説明

作業機械

【課題】簡単な構成及び制御で、ツールホルダに取り付けられる道具を、前記ツールホルダの径方向にミクロンオーダで高精度に位置補正することを可能にする。
【解決手段】スピンドル16と一体的に回転可能なツールホルダ20と、一端が前記ツールホルダ20に固着される一方、他端に刃工具22a、22bが取り付けられるリング形状を有する弾性ホルダ部24と、端部が前記弾性ホルダ部24の軸方向外方の突出するとともに、前記ツールホルダ20に対して相対的に回転可能な作動軸部材26と、前記作動軸部材26の回転動作を、前記弾性ホルダ部24の径方向の拡縮動作に変換させる変換機構28と、前記ツールホルダ20の外部に配置され、前記作動軸部材26に連結されて該作動軸部材26を前記ツールホルダ20に対し相対的に回転させるための支持機構72とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、スピンドルと一体的に回転可能なツールホルダに、道具が取り付けられる作業機械に関する。
【背景技術】
一般的に、ツールホルダに取り付けられた道具、例えば、加工工具を介してワークに加工処理を施す工作機械(作業機械)が種々使用されている。例えば、エンジンブロックを構成するシリンダのボーリング加工は、内筒径寸法をミクロンオーダで高精度に加工する必要がある。このため、通常、ボーリング加工は、荒ボーリング加工(荒加工)、中仕上げボーリング加工(中仕上げ加工)及び仕上げボーリング加工(仕上げ加工)の3工程の加工に分けて行われている。
この種のボーリング加工では、特に仕上げボーリング加工において、高精度な加工径を形成しなければならず、単刃による加工が行われている。しかしながら、量産設備による仕上げボーリング加工では、単一の刃先で加工を行うために前記刃先の磨耗が著しく、加工径が小さくなってしまう。従って、刃先磨耗による加工径の変化に応じて前記刃先位置を調整し、一定のボーリング加工径を維持する必要がある。
そこで、例えば、特許文献1に開示されている円筒内面の加工装置を用いることが考えられる。この加工装置は、中ぐり加工用の加工ヘッドの先端外周の互いに対向する位置に、荒加工用の刃具と仕上げ加工用の刃具とをそれぞれ設けるとともに、前記加工ヘッドの中心軸線に直交する方向で且つ、前記仕上げ加工用の刃具から荒加工用の刃具に向かう方向に圧力が付与されることで、同方向に移動変形しつつ前記各刃具を同方向に移動させる弾性ホルダ部を設けたことを特徴としている。そして、この特許文献1では、コンパクトで且つ剛性を有しており、刃具位置の移動(補正)を高精度に行うことができる。
【特許文献1】 特開2003−311517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこの種の加工装置において、簡単な構成及び制御で、ツールホルダに取り付けられる道具を、前記ツールホルダの径方向にミクロンオーダで高精度に位置補正することが可能な作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
本発明は、スピンドルと一体的に回転可能なツールホルダと、一端が前記ツールホルダに固着される一方、他端に道具が取り付けられる開放端部を形成するリング形状を有する弾性ホルダ部と、端部が前記弾性ホルダ部の軸方向外方の突出するとともに、前記ツールホルダに対して相対的に回転可能な作動軸部材と、前記作動軸部材の回転動作を、前記開放端部の径方向の拡縮動作に変換させる変換機構と、前記ツールホルダの外部に配置され、前記作動軸部材に連結されて該作動軸部材を前記ツールホルダに対し相対的に回転させるための支持機構とを備えている。
また、作業機械は、作動軸部材と支持機構とが連結されたことを検出する連結確認機構を備えることが好ましい。
さらに、変換機構は、弾性ホルダ部の内方に配置され、前記弾性ホルダ部の軸方向に進退することにより開放端部を径方向に拡縮自在なテーパ手段と、作動軸部材の回転動作を、前記テーパ手段の前記軸方向への進退動作に変換させるねじ手段とを備えることが好ましい。
さらにまた、テーパ手段は、弾性ホルダ部の内周面に形成される内周コンタクト面と、作動軸部材に外装されるとともに、前記弾性ホルダ部と一体に回転し且つ該弾性ホルダ部の軸方向に進退自在なテーパリング部材と、前記テーパリング部材の外周面に形成され、前記内周コンタクト面に摺接する外周コンタクト面とを有し、少なくとも前記外周コンタクト面は、テーパ面を構成することが好ましい。
