説明

保水性床材および保水性床材の配置構造

【課題】灌水パイプを容易かつ確実に収納できるとともに、灌水パイプを容易に配管することが可能な保水性床材および保水性床材の配置構造を提供することを目的とする。
【解決手段】保水性能および透水性能を有する本体ブロック10を備えており、本体ブロック10の上部に、灌水パイプ20が収納される配管溝部11を、この本体ブロック10の一側面から他側面に向かって形成する。これにより、配管溝部は、本体ブロックの上部において配管溝部の延在方向および上方に向かって開放された状態となり、灌水パイプを、配管溝部に、容易かつ確実に収納することができる。また、灌水パイプを配管する際は、バルコニーや屋上等の床面に保水性床材を並べ終わった後に、配管溝部に沿って灌水パイプを配置するだけで済むため、灌水パイプを容易に配管することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルコニーや屋上等の床面に配置される保水性床材、保水性床材の配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒートアイランド現象の抑制を目的として、屋上緑化や壁面緑化等を始め、建物の温度上昇を防止するための様々な技術が開発されている。
特許文献1には、保水性能および透水性能を有するポーラスコンクリートにより形成されたブロックについて記載されている。このようなブロックを屋上に敷き詰め、保水させることにより、建物の温度上昇を抑制することが可能となっている。また、このブロックには、多数の小穴をあけた合成樹脂製の灌水パイプが埋設されており、この灌水パイプからブロックに水を供給できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−097884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、灌水パイプが埋設されたブロックを床材として、バルコニーや屋上等の床面に敷き詰めるに際し、例えば隣接するブロック同士の灌水パイプを接続したい場合には、埋設された灌水パイプの向き等を考慮しながらブロックを並べなければならないため手間である。
そこで、ブロックを並べ終わった後に灌水パイプを配管したいという要望がある。
ところが、ブロックを並べ終わった後に、このブロック内に灌水パイプを埋設することは極めて困難である。また、隣り合うブロック間に配管スペースを空けて、この配管スペース内に灌水パイプを配管するには、配管スペース分の隙間を考慮してブロックの設計や施工を行わなければならないため手間である。また、敷き詰められたブロック表面に灌水パイプを張り巡らせてしまうと、見映えの問題だけでなく、灌水パイプが転倒の原因ともなり得るため好ましくない。
【0005】
本発明の課題は、灌水パイプを容易かつ確実に収納できるとともに、灌水パイプを容易に配管することが可能な保水性床材および保水性床材の配置構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、例えば図1〜図11に示すように、バルコニーや屋上等の床面Fに配置される保水性床材において、
保水性能および透水性能を有する本体ブロック10(10A,10B,10C)を備えており、
前記本体ブロック10(10A,10B,10C)の上部には、灌水パイプ20が収納される配管溝部11(11A,11B,11C),12が、この本体ブロック10(10A,10B,10C)の一側面から他側面に向かって形成されていることを特徴とする。
【0007】
なお、前記本体ブロック10(10A,10B,10C)としては、例えば砂を混入することなく、かつ強度を補う添加剤を添加することなく、粒度3〜20mmの軽石(乾燥比重が0.4)50〜62重量%とポルトランドセメント50〜38重量%との配合物に、水40〜50重量%を散布して混練した状態の生コンクリート10aを固めたものが挙げられる。
また、この他に、アスファルトを骨材同士の結合材として用いて固めたものも挙げられる。すなわち、保水性能および透水性能を有する本体ブロックを備える保水性アスファルト床材となり、舗装材等として用いることができる。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、前記本体ブロック10(10A,10B,10C)の上部には、前記配管溝部11(11A,11B,11C),12が、この本体ブロック10(10A,10B,10C)の一側面から他側面に向かって形成されているので、この配管溝部11(11A,11B,11C),12は、前記本体ブロック10(10A,10B,10C)の上部において配管溝部11(11A,11B,11C),12の延在方向および上方に向かって開放された状態となる。これによって、前記灌水パイプ20を、前記配管溝部11(11A,11B,11C),12に対して、上方から下方に差し入れるだけで容易かつ確実に収納することができる。
また、前記灌水パイプ20を配管する際は、バルコニーや屋上等の床面Fに保水性床材を並べ終わった後に、前記配管溝部11(11A,11B,11C),12に沿って灌水パイプ20を配置するだけで済む。これによって、従来とは異なり、例えば本体ブロック10(10A,10B,10C)内に灌水パイプ20を埋設したり、隣り合う保水性床材間に配管スペースを設けたり、敷き詰められた保水性床材の表面に灌水パイプ20を張り巡らせる必要がなくなるので、前記灌水パイプ20を容易に配管することが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、例えば図1〜図3,図6,図8,図9,図11に示すように、請求項1に記載の保水性床材において、
前記配管溝部11(11B),12の幅および深さは、前記灌水パイプ20の直径と略等しくなるように設定されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、前記配管溝部11(11B,11C),12の幅および深さは、前記灌水パイプ20の直径と略等しくなるように設定されているので、前記灌水パイプ20を、前記配管溝部11(11B,11C),12に対して、より確実に収納することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、例えば図1〜図6,図8〜図11に示すように、請求項1または2に記載の保水性床材において、
