説明

光センサシステム

【課題】光源・光検出ユニットの発生光量や光伝送系の光コネクタの反射率の影響を受けずに光センサの反射率にのみ依存した値で測定対象の物理量を測定できる光センサシステムを提供することである。
【解決手段】測定対象の物理量の変化に応じて反射率が変化する光センサ12と、光センサ12に対して光コネクタ14を有した光伝送系を介して入射光を送信し光センサ12での反射光を再び光コネクタ14を有した光伝送系を介して戻り光を受信する光源・光検出ユニット11と、光センサ12と光コネクタ14との間に接続され入射光の一部を透過し残りの入射光を反射する反射素子15とを備え、光源・光検出ユニット11は、光センサ12による反射光の戻り光及び反射素子15による反射光の戻り光を検出し、光センサ12による反射光の戻り光量を反射素子15による反射光の戻り光量で除算した値に基づいて測定対象の物理量を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光センサを用いて変位又は温度等の物理量を測定する光センサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
光センサを用いて測定対象の変位又は温度等の物理量を測定するようにした光センサシステムがある。このような光センサシステムにおいては、光源・光検出ユニットから入射光を光ファイバ等の光伝送系を介して光センサに送信し、光センサで反射して光伝送系を介して得られた光源・光検出ユニットへの戻り光を受信し、その戻り光の大きさにより測定対象の物理量を測定するようにしている。
【0003】
図3は従来の光センサシステムの一例を示す構成図である。光センサシステムは、光源・光検出ユニット11と光センサ12との間を光ファイバ13や光コネクタ14等の光伝送系を介して構成されている。通常、光伝送系は光ファイバ13を光コネクタ14で接続して構成されている。光センサ12は測定対象の物理量の変化に伴って反射率Rxが変化し、これに伴って反射光の光量が変化し、反射光の光伝送系を介して得られた戻り光の光量を測定することによって、測定対象の物理量を測定している。
【0004】
例えば、測定対象の物理量と光センサ12で反射された反射光の戻り光の光量との間に比例関係がある場合においては、測定対象の物理量をx、光センサ12で反射された反射光の戻り光の光量をXとすると、異なった2つの状態、状態1及び状態2で測定を行うことにより、下記の(1)式で状態変化後の物理量x2を算出することができる。
【0005】
x1:x2=X1:X2
x2=(X2/X1)・x1 …(1)
いま、入射光の光量をY、測定された反射光の戻り光の光量をX、光センサ12の反射率をRx、光コネクタ14の入射方向の反射率をRc1、光コネクタ14の戻り方向の反射率をRc2とすると、下記の(2)式が成立する。
【0006】
X=Y・(1−Rc1)・Rx・(1−Rc2) …(2)
この(2)式から分かるように、光コネクタ14の入射方向の反射率Rc1、光コネクタ14の戻り方向の反射率Rc2が一定であれば、反射光の戻り光の光量Xは光センサ12の反射率Rxの関数で示されるので、測定対象の物理量xと光センサ12の反射光の戻り光の光量Xとの関係が既知である場合には、光センサ12の反射光の戻り光の光量Xを測定することによって測定対象の物理量xを測定することができる。
【0007】
ここで、光ファイバや光センサを用いて測定対象物の温度やひずみ等を測定する系において、光源・光検出装置(例:OTDR(Optical Time Domain Reflectometer))より発生した光を光センサに供給し、その光量変化から測定対象物の状態変化を算出するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−24527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、光源・光検出ユニットは、その使用環境(周辺温度等)に変化があると、一定の光量を安定して供給することは難しく、発生光量にその都度変動がある。従って、入射光量Yを一定に保つことができないので、(2)式から分かるように、光センサ12の反射光の戻り光の光量Xが入射光量Yの変動により変動し、測定対象の物理量xの測定の精度が落ちることになる。
【0009】
また、光源・光検出ユニット11と光センサ12との間を光コネクタ14で接続するような光伝送系においては、光コネクタ14の脱着の都度、光コネクタ14の反射率Rc1、Rc2が変化し、光センサ12に入力される光量も変化してしまうことになる。このため、光量の変化を測定する際には、これらの要因により光センサ12に入力される光量に再現性がなく、光センサ12の反応による光量変化量を正確に測定することが困難となる。