また、ねじ手段は、ツールホルダに固定されるとともに、作動軸部材を周回して配置される固定ねじ部材と、前記作動軸部材の外周と前記固定ねじ部材及びテーパリング部材との間に介装されるとともに、前記作動軸部材と一体に回転し且つ該作動軸部材の軸方向に進退自在な可動ねじ部材とを備え、前記固定ねじ部材の内周面には、第1雌ねじが形成され、前記テーパリング部材の内周面には、前記第1雌ねじと異なるピッチに設定される第2雌ねじが形成され、前記可動ねじ部材の外周面には、前記第1雌めじに螺合する第1雄ねじと、前記第2雌ねじに螺合する第2雄ねじとが形成されることが好ましい。
さらに、支持機構は、作動軸部材の先端部に軸方向に形成されるスプライン穴又はスプライン軸に結合されるスプライン軸又はスプライン穴を有する支持軸部材と、前記支持軸部材を、前記作動軸部材の軸方向に進退自在で且つ回転不能に配置するハウジングと、前記ハウジング内に配設され、前記支持軸部材を前記作動軸部材に向かって押圧する弾性部材とを備えることが好ましい。
さらにまた、支持機構は、作動軸部材の先端部に径方向に形成される結合穴に挿入される支持軸部材と、前記支持軸部材を、前記作動軸部材の径方向に進退自在で且つ回転不能に配置するハウジングと、前記ハウジング内に配設され、前記支持軸部材を前記作動軸部材に向かって押圧する弾性部材とを備えることが好ましい。
また、支持軸部材は、クーラント用の中空穴を有することが好ましい。
さらに、支持機構は、作動軸部材の先端部に形成されるピニオン部に係合するラック部と、前記ラック部を固着し、前記作動軸部材の径方向に進退自在なラック軸部材と、前記ラック軸部材を前記作動軸部材に向かって押圧する弾性部材とを備えることが好ましい。
【発明の効果】
本発明に係る作業機械では、作動軸部材が支持機構に連結された状態で、前記作動軸部材は、ツールホルダに対して相対的に回転されると、変換機構は、前記作動軸部材の回転動作を、弾性ホルダ部の開放端部の径方向の拡縮動作に変換させる。このため、開放端部の取り付けられている道具は、ツールホルダの径方向に位置調整(補正)される。
従って、例えば、作動軸部材が支持機構に連結された状態で、マシニングセンタ主軸であるスピンドルの角度割り出し機能を介して、ツールホルダが所定の角度だけ回転されると、弾性ホルダ部に取り付けられている道具は、前記ツールホルダの径方向に高精度に補正移動することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る作業機械である工作機械10の斜視説明図であり、図2は、前記工作機械10の要部断面説明図である。
工作機械10は、本体部12を備え、この本体部12には、ハウジング14がX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に摺動可能に装着される。ハウジング14には、スピンドル(主軸)16がベアリング18を介して回転可能に設けられると、前記スピンドル16には、ツールホルダ20が着脱自在に取り付けられる。
図2に示すように、ツールホルダ20には、一端が前記ツールホルダ20に固着される一方、他端に道具、例えば、刃工具22a、22bが取り付けられる開放端部24aを形成するリング形状の弾性ホルダ部24と、端部が前記弾性ホルダ部24の軸方向外方の突出するとともに、前記ツールホルダ20に対して相対的に回転可能な作動軸部材26と、前記作動軸部材26の回転動作を、前記開放端部24aの径方向の拡縮動作に変換させる変換機構28とが装着される。
弾性ホルダ部24は、図2及び図3に示すように、ツールホルダ20の先端に固着される基台部30を設ける。基台部30には、リング体32が設けられるとともに、前記リング体32の開放端部24a側の端部には、刃工具22a、22bが交換自在に取り付けられるバンク部(変形頂点部)34a、34bと、前記バンク部34a、34bと直交する膨出部36a、36bとが形成される(図3参照)。
作動軸部材26は、軸部38を有し、この軸部38は、ツールホルダ20の軸心に形成された段付孔部40に嵌合する。段付孔部40の中間部には、軸部38に固定されるヘッド部42が配設されるとともに、前記段付孔部40の大径部には、ストッパ44が移動不能に配置される。作動軸部材26は、弾性ホルダ部24の軸方向外方の突出する端部46にスプライン穴48が形成される。
