説明

便器排水路の吸気装置

【課題】便器洗浄を良好かつ静かに行うことができる便器排水路の吸気装置を提供する。
【解決手段】便器排水路5の吸気装置200は、便器本体1の水封部4の下流側に連なる便器排水路5から空気を吸引する吸気手段を備えている。吸気手段は、負圧発生装置であるエゼクタ30と、エゼクタ30と便器排水路5との間に接続される吸引タンク80とを有している。吸気装置200は、吸引タンク80が便器排水路5から空気を吸引する吸気行程の実行と、吸引タンク80が便器排水路5へ空気を排出する排気行程の実行とを制御する制御装置Cをさらに備えている。制御装置Cは、便器本体1の便鉢2への洗浄水の供給開始後に吸気行程を実行し、便鉢への洗浄水の供給終了前に排気行程を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は便器排水路の吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の便器排水路の吸気装置が開示されている。この吸気装置は、便器本体の水封部の下流側に連なる便器排水路から空気を吸引する吸気手段を備えている。便器本体の便鉢に洗浄水を供給するための給水管には、バイパス管が接続されている。このバイパス管には負圧を発生させるエゼクタが設けられている。吸気手段は、このエゼクタと、エゼクタと便器排水路との間に接続される吸引タンクとを有している。吸引タンクの内部は、ベローズの外側(第1室)とベローズの内側(第2室)とに区画されている。第1室はエゼクタに接続され、第2室は便器排水路に接続されている。バイパス管より上流側の給水管には、フラッシュバルブが接続されている。
【0003】
この吸気装置では、フラッシュバルブを作動させると、一定時間の間、給水管に洗浄水が通水され、便鉢へ洗浄水が供給されることとなる。この際、バイパス管を介してエゼクタ内にも洗浄水が流れるため、エゼクタが吸引タンクの第1室内の空気を吸引する。この結果、吸引タンク内のベローズは伸長する。ベローズが伸長する過程で第2室へ便器排水路から空気が吸引される。こうして、吸気行程が実行され、サイホン作用を発生させる。
【0004】
また、一定時間を経過すると、給水管に洗浄水が通水されなくなり、便鉢への洗浄水の供給が終了する。これによりフラッシュバルブの下流側の給水管、バイパス管及び第1室は大気開放され、吸引タンク内のベローズは収縮する。ベローズが収縮する過程で第2室内の空気が便器排水路へ排出される。こうして、排気行程が実行される。
【0005】
このような構成である従来の便器排水路の吸気装置では、便鉢への洗浄水の供給に連動させて便器排水路から空気を吸引するため、吸気手段を制御する制御装置を特別に必要としない。このため、吸気装置の構成は簡易なものである。
【0006】
【特許文献1】特開平7−54388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の便器排水路の吸気装置では、便鉢への洗浄水の供給と同時に吸気行程が実行されるため、便鉢へ供給される洗浄水の量が少ない状況でサイホン作用を発生させてしまう。このため、便鉢に洗浄水が供給されて便鉢内の水位を充分高くし、その位置エネルギーも利用して発生するサイホン作用に比べて、サイホン作用が弱いものになる。この場合、便鉢から便器排水路への汚物の排出が不充分になるおそれがある。
【0008】
また、吸気行程の実行により発生したサイホン作用は、便鉢内のほとんどの洗浄水が便器排水路に排出されることにより水封部が破封して終了する。このため、破封音が生じてしまう。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、便器洗浄を良好かつ静かに行うことができる便器排水路の吸気装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の便器排水路の吸気装置は、便器本体の水封部の下流側に連なる便器排水路から空気を吸引する吸気手段を備えた便器排水路の吸気装置において、
前記吸気手段は、負圧発生装置と、該負圧発生装置と前記便器排水路との間に接続される吸引タンクとを有し、
該吸引タンクが該便器排水路から空気を吸引する吸気行程の実行と、該吸引タンクが該便器排水路へ該空気を排出する排気行程の実行とを制御する制御装置をさらに備え、
該制御装置は、前記便器本体の便鉢への洗浄水の供給開始後に該吸気行程を実行し、該便鉢への洗浄水の供給終了前に該排気行程を実行することを特徴とする。
【0011】