【0010】
本発明の目的は、光源・光検出ユニットの発生光量や光伝送系の光コネクタの反射率の影響を受けずに光センサの反射率にのみ依存した値で測定対象の物理量を測定できる光センサシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の光センサシステムは、測定対象の物理量の変化に応じて反射率が変化する光センサと、前記光センサに対して入射光を送信し前記光センサでの反射光を光コネクタを有した光伝送系を介して戻り光を受信する光源・光検出ユニットと、前記光センサと前記光コネクタとの間に接続され入射光の一部を透過し残りの入射光を反射する反射素子とを備え、前記光源・光検出ユニットは、前記光センサによる反射光の戻り光及び前記反射素子による反射光の戻り光を検出し、前記光センサによる反射光の戻り光量を反射素子による反射光の戻り光量で除算した値に基づいて測定対象の物理量を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光源・光検出ユニットは、光センサによる反射光の戻り光量を反射素子による反射光の戻り光量で除算した値に基づいて測定対象の物理量を測定するので、光源・光検出ユニットでの発生光量及び光コネクタの反射率の影響を受けずに、光センサの反射率にのみ依存した値で評価することが可能となる。従って、測定対象の物理量を精度よく検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明の実施の形態に係わる光センサシステムの構成図である。本発明の実施の形態は、図3に示した従来例に対し、光センサ12と光コネクタ14との間に反射素子15を追加して接続したものである。図3と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0014】
光源・光検出ユニット11から光量Yの入射光を光伝送系を介して光センサ12に送信する。光伝送系は、光ファイバ13、光コネクタ14、反射素子15で形成されている。光センサ12は測定対象の物理量の変化に応じて反射率Rxが変化する光センサであり、例えば、光ファイバの伝送損失の変化により測定対象物の歪みを検出したり、温度を検出したりする。また、反射素子15は入射光の一部を透過し、残りの入射光を反射する光学素子であり、入射方向反射率Rz1及び戻り方向反射率Rz2が予め調整されている。そして、光源・光検出ユニット11は、光センサ12による反射光の戻り光及び反射素子15による反射光の戻り光を検出し、光センサ12による反射光の戻り光量Xを反射素子15による反射光の戻り光量Zで除算した値(X/Z)に基づいて測定対象の物理量を測定する。
【0015】
いま、光源・光検出ユニット11の発生光量をY、光コネクタ14の入射方向反射率をRc1、戻り方向反射率をRc2、反射素子15の入射方向反射率をRz1、戻り方向反射率をRz2、光センサ12の反射率をRx、光センサ12による反射光の戻り光量X、反射素子15による反射光の戻り光量Zとすると、光センサ12による反射光の戻り光量Xは(3)式で示され、反射素子15による反射光の戻り光量Zは(4)式で示される。
【0016】
X=Y・(1−Rc1)・(1−Rz1)・Rx・(1−Rz2)・(1−Rc2) …(3)
Z=Y・(1−Rc1)・Rz1・(1−Rc2) …(4)
光源・光検出ユニット11は、光センサ12による反射光の戻り光量X、及び反射素子15による反射光の戻り光量Zを検出し、(5)式に示すように、光センサ12による反射光の戻り光量Xを反射素子15による反射光の戻り光量Zで除算した値(X/Z)を求める。
【0017】
X/Z={(1−Rz1)・(1−Rz2)/Rz1}・Rx …(5)
(5)式に示すように、X/Zは、発生光量Y及び光コネクタ14の反射率Rc1、Rc2の影響を受けない値となり、反射素子15の入射方向反射率Rz1及び戻り方向反射率Rz2が一定であることから、光センサ12の反射率Rxにのみ依存した値となる。
【0018】
従って、光センサ12の反射率にのみ依存した値で評価することが可能となり、光コネクタ14の脱着により光コネクタ14の反射率Rc1、Rc2が変化しても、また、光源・光検出ユニット11からの発生光量Yが変化しても、測定対象の物理量を精度よく検出できる。
【0019】
