説明

充電装置及び充電方法

【課題】充電時に充電電力の無駄な消費を抑制し、充電効率を高める。
【解決手段】複数の二次電池22が直列に接続された電池組24に充電電流Icを供給して充電する充電装置1において、前記二次電池22ごとに設けられた放電ルート回路34を有し、充電中に前記二次電池22の電池電圧Vbが、満充電電圧Vmよりも低い電圧に設定した所定の過充電保護電圧Vth1に達したときに前記放電ルート回路34に前記二次電池22を接続して放電させ、前記電池電圧Vbが前記過充電保護電圧Vth1を下回ったときに前記放電ルート回路34から前記二次電池22を切断して放電を停止させる過充電保護回路26と、前記二次電池22のそれぞれが前記満充電電圧Vmになったことを示す充電完了電圧Vth3に前記電池組24の電圧が達したときに充電を停止する充電器コントローラー10とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電装置及び充電方法に係り、特に、充電効率を高める技術に関する。
【背景技術】
【0002】
直列に多段接続された二次電池を充電する充電装置が従来から知られている。
この種の充電装置においては、二次電池の電圧が所定電圧に達するまで所定の定電流で充電し、その後、電流値を小さくして充電を行うことで、二次電池の内部抵抗による影響を小さくして、より満充電に近い状態まで充電することを可能にした、いわゆる多段定電流充電方式が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、二次電池への過充電を防止するために過充電保護回路を備えた充電装置が知られている。この種の過充電保護回路は、二次電池毎に放電抵抗を含む放電ルート回路を並列に設け、いずれかの二次電池の過充電を検出した場合、過充電が検出された二次電池を放電ルート回路に接続して強制的に放電させ、また、この二次電池に流入する充電電流を放電ルート回路にバイパスさせている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
この過充電保護回路を充電装置に設けることにより、過充電の保護の他にも次のような利点がある。すなわち、リチウムポリマー電池等のように充電時の内部抵抗値等の特性を揃えて製造することが困難な二次電池を多段に直列に接続して充電を行う場合に、過充電保護回路が各二次電池間の電池電圧を一定の上限値に揃えるようにバランスさせるバランス回路として機能するため、二次電池間の特性のばらつきを補償した充電が可能になる。また、経年劣化により充電時の電池電圧(内部抵抗)が大きく変化するような二次電池の充電に対しても、使用開始時の充電時と、ある程度経年劣化した時の充電時とで二次電池の内部抵抗によらず電池電圧の上限値が一定に維持されるため経年劣化を補償した充電が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−87991号公報
【特許文献2】特開平10−50352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、充電装置が過充電保護回路を備える場合、例えば上記特許文献1の記載の技術を用いて満充電に近い状態まで充電を行うと、各二次電池の電池電圧が満充電の電圧に近づいたものから順次放電ルート回路に接続されて放電が行われる。このため、放電ルート回路の放電により充電電力が無駄に消費され、充電効率を低下させる、といった問題がある。また、放電ルート回路での放電が頻繁に行われると、放電ルート回路での放電による発熱によって周辺部品の劣化を促す、といった問題も生じる。
【0007】
この種の問題は、過充電保護回路を備えた充電装置に限らず、充電による発熱によりガスの発生を伴う二次電池にも同様に生じる。
