説明

便器装置

【課題】便蓋を閉止状態にするだけで便器ボウル内の細菌やカビの増殖を効果的に抑制でき、しかも複雑な機構が一切不要であり、これにより安価で且つ省スペースで抗菌効果を高めること。
【解決手段】便器本体3内の便器ボウル4の上面に便座5及び便蓋6がそれぞれ開閉自在に配置された洋式の便器2を備え、便器2の一部に揮発性抗菌剤7を収容して保持するホルダ8を設けると共に便器ボウル内に臨んで揮発性抗菌剤7から揮発した抗菌成分7aを放出する放出口を設け、該放出口を介して揮発した抗菌成分7aをボウル内空間9に拡散可能とした便器装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器装置に関し、詳しくは便器ボウル内の細菌やカビの増殖を防止しようとするための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、便器ボウル内の汚れを落とすために、一般には洗剤などを用いて清掃が行われている。
【0003】
ところで便器ボウル内には、各種の細菌やカビが生育するために必要な水分や栄養が十分に存在している。このような便器ボウル内での細菌やカビの増殖は、洗剤では防ぎきれず、これが汚れ、ぬめり、臭気の発生原因となる。
【0004】
これまでも便器ボウル内の細菌やカビの繁殖、増殖を抑制する発明が開示されているが、便器ボウルの洗浄水質を改質するものや、高電圧により発生させるイオン物質(例えば、特許文献1参照)やオゾン(例えば、特許文献2参照)を利用するなど、複雑な機構を必要とするものが多数である。このため費用が高くつき、設置スペースが広くなるという課題があった。
【特許文献1】特開2005−192995号公報
【特許文献2】特開平6−158701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、便蓋を閉止状態にするだけで便器ボウル内の細菌やカビの増殖を効果的に抑制でき、しかも複雑な機構が一切不要であり、これにより安価で且つ省スペースで抗菌効果を高めることができる便器装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明は、便器本体3内の便器ボウル4の上面に便座5及び便蓋6がそれぞれ開閉自在に配置された洋式の便器2を備え、便器2の一部に揮発性抗菌剤7を収容して保持するホルダ8を設けると共に便器ボウル内に臨んで揮発性抗菌剤7から揮発した抗菌成分7aを放出する放出口を設け、該放出口を介して揮発した抗菌成分をボウル内空間9に拡散可能としたことを特徴としている。
【0007】
このような構成とすることで、便蓋6の閉止状態では、揮発性抗菌剤7から揮発した抗菌成分7aを放出口を経て便蓋6の閉止により形成されるボウル内空間9に拡散・充満させることが可能となり、これにより、便器ボウル4内の細菌やカビの増殖を抑制できるので、微生物に起因する汚れ、ぬめり、臭気の発生を効果的に抑えることができ、そのうえ、便器2の一部に揮発性抗菌剤7入りホルダ8を設置し且つ便器ボウル4に臨む放出口を設けるだけでよく、しかも便蓋6を密閉用カバー体として有効利用できるので、複雑な機構が一切不要となる。
【0008】
また、人体の有無を検知する人体検知センサ20からの信号を受けて人体が検知されたときは前記便蓋6を自動で開放し、人体が検知されないときは前記便蓋6を自動で閉止するための便蓋自動開閉機構10を備えるのが好ましく、この場合、人体検知による便蓋自動開閉機構10を併用することにより、使用時以外は自動的に便蓋6を閉止状態に維持できるので、抗菌成分7aを長時間、便蓋6の閉止により形成されるボウル内空間9に拡散、充満させることができ、便器2外部への無駄な拡散を防止できるようになる。
【0009】
また、前記揮発性抗菌剤7入りのホルダ8を便器2の一部に着脱自在に設けるのが好ましく、この場合、ホルダ8を取り出して揮発性抗菌剤7の補充又は交換が容易となる。
【0010】
また、前記揮発性抗菌剤7入りのホルダ8を便蓋6に設けるのが好ましく、この場合、ホルダ8の設置箇所は便器本体3よりも便蓋6の方が空間的な制約が少なくなり、しかも便器本体3を改造する必要がないため、既に発売している商品(既製便器)への本発明の適用が容易となる。
【0011】
また、一定の温度条件下で抗菌成分の揮発量を促進させるための制御機能を備えるのが好ましく、この場合、例えばトイレ室内温度が一定温度以上となったときは抗菌成分の揮発量を促進させることで、温度上昇に伴う細菌やカビの増殖速度の増加に対応でき、それらの増殖抑制効果を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、便器の一部に設置したホルダ内の揮発性抗菌剤から揮発する抗菌成分を便器ボウルに臨んで設けた放出口を介してボウル内空間に放出可能としたことにより、便器ボウル内での細菌やカビの増殖を効果的に抑制できるものであり、また従来のような高電圧により発生させるイオン物質やオゾンを利用する場合のような複雑な機構が一切不要となる結果、安価で且つ省スペースで抗菌効果を高めることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0014】