変換機構28は、弾性ホルダ部24の内方に配置され、前記弾性ホルダ部24の軸方向に進退することにより開放端部24aを径方向に拡縮自在なテーパ手段50と、作動軸部材26の回転動作を、前記テーパ手段50の前記軸方向への進退動作に変換させるねじ手段52とを備える。
テーパ手段50は、弾性ホルダ部24を構成するバンク部34a、34bの内周面に形成される内周コンタクト面54a、54bと、作動軸部材26に外装されるとともに、前記弾性ホルダ部24と一体に回転し且つ該弾性ホルダ部24の軸方向に進退自在なテーパリング部材56と、前記テーパリング部材56の外周面に形成され、前記内周コンタクト面54a、54bに摺接する外周コンタクト面58とを有する。
なお、内周コンタクト面54a、54b及び外周コンタクト面58は、少なくとも前記外周コンタクト面58がZ1軸方向(ツールホルダ20側)に向かうに従って径方向内方に傾斜しており、テーパリング部材56がZ1軸方向に移動する際、開放端部24aが楕円形状に弾性変形する。これに代えて、テーパリング部材56がZ2軸方向に移動する際、開放端部24aが楕円形状に弾性変形するように構成してもよい。
図3に示すように、テーパリング部材56は、膨出部36a、36bに設けられる位相ピン59a、59bを介して弾性ホルダ部24の軸方向に移動自在で且つ前記弾性ホルダ部24に回転不能に構成される。
ねじ手段52は、ツールホルダ20に固定されるとともに、作動軸部材26を周回して配置される固定ねじ部材60と、前記作動軸部材26の外周と前記固定ねじ部材60及びテーパリング部材56との間に介装されるとともに、前記作動軸部材26と一体に回転し且つ該作動軸部材26の軸方向に進退自在な可動ねじ部材62とを備える。作動軸部材26と可動ねじ部材62とは、平行キー溝64及び平行キー66を介して係合する。
固定ねじ部材60の内周面には、第1雌ねじ68aが形成され、テーパリング部材56の内周面には、前記第1雌ねじ68aと異なるピッチに設定される第2雌ねじ68bが形成される。可動ねじ部材62の外周面には、第1雌めじ68aに螺合する第1雄ねじ70aと、第2雌ねじ68bに螺合する第2雄ねじ70bとが形成される。なお、第1及び第2雌ねじ68a、68bと第1及び第2雄ねじ70a、70bは、右ねじに構成してもよく、また、左ねじに構成してもよい。
図1に示すように、ツールホルダ20の外部に設けられているテーブル71上には、作動軸部材26に連結されて前記作動軸部材26を前記ツールホルダ20に対し相対的に回転させるための支持機構72が配置される。
支持機構72は、図4に示すように、作動軸部材26の先端部に軸方向に形成されるスプライン穴48に結合されるスプライン軸74を有する支持軸部材76と、前記支持軸部材76を、前記作動軸部材26の軸方向に進退自在で且つ回転不能に配置するハウジング78と前記ハウジング78内に配設され、前記支持軸部材76を前記作動軸部材26に向かって押圧するスプリング(弾性部材)80とを備える。
支持軸部材76の外周面には、所定の幅寸法にわたって溝部82が形成される一方、ハウジング78には、前記溝部82に挿入されて前記支持軸部材76の回転及び軸方向の移動距離を規制するストッパピン84が設けられる。支持軸部材76は、通常、スプリングの弾性力を介して肩部86がハウジング78の内壁面88に当接している。
支持軸部材76の後端部には、作動軸部材26と支持機構72とが連結されたことを検出する連結確認機構90が設けられる。連結確認機構90は、支持軸部材76の後端部に設けられる大径コンタクト部92及び小径コンタクト部94と、前記大径コンタクト部92に係合することにより作動軸部材26と支持軸部材76とが確実に連結されたことを検出する一方、前記小径コンタクト部94に係合することにより前記作動軸部材26と前記支持軸部材76とが連結不良であることを検出するスイッチ96とを備える。
このように構成される第1の実施形態に係る工作機械10の動作について、以下に説明する。
先ず、図5に示すように、新しい刃工具22a、22bを使用してワーク(例えば、エンジンのシリンダブロック)の筒体98の穴部98aに加工を行う。その際、弾性ホルダ部24には、変換機構28による拡径操作が行われていない。
次いで、刃工具22a、22bの刃先が磨耗した際には、変換機構28を介して前記刃工具22a、22bを径方向外方に位置調整(補正)する。具体的には、ハウジング14の移動作用下にスピンドル16が支持機構72側に移動する。このため、ツールホルダ20に装着されている作動軸部材26は、支持機構72を構成する支持軸部材76と同軸上に配置された状態で、軸方向(Z2軸方向)に移動し、前記作動軸部材26のスプライン穴48に前記支持軸部材76のスプライン軸74が挿入される(図4参照)。
