作業車両の原動機制御装置
【課題】エンジン回転速度を制限しつつ十分な走行駆動力を得る。
【解決手段】アクセルペダル12aの操作量に応じて原動機1の回転速度を制御する回転速度制御手段1a,10と、原動機1の回転をトルクコンバータ2およびトランスミッション3を介して車輪6に伝達する走行駆動装置と、トルクコンバータ2の入力軸と出力軸の速度比eを検出する速度比検出手段14,15と、速度比検出手段14,15により検出された速度比eに応じて原動機1の最高回転速度を制限する速度制限手段1a,10とを備え、速度制限手段は、検出された速度比eが原動機1の回転速度の加速領域e≧e1にあるときに、最高回転速度を非加速領域(e<e1)の値より低く制限する。
【解決手段】アクセルペダル12aの操作量に応じて原動機1の回転速度を制御する回転速度制御手段1a,10と、原動機1の回転をトルクコンバータ2およびトランスミッション3を介して車輪6に伝達する走行駆動装置と、トルクコンバータ2の入力軸と出力軸の速度比eを検出する速度比検出手段14,15と、速度比検出手段14,15により検出された速度比eに応じて原動機1の最高回転速度を制限する速度制限手段1a,10とを備え、速度制限手段は、検出された速度比eが原動機1の回転速度の加速領域e≧e1にあるときに、最高回転速度を非加速領域(e<e1)の値より低く制限する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールローダ等の作業車両の原動機制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの回転をトルクコンバータを介してトランスミッションに入力するようにしたホイールローダ等の作業車両において、エンジン回転速度を制限するようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1記載の装置では、最高速度段を例えば2速に設定しているときに、この2速に対応した上限車速を超えないように車速の増加に伴いエンジン回転速度を制限する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−107651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の装置のように車速に応じてエンジン回転速度を制限したのでは、十分な走行駆動力が得られず、走行性や作業性が悪化するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による作業車両の原動機制御装置は、アクセルペダルの操作量に応じて原動機の回転速度を制御する回転速度制御手段と、原動機の回転をトルクコンバータ(トルコン)およびトランスミッションを介して車輪に伝達する走行駆動装置と、トルクコンバータの入力軸と出力軸の速度比を検出する速度比検出手段と、速度比検出手段により検出された速度比に応じて原動機の最高回転速度を制限する速度制限手段とを備え、速度制限手段は、検出された速度比が原動機の回転速度の加速領域にあるときに、最高回転速度を非加速領域の値より低く制限することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、トルコン速度比が原動機回転速度の加速領域にあるときに、原動機最高回転速度を非加速領域の値より低くするようにしたので、エンジン回転速度を制限しつつ十分な走行駆動力が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施の形態に係るホイールローダの側面図。
【図2】本発明の実施の形態に係る原動機制御装置の概略構成を示す図。
【図3】(a)はトルコン速度比基準制御による自動変速のタイミングを示す図であり、(b)は車速基準制御による自動変速のタイミングを示す図。
【図4】ペダル操作量と目標エンジン回転速度との関係を示す図。
【図5】第1の実施の形態に係る原動機制御装置による速度比とエンジン最高回転速度との関係を示す図。
【図6】第1の実施の形態に係る原動機制御装置によるペダル操作量と目標エンジン回転速度との関係を示す図。
【図7】(a)は第1の実施の形態に係る原動機制御装置によるトルク特性を示す図であり、(b)はその比較例を示す図。
【図8】第1の実施の形態に係る原動機制御のコントローラにおける処理の一例を示すフローチャート。
【図9】速度制限オフ時の走行駆動力特性を示す図。
【図10】速度制限オン時の走行駆動力特性の一例を示す図。
【図11】(a)は第1の実施の形態に係るの原動機制御装置の動作特性の一例を示す図であり、(b)はその比較例を示す図。
【図12】Vサイクルによる積み込み作業の一例を示す図。
【図13】(a)は掘削動作を示す図であり、(b)はダンプへの積み込み動作を示す図。
【図14】図5の変形例を示す図。
【図15】第2の実施の形態の比較例としての3速度段および4速度段の車速と走行駆動力の関係を示す図。
【図16】第2の実施の形態に係る原動機制御装置による速度比とエンジン最高回転速度との関係を示す図。
【図17】第2の実施の形態に係る原動機制御装置による車速と走行駆動力の関係を示す図。
【図18】第2の実施の形態に係る原動機制御装置によるトルク特性を示す図。
【図19】第2の実施の形態に係る原動機制御装置によるペダル操作量と目標エンジン回転速度との関係を示す図。
【図20】第2の実施の形態に係る原動機制御のコントローラにおける処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
−第1の実施の形態−
以下、図1〜図14を参照して本発明の第1の実施の形態に係る作業車両の原動機制御装置について説明する。
図1は、本実施の形態に係る原動機制御装置が適用される作業車両の一例であるホイールローダの側面図である。ホイールローダ100は、アーム111,バケット112,タイヤ113等を有する前部車体110と、運転室121,エンジン室122,タイヤ123等を有する後部車体120とで構成される。アーム111はアームシリンダ114の駆動により上下方向に回動(俯仰動)し、バケット112はバケットシリンダ115の駆動により上下方向に回動(ダンプまたはクラウド)する。前部車体110と後部車体120はセンタピン101により互いに回動自在に連結され、ステアリングシリンダ(不図示)の伸縮により後部車体120に対し前部車体110が左右に屈折する。
【0009】
図2は、本実施の形態に係る原動機制御装置の概略構成を示す図である。エンジン1の出力軸にはトルクコンバータ2(以下、トルコン)の入力軸が連結され、トルコン2の出力軸は1速〜4速に変速可能なトランスミッション3に連結されている。トルコン2は周知のインペラ,タービン,ステータからなる流体クラッチであり、エンジン1の回転はトルコン2を介してトランスミッション3に伝達される。トランスミッション3は、その速度段を変速する液圧クラッチを有し、トルコン2の出力軸の回転はトランスミッション3で変速される。変速後の回転は、プロペラシャフト4,アクスル5を介してタイヤ6(図1の113,123)に伝達され、車両が走行する。
【0010】
なお、図示は省略するが、ホイールローダにはエンジン1よって駆動される作業用油圧ポンプが設けられ、油圧ポンプからの圧油がアームシリンダ114やバケットシリンダ115等のアクチュエータに供給されて、作業が行われる。
【0011】
コントローラ10は、CPU,ROM,RAM,その他の周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成される。コントローラ10には、アクセルペダル12aの操作量を検出するアクセル操作量検出器12と、ブレーキペダル13aの操作量を検出するブレーキ操作量検出器13と、トルコン2の入力軸の回転速度Niを検出する回転速度検出器14と、トルコン2の出力軸の回転速度Ntを検出する回転速度検出器15と、トランスミッション3の出力軸の回転速度、つまり車速vを検出する車速検出器16と、マニュアル変速モードと自動変速モードを選択する変速モード選択スイッチ7と、1速〜4速の間で速度段の上限を指令するシフトスイッチ8と、車両の前後進を指令する前後進切換スイッチ9と、エンジン回転速度の制限/非制限を選択する制限選択スイッチ18とが接続されている。
【0012】
トルコン2は入力トルクに対し出力トルクを増大させる機能、つまりトルク比を1以上とする機能を有する。トルク比は、トルコン2の入力軸と出力軸の回転速度の比であるトルコン速度比e(出力回転速度Nt/入力回転速度Ni)の増加に伴い小さくなる。例えばエンジン回転速度が一定状態で走行中に走行負荷が大きくなると、トルコン2の出力回転速度Nt、つまり車速が減少し、トルコン速度比eが小さくなる。このとき、トルク比は増加するため、より大きな駆動力(牽引力)で車両走行が可能となる。すなわち車速が遅いと駆動力は大きく(低速高トルク)、車速が速いと駆動力は小さくなる(高速低トルク)。
【0013】
トランスミッション3は、1速〜4速の各速度段に対応したソレノイド弁を有する自動変速機である。これらソレノイド弁は、コントローラ10からトランスミッション制御部11へ出力される制御信号によって駆動され、変速される。
【0014】
図3は、トランスミッション3による自動変速のタイミングを示す図である。自動変速制御には、図3(a)に示すようにトルコン速度比eが所定値に達すると変速するトルコン速度比基準制御と、図3(b)に示すように車速vが所定値に達すると変速する車速基準制御の2つの方式がある。本実施の形態では、トルコン速度比基準制御によりトランスミッション3の速度段を制御する。
【0015】
図3(a)に示すトルコン速度比基準制御では、走行負荷が小さくなりトルコン速度比eが増加して、トルコン速度比eが所定値eu以上になると、速度段は1段シフトアップする。反対に、走行負荷が大きくなりトルコン速度比eが低下して、トルコン速度比eが所定値ed以下になると、速度段は1段シフトダウンする。これによりトランスミッション3の速度段がトルコン速度比eに応じて1速〜4速の間で自動的に変更される。この際、シフトスイッチ8により選択された速度段を上限として自動変速される。例えばシフトスイッチ8により2速が選択されたときは速度段は1速または2速となり、1速が選択されたときは速度段は1速に固定される。
【0016】
