説明

充填材入りフッ素樹脂シートの製造方法および充填材入りフッ素樹脂シート

【課題】応力緩和性、特に高温での応力緩和性、気密性および機械的強度に優れた充填材入りフッ素樹脂シートおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】フッ素樹脂(A)、充填材(B)、加工助剤(C)、ならびに、フェノール樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂およびジアリルフタレート樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂(D)を含有するシート形成用樹脂組成物を、予備成形し、得られたプリフォームを40〜80℃のロール温度で圧延し、その後焼成することを特徴とする充填材入りフッ素樹脂シートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填材入りフッ素樹脂シートの製造方法および充填材入りフッ素樹脂シート関する。
【背景技術】
【0002】
充填材入りフッ素樹脂シートは、フッ素樹脂に充填材を充填してシート状に加工したものであり、フッ素樹脂の持つ耐薬品性、耐熱性に加えて、充填材の持つ固有の機能・特性を付加し、あるいはフッ素樹脂の欠点である耐クリープ性を改善することにより、シール材等に多く用いられている。
【0003】
このようなシール材として、本願出願人は、特開2007−253519号公報(特許文献1)において、フッ素樹脂、充填材および加工助剤を含む充填材入りフッ素樹脂シートの製造方法を開示している。この製造方法により、高い応力緩和性および高い気密性が両立し、ガスケット材料に適した充填材入りフッ素樹脂シートを得ることができる。
【0004】
また、本願出願人は、特開2005−225918号公報(特許文献2)において、フッ素樹脂、熱硬化性樹脂、充填剤などを含む非石綿系ジョイントシートの製造方法および該製法により得られた非石綿系ジョイントシートを開示している。このジョイントシートは、耐熱性と、シール性に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−253519号公報
【特許文献2】特開2005−225918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載された、従来のフッ素樹脂シートには、機械的強度の点でさらなる改善の余地があった。
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、応力緩和性、特に高温での応力緩和性、気密性および機械的強度に優れた充填材入りフッ素樹脂シートおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の充填材入りフッ素樹脂シートの製造方法は、フッ素樹脂(A)、充填材(B)、加工助剤(C)、ならびに、フェノール樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂およびジアリルフタレート樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂(D)を含有するシート形成用樹脂組成物を予備成形し、得られたプリフォームを40〜80℃のロール温度で圧延し、その後焼成することを特徴としている。
【0008】
前記フッ素樹脂(A)と前記熱硬化性樹脂(D)との重量比は、フッ素樹脂:熱硬化性樹脂=1:0.01〜0.15であることが好ましい。
前記フッ素樹脂(A)と前記充填材(B)との重量比は、フッ素樹脂:充填材=1:0.1〜3であることが好ましい。
前記シート形成用組成物中の前記加工助剤(C)の量は、前記フッ素樹脂(A)と前記充填材(B)との合計100重量部に対して5〜50重量部であることが好ましい。
前記加工助剤(C)は、分留温度が120℃以下である石油系炭化水素溶剤を30重量%以上(ただし、加工助剤重量を100重量%とする。)含んでなることが好ましい。
【0009】
本発明の充填材入りフッ素樹脂シートは、フッ素樹脂(A)、充填材(B)、ならびに、フェノール樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂およびジアリルフタレート樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂(D)を含有し、下記の特性(a)〜(c)を充足することを特徴としている。;