図2は、光源・光検出ユニット11の光伝送系への入射光に対する光源・光検出ユニット11への戻り光の波形図である。光源・光検出ユニット11から入射光を光伝送系に入射すると、まず、時点t1において光コネクタ14からの反射光A1が光源・光検出ユニット11に検出される。そして、その反射光A1が光源・光検出ユニット11で反射して、再度、光伝送系に入射され、光伝送系を通って、再度、光コネクタ14で反射する。その反射光A2が時点t3において光源・光検出ユニット11に検出される。以下同様に、時点t5において反射光A2の反射光A3、時点t7において反射光A3の反射光A4、時点t8において反射光A4の反射光A5が光源・光検出ユニット11に検出される。
【0020】
反射素子15での反射光についても同様に、時点t2において反射素子15での反射光の戻り光B1が光源・光検出ユニット11に検出され、その戻り光B1が光源・光検出ユニット11で反射して、再度、光伝送系に入射され光伝送系を通って、再度、反射素子15で反射する。その戻り光B2が時点t6において光源・光検出ユニット11に検出され、時点t10において戻り光B2の反射光の戻り光B3が光源・光検出ユニット11に検出される。
【0021】
光センサ12での反射光についても同様に、時点t4において光センサ12での反射光の戻り光C1が光源・光検出ユニット11に検出され、その戻り光C1が光源・光検出ユニット11で反射して、再度、光伝送系に入射され光伝送系を通って、再度、光センサ12で反射する。その戻り光C2が時点t9において光源・光検出ユニット11に検出される。
【0022】
本発明の実施の形態では、光センサ12による反射光の戻り光量Xを反射素子15による反射光の戻り光量Zで除算した値(X/Z)に基づいて、測定対象の物理量を測定することになるので、反射素子15での反射光の戻り光B1、光センサ12での反射光の戻り光C1を精度よく検出する必要がある。
【0023】
そこで、反射素子15での反射光の戻り光B1、光センサ12での反射光の戻り光C1が、光コネクタ14の光源・光検出ユニット11への反射光A1、A2…と重ならないように、光ファイバ13の長さを調整して反射素子15や光センサ12の位置を定めることになる。
【0024】
このように、本発明の実施の形態では、一定の反射率Rz1、Rz2を持った反射素子15を光センサ12と光コネクタ14との間に組み込み、反射素子15による反射光の戻り光量Zにて光センサ12の反応を受けた戻り光量Xを標準化する。すなわち、光センサ12を介した戻り光量Xを反射素子15による反射光の戻り光量Zで除した値(X/Z)を持って測定対象物の状態量と対応づける。
【0025】
これにより、光源・光検出ユニット11の発生光量Y及び光コネクタ14の反射率Rc1、Rc2の影響を受けず、反射素子15の反射率Rz1、Rz2が既知であることから、光センサ12の反射率Rxにのみ依存した値で評価することが可能となる。すなわち、反射素子15の反射率Rz1、Rz2が既知であり、光センサ12の反射率Rxと測定対象の物理量xの関係が既知であれば、X/Zを用いて測定対象の物理量xの評価が可能となる。また、反射素子15の反射率Rz1、Rz2が既知でなくても、反射素子15の反射率Rz1、Rz2が一定値であり、X/Zと測定対象の物理量xとの関係が既知であれば同様の評価ができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係わる光センサシステムの構成図。
【図2】本発明の実施の形態における光源・光検出ユニットの光伝送系への入射光に対する光源・光検出ユニット11戻り光の波形図。
【図3】従来の光センサシステムの一例を示す構成図。
【符号の説明】
【0027】
11…光源・光検出ユニット、12…光センサ、13…光ファイバ、14…光コネクタ、15…反射素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の物理量の変化に応じて反射率が変化する光センサと、
前記光センサに対して入射光を送信し前記光センサでの反射光を光コネクタを有した光伝送系を介して戻り光を受信する光源・光検出ユニットと、
前記光センサと前記光コネクタとの間に接続され入射光の一部を透過し残りの入射光を反射する反射素子とを備え、
前記光源・光検出ユニットは、前記光センサによる反射光の戻り光及び前記反射素子による反射光の戻り光を検出し、前記光センサによる反射光の戻り光量を反射素子による反射光の戻り光量で除算した値に基づいて測定対象の物理量を測定することを特徴とする光センサシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−180570(P2009−180570A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18518(P2008−18518)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】