ツールホルダ20は、さらにZ2軸方向に移動されると、スプライン軸74がスプライン穴48の端面に当接し、支持軸部材76は、スプリング80に抗してZ2軸方向に移動する。そして、ツールホルダ20は、予め設定された位置まで移動した後、停止される。その際、図6に示すように、連結確認機構90を構成するスイッチ96は、支持軸部材76の後端部に設けられる大径コンタクト部92に係合することにより、作動軸部材26と支持軸部材76とが確実に連結されたことを検出(オン状態)する。
一方、図7に示すように、スプライン軸74がスプライン穴48に結合されていないと、ツールホルダ20が予め設定された位置で停止した状態で、スイッチ96は、支持軸部材76の後端部に設けられる小径コンタクト部94に係合する。従って、作動軸部材26と支持軸部材76とが連結不良であることが検出(オフ状態)される。このため、再度、上記の動作を行って、スプライン軸74とスプライン穴48とを確実に連結させる。
作動軸部材26と支持軸部材76とが確実に連結されたことが検出されると、スピンドル16は、工作機械10の割り出し機能を介して所定の角度だけ回転される。これにより、スピンドル16と一体にツールホルダ20が回転し、このツールホルダ20に固着される弾性ホルダ部24が回転する。
一方、作動軸部材26は、支持軸部材76に連結されて回転が規制されている。従って、作動軸部材26は、弾性ホルダ部24に対して相対的に回転する。以下、説明の簡素化のため、弾性ホルダ部24が停止し、作動軸部材26が前記弾性ホルダ部24に対して回転するものとする。
作動軸部材26は、ねじ手段52をねじ込む方向に一定角度回転すると、この作動軸部材26に平行キー溝64及び平行キー66を介して係合する可動ねじ部材62は、前記作動軸部材26と一体に回転する。ここで、可動ねじ部材62の外周面には、それぞれピッチの異なる第1雄ねじ70a及び第2雄ねじ70bが形成されるとともに、前記第1雄ねじ70a及び前記第2雄ねじ70bは、固定ねじ部材60の第1雌ねじ68a及びテーパリング部材56の第2雌ねじ68bに螺合している。
さらに、固定ねじ部材60は、ツールホルダ20に固定されているため、弾性ホルダ部24と一体に停止しており、回転しない。一方、テーパリング部材56は、弾性ホルダ部24に摺接するとともに、位相ピン59a、59bを介して互いに軸方向に移動自在に且つ回転方向に一体化されている。
このため、作動軸部材26が回転すると、可動ねじ部材62が回転し、第1雌ねじ68aと第2雌ねじ68b(第1雄ねじ70と第2雄ねじ70b)とのピッチ差によって、テーパリング部材56が軸方向内方(Z1軸方向)に摺動する。その際、テーパリング部材56の外周コンタクト面58と弾性ホルダ部24を構成するバンク部34a、34bの内周コンタクト面54a、54bとが摺接している。
これにより、テーパリング部材56が軸方向内方に移動すると、テーパ手段50を介して開放端部24aが楕円形状に弾性変形する。そして、開放端部24aの2つの変形頂点部であるバンク部34a、34bに取り付けられている刃工具22a、22bは、半径外方に移動して磨耗状態に応じた補正移動を行う。従って、図8及び図9に示すように、補正移動した刃工具22a、22bを使用して、筒体98の穴部98aに加工を行うことができる。
上記の動作を、より具体的に説明すると、可動ねじ部材62は、右ねじであり、第1雄ねじ70aのピッチが第2雄ねじ70bのピッチよりも大きく、例えば、ピッチ差が0.1mmであるとする。そして、可動ねじ部材62を時計回りに72度だけ回転させると、テーパリング部材56は、Z1軸方向に0.02mmだけ移動する。
さらに、テーパコンタクト部(内周コンタクト面54a、54b及び外周コンタクト面58)の軸方向対径方向のテーパ比が、10:1であると、テーパリング部材56がZ1軸方向に0.02mmだけ移動する際、開口端部24aのバンク部34a、34b、すなわち、刃工具22a、22bは、径方向外方に0.002mmだけ補正移動することになる。これにより、刃工具22a、22bは、ミクロンオーダの刃先調整が高精度に遂行されるという効果が得られる。