すなわち、過充電保護回路の放電ルート回路への放電により充電電力が無駄に消費されるのと同様に、充電中に二次電池でガスが発生している状態においては、二次電池の内部抵抗が増大する等の理由で充電電力が発熱として無駄に消費され、充電効率を低下させる。また、発熱によって周辺部品の劣化を促す、といった問題も同様に生じる。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、充電時に充電電力の無駄な消費を抑制し、充電効率を高めることができる充電装置及び充電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の二次電池が直列に接続された電池組に充電電流を供給して充電する充電装置において、前記二次電池ごとに設けられた放電ルート回路を有し、充電中に前記二次電池の電池電圧が、満充電電圧よりも低い電圧に設定した所定の過充電保護電圧に達したときに前記放電ルート回路に前記二次電池を接続して放電させ、前記電池電圧が前記過充電保護電圧を下回ったときに前記放電ルート回路から前記二次電池を切断して放電を停止させる過充電保護回路と、前記二次電池のそれぞれが満充電状態に近いことを示す充電下限電流値まで前記充電電流が減少するまでの間、いずれかの前記二次電池が放電ルート回路への放電を開始するごとに該放電ルート回路への放電が停止するまで前記充電電流を減少させて充電し、その後、前記充電電流が前記充電下限電流値以下まで減少したときに、前記充電電流を前記充電下限電流値に維持して充電を継続して各二次電池の電池電圧を前記過充電保護電圧より高めて、前記二次電池のそれぞれが前記満充電電圧になったことを示す充電完了電圧に前記電池組の電圧が達したときに充電を停止する充電制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、上記充電装置において、前記電池組、及び外部負荷が並列接続された並列回路に外部電力を供給し、前記電池組の充電、及び前記外部負荷への電力供給を行う充電器を備え、非充電時には、前記電池組及び前記外部負荷を導通させた状態で維持しつつ、前記充電器が前記並列回路に印加する電圧を、前記電池組に流入する充電電流を略ゼロに維持するように制御することを特徴とする。
【0011】
また上記目的を達成するために、本発明は、複数の二次電池が直列に接続された電池組に充電電流を供給して充電する充電方法において、前記二次電池ごとに放電ルート回路を設け、充電中に前記二次電池の電池電圧が、満充電電圧よりも低い電圧に設定した所定の過充電保護電圧に達したときに前記放電ルート回路に前記二次電池を接続して放電させ、前記電池電圧が前記過充電保護電圧を下回ったときに前記放電ルート回路から前記二次電池を切断して放電を停止させて過充電保護を行い、前記二次電池のそれぞれが満充電状態に近いことを示す充電下限電流値まで前記充電電流が減少するまでの間、いずれかの前記二次電池が放電ルート回路への放電を開始するごとに該放電ルート回路への放電が停止するまで前記充電電流を減少させて充電し、その後、前記充電電流が前記充電下限電流値以下まで減少したときに、前記充電電流を前記充電下限電流値に維持して充電を継続して各二次電池の電池電圧を前記過充電保護電圧より高めて、前記二次電池のそれぞれが前記満充電電圧になったことを示す充電完了電圧に前記電池組の電圧が達したときに充電を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、充電中においては、放電ルート回路への放電を停止させるように充電電流を減少させながら充電が行われるため、放電に伴う充電電力の無駄な消費が抑えられ、充電効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る充電装置の構成を示す図である。
【図2】充電処理のフローチャートである。
【図3】充電パターンを示す図である。
【図4】第2実施形態に係る充電装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1は、本実施形態に係る充電装置1の構成を示す図である。この図に示すように、充電装置1は、電力を蓄える蓄電池部2と、この蓄電池部2に電力を供給して充電する充電器部4とを備えている。
充電器部4は、外部電源コネクタ6と、充電器8と、充電器コントローラー10と、電流検出器12と、表示器14と、遮断スイッチ16とを有している。
外部電源コネクタ6は、商用電源等の外部電源18が接続されるコネクタであり、外部電源18の電力が充電器8に入力されている。
【0015】
充電器8は、外部電源18の電力を蓄電池部2及び外部負荷19に供給して、蓄電池部2の充電及び外部負荷19の駆動を行うものである。この外部負荷19は、外部電源18の停電時に蓄電池部2の蓄電力を供給する対象の機器である。