特性(a):JIS R3453に準拠して測定された引張り強さが12MPa以上である、
特性(b):該充填材入りフッ素樹脂シートから作成したφ48mm×φ67mm×厚さ1.5mmの試験片に対して面圧19.6MPa、窒素ガス内圧0.98MPaとして気密試験を行った場合の漏洩量が8.0×10-5Pa・m3/s以下である、
特性(c):JIS R3453に準拠して(但し、加熱温度のみ100℃から200
℃に変更する)測定された応力緩和率が39%以下である。
前記充填材入りフッ素樹脂シートは、上記製造方法で製造することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の充填材入りフッ素樹脂シートの製造方法によれば、応力緩和性、特に高温での応力緩和性、気密性および機械的強度に優れた充填材入りフッ素樹脂シートを製造することができる。
本発明の充填材入りフッ素樹脂シートは、応力緩和性、特に高温での応力緩和性、気密性および機械的強度に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0012】
[充填材入りフッ素樹脂シートの製造方法]
本発明の充填材入りフッ素樹脂シートの製造方法は、フッ素樹脂(A)、充填材(B)、加工助剤(C)、ならびに、フェノール樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂およびジアリルフタレート樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂(D)を含有するシート形成用樹脂組成物を予備成形し、得られたプリフォームを40〜80℃のロール温度で圧延し、その後焼成することを特徴としている。
【0013】
≪シート形成用樹脂組成物≫
本発明のシート形成用樹脂組成物は、フッ素樹脂(A)、充填材(B)、加工助剤(C)、ならびに、フェノール樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂およびジアリルフタレート樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂(D)を含有する。
【0014】
<フッ素樹脂(A)>
前記フッ素樹脂(A)としては、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、変性PTFE、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、四フッ化エチレン−エチレン共重合樹脂(ETFE)、三フッ化塩化エチレン樹脂(PCTFE)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレンエチレン共重合樹脂(FEP)および四フッ化エチレン−パーフロロアルキル共重合樹脂(PFA)など、従来より公知のフッ素樹脂をいずれも好ましく用いることができる。これらの中でも、押出成形、圧延などを行う際の加工性の面で、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)が好ましく、乳化重合によって得られたPTFEが特に好ましい。
【0015】
前記フッ素樹脂(A)としてPTFEを用いる場合には、前記フッ素樹脂に上述したPTFE以外のフッ素樹脂が、少量、たとえば10重量%(フッ素樹脂の合計量を100重量%とする。)以下の量で含まれていても良い。
前記フッ素樹脂(A)としては、粉末状のものをそのまま用いても良く、水にフッ樹脂微粒子を分散させたディスパージョンを用いてもよい。
【0016】
<充填材(B)>
前記充填材(B)としては、目的に応じて、黒鉛、カーボンブラック、膨張黒鉛、活性炭、カーボンナノチューブ等の炭素系充填材;タルク、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、シリコンカーバイド、アルミナ、シリカ等の無機充填材;またはPPS等の樹脂の粉体;等が用いられる。また、炭素繊維、アラミド繊維、ロックウール等からなる繊維長10mm以下の繊維材を充填材(B)として用いても良い。
【0017】