しかも、第1の実施形態では、弾性ホルダ部24の開放端部24aが楕円形状に弾性変形するとともに、刃工具22a、22bは、同じ質量でもって対向して配置されている。このため、弾性ホルダ部24は、この弾性ホルダ部24の重心位置を回転軸線上に維持した状態で、刃工具22a、22bがツールホルダ20の径方向に位置調整(補正)されている。これにより、ツールホルダ20は、バランスの移動がなく、筒体98に対して高精度な加工作業を効率的に遂行可能になる。
しかも、第1の実施形態では、2つの刃工具22a、22bを備えている。従って、径差を設定することにより一方の刃、例えば、刃工具22aを先行刃とするとともに、他方の刃、例えば、刃工具22bを仕上げ刃とすることができ、該最終の仕上げ刃の取り代を安定した最小取り代として高精度なボーリング加工が遂行可能になる。
なお、刃工具22aのみを使用する際には、バンク部34bにバランスダミーを取り付けることにより対応することができる。また、バンク部の数は、種々変更可能であり、例えば、3つのバンク部を設けるとともに、2つの刃工具を中仕上げ刃とする一方、1つの刃工具を仕上げ刃として使用することも可能である。
さらにまた、作動軸部材26にプライン穴48を設ける一方、支持軸部材76にスプライン軸74を設けているが、これとは逆に、前記作動軸部材26にスプライン軸を設けるとともに、前記支持軸部材76にスプライン穴を設けてもよい。
図10は、本発明の第2の実施形態に係る工作機械を構成する支持機構100の断面説明図である。なお、第1の実施形態に係る工作機械10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
支持機構100を構成する支持軸部材76は、プライン軸74を有するとともに、前記プライン軸74の先端には、面取り加工によりガイド部102が設けられる。プライン軸74には、軸心に沿ってクーラント用の中空穴104が形成される。
このように構成される第2の実施形態では、プライン軸74の先端にガイド部102が設けられている。このため、作動軸部材26のプライン穴48と支持軸部材76のスプライン軸74との位相角が多少ずれていても、ガイド部102の案内作用下に、前記作動軸部材26が位相角のずれを修正するように動作することができる。
しかも、支持軸部材76には、クーラント用の中空穴104が設けられている。このため、結合時にクーラントを流すことにより、結合部分の切削屑等を強制的に排除することが可能になる。
図11は、本発明の第3の実施形態に係る作業機械である工作機械120の斜視説明図であり、図12は、前記工作機械120の要部断面説明図である。
工作機械120を構成するツールホルダ20には、前記ツールホルダ20に対して相対的に回転可能な作動軸部材122が配設される。作動軸部材122の先端部には、径方向に互いに直交して貫通する結合穴124a、124bが形成される。
図11に示すように、ツールホルダ20の外部には、作動軸部材122に連結されて前記作動軸部材122を前記ツールホルダ20に対し相対的に回転させるための支持機構126が配置される。この支持機構126は、図12に示すように、作動軸部材122の先端部に径方向に形成される結合穴124a又は124bに挿入される結合ピン部128を有する支持軸部材130を備える。
図13に示すように、結合ピン部128は、ストレート部128aとテーパ部128bとを有するとともに、前記ストレート部128aの直径は、結合穴124a、124bの開口直径よりも小径に設定される。結合穴124a、124bには、ストレート部128aが挿入された状態で、隙間Sが形成される。支持軸部材130内には、クーラント用の中空穴104が形成される。
このように構成される第3の実施形態では、刃工具22a、22bの刃先位置補正を行う際には、基本的には、第1の実施形態と同様に行われる。概略的に説明すると、図12に示すように、作動軸部材122の結合穴124a(又は124b)と、支持機構126を構成する支持軸部材130の結合ピン128とが同軸上に配置された状態で、ハウジング14がX軸方向に沿って前記支持機構126側に移動する。
このため、図13に示すように、結合ピン128は、結合穴124a内に挿入されるとともに、連結確認機構90を介して作動軸部材122と支持軸部材130とが確実に連結されたか否かが検出される。そして、作動軸部材122と支持軸部材130とが確実に連結されたことを検出すると、スピンドル16が所定の角度だけ回転されて変換機構28が駆動され、刃工具22a、22bは、磨耗に伴う径方向の補正移動が行われる。