図1は、請求項1に対応する実施形態であり、便器装置1は、便器本体3内の便器ボウル4の上面に便座5及び便蓋6がそれぞれ開閉自在に配置された洋式の便器2と、便器本体3の一部に設置される揮発性抗菌剤7とを備えている。便器本体3の上面後部には、給水用タンク20や局部洗浄装置等が設置されており、給水タンクからの水は便器ボウル4の上部外周のリム通水部を通って便器ボウル4の内部に吐出されるものであり、この吐出された水により排泄された汚物や汚水をサイホン作用を利用してトラップ部を経て排出管へと排出される。なお本発明でいう便器2とは、便器本体3と便座5と便蓋6まで含むものとする。
【0015】
上記便器本体3の一部には揮発性抗菌剤7を収容して保持するホルダ8を設置している。図1の例では局部洗浄装置を内蔵する機能ハウジング11内にホルダ8を設置している。また、便器ボウル4内に臨んで放出口(図示せず)が設けられており、揮発性抗菌剤7から揮発した抗菌成分7aを放出口を介してボウル内空間9に拡散させるようにしている。
【0016】
なお、放出口の形態は特に問わず、例えば便器ボウル4の喫水面よりも上方部に開口したもの、或いは、揮発性抗菌剤7から便器ボウル4内にノズルを伸ばしてその先端を放出口とするもの等、適宜に設計変更自在であり、要は便器ボウル4内に臨んで開放されているものであればよい。
【0017】
揮発性抗菌剤7としては、液体であって常温で蒸発や昇華しやすい抗菌剤、例えば、アリルイソチオシアネートやフィトンチッド(植物精油)のような揮発性抗菌性化合物が使用される。それ以外に、例えばイソチアン酸化合物、ヒノキチオール、タケ抽出オイル、シソ抽出オイル、チアゾリルスルファミド化合物等が挙げられる。
【0018】
しかして、ホルダ8内に収容保持された揮発性抗菌剤7から揮発した抗菌成分7aは放出口から便器ボウル4内に放出されて、便蓋6の閉止により形成されるボウル内空間9に揮発した抗菌成分7aが拡散して充満するようになる。これにより、便器ボウル4内での細菌やカビの増殖を抑制できる結果、微生物に起因する汚れ、ぬめり、臭気の発生を抑えることができる。さらに抗菌成分7aをボウル内空間9に長くとどめておくことで、細菌やカビの増殖をより効率的に抑制でき、便器2の清潔性を高く維持するセルフクリーニング効果が得られる。さらに、便蓋6を閉止することでボウル内空間9に面した便蓋6の裏面や便座5表面の抗菌効果も同時に得られる。
【0019】
また、便器本体3の一部に揮発性抗菌剤7入りのホルダ8を設置し且つ便器ボウル4に臨む放出口を設けるだけでよく、そのうえ便蓋6を抗菌成分7aがトイレ空間に放散するのを防止するためのカバー体として有効利用できるので、従来のような高電圧により発生させるイオン物質やオゾンを利用する場合のような複雑な機構が一切不要となり、安価で抗菌効果を高めることができると共に、省スペース化を図ることができ、便器装置1の小型化に寄与できる利点もある。
【0020】
図2は、請求項2に対応する実施形態であり、人体の有無を検知する人体検知センサ20からの信号を受けて、人体が検知されたときは便蓋6を自動で開放し、人体が検知されないときは便蓋6を自動で閉止するための便蓋自動開閉機構10を備えている。他の構成は図1の実施形態と同様であり、対応する部位には同一符号を付しておく。ちなみに、便器2の不使用時に便蓋6を開状態としておくと揮発する抗菌成分7aは便器2外部へも拡散していく。もし使用者が用を足した後に便蓋6を閉じずに便器2から離れると、揮発する抗菌成分7aの外部拡散が継続されるので、抗菌効果の発現に対して効率が悪くなる。そこで本例では図2(c)に示す人体検知による便蓋自動開閉機構10と併用することで、使用時以外は、人体検知センサ20からの信号を受けて制御部21が便蓋回動モータ12を駆動して図2(b)のように便蓋6を自動的に閉止させるものであり、これにより、便器2外部への無駄な拡散を防止できるようになる。
【0021】
図3は、請求項3と対応する実施形態であり、揮発性抗菌剤7を収容して保持するカセット式のホルダ8を便器本体3の一部に着脱自在に設置したものである。他の構成は図1或いは図2の実施形態と同様であり、対応する部位には同一符号を付しておく。本例では、便器本体3の後方上部の側面にホルダ挿入口13を設け、カセット式のホルダ8をホルダ挿入口13から押し込んだ状態で、ホルダ8の開口部(抗菌成分7aを徐放させる穴)が便器ボウル4内に臨む放出口と連通する構造となっている。このようにホルダ8をホルダ挿入口13から着脱自在とすることで、ホルダ8を取り出して揮発性抗菌剤7の補充又は交換が容易にできるものとなり、しかも便器本体3の側面からホルダ8の着脱操作ができるので、補充又は交換作業に手間がかからないものである。