前記配管溝部11(11A,11B,11C),12は直線状または曲線状に形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、前記配管溝部11(11A,11B,11C),12は直線状または曲線状に形成されているので、前記灌水パイプ20を、この配管溝部11(11A,11B,11C),12に沿って直線状または曲線状に配管することができる。すなわち、保水性床材を直線状に配置するだけでなく、例えば曲線状やジグザグ状に配置したとしても、これに対応して前記灌水パイプ20を配管することができる。これによって、保水性床材を直線状以外の形態でバルコニーや屋上等の床面Fに配置した場合であっても、前記灌水パイプ20を容易に配管することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、例えば図2〜図6,図8〜図11に示すように、請求項1〜3のいずれか一項に記載の保水性床材において、
上部が開口するとともに前記本体ブロック10(10A,10B)が収納されるトレー30を備えており、
前記トレー30は、底板部31と、この底板部31の周縁部から立ち上がる側板部32とを有しており、
前記側板部32には、前記本体ブロック10(10A,10B)の配管溝部11(11A,11B),12に対応する切欠部33,33が形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、前記トレー30内に、前記本体ブロック10(10A,10B)を収納することができるので、この本体ブロック10(10A,10B)を、単独では強度を維持できない薄さにしたとしても、この本体ブロック10(10A,10B)の強度が低下することを確実に防ぐことができる。これによって、本体ブロック10(10A,10B)の薄型化および保水性床材自体の軽量化に貢献できる。
また、前記トレー30の側板部32に、前記本体ブロック10(10A,10B)の配管溝部11(11A,11B),12に対応する切欠部33,33が形成されているので、前記本体ブロック10(10A,10B)をトレー30内に収納しても、前記灌水パイプ20を確実に収納することができる。
さらに、前記トレー30のうち、前記切欠部33,33の下縁よりも下方の水は、トレー30内に貯留されることになり、前記切欠部33の下縁よりも上方の水は、余剰水として、切欠部33,33から外部に排出されることになる。これによって、前記トレー30内は満水になることが無くなるので、例えば雑菌や虫の繁殖等、トレー30内の水が過剰である場合に発生しやすい諸問題が発生し難くなる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、例えば図6,図8〜図11に示すように、バルコニーや屋上等の床面Fに、請求項1〜4のいずれか一項に記載の保水性床材を複数配置してなる保水性床材の配置構造であって、
前記複数の保水性床材は、これら複数の保水性床材の本体ブロック10(10A,10B,10C)に形成された配管溝部11(11A,11B,11C),12同士を接続するようにして並設されていることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、前記複数の保水性床材は、これら複数の保水性床材の本体ブロック10(10A,10B,10C)に形成された配管溝部11(11A,11B,11C),12同士を接続するようにして並設されているので、前記複数の保水性床材を並設する同時に、前記配管溝部11(11A,11B,11C),12同士を接続できる。これによって、複数の配管溝部11(11A,11B,11C),12からなる灌水パイプ20配管の用の溝を、前記複数の保水性床材の並設方向に沿って長尺なものにすることができる。したがって、バルコニーや屋上等の床面Fに保水性床材を並べ終わった後に、前記灌水パイプ20をより容易に配管することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、保水性床材の本体ブロックの上部には、配管溝部が、この本体ブロックの一側面から他側面に向かって形成されているので、この配管溝部は、本体ブロックの上部において配管溝部の延在方向および上方に向かって開放された状態となる。これによって、灌水パイプを、配管溝部に対して、上方から下方に差し入れるだけで容易かつ確実に収納することができる。
また、灌水パイプを配管する際は、バルコニーや屋上等の床面に保水性床材を並べ終わった後に、配管溝部に沿って灌水パイプを配置するだけで済む。これによって、従来とは異なり、例えば本体ブロック内に灌水パイプを埋設したり、隣り合う保水性床材間に配管スペースを設けたり、敷き詰められた保水性床材の表面に灌水パイプを張り巡らせる必要がなくなるので、灌水パイプを容易に配管することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】保水性床材の一例を示す斜視図である。
【図2】保水性床材の一例を示す斜視図である。
【図3】曲線状の配管溝部の一例を示す平面図である。
【図4】トレーの一例を示す斜視図である。
【図5】図2に示す保水性床材を製造する態様を示す斜視図である。
【図6】図2に示す保水性床材の配置構造を示す斜視図である
【図7】貯水タンクを示す断面図である。
【図8】並設された複数の保水性床材の上面にセラミックタイルを設けるとともに植物を植栽する形態を示す断面図である。
【図9】並設された複数の保水性床材に給水した状態を示す断面図である。
【図10】配管溝部の他の一例を示す側面図である。
【図11】配管溝部の他の一例を示す斜視図である。
【図12】保水性床材を製造する態様の他の一例を示す断面図である。
【図13】保水性床材の一例を示す斜視図である。
【図14】図13に示す保水性床材を製造する態様を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
<第1の実施の形態>
図1および図2は本発明に係る保水性床材の一例を示す斜視図である。この保水性床材は、例えばバルコニーや屋上等の床面Fに複数並設して配置される。
図1および図2において符号10は、本体ブロックを示す。この本体ブロック10は、保水性能および透水性能を有しており、水が蒸発する際に周囲の熱を奪いながら蒸発する性質を利用して、この本体ブロック10が設置される場所の周囲の温度上昇を抑制したり、温度低下を促したりすることを目的とするものである。
より詳細には、本体ブロック10に浸透して保持された水が蒸発する際に、この本体ブロック10の周囲の熱を奪いながら蒸発する。したがって、本体ブロック10を備える保水性床材をバルコニーや屋上等の床面Fに対して広域に配置することによって、バルコニーや屋上の温度の上昇を広い範囲で抑制したり、温度を広い範囲で低下させたりできる、というものである。
図2に示す保水性床材は、本体ブロック10をトレー30に収納し、本体ブロック10の薄型化と、保水性床材自体の軽量化を図ったものである。
【0021】
また、本体ブロック10は、平面視において四角形であり、かつ平板状に形成されている。本体ブロック10の上部には、図1〜図3に示すように、円筒状の灌水パイプ20が収納される配管溝部11,12が、この本体ブロック10の一側面から他側面に向かって形成されている。