本発明によれば、フッ素樹脂(A)の充填率が低く、充填材(B)の充填率が高い場合であっても、高い応力緩和性と高い気密性とが両立し、さらに、機械的強度の高い充填材入りフッ素樹脂シートを得ることができ、前記フッ素樹脂(A)と前記充填材(B)との重量比は、好ましくは1:0.1〜3、さらに好ましくは1:0.1〜2である。
【0018】
<加工助剤(C)>
前記加工助剤(C)としては、従来公知の加工助剤、たとえば、石油系炭化水素溶剤、アルコール類、水などが挙げられる。石油系炭化水素溶剤としては、分留温度が120℃以下である石油系炭化水素溶剤を30重量%以上、好ましくは50重量%以上含んでいるもの(ただし、加工助剤重量を100重量%とする。)が好ましく、特に、本質的に、分留温度が120℃以下である石油系炭化水素溶剤のみからなるものが好ましい。
【0019】
分留温度が120℃以下である石油系炭化水素溶剤としては、代表例としてパラフィン系溶剤などが挙げられ、市販品であれば、たとえばアイソパーC(炭化水素系有機溶剤、分留温度:97〜104℃、エクソンモービル(有))などが挙げられる。
【0020】
加工助剤(C)に含まれてもよい、分留温度が120℃以下である石油系炭化水素溶剤以外の成分としては、分留温度が120℃を超える石油系炭化水素溶剤などが挙げられる。分留温度が120℃を超える石油系炭化水素溶剤としては、市販品であればアイソパーG(炭化水素系有機溶剤、分留温度:158〜175℃、エクソンモービル(有))などが挙げられる。
【0021】
この加工助剤(C)の量は、シート形成用樹脂組成物中に、フッ素樹脂(A)と充填材(B)との合計100重量部に対して、好ましくは5〜50重量部、さらに好ましくは10〜30重量部である。加工助剤(C)がこのような量で含まれていると、後述する圧延工程の初期段階で、フッ素樹脂を充分に膨潤させることができ、得られるフッ素樹脂シートの内部がポーラスにならない。
【0022】
<熱硬化性樹脂(D)>
前記熱硬化性樹脂(D)は、フェノール樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂およびジアリルフタレート樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂であることを特徴とする。
このような熱硬化性樹脂は、耐熱性、耐酸・アルカリ性に優れており、後述する焼成工程にて、分解、焼失、炭化等せず、得られる充填材入りフッ素樹脂シートの内部がポーラスにならない。
【0023】
熱硬化性樹脂は、市販されている形態として、粉末状、ペレット状、ブロック状等があり、特に制限はされないが、本発明で用いる熱硬化性樹脂(D)は、後述する圧延工程における揮発成分の揮発の制御の容易性のため、さらには、高い応力緩和特性、気密性および機械的強度を有する充填材入りフッ素樹脂シートを得るために、粉末状のものが望ましい。
【0024】
また、フェノール樹脂およびジアリルフタレート樹脂には、市販されている形態として、未硬化タイプと硬化済タイプがあるが、より機械的強度の高い充填材入りフッ素樹脂シートを得るために、未硬化タイプのものが使用される。
【0025】
前記フッ素樹脂(A)と前記熱硬化性樹脂(D)との重量比は、好ましくは1:0.01〜0.15、さらに好ましくは1:0.01〜0.10である。熱硬化性樹脂がこのような量で含まれていると、高い応力緩和性と高い気密性を維持したまま、機械的強度の高い充填材入りフッ素樹脂シートを得ることができる。
【0026】
シート形成用樹脂組成物は、本質的には、上記したフッ素樹脂(A)、充填材(B)、加工助剤(C)および熱硬化性樹脂(D)のみからなる。
【0027】
これらの成分が含まれたフッ素樹脂シート形成用樹脂組成物を調製するには、上記各成分を任意の順序で一度に、あるいは少量ずつ複数回に分けて容器内に添加し、攪拌・混合等すればよい。
【0028】
前記撹拌・混合する方法は、特に制限されないが、フッ素樹脂(A)、無機充填材(B)、加工助剤(C)および熱硬化性樹脂(D)を、製造しようとする充填材入りフッ素樹脂シートの組成に対応するように配合し、任意の順序で撹拌・混合すればよい。撹拌効率が悪い場合には、加工助剤を多く添加し、撹拌終了後に余分な加工助剤を濾過により除去しても良い。
【0029】
また、攪拌・混合する際の温度は、加工助剤が揮発しないよう、圧延工程におけるロール温度よりも低い温度が好ましい。