なお、トルコン速度比基準制御ではなく車速基準制御によりトランスミッション3の速度段を制御してもよい。この場合、図3(b)に示すように、車速vが増加して所定値vS1,vS2,vS3に達すると、速度段が1段シフトアップし、車速vが減少して所定値vS4,vS5,vS6に達すると、速度段が1段シフトダウンする。
【0017】
コントローラ10は、アクセルペダル12aの操作量に応じた目標エンジン回転速度Naにエンジン回転速度を制御する。図4は、ペダル操作量と目標エンジン回転速度Naの関係を示す図である。図中、実線はエンジン回転速度の非制限、つまり速度制限オフの特性を、点線はエンジン回転速度の制限、つまり速度制限オンの特性をそれぞれ示す。目標エンジン回転速度Naは、エンジン回転速度の上限値Nmaxと下限値Nminの間で変更可能である。
【0018】
図4に示すようにアクセルペダル12aの非操作時には、目標エンジン回転速度Naは下限値Nminであり、ペダル操作量の増加に伴い目標エンジン回転速度Naは増加する。速度制限オフ状態では、ペダル最大踏み込み時の目標エンジン回転速度Naは上限値Nmaxとなる。これに対し、速度制限オン状態では、目標エンジン回転速度Naの最大値、すなわちエンジン最高回転速度Namaxが制限され、ペダル最大踏み込み時の目標エンジン回転速度Naは所定値Ns(<Nmax)となる。コントローラ10はこの目標エンジン回転速度Naに対応した制御信号をエンジン制御部1aに出力し、エンジン回転速度を目標エンジン回転速度Naに制御する。本実施の形態では、速度制限オン時のエンジン最高回転速度Ns、換言すれば目標エンジン回転速度Naの上限値NmaxとNsとの差である回転速度制限量ΔNを、以下のようにトルコン速度比eに応じた値に設定する。
【0019】
図5は、速度制限オン時のトルコン速度比eとエンジン最高回転速度Namaxとの関係を示す図である。速度比eが所定値e1未満の低速度比域ではエンジン最高回転速度は所定値Ns1に、速度比eが所定値e1以上かつ所定値e2未満の中速度比域ではエンジン最高回転速度は所定値Ns12に、速度比eが所定値e2以上の高速度比域ではエンジン最高回転速度は所定値Ns2にそれぞれ設定される。ここで、低速度比域は主に発進直後または掘削作業時における速度比域、中速度比域は主に加速状態における速度比域、高速度比域は主に定常走行状態における速度比域であり、e1,e2は例えば0.25,0.75に設定される。なお、所定値e1,e2と図3(a)の所定値ed,euとの間には、例えばe1<ed,e2<euの関係がある。
【0020】
図5において、エンジン最高回転速度の上限値Nmaxと各制限値Ns1,Ns12,Ns2との間には、Nmax>Ns1>Ns2>Ns12の関係があり、中速度比域で回転速度制限量ΔNが最大となる。なお、エンジン最高回転速度を制限すると、その分、車両の最大駆動力と最高車速が低下するが、本実施の形態では、これらの低下が実用上問題とならないような値に各制限値Ns1,Ns12,Ns2が設定されている。例えばエンジン回転速度の上限値Nmax(100%)に対し、Ns1は90%、Ns12は75%、Ns2は85%にそれぞれ設定されている。この場合のペダル操作量と目標エンジン回転速度Naとの関係は、図6に示すようになる。
【0021】
図7は、アクセルペダル12aを最大に踏み込んだときのエンジン回転速度とトルクの関係を示すトルク線図である。なお、図7(a)はトルコン速度比eに応じてエンジン最高回転速度を制限した場合のトルク線図であり、図7(b)はトルコン速度比eに拘わらずエンジン最高回転速度を所定量ΔNだけ一律に制限した場合のトルク線図である。図中、特性f0はエンジン最高回転速度を制限しない場合のエンジン出力トルク特性であり、特性f10〜f13はそれぞれエンジン最高回転回転速度を制限した場合のエンジン出力トルク特性である。
【0022】
トルコン入力トルクはトルコン入力軸の回転速度Niの2乗に比例して増加し、トルコン速度比eが大きいほどトルコン入力トルクは小さくなる。エンジン出力トルク特性とトルコン入力トルク特性との交点はマッチング点であり、車両走行時のエンジン出力トルクおよびトルコン入力トルクはこのマッチング点の値となる。図7(b)において、エンジン回転速度を所定量ΔNだけ制限すると、マッチング点が図の左側にずれ、エンジン回転速度を制限しない場合よりもトルコン入力トルクが低下する。トルコン入力トルク×トルコン入力軸の回転速度は、トルコン2の入力動力であり、エンジン出力に相当するので、エンジン最高回転速度を制限することで、エンジン出力が低減し、燃費を向上できる。
【0023】
しかし、図7(b)のようにエンジン最高回転速度を一律に制限したのでは、トルコン入力トルクが全体的に低下し、走行に使用できる動力(馬力)も低下する。このため、作業時の走行駆動力が不足し、実用上問題がある。これに対し、本実施の形態では、トルコン速度比eに応じてエンジン回転速度を制限するため、図7(a)に示すように、トルコン速度比eが所定値e1未満の範囲で走行駆動力の低下は小さく、トルコン速度比eが所定値e1以上かつ所定値e2未満の範囲で走行駆動力の低下が大きくなる。これにより燃費を向上しつつ、作業時に十分な掘削力を得ることができる。
【0024】
図8は、コントローラ10のCPUで実行される処理の一例、とくにエンジン回転速度制御に係る処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えばエンジンキースイッチのオンにより開始される。ステップS1では、図2の各種センサ12〜16およびスイッチ7〜9,18からの信号を読み込む。ステップS2では、予め記憶された図6のエンジン最高回転速度非制限の特性(実線)に基づき、アクセル操作量検出器12により検出されたペダル操作量に対する目標エンジン回転速度Naを演算する。
【0025】
ステップS3では、制限選択スイッチ18によりエンジン回転速度制限が選択されている否か、すなわち速度制限オンが選択されているか否かを判定する。ステップS3が肯定されるとステップS4に進み、否定されるとステップS13に進む。ステップS4では、トランスミッション3の速度段が2速以下であるか否かを判定する。ステップS4が肯定されるとステップS5に進み、否定されるとステップS13に進む。ステップS5では、回転速度検出器14,15からの信号によりトルコン速度比eを演算し、トルコン速度比eが低速度域(e<e1)、中速度域(e1≦e<e2)、高速度域(e≧e2)のいずれであるかを判定する。
【0026】
ステップS5で低速度域と判定されるとステップS6に進み、ステップS2で演算した目標エンジン回転速度Naが予め定めた図5の制限値Ns1以上であるか否かを判定する。ステップS6が肯定されるとステップS7に進み、否定されるとステップS13に進む。ステップS7では、目標エンジン回転速度NaとしてNs1を設定し、ステップS13に進む。ステップS13では、エンジン制御部1aに制御信号を出力し、エンジン回転速度を目標エンジン回転速度Naに制御する。
【0027】
ステップS5で高速度域と判定されるとステップS11に進み、ステップS2で演算した目標エンジン回転速度Naが予め定めた図5の制限値Ns2以上であるか否かを判定する。ステップS11が肯定されるとステップS12に進み、否定されるとステップS13に進む。ステップS12では、目標エンジン回転速度NaとしてNs2を設定し、ステップS13に進む。
【0028】
ステップS5で中速度域と判定されるとステップS8に進み、ステップS2で演算した目標エンジン回転速度Naが予め定めた図5の制限値Ns12以上であるか否かを判定する。ステップS8が肯定されるとステップS9に進み、否定されるとステップS13に進む。ステップS9では、タイマをカウントし、タイマのカウント時間tが予め定めた所定時間ta以上となったか否かを判定する。所定時間taは、回転速度制限量ΔNの増加によりオペレータが車速の減少を感じることがないような時間(例えば1.5秒程度)に設定される。
【0029】
ステップS9が肯定されるとステップS12に進み、否定されるとステップS10に進む。なお、タイマは、ステップS3が否定されたとき、ステップS4が否定されたとき、ステップS5で速度比eが中速度比域以外と判定されたとき、およびステップS9が肯定されたときにそれぞれリセットされる。ステップS10では、目標エンジン回転速度NaとしてNs12を設定し、ステップS13に進む。
【0030】
第1の実施の形態の動作をまとめると次のようになる。制限選択スイッチ18により速度制限オフが選択されたとき、および速度制限オンが選択されても速度段が3速以上であるときは、エンジン1の最高回転速度は制限されず、ペダル最大踏み込み時のエンジン回転速度は上限値Nmaxに制御される(ステップS3→ステップS13、ステップS4→ステップS13)。この場合の車速vと走行駆動力Fの関係は図9に示すようになる。図中、fa〜fdはそれぞれ1速度段〜4速度段の特性であり、各速度段とも車速vの増加に伴い駆動力Fが減少する。特性faとfb,fbとfc,fcとfdの交点はそれぞれ変速ポイントpa〜pcであり、この変速ポイントpa〜pcにおける速度比はedまたはeuとなる。
【0031】
一方、制限選択スイッチ18により速度制限オンが選択されると、速度比eに応じてエンジン最高回転速度が制限され、ペダル最大踏み込み時のエンジン回転速度は所定値Ns1,Ns12,Ns2のいずれかとなる(ステップS7、ステップS10、ステップS12)。この場合の2速度段における車速vと走行駆動力Fとの関係は図10に示すようになる。図中のf20は、速度制限オフ時の特性(図9の特性fbに相当)であり、特性f21〜f23は、それぞれ速度制限オン時の低速度比域、中速度比域、高速度比域における特性である。
【0032】
図10において、速度制限オン時の最高車速v2は速度制限オフ時の最高車速v2’より低く、速度制限オン時の最大駆動力F2は速度制限オフ時の最大駆動力F2’よりも小さい。また、同一車速で比較すると、速度制限オン時の駆動力は速度制限オフ時の駆動力よりも小さく、とくに中速度比域の駆動力(特性f22)は、低速度比域および高速度比域の駆動力(特性f21,f23)よりも大きく減少している。これにより、速度制限オン時に最大駆動力と最高車速をそれほど低下させることなく、燃費を大幅に向上することができる。
【0033】
速度制限オン時に速度比eが中速度域であれば、所定時間ta後に回転速度制限量ΔNが減少し(ステップS9→ステップS12)、駆動力の特性f22は図の矢印に示すように右側にシフトする。このため、例えば駆動力Faで登板走行をしているとき、所定時間ta後に車速がvaからvbに増加するので、オペレータは速度制限オン時の車速の大幅な低下をそれほど感じることがなく、走行性能が実用上低下することを防ぐことができる。