なお、この本体ブロック10は、透水性能を有するとともに平板状に形成されていることから、上述のように保水性能を有しつつも水が必要以上に溜まらず、比較的短い期間で水を蒸発させることができる。このため、例えば夏場や梅雨時における雑菌や虫の繁殖等の問題が発生し難くなる。
【0022】
また、本体ブロック10は、上述のように平面視において四角形であり、かつ平板状に形成されていることから、上面と、底面と、これら上面と底面との間における四方の側面とを備えるように概略構成されている。四方の側面のうち、一つの側面を本体ブロック10の一側面と称し、この一つの側面とは異なる他の側面を本体ブロック10の他側面と称する。
すなわち、配管溝部11,12は、本体ブロック10の上面側と底面側のうち、上部である上面側において、一つの側面から、この一つの側面とは異なる他の側面に向かって形成されている。
【0023】
また、配管溝部11,12は、図8に示すように、断面視において四角溝となるように形成されている。すなわち、溝の底となる底部と、溝の壁となり、かつ、底部の両側縁から本体ブロック10の上面まで立ち上がる溝壁部とからなる。
このように四角溝となるように形成された配管溝部11,12の幅および深さは、灌水パイプ20の直径と略等しくなるように設定されている。つまり、灌水パイプ20を、配管溝部11,12にぴったりに差し入れることができる。
【0024】
なお、本実施の形態では配管溝部11,12を四角溝となるように形成したが、これに限られるものではなく、例えば図10に示すように断面視において三角溝となるように形成しても良いものとする。
図10に示す配管溝部11Aは、本体ブロック10Aの上面を三角形状に切り欠くようにして形成されたものである。
この配管溝部11Aは三角溝であるため、その幅および深さは、円筒状の灌水パイプ20の直径よりも長くなるように設定されている。
【0025】
また、前記配管溝部11,12は直線状または曲線状に形成されており、灌水パイプ20を、この配管溝部11,12に沿って直線状または曲線状に配管できるようになっている。すなわち、保水性床材を直線状に配置するだけでなく、例えば曲線状やジグザグ状に配置したとしても、これに対応して灌水パイプ20を配管することができる。
図1および図2に示す配管溝部11は直線状に形成されたものであり、図3に示す配管溝部12は曲線状に形成されたものである。
【0026】
配管溝部11は、本体ブロック10の一側面から、この一側面とは正反対に位置する他側面に向かって形成されている。
また、この配管溝部11は、本体ブロック10上面の中央部を通過するとともに、前記一側面および他側面に対して傾斜しないように形成されている。
【0027】
配管溝部12は、本体ブロック10の一側面から、この一側面に直交して設けられる側面に向かって形成されている。
また、この配管溝部12は、本体ブロック10上面の中央部で屈曲するとともに、前記一側面および他側面に対して傾斜しないように形成されている。
なお、本実施の形態においては、この曲線状の配管溝部12には、L型のジョイント部材23を用いて屈曲形成された灌水パイプ20が収納されている。
【0028】
なお、本実施の形態において配管溝部11,12は、本体ブロック10の中央部を通過するものとしたが、これに限られるものではなく、例えば図11に示すように、端部を通過するものとしても良い。
図11に示す配管溝部11Bは、本体ブロック10Bの端部を切り欠くようにして形成されたものである。このような配管溝部11Bに灌水パイプ20を収納するためには、本体ブロック10Bの配管溝部11Bが形成された端部と、この本体ブロック10Bに隣接する他の本体ブロック10Bの配管溝部11Bが形成されない端部とを当接させる。これによって、灌水パイプ20を収納可能な配管溝部11Bとすることができる。
【0029】
また、直線状の配管溝部としては、以上に限られるものではなく、例えば、直線状の配管溝部を、本体ブロック10の一側面および他側面に対して傾斜するように形成しても良いし、複数の直線状の配管溝部を、互いに交差するように形成しても良い。
【0030】
また、曲線状の配管溝部としては、本実施の形態では略L型に屈曲した形態のものを採用したが、これに限られるものではなく、例えば、より緩やかな円弧型に屈曲する配管溝部としても良いし、略T型に屈曲する配管溝部としても良い。
また、曲線状の配管溝部を複数用いて、互いに交差するように形成したものを採用しても良い。
さらに、曲線状であるから、当然、本体ブロック10の一側面および他側面に対して傾斜するように形成したものであっても良い。
【0031】
本体ブロック10の四方の側面のうち、前記配管溝部11,12が形成されない側面には、図1に示すように、凹部10bおよび凸部10cが設けられている。これによって、複数の本体ブロック10…を隣り合わせて並べる際に、互いに隣り合う本体ブロック10,10のうち、一方の本体ブロック10の凸部10cが、他方の本体ブロック10の凹部10bに嵌合可能となる。
これら凹部10bおよび凸部10cは、複数のトレー30…を並設する際の位置決めとして用いることができる。
なお、配管溝部11,12自体も、隣り合う本体ブロック10,10同士の位置決め手段の一つとして用いることができるため、配管溝部11,12が形成される部分と、これら凹部10bおよび凸部10cが形成される部分とが重複する際は、配管溝部11,12が優先して形成される。
【0032】
本実施の形態の本体ブロック10としては、例えば砂を混入することなく、かつ強度を補う添加剤を添加することなく、粒度3〜20mmの軽石(乾燥比重が0.4)50〜62重量%とポルトランドセメント50〜38重量%との配合物に、水40〜50重量%を散布して混練した状態の生コンクリート10aを型枠に入れて固めたものが挙げられる。なお、軽石は産地により乾燥比重が多少ばらつくが、大きな相違はない。
【0033】
また、配合比を容積で表すと、軽石(乾燥比重が0.4)70〜85容積%と、ポルトランドセメント30〜15容積%との配合物に対して水20〜30容積%を散布して混練するものである。
さらに、このように軽石を骨材とするコンクリート10aの含水比重は、セメントと砕石等の天然骨材とポルトランドセメントのみを使用したコンクリートの約60%であり、乾燥比重は、約50%である。
【0034】
保水性能については、軽石を骨材として使用した本体ブロック10の含水比重は約1200kg/mであり、およそ300kg/m以上の水分を保水できる。また、浸透性能については、軽石で保水しきれなくなった水分を透過させるので、天然骨材を使用したコンクリートと同等の性能を得ることができる。
すなわち、このような軽石を骨材とする本体ブロック10を、例えば舗装面の舗装材として用いた場合、例えば本体ブロック10を50mmの厚みで舗装すると、含水重量は60kg/mであり、乾燥比重は45kg/mであるから15リットルの水を保水することが可能となり、優れた性能を有している。
