説明

充填封止用発泡組成物、充填封止発泡部材、充填封止用発泡体およびその充填方法

【課題】優れた防錆性を付与することのできる充填封止用発泡体、その充填方法、充填封止用発泡体を形成するための充填封止発泡部材および充填封止用発泡組成物を提供すること。
【解決手段】ポリマーと、アゾジカルボンアミドと、脂肪酸金属と、塩基性炭酸マグネシウムとを含有する充填封止用発泡組成物1を、金属からなるピラー2の内部空間に配置して、充填封止用発泡組成物1を発泡させて、充填封止用発泡体9を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填封止用発泡組成物、充填封止発泡部材、充填封止用発泡体およびその充填方法、詳しくは、各種の中空部材の内部空間に充填される充填封止用発泡体、その充填方法、充填封止用発泡体を形成するための充填封止発泡部材および充填封止用発泡組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のピラーなどの閉断面として形成される中空部材の中空空間には、エンジンの振動や騒音、あるいは、風きり音などが車室内に伝達されることを防止するために、発泡体を充填することが知られている。
【0003】
例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体と、アゾジカルボンアミド(発泡剤、以下、ADCAと省略する。)とを含有する充填用発泡組成物を調製し、これを中空部材の内部空間に配置し、その後、加熱して発泡させて、充填用発泡体を中空部材の内部空間に充填することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、特許文献1には、上記した充填用発泡組成物に酸化マグネシウムを加硫剤として配合するとともに、ステアリン酸亜鉛を発泡助剤として配合することも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−184492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、中空部材には、目的および用途によって、錆の発生を抑制することが求められており、そのため、充填用発泡体には、優れた防錆性が求められる。
【0007】
しかしながら、特許文献1の充填用発泡組成物から得られる充填用発泡体は、上記した優れた防錆性を十分に満足することができない場合がある。
【0008】
本発明の目的は、優れた防錆性を付与することのできる充填封止用発泡体、その充填方法、充填封止用発泡体を形成するための充填封止発泡部材および充填封止用発泡組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の充填封止用発泡組成物は、ポリマーと、アゾジカルボンアミドと、脂肪酸金属と、塩基性炭酸マグネシウムとを含有することを特徴としている。
【0010】
また、本発明の充填封止発泡部材は、上記した充填封止用発泡組成物と、前記充填封止用発泡組成物に装着され、中空部材の内部空間に取り付け可能な取付部材とを備えることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の充填封止用発泡体は、上記した充填封止用発泡組成物を発泡させることによって得られることを特徴としている。
【0012】
また、本発明の充填封止用発泡体の充填方法は、上記した充填封止用発泡組成物を、金属からなる中空部材の内部空間に配置する工程、および、前記充填封止用発泡組成物を発泡させて、充填封止用発泡体を得る工程を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の充填封止用発泡組成物を発泡させることにより得られる本発明の充填封止用発泡体は、防錆性に優れている。
【0014】
そのため、本発明の充填封止用発泡体の充填方法によって、上記した充填封止用発泡組成物を発泡させて、上記した充填封止用発泡体を中空部材の内部空間に充填しても、その後、金属からなる中空部材の内面に錆が生じることを有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の充填封止用発泡組成物、充填封止発泡部材および充填封止用発泡体の一実施形態を用いて自動車のピラーの内部空間を充填して封止する方法の工程図であって、(a)は、充填封止用発泡組成物に取付部材を装着して充填封止発泡部材を作製し、これをピラーに設置する工程、(b)は、加熱により充填封止用発泡組成物を発泡させることにより、充填封止用発泡体によってピラーの内部空間を充填して封止する工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の充填封止用発泡組成物は、ポリマーと、アゾジカルボンアミド(ADCA)と、脂肪酸金属と、塩基性炭酸マグネシウムとを含有している。
【0017】