このような構成である本発明の便器排水路の吸気装置では、便鉢への洗浄水の供給開始後、便鉢内の水位が充分高くなった状態で吸気行程が実行されてサイホン作用を発生させる。このため、便鉢内の洗浄水の水位上昇分の位置エネルギーも利用した強力なサイホン作用となり、汚物を便器排水路に確実に排出することができる。
【0012】
また、便鉢への洗浄水の供給終了前に排気行程が実行されるため、便器排水路内に空気が増加して便器排水路内を洗浄水により満水状態に維持することができなくなることにより、サイホン作用が終了する。この場合、水封部は破封しないため、破封音を生じない。
【0013】
したがって、本発明の便器排水路の吸気装置は、便器洗浄を良好かつ静かに行なうことができる。
【0014】
本発明の吸気装置において、制御装置は、便鉢へ洗浄水が供給され、便器排水路においてサイホン作用による排出流が継続している間に排気行程を実行することが好ましい。この場合、排気行程を実行することによりサイホン作用を確実に終了させることができる。
【0015】
本発明の吸気装置において、制御装置は、便鉢への洗浄水の供給を一旦停止した後、かつ便鉢に水封部を形成するための洗浄水の供給を再開する前に排気行程を実行することが好ましい。この場合、サイホン作用を確実に終了させて、所定の水位を有する水封部を形成することができる。
【0016】
本発明の吸気装置において、吸引タンクの内部は、設置時の上下方向で移動可能な隔膜によって第1室と第2室とに区画され、
第1室は負圧発生装置に接続され、第2室は便器排水路に接続されていることが好ましい。
【0017】
この場合、吸引タンクの内容積に応じて一定量の空気を便器排水路から吸引することができるため、安定してサイホン作用を発生させることができる。また、吸引タンクの内部が隔膜により第1室と第2室とに区画され、第2室のみが便器排水路と接続されているため、汚物を含んだ洗浄水や臭気を含んだ空気等が負圧発生装置側へ入り込むことを確実に防止している。
【0018】
負圧発生装置としては、負圧を発生させることができるものであれば、種々のものを採用することができる。例えば、洗浄水を供給することにより負圧を発生させるエゼクタの他、機械式ポンプ等を採用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の便器排水路の吸気装置を洋風水洗式便器に具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0020】
図1に示すように、実施例1の洋風水洗式便器は、便器本体1と、便器洗浄装置Sとを備えている。なお、便座及び便蓋の図示は省略する。
【0021】
便器本体1は便鉢2の上部内周にリム3を有している。また、便器本体1には便鉢2の下端から上方に延びる上昇流路2bが形成され、便鉢2の下方には水封部4が形成されている。便器本体1の上昇流路2bは接続管と接続されており、接続管内は便器排水路5、滞留部6及び排水口7とされている。
【0022】
また、便器洗浄装置Sは、洗浄水供給装置100と、便器排水路5の吸気装置200とを具備している。
【0023】
洗浄水供給装置100は、水道管と接続される導水管10と、導水管10を開閉する第1開閉弁V1とを備えている。
【0024】
導水管10は、便器本体1が据え付けられるトイレルームの床面又は壁面から引き出された水道管の止水栓V5に連通している。また、第1開閉弁V1より上流側には、止水弁及びストレーナを内蔵するストレーナ装置11と定流量弁12とが設けられており、下流側にはバキューブブレーカー13が設けられている。
【0025】
また、バキュームブレーカー13より下流側の導水管10に負圧発生装置であるエゼクタ30の導入口31が接続されている。エゼクタ30の導出口32にはタンク20の流入口21が接続され、タンク20は貯留した洗浄水を流出口22から流出可能になっている。
【0026】
タンク20は、流入口21に連通する流入室25と、流入室25と底部が連通され、流出口22に連通する流出室26とを有している。流入室25には大気口23が設けられ、ここには第2開閉弁V2が接続されている。流入室25は、エゼクタ30の導出口32に連通するノズル50から洗浄水が吐出され、旋回流が形成される旋回室29を有する。流出口22には、便器本体1のリム3まで延びる送出管40が接続されている。
【0027】
エゼクタ30は外部に連通する吸気口33を有している。この吸気口33は導出口32から洗浄水を導出することにより空気を吸引する。
【0028】
便器排水路5の吸気装置200は、以下の負圧蓄圧タンク70及び吸引タンク80等を有している。