【0035】
なお、固化する前の状態である生コンクリート10aは適当な粘度を有しており、固化した後の状態である本体ブロック10は、骨材同士の間に、連続する隙間を有する状態となっている。
また、この本体ブロック10は、打設される型枠(または、トレー30)の内側面に象られたような形状となっている。
また、本体ブロック10は、上部が下部よりもオーバーハングするように形成されており、複数の本体ブロック10…を並べることによって、隣り合う本体ブロック10,10間に空洞を形成できる。このような空洞は外部から視認しにくいという利点があるため、この空洞に補助用の灌水パイプ(図示せず)等を配設し、本体ブロック10の下部からも給水できるようにしても良い。
【0036】
前記灌水パイプ20は、図9に示すように、多数の小穴20a…をあけた合成樹脂製のものが用いられているが、これに限られるものではない。例えば多数の小穴が形成されるとともに可撓性を有するホース状のものでも良い。なお、小穴20aの数は適宜変更可能である。
また、灌水パイプ20の末端には、図1および図2に示すように、この灌水パイプ20の孔を塞ぐためのキャップ21が設けられるようになっている。
【0037】
また、この灌水パイプ20は、図6に示すように、貯水タンク1や給水設備5等の給水手段に接続されている。
なお、この灌水パイプ20と給水手段とを接続するものとして、給水用の小穴が形成されない接続パイプ22が用いられている。また、灌水パイプ20と接続パイプ22とのジョイントや、灌水パイプ20同士のジョイント、接続パイプ22同士のジョイントには、L型のジョイント部材23やT型のジョイント部材24、その他、図示しない複数に枝分かれしたジョイント部材を用いている。
【0038】
なお、保水性床材としては、以上のような本体ブロック10のみで構成することができる。すなわち、本体ブロック10を保水性床材として、バルコニーや屋上等の床面Fに複数並設して配置することができ、配管溝部11,12に収納される灌水パイプ20から水を供給することによって、建物の温度上昇を防止できるようになっている。
【0039】
前記トレー30は、上部が開口するとともに本体ブロック10が収納されるものであり、図4に示すように、底板部31と、この底板部31の周縁部から立ち上がる側板部32とを備えている。
また、このトレー30は、平面視正方形状に形成されているが、これに限られるものではない。すなわち、例えば長方形・平行四辺形・菱形等のような四角形状であれば、複数の保水性床材同士を並べやすくなるという利点があるため好ましい。さらに、このような四角形状に限られず、複数の保水性床材同士を並べやすい形状であれば、どのような形状でもよいものとする。
なお、本実施の形態において、トレー30は樹脂製とされている。
【0040】
底板部31は、平面視において正方形状に形成されている。
側板部32は、底板部31の四方の縁部から斜め上方に立ち上がる傾斜部34と、この傾斜部34の上端部から水平方向外側に延出する水平部35と、この水平部35の延出端部から上方に立ち上がる立ち上がり部36とを有している。
すなわち、トレー30は、上部が下部よりもオーバーハングするように形成されており、このトレー30に収納される本体ブロック10も同様に、上部が下部よりもオーバーハングした状態となる。
【0041】
側板部32には、本体ブロック10の配管溝部11,12に対応する切欠部33,33が形成されている。
すなわち、これら切欠部33,33は、側板部32に対して、本体ブロック10の一側面と他側面に位置する配管溝部11,12の両端部の位置に対応するとともに、配管溝部11,12の溝幅および溝深さと略等しくなるように切欠形成されている。
したがって、本体ブロック10が収納されたトレー30であっても、灌水パイプ20を確実に収納できるようになっている。
【0042】
また、切欠部33,33も、前記配管溝部11,12と同様に、その切欠幅および切欠深さが、灌水パイプ20と略等しくなるように設定されている。
なお、本実施の形態においては、切欠部33,33は、側板部32の二つの側面において、傾斜部34と水平部35と立ち上がり部36とを切り欠くことによって形成されている。
【0043】
また、側板部32の立ち上がり部36には、図1〜図4に示すように、凹部37および凸部38が設けられている。これによって、複数のトレー30…を隣り合わせて並べる際に、互いに隣り合うトレー30,30のうち、一方のトレー30の凸部38が、他方のトレー30の凹部37に嵌合可能となる。
これら凹部37および凸部38は、複数のトレー30…を並設する際の位置決めとして用いることができる。
なお、配管溝部11,12および切欠部33,33自体も、隣り合うトレー30,30同士の位置決め手段の一つとして用いることができるため、配管溝部11,12および切欠部33,33が形成される部分と、これら凹部37および凸部38が形成される部分とが重複する際は、配管溝部11,12および切欠部33,33が優先して形成される。
【0044】
次に、トレー30内に本体ブロック10が収納された保水性床材を製造する方法について説明する。
【0045】
まず、トレー30の切欠部33,33間に、図5に示すように、配管溝部11を形成するための押し型部材39を架設する。
なお、この押し型部材39は、配管溝部11を成形するための型であり、配管溝部11と相反する形状に形成されている。すなわち、四角溝である直線状の配管溝部11を形成する際は四角柱状に形成されている。また、この押し型部材39は、少なくとも切欠部33,33間に架設可能な長さと、切欠部33,33の切欠幅と略等しい幅と、少なくとも切欠部33,33の切欠深さと略等しい高さに設定されている。
【0046】
その後、軽石とポルトランドセメントとの配合物に、水を散布して混練した状態の適当な粘度を有する生コンクリート10aを、押し型部材39が架設されたトレー30に打設し、固化させる。
生コンクリート10aが固化し、ブロック(本体ブロック10)となったら、押し型部材39を取り外す。
以上のようにして、トレー30内に本体ブロック10が収納された保水性床材を製造できる。
【0047】
次に、本体ブロック10で構成される保水性床材を製造する方法について説明する。
【0048】
まず、本体ブロック10は、材料である生コンクリート10aが打設される型枠の内側面に象られたような形状となるため、完成後の保水性床材の形状を考慮した型枠を用意する。
ここでは、前記トレー30と同様の形状の型枠を用いるものとし、図示を省略するが、この型枠は前記トレー30とは異なり、樹脂製に限られるものではなく、例えば金属製や木製等、その他の材質のものでもよい。