ポリマーとしては、例えば、エチレン性不飽和二重結合を少なくとも1つ有するモノマーの重合により得られる樹脂および/またはゴムが挙げられ、具体的には、側鎖にエステル結合(−COO−)有するビニル共重合体、オレフィン重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などの、ビニル重合体(ビニルモノマーの重合体)からなる樹脂、例えば、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)などの、共役ジエン重合体(共役ジエンを含むモノマーの重合体)からなるゴムなどが挙げられる。また、ポリマーとして、上記以外に、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などの、重縮合体からなる樹脂なども挙げられる。これらポリマーは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0018】
ポリマーとして、好ましくは、エチレン性不飽和二重結合を少なくとも1つ有するモノマーの重合により得られる樹脂および/またはゴムが挙げられ、より好ましくは、ビニル重合体からなる樹脂、さらに好ましくは、ビニル共重合体、オレフィン重合体が挙げられる。
【0019】
ビニル共重合体としては、具体的には、ビニル基含有エステルと、オレフィンとの共重合体などが挙げられる。
【0020】
ビニル基含有エステルとしては、例えば、脂肪酸ビニルエステル、(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0021】
脂肪酸ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなどが挙げられる。
【0022】
(メタ)アクリレートは、アクリレートおよび/またはメタクリレートであって、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0023】
ビニル基含有エステルは、単独使用または併用することができる。
【0024】
ビニル基含有エステルとして、好ましくは、脂肪酸ビニルエステル、より好ましくは、酢酸ビニルが挙げられる。
【0025】
オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレンなどが挙げられる。オレフィンは、単独使用または併用することができる。
【0026】
オレフィンとして、好ましくは、エチレンが挙げられる。
【0027】
具体的には、上記したビニル共重合体として、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン・酪酸ビニル共重合体、エチレン・プロピレン・酢酸ビニル共重合体などのオレフィン・脂肪酸ビニルエステル共重合体、例えば、エチレン・メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン・エチル(メタ)アクリレート共重合体(EEA/EMA)、エチレン・プロピル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン・ブチル(メタ)アクリレート共重合体などのオレフィン・(メタ)アクリレート共重合体が挙げられる。
【0028】
また、上記したビニル共重合体は、ブロック共重合体またはランダム共重合体である。
【0029】
ビニル共重合体は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0030】
ビニル共重合体として、好ましくは、オレフィン・脂肪酸ビニルエステル共重合体、より好ましくは、EVAが挙げられる。
【0031】
ビニル共重合体におけるビニル基含有エステル(具体的には、脂肪酸ビニルエステル、好ましくは、酢酸ビニル)の含有量は、例えば、5〜60質量%、好ましくは、10〜45質量%である。
【0032】
オレフィン重合体は、分子内にエステル結合などの酸素原子含有部分を実質的に有しない炭化水素系重合体であり、具体的には、オレフィンの重合体である。
【0033】
オレフィンとしては、例えば、ビニル共重合体を形成するモノマーで例示したオレフィンと同様のものが挙げられる。
【0034】
オレフィン重合体としては、例えば、ポリエチレン(エチレン単独重合体)、ポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、エチレン・プロピレン共重合体など挙げられる。
【0035】
オレフィン重合体は、単独使用または併用することができる。
【0036】
オレフィン重合体として、好ましくは、ポリエチレンが挙げられる。
【0037】
ポリマーのメルトフローレート(MFR)は、例えば、5.0g/10min以下、好ましくは、4.5g/10min以下であり、また、例えば、1.0g/10min以上、好ましくは、1.5g/10min以上でもある。なお、MFRは、JISK7210(1999)またはJISK6922−1(1997)に準拠する測定方法によって求められ、具体的は、ビニル共重合体のMFRが、JISK7210(1999)に準拠する加熱温度190℃、荷重21.18Nにおける測定によって求められ、オレフィン重合体のMFRが、JISK6922−1(1997)に準拠する加熱温度190℃、荷重21.18Nにおける測定によって求められる。