【0034】
図11(a)は、平地走行における発進加速時の目標エンジン回転速度Naと実エンジン回転速度とトルコン速度比eと車速vの時間変化を示す図である。図中、実線はそれぞれ速度制限オフ時の特性であり、点線はそれぞれ速度制限オン時の特性である。なお、図11(b)は、エンジン最高回転速度を一律に制限する場合の特性であり、本実施の形態の比較例である。
【0035】
図11(a)に示すように、速度制限オフ状態において、時点t0でアクセルペダル12aを最大に踏み込むと、目標エンジン回転速度が上限値Nmaxまで急上昇し、実エンジン回転速度はこれに遅れて追従する。これにより車速が最高車速v2’まで上昇し、車速の上昇に伴いトルコン速度比eも上昇する。一方、速度制限オン状態では、時点t1〜t2の間でトルコン速度比eが中速度比域(e1≦e<e2)となり、この範囲では目標エンジン回転速度がNs12に制限される。このため、実エンジン回転速度の上昇の程度が緩やかとなり、燃費を向上できる。この場合、最高車速v2となるまでに要する時間はΔtaである。
【0036】
これに対し、図11(b)では、実エンジン回転速度が急激に上昇するため、燃費向上の効果は小さい。この場合、最高車速v2となるまでに要する時間はΔtb(<Δta)であり、図11(b)の方が早く最高車速となるが、ΔtbとΔtaの差は小さく(例えば1秒以下)、実用上問題ない。
【0037】
ホイールローダの掘削作業について説明する。図12は、山積みされた土砂130等に車両100を突っ込んでバケット内に取り込んだ後、車両100を後進して方向転換し、ダンプ140に向けて前進してバケット内の土砂をダンプ140に積み込む、いわゆるVサイクルによる積み込み作業の様子を示している。この場合、図13(a)に示す掘削時には大きな走行駆動力Fが必要となるため、トランスミッション3を1速度段として、アクセルペダル12aをフルに踏み込む。
【0038】
図13(b)に示すダンプ140への積み込み作業時には、2速状態でアクセルペダル12aをフルに踏み込みながらバケット122を上昇させつつ、ダンプ140に向けて車両100を前進させ、土砂130を排出する。2速でのダンプ140への積み込み時には、エンジン最高回転速度を大きく制限したことにより作業のサイクルタイムが長くなるが、燃料消費量を低減できるため、結果的には燃料1Lを消費した場合の作業量(作業量燃費)は増加する。
【0039】
本実施の形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)制限選択スイッチ18により速度制限オンが選択されると、トルコン速度比eがe1≦e<e2の中速度比域で、トルコン速度比eがe<e1の低速度比域およびe≧e2の高速度比域よりもエンジン最高回転速度の制限量ΔNを大きくした。これにより最大駆動力および最高車速をそれほど低下させることなく、燃費を大幅に向上することができ、走行性の悪化と作業性の悪化を防ぐことができる。
(2)トルコン速度比eが中速度比域でエンジン最高回転速度を所定値Ns12に制限した後、所定時間taが経過すると、回転速度制限量ΔNを小さくして、エンジン最高回転速度が所定値Ns2となるようにしたので、登板走行等においてオペレータが車速の大幅な低下による違和感を感じることを防止できる。
(3)速度段が1速または2速のときに、エンジン最高回転速度を制限するようにしたので、速度段が3速または4速の通常走行時には、高速走行を支障なく行うことができる。
【0040】
なお、上記第1の実施の形態では、速度比eが低速度比域、中速度比域、高速度比域の全範囲で、エンジン最高回転速度をそれぞれ所定値Ns1,Ns12,Ns2に制限するようにしたが、速度比eが中速度比域、高速度比域のときのみ、あるいは速度比eが中速度比域のときのみに、エンジン最高回転速度を制限するようにしてもよい。速度比eが中速度比域で、エンジン最高回転速度を一律に所定値Ns12に制限するのではなく、図14に示すようにエンジン最高回転速度の制限量ΔNを速度比eに応じてさらに細かく設定するようにしてもよい。上記実施の形態では、トルコン速度比eが中速度比域でエンジン最高回転速度を所定値Ns12に制限した後、所定時間taが経過すると、エンジン最高回転速度が所定値Ns2となるようにしたが、所定時間taの経過後に回転速度制限量ΔNを徐々に小さくするようにしてもよい。
【0041】
−第2の実施の形態−
図15〜図20を参照して本発明の第2の実施の形態に係る作業車両の原動機制御装置について説明する。
第1の実施の形態では、トランスミッション3が1速度段および2速度段のときにトルコン速度比eに応じてエンジン最高回転速度を制限するようにしたが、第2の実施の形態では、3速度段および4速度段においてもトルコン速度比eに応じてエンジン最高回転速度を制限する。なお、以下では第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0042】
図15は、3速度段および4速度段の走行性能線図である。図中、f30,f40(点線)は速度制限オフ時の特性(図9のfc、fdに相当)であり、f31,f41(実線)はトルコン速度比eに拘わらずエンジン最高回転速度を一律に制限した場合の特性である。3速度段および4速度段における速度制限オフ時の最高車速はそれぞれv3,v4である。一方、エンジン最高回転速度を制限すると、エンジン出力が低下するため、その分、同一車速で出力できる駆動力が減少する。その結果、平地走行における最高車速が所定値vlimに制限される。
【0043】
このようにエンジン最高回転速度を制限することで、例えば構内作業において最高車速を制限する場合や狭い作業現場で最高車速を制限する場合、法規制により最高車速を制限する場合等に、車速を設定車速vlim以下に抑えることができる。しかし、図15のようにエンジン最高回転速度をトルコン速度比eに拘わらず一律に制限すると、最高車速vlimで平地走行している状態から登板走行などで走行負荷(駆動力)が増加した場合に、車速が最高車速vlimから直ちに低下してしまう。また、走行負荷が低下して再加速する際の加速性も悪い。そこで、本実施の形態ではトルコン速度比eに応じて以下のようにエンジン最高回転速度を制限する。
【0044】
図16は、速度制限オン時の3速度段および4速度段におけるトルコン速度比eとエンジン最高回転速度Namaxとの関係を示す図である。3速度段においては、トルコン速度比eが所定値e31未満であればエンジン最高回転速度を制限せず、速度比eが所定値e31以上になるとエンジン最高回転速度を制限する。この場合、特性f3に示すように速度比eが所定値e31以上かつ所定値e33未満の範囲においてエンジン最高回転速度の制限量ΔNを徐々に大きくし、速度比eが所定値e33以上においてエンジン最高回転速度を所定値Ns3に設定する。
【0045】
4速度段においても、トルコン速度比eが所定値e41未満であればエンジン最高回転速度を制限せず、速度比eが所定値e41以上になるとエンジン最高回転速度を制限する。この場合、f4に示すように速度比eが所定値e41以上かつ所定値e44未満の範囲においてエンジン最高回転速度の制限量ΔNを徐々に大きくし、速度比eが所定値e44以上においてエンジン最高回転速度を所定値Ns4に設定する。
【0046】
図17は、図16のようにトルコン速度比eに応じてエンジン最高回転速度を制限した場合の走行性能線図である。図中、図15の各特性f30,f31,f40,f41と同一の特性には同一の符号を、図16の各点a31〜a33,a41〜a44に対応する点にも同一の符号を付している。図17では、車速が予め定めた設定車速vlimに至るまで、駆動力特性は速度制限オフ時と同一の特性となり、車速が設定車速vlimに達すると、それ以上車速は増加せず、駆動力が低下する。すなわち本実施の形態では、車速が設定車速vlimに至るまで駆動力の低下が抑えられ、最高車速は設定車速vlimに制限される。本実施の形態では、この図17の走行性能線図が得られるように図16の特性f3,f4が設定されている。
【0047】
図18は、アクセルペダル12aを最大に踏み込んだときのエンジン回転速度とトルクの関係を示すトルク線図である。図中、f32,f42は、それぞれエンジン最高回転速度をNs3,Ns4に制限した場合のエンジン出力トルク特性である。3速度段で速度比eが所定値e31以上の場合、エンジン出力トルクは特性f0とf32の間で変化し、4速度段で速度比eが所定値e41以上の場合、エンジン出力トルクは特性f0とf42の間で変化する。
【0048】
図19は、ペダル操作量と目標エンジン回転速度Naとの関係を示す図である。3速度段においてアクセルペダル12aを最大に踏み込んだ状態では、目標エンジン回転速度Naは速度比eに応じてNmaxとNs3の間で変化する。4速度段においてアクセルペダル12aを最大に踏み込んだ状態では、目標エンジン回転速度Naは速度比eに応じてNmaxとNs4の間で変化する。
【0049】
図20は、コントローラ10のCPUで実行される処理の一例、とくにエンジン回転速度制御に係る処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えばエンジンキースイッチのオンにより開始される。なお、図8と同一の箇所には同一の符号を付し、以下では図8との相違点を主に説明する。
【0050】
ステップS4で速度段が2速以下と判定されるとステップS5に進み、以降、図8と同様の処理を実行する。ステップS4で速度段が2速以下でないと判定されるとステップS20に進み、車速検出器16により検出された車速vが予め定めた設定車速vs以上か否かを判定する。設定車速vsは、エンジン最高回転速度制限を行うか否かの閾値として設定されるものであり、最高車速vlimよりも数km/h程度(例えば1〜2km/h)低い値に設定されている。ステップS20が肯定されるとステップS21に進み、否定されるとステップS13に進む。
【0051】
ステップS21では、速度段が3速か否かを判定する。ステップS21が肯定されるとステップS22に進み、トルコン速度比eが図16の所定値e31以上か否かを判定する。ステップS22が肯定されるとステップS23に進み、否定されるとステップS13に進む。ステップS23では、図16の特性f3に基づき速度比eに応じたエンジン最高回転速度Namaxを演算する。
【0052】