【0030】
≪充填材入りフッ素樹脂シートの製造方法≫
本発明の充填材入りフッ素樹脂シートの製造方法は、予備成形工程、圧延工程、乾燥工程、焼成工程をこの順序で含んでいる。
【0031】
<予備成形工程>
予備成形工程では、前記シート形成用樹脂組成物を押出成形し、プリフォーム(押出成形物)を製造する。
このプリフォームの形状は、特に限定されないが、その後のシート形成の効率、シート性状の均質性などを考慮すると、ロッド状またはリボン状が望ましい。
【0032】
本発明の製造方法においては、後述する圧延工程において加工助剤を徐々に揮発させるため、予備成形工程は、温度を加工助剤が揮発しないよう、圧延工程におけるロール温度よりも低い温度下で行うことが好ましい。
【0033】
<圧延工程>
予備成形工程に続く圧延工程では、プリフォームを、二軸ロールに代表される圧延ロール間を通過させてシート状に圧延、成形する。
本発明の製造方法においては、この圧延工程は、ロール温度を40〜80℃として行う。
ロール温度が上記範囲にあると、フッ素樹脂(A)の硬度がやや低下し、充填材入りフッ素樹脂シートをより緻密化しやすくなる。
【0034】
一方、圧延工程を40℃よりも低い温度で行うと、前記加工助剤(C)が揮発し難くなる傾向にある。また、80℃を越える温度で圧延を行うと、前記加工助剤(C)が過度に
揮発してしまい、圧延工程初期の時点で残存する加工助剤が少なくなるため、フッ素樹脂(A)を充分に膨潤させ、繊維化させることができず、得られる充填材入りフッ素樹脂シートの強度が劣る傾向にある。また、組成物中の加工助剤(C)が急激に気化することにより膨れ現象が生じ、充填材入りフッ素樹脂シートの気密性も低下する傾向にある。
【0035】
前記加工助剤(C)として、分留温度が低い(120℃以下)石油系炭化水素溶剤を多く含む加工助剤を用いると、二軸ロール等による圧延を実施する間に、シート形成用樹脂組成物中の(プリフォーム中の)加工助剤(C)が徐々に揮発、除去される。したがって、圧延工程の初期段階では、加工助剤(C)が多く存在するためにフッ素樹脂(A)を膨潤させ繊維化させることができ、しかも圧延工程の後期段階では、加工助材(C)の残存量が少ないことから、加工助剤(C)の揮発に基づくシート内部での新たな空孔の形成が少ないため、シートの平面方向への変形に優先させてシート内部の緻密化を進めることができると考えられる。
【0036】
また、本発明の製造方法では、前記圧延工程により調製された圧延シートをさらに圧延する工程を含むこと、すなわち圧延工程を複数回(たとえば3〜50回)繰り返すことが好ましい。圧延を繰り返すことにより、フッ素樹脂シート内部をさらに緻密化することができる。なお圧延工程を繰り返す場合には、圧延を繰り返すごとにロール間隔を狭くする。
【0037】
二軸ロールにより前記プリフォームを圧延してシート形成する際には、たとえばロール間距離を0.5〜20mmにセットし、ロール表面移動速度(シート押出速度)を5〜50mm/秒としてプリフォームを圧延すればよい。
【0038】
<乾燥工程>
乾燥工程では、前記の圧延されたシートを常温で放置するか、フッ素樹脂の融点未満の温度で加熱することにより、加工助剤を除去する。
【0039】
<焼成工程>
焼成工程では、乾燥後シートをフッ素樹脂の融点以上の温度で加熱し、焼結させる。加熱温度としては、シート全体を均一に焼成する必要があること、および、過度の高温ではフッ素系有害ガスが発生することなどを考慮すると、フッ素樹脂の種類によっても多少異なるが、たとえば340〜370℃が適当である。
この焼成工程では、乾燥後のシートを340〜370℃で焼成すればよいが、具体的には、3〜7時間かけて340〜370℃まで昇温し、その後、1〜5時間当該温度で維持し、最後に徐冷するようなプログラムで焼成することが好ましい。
【0040】
[充填材入りフッ素樹脂シート]
このような本発明の製造方法によって、充填材入りフッ素樹脂シートが製造される。この充填材入りフッ素樹脂シートは、応力緩和性、特に高温での応力緩和性、気密性および機械的強度に優れており、具体的には、200℃での応力緩和率(JIS R3453に
準拠、加熱温度のみ100℃から200℃に変更)は、好ましくは42%以下、さらに好ましくは39%以下であり、その下限値は30%であってもよく、漏洩量(気密性、φ48×φ67×厚さ1.5mmの試験片に対して面圧19.6MPa、窒素ガス内圧0.98MPa)は、好ましくは8.0×10-5Pa・m3/s以下、さらに好ましくは7.0