さらに詳述すると、充電器8には、蓄電池部2及び外部負荷19が並列に接続されており、これら蓄電池部2及び外部負荷19により並列回路9が構成されている。そして、充電器8は、この並列回路9に電圧αを印加することで、蓄電池部2に直流の充電電流Icを供給し、また、外部負荷19に電力を供給する。
外部電源18に停電が発生すると、蓄電池部2及び外部負荷19から成る並列回路9からみて充電器8がハイインピーダンス状態になるため、蓄電池部2及び外部負荷19が自動的に直列に接続され、蓄電池部2から外部負荷19に畜電力が供給される。
【0016】
充電器コントローラー10は、充電中においては充電電流Icの電流値を可変制御するものであり、信号線20を介して蓄電池部2と接続されている。充電器コントローラー10は、この信号線20を介して蓄電池部2から受信した信号に基づいて充電電流Icを制御する。
電流検出器12は、充電器8と蓄電池部2とを接続した直列回路上に介挿され、この蓄電池部2から充電器8に向う充電電流Icと、充電器8からの放電に伴う放電電流Idとを検出し、充電器コントローラー10に出力するものである。
【0017】
充電器コントローラー10は、電流検出器12の検出信号に基づいて充電電流Icの電流値を可変制御する。また、充電器コントローラー10は、充電時において、予め設定された設定時間ごとに電流検出器12の検出信号を取り込んでサンプリングし、サンプリングした充電電流Icを積算し充電量Wcを算出し、放電時においては、サンプリングした放電電流Idを積算し放電量Wdを算出する。
充電器コントローラー10は、このように算出した充電量Wc及び放電量Wdに基づいて、蓄電池部2の現在の蓄電量Wを算出する。すなわち、蓄電池部2が満充電された状態の容量を初期容量W0とした場合、現在の蓄電量Wは、W=W0−Wd+Wcにより求められる。
【0018】
表示器14は、充電器コントローラー10の制御の下、各種情報を表示するものであり、例えば蓄電池部2の現在の蓄電量Wの算出値を表示する。
また、充電器コントローラー10は、蓄電池部2への充電回数をカウントする機能を備え、蓄電池部2が備える電池組24(後述)の寿命を示す所定の充電回数に対する現在の充電回数の割合を算出し、その割合を、電池組24の寿命がどの程度尽きているかを示す情報として表示器14に表示する。
遮断スイッチ16は、蓄電池部2の放電を停止するための常閉スイッチであり、充電器8と蓄電池部2とを接続した直列回路上に介挿され、充電器コントローラー10の制御の下、蓄電池部2が外部負荷19に電力を供給しているときに、当該蓄電池部2の過放電を防止するために開成する。これにより、蓄電池部2から外部負荷19への電力供給等に伴う放電が停止され過放電が防止される。
【0019】
また、遮断スイッチ16は常閉スイッチであるため、通常は蓄電池部2と外部負荷19との間が導通状態で保持されている。このように蓄電池部2と外部負荷19との間をスイッチ等で常時遮断せずに導通状態で維持する構成としているため、外部電源18に停電が発生したとしても、当該スイッチへの電力供給が停止して作動せずに蓄電池部2と外部負荷19との間が遮断されたままになる、といった事態が防止される。
しかし蓄電池部2と外部負荷19との間を常時導通状態で保持すると、蓄電池部2の非充電時には、当該蓄電池部2の蓄電力が外部負荷19に供給されてしまう。そこで、充電装置1は、非充電時には、蓄電池部2に流入する充電電流Icを略ゼロに維持するゼロ電流充電を行うことで、蓄電池部2から外部負荷19に電力が供給され無駄に放電されるのを防止する。
具体的には、非充電時において、充電器コントローラー10は、電流検出器12の検出値に基づいて、蓄電池部2に流入する充電電流Icが略ゼロに維持されるように、並列回路9に印加する電圧αをフィードバック制御する。この結果、電圧αと蓄電池部2の電圧との差圧が略等しくなって蓄電池部2への充電電流Icが略ゼロになり、この状態が保持されて蓄電池部2から外部負荷19への蓄電力の供給が停止状態で保持される。
【0020】
次いで蓄電池部2の構成について詳述する。
蓄電池部2は、n個(n≧2)の二次電池(セル)22を直列に接続してなる電池組24と、過充電保護回路(バランス回路)26とを有する。二次電池22は例えばリチウムイオン電池の一例たるリチウムポリマー電池である。この他にも、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等の任意の二次電池を用いることが可能である。ただし、電池組24を構成する二次電池22は全て同一種の二次電池とする。
