説明

光ファイバケーブル

【課題】外層シースの引抜き力を長手方向に小さいバラツキで精度よく調整して除去容易性を確保すると共に、内層シースの突き出しを抑制することができる光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】光ファイバ心線を少なくとも内層シース3と外層シース4の2層からなる外被で被覆した光ファイバケーブルであって、外層シース4と接する内層シース3の外面に長手方向に連続する1本以上の突条3aを有するようにしたものである。また、内層シース3と外層シース4との間に巻テープ5を配することができる。外層シース4は、内面に蛇腹状に加工された金属保護層が密着して配されたもので形成することができ、この場合、内層シース3の突条3aに前記の蛇腹状の金属保護層が嵌合する断続する凹部を形成するようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ心線を内層シースと外層シースの少なくとも2層のシースからなる外被で被覆した光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバケーブルは、1本以上の光ファイバ心線を外被により保護する構成とされるが、外被は種々の目的で内層シースと外層シースの2層のシースとする場合がある。例えば、空気圧送用の光ファイバケーブルとして、内層シースを発泡層とし、外層シースを潤滑剤添加の充実層とし、軽量化と管路内での牽引時の摩擦軽減化を図ったものがある(例えば、特許文献1参照)。また、防鼠用の光ファイバケーブルとして、内層シースをカブサイシンのような防鼠剤を含有した防鼠層とし、外層シースを防鼠剤を含有しない外傷保護層とし、充分な防鼠効果を維持すると共に、ケーブル敷設時に防鼠剤の刺激により作業性が低下するのを防止したものもある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−241689号公報
【特許文献2】特開平10−223085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
2層シースからなる光ファイバケーブルで、ケーブル端末を形成するに際して、外層シースのみを剥ぎ取る場合がある。また、内部の光ファイバ心線を剥き出しにする場合も、外層シースを除去してから内層シースを切裂くほうが、光ファイバ心線を傷つけないようにすることができ、作業的にも容易である。外層シースの剥ぎ取りには、外層シースを輪切りにして筒状の形で引抜くことにより、比較的短時間で実施することができる。しかし、内層シースと外層シースの密着力が強いと、人の手では引抜くことが難しくなり、外層シースを刃物で軸方向に切裂く必要がある。この切裂きによる外層シースの剥ぎ取り作業は、時間を要するうえに内層シースを傷つけやすいという問題がある。
【0004】
従来の2層シースを有する光ファイバケーブルは、外層シースのみを除去して使用することを想定していないため、一般的には内層シースと外層シースとの密着性がよく、外層シースの引抜き力は大きい。しかし、内層シースと外層シースとの密着性を弱くして外層シースの除去性をよくしようとすると、外層シースの押出し成型時の残留歪みの解放による経時的な収縮や低温時の収縮により、内層シースが突き出すというような問題が生じる。内層シースがクロージャ等の端末装置内で突き出すと、ケーブルの曲がりによるロス増やファイバ断線の原因となる場合がある。
【0005】
光ファイバケーブルの外層シースは、通常、製造性の観点から内層シースの外周に押出し成型により形成される。この押出し成型で、内層シースと外層シースは、ほぼ円形断面であるため、両者の接触は円周全体でタイトに接触するか、或いは、ルースに接する状態となる。内層シースと外層シースとの間の摩擦力を所定の値に設定するには、外層シースの締付け力を調整することになる。具体的には、外層シースの押出し成型の際に、樹脂材料の引き落とし率や樹脂圧力を調整する方法がとられる。
【0006】
しかし、外層シースの内面と内層シースの外面との接触は、円周全体に亘っているため、例えば、外層シースの締め付け力を変えるにしても、摩擦力の変化の度合が大きく、外層シースの引抜き力を長手方向でバラツキなく設定するのが難しかった。特に両者が接触するかしないかの境界では、極めて急激な摩擦力の変化が起こり、微妙な調整が要求されるため製造性が低下する。このため、上述した外層シースの除去性向上と内層シースの突き出し抑制を両立させるのが難しかった。
【0007】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたもので、外層シースの引抜き力を長手方向に小さいバラツキで精度よく調整して除去容易性を確保すると共に、内層シースの突き出しを抑制することができる光ファイバケーブルの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による光ファイバケーブルは、光ファイバ心線を少なくとも内層シースと外層シースの2層からなる外被で被覆した光ファイバケーブルであって、外層シースと接する内層シースの外面に長手方向に連続する1本以上の突条を有するようにしたものである。また、内層シースと外層シースとの間に巻テープを配することができる。外層シースは、内面に蛇腹状に加工された金属保護層が密着して配されたもので形成することができ、この場合、内層シースの突条に前記の蛇腹状の金属保護層が嵌合する断続する凹部を形成するようにしてもよい。
【0009】