×10-5Pa・m3/s以下であり、その下限値は3.0×10-5Pa・m3/sであってもよく、引張り強さ(機械的強度、JIS R3453に準拠)は、好ましくは12MP
a以上、さらに好ましくは15MPa以上であり、その上限値は25MPaであってもよい。
【0041】
本発明の充填材入りフッ素樹脂シートは、高温での応力緩和性および気密性のみならず、特に、機械的強度に優れているので、装着作業性、とりわけ大口径品装着時の破壊抑止、締付工程における高締付力負荷による変形抑止、使用中の内圧負荷に対する変形抑止などに優れる。
【0042】
このような本発明の充填材入りフッ素樹脂シートは、ガスケットに用いることができ、本発明の充填材入りフッ素樹脂シートからなるガスケットは、高温下(たとえば200℃以上)で長期に渡って使用できる。
前記ガスケットは、本発明の充填材入りフッ素樹脂シートを所望の形状に切り抜くことにより容易に製造できる。
【0043】
[実施例]
以下、本発明の製造方法を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0044】
<試験方法>
厚さ1.5mmのシートから試験片を作成し、以下のように応力緩和率、気密性および引張強度を測定した。
【0045】
漏洩量(気密性);
φ48mm×φ67mmの寸法に打ち抜いたガスケット試験片を、φ100mm×高さ50mm、表面粗さRmax=12μmの鋼フランジ間に装着し、圧縮試験機により面圧19.6MPa(200kgf/cm2G)となるよう荷重を負荷した。フランジに設けられた圧力導入用の貫通孔からガスケット内径側に窒素ガス内圧0.98MPa(1.0kgf/cm2G)を負荷した後圧力導入配管を封じ、1時間保持した。保持前後の圧力変化を圧力センサで読み取り、圧力降下から漏洩量を求めた。
【0046】
引張り強さ;
厚さ1.5mmのシートから試験片を作成し、この試験片についてJIS R3453
に準拠して引張り強さを測定した。
【0047】
応力緩和率;
厚さ1.5mmのシートから試験片を作成し、この試験片について加熱温度を100℃から200℃に変更した点を除いてJIS R3453に準拠して応力緩和率を測定した

【0048】
[実施例1]
PTFEファインパウダー(CD−1、旭硝子(株)製)400g、
NK−300(微粉末クレー、昭和KDE(株)製)600g、
アイソパーC(炭化水素系有機溶剤、分留温度:97〜104℃、エクソンモービル(有))125g、
アイソパーG(炭化水素系有機溶剤、分留温度:158〜175℃、エクソンモービル(有))125g、および
フェノール樹脂1364A(未硬化タイプの粉末状フェノール樹脂、DIC製)4g
をニーダーで5分間混合した後、室温(25℃)で16時間放置することにより熟成させ、シート形成用組成物を調製した。
この組成物を、室温(25℃)で、口金300mm×20mmの押出機で押出し、プリフォームを作成した。
【0049】
このプリフォームを、ロール径700mm、ロール間隔20mm、ロール速度6m/分
、ロール温度40℃の条件下で二軸ロールにより圧延した。この圧延の直後に、得られたシートを、ロール間隔を10mmとして再度圧延した。さらに、この圧延の直後に、得られたシートを、ロール間隔を5mmとして再度圧延した。最後に、この圧延の直後に、得られたシートを、ロール間隔を1.5mmとして再度圧延し、厚さ1.5mmのシートが得られた。
【0050】
このシートを室温(25℃)で24時間放置し溶剤を除去した後、電気炉内350℃で3時間焼成し、充填材入りフッ素樹脂シートを得た。
この充填材入りフッ素樹脂シートの漏洩量(気密性)は4.8×10-5Pa・m3/s、引張り強さは16MPa、応力緩和率は38%であった。
【0051】
[実施例2]
フェノール樹脂の使用量を10gに変更した以外は実施例1と同様の方法で充填材入りフッ素樹脂シートを製造した。
この充填材入りフッ素樹脂シートの漏洩量(気密性)は5.3×10-5Pa・m3/s、引張り強さは18MPa、応力緩和率は35%であった。
【0052】
[実施例3]
フェノール樹脂の使用量を20gに変更した以外は実施例1と同様の方法で充填材入りフッ素樹脂シートを製造した。
この充填材入りフッ素樹脂シートの漏洩量(気密性)は6.0×10-5Pa・m3/s、引張り強さは20MPa、応力緩和率は34%であった。
