説明

充電状態測定装置

【課題】開路電圧−充電状態特性によって充電状態を得るようにしながら、二次電池の充電状態の測定機会を十分に確保できるようにする。
【解決手段】二次電池1aの充電状態を、開路電圧−充電状態特性と二次電池1aの電池電圧を測定する電圧測定手段VMの測定情報とに基づいて求める充電状態測定装置において、前記二次電池1aに流れる電流値が略0となるように充電用電源CBから二次電池1aへの出力を制御させ、その制御状態での前記電圧測定手段VMの測定情報と、開路電圧−充電状態特性とに基づいて、前記二次電池1aの充電状態を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の開路電圧−充電状態特性のデータを記憶保持する記憶手段と、前記二次電池の電圧を測定する電圧測定手段とが備えられ、前記二次電池と、充電用電源と、前記充電用電源から前記二次電池への充電を制御する充電制御手段とを有して負荷に電力を供給する電源システムにおける前記二次電池の充電状態を、前記記憶手段に記憶されている開路電圧−充電状態特性と前記電圧測定手段の測定情報とに基づいて求める充電状態測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる充電状態測定装置は、二次電池の充放電制御等に必要となる充電状態(SOC)の値を測定するための装置である。
二次電池のSOCを測定するための手法としては、一般に、下記特許文献1にも記載のような、開路電圧(OCV)−充電状態特性を利用してOCVの測定値からSOCを求める手法が良く利用されている。
この開路電圧−充電状態特性によって充電状態を求める手法は、二次電池に流れる電流値を積算することで充電状態を求める手法に比べて、精度良く充電状態を得ることができる点で優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−68369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来構成では、二次電池の充電状態を精度良く得ることができるものの、二次電池を有する電源システムの構成態様によっては、充電状態の測定のために必要な情報をなかなか入手できない場合もある。
すなわち、充電状態の測定に利用する開路電圧−充電状態特性は、「開路電圧」の名称通り、二次電池を他の回路部分から切り離した状態で二次電池の電池電圧を測定する必要がある。
この「開路電圧」の測定は、二次電池と直列にスイッチ装置等を備えて、そのスイッチ装置を開き状態として二次電池の電池電圧を測定すれば良いのであるが、通常、そのように強引に二次電池を他の回路部分から切り離すことは困難であり、現実には、二次電池に流れる電流が略0となるのを待って、略0となったときの二次電池の電池電圧を「開路電圧」として得るのが一般的である。
ところが、バッテリシステムによっては、一旦システムが起動してしまうと、二次電池に流れる電流が略0となるような状態がほとんど発生しない場合もある。
そのような場合では、システムが停止している状態か、あるいは、定電流−定電圧充電における充電末期等の非常に限られた状態でしか充電状態を測定できないことになってしまう。
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、開路電圧−充電状態特性によって充電状態を得るようにしながら、二次電池の充電状態の測定機会を十分に確保できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願の第1の発明は、二次電池の開路電圧−充電状態特性のデータを記憶保持する記憶手段と、前記二次電池の電圧を測定する電圧測定手段とが備えられ、前記二次電池と、充電用電源と、前記充電用電源から前記二次電池への充電を制御する充電制御手段とを有して負荷に電力を供給する電源システムにおける前記二次電池の充電状態を、前記記憶手段に記憶されている開路電圧−充電状態特性と前記電圧測定手段の測定情報とに基づいて求める充電状態測定装置において、前記二次電池に流れる電流を検出する電流検出手段が備えられ、前記二次電池の充電状態を測定するときに、前記電流検出手段の検出情報に基づいて、前記二次電池に流れる電流値が略0(零)となるように前記充電用電源から前記二次電池への出力を前記充電制御手段に制御させ、その制御状態での前記電圧測定手段の測定情報と、前記記憶手段に記憶されている開路電圧−充電状態特性とに基づいて、前記二次電池の充電状態を求める。
【0006】
すなわち、充電用電源から二次電池への出力制御において、二次電池に流れる電流を電流検出手段にて検出して、その検出電流値が略0(零)となるようにフィードバックをかけるのである。