この型枠は、平面視正方形状の底板部と、この底板部の周縁部から立ち上がる側板部とを備えている。また、側板部は、傾斜部と、水平部と、立ち上がり部とを有しており、上部が下部よりもオーバーハングするように形成されている。また、立ち上がり部には、凹部および凸部が形成されている。
さらに、側板部には、本体ブロックの配管溝部に対応する切欠部が形成されている。
【0049】
続いて、型枠の切欠部間に、配管溝部11を形成するための押し型部材を架設する。
その後、軽石とポルトランドセメントとの配合物に、水を散布して混練した状態の適当な粘度を有する生コンクリート10aを、押し型部材が架設された型枠に打設し、固化させる。
生コンクリート10aが固化し、ブロック(本体ブロック10)となったら、まず、押し型部材を取り外す。そして、型枠を、固化した状態の本体ブロック10から取り外す。
以上のようにして、本体ブロック10で構成される保水性床材を製造できる。
【0050】
なお、トレー30を用いる場合も型枠を用いる場合も、本体ブロック10に曲線状の配管溝部12を形成する際は、配管溝部12と相反する形状の押し型部材を用いる。すなわち、略L型の配管溝部12であれば、略L型の押し型部材を用いるようにする。また、配管溝部が三角溝であれば、三角柱状の押し型部材を用いるようにする。
すなわち、押し型部材は、配管溝部と相反する形状に形成されており、単に、押し型部材が切欠部間に架設されたトレー30または型枠に、材料である生コンクリート10aを打設し、固化させるだけで、配管溝部11,12が形成された本体ブロック10を形成できるようになっている。
【0051】
次に、バルコニーや屋上等の床面Fに、以上のような保水性床材を複数配置してなる保水性床材の配置構造について説明する。なお、ここでは、トレー30内に本体ブロック10が収納された保水性床材を用いる。また、本体ブロック10に形成された配管溝部は直線状のものが採用されている。
【0052】
複数の保水性床材は、図6,図7〜図9に示すように、これら複数の保水性床材の本体ブロック10に形成された配管溝部11同士を接続するようにして並設されている。
これによって、複数の保水性床材を並設する同時に、配管溝部11,11同士を接続できる。すなわち、複数の配管溝部11同士を一繋ぎにし、長尺な灌水パイプ20を配管できる長尺な溝とすることができる。
【0053】
本実施の形態では、図6に示すように、4枚の保水性床材が、配管溝部11同士を接続するようにしながら、1列に並設されている。そして、このような4枚の保水性床材からなる列が4列配置されている。
また、4列の保水性床材群にそれぞれ形成された長尺な溝(配管溝部11…)には、1列ごとに1本の長尺な灌水パイプ20が収容されている。
また、これら灌水パイプ20の末端にはキャップ21が取り付けられている。
さらに、これら4本の灌水パイプ20…は、ジョイント部材23,24を介して接続パイプ22に接続されている。なお、この接続パイプ22は、上述のように給水手段に接続されている。
【0054】
また、複数の保水性床材は、図9に示すように、水勾配のある床面F上に配置されている。このように水勾配のある床面Fに保水性床材を配置すると、勾配方向下方に位置する切欠部33から余剰水が流れ出ることになる(図9中の矢印Y1)。すなわち、オーバーフローし、トレー30内は満水になることが無くなる。
なお、本実施の形態においては水勾配のある床面Fに保水性床材を配置したが、これに限られるものではなく、水勾配のないフラットな床面に保水性床材を配置しても良いものとする。すなわち、上述のように余剰水は全て排出されるので、本体ブロック10に水が保持されていたとしても、雑菌や虫の繁殖等、水が過剰である場合に発生しやすい諸問題が発生し難くなるためである。
【0055】
さらに、トレー30には、上述のように凹部37および凸部38が設けられているため、複数の保水性床材は、隣り合う保水性床材のうち一方の保水性床材の凸部38を、他方の保水性床材の凹部37に嵌合しながら床面Fに配置されている。
【0056】
なお、本実施の形態の本体ブロック10の上面には、図8および図9に示すように、セラミックタイル13を取り付けたり、芝等の植物14を植栽したりしてもよい。
【0057】
セラミックタイル13は多孔質体であるから、このようなセラミックタイル13が本体ブロック10の上面に取り付けられていたとしても、本体ブロック10に浸透して保持された水は、このセラミックタイル13を通じて確実に蒸発することとなる。
また、本体ブロック10の上面にセラミックタイル13が取り付けられているので、本体ブロック10の上面を趣のある仕上げにすることができ、外観性に優れる。
【0058】
また、本体ブロック10が配置された場所のうち、植物14が植栽された部分を緑化することができるので、床面Fの温度上昇の抑制に貢献できるとともに、外観性も優れる。
なお、本体ブロック10に植物14を植栽する際は、植物14によって灌水パイプ20を遮蔽することが好ましい。本実施の形態においては、植物14を配管溝部11の近傍に植栽することによって灌水パイプ20を遮蔽している。
【0059】
さらに、セラミックタイル13が取り付けられた本体ブロック10と、植物14が植栽された本体ブロック10とを並設することによって、より外観性を向上できるので好ましい。
【0060】
また、本体ブロック10の上面には、図示はしないが、この本体ブロック10と同質の保水タイルを取り付けても良い。すなわち、本実施の形態の保水タイルは、砂を混入することなく、かつ強度を補う添加剤を添加することなく、粒度3〜20mmの軽石(乾燥比重が0.4)50〜62重量%とポルトランドセメント50〜38重量%との配合物に、水40〜50重量%を散布して混練した状態の生コンクリート10aを固めたものである。
また、この保水タイルは、上部に人が乗っても容易に破損しない程度の強度を備える厚さに設定されているものとする。
【0061】
次に、以上のような保水性床材を利用した温度上昇抑制システムについて説明する。なお、ここでは、トレー30内に本体ブロック10が収納された保水性床材を用いる。また、本体ブロック10に形成された配管溝部は直線状のものが採用されている。
【0062】
この温度上昇抑制システムは、図6に示すように、バルコニーや屋上等の床面Fに配置される複数の保水性床材と、これら複数の保水性床材の本体ブロック10…に形成された配管溝部11に収納される灌水パイプ20…と、これら灌水パイプ20…に水を供給する給水手段とを備えている。
なお、バルコニーや屋上等の床面Fは、上述のように水勾配のある床面であり、複数の保水性床材は、上述の配置構造で説明したように配置されているものとし、説明を省略する。
【0063】
給水手段は、貯水タンク1と給水設備5のうち、少なくとも一方を有するものとし、本実施の形態においては、貯水タンク1と給水設備5の両方を有している。
【0064】
貯水タンク1は、図6および図7に示すように、タンク本体2と、集水蓋部3と、コントロールボックス4とを備えている。また、この貯水タンク1は、接続パイプ22を介して灌水パイプ20…と接続されている。