一方、ステップS21が否定されるとステップS26に進み、速度段が4速か否かを判定する。ステップS26が肯定されるとステップS27に進み、トルコン速度比eが図16の所定値e41以上か否かを判定する。ステップS27が肯定されるとステップS28に進み、否定されるとステップS13に進む。ステップS28では、図16の特性f4に基づき速度比eに応じたエンジン最高回転速度Namaxを演算する。
【0053】
ステップS24では、ステップS2で演算した目標エンジン回転速度Na、すなわちエンジン最高回転速度非制限の特性により求められた目標エンジン回転速度Naが、ステップS23またはステップS28で求めたエンジン最高回転速度Namax以上であるか否かを判定する。ステップS24が肯定されるとステップS25に進み、否定されるとステップS13に進む。ステップS25では、目標エンジン回転速度Naとしてエンジン最高回転速度Namaxを設定し、ステップS13に進む。
【0054】
第2の実施の形態の動作をまとめると次のようになる。制限選択スイッチ18により速度制限オンが選択された状態で、3速度段または4速度段で走行しているとき、車速vが所定値vs以上になると速度比eに応じてエンジン最高回転速度が制限される(ステップS25)。すなわち3速度段において、速度比eが所定値e31以上のときは、ペダル最大踏み込み時のエンジン最高回転速度は上限値Nmaxよりも低くなり、速度比eが所定値e33以上になるとエンジン最高回転速度は所定値Ns3となる。また、4速度段において、速度比eが所定値e41以上のときは、ペダル最大踏み込み時のエンジン最高回転速度は上限値Nmaxよりも低くなり、速度比eが所定値e44以上になるとエンジン最高回転速度は所定値Ns4となる。
【0055】
これにより速度比eが所定値e31,e41未満では、速度制限オフ時と同等の駆動力を発揮することができ、走行性能の低下が抑えられる。また、速度比eが所定値e31,e41以上では、最高車速を設定車速vlimに抑えることができ、車速制限のある状況での走行が可能である。このため、設定車速vlimで平地走行している状態から登板走行に移行して走行負荷が増加したとしても、直ちに車速が低下することはなく、設定車速vlimでの走行が可能である。また、急な登り坂から平地走行に移行するような場合、つまり走行負荷が低下した場合の再加速では、フルにエンジン出力が使えるので、良好な加速性が得られる。
【0056】
一方、3速度段または4速度段で走行しているとき、車速vが所定値vs未満であれば、速度比eに拘わらずエンジン最高回転速度は制限されない(ステップS20→ステップS13)。このため、走行中に前進から後進、または後進から前進の減速操作をしたときに、良好な減速性能を発揮できる。
【0057】
第2の実施の形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)速度段が3速または4速でトルコン速度比eが所定値e31,e41以上になると、エンジン最高回転速度を制限するようにしたので、トルコン速度比eに拘わらずエンジン最高回転速度を一律に制限する場合に比べ、走行駆動力の低下を抑えることができ、設定車速vlimで平地走行している状態から登板走行に移行した場合にも、設定車速vlimでの走行が可能である。
(2)トルコン速度比eの増加に伴いエンジン最高回転速度の制限量ΔNを徐々に大きくするようにしたので、車速が最高車速に至るまで駆動力の低下を抑えるとともに、最高車速を設定車速vlimに制限することができる。
(3)車速vが所定値vs以下では、エンジン最高回転速度制限を行わないようにしたので、走行中の減速性能が悪化することを防止できる。
【0058】
なお、上記第2の実施の形態では、速度比eに応じてエンジン最高回転速度を制限するようにしたが、回転速度検出器14,15が故障して検出値が異常となった場合には、速度比eを正しく演算できず、車速が最高車速vlimを超えるおそれがある。これを防止するため、判定手段としてのコントローラ10により回転速度検出器14,15の検出値が正常か異常かを判定し、異常と判定された場合には、速度比eに拘わらず、エンジン最高回転速度を速度段に応じた所定値Ns3,Ns4に制限するようにしてもよい。
【0059】
上記第1の実施の形態(図5)では、コントローラ10からエンジン制御部1aに制御信号を出力することにより、速度段が1速または2速のときに速度比eが所定値e1(第1の所定値)以上の加速領域にあると、速度比eが所定値e1未満のときよりもエンジン最高回転速度の制限量ΔNを大きくした。また、上記第2の実施の形態(図16)では、速度段が3速または4速のときに速度比eが所定値e31,e41以上の加速領域にあるとエンジン最高回転速度を制限し、速度比eが所定値e31,e41未満ではエンジン最高回転速度を制限しないようにした。しかし、速度比eが加速領域にあるときに、エンジン最高回転速度を非加速領域の値よりも低く制限するのであれば、速度制限手段の構成は上述したものに限らない。例えば速度段が3速または4速のときのみ、エンジン最高回転速度を制限し、速度段が1速または2速のときはエンジン最高回転速度を制限しないようにしてもよい。速度段に拘わらずエンジン最高回転速度を制限するようにしてもよい。
【0060】
上記第1の実施の形態では、e<e1でエンジン最高回転速度をNs1に、e1≦e<e2でエンジン最高回転速度をNs2に、e≧e2でエンジン最高回転速度をNs3にそれぞれ制限したが、速度比eが所定値e1以上かつ所定値e2(第2の所定値)未満のときに、速度比eが所定値e1未満および所定値e2以上のときよりも、エンジン最高回転速度の制限量ΔNを大きくするのであれば、エンジン最高回転速度の制限特性は上述したものに限らない。上記第2の実施の形態では、車速が設定車速vlim(制限車速)よりも低い所定値vs以上のときに、速度比eの増加に伴いエンジン最高回転速度の制限量ΔNを徐々に大きくしたが、車速に拘わらず、エンジン最高回転速度を制限してもよい。制限選択スイッチ18がオンの場合にエンジン最高回転速度を制限するようにしたが、制限選択スイッチ18の有無に拘わらず、エンジン最高回転速度を制限するようにしてもよい。
【0061】
アクセルペダル12aの操作量に応じてエンジン回転速度を制御するのであれば、回転速度制御手段としてのコントローラ10とエンジン制御部1aの構成はいかなるものでもよい。エンジン1の回転をトルコン2およびトランスミッション3を介して車輪6に伝達する走行駆動装置の構成も図2に示したものに限らない。回転速度検出器14,15によりトルコン速度比eを検出したが、速度比検出手段の構成はいかなるものでもよい。
【0062】
以上では、本発明をホイールローダに適用する例について説明したが、トルコン駆動の他の作業車両にも本発明は同様に適用可能である。すなわち、本発明の特徴、機能を実現できる限り、本発明は実施の形態の作業車両の原動機制御装置に限定されない。
【符号の説明】
【0063】
1 エンジン
1a エンジン制御部
2 トルクコンバータ
3 トランスミッション
10 コントローラ
14,15 回転速度検出器
18 制限選択スイッチ
ΔN 回転速度制限量
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールローダ等の作業車両の原動機制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの回転をトルクコンバータを介してトランスミッションに入力するようにしたホイールローダ等の作業車両において、エンジン回転速度を制限するようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1記載の装置では、最高速度段を例えば2速に設定しているときに、この2速に対応した上限車速を超えないように車速の増加に伴いエンジン回転速度を制限する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−107651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の装置のように車速に応じてエンジン回転速度を制限したのでは、十分な走行駆動力が得られず、走行性や作業性が悪化するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による作業車両の原動機制御装置は、アクセルペダルの操作量に応じて原動機の回転速度を制御する回転速度制御手段と、原動機の回転をトルクコンバータ(トルコン)およびトランスミッションを介して車輪に伝達する走行駆動装置と、トルクコンバータの入力軸と出力軸の速度比を検出する速度比検出手段と、速度比検出手段により検出された速度比に応じて原動機の最高回転速度を制限する速度制限手段とを備え、速度制限手段は、検出された速度比が原動機の回転速度の加速領域にあるときに、最高回転速度を非加速領域の値より低く制限することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、トルコン速度比が原動機回転速度の加速領域にあるときに、原動機最高回転速度を非加速領域の値より低くするようにしたので、エンジン回転速度を制限しつつ十分な走行駆動力が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施の形態に係るホイールローダの側面図。
【図2】本発明の実施の形態に係る原動機制御装置の概略構成を示す図。
【図3】(a)はトルコン速度比基準制御による自動変速のタイミングを示す図であり、(b)は車速基準制御による自動変速のタイミングを示す図。
【図4】ペダル操作量と目標エンジン回転速度との関係を示す図。
【図5】第1の実施の形態に係る原動機制御装置による速度比とエンジン最高回転速度との関係を示す図。
【図6】第1の実施の形態に係る原動機制御装置によるペダル操作量と目標エンジン回転速度との関係を示す図。
【図7】(a)は第1の実施の形態に係る原動機制御装置によるトルク特性を示す図であり、(b)はその比較例を示す図。
【図8】第1の実施の形態に係る原動機制御のコントローラにおける処理の一例を示すフローチャート。
【図9】速度制限オフ時の走行駆動力特性を示す図。
【図10】速度制限オン時の走行駆動力特性の一例を示す図。
【図11】(a)は第1の実施の形態に係るの原動機制御装置の動作特性の一例を示す図であり、(b)はその比較例を示す図。
【図12】Vサイクルによる積み込み作業の一例を示す図。