この制御は、重ね合わせの原理で考えると、二次電池によってそれの内部抵抗に流れる放電電流を打ち消すだけの充電電流を二次電池の内部抵抗に流すように、充電用電源が二次電池に印加する電圧等を制御する。
この状態では、負荷への電力供給は充電用電源のみによって行われるが、充電用電源の電流供給能力が負荷電流を上回る限り、上記の制御状態が維持される。
【0007】
もちろん、このような制御では、二次電池に流れる電流の電流値は0(A)から若干ゆらぐことになるが、二次電池の電池電圧の測定値を「開路電圧」としての測定値と見なせる程度には電流値のゆらぎを抑えることができる。
このように制御している状態で、電圧測定手段による二次電池の電池電圧の測定結果を「開路電圧」として得て、記憶手段に記憶されている開路電圧−充電状態特性から充電状態を求める。
【0008】
又、本出願の第2の発明は、上記第1の発明の構成に加えて、前記電源システムは、充電器と前記二次電池とが並列に接続されて、それらと並列に接続されている負荷に直流電力を供給するように構成され、前記充電器が、前記充電用電源として前記二次電池へ直流電力を出力するように構成されている。
すなわち、二次電池の充電状態を測定する際に、充電器から二次電池への出力を制御して、二次電池に流れる電流値を略0(A)とする。
この状態で電圧測定手段によって二次電池の電池電圧を測定することで、その測定結果を「開路電圧」として得る。
このようにして得た「開路電圧」と、記憶手段の開路電圧−充電状態特性とから、二次電池の充電状態を求める。
【0009】
又、本出願の第3の発明は、上記第1の発明の構成に加えて、前記電源システムは、発電機からの電力を直流電力に変換すると共に、直流電力を交流電力に変換して負荷へ供給する電力変換装置と、前記二次電池とが備えられて構成され、前記電力変換装置が、前記充電用電源として前記二次電池へ直流電力を出力するように構成されている。
すなわち、二次電池の充電状態を測定する際に、電力変換装置から二次電池への出力を制御して、二次電池に流れる電流値を略0(A)とする。
この状態で電圧測定手段によって二次電池の電池電圧を測定することで、その測定結果を「開路電圧」として得る。
このようにして得た「開路電圧」と、記憶手段の開路電圧−充電状態特性とから、二次電池の充電状態を求める。
【発明の効果】
【0010】
上記第1の発明によれば、充電用電源から二次電池への出力を制御して、二次電池の電池電圧の測定結果を「開路電圧」として扱えるようにすることで、開路電圧−充電状態特性によって充電状態を得るようにしながら、二次電池の充電状態の測定機会を十分に確保できるものとなった。
【0011】
又、上記第2の発明によれば、充電器と二次電池と負荷とを並列に接続したシステムにおいて、充電器から二次電池への出力を制御して、二次電池の電池電圧の測定結果を「開路電圧」として扱えるようにすることで、開路電圧−充電状態特性によって充電状態を得るようにしながら、二次電池の充電状態の測定機会を十分に確保できるものとなった。
【0012】
又、上記第3の発明によれば、電力変換装置を介して、発電機の電力で二次電池に充電し、発電機の電力や二次電池の電力を負荷に供給するシステムにおいて、電力変換装置から二次電池への出力を制御して、二次電池の電池電圧の測定結果を「開路電圧」として扱えるようにすることで、開路電圧−充電状態特性によって充電状態を得るようにしながら、二次電池の充電状態の測定機会を十分に確保できるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる概略全体構成図
【図2】開路電圧−充電状態特性の例示図
【図3】本発明の第1実施形態にかかるフローチャート
【図4】本発明の第2実施形態にかかる概略全体構成図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
<第1実施形態>
本第1実施形態の充電状態測定装置は、図1に概略的に示すように、組電池1と充電用電源CBである充電器3とを有して負荷4に電力を供給する電源システムにおいて、組電池1を構成する各単電池1aの充電状態を測定する装置であり、各単電池1aを監視する電池監視装置2内の一機能として備えられている。換言すると、電池監視装置2自体が充電状態測定装置として機能している。
【0015】
本第1実施形態の電源システムでは、組電池1と充電器3が並列に接続され、それらと並列に接続されている負荷4に直流電力を供給する。組電池1は、それの充電状態や負荷4の状態に応じて、充電器3からの供給電力で充電されると共に、負荷4へ電力を供給する。充電器3は組電池1へ充電用の直流電力を出力すると共に、負荷4へも動作用電力を供給する。
【0016】
本実施の形態では、上記各単電池1aが二次電池であり、より具体的には、各単電池1aはリチウムイオン電池であるが、リチウムイオン電池以外にも使用可能である。