なお、この貯水タンク1は、日常的に利用するのはもちろんのこと、給水設備5が使用できない場合の代替給水手段として利用しても良い。また、これら貯水タンク1と給水設備5とを組み合わせて利用しても良い。
また、この貯水タンク1には、雨水や、容器等の貯めておいた貯留しておいた水を貯留するためのものであり、屋外に設置されている。
【0065】
タンク本体2は、夏期において1週間程度の給水が可能な容量に設定されており、本実施の形態では100リットル程度の水が貯留できるように設定されている。
また、このタンク本体2に貯留される水の容量に応じて、灌水パイプ20…による灌水可能面積が限定される。
【0066】
本実施の形態のタンク本体2は、支持脚2a…によって複数の保水性床材よりも高い位置に支持されており、水圧によってタンク本体2内の水を灌水パイプ20…側に送り出すことができるようになっている。なお、水圧が足りない場合には、簡易ポンプを利用して加圧しても良いものとする。簡易ポンプはコントロールボックス4内に備えつけるようにする。
また、タンク本体2には、図7に示すように、このタンク本体2内に水が溜まりすぎないようにオーバーフロー管2bが設けられている。
【0067】
集水蓋部3は、タンク本体2の上部開口部を集水可能に塞ぐ蓋であり、図7に示すように、底面部と、この底面部の周縁部から立ち上がる立ち上がり部とを備えている。
底面部には集水孔3aが形成されている。また、この集水孔3aには、タンク本体2内に配置されるとともに塵芥等を水から除去するフィルター部3bが装着されている。
立ち上がり部の内側面は、底面部に向かって傾斜しており、雨水等を集水しやすく構成されている。
雨水等の水は、図7中の矢印Y2のように集水蓋部3の立ち上がり部および底面部から集水孔3aに至り、フィルター部3bを通過して、タンク本体2内に貯留される。
【0068】
コントロールボックス4は、通水管4aと、電磁弁(図示せず)と、タイマー(図示せず)とを備えている。
通水管4aは、タンク本体2に貯留された水を通過させて外部に排出する管であり、電磁弁を介して接続パイプ22と接続されている。
電磁弁は、電磁石の磁力を用いて弁を開閉し、通水管4aを通過する水を灌水パイプ20…側に供給したり、水の供給を停止したりするための管路開閉手段である。
タイマーは、電磁弁と組み合わせて用いられることによって電磁弁をタイマー制御するためのものである。
すなわち、電磁弁は、タイマーによって制御されており、設定された時間に、タンク本体2から灌水パイプ20…側に水を供給できるようになっている。
【0069】
また、コントロールボックス4周囲において余剰した水をタンク本体2内に戻したい場合は、余剰水戻し管を利用する。すなわち、この余剰水戻し管は、先端がタンク本体2側に設けられて水戻し可能に構成されており、予めコントロールボックス4内に備えられた簡易ポンプに接続されている。
なお、余剰水戻し管の利用は任意であり、本実施の形態のように、簡易ポンプを利用せずにタンク本体2から灌水パイプ20…側に水を供給する場合は余剰水戻し管を利用せず、簡易ポンプの設置を省略しても良いものとする。
【0070】
給水設備5は、いわゆる水道設備であり、接続パイプ22を介して灌水パイプ20…と接続されている。また、給水設備5と接続パイプ22との間にはコントロールボックス6が設けられている。
なお、この給水設備5は、日常的に利用するのはもちろんのこと、貯水タンク1が使用できない場合の代替給水手段として利用しても良い。また、これら給水設備5と貯水タンク1とを組み合わせて利用しても良い。
【0071】
コントロールボックス6は、電磁弁(図示せず)と、タイマー(図示せず)とを備えている。
電磁弁は、電磁石の磁力を用いて弁を開閉し、通水管4aを通過する水を灌水パイプ20…側に供給したり、水の供給を停止したりするための管路開閉手段である。
タイマーは、電磁弁と組み合わせて用いられることによって電磁弁をタイマー制御するためのものである。
すなわち、電磁弁は、タイマーによって制御されており、設定された時間に、タンク本体2から灌水パイプ20…側に水を供給できるようになっている。
【0072】
本実施の形態の温度上昇抑制システムは、給水手段に接続された電磁弁をタイマー制御により制御し、比較的短時間で水が蒸発するように設定された本体ブロック10に対し、定期的に灌水している。水の供給源は、貯水タンク1と給水設備5のうち、少なくとも一方を利用している。
なお、電磁弁の制御を行う際に、例えば灌水可能面積のデータや、気温や湿度等の周囲環境データ等を加味した制御を行うことができれば、より好ましい。
【0073】
以上のような温度上昇抑制システムによれば、バルコニーや屋上等の床面Fに配置された複数の保水性床材に対して、定期的にかつ十分な灌水を行うことができる。すなわち、保水性能を有しつつも水が必要以上に溜まらず、比較的短い期間で水を蒸発させることが可能な本体ブロック10を備える保水性床材によって、例えば夏場や梅雨時における雑菌や虫の繁殖等の問題の発生を防止しつつ、給水手段による定期的かつ十分な灌水を行えることになる。
これによって、蒸発するに際して所定の熱量を周囲から奪う水の性質を利用した床面F周囲の温度上昇抑制を行いながら、水が溜まることによる諸問題を解決できるので、従来に比して格段に快適な居住環境を形成することが可能となる。
【0074】
本実施の形態によれば、本体ブロック10の上部には、配管溝部11,12が、この本体ブロック10の一側面から他側面に向かって形成されているので、この配管溝部11,12は、本体ブロック10の上部において配管溝部11,12の延在方向および上方に向かって開放された状態となる。これによって、灌水パイプ20を、配管溝部11,12に対して、上方から下方に差し入れるだけで容易かつ確実に収納することができる。
また、灌水パイプ20を配管する際は、バルコニーや屋上等の床面Fに保水性床材を並べ終わった後に、配管溝部11,12に沿って灌水パイプ20を配置するだけで済む。これによって、灌水パイプ20を容易に配管することが可能となる。
【0075】
また、四角溝状に形成された配管溝部11,12の幅および深さは、灌水パイプ20の直径と略等しくなるように設定されているので、灌水パイプ20を、配管溝部11,12に対して、より確実に収納することができる。
【0076】
また、配管溝部11,12は直線状または曲線状に形成されているので、灌水パイプ20を、この配管溝部11,12に沿って直線状または曲線状に配管することができる。すなわち、保水性床材を直線状に配置するだけでなく、例えば曲線状やジグザグ状に配置したとしても、これに対応して灌水パイプ20を配管することができる。
これによって、保水性床材を直線状以外の形態でバルコニーや屋上等の床面Fに配置した場合であっても、灌水パイプ20を容易に配管することができる。
