸収部材として、振動吸収用バネおよび振動吸収板のいずれか一方を用いてもよい。
【0041】
(7)図4に示したメインルーチンに替えて、図6および図7に示すフローチャートを用いることもできる。図4との相違は、新たにステップS72,S73,S74,S75を設けた点にある。すなわち、ステップS72では、送信ユニット212およびアンテナ130を介して、遠隔地にある管理センター270へ性状識別結果を送信する。このステップS72では、性状識別結果として、燃料性状が適正である旨を送信する。この性状識別結果を受信した管理センター270では、センター内にある遠隔作業指令所272からエンジン始動を許可するための遠隔操作信号を送信する。なお、遠隔作業指令所272は運行管理者による手動応答のほか、ホストコンピュータによる全自動応答としてもよいことは、図4と同様である。
【0042】
ステップS73において、油圧ショベル側の受信ユニット214は遠隔操作信号を受信するまで待機する。遠隔作業指令所272から遠隔操作信号を受信すると(S73:YES)、ステップS74において、遠隔操作信号の内容がエンジン始動許可指示であるか否かを判定する。
【0043】
遠隔操作信号の内容がエンジン始動許可指示であると判定されたとき(S74:YES)にはステップS7に制御が移り、制御回路220からエンジンユニット210に対して始動許可信号が出力される。このとき、回動ロック機構216に供給されているロック指示信号はディセーブル状態となる。
【0044】
他方、ステップS74において、遠隔操作信号の内容がエンジン始動許可指示でないと判定された場合(S74:NO)には、ステップS75において、予め設定してあるエラー処理を行う。すなわちこの場合には、油圧ショベル本体側と管理センターとの間の通信に何らかの障害があるか、あるいは、その他の事情があると考えられるので、管理センター270と連絡すべき旨のエラー表示を行う。
【0045】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上述した実施の形態および変形例に限定されるものではない。
実施の形態と変形例の一つとを組み合わせること、もしくは、実施の形態と変形例の複数とを組み合わせることも可能である。
変形例同士をどのように組み合わせることも可能である。
さらに、本発明の技術的思想の範囲内で考えられる他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
100 上部旋回体
110 燃料タンクキャップ
112 給油筒
120 運転室
130 アンテナ
140 フロント作業部
150 下部走行体
160 警告灯
170 スピーカ付き表示ユニット
200 エンジン始動制御装置
202 キャップ開閉センサ
204 燃料性状センサ
206 タンク重量測定器
208 エンジン始動キー
210 エンジンユニット
212 送信ユニット
214 受信ユニット
216 回動ロック機構
220 制御回路
222 CPU
224 メモリ
250 通信衛星
270 管理センター
272 遠隔作業指令所
310 燃料タンク
320 振動吸収板
330 バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の燃料タンク内に取り付けられた燃料性状センサと、
前記燃料タンクの燃料注入口に取り付けられている燃料キャップの開閉を検知するキャップ開閉センサと、
前記燃料タンクの外面底部に取り付けられている振動吸収部材を介して前記燃料タンクの重量を測定する重量測定器と、
前記キャップ開閉センサの出力をモニタすることにより、前記燃料注入口が開かれたことを検知する開口検知手段と、
前記開口検知手段により前記燃料注入口が開かれたことを検知したときには、前記燃料タンクの重量が既定値以上に達しているか否かを前記重量測定器の出力により判定する判定手段と、
前記判定手段により前記燃料タンクの重量が既定値以上に達していると判定された場合には、前記燃料性状センサからの出力を用いて前記燃料タンク内の燃料性状を識別する性状識別手段と、
前記性状識別手段による識別結果を遠隔の作業指令所に対して送信する送信手段と、
前記作業指令所から送信された遠隔操作信号を受信する受信手段と、
前記受信手段から得られた遠隔操作信号が前記作業機械のエンジン始動を許可する信号の場合はエンジン始動を許可し、エンジン始動を禁止する信号の場合はエンジン始動を禁止するエンジン制御手段とを備えたことを特徴とする作業機械のエンジン始動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械のエンジン始動制御装置において、さらに加え、
前記性状識別手段により前記燃料タンク内の燃料が不正燃料であると識別されたときには、燃料が不正である旨を報知させるための信号を運転室内もしくは運転室外に設けた報知手段に送出する報知制御手段を備えたことを特徴とする作業機械のエンジン始動制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の作業機械のエンジン始動制御装置において、
前記作業指令所から送信される遠隔操作信号に応答して、前記エンジン制御手段は、エンジン始動キーの操作を不能にするロック機構に対し前記エンジン始動キーの回動を禁止させることを特徴とする作業機械のエンジン始動制御装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の作業機械のエンジン始動制御装置において、
前記作業指令所から送信される遠隔操作信号に応答して、前記エンジン制御手段は、エンジンへの燃料供給量を制御する燃料供給系に対し燃料供給停止を指示することを特徴とする作業機械のエンジン始動制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の作業機械のエンジン始動制御装置において、
前記燃料タンクの外面底部に取り付けられている振動吸収部材として、振動吸収用バネおよび振動吸収板の一方もしくは両方を用いることを特徴とする作業機械のエンジン始動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−106425(P2011−106425A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264936(P2009−264936)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】