電池監視装置2は、組電池1を収納する電池パックBP内に組電池1と電気的に接続された状態で収納されている。
電池パックBP内には、組電池1に(すなわち、各単電池1aに)流れる電流を検出する電流検出手段CSとして電流センサ5も備えられ、組電池1からの放電電流及び組電池1への充電電流を検出する。
【0017】
電池監視装置2には、A/Dコンバータ等を備えて各単電池1aの電圧(セル電圧)を測定する電圧測定手段VMである電圧測定部2aと、電池監視装置2の動作を制御する制御部2bと、各単電池1aの充電状態を測定するために必要となる後述のOCV−SOC特性のデータを記憶保持する記憶手段MMであるメモリ2c等が備えられている。
電池監視装置2は、充電状態測定装置としての機能によって得た充電状態(SOC)のデータをもとに、組電池1が適正に動作しているかを監視し、必要に応じて充電器3へ各種の制御信号を送る。
【0018】
充電器3には、組電池1への充電動作を制御する充電制御部3aが備えられ、組電池1に対する充電器3の供給電力による充電を制御する充電制御手段CCとして機能する。
本第1実施形態に関連する部分では、充電制御部3aは、電池監視装置2の制御部2bを経て送られてくる電流センサ5の検出信号と、制御部2bから指示された電流値とに基づいて、電流センサ5の検出信号に対応する電流値が制御部2bから指示された電流値に一致するように、充電器3から組電池1への出力(例えば、電圧)を制御する。
【0019】
電池監視装置2は、開路電圧(OCV)−充電状態特性(以下において、単に「OCV−SOC特性」と称する場合がある)を用いて、各単電池1aの開路電圧の測定値から充電状態を測定する。
このOCV−SOC特性は、縦軸に「開路電圧」をとり、横軸に「充電状態」をとった図2のグラフにおいて、曲線Aにて例示する特性を有しており、このOCV−SOC特性を用いて開路電圧の測定値に対応する充電状態を求めることができる。
このために、メモリ2cには、このOCV−SOC特性がデータテーブル化されて記憶保持されている。
【0020】
次ぎに、電池監視装置2の制御部2bによる処理を図3のフローチャートを用いて説明する。
図3の処理は、制御部2bの動作上で各単電池1aの充電状態のデータが必要となったときに適宜に実行される。
先ず、充電器3の充電制御部3aに対して、組電池1に流れる電流を「0(A)」とするように指示する(ステップ#1)。
これに伴って、充電制御部3aは、組電池1に流れる電流値が略0(零)となるように制御する。具体的には、制御部2bを経て送られてくる電流センサ5の検出信号が「0(A)」に相当する信号となるように充電器3から組電池1への出力(例えば、電圧)を制御する。
従って、この状態では、充電器3のみが負荷4への電力供給を行う状態となる。
【0021】
制御部2bは、電流センサ5の検出信号が、ほぼ「0(A)」の電流値に相当する信号になったのを確認して(ステップ#2)、電圧測定部2aに各単電池1aの電池電圧を測定させて、その測定結果を「開路電圧」として取り込む(ステップ#3)。ここで、電流センサ5の検出信号がほぼ「0(A)」の電流値に相当する信号となっているものと判断する電流値の幅は、「開路電圧」の測定精度としてどの程度の精度を必要とするか、換言すると、「充電状態」の測定精度としてどの程度の精度を必要とするかに応じて、任意に設定できるものである。尚、各単電池1aの電池電圧の測定に代えて、組電池1の電圧を測定しても良い。
上記ステップ#1での指示に応じて、充電制御部3aが組電池1に流れる電流を「0(A)」とする制御が安定した状態では、電流センサ5の検出信号は、ステップ#2の判断で、十分にほぼ「0(A)」と判断できる程度にまで電流値のゆらぎ(リップル)が抑えられている。
【0022】
このようにして、各単電池1aの「開路電圧」を取り込むと、メモリ2cに記憶しているOCV−SOC特性から、各「開路電圧」に対応する値として各単電池1aの充電状態を求める(ステップ#4)。尚、OCV−SOC特性は、各単電池1a毎に予め求めておくこともできるが、各単電池1aを同一機種とすることで、単一のOCV−SOC特性を全ての単電池1aに適用することができる。
各単電池1aの充電状態を求めると、充電器3の充電制御部3aに対して、図3の処理を開始する前の制御状態に復帰するように指示して(ステップ#5)、処理を終了する。
【0023】
<第2実施形態>
次ぎに、本発明の第2実施形態について図4を用いて説明する。
本第2実施形態では、電池パックBPを、HEV(いわゆる、「ハイブリッド自動車」)用の電源として用いた場合について説明する。
本第2実施形態の電源システムは、発電機13からの電力を直流電力に変換すると共に、直流電力を交流電力に変換して負荷であるモータ14へ供給する電力変換装置11と、組電池1とが備えられて構成されている。