【図13】(a)は掘削動作を示す図であり、(b)はダンプへの積み込み動作を示す図。
【図14】図5の変形例を示す図。
【図15】第2の実施の形態の比較例としての3速度段および4速度段の車速と走行駆動力の関係を示す図。
【図16】第2の実施の形態に係る原動機制御装置による速度比とエンジン最高回転速度との関係を示す図。
【図17】第2の実施の形態に係る原動機制御装置による車速と走行駆動力の関係を示す図。
【図18】第2の実施の形態に係る原動機制御装置によるトルク特性を示す図。
【図19】第2の実施の形態に係る原動機制御装置によるペダル操作量と目標エンジン回転速度との関係を示す図。
【図20】第2の実施の形態に係る原動機制御のコントローラにおける処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
−第1の実施の形態−
以下、図1〜図14を参照して本発明の第1の実施の形態に係る作業車両の原動機制御装置について説明する。
図1は、本実施の形態に係る原動機制御装置が適用される作業車両の一例であるホイールローダの側面図である。ホイールローダ100は、アーム111,バケット112,タイヤ113等を有する前部車体110と、運転室121,エンジン室122,タイヤ123等を有する後部車体120とで構成される。アーム111はアームシリンダ114の駆動により上下方向に回動(俯仰動)し、バケット112はバケットシリンダ115の駆動により上下方向に回動(ダンプまたはクラウド)する。前部車体110と後部車体120はセンタピン101により互いに回動自在に連結され、ステアリングシリンダ(不図示)の伸縮により後部車体120に対し前部車体110が左右に屈折する。
【0009】
図2は、本実施の形態に係る原動機制御装置の概略構成を示す図である。エンジン1の出力軸にはトルクコンバータ2(以下、トルコン)の入力軸が連結され、トルコン2の出力軸は1速〜4速に変速可能なトランスミッション3に連結されている。トルコン2は周知のインペラ,タービン,ステータからなる流体クラッチであり、エンジン1の回転はトルコン2を介してトランスミッション3に伝達される。トランスミッション3は、その速度段を変速する液圧クラッチを有し、トルコン2の出力軸の回転はトランスミッション3で変速される。変速後の回転は、プロペラシャフト4,アクスル5を介してタイヤ6(図1の113,123)に伝達され、車両が走行する。
【0010】
なお、図示は省略するが、ホイールローダにはエンジン1よって駆動される作業用油圧ポンプが設けられ、油圧ポンプからの圧油がアームシリンダ114やバケットシリンダ115等のアクチュエータに供給されて、作業が行われる。
【0011】
コントローラ10は、CPU,ROM,RAM,その他の周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成される。コントローラ10には、アクセルペダル12aの操作量を検出するアクセル操作量検出器12と、ブレーキペダル13aの操作量を検出するブレーキ操作量検出器13と、トルコン2の入力軸の回転速度Niを検出する回転速度検出器14と、トルコン2の出力軸の回転速度Ntを検出する回転速度検出器15と、トランスミッション3の出力軸の回転速度、つまり車速vを検出する車速検出器16と、マニュアル変速モードと自動変速モードを選択する変速モード選択スイッチ7と、1速〜4速の間で速度段の上限を指令するシフトスイッチ8と、車両の前後進を指令する前後進切換スイッチ9と、エンジン回転速度の制限/非制限を選択する制限選択スイッチ18とが接続されている。
【0012】
トルコン2は入力トルクに対し出力トルクを増大させる機能、つまりトルク比を1以上とする機能を有する。トルク比は、トルコン2の入力軸と出力軸の回転速度の比であるトルコン速度比e(出力回転速度Nt/入力回転速度Ni)の増加に伴い小さくなる。例えばエンジン回転速度が一定状態で走行中に走行負荷が大きくなると、トルコン2の出力回転速度Nt、つまり車速が減少し、トルコン速度比eが小さくなる。このとき、トルク比は増加するため、より大きな駆動力(牽引力)で車両走行が可能となる。すなわち車速が遅いと駆動力は大きく(低速高トルク)、車速が速いと駆動力は小さくなる(高速低トルク)。
【0013】
トランスミッション3は、1速〜4速の各速度段に対応したソレノイド弁を有する自動変速機である。これらソレノイド弁は、コントローラ10からトランスミッション制御部11へ出力される制御信号によって駆動され、変速される。
【0014】
図3は、トランスミッション3による自動変速のタイミングを示す図である。自動変速制御には、図3(a)に示すようにトルコン速度比eが所定値に達すると変速するトルコン速度比基準制御と、図3(b)に示すように車速vが所定値に達すると変速する車速基準制御の2つの方式がある。本実施の形態では、トルコン速度比基準制御によりトランスミッション3の速度段を制御する。
【0015】
図3(a)に示すトルコン速度比基準制御では、走行負荷が小さくなりトルコン速度比eが増加して、トルコン速度比eが所定値eu以上になると、速度段は1段シフトアップする。反対に、走行負荷が大きくなりトルコン速度比eが低下して、トルコン速度比eが所定値ed以下になると、速度段は1段シフトダウンする。これによりトランスミッション3の速度段がトルコン速度比eに応じて1速〜4速の間で自動的に変更される。この際、シフトスイッチ8により選択された速度段を上限として自動変速される。例えばシフトスイッチ8により2速が選択されたときは速度段は1速または2速となり、1速が選択されたときは速度段は1速に固定される。
【0016】
なお、トルコン速度比基準制御ではなく車速基準制御によりトランスミッション3の速度段を制御してもよい。この場合、図3(b)に示すように、車速vが増加して所定値vS1,vS2,vS3に達すると、速度段が1段シフトアップし、車速vが減少して所定値vS4,vS5,vS6に達すると、速度段が1段シフトダウンする。
【0017】
コントローラ10は、アクセルペダル12aの操作量に応じた目標エンジン回転速度Naにエンジン回転速度を制御する。図4は、ペダル操作量と目標エンジン回転速度Naの関係を示す図である。図中、実線はエンジン回転速度の非制限、つまり速度制限オフの特性を、点線はエンジン回転速度の制限、つまり速度制限オンの特性をそれぞれ示す。目標エンジン回転速度Naは、エンジン回転速度の上限値Nmaxと下限値Nminの間で変更可能である。
【0018】
図4に示すようにアクセルペダル12aの非操作時には、目標エンジン回転速度Naは下限値Nminであり、ペダル操作量の増加に伴い目標エンジン回転速度Naは増加する。速度制限オフ状態では、ペダル最大踏み込み時の目標エンジン回転速度Naは上限値Nmaxとなる。これに対し、速度制限オン状態では、目標エンジン回転速度Naの最大値、すなわちエンジン最高回転速度Namaxが制限され、ペダル最大踏み込み時の目標エンジン回転速度Naは所定値Ns(<Nmax)となる。コントローラ10はこの目標エンジン回転速度Naに対応した制御信号をエンジン制御部1aに出力し、エンジン回転速度を目標エンジン回転速度Naに制御する。本実施の形態では、速度制限オン時のエンジン最高回転速度Ns、換言すれば目標エンジン回転速度Naの上限値NmaxとNsとの差である回転速度制限量ΔNを、以下のようにトルコン速度比eに応じた値に設定する。
【0019】
図5は、速度制限オン時のトルコン速度比eとエンジン最高回転速度Namaxとの関係を示す図である。速度比eが所定値e1未満の低速度比域ではエンジン最高回転速度は所定値Ns1に、速度比eが所定値e1以上かつ所定値e2未満の中速度比域ではエンジン最高回転速度は所定値Ns12に、速度比eが所定値e2以上の高速度比域ではエンジン最高回転速度は所定値Ns2にそれぞれ設定される。ここで、低速度比域は主に発進直後または掘削作業時における速度比域、中速度比域は主に加速状態における速度比域、高速度比域は主に定常走行状態における速度比域であり、e1,e2は例えば0.25,0.75に設定される。なお、所定値e1,e2と図3(a)の所定値ed,euとの間には、例えばe1<ed,e2<euの関係がある。
【0020】
図5において、エンジン最高回転速度の上限値Nmaxと各制限値Ns1,Ns12,Ns2との間には、Nmax>Ns1>Ns2>Ns12の関係があり、中速度比域で回転速度制限量ΔNが最大となる。なお、エンジン最高回転速度を制限すると、その分、車両の最大駆動力と最高車速が低下するが、本実施の形態では、これらの低下が実用上問題とならないような値に各制限値Ns1,Ns12,Ns2が設定されている。例えばエンジン回転速度の上限値Nmax(100%)に対し、Ns1は90%、Ns12は75%、Ns2は85%にそれぞれ設定されている。この場合のペダル操作量と目標エンジン回転速度Naとの関係は、図6に示すようになる。
【0021】
図7は、アクセルペダル12aを最大に踏み込んだときのエンジン回転速度とトルクの関係を示すトルク線図である。なお、図7(a)はトルコン速度比eに応じてエンジン最高回転速度を制限した場合のトルク線図であり、図7(b)はトルコン速度比eに拘わらずエンジン最高回転速度を所定量ΔNだけ一律に制限した場合のトルク線図である。図中、特性f0はエンジン最高回転速度を制限しない場合のエンジン出力トルク特性であり、特性f10〜f13はそれぞれエンジン最高回転回転速度を制限した場合のエンジン出力トルク特性である。
【0022】
トルコン入力トルクはトルコン入力軸の回転速度Niの2乗に比例して増加し、トルコン速度比eが大きいほどトルコン入力トルクは小さくなる。エンジン出力トルク特性とトルコン入力トルク特性との交点はマッチング点であり、車両走行時のエンジン出力トルクおよびトルコン入力トルクはこのマッチング点の値となる。図7(b)において、エンジン回転速度を所定量ΔNだけ制限すると、マッチング点が図の左側にずれ、エンジン回転速度を制限しない場合よりもトルコン入力トルクが低下する。トルコン入力トルク×トルコン入力軸の回転速度は、トルコン2の入力動力であり、エンジン出力に相当するので、エンジン最高回転速度を制限することで、エンジン出力が低減し、燃費を向上できる。
【0023】