【0053】
[実施例4]
フェノール樹脂の使用量を40gに変更した以外は実施例1と同様の方法で充填材入りフッ素樹脂シートを製造した。
この充填材入りフッ素樹脂シートの漏洩量(気密性)は6.3×10-5Pa・m3/s、引張り強さは21MPa、応力緩和率は38%であった。
【0054】
[比較例1]
フェノール樹脂を用いないこと以外は実施例1と同様の方法で充填材入りフッ素樹脂シートを製造した。
この充填材入りフッ素樹脂シートの漏洩量(気密性)は6.0×10-5Pa・m3/s、引張り強さは10MPa、応力緩和率は40%であった。
【0055】
[比較例2]
フェノール樹脂の使用量を80gに変更した以外は実施例1と同様の方法で充填材入りフッ素樹脂シートを製造した。
この充填材入りフッ素樹脂シートの漏洩量(気密性)は2.0×10-3Pa・m3/s、引張り強さは20MPa、応力緩和率は48%であった。
【0056】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂(A)、充填材(B)、加工助剤(C)、ならびに、フェノール樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂およびジアリルフタレート樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂(D)を含有するシート形成用樹脂組成物を予備成形し、得られたプリフォームを40〜80℃のロール温度で圧延し、その後焼成することを特徴とする充填材入りフッ素樹脂シートの製造方法。
【請求項2】
前記フッ素樹脂(A)と前記熱硬化性樹脂(D)との重量比が、フッ素樹脂:熱硬化性樹脂=1:0.01〜0.15であることを特徴とする請求項1に記載の充填材入りフッ素樹脂シートの製造方法。
【請求項3】
前記フッ素樹脂(A)と前記充填材(B)との重量比が、フッ素樹脂:充填材=1:0.1〜3であることを特徴とする請求項1または2に記載の充填材入りフッ素樹脂シートの製造方法。
【請求項4】
前記シート形成用組成物中の前記加工助剤(C)の量が、フッ素樹脂(A)と充填材(B)との合計100重量部に対して5〜50重量部であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の充填材入りフッ素樹脂シートの製造方法。
【請求項5】
前記加工助剤(C)が、分留温度が120℃以下である石油系炭化水素溶剤を30重量%以上(ただし、加工助剤重量を100重量%とする。)含んでなることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の充填材入りフッ素樹脂シートの製造方法。
【請求項6】
フッ素樹脂(A)、充填材(B)、ならびに、フェノール樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂およびジアリルフタレート樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂(D)を含有し、下記の特性(a)〜(c)を充足することを特徴とする充填材入りフッ素樹脂シート;
特性(a):JIS R3453に準拠して測定された引張り強さが12MPa以上である、
特性(b):該充填材入りフッ素樹脂シートから作成したφ48mm×φ67mm×厚さ1.5mmの試験片に対して面圧19.6MPa、窒素ガス内圧0.98MPaとして気密試験を行った場合の漏洩量が8.0×10-5Pa・m3/s以下である、
特性(c):JIS R3453に準拠して(但し、加熱温度のみ100℃から200
℃に変更する)測定された応力緩和率が39%以下である。
【請求項7】
上記請求項1〜5の何れかに記載の充填材入りフッ素樹脂シートの製造方法で製造されたこと特徴とする請求項6に記載の充填材入りフッ素樹脂シート。

【公開番号】特開2011−122001(P2011−122001A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278318(P2009−278318)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000229564)日本バルカー工業株式会社 (145)
【Fターム(参考)】