【0022】
図4は、請求項4に対応する実施形態であり、揮発性抗菌剤7を収容すると共に揮発する抗菌成分7aの吐出口8aを有するホルダ8を便蓋6に設置した場合の一例を示している。他の構成は図1或いは図2の実施形態と同様であり、対応する部位には同一符号を付しておく。本例では、ホルダ8を便蓋6に対して着脱可能としている。ここでは、便蓋6の裏面にリップ14a付き固定用部材14を取り付け、ホルダ8に上記リップ14aに掛止される固定用突起15を突設させている。しかして、ホルダ8を便蓋6に設けた固定用部材14に対してスライド取り付け式でワンタッチで固定できると共に取り外しも容易に行なうことができる。しかもホルダ8の設置に際して、便器本体3よりも便蓋6の方が空間的な制約が少ないため設置が容易となり、そのうえ便器本体3を改造する必要がないため、既製の便器への対応が容易となる。さらに図3で述べた便蓋自動開閉機構10と併用する場合においては、便器本体3側に便蓋自動開閉機構10を設置するスペースが増える分だけ、便蓋6へのホルダ8の装着は特に有効となる。
【0023】
図5は、請求項5に対応する実施形態であり、一定の温度条件下で抗菌成分の揮発量を促進させるための制御機能の一例を示している。本例では、揮発性抗菌剤7を収容すると共に揮発する抗菌成分7aの吐出口8aを有するホルダ8を加熱するヒータ(抵抗体)16と商用交流電源17とからなる直列回路に制御回路18が接続されており、制御回路18は温度センサ19からの温度検知信号に応じてヒータ16を駆動制御する。なお本例のホルダ8は、例えば、図4に示す便蓋6に設置されるものであるが、勿論これに限らず、便器本体3側に設置されてもよい。しかして、トイレ室内の温度が上昇して、温度センサ19が20℃以上を検知すると、制御回路18はヒータ16をある時間間隔で発熱させる。これにより、揮発性抗菌剤7が加熱されて、抗菌成分の揮発量を、低温時(20℃以下の条件下)よりも増やすことができる。これにより、温度上昇に伴う細菌やカビの増殖速度の増加に対応でき、低温時よりもそれらの増殖抑制効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態を示す便器装置の側面断面図である。
【図2】他の実施形態であり、(a)(b)は同上の便蓋を自動開閉する便蓋自動開閉機構の動作説明図であり、(c)は便蓋自動開閉機構のブロック図である。
【図3】更に他の実施形態であり、同上の揮発性抗菌剤を収容保持するホルダを便器の一部に着脱自在に設ける場合の一例を示す斜視図である。
【図4】更に他の実施形態であり、同上の揮発性抗菌剤を収容保持するホルダを便蓋に着脱自在に設ける場合の一例を示す断面図である。
【図5】更に他の実施形態であり、同上の揮発性抗菌剤の揮発量を制御するヒータ及び制御回路の説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 便器装置
2 便器
3 便器本体
4 便器ボウル
5 便座
6 便蓋
7 揮発性抗菌剤
7a 抗菌成分
8 ホルダ
9 ボウル内空間
10 便蓋自動開閉機構
20 人体検知センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体内の便器ボウルの上面に便座及び便蓋がそれぞれ開閉自在に配置された洋式の便器を備え、便器の一部に揮発性抗菌剤を収容して保持するホルダを設けると共に便器ボウル内に臨んで揮発性抗菌剤から揮発した抗菌成分を放出する放出口を設け、該放出口を介して揮発した抗菌成分をボウル内空間に拡散可能としたことを特徴とする便器装置。
【請求項2】
人体の有無を検知する人体検知センサからの信号を受けて人体が検知されたときは前記便蓋を自動で開放し、人体が検知されないときは前記便蓋を自動で閉止するための便蓋自動開閉機構を備えたことを特徴とする請求項1記載の便器装置。
【請求項3】
前記揮発性抗菌剤入りのホルダを便器の一部に着脱自在に設けることを特徴とする請求項1又は2記載の便器装置。
【請求項4】
前記揮発性抗菌剤入りのホルダを便蓋に設けることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の便器装置。
【請求項5】
一定の温度条件下で抗菌成分の揮発量を促進させるための制御機能を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の便器装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−127385(P2009−127385A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306601(P2007−306601)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】