しかし、図7(b)のようにエンジン最高回転速度を一律に制限したのでは、トルコン入力トルクが全体的に低下し、走行に使用できる動力(馬力)も低下する。このため、作業時の走行駆動力が不足し、実用上問題がある。これに対し、本実施の形態では、トルコン速度比eに応じてエンジン回転速度を制限するため、図7(a)に示すように、トルコン速度比eが所定値e1未満の範囲で走行駆動力の低下は小さく、トルコン速度比eが所定値e1以上かつ所定値e2未満の範囲で走行駆動力の低下が大きくなる。これにより燃費を向上しつつ、作業時に十分な掘削力を得ることができる。
【0024】
図8は、コントローラ10のCPUで実行される処理の一例、とくにエンジン回転速度制御に係る処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えばエンジンキースイッチのオンにより開始される。ステップS1では、図2の各種センサ12〜16およびスイッチ7〜9,18からの信号を読み込む。ステップS2では、予め記憶された図6のエンジン最高回転速度非制限の特性(実線)に基づき、アクセル操作量検出器12により検出されたペダル操作量に対する目標エンジン回転速度Naを演算する。
【0025】
ステップS3では、制限選択スイッチ18によりエンジン回転速度制限が選択されている否か、すなわち速度制限オンが選択されているか否かを判定する。ステップS3が肯定されるとステップS4に進み、否定されるとステップS13に進む。ステップS4では、トランスミッション3の速度段が2速以下であるか否かを判定する。ステップS4が肯定されるとステップS5に進み、否定されるとステップS13に進む。ステップS5では、回転速度検出器14,15からの信号によりトルコン速度比eを演算し、トルコン速度比eが低速度域(e<e1)、中速度域(e1≦e<e2)、高速度域(e≧e2)のいずれであるかを判定する。
【0026】
ステップS5で低速度域と判定されるとステップS6に進み、ステップS2で演算した目標エンジン回転速度Naが予め定めた図5の制限値Ns1以上であるか否かを判定する。ステップS6が肯定されるとステップS7に進み、否定されるとステップS13に進む。ステップS7では、目標エンジン回転速度NaとしてNs1を設定し、ステップS13に進む。ステップS13では、エンジン制御部1aに制御信号を出力し、エンジン回転速度を目標エンジン回転速度Naに制御する。
【0027】
ステップS5で高速度域と判定されるとステップS11に進み、ステップS2で演算した目標エンジン回転速度Naが予め定めた図5の制限値Ns2以上であるか否かを判定する。ステップS11が肯定されるとステップS12に進み、否定されるとステップS13に進む。ステップS12では、目標エンジン回転速度NaとしてNs2を設定し、ステップS13に進む。
【0028】
ステップS5で中速度域と判定されるとステップS8に進み、ステップS2で演算した目標エンジン回転速度Naが予め定めた図5の制限値Ns12以上であるか否かを判定する。ステップS8が肯定されるとステップS9に進み、否定されるとステップS13に進む。ステップS9では、タイマをカウントし、タイマのカウント時間tが予め定めた所定時間ta以上となったか否かを判定する。所定時間taは、回転速度制限量ΔNの増加によりオペレータが車速の減少を感じることがないような時間(例えば1.5秒程度)に設定される。
【0029】
ステップS9が肯定されるとステップS12に進み、否定されるとステップS10に進む。なお、タイマは、ステップS3が否定されたとき、ステップS4が否定されたとき、ステップS5で速度比eが中速度比域以外と判定されたとき、およびステップS9が肯定されたときにそれぞれリセットされる。ステップS10では、目標エンジン回転速度NaとしてNs12を設定し、ステップS13に進む。
【0030】
第1の実施の形態の動作をまとめると次のようになる。制限選択スイッチ18により速度制限オフが選択されたとき、および速度制限オンが選択されても速度段が3速以上であるときは、エンジン1の最高回転速度は制限されず、ペダル最大踏み込み時のエンジン回転速度は上限値Nmaxに制御される(ステップS3→ステップS13、ステップS4→ステップS13)。この場合の車速vと走行駆動力Fの関係は図9に示すようになる。図中、fa〜fdはそれぞれ1速度段〜4速度段の特性であり、各速度段とも車速vの増加に伴い駆動力Fが減少する。特性faとfb,fbとfc,fcとfdの交点はそれぞれ変速ポイントpa〜pcであり、この変速ポイントpa〜pcにおける速度比はedまたはeuとなる。
【0031】
一方、制限選択スイッチ18により速度制限オンが選択されると、速度比eに応じてエンジン最高回転速度が制限され、ペダル最大踏み込み時のエンジン回転速度は所定値Ns1,Ns12,Ns2のいずれかとなる(ステップS7、ステップS10、ステップS12)。この場合の2速度段における車速vと走行駆動力Fとの関係は図10に示すようになる。図中のf20は、速度制限オフ時の特性(図9の特性fbに相当)であり、特性f21〜f23は、それぞれ速度制限オン時の低速度比域、中速度比域、高速度比域における特性である。
【0032】
図10において、速度制限オン時の最高車速v2は速度制限オフ時の最高車速v2’より低く、速度制限オン時の最大駆動力F2は速度制限オフ時の最大駆動力F2’よりも小さい。また、同一車速で比較すると、速度制限オン時の駆動力は速度制限オフ時の駆動力よりも小さく、とくに中速度比域の駆動力(特性f22)は、低速度比域および高速度比域の駆動力(特性f21,f23)よりも大きく減少している。これにより、速度制限オン時に最大駆動力と最高車速をそれほど低下させることなく、燃費を大幅に向上することができる。
【0033】
速度制限オン時に速度比eが中速度域であれば、所定時間ta後に回転速度制限量ΔNが減少し(ステップS9→ステップS12)、駆動力の特性f22は図の矢印に示すように右側にシフトする。このため、例えば駆動力Faで登板走行をしているとき、所定時間ta後に車速がvaからvbに増加するので、オペレータは速度制限オン時の車速の大幅な低下をそれほど感じることがなく、走行性能が実用上低下することを防ぐことができる。
【0034】
図11(a)は、平地走行における発進加速時の目標エンジン回転速度Naと実エンジン回転速度とトルコン速度比eと車速vの時間変化を示す図である。図中、実線はそれぞれ速度制限オフ時の特性であり、点線はそれぞれ速度制限オン時の特性である。なお、図11(b)は、エンジン最高回転速度を一律に制限する場合の特性であり、本実施の形態の比較例である。
【0035】
図11(a)に示すように、速度制限オフ状態において、時点t0でアクセルペダル12aを最大に踏み込むと、目標エンジン回転速度が上限値Nmaxまで急上昇し、実エンジン回転速度はこれに遅れて追従する。これにより車速が最高車速v2’まで上昇し、車速の上昇に伴いトルコン速度比eも上昇する。一方、速度制限オン状態では、時点t1〜t2の間でトルコン速度比eが中速度比域(e1≦e<e2)となり、この範囲では目標エンジン回転速度がNs12に制限される。このため、実エンジン回転速度の上昇の程度が緩やかとなり、燃費を向上できる。この場合、最高車速v2となるまでに要する時間はΔtaである。
【0036】
これに対し、図11(b)では、実エンジン回転速度が急激に上昇するため、燃費向上の効果は小さい。この場合、最高車速v2となるまでに要する時間はΔtb(<Δta)であり、図11(b)の方が早く最高車速となるが、ΔtbとΔtaの差は小さく(例えば1秒以下)、実用上問題ない。
【0037】
ホイールローダの掘削作業について説明する。図12は、山積みされた土砂130等に車両100を突っ込んでバケット内に取り込んだ後、車両100を後進して方向転換し、ダンプ140に向けて前進してバケット内の土砂をダンプ140に積み込む、いわゆるVサイクルによる積み込み作業の様子を示している。この場合、図13(a)に示す掘削時には大きな走行駆動力Fが必要となるため、トランスミッション3を1速度段として、アクセルペダル12aをフルに踏み込む。
【0038】
図13(b)に示すダンプ140への積み込み作業時には、2速状態でアクセルペダル12aをフルに踏み込みながらバケット122を上昇させつつ、ダンプ140に向けて車両100を前進させ、土砂130を排出する。2速でのダンプ140への積み込み時には、エンジン最高回転速度を大きく制限したことにより作業のサイクルタイムが長くなるが、燃料消費量を低減できるため、結果的には燃料1Lを消費した場合の作業量(作業量燃費)は増加する。
【0039】
本実施の形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)制限選択スイッチ18により速度制限オンが選択されると、トルコン速度比eがe1≦e<e2の中速度比域で、トルコン速度比eがe<e1の低速度比域およびe≧e2の高速度比域よりもエンジン最高回転速度の制限量ΔNを大きくした。これにより最大駆動力および最高車速をそれほど低下させることなく、燃費を大幅に向上することができ、走行性の悪化と作業性の悪化を防ぐことができる。
(2)トルコン速度比eが中速度比域でエンジン最高回転速度を所定値Ns12に制限した後、所定時間taが経過すると、回転速度制限量ΔNを小さくして、エンジン最高回転速度が所定値Ns2となるようにしたので、登板走行等においてオペレータが車速の大幅な低下による違和感を感じることを防止できる。
(3)速度段が1速または2速のときに、エンジン最高回転速度を制限するようにしたので、速度段が3速または4速の通常走行時には、高速走行を支障なく行うことができる。
【0040】
なお、上記第1の実施の形態では、速度比eが低速度比域、中速度比域、高速度比域の全範囲で、エンジン最高回転速度をそれぞれ所定値Ns1,Ns12,Ns2に制限するようにしたが、速度比eが中速度比域、高速度比域のときのみ、あるいは速度比eが中速度比域のときのみに、エンジン最高回転速度を制限するようにしてもよい。速度比eが中速度比域で、エンジン最高回転速度を一律に所定値Ns12に制限するのではなく、図14に示すようにエンジン最高回転速度の制限量ΔNを速度比eに応じてさらに細かく設定するようにしてもよい。上記実施の形態では、トルコン速度比eが中速度比域でエンジン最高回転速度を所定値Ns12に制限した後、所定時間taが経過すると、エンジン最高回転速度が所定値Ns2となるようにしたが、所定時間taの経過後に回転速度制限量ΔNを徐々に小さくするようにしてもよい。
【0041】
−第2の実施の形態−
図15〜図20を参照して本発明の第2の実施の形態に係る作業車両の原動機制御装置について説明する。