従って、第3の実施形態では、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。しかも、図13に示すように、結合ピン部128は、ストレート部128aとテーパ部128bとを有するとともに、前記ストレート部128aの直径は、結合穴124a、124bの開口直径よりも小径に設定されている。これにより、工作機械120の割り出し角度や結合位置の機械的誤差は、隙間S及びテーパ部128bによって吸収することができるという利点がある。
なお、作動軸部材122の先端部には、2つの結合穴124a、124bが形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、補正量と割り出し角度に基づいて、種々の穴数に設定することができるとともに、90度毎に設けなくてもよい。
図14は、本発明の第4の実施形態に係る作業機械である工作機械140の斜視説明図であり、図15は、前記工作機械140の要部断面説明図である。
工作機械140を構成するツールホルダ20には、前記ツールホルダ20に対して相対的に回転可能な作動軸部材142が配設される。作動軸部材142の先端部には、ピニオン部(サーキュラピニオン)144が形成される。
ツールホルダ20の外部には、作動軸部材142に連結されて前記作動軸部材142を前記ツールホルダ20に対し相対的に回転させるための支持機構146が配置される。支持機構146は、図14及び図15に示すように、作動軸部材142のピニオン部144に係合するラック部148が先端部に形成される支持軸部材150を備える。
このように構成される第4の実施形態では、刃工具22a、22bの刃先位置補正を行う際には、ハウジング14がX軸方向に沿って支持機構146側に移動することにより、作動軸部材142のピニオン部144と、前記支持機構146を構成するラック部148とが係合する(図16参照)。
そして、ピニオン部144とラック部148とが確実に係合したことが、連結確認機構90により検出されると、スピンドル16がY軸方向に所定の距離だけ移動される。従って、スピンドル16のY軸方向への移動距離を、ピニオン部144のサーキュラピッチ円により換算された量の回転角度量だけ、作動軸部材142が回転する。
これにより、作動軸部材142が所定の角度だけ回転されて変換機構28が駆動され、刃工具22a、22bは、磨耗に伴う径方向の補正移動が行われる。このため、第4の実施形態では、上記の第1〜第3の実施形態と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施形態に係る作業機械である工作機械の斜視説明図である。
【図2】 前記工作機械の断面説明図である。
【図3】 前記工作機械を構成する弾性ホルダ部の正面説明図である。
【図4】 前記工作機械を構成する支持機構の断面説明図である。
【図5】 新たな刃工具による加工の説明図である。
【図6】 前記支持機構の動作説明図である。
【図7】 前記支持機構の動作説明図である。
【図8】 補正された刃工具による加工の説明図である。
【図9】 刃工具が補正された前記弾性ホルダ部の正面説明図である。
【図10】 本発明の第2の実施形態に係る工作機械を構成する支持機構の断面説明図である。
【図11】 本発明の第3の実施形態に係る作業機械である工作機械の斜視説明図である。
【図12】 前記工作機械の要部断面説明図である。
【図13】 前記工作機械を構成する作動軸部材と支持軸部材との連結状態の説明図である。
【図14】 本発明の第4の実施形態に係る作業機械である工作機械の斜視説明図である。
【図15】 前記工作機械の要部断面説明図である。
【図16】 前記工作機械を構成する作動軸部材と支持軸部材との連結状態の説明図である。
【符号の説明】
10、120、140…工作機械 16…スピンドル
20…ツールホルダ 22a、22b…刃工具
24…弾性ホルダ部 24a…開放端部
26、122、142…作動軸部材 28…変換機構
34a、34b…バンク部 48…スプライン穴
50…テーパ手段 52…ねじ手段
54a、54b…内周コンタクト面 56…テーパリング部材
58…外周コンタクト面 60…固定ねじ部材
62…可動ねじ部材 68a、68b…雌ねじ
70a、70b…雄ねじ 72,100、126、146…支持機構
74…スプライン軸 76、130、150…支持軸部材
80…スプリング 90…連結確認機構
104…中空穴 124a、124b…結合穴
128…結合ピン部 144…ピニオン部