【0077】
また、トレー30内に、本体ブロック10を収納することができるので、この本体ブロック10を、単独では強度を維持できない薄さにしたとしても、この本体ブロック10の強度が低下することを確実に防ぐことができる。これによって、本体ブロック10の薄型化および保水性床材自体の軽量化に貢献できる。
また、トレー30の側板部32に、本体ブロック10の配管溝部11,12に対応する切欠部33,33が形成されているので、本体ブロック10をトレー30内に収納しても、灌水パイプ20を確実に収納することができる。
さらに、トレー30のうち、切欠部33,33の下縁よりも下方の水は、トレー30内に貯留されることになり、切欠部33の下縁よりも上方の水は、余剰水として、切欠部33,33から外部に排出されることになる。これによって、トレー30内は満水になることが無くなるので、例えば雑菌や虫の繁殖等、トレー30内の水が過剰である場合に発生しやすい諸問題が発生し難くなる。
【0078】
複数の保水性床材は、これら複数の保水性床材の本体ブロック10に形成された配管溝部11,12同士を接続するようにして並設されているので、複数の保水性床材を並設する同時に、配管溝部11,12同士を接続できる。これによって、複数の配管溝部11,12からなる灌水パイプ20配管の用の溝を、複数の保水性床材の並設方向に沿って長尺なものにすることができる。したがって、バルコニーや屋上等の床面Fに保水性床材を並べ終わった後に、前記灌水パイプ20をより容易に配管することが可能となる。
【0079】
なお、本実施の形態においては、本体ブロック10,10A,10Bとして、粒度3〜20mmの軽石(乾燥比重が0.4)50〜62重量%とポルトランドセメント50〜38重量%との配合物に、水40〜50重量%を散布して混練した状態の生コンクリート10aを固めたものを採用したが、これに限られるものではない。例えば、アスファルトを骨材同士の結合材として用いて固めたものを採用しても良い。すなわち、保水性能および透水性能を有する本体ブロックを備える保水性アスファルト床材となり、舗装材等として用いることができる。
【0080】
<第2の実施の形態>
次に、図面を参照して本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、説明の便宜上、上述した第1の実施の形態とは異なる構成部分のみについて説明する。
【0081】
本実施の形態の保水性床材は、図12(b)に示すように、保水性能および透水性能を有する本体ブロック10Cを備えており、この本体ブロック10Cの上部には、灌水パイプ20が収納される配管溝部11Cが、この本体ブロック10Cの一側面から他側面に向かって形成されている。
なお、本実施の形態の配管溝部11Cは、いわゆる四角溝であるとともに直線状に形成されている。
【0082】
ところで、保水性床材を効率良く製造したり、トレー使用に係るコストを軽減するために、本体ブロック10Cを工場等で量産し、トレーには収納しない状態で使用できるようにしたいという要望がある。そこで、本体ブロック10Cをプレス成型することが考えられる。
【0083】
以下、本体ブロック10Cの製造方法について説明する。
プレス成型では、金型40と、図示しないプレス機械とが用いられる。
金型40は、図12(a)に示すように、本体ブロック10Cの材料10Caが投入される容器41と、この容器41の上部開口部を塞ぐための蓋42とを備えている。
容器41は、生産ライン上にて複数用いられる。
【0084】
また、蓋42は、前記プレス機械と連結しており、容器41に対して進退移動可能に設定されている。つまり、蓋42は、プレス成型を行う際には容器41に向かって移動し、プレス成型を終えた際には、容器41から離れる方向に移動する。
【0085】
さらに、蓋42は、容器41の内部に向かって突出する突出部42aを有する。この突出部42aは、配管溝部11Cを成形するためのものであり、配管溝部11Cと相反する形状に形成されている。本実施の形態の突出部42aは、四角溝である直線状の配管溝部11Cを形成する際は四角柱状に形成されている。
【0086】
金型40とプレス機械とを用いて保水性床材を製造するには、まず、図12(a)に示すように、容器41に材料10Caを投入する。
この時、前記蓋42に突出部42aが形成されていることを考慮し、材料10Caの投入量を、この材料10Ca上面が容器41の上端面よりも若干下方になるように調整する。これにより、容器41と蓋42との間からの材料10Caの余分な漏出を防ぐことができる。
【0087】
続いて、プレス機械によって蓋42を容器41に向かって移動させるとともに、容器41の上部開口部を塞ぎ、さらにプレス機械による強力な圧力を加えて材料10Caをプレスする。
【0088】
その後、図12(b)に示すように、金型40を脱型し、本体ブロック10Cを取り出す。金型40から取り出された本体ブロック10Cには、前記蓋42の突出部42aによって配管溝部11Cが形成された状態となっている。
なお、金型40を脱型する時期については、本実施の形態においては、所定の存置期間を経て、材料10Caに、ある程度の強度が出てからとする。ただし、これに限られるものではなく、材料10Caに含まれる水分量を調節したり、材料10Caに含まれる素材を変更・追加したりするなどして材料10Caを早く凝結硬化させ、すぐに金型40を脱型できるようにしても良い。
【0089】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同じ効果を得ることができるとともに、保水性床材を、以上のようなプレス成型によって製造できるため、例えば型枠に材料を投入する、いわゆる注入成型で保水性床材を製造するよりも、効率良く製造できる。
また、金型プレス成型によって強固にプレスされて製造されるため、例えば型枠に材料を投入する、いわゆる注入成型で保水性床材を製造するよりも、強度の高い保水性床材を製造することができる。これによって、トレーなしでも強度を得ることができるので、本体ブロック10Cをトレーに収納しない状態で使用することができ、トレー使用に係るコストを軽減できる。
【0090】
<第3の実施の形態>
次に、図面を参照して本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、説明の便宜上、上述した第1および第2の実施の形態とは異なる構成部分のみについて説明する。
【0091】
ところで、本体ブロックの上部に形成された配管溝部に灌水パイプ20を収容する場合には、配管溝部は上方に向かって開放されているため、灌水パイプ20が露出することになる。これを防ぐために、本体ブロックの上面に、この本体ブロックの上面と略等しい面積のセラミックタイル13等の蓋が取り付けられる。ところが、床面Fが広く、使用される保水性床材が多数の場合は、セラミックタイル13等の蓋を取り付けるのが手間となる場合がある。