第1の実施の形態では、トランスミッション3が1速度段および2速度段のときにトルコン速度比eに応じてエンジン最高回転速度を制限するようにしたが、第2の実施の形態では、3速度段および4速度段においてもトルコン速度比eに応じてエンジン最高回転速度を制限する。なお、以下では第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0042】
図15は、3速度段および4速度段の走行性能線図である。図中、f30,f40(点線)は速度制限オフ時の特性(図9のfc、fdに相当)であり、f31,f41(実線)はトルコン速度比eに拘わらずエンジン最高回転速度を一律に制限した場合の特性である。3速度段および4速度段における速度制限オフ時の最高車速はそれぞれv3,v4である。一方、エンジン最高回転速度を制限すると、エンジン出力が低下するため、その分、同一車速で出力できる駆動力が減少する。その結果、平地走行における最高車速が所定値vlimに制限される。
【0043】
このようにエンジン最高回転速度を制限することで、例えば構内作業において最高車速を制限する場合や狭い作業現場で最高車速を制限する場合、法規制により最高車速を制限する場合等に、車速を設定車速vlim以下に抑えることができる。しかし、図15のようにエンジン最高回転速度をトルコン速度比eに拘わらず一律に制限すると、最高車速vlimで平地走行している状態から登板走行などで走行負荷(駆動力)が増加した場合に、車速が最高車速vlimから直ちに低下してしまう。また、走行負荷が低下して再加速する際の加速性も悪い。そこで、本実施の形態ではトルコン速度比eに応じて以下のようにエンジン最高回転速度を制限する。
【0044】
図16は、速度制限オン時の3速度段および4速度段におけるトルコン速度比eとエンジン最高回転速度Namaxとの関係を示す図である。3速度段においては、トルコン速度比eが所定値e31未満であればエンジン最高回転速度を制限せず、速度比eが所定値e31以上になるとエンジン最高回転速度を制限する。この場合、特性f3に示すように速度比eが所定値e31以上かつ所定値e33未満の範囲においてエンジン最高回転速度の制限量ΔNを徐々に大きくし、速度比eが所定値e33以上においてエンジン最高回転速度を所定値Ns3に設定する。
【0045】
4速度段においても、トルコン速度比eが所定値e41未満であればエンジン最高回転速度を制限せず、速度比eが所定値e41以上になるとエンジン最高回転速度を制限する。この場合、f4に示すように速度比eが所定値e41以上かつ所定値e44未満の範囲においてエンジン最高回転速度の制限量ΔNを徐々に大きくし、速度比eが所定値e44以上においてエンジン最高回転速度を所定値Ns4に設定する。
【0046】
図17は、図16のようにトルコン速度比eに応じてエンジン最高回転速度を制限した場合の走行性能線図である。図中、図15の各特性f30,f31,f40,f41と同一の特性には同一の符号を、図16の各点a31〜a33,a41〜a44に対応する点にも同一の符号を付している。図17では、車速が予め定めた設定車速vlimに至るまで、駆動力特性は速度制限オフ時と同一の特性となり、車速が設定車速vlimに達すると、それ以上車速は増加せず、駆動力が低下する。すなわち本実施の形態では、車速が設定車速vlimに至るまで駆動力の低下が抑えられ、最高車速は設定車速vlimに制限される。本実施の形態では、この図17の走行性能線図が得られるように図16の特性f3,f4が設定されている。
【0047】
図18は、アクセルペダル12aを最大に踏み込んだときのエンジン回転速度とトルクの関係を示すトルク線図である。図中、f32,f42は、それぞれエンジン最高回転速度をNs3,Ns4に制限した場合のエンジン出力トルク特性である。3速度段で速度比eが所定値e31以上の場合、エンジン出力トルクは特性f0とf32の間で変化し、4速度段で速度比eが所定値e41以上の場合、エンジン出力トルクは特性f0とf42の間で変化する。
【0048】
図19は、ペダル操作量と目標エンジン回転速度Naとの関係を示す図である。3速度段においてアクセルペダル12aを最大に踏み込んだ状態では、目標エンジン回転速度Naは速度比eに応じてNmaxとNs3の間で変化する。4速度段においてアクセルペダル12aを最大に踏み込んだ状態では、目標エンジン回転速度Naは速度比eに応じてNmaxとNs4の間で変化する。
【0049】
図20は、コントローラ10のCPUで実行される処理の一例、とくにエンジン回転速度制御に係る処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えばエンジンキースイッチのオンにより開始される。なお、図8と同一の箇所には同一の符号を付し、以下では図8との相違点を主に説明する。
【0050】
ステップS4で速度段が2速以下と判定されるとステップS5に進み、以降、図8と同様の処理を実行する。ステップS4で速度段が2速以下でないと判定されるとステップS20に進み、車速検出器16により検出された車速vが予め定めた設定車速vs以上か否かを判定する。設定車速vsは、エンジン最高回転速度制限を行うか否かの閾値として設定されるものであり、最高車速vlimよりも数km/h程度(例えば1〜2km/h)低い値に設定されている。ステップS20が肯定されるとステップS21に進み、否定されるとステップS13に進む。
【0051】
ステップS21では、速度段が3速か否かを判定する。ステップS21が肯定されるとステップS22に進み、トルコン速度比eが図16の所定値e31以上か否かを判定する。ステップS22が肯定されるとステップS23に進み、否定されるとステップS13に進む。ステップS23では、図16の特性f3に基づき速度比eに応じたエンジン最高回転速度Namaxを演算する。
【0052】
一方、ステップS21が否定されるとステップS26に進み、速度段が4速か否かを判定する。ステップS26が肯定されるとステップS27に進み、トルコン速度比eが図16の所定値e41以上か否かを判定する。ステップS27が肯定されるとステップS28に進み、否定されるとステップS13に進む。ステップS28では、図16の特性f4に基づき速度比eに応じたエンジン最高回転速度Namaxを演算する。
【0053】
ステップS24では、ステップS2で演算した目標エンジン回転速度Na、すなわちエンジン最高回転速度非制限の特性により求められた目標エンジン回転速度Naが、ステップS23またはステップS28で求めたエンジン最高回転速度Namax以上であるか否かを判定する。ステップS24が肯定されるとステップS25に進み、否定されるとステップS13に進む。ステップS25では、目標エンジン回転速度Naとしてエンジン最高回転速度Namaxを設定し、ステップS13に進む。
【0054】
第2の実施の形態の動作をまとめると次のようになる。制限選択スイッチ18により速度制限オンが選択された状態で、3速度段または4速度段で走行しているとき、車速vが所定値vs以上になると速度比eに応じてエンジン最高回転速度が制限される(ステップS25)。すなわち3速度段において、速度比eが所定値e31以上のときは、ペダル最大踏み込み時のエンジン最高回転速度は上限値Nmaxよりも低くなり、速度比eが所定値e33以上になるとエンジン最高回転速度は所定値Ns3となる。また、4速度段において、速度比eが所定値e41以上のときは、ペダル最大踏み込み時のエンジン最高回転速度は上限値Nmaxよりも低くなり、速度比eが所定値e44以上になるとエンジン最高回転速度は所定値Ns4となる。
【0055】
これにより速度比eが所定値e31,e41未満では、速度制限オフ時と同等の駆動力を発揮することができ、走行性能の低下が抑えられる。また、速度比eが所定値e31,e41以上では、最高車速を設定車速vlimに抑えることができ、車速制限のある状況での走行が可能である。このため、設定車速vlimで平地走行している状態から登板走行に移行して走行負荷が増加したとしても、直ちに車速が低下することはなく、設定車速vlimでの走行が可能である。また、急な登り坂から平地走行に移行するような場合、つまり走行負荷が低下した場合の再加速では、フルにエンジン出力が使えるので、良好な加速性が得られる。
【0056】
一方、3速度段または4速度段で走行しているとき、車速vが所定値vs未満であれば、速度比eに拘わらずエンジン最高回転速度は制限されない(ステップS20→ステップS13)。このため、走行中に前進から後進、または後進から前進の減速操作をしたときに、良好な減速性能を発揮できる。
【0057】
第2の実施の形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)速度段が3速または4速でトルコン速度比eが所定値e31,e41以上になると、エンジン最高回転速度を制限するようにしたので、トルコン速度比eに拘わらずエンジン最高回転速度を一律に制限する場合に比べ、走行駆動力の低下を抑えることができ、設定車速vlimで平地走行している状態から登板走行に移行した場合にも、設定車速vlimでの走行が可能である。
(2)トルコン速度比eの増加に伴いエンジン最高回転速度の制限量ΔNを徐々に大きくするようにしたので、車速が最高車速に至るまで駆動力の低下を抑えるとともに、最高車速を設定車速vlimに制限することができる。
(3)車速vが所定値vs以下では、エンジン最高回転速度制限を行わないようにしたので、走行中の減速性能が悪化することを防止できる。
【0058】
なお、上記第2の実施の形態では、速度比eに応じてエンジン最高回転速度を制限するようにしたが、回転速度検出器14,15が故障して検出値が異常となった場合には、速度比eを正しく演算できず、車速が最高車速vlimを超えるおそれがある。これを防止するため、判定手段としてのコントローラ10により回転速度検出器14,15の検出値が正常か異常かを判定し、異常と判定された場合には、速度比eに拘わらず、エンジン最高回転速度を速度段に応じた所定値Ns3,Ns4に制限するようにしてもよい。
【0059】