蓄電池部2には、電池組24の陽極に電気的に接続される陽極端子30、及び電池組24の負極に電気的に接続される陰極端子32が設けられており、これら陽極端子30及び陰極端子32が上記充電器部4に電気的に接続されている。充電時には、充電器部4から陽極端子30を介して電池組24に充電電流Icが供給されて電池組24の充電が行われる。
【0021】
過充電保護回路26は、二次電池22間の電圧バランスを揃えることで、二次電池22への過充電を保護するものであり、二次電池22ごとに並列に設けられた放電ルート回路34と、二次電池22ごとに設けられた検出器群36と、電池制御部38とを備えている。
放電ルート回路34は、経路中に放電抵抗(バランス抵抗)40及びスイッチング素子42を直列に接続した回路である。スイッチング素子42は常開接点であり、二次電池22の電池電圧Vbが過充電保護電圧Vth1に達した場合に閉成する。この過充電保護電圧Vth1は、二次電池22の種類に応じた満充電電圧Vmよりも低い値に設定されたものであり、二次電池22がリチウムポリマー電池の場合は例えば満充電とみなされる4.2Vを超えない値である。
【0022】
スイッチング素子42が閉成した場合、放電ルート回路34が二次電池22電気的に接続され、当該二次電池22は放電ルート回路34に放電を開始する。放電ルート回路34への放電中においては、放電によるエネルギー放出や、充電電流Icが放電ルート回路34へバイパスされて二次電池22への流入量が減少する事などに要因して、二次電池22の電池電圧Vbが次第に低下する。そして、電池電圧Vbが過充電保護電圧Vth1よりも所定のマージン分だけ低い保護停止電圧Vth2まで下がると、スイッチング素子42が開成し、放電ルート回路34への放電が停止され、充電時には、再度、充電状態に移行する。過充電保護電圧Vth1と保護停止電圧Vth2との差は、少なくともスイッチング素子42のチャタリングを防止可能な程度とされる。
二次電池22の放電中においては、その二次電池22に流入する充電電流Icが放電ルート回路34にバイパスされ、後段の二次電池22に導入される。このときバイパスされる電流値は、放電抵抗40の抵抗値により決定される。
【0023】
検出器群36は、過充電保護用検出器44、充電完了検出器46及び放電遮断用検出器48を備えている。これら過充電保護用検出器44、充電完了検出器46及び放電遮断用検出器48は、二次電池22の電池電圧Vbを、各々に設定された所定電圧と比較するコンパレータ回路を有して構成されている。
過充電保護用検出器44は、二次電池22の電池電圧Vbを検出し、この電池電圧Vbと上記の過充電保護電圧Vth1とを比較し、電池電圧Vbが過充電保護電圧Vth1を超えた場合に、スイッチング素子42を閉成して、二次電池22を放電ルート回路34へ放電させる。また、過充電保護用検出器44は、電池電圧Vbが保護停止電圧Vth2を下回った場合に、スイッチング素子42を開成して二次電池22の放電ルート回路34への放電を停止する。
【0024】
また過充電保護用検出器44は、スイッチング素子42を開閉するごとに、スイッチング素子42の開閉状態、すなわち、放電の開始/停止を示す開閉信号を電池制御部38に出力する。電池制御部38は、かかる開閉信号が入力されると、充電器部4の充電器コントローラー10に信号線20を介して開閉信号を出力し、これにより、充電器コントローラー10が放電ルート回路34への放電の有無を検知可能になる。
充電器コントローラー10は、充電時において、開閉信号に基づいて、いずれかの二次電池22が放電ルート回路34へ放電を開始したことを検知した場合、当該放電ルート回路34への放電が停止されるまで充電電流Icを減少させる制御を行うが、かかる制御については後述する。
【0025】
充電完了検出器46は、二次電池22の電池電圧Vbを検出し、この検出信号を電池制御部38に出力する。電池制御部38は、各二次電池22の電池電圧Vbを積算して、電池組24の電圧Vallを算出し、信号線20を介して充電器コントローラー10に出力する。充電器コントローラー10は、電池組24の電圧Vallが所定の充電完了電圧Vth3に達した場合、蓄電池部2を含む並列回路9に印加する電圧αを、当該蓄電池部2に流れる充電電流Icが略ゼロとなるように制御して上記ゼロ電流充電状態として蓄電池部2への充電を停止する。上記充電完了電圧Vth3は、二次電池22の満充電電圧Vmを二次電池22の数だけ積算した値である。