【0038】
ポリマーの配合割合は、充填封止用発泡組成物に対して、例えば、50〜90質量%、好ましくは、60〜85質量%である。
【0039】
ADCAは、充填封止用発泡組成物を発泡させるための発泡剤である。
【0040】
ADCAの配合割合は、ポリマー100質量部に対して、例えば、5〜30質量部、好ましくは、10〜25質量部である。
【0041】
ADCAの配合割合が上記した下限値より少ないと、充填封止用発泡組成物が十分に発泡せず、充填性および封止性が低下することから、充填封止用発泡組成物を大きい寸法(サイズ)に形成する必要があり、そのため、取付作業性が低下する場合がある。
【0042】
一方、ADCAの配合割合が上記した上限値より多いと、配合割合に比例して充填封止用発泡体の発泡倍率(後述する体積発泡倍率)が向上しないため、経済的なメリットが得られない場合がある。
【0043】
脂肪酸金属は、中空部材の製造工程時(具体的には、自動車の焼付塗装時)の温度(例えば、140〜180℃)においてADCAによる発泡を効率的に実施する発泡助剤である。
【0044】
脂肪酸金属は、脂肪酸の金属塩であって、脂肪酸金属を形成する脂肪酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸(プロパン酸)、酪酸(ブタン酸)、吉草酸(ペンタン酸)、カプロン酸(ヘキサン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、ペラルゴン酸(ノナン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ウンデカン酸、ラウリン酸(ドデカン酸)、ミリスチン酸(デトラデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、ベヘン酸(ドコサン酸)などの炭素数2〜30の飽和脂肪酸、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの炭素数4〜30の不飽和脂肪酸などが挙げられる。
【0045】
脂肪酸として、好ましくは、炭素数10〜25の飽和脂肪酸、より好ましくは、炭素数16〜20の飽和脂肪酸、さらに好ましくは、ステアリン酸が挙げられる。
【0046】
脂肪酸金属を形成する金属としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの1価の金属、例えば、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛などの2価の金属、例えば、アルミニウムなどの3価の金属などが挙げられる。好ましくは、2価の金属が挙げられる。
【0047】
脂肪酸金属の具体例としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウムなどのステアリン酸金属などが挙げられる。好ましくは、ステアリン酸亜鉛が挙げられる。
【0048】
脂肪酸金属は、常温固体であって、その形状は、特に限定されず、例えば、球状、針状、板状などが挙げられる。
【0049】
また、脂肪酸金属の最大長さの平均値(球状の場合には、平均粒子径)は、例えば、1〜100μm、好ましくは、10〜50μmである。
【0050】
脂肪酸金属は、公知の方法によって製造され、例えば、乾式法、湿式法によって製造され、好ましくは、乾式法によって製造される。
【0051】
脂肪酸金属の配合割合は、ポリマー100質量部に対して、例えば、1〜20質量部、好ましくは、2〜10質量部である。
【0052】
塩基性炭酸マグネシウムは、充填封止用発泡体に防錆性を付与する腐食抑制剤として、充填封止用発泡組成物に配合される。塩基性炭酸マグネシウムは、下記式(1)で示される含水炭酸マグネシウム・水酸化マグシウム(ヒドロキシ炭酸マグネシウム)である。
【0053】
【化1】

【0054】
塩基性炭酸マグネシウムは、常温固体であって、その形状は、特に限定されず、例えば、球状、針状、板状などが挙げられる。
【0055】
また、塩基性炭酸マグネシウムの最大長さの平均値(球状の場合には、平均粒子径)は、例えば、0.1〜1000μm、好ましくは、1〜10μmである。
【0056】
また、塩基性炭酸マグネシウムとして、市販品を用いることができ、例えば、炭酸マグネシウム金星、炭酸マグネシウム重質、炭酸マグネシウム顆粒(以上、神島化学工業社製)などが用いられる。
【0057】
塩基性炭酸マグネシウムの配合割合は、脂肪酸金属100質量部に対して、例えば、20〜100、好ましくは、30〜90質量部、より好ましくは、35〜80質量部、さらに好ましくは、40〜50質量部である。
【0058】