電池パックBPの構成は、上記第1実施形態と共通であり、図4に示すように、電池パックBP内の組電池1の正負の端子からの出力電圧は、電力変換装置11へと出力される。
【0024】
電力変換装置11は、車両のエンジン12の駆動力で動作する発電機13の出力を直流電力に変換する直流電源部11aと、直流電源部11aや組電池1の直流電力を交流電力に変換して車両走行用のモータ14へ供給するインバータ部11bと、直流電源部11aの動作を制御する充電制御部11cとを備え、充電用電源CBとして、直流電源部11aで生成する直流電力を組電池1へ出力する。
上記第1実施形態の図1と対比すると、モータ14に電力を供給するインバータ部11bが上記第1実施形態の負荷4と対応し、充電制御部11cと直流電源部11aとが上記第1実施形態の充電器3と対応している。
【0025】
本第2実施形態の電池パックBPをHEVに搭載する場合では、通常、組電池1を完全放電させることはなく、充電状態が20%〜80%の範囲で制御されて、組電池1に電流が流れないというような状態はほとんど存在しない。
このような場合において、上記第1実施形態と同様に、制御部2bが、図3に示すフローチャートの処理を実行することで、適宜のタイミングで充電状態を測定することができる。
尚、図3のフローチャートのステップ#1の指示は、上記第1実施形態では充電器3の充電制御部3aに対して指示するものであるのに対して、本第2実施形態では、電力変換装置11の充電制御部11cに対して指示される。充電制御部11cの機能は、上記第1実施形態の充電制御部3aの機能と全く同一であり、上記第1実施形態と同様に充電制御手段CCとして機能する。
【0026】
〔別実施形態〕
以下、本発明の別実施形態を列記する。
(1)上記各実施形態では、組電池1に流れる電流をほぼ「0(A)」とする制御は、充電器3の充電制御部3a(第1実施形態)や電力変換装置11の充電制御部11c(第2実施形態)が実行する場合を例示しているが、この制御自体も電池監視装置2の制御部2bが実行し、充電器3の充電制御部3aや電力変換装置11の充電制御部11cは、電池監視装置2の制御部2bから指示された通りの出力を組電池1に対して行うように構成しても良い。
(2)上記各実施形態では、二次電池である単電池1aを複数接続して組電池1とした場合を例示しているが、二次電池は単一の電池のみであっても良いし、複数の単電池1aで組電池1を構成する場合でも、単電池1aの個数や接続形態は各種に変更できる。
【符号の説明】
【0027】
1a 二次電池
3 充電器
4 負荷
11 電力変換装置
13 発電機
CB 充電用電源
CC 充電制御手段
CS 電流検出手段
MM 記憶手段
VM 電圧測定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の開路電圧−充電状態特性のデータを記憶保持する記憶手段と、前記二次電池の電圧を測定する電圧測定手段とが備えられ、
前記二次電池と、充電用電源と、前記充電用電源から前記二次電池への充電を制御する充電制御手段とを有して負荷に電力を供給する電源システムにおける前記二次電池の充電状態を、前記記憶手段に記憶されている開路電圧−充電状態特性と前記電圧測定手段の測定情報とに基づいて求める充電状態測定装置であって、
前記二次電池に流れる電流を検出する電流検出手段が備えられ、
前記二次電池の充電状態を測定するときに、前記電流検出手段の検出情報に基づいて、前記二次電池に流れる電流値が略0となるように前記充電用電源から前記二次電池への出力を前記充電制御手段に制御させ、
その制御状態での前記電圧測定手段の測定情報と、前記記憶手段に記憶されている開路電圧−充電状態特性とに基づいて、前記二次電池の充電状態を求める充電状態測定装置。
【請求項2】
前記電源システムは、充電器と前記二次電池とが並列に接続されて、それらと並列に接続されている負荷に直流電力を供給するように構成され、
前記充電器が、前記充電用電源として前記二次電池へ直流電力を出力するように構成されている請求項1記載の充電状態測定装置。
【請求項3】
前記電源システムは、発電機からの電力を直流電力に変換すると共に、直流電力を交流電力に変換して負荷へ供給する電力変換装置と、前記二次電池とが備えられて構成され、
前記電力変換装置が、前記充電用電源として前記二次電池へ直流電力を出力するように構成されている請求項1記載の充電状態測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−149726(P2011−149726A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9137(P2010−9137)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】