なお、いずれかの二次電池22の電池電圧Vbが許容された電圧の上限値に至った場合にも、蓄電池部2の充電が速やかに停止される構成とされている。
【0026】
放電遮断用検出器48は、電池組24への非充電の間、すなわち、電池組24の畜電力が外部負荷19に供されている間、二次電池22の電池電圧Vbを検出し、この電池電圧Vbと放電遮断電圧Vth4とを比較し、電池電圧Vbが放電遮断電圧Vth4を下回った場合に、検知信号を電池制御部38に出力する。放電遮断電圧Vth4は、二次電池22が終止電圧を超えて放電する状態、いわゆる過放電状態に至るのを防止するものであり、終止電圧を下回らない電圧に設定されている。例えば、二次電池22がリチウムポリマー電池である場合、放電遮断電圧Vth4は約3Vに設定される。
【0027】
電池制御部38は、いずれかの放電遮断用検出器48から検出信号を受けた場合、放電を遮断すべき事を示す遮断信号を、信号線20を介して充電器コントローラー10に出力する。充電器コントローラー10は、電池制御部38から遮断信号を受け取った場合、上記遮断スイッチ16を開成する。これにより、蓄電池部2から外部負荷19への電力供給等による放電が停止される。
なお、この充電装置1は、電池組24の電池温度を検出するサーミスタ等の温度検出センサを有し、充電時に、電池組24の温度が所定温度(例えば、リチウムポリマー電池においては60度)を超えた場合に、充電を停止するように構成されている。
【0028】
次いで、充電装置1の充電制御について説明する。
図2は充電装置1の充電処理を示すフローチャートであり、図3は充電装置1による充電パターンを示す図である。なお、図3には、充電時の電池電圧の上昇特性が異なる2つの二次電池22A、22Bについての充電パターンを示している。
【0029】
充電装置1は、充電を行う場合、先ず、充電開始条件が満足されたか否かを判断する(ステップS1)。充電開始条件には、例えば電池組24が満充電状態でなくなったときや、過放電防止のために遮断スイッチ16が開成したとき、前回の充電終了から一定期間が経過したとき等の各種の条件が設定されている。
充電開始条件が満足された場合(ステップS1:YES)、充電装置1は、電流値Iiniの充電電流Icを蓄電池部2に供給して充電を開始する(ステップS2)。すなわち、充電装置1は、電流検出器12による検出信号をサンプリングしながら充電電流Icの電流値が電流値Iiniになるように電池組24に印加する電圧αを調整する。図3に示すように、充電電流Icの供給が開始されて充電が始まると(時間t0)、電池組24の各二次電池22A、22Bの電池電圧Vbが充電初期電圧V0a、V0bから上昇を開始する。
【0030】
そして、例えば、図3に示すように、二次電池22Aが二次電池22Bよりも電池電圧Vbが上昇し易い特性を有する場合、二次電池22Bの電池電圧Vbが過充電保護電圧Vth1に至るよりも前に、二次電池22Aの電池電圧Vbが過充電保護電圧Vth1に達する(時間t1)。この結果、二次電池22Aの過充電保護用検出器44が二次電池22Aへの過充電を防止すべくスイッチング素子42を閉成し、二次電池22Aを放電ルート回路34に接続して放電を開始させる。過充電保護用検出器44がスイッチング素子42を閉成した場合、開閉信号が充電器コントローラー10に出力され、これにより、二次電池22Aの放電ルート回路34への放電が充電器コントローラー10に検知される。
【0031】
充電器コントローラー10は、図2に示すように、いずれかの二次電池22の放電ルート回路34への放電を検知した場合(ステップS3:YES)、充電電流Icの電流値を順次減少させる(ステップS4)。
これにより、図3に示すように、二次電池22Aの電池電圧Vbが過充電保護電圧Vth1に達した時間t1から充電電流Icの電流値が減少させられる。
二次電池22Aは、放電ルート回路34への放電、及び、充電電流Icの減少に伴い次第に電池電圧Vbを下げ、保護停止電圧Vth2まで下がると(時間t2)、二次電池22Aの過充電保護用検出器44がスイッチング素子42を開成し、二次電池22Aの放電ルート回路34への放電を停止する。この放電ルート回路34への放電停止は、開閉信号の充電器コントローラー10への出力により、充電器コントローラー10に検知される。
【0032】