塩基性炭酸マグネシウムの配合割合が上記した範囲に満たない場合には、充填封止用発泡体の防錆性が低下する場合がある。
【0059】
一方、塩基性炭酸マグネシウムの配合割合が上記した範囲を超える場合には、充填封止用発泡体の発泡倍率が低下する場合があり、また、充填封止用発泡組成物の貯蔵安定性(後述)が低下する場合がある。
【0060】
また、本発明の充填封止用発泡組成物には、本発明の優れた効果を阻害しない程度で、例えば、架橋剤、架橋助剤、その他の発泡助剤、軟化剤、さらには、その他の発泡剤(例えば、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH))などの有機系発泡剤、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、アジドなどの無機系発泡剤など)、その他の腐食抑制剤(例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属の酸化物、無水炭酸マグネシウム(MgCO)、無水炭酸カルシウム(CaCO、例えば、重質炭酸カルシウムなど)などのアルカリ土類金属の無水炭酸塩)、加工助剤、安定剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料、着色剤、防カビ剤、難燃剤など、公知の添加剤を、適宜の割合で添加することもできる。
【0061】
架橋剤としては、ポリマーを架橋させるために、充填封止用発泡組成物に必要により配合され、例えば、有機過酸化物などが挙げられる。
【0062】
有機過酸化物としては、例えば、加熱により分解され、遊離ラジカルを発生してポリマーを架橋させることのできるラジカル発生剤が挙げられる。そのような有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド(DCP)、1,1−ジターシャリブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジターシャリブチルパーオキシヘキサン、1,3−ビス(ターシャリーブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ターシャリブチルパーオキシケトン、ターシャリブチルパーオキシベンゾエートなどが挙げられる。
【0063】
これら有機過酸化物は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0064】
有機過酸化物として、好ましくは、DCPが挙げられる。
【0065】
架橋剤の配合割合は、例えば、ポリマー100質量部に対して、0.1〜10質量部、好ましくは、0.5〜5質量部である。架橋剤の配合割合が上記範囲に満たないと、架橋による粘度上昇が少なく、発泡時のガス圧により破泡を生じる場合がある。また、架橋剤の配合割合が上記範囲を超えると、過度に架橋して、ポリマーの皮膜が発泡時のガス圧を抑制し、高発泡倍率で発泡しにくくなる場合がある。
【0066】
架橋助剤は、ポリマーの架橋度を調整して、高発泡倍率を確保するために、充填封止用発泡組成物に必要により配合される。
【0067】
架橋助剤としては、具体的には、少なくとも3つの官能基を有する官能基含有化合物が挙げられる。
【0068】
官能基含有化合物が有する官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基(つまり、アクリロイル基(−COCH=CH)、および/または、メタクリロイル基(−CO−C(CH)=CH))、アリル基(−CHCH=CH)、ヒドロキシイミノ基(=N−OH)、イミノ基(=NH)、アミノ基(−NH)、イミド基(−CO−NH−CO−)、カルボキシル基(−COOH)、ビニル基(−CH=CH)などが挙げられる。好ましくは、(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
【0069】
官能基含有化合物としては、具体的には、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート(EGDA/EGDMA)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(TMPTA/TMPTMA)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリロイル基含有化合物(すなわち、アクリロイル基含有化合物、および/またはメタクリロイル基含有化合物)、例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート(TAC)などのアリル基含有化合物、例えば、p−キノンジオキシムなどのヒドロキシイミノ基含有化合物(例えば、オキシム類)、例えば、グアニジンなどのイミノ基およびアミノ基併有化合物、例えば、N,N′−m−フェニレンビスマレイミドなどのイミド基含有化合物、例えば、アクリル酸亜鉛などのカルボキシル基含有化合物(例えば、不飽和脂肪酸金属塩)、例えば、1,2−ポリブタジエンなどのビニル基含有化合物、例えば、硫黄などの硫黄化合物などが挙げられる。