【0092】
そこで、本実施の形態の保水性床材は、図13に示すように、配管溝部11Dが上部に開放されることを防ぐ蓋を一体形成した状態の本体ブロック10Dを備えたものとなっている。
配管溝部11Dは、本体ブロック10Dの製造時において上部開放部が塞がれており、自身の延在方向両端部のみが開放されている。すなわち、本実施の形態の配管溝部11Dは、本体ブロック10Dを貫通する孔状体(貫通孔)とされている。
また、本体ブロック10Dのうち、配管溝部11Dの上端よりも上方の部分が、この本体ブロック10Dと一体化された蓋の部分である。
【0093】
本実施の形態の配管溝部11Dに灌水パイプ20を収容する際は、配管溝部11Dの延在方向両端部のうちの一方から他方に向かって灌水パイプ20を差し込むようにする。
【0094】
本体ブロック10Dの製造には、型枠50が用いられる。この型枠50は、図14に示すように、本体ブロック10Dの材料が投入される容器51と、この容器51の上部開口部を塞ぐための蓋52とを備えている。
容器51は、容器本体53と、組み合わせ側板部54と、配管溝部形成部55とを有している。
【0095】
容器本体53は、底板部53aと、この底板部53aの周縁部のうちの一方を開放させた状態で立ち上がる側板部53bとを備えている。
なお、本実施の形態の底板部53aは平面視矩形状に形成されている。また、側板部53bは、平面視矩形状の底板部53aの四辺のうち、三辺にわたって設けられている。
【0096】
組み合わせ側板部54は、前記容器本体53と組み合わせて用いられることによって容器51を構成するものであり、平面視矩形状の底板部53aの四辺のうちの一辺側に設けられる。そして、前記容器本体53の側板部53bとともに容器51の四周の壁として用いられる。
また、この組み合わせ側板部54は、図示はしないが、例えばロック手段を有する。すなわち、ロック手段を作動させたり解除したりすることによって、前記容器本体53に対して着脱自在とされている。
【0097】
配管溝部形成部55は、配管溝部11Dを形成するためのものであり、前記組み合わせ側板部54の内側面に一体的に設けられている。
本実施の形態の配管溝部11Dは四角溝であるとともに直線状のものであるため、配管溝部形成部55は四角柱状に形成されている。また、この配管溝部形成部55は、延在方向一端が前記組み合わせ側板部54の内側面に一体的に設けられており、他端は、前記容器本体53と組み合わせ側板部54との組み合わせ時に、この容器本体53の側板部53bのうち、組み合わせ側板部54と対向する側板部53bに当接するように構成されている。つまり、配管溝部形成部55の長さは、組み合わせ側板部54から、この組み合わせ側板部54に対向する側板部53bまでの長さと略等しくなるように設定されている。
【0098】
以下、本体ブロック10Dの製造方法について説明する。
まず、組み合わせ側板部54を、図示しないロック手段によって容器本体53に取り付け、容器51を形成する。
この時、配管溝部形成部55は、組み合わせ側板部54と、この組み合わせ側板部54に対向する側板部53bとの間に架け渡された状態となっている。
続いて、容器51内に材料を投入する。投入後、蓋52によって容器51の上部開口部を塞ぎ、材料を凝結硬化させる。
なお、材料に含まれる水分量を調節したり、材料に含まれる素材を変更・追加したりするなどして材料を早く凝結硬化させ、すぐに型枠50を脱型できるようにしても良い。
【0099】
材料が凝結硬化したら、蓋52を取り外す。
また、組み合わせ側板部54を容器本体53から取り外せるように、前記ロック手段を解除する。そして、前記配管溝部形成部55を引く抜くようにして、組み合わせ側板部54を容器本体53から取り外す。
【0100】
続いて、容器本体53を脱型し、本体ブロック10Dを取り出す。容器本体53から取り出された本体ブロック10Dには、前記配管溝部形成部55によって配管溝部11Dが形成された状態となっている。
【0101】
なお、本実施の形態の本体ブロック10Dをプレス成型する場合には、型枠50を金属製とし、組み合わせ側板部54と容器本体53とのロック手段を、より強固なものとする。また、配管溝部形成部55の前記組み合わせ側板部54への取付強度も、より強固なものとする。
【0102】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同じ効果を得ることができるとともに、灌水パイプ20の露出を防ぐことができる。これによって、外観性の向上を図ることができるとともに、物品の落下等による灌水パイプ20の破損を確実に防ぐことができるので、好ましい。
【符号の説明】
【0103】
10 本体ブロック
11 配管溝部
12 配管溝部
20 灌水パイプ
30 トレー
33 切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルコニーや屋上等の床面に配置される保水性床材において、
保水性能および透水性能を有する本体ブロックを備えており、
前記本体ブロックの上部には、灌水パイプが収納される配管溝部が、この本体ブロックの一側面から他側面に向かって形成されていることを特徴とする保水性床材。
【請求項2】
請求項1に記載の保水性床材において、
前記配管溝部の幅および深さは、前記灌水パイプの直径と略等しくなるように設定されていることを特徴とする保水性床材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の保水性床材において、
前記配管溝部は直線状または曲線状に形成されていることを特徴とする保水性床材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の保水性床材において、
上部が開口するとともに前記本体ブロックが収納されるトレーを備えており、
前記トレーは、底板部と、この底板部の周縁部から立ち上がる側板部とを有しており、
前記側板部には、前記本体ブロックの配管溝部に対応する切欠部が形成されていることを特徴とする保水性床材。
【請求項5】
バルコニーや屋上等の床面に、請求項1〜4のいずれか一項に記載の保水性床材を複数配置してなる保水性床材の配置構造であって、
前記複数の保水性床材は、これら複数の保水性床材の本体ブロックに形成された配管溝部同士を接続するようにして並設されていることを特徴とする保水性床材の配置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−246689(P2012−246689A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119833(P2011−119833)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)
【Fターム(参考)】