充電器コントローラー10は、図2に示すように、二次電池22の放電ルート回路34への放電停止を検知した場合(ステップS5:YES)、充電電流Icの電流値の減少を停止して現状の値に固定し(ステップS6)、処理手順をステップS3に戻して充電を継続する。
これにより、図3に示すように、二次電池22Aの電池電圧Vbが保護停止電圧Vth2に下がるまで充電電流Icが減少し、放電が停止したときの電流値に固定される。なお、充電電流Icを減少させた場合には、これに伴い、二次電池22Aのみならず他の二次電池22Bの電池電圧Vbも低下する。
そして以降、いずれかの二次電池22の放電ルート回路34への放電が検知されるごとに、その二次電池22の放電ルート回路34への放電が停止するまで充電電流Icを減少する、という処理が繰り返し行われる。この繰り返し回数は、二次電池22の充電時の電圧上昇特性の違いや劣化の度合い等により変動し、常に決まった回数の繰り返しが行われる訳では無い。
【0033】
各二次電池22が満充電状態に近づく充電終期においては、図3に示すように、充電電流Icが小さくなり、上記ステップS4の処理により、充電電流Icを減少させたときに充電電流Icが充電下限電流値Ithを下回るようになる(時間t3)。この充電下限電流値Ithは、各二次電池22が満充電状態に近づいたときに示す所定の電流値が設定される。
充電器コントローラー10は、図2に示すように、充電電流Icが充電下限電流値Ith以下になった事を検出すると(ステップS7:YES)、充電電流Icを充電下限電流値Ithに維持して充電を継続する(ステップS8)。
【0034】
この結果、各二次電池22の充電状態が満充電状態に近くなり、電池電圧Vbが過充電保護電圧Vth1を超え、放電ルート回路34への放電を開始する二次電池22が多数になる。このときには、充電電流Icが非常に小さい値であるため、放電ルート回路34にバイパスされる電流値も小さく放電抵抗40でのエネルギーロスも小さい。そして、放電ルート回路34に放電中の二次電池22であっても、充電電流Icのうち、放電ルート回路34にバイパスされなかった僅かな電流が流入し、図3に示すように、電池電圧Vbが過充電保護電圧Vth1を超えて満充電電圧Vmに達する(時間t4)。
このようにして、電池組24の電圧Vallが上述した充電完了電圧Vth3に達した場合には(ステップS9:YES)、充電開始(時間t0)から放電量Wdの約100%が充電されたこととなる。したがって、充電装置1は、蓄電池部2の充電状態を上記ゼロ電流充電状態にして蓄電池部2への充電を停止し(ステップS10)、充電処理を終了する。
このゼロ電流充電においては、蓄電池部2に流入する充電電流Icを略ゼロに維持するように、充電器8の電圧αがフィードバック制御される。これにより、蓄電池部2への充電が停止状態となると共に、蓄電池部2と外部負荷19とを導通状態で保持しつつ蓄電池部2から外部負荷19への畜電力の供給を停止した状態に保持する。
【0035】
このように、本実施形態によれば、過充電保護回路26の過充電保護動作によって、いずれかの二次電池22が放電ルート回路34に放電を開始した場合に、充電器コントローラー10は、放電を開始した二次電池22の放電ルート回路34への放電が停止するまで充電電流Icを減少させて充電を継続する構成とした。
この構成により、充電中においては、各二次電池22の放電ルート回路34への放電が抑制されるため、充電電力が放電によって無駄に消費されることが無く、充電効率が高められる。
これに加え、放電ルート回路34における発熱も小さくなることから、周辺部品の劣化も防止される。
【0036】
また本実施形態によれば、充電器コントローラー10は、充電電流Icが所定の充電下限電流値Ithを下回った場合、この充電下限電流値Ithに充電電流Icを維持して電池組24への供給を継続し、電池組24の電圧Vallが所定の充電完了電圧Vth3に達したときに充電を停止する構成とした。
この構成により、充電下限電流値Ithに充電電流Icを維持して電池組24への供給を継続することで、多くの二次電池22の電池電圧Vbが過充電保護電圧Vth1を超えて、放電ルート回路34への放電を行う状態になるものの、充電電流Icが比較的小さい充電下限電流値Ithであるため、放電ルート回路34で消費されるエネルギーも小さい状態に抑えられる。そして、このように放電ルート回路34で消費されるエネルギー量が抑えられた状態で、各二次電池22を満充電電圧Vmまで充電することができる。