【0070】
これら架橋助剤は、単独使用または併用することができる。
【0071】
架橋助剤として、好ましくは、(メタ)アクリロイル基含有化合物が挙げられる。(メタ)アクリロイル基含有化合物であれば、(メタ)アクリロイル基による強固な架橋を図ることができる。
【0072】
架橋助剤の配合割合は、ポリマー100質量部に対して、例えば、0.05〜1.5質量部、好ましくは、0.1〜1.0質量部でもある。
【0073】
その他の発泡助剤は、上記した脂肪酸金属を除く発泡助剤であって、脂肪酸金属と必要により併用されて充填封止用発泡組成物に配合される。
【0074】
その他の発泡助剤としては、例えば、尿素化合物、例えば、酸化亜鉛などの金属酸化物などが挙げられる。好ましくは、金属酸化物が挙げられる。
【0075】
その他の発泡助剤は、単独使用または併用することができる。
【0076】
その他の発泡助剤の配合割合は、脂肪酸金属100質量部に対して、例えば、10〜1000質量部、好ましくは、50〜500質量部である。
【0077】
軟化剤は、ポリマーを軟化させて、充填封止用発泡組成物を所望の粘度に設定するために、充填封止用発泡組成物に必要により配合される。
【0078】
軟化剤としては、例えば、乾性油類や動植物油類(例えば、パラフィン類(パラフィン系オイルなど)、ワックス類、ナフテン類、アロマ類、アスファルト類、アマニ油など)、石油系オイル類、テルペン重合体、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、クマロンインデン系樹脂、石油系樹脂(例えば、脂肪族炭化水素系、脂肪族/芳香族炭化水素系、芳香族炭化水素系など)、有機酸エステル類(例えば、フタル酸エステル、リン酸エステル、高級脂肪酸エステル、アルキルスルホン酸エステルなど)、増粘付与剤などが挙げられる。
【0079】
軟化剤は、単独使用または併用することができる。好ましくは、石油系樹脂を単独使用する。
【0080】
軟化剤の軟化温度は、例えば、80〜120℃である。
【0081】
軟化剤の配合割合は、ポリマー100質量部に対して、例えば、1〜50質量部、好ましくは、5〜25質量部である。
【0082】
充填封止用発泡組成物を調製するには、上記した各成分を、上記した配合割合で配合して、これらを均一に混合する。
【0083】
また、充填封止用発泡組成物は、上記した成分を、例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダ、押出機などによって混練することにより、調製することができる。
【0084】
混練条件は、加熱温度が、例えば、50〜130℃、好ましくは、95〜120℃であり、加熱時間が、例えば、0.5〜30分間、好ましくは、1〜20分間である。
【0085】
さらに、この調製においては、得られた混練物を、所定形状に成形することにより、予備成形物(プリフォーム)として調製することもできる。
【0086】
混練物の成形は、例えば、混練物を、カレンダー成形やプレス成形によって、直接、所定形状(例えば、シート状)に成形する。または、例えば、混練物を、ペレタイザーなどによってペレット化して、射出成形機または押出成形機などによって所定形状に成形する。
【0087】
成形条件は、成形温度が、例えば、60〜120℃、好ましくは、75〜110℃である。
【0088】
このようにして得られる充填封止用発泡組成物の粘度(フローテスター:温度120℃、圧力500MPa)は、例えば、1000〜5000Pa・sである。
【0089】
このようにして得られる本発明の発泡充填封止用組成物を、適宜の条件下で加熱して、発泡させることにより、本発明の充填封止用発泡体を形成することができる。
【0090】
充填封止用発泡体は、その密度(発泡体質量(g)/発泡体体積(cm))が、例えば、0.04〜0.2g/cm、好ましくは、0.05〜0.08g/cmである。
【0091】
発泡時の体積発泡倍率(=発泡前密度/発泡後密度)は、例えば、9倍以上、好ましくは、10〜40倍、より好ましくは、20〜30倍である。
【0092】
このような体積発泡倍率であれば、部材の間や中空部材の内部空間を、たとえその間や内部空間が複雑な形状であっても、充填封止用発泡体がほぼ隙間なく充填して、部材の間や中空部材の内部空間を封止(シール)することができる。
【0093】
このようにして得られる本発明の充填封止用発泡体は、各種の部材に対する、補強、制振、防音、防塵、断熱、緩衝、水密など、種々の効果を付与することができるので、各種の部材の間や中空部材の内部空間に充填して封止する、例えば、補強材、防振材、防音材、防塵材、断熱材、緩衝材、止水材など、各種の産業製品の充填封止材として、好適に用いることができる。
【0094】