【0029】
エゼクタ30の吸気口33は、逆止弁111が設けられた第1導圧管110を介して負圧を蓄圧する負圧蓄圧タンク70に接続されている。このため、洗浄水供給装置100の送水手段を構成するエゼクタ30が吸気装置200にも利用されている。
【0030】
逆止弁111より負圧蓄圧タンク70よりの第1導圧管110には、途中に第3開閉弁V3が設けられて外部に連通する第2導圧管120が分岐されている。また、途中に第4開閉弁V4が設けられ、便器排水路5から空気を吸引する吸引タンク80に連通する第3導圧管130が分岐されている。
【0031】
吸引タンク80の内部は、設置時の上下方向で移動可能な隔膜83によって第1室81と第2室82とに区画されている。第1室81は第3導圧管130に接続され、第2室82は吸引管90によって便器排水路5に接続されている。
【0032】
図2に示すように、第1開閉弁V1、第2開閉弁V2、第3開閉弁V3及び第4開閉弁V4は制御装置Cにより開閉タイミング及び開閉時間が制御されている。第2開閉弁V2、第3開閉弁V3及び第4開閉弁V4は、空気用の開閉弁であるため、圧力があまりかからず、水用の開閉弁に比べて小型にでき、開閉動作を小さな力で行なうことができるようになっている。
【0033】
以上の洋風水洗式便器では、便器排水路5の吸気装置200は、エゼクタ30、第1導圧管110、逆止弁111、負圧蓄圧タンク70、第2導圧管120、第3開閉弁V3、第3導圧管130、第4開閉弁V4、吸引タンク80、吸引管90及び制御装置Cによって構成されている。洗浄水供給装置は、導水管10、ストレーナ装置11、定流量弁12、第1開閉弁V1、バキュームブレーカー13、エゼクタ30、ノズル50、タンク20、第2開閉弁V2、送出管40、第1導圧管110、第2導圧管120、第3開閉弁V3及び制御装置Cによって構成されている。
【0034】
次に、実施例1の吸気装置200を組み込んだ便器洗浄装置Sの作動について図1に示す構成に基づいて説明する。
【0035】
[非洗浄時]
図3において、t1時点によりも前の非洗浄時には、第1開閉弁V1、第2開閉弁V2、第3開閉弁V3及び第4開閉弁V4は閉弁している。この状態では、タンク20内には洗浄水が貯留されている。吸引タンク80内の隔膜83は吸引タンク80内の下内壁面に当接している。
【0036】
[便鉢洗浄行程・負圧蓄圧行程]
用便後、図3のt1時点において、制御装置Cに便器洗浄の開始信号を送信する洗浄スイッチを使用者が操作することにより、制御装置Cによって第1開閉弁V1が開弁する。
【0037】
これにより、導水管10内を流れる洗浄水はエゼクタ30を通って旋回室29内に流入する。エゼクタ30内に洗浄水が流れることにより、エゼクタ30が負圧蓄圧タンク70内の空気を第1導圧管110及び逆止弁111を介して吸引し、吸引された空気は洗浄水とともに旋回室29内に流入する。旋回室29内では洗浄水が旋回するため、洗浄水中の空気は、良好に分離され、流入室25の上部に蓄積される。これにより、負圧蓄圧タンク70内に負圧が徐々に蓄積されるとともに、負圧蓄圧タンク70から吸引した空気の分だけ流入室25の水面が徐々に下がる。
【0038】
また、導水管10から供給された洗浄水と、タンク20内に貯留され、負圧蓄圧タンク70から吸引した空気に応じた量の洗浄水とが送出管40を介してリム3に供給される。リム3に供給された洗浄水は便鉢2の内面に沿って旋回しながら流れ落ち、便鉢2内に旋回流が形成される。この旋回流により、汚物は便鉢2の中央に集められる。なお、この旋回流により、ペーパーは、ほぐれて洗浄水となじみ、洗浄水中に分散する。
【0039】
[吸気行程]
図3のt2時点において、制御装置Cによって第4開閉弁V4が開弁される。これにより、負圧蓄圧タンク70内の負圧が第1導圧管110、第3導圧管130及び第4開閉弁V4を介して吸引タンク80の第1室81に伝達され、第1室81内が負圧になる。また、エゼクタ30内には引き続き洗浄水が供給されているため、エゼクタ30によっても第1室81内の空気が吸引される。これにより、吸引タンク80内の隔膜83は、第4開閉弁V4が開弁された当初は負圧蓄圧タンク70内の負圧により急激に引き上げられ、その後は、負圧蓄圧タンク70による吸引が終了するため、エゼクタ30のみにより吸引タンク80の上内壁面に当接するまで緩やかに引き上げられる。
【0040】