148…ラック部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンドルと一体的に回転可能なツールホルダと、
一端が前記ツールホルダに固着される一方、他端に道具が取り付けられる開放端部を形成するリング形状を有する弾性ホルダ部と、
端部が前記弾性ホルダ部の軸方向外方の突出するとともに、前記ツールホルダに対して相対的に回転可能な作動軸部材と、
前記作動軸部材の回転動作を、前記開放端部の径方向の拡縮動作に変換させる変換機構と、
前記ツールホルダの外部に配置され、前記作動軸部材に連結されて該作動軸部材を前記ツールホルダに対し相対的に回転させるための支持機構と、
を備えることを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1記載の作業機械において、前記作動軸部材と前記支持機構とが連結されたことを検出する連結確認機構を備えることを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1又は2記載の作業機械において、前記変換機構は、前記弾性ホルダ部の内方に配置され、前記弾性ホルダ部の軸方向に進退することにより前記開放端部を径方向に拡縮自在なテーパ手段と、
前記作動軸部材の回転動作を、前記テーパ手段の前記軸方向への進退動作に変換させるねじ手段と、
を備えることを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項3記載の作業機械において、前記テーパ手段は、前記弾性ホルダ部の内周面に形成される内周コンタクト面と、
前記作動軸部材に外装されるとともに、前記弾性ホルダ部と一体に回転し且つ該弾性ホルダ部の軸方向に進退自在なテーパリング部材と、
前記テーパリング部材の外周面に形成され、前記内周コンタクト面に摺接する外周コンタクト面と、
を有し、
少なくとも前記外周コンタクト面は、テーパ面を構成することを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項3又は4記載の作業機械において、前記ねじ手段は、前記ツールホルダに固定されるとともに、前記作動軸部材を周回して配置される固定ねじ部材と、
前記作動軸部材の外周と前記固定ねじ部材及び前記テーパリング部材との間に介装されるとともに、前記作動軸部材と一体に回転し且つ該作動軸部材の軸方向に進退自在な可動ねじ部材と、
を備え、
前記固定ねじ部材の内周面には、第1雌ねじが形成され、
前記テーパリング部材の内周面には、前記第1雌ねじと異なるピッチに設定される第2雌ねじが形成され、
前記可動ねじ部材の外周面には、前記第1雌めじに螺合する第1雄ねじと、
前記第2雌ねじに螺合する第2雄ねじと、
が形成されることを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項1記載の作業機械において、前記支持機構は、前記作動軸部材の先端部に軸方向に形成されるスプライン穴又はスプライン軸に結合されるスプライン軸又はスプライン穴を有する支持軸部材と、
前記支持軸部材を、前記作動軸部材の軸方向に進退自在で且つ回転不能に配置するハウジングと、
前記ハウジング内に配設され、前記支持軸部材を前記作動軸部材に向かって押圧する弾性部材と、
を備えることを特徴とする作業機械。
【請求項7】
請求項1記載の作業機械において、前記支持機構は、前記作動軸部材の先端部に径方向に形成される結合穴に挿入される支持軸部材と、
前記支持軸部材を、前記作動軸部材の径方向に進退自在で且つ回転不能に配置するハウジングと、
前記ハウジング内に配設され、前記支持軸部材を前記作動軸部材に向かって押圧する弾性部材と、
を備えることを特徴とする作業機械。
【請求項8】
請求項6又は7記載の作業機械において、前記支持軸部材は、クーラント用の中空穴を有することを特徴とする作業機械。
【請求項9】
請求項1記載の作業機械において、前記支持機構は、前記作動軸部材の先端部に形成されるピニオン部に係合するラック部と、
前記ラック部を固着し、前記作動軸部材の径方向に進退自在なラック軸部材と、
前記ラック軸部材を前記作動軸部材に向かって押圧する弾性部材と、
を備えることを特徴とする作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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