上記第1の実施の形態(図5)では、コントローラ10からエンジン制御部1aに制御信号を出力することにより、速度段が1速または2速のときに速度比eが所定値e1(第1の所定値)以上の加速領域にあると、速度比eが所定値e1未満のときよりもエンジン最高回転速度の制限量ΔNを大きくした。また、上記第2の実施の形態(図16)では、速度段が3速または4速のときに速度比eが所定値e31,e41以上の加速領域にあるとエンジン最高回転速度を制限し、速度比eが所定値e31,e41未満ではエンジン最高回転速度を制限しないようにした。しかし、速度比eが加速領域にあるときに、エンジン最高回転速度を非加速領域の値よりも低く制限するのであれば、速度制限手段の構成は上述したものに限らない。例えば速度段が3速または4速のときのみ、エンジン最高回転速度を制限し、速度段が1速または2速のときはエンジン最高回転速度を制限しないようにしてもよい。速度段に拘わらずエンジン最高回転速度を制限するようにしてもよい。
【0060】
上記第1の実施の形態では、e<e1でエンジン最高回転速度をNs1に、e1≦e<e2でエンジン最高回転速度をNs2に、e≧e2でエンジン最高回転速度をNs3にそれぞれ制限したが、速度比eが所定値e1以上かつ所定値e2(第2の所定値)未満のときに、速度比eが所定値e1未満および所定値e2以上のときよりも、エンジン最高回転速度の制限量ΔNを大きくするのであれば、エンジン最高回転速度の制限特性は上述したものに限らない。上記第2の実施の形態では、車速が設定車速vlim(制限車速)よりも低い所定値vs以上のときに、速度比eの増加に伴いエンジン最高回転速度の制限量ΔNを徐々に大きくしたが、車速に拘わらず、エンジン最高回転速度を制限してもよい。制限選択スイッチ18がオンの場合にエンジン最高回転速度を制限するようにしたが、制限選択スイッチ18の有無に拘わらず、エンジン最高回転速度を制限するようにしてもよい。
【0061】
アクセルペダル12aの操作量に応じてエンジン回転速度を制御するのであれば、回転速度制御手段としてのコントローラ10とエンジン制御部1aの構成はいかなるものでもよい。エンジン1の回転をトルコン2およびトランスミッション3を介して車輪6に伝達する走行駆動装置の構成も図2に示したものに限らない。回転速度検出器14,15によりトルコン速度比eを検出したが、速度比検出手段の構成はいかなるものでもよい。
【0062】
以上では、本発明をホイールローダに適用する例について説明したが、トルコン駆動の他の作業車両にも本発明は同様に適用可能である。すなわち、本発明の特徴、機能を実現できる限り、本発明は実施の形態の作業車両の原動機制御装置に限定されない。
【符号の説明】
【0063】
1 エンジン
1a エンジン制御部
2 トルクコンバータ
3 トランスミッション
10 コントローラ
14,15 回転速度検出器
18 制限選択スイッチ
ΔN 回転速度制限量
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセルペダルの操作量に応じて原動機の回転速度を制御する回転速度制御手段と、
前記原動機の回転をトルクコンバータ(トルコン)およびトランスミッションを介して車輪に伝達する走行駆動装置と、
前記トルクコンバータの入力軸と出力軸の速度比を検出する速度比検出手段と、
前記速度比検出手段により検出された速度比に応じて前記原動機の最高回転速度を制限する速度制限手段とを備え、
前記速度制限手段は、検出された速度比が前記原動機の回転速度の加速領域にあるときに、前記最高回転速度を非加速領域の値より低く制限することを特徴とする作業車両の原動機制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の作業車両の原動機制御装置において、
前記速度制限手段は、検出された速度比が第1の所定値以上になると、速度比が前記第1の所定値未満のときよりも前記最高回転速度の制限量を大きくすることを特徴とする作業車両の原動機制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の作業車両の原動機制御装置において、
前記速度制限手段は、検出された速度比が第1の所定値以上になると、前記最高回転速度の値を低くし、速度比が前記第1の所定値未満では、前記最高回転速度の値を低くしないことを特徴とする作業車両の原動機制御装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の作業車両の原動機制御装置において、
前記速度制限手段は、前記トランスミッションの速度段が1速度段または2速度段の低速度段であるとき、検出された速度比が前記第1の所定値以上かつ前記第1の所定値よりも大きい第2の所定値未満になると、速度比が前記第1の所定値未満および前記第2の所定値以上のときよりも、前記制限量を大きくすることを特徴とする作業車両の原動機制御装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の作業車両の原動機制御装置において、
前記速度制限手段は、前記制限量を大きくした後、時間経過に伴い前記制限量を小さくすることを特徴とする作業車両の原動機制御装置。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の作業車両の原動機制御装置において、
前記速度制限手段は、前記トランスミッションの速度段が3速度段以上の高速度段のとき、検出された速度比が前記第1の所定値以上になると、車両の最高車速が予め定めた制限車速となるように速度比の増加に伴い前記制限量を徐々に大きくすることを特徴とする作業車両の原動機制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の作業車両の原動機制御装置において、
車速を検出する車速検出手段をさらに有し、
前記速度制限手段は、前記車速検出手段により検出された車速が前記制限車速よりも低い設定車速以上のとき、前記制限量を徐々に大きくし、車速が前記設定車速未満のときは、前記最高回転速度を制限しないことを特徴とする作業車両の原動機制御装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の作業車両の原動機制御装置において、
前記速度比検出手段の検出値が正常か異常かを判定する判定手段をさらに有し、
前記速度制限手段は、前記判定手段により前記検出値が正常と判定されると、速度比の増加に伴い前記最高回転速度を所定値にかけて徐々に大きくし、前記判定手段により前記検出値が異常と判定されると、速度比に拘わらず前記最高回転速度を前記所定値に制限することを特徴とする作業車両の原動機制御装置。
【請求項1】
アクセルペダルの操作量に応じて原動機の回転速度を制御する回転速度制御手段と、
前記原動機の回転をトルクコンバータ(トルコン)およびトランスミッションを介して車輪に伝達する走行駆動装置と、
前記トルクコンバータの入力軸と出力軸の速度比を検出する速度比検出手段と、
前記速度比検出手段により検出された速度比に応じて前記原動機の最高回転速度を制限する速度制限手段とを備え、
前記速度制限手段は、検出された速度比が前記原動機の回転速度の加速領域にあるときに、前記最高回転速度を非加速領域の値より低く制限することを特徴とする作業車両の原動機制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の作業車両の原動機制御装置において、
前記速度制限手段は、検出された速度比が第1の所定値以上になると、速度比が前記第1の所定値未満のときよりも前記最高回転速度の制限量を大きくすることを特徴とする作業車両の原動機制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の作業車両の原動機制御装置において、
前記速度制限手段は、検出された速度比が第1の所定値以上になると、前記最高回転速度の値を低くし、速度比が前記第1の所定値未満では、前記最高回転速度の値を低くしないことを特徴とする作業車両の原動機制御装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の作業車両の原動機制御装置において、
前記速度制限手段は、前記トランスミッションの速度段が1速度段または2速度段の低速度段であるとき、検出された速度比が前記第1の所定値以上かつ前記第1の所定値よりも大きい第2の所定値未満になると、速度比が前記第1の所定値未満および前記第2の所定値以上のときよりも、前記制限量を大きくすることを特徴とする作業車両の原動機制御装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の作業車両の原動機制御装置において、
前記速度制限手段は、前記制限量を大きくした後、時間経過に伴い前記制限量を小さくすることを特徴とする作業車両の原動機制御装置。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の作業車両の原動機制御装置において、
前記速度制限手段は、前記トランスミッションの速度段が3速度段以上の高速度段のとき、検出された速度比が前記第1の所定値以上になると、車両の最高車速が予め定めた制限車速となるように速度比の増加に伴い前記制限量を徐々に大きくすることを特徴とする作業車両の原動機制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の作業車両の原動機制御装置において、
車速を検出する車速検出手段をさらに有し、
前記速度制限手段は、前記車速検出手段により検出された車速が前記制限車速よりも低い設定車速以上のとき、前記制限量を徐々に大きくし、車速が前記設定車速未満のときは、前記最高回転速度を制限しないことを特徴とする作業車両の原動機制御装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の作業車両の原動機制御装置において、
前記速度比検出手段の検出値が正常か異常かを判定する判定手段をさらに有し、
前記速度制限手段は、前記判定手段により前記検出値が正常と判定されると、速度比の増加に伴い前記最高回転速度を所定値にかけて徐々に大きくし、前記判定手段により前記検出値が異常と判定されると、速度比に拘わらず前記最高回転速度を前記所定値に制限することを特徴とする作業車両の原動機制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−2049(P2011−2049A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146197(P2009−146197)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】
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