吸引タンク80により便器排水路5内の空気を第2室82に吸引する際には、便鉢2内の水位は、便鉢洗浄行程において便鉢2内の供給された洗浄水によって充分に高くなっており、水封部4の最高位部4aとの間の水頭差が充分に大きなものとなっている。このため、便鉢2内の洗浄水は、この水頭差による洗浄水の位置エネルギーと便器排水路5内の空気の吸引とにより、早期に便器排水路5内が洗浄水で満水状態になって強力なサイホン作用が発生し、少ない洗浄水で早期に排出流が形成される。
【0041】
この際、便鉢2内に形成された旋回流により便鉢2の中央に集められた汚物は、サイホン作用により便器排水路5へ排水される洗浄水に伴って便器排水路5へ確実に排出される。
【0042】
また、便器排水路5は、滞留部6によって下流側と封鎖され、便器排水路5は水封部4と滞留部6との間に存在する閉空間にされている。このため、確実に便器排水路5から一定量の空気を吸引することができるため、サイホン作用を安定して発生させることができる。
【0043】
また、吸引タンク80内が隔膜83によって第1室81と第2室82とに区画され、第2室82のみが便器排水路5と連通しているため、汚物を含んだ洗浄水や臭気を含んだ空気等が負圧蓄圧タンク70やエゼクタ30側へ入り込むことを確実に防止している。
【0044】
[洗浄水増加行程」
図1のt3時点において、便鉢2の水位は便鉢2後部の最低位部2aの高さ近傍にまで低下しており、この瞬間、制御装置Cによって第3開閉弁V3を開弁し、第4開閉弁V4を閉弁する。
【0045】
この際、いまだエゼクタ30内に洗浄水が供給されているため、外部の大量の空気が第3開閉弁V3、第2導圧管120及び第1導圧管110を介して旋回室29内に流入する。このため、流入室25内の洗浄水は、流入した大量の空気により流出室26及び送出管40を介してリム3に押し出される。これにより、流入室25内の水位は急激に大きく低下する。
【0046】
便鉢2内の水位が便鉢2後部の最低位部2aより低くなることにより、便器排水路5に便鉢2から空気が流入してサイホン作用が終了する前において、こうしてリム3に供給される洗浄水が増加する。つまり、リム3から供給される洗浄水は、導水管10から供給される洗浄水とタンク20に貯留されていた洗浄水とを加えたものであるため、便鉢2への単位時間当たりの洗浄水の供給水量は多くなっている。このため、水封部4は破封せず、便鉢2内の洗浄水は旋回を継続し、サイホン作用も継続する。また、便鉢2内の旋回流も強力になる。さらに、洗浄水の水勢も増加する。このため、便鉢2内に残留する汚物は、便器排水路5内へ押し出されるようにより排出されるとともに、便鉢2内の洗浄水中に浮遊する軽い汚物を便器排水路5へ排出することができる。。
【0047】
[排気行程]
図3のt4時点において、洗浄水増加行程により便鉢2内へ供給された洗浄水は未だ便鉢2内で旋回し、水封部4は破封していない。つまり、サイホン作用による排出流が継続している。このt4時点において、制御装置Cによって第1開閉弁V1を閉弁し、第4開閉弁V4を開弁する。これにより、吸引タンク80の第1室81が第4開閉弁V4、第3導圧管130、第1導圧管110、第2導圧管120及び第3開閉弁V3を介して外部と連通するため、第1室81内が大気圧になり、隔膜83が下降する。このため、便器排水路5内に第2室82から空気が排出され、便器排水路5内の空気が増加する。このため、便器排水路5内を洗浄水により満水状態に維持することができなくなり、サイホン作用が終了する。この場合、水封部4は破封しないため、破封音を生じない。
【0048】
[覆水行程]
図3のt5時点において、制御装置Cによって第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2を開弁し、第4開閉弁V4を閉弁する。これにより、エゼクタ30が外部から空気を吸引しながら旋回室29に洗浄水が流入する。洗浄水中の空気は、旋回室29内で良好に分離され、大気口23、第2開閉弁V2を介して外部に放出される。このため、タンク20内の洗浄水は洗浄開始前の所定の水位まで蓄積される。また、サイホン作用は完全に終了しており、流出室26から送出管40を介して洗浄水がリム3に供給され、便鉢2内に所定の水位を有する水封部が形成されて覆水する。
【0049】
[大気開放行程]
図3のt6時点において、制御装置Cによって第1開閉弁V1が閉弁し、第4開閉弁V4が開弁する。これにより、再度、吸引タンク80の第1室81が第4開閉弁V4、第3導圧管130、第1導圧管110、第2導圧管120及び第3開閉弁V3を介して外部と連通し、隔膜83が吸引タンク80の下内壁面に当接するまで下降する。この結果、隔膜83が洗浄前の所定の位置に戻され、次回の洗浄を安定して行なうことができる。その後、図13のt7時点において、制御装置Cによって第2開閉弁V2、第3開閉弁V3及び第4開閉弁V4が閉弁される。