【0037】
また本実施形態によれば、電池組24、及び外部負荷19で並列回路9を構成して充電器8に接続する構成としたため、非充電の間、電池組24及び外部負荷19が導通された状態で保持される。このため、充電器8に供給される外部電源18が停電等した場合には、電池組24及び外部負荷19が自動的に直列回路を構成し、電池組24から外部負荷19への蓄電力供給が速やかに開始される。
さらに、非充電時には、充電器8が並列回路9に印加する電圧αを、電池組24に流入する充電電流Icを略ゼロに維持するに制御するため、電池組24から外部負荷19に電力が供給されることがなく、当該電池組24の無駄な放電が防止される。
【0038】
また本実施形態によれば、いずれかの二次電池22の電池電圧Vbが所定の放電遮断電圧Vth4まで低下した場合、電池組24から外部機器への蓄電力の供給を遮断し、電池組24への充電を開始する構成としたため、各二次電池22の過放電を確実に防止することができる。
【0039】
<第2実施形態>
次いで、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態では、充電中にガスが発生する性質を有する複数の二次電池122を直列に接続した電池組124に充電を行う充電装置100について説明する。
図4は、本実施形態に係る充電装置100の構成を示す図である。なお、同図において、図1に示したものには同一の符号を付し、その説明を省略する。
この図に示すように、本実施形態の充電装置100は、ガス発生検知回路50を備えている。このガス発生検知回路50は、充電中に、いずれかの二次電池122でのガスの発生を検知して電池制御部38に出力するものである。電池制御部38は、ガスの発生が検知された場合、信号線20を介して充電器コントローラー10に出力する。
【0040】
充電器コントローラー10は、充電中にガスの発生が検知されごとに、ガスの発生が停止するまで充電電流Icを減少させて充電を継続することになる。
なお、充電電流Icが充電下限電流値Ithを下回る場合には、第1実施形態で説明した図2のステップS7以降と同様の処理を行う。すなわち、充電器コントローラー10は、充電電流Icが充電下限電流値Ith以下になった事を検出すると(ステップS7:YES)、充電電流Icを充電下限電流値Ithに維持して充電を継続し(ステップS8)、電池組124の電圧Vallが上述した充電完了電圧Vth3に達した場合には(ステップS9:YES)、蓄電池部2への充電状態をゼロ電流充電状態として充電を停止し(ステップS10)、充電処理を終了する。
【0041】
このように本実施形態によれば、充電中においては、各二次電池122でのガスの発生が抑制されるため、二次電池122の内部抵抗の上昇が抑えられるため、この内部抵抗の上昇に伴う充電電力の無駄な消費が抑制されることとなり、充電効率が高められる。
【0042】
なお、ガス発生検知回路50は、ガスセンサ等によりガスの発生の有無を直接検知する構成や、各二次電池122の電池電圧Vbを監視し、二次電池122からガスの発生を生じさせる所定の電圧に電池電圧Vbが到達した事を検知することで、ガスの発生を間接的に検知する構成としても良い。
また、ガス発生検知回路50がガス発生の有無をセンサ等で直接検出する構成である場合には、このガス発生検知回路50の検知結果に基づいて、充電器コントローラー10がガス発生の停止を判断する構成としても良く、また、ガスの発生が停止する所定の電池電圧と二次電池122の電池電圧Vbとを比較することで、間接的にガスの発生停止を検知する構成としても良い。
【0043】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
例えば、上述した実施形態では、充電中における過充電保護回路26での充電電力の余分な消費、及び、充電中における二次電池122でのガス発生に伴う充電電力の余分な消費を抑える構成とした。
しかしながら、これに限らず、電池組が、充電電力を充電以外に無駄に消費する電力消費要因が充電中に発生し得るものであり、なおかつ、この電力消費要因が充電電流を減少させることで解消するものである場合には、そのような電池組への充電にも、本発明を適用することが可能である。
すなわち、充電中に電力消費要因による充電電力の消費が発生された場合には、この消費が停止するまで充電電流を減少させて充電を継続すれば良い。