各種の部材の間や中空部材の内部空間に充填して封止するには、特に限定されないが、例えば、隙間の充填を目的する部材の間や中空部材の内部空間に、充填封止用発泡組成物を設置して、その後、設置された充填封止用発泡組成物を加熱し、発泡させることにより充填封止用発泡体を形成し、その充填封止用発泡体によって、部材の間や中空部材の内部空間を充填して封止(シール)する。
【0095】
より具体的には、例えば、中空部材の内部空間を充填して封止する場合には、まず、充填封止用発泡組成物に取付部材を装着して充填封止発泡部材を作製し、その充填封止発泡部材の取付部材を、中空部材の内部空間に取り付けた後、加熱により発泡させて、充填封止用発泡体を形成する。この充填封止用発泡体によって、中空部材の内部空間を充填して封止することができる。
【0096】
そのような中空部材としては、自動車において、鋼、鉄、ステンレスなどの金属からなるピラーを例示することができる。上記した充填封止用発泡組成物により、充填封止発泡部材を作製して、ピラーの内部空間に取り付けた後、充填封止用発泡組成物を発泡させれば、得られる充填封止用発泡体により、ピラーの補強を十分に図りつつ、エンジンの振動や騒音、あるいは、風きり音などが車室内に伝達されることを有効に防止することができる。
【0097】
図1は、本発明の充填封止用発泡組成物、充填封止発泡部材および充填封止用発泡体の一実施形態を用いて自動車のピラーの内部空間を充填して封止する方法の工程図である。
【0098】
次に、本発明の充填封止用発泡体の充填方法の一実施形態として、上記した充填封止用発泡組成物および充填封止発泡部材を用いて、自動車のピラーの内部空間に充填封止用発泡体を充填して、ピラーを封止する方法について説明する。
【0099】
この方法では、まず、図1(a)に示すように、所定形状に成形された充填封止用発泡組成物1をピラー2内に設置する。
【0100】
充填封止用発泡組成物1は、例えば、シート状に形成されている。
【0101】
ピラー2は、断面略凹状のインナパネル4およびアウタパネル5を備えている。インナパネル4は、中央部が周端部からピラー2の厚み方向一方側(図1における下側)に突出するように形成されている。
【0102】
また、アウタパネル5は、中央部が周端部からピラー2の厚み方向他方側(図1における上側)に突出するように形成されている。
【0103】
充填封止用発泡組成物1をピラー2内に設置するには、例えば、まず、取付部材3を充填封止用発泡組成物1に取り付けて、取付部材3および充填封止用発泡組成物1を備える充填封止発泡部材6を作製する。続いて、その充填封止発泡部材6の取付部材3をピラー2の内周面に取り付ける。
【0104】
あるいは、充填封止用発泡組成物1の成形時に混練物とともに取付部材3をインサート成形することもできる。
【0105】
充填封止用発泡組成物1をインナパネル4に取付部材3を介して設置した後、インナパネル4およびアウタパネル5の周端部を対向当接させて、それらを接合する。これによって、ピラー2が閉断面として形成される。
【0106】
このようなピラー2としては、より具体的には、車両ボディのフロントピラー、サイドピラーあるいはリヤピラーなどが挙げられる。
【0107】
その後、この方法では、その後の焼付塗装時の乾燥ライン工程での熱を利用して、例えば、140℃以上180℃以下、好ましくは、160℃以上180℃以下で、ピラー2を加熱する。これにより、図1(b)に示すように、充填封止用発泡組成物1を発泡させることにより充填封止用発泡体9を形成できる。なお、充填封止用発泡組成物1は、上記した発泡とともに、架橋剤(および架橋助剤)を含有する場合には、架橋および硬化する。
【0108】
この充填封止用発泡体9によってピラー2の内部空間をほぼ隙間なく充填して封止することができる。
【0109】
なお、充填封止用発泡組成物1の形状、設置位置、配置方向および配置数などは、ピラー2の形状などに応じて適宜選択される。
【0110】
そして、上記した充填封止用発泡組成物1を発泡させることにより得られる充填封止用発泡体9は、防錆性に優れている。
【0111】
そのため、上記した充填封止用発泡体9の充填方法によって、充填封止用発泡組成物1を発泡させて、上記した充填封止用発泡体9をピラー2の内部空間に充填しても、ピラー2の内周面に錆が生じることを有効に防止することができる。
【0112】
詳しくは、充填封止用発泡体9には、ADCAの分解残渣であるシアン酸、および、脂肪酸金属の分解残渣である遊離脂肪酸によって、ピラー2の内周面に錆を生じる場合がある。しかし、上記した充填封止用発泡組成物に含有される塩基性炭酸マグネシウムが、上記した酸を中和することができ、そのため、上記した錆の発生を有効に防止すると推測される。
【0113】
しかも、塩基性炭酸マグネシウムの配合割合が上記範囲に設定されていれば、充填封止用発泡組成物が高温高湿雰囲気下に置かれ、その後、加熱により発泡させても、発泡倍率が低下することを有効に防止することができる。つまり、充填封止用発泡組成物は、貯蔵安定性に優れている。
【実施例】
【0114】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。