【0050】
したがって、実施例1の便器排水路5の吸気装置200は、便器洗浄を良好かつ静かに行なうことができる。
【実施例2】
【0051】
実施例2の洋風水洗式便器は、実施例1と同様の構成を有し、図4に示すように、便器洗浄装置Sの作動が実施例1の洋風水洗式便器とは相違するのみである。
【0052】
便器洗浄装置Sの作動について相違する点を説明する。
【0053】
図4に示すように、洗浄水増加行程が終了した時点t3’から所定時間経過後のt4時点において、制御装置Cによって第1開閉弁V1を閉弁し、第4開閉弁V4を開弁する。これにより、吸引タンク80の第1室81が第4開閉弁V4、第3導圧管130、第1導圧管110、第2導圧管120及び第3開閉弁V3を介して外部と連通するため、第1室81内が大気圧になり、隔膜83が下降する。洗浄水増加行程が終了して所定時間経過したt4時点においては、洗浄水増加行程により便鉢2内へ供給された洗浄水もサイホン作用により便器排水路5へ排出され、便鉢2内の洗浄水の量は減少している。このため、便器排水路5内に第2室82から空気が押し込まれると、すぐに便器排水路5内を洗浄水により満水状態に維持することができなくなり、サイホン作用を直ちに、かつ確実に終了させることができる。また、この場合も、水封部4は破封しないため、破封音を生じない。他の作動は実施例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0054】
したがって、実施例2の便器排水路5の吸気装置200も、実施例1と同様、本発明の作用効果を奏する事ができる。
【0055】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は水洗式便器に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施例1、2の便器排水路の吸気装置を備えた洋風水洗式便器の模式図である。
【図2】実施例1、2の便器洗浄装置の制御装置を示す模式図である。
【図3】実施例1の洋風水洗式便器の作動を説明するタイミングチャートである。
【図4】実施例2の洋風水洗式便器の作動を説明するタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0058】
1…便器本体
2…便鉢
4…水封部
5…便器排水路
30…エゼクタ(負圧発生装置)
80…吸引タンク
200…吸気装置
C…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体の水封部の下流側に連なる便器排水路から空気を吸引する吸気手段を備えた便器排水路の吸気装置において、
前記吸気手段は、負圧発生装置と、該負圧発生装置と前記便器排水路との間に接続される吸引タンクとを有し、
該吸引タンクが該便器排水路から空気を吸引する吸気行程の実行と、該吸引タンクが該便器排水路へ該空気を排出する排気行程の実行とを制御する制御装置をさらに備え、
該制御装置は、前記便器本体の便鉢への洗浄水の供給開始後に該吸気行程を実行し、該便鉢への洗浄水の供給終了前に該排気行程を実行することを特徴とする便器排水路の吸気装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記便鉢へ洗浄水が供給され、前記便器排水路においてサイホン作用による排出流が継続している間に前記排気行程を実行する請求項1記載の便器排水路の吸気装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記便鉢への前記洗浄水の供給を一旦停止した後、かつ前記便鉢に前記水封部を形成するための該洗浄水の供給を再開する前に前記排気行程を実行する請求項1記載の便器排水路の吸気装置。
【請求項4】
前記吸引タンクの内部は、設置時の上下方向で移動可能な隔膜によって第1室と第2室とに区画され、
該第1室は前記負圧発生装置に接続され、該第2室は前記便器排水路に接続されている請求項1乃至3のいずれか1項記載の便器排水路の吸気装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−255663(P2008−255663A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−98911(P2007−98911)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】