【符号の説明】
【0044】
1、100 充電装置
2 蓄電池部
4 充電器部
8 充電器
9 並列回路
10 充電器コントローラー(充電制御手段)
12 電流検出器
14 表示器
19 外部負荷
22、22A、22B、122 二次電池
24 電池組
26 過充電保護回路
34 放電ルート回路
38 電池制御部
40 放電抵抗
42 スイッチング素子
44 過充電保護用検出器
46 充電完了検出器
48 放電遮断用検出器
50 ガス発生検知回路
Ic 充電電流
Ith 充電下限電流値
Vb 電池電圧
Vm 満充電電圧
Vth1 過充電保護電圧
Vth2 保護停止電圧
Vth3 充電完了電圧
Vth4 放電遮断電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の二次電池が直列に接続された電池組に充電電流を供給して充電する充電装置において、
前記二次電池ごとに設けられた放電ルート回路を有し、充電中に前記二次電池の電池電圧が、満充電電圧よりも低い電圧に設定した所定の過充電保護電圧に達したときに前記放電ルート回路に前記二次電池を接続して放電させ、前記電池電圧が前記過充電保護電圧を下回ったときに前記放電ルート回路から前記二次電池を切断して放電を停止させる過充電保護回路と、
前記二次電池のそれぞれが満充電状態に近いことを示す充電下限電流値まで前記充電電流が減少するまでの間、いずれかの前記二次電池が放電ルート回路への放電を開始するごとに該放電ルート回路への放電が停止するまで前記充電電流を減少させて充電し、その後、前記充電電流が前記充電下限電流値以下まで減少したときに、前記充電電流を前記充電下限電流値に維持して充電を継続して各二次電池の電池電圧を前記過充電保護電圧より高めて、前記二次電池のそれぞれが前記満充電電圧になったことを示す充電完了電圧に前記電池組の電圧が達したときに充電を停止する充電制御手段と
を備えたことを特徴とする充電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の充電装置において、
前記電池組、及び外部負荷が並列接続された並列回路に外部電力を供給し、前記電池組の充電、及び前記外部負荷への電力供給を行う充電器を備え、
非充電時には、前記電池組及び前記外部負荷を導通させた状態で維持しつつ、前記充電器が前記並列回路に印加する電圧を、前記電池組に流入する充電電流を略ゼロに維持するように制御することを特徴とする充電装置。
【請求項3】
複数の二次電池が直列に接続された電池組に充電電流を供給して充電する充電方法において、
前記二次電池ごとに放電ルート回路を設け、充電中に前記二次電池の電池電圧が、満充電電圧よりも低い電圧に設定した所定の過充電保護電圧に達したときに前記放電ルート回路に前記二次電池を接続して放電させ、前記電池電圧が前記過充電保護電圧を下回ったときに前記放電ルート回路から前記二次電池を切断して放電を停止させて過充電保護を行い、
前記二次電池のそれぞれが満充電状態に近いことを示す充電下限電流値まで前記充電電流が減少するまでの間、いずれかの前記二次電池が放電ルート回路への放電を開始するごとに該放電ルート回路への放電が停止するまで前記充電電流を減少させて充電し、その後、前記充電電流が前記充電下限電流値以下まで減少したときに、前記充電電流を前記充電下限電流値に維持して充電を継続して各二次電池の電池電圧を前記過充電保護電圧より高めて、前記二次電池のそれぞれが前記満充電電圧になったことを示す充電完了電圧に前記電池組の電圧が達したときに充電を停止することを特徴とする充電方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−188740(P2011−188740A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107950(P2011−107950)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【分割の表示】特願2008−43467(P2008−43467)の分割
【原出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【出願人】(508058147)東京整流器株式会社 (3)
【出願人】(508057449)株式会社ジェーピーエス (3)
【Fターム(参考)】