【0115】
実施例1〜5および比較例1〜4
各成分を、表1の配合処方に従って、6インチミキシングロールにて回転数15min−1、110℃で、10分間混練して、混練物(充填封止用発泡組成物)を調製した。その後、調製した混練物を、90℃のプレスにて、厚み3mmのシートを成形した。
【0116】
(評価)
各実施例および各比較例で得られたシートについて、以下の項目についてそれぞれ評価した。それらの結果を、表1に示す。
(1) 鋼板の腐食
シートをサイズ10mm×50mmに裁断して、サンプルを作製し、作製したサンプルを、厚み0.8mm、サイズ25mm×100mmの鋼板(冷間圧延鋼板、SPCC−SD、日本テストパネル社製)の表面に載置し、その後、160℃で、20分間加熱することにより、サンプルを発泡させて、発泡体を得た。
【0117】
その後、発泡体を鋼板から引き剥がし、鋼板の表面における腐食の有無を目視で確認した。
(2) 発泡倍率(初期値)
シートを、直径19mmの円板状に打ち抜き加工してサンプルを作製し、作製したサンプルを、160℃で、30分間加熱することにより、サンプルを発泡させた。そして、発泡前後のシートの密度から、下記式に基づいて、発泡倍率を算出した。
【0118】
体積発泡倍率=発泡前密度/発泡後密度
(3) 発泡倍率(貯蔵後)
まず、シートを、60℃、90%RHの恒温恒室機に10日間投入(貯蔵)した。
【0119】
次いで、貯蔵後のシートを直径19mmの円板状に打ち抜き加工してサンプルを作製し、作製したサンプルを、160℃で、30分間加熱することにより、サンプルを発泡させた。そして、発泡前後のシートの密度から、上記と同様に、発泡倍率を算出した。
【0120】
【表1】

【0121】
なお、表1中の各成分について、以下で詳述する。
【0122】
EVA:商品名「エバフレックスEV560」、エチレン・酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含量14質量%、MFR3.5g/10min(JISK7210(1999)に準拠、加熱温度190℃、荷重21.18N)
PE:商品名「スミカセンG201」、ポリエチレン、MFR2g/10min(JISK6922−1(1997)に準拠、加熱温度190℃、荷重21.18N)
ADCA:商品名「ビニホールAC♯3C」、アゾジカルボンアミド、永和化成社製
ステアリン酸亜鉛:商品名「SZ−P」、乾式法にて製造、平均粒子径40μm、日堺化学社製
酸化亜鉛:商品名「酸化亜鉛2種」、三井金属鉱山社製
塩基性炭酸マグネシウム:炭酸マグネシウム(ヒドロキシ炭酸マグネシウム) 金星、平均粒子径6.0μm、神島化学工業社製
酸化マグネシウム:キョウワマグ150、平均粒子径6μm、協和化学社製
無水炭酸マグネシウム:商品名「合成マグネサイトMSS」、平均粒子径1.2μm、神島化学工業社製
重質炭酸カルシウム:商品名、無水炭酸カルシウム、平均粒子径3.2μm、丸尾カルシウム社製
DCP:商品名「パークミルD−40MBK」、ジクミルパーオキサイド、DCP含量40%、シリカ+EPDM含量60質量%、日本油脂社製
TMPTA:商品名「TMP3A」、トリメチロールプロパントリアクリレート、大阪有機化学工業製
脂肪族炭化水素系:商品名「クイントンG100B」、軟化温度(環球法:昇温速度5℃/分)100℃、日本ゼオン社製
【符号の説明】
【0123】
1 充填封止用発泡組成物(シート)
2 ピラー
3 取付部材
6 充填封止発泡部材
9 充填封止用発泡体(発泡体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーと、アゾジカルボンアミドと、脂肪酸金属と、塩基性炭酸マグネシウムとを含有する
ことを特徴とする、充填封止用発泡組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の充填封止用発泡組成物と、
前記充填封止用発泡組成物に装着され、中空部材の内部空間に取り付け可能な取付部材と
を備える
ことを特徴とする、充填封止発泡部材。
【請求項3】
請求項1に記載の充填封止用発泡組成物を発泡させることによって得られる
ことを特徴とする、充填封止用発泡体。
【請求項4】
請求項1に記載の充填封止用発泡組成物を、金属からなる中空部材の内部空間に配置する工程、および、
前記充填封止用発泡組成物を発泡させて、充填封止用発泡体を得る工程
を備える
ことを特徴とする、充填封止用発泡体の充填方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−91769(P2013−91769A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−55830(P2012−55830)
【出願日】平成24年3月13日(2012.3.13)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】