また、本発明による光ファイバケーブルで、内層シースの突条は、少なくとも相対向するように2本設け、内層シースの内面側で、突条のある位置に引裂き紐を埋設しておく。さらに、内層シースの突条は、高さが0.3mm〜1.3mmで、幅が0.5mm以上で内層シース直径の3/5以下とする。なお、外層シースを輪切りにして引抜くときの引抜き力が50N/50mm〜200N/50mmであることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、内層シースの表面の突条により、内層シースと外層シースの接触する面積を小さくすることができる。このため、外層シースの締め付け力を変えた場合でも、摩擦力の変化を緩やかにすることができ、これにより引抜き力の設定が容易となる。この結果、ケーブル長手方向での外層シースの引抜き力のバラツキを小さくでき、安定した所望の引抜き力を得ることが可能となる。また、上記の突条の数によっても摩擦力を調整して引抜き力を変えることができ、さらに、内層シースと外層シースとの間に巻テープを介在させることでも引抜き力を調整することができる。この結果、外層シースの除去容易性を確保すると共に、内層シースの突き出しを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の実施形態を説明する図で、図1(A)は丸型の光ファイバケーブル、図1(B)は自己支持型の光ファイバケーブルを示す図である。図中、1a,1bは光ファイバケーブル、2はケーブルコア、3は内層シース、3aは突条、4は外層シース、5は巻テープ、6は支持線部、7は首部、8は引裂き紐、9は抗張力体を示す。
【0012】
図1(A)に示す丸型の光ファイバケーブル1aは、外形が丸型でケーブルコア2の外周を内層シース3と外層シース4の2層のシースで被覆し、内層シース3と外層シース4との間に巻テープ5を配して構成される。そして、外層シース4と接する内層シース3の外面には、長手方向に連続する1本以上の突条3aを一体に設けてある。ケーブルコア2は、例えば、複数本の光ファイバ心線或いは光ファイバテープ心線を、緩衝材と共に内層シース3で被覆する形態であってもよく、溝付きスペーサの溝内に光ファイバ心線或いは光ファイバテープ心線を収納した形態であってもよい。
【0013】
内層シース3及び外層シース4の樹脂材料としては、ポリエチレン、難燃ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂が用いられるが、本発明においては他の種々のシース材料を使用することができる。巻テープ5は、内層シース3と外層シース4との間に配され、内層シース3と外層シース4との間の摩擦力を調整することができる。なお、「巻テープ」とは、横巻または縦添えで最外層の内層シース上に巻き付けられた状態をいう。
【0014】
内層シース3には、鋼線等の抗張力体9を対向する位置に埋設し、ケーブルの張力を補強することができる。また、内層シース3の内径寄りに引裂き紐8を埋設して、人手により内層シース3を引裂き可能とすることができる。これら、抗張力体9及び引裂き紐8は、内層シース3の押出し成型時に一体に埋設して設けられる。
【0015】
また、図1(B)に示す支持線部6を有する自己支持型の光ファイバケーブル1bも、ケーブル本体部は図1(A)と同様に構成される。支持線部6は、高抗張力を有する撚鋼線6aを、首部7を介して外層シース4と一体に被覆してなり、端部分で首部7を引裂いてケーブル本体部と分離される。支持線部6から分離されたケーブル本体部は、図1(A)と同じ構成となり、クロージャ等に導入されて光ファイバ心線の分岐接続や引き落としが行なわれる。なお、支持線部6は、構造物等の把持具を用いて引止め固定される。
【0016】
図2は、他の実施形態を説明する図で、鳥獣害対策や耐火用として、外層シース4の内側に金属保護層10を有する光ファイバケーブルの例を示すものである。図2(A)は丸型の光ファイバケーブルを示し、図2(B)は自己支持型の光ファイバケーブルを示し、図2(C)は光ファイバケーブルを部分的に破断した状態を示す図である。図中、10は金属保護層を示し、その他の符号は、図1で用いたのと同じ符号を用いることにより説明を省略する。
【0017】
図2(A)の丸型の光ファイバケーブル1aは、ケーブルコア2の外周を内層シース3と、内面に金属保護層10を有する外層シース4の2層のシースで被覆し、内層シース3と金属保護層10との間に巻テープ5を配して構成される。また、図1の例と同様に、外層シース4と接する内層シース3の外面には、長手方向に連続する1本以上の突条3aが一体に設けられる。なお、外層シース4と金属保護層10とは、機械的強度向上の点で互いに密着して接着一体化されているのが望ましい。ケーブルコア2は、図1の例と同様に、複数本の光ファイバ心線或いはテープ心線の形状で緩衝材と一体にした形態であってもよく、溝付きスペーサの溝内に光ファイバ心線或いはテープ心線の形状で収納した形態であってもよい。
【0018】
内層シース3及び外層シース4の樹脂材料としては、ポリエチレン、難燃ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどを用いることができる。巻テープ5は、内層シース3と外層シース4との間に配され、内層シース3と外層シース4との間の摩擦力を調整することができる。なお、内層シース3には、図1の例と同様に、鋼線等の抗張力体9を対向する位置に埋設し、また、内層シース3の内径寄りに引裂き紐8を埋設した構造とすることができる。。
【0019】
また、図2(B)に示す支持線部6を有する自己支持型の光ファイバケーブル1bも、ケーブル本体部は図2(A)と同様に構成される。支持線部6は、高抗張力を有する撚鋼線6aを首部7を介して外層シース4と一体に被覆してなり、ケーブル端部分で首部7を引裂いてケーブル本体部と分離される。
【0020】
図2(C)は、図2(A)又は図2(B)の光ファイバケーブルの一部を破断して示すもので、金属保護層10を長手方向に波付けして蛇腹状にした例で示してある。この蛇腹状の金属保護層10は、ステンレス(SUS304、SUS430等)又は鉄のテープ材(両面に接着性樹脂を塗布)をパイプ状に成型しながら蛇腹状に加工して巻テープ5の外周を覆うようにして設けられる。このとき、蛇腹状の金属保護層10の内面側の頂部は、最上層の巻テープ5bに接着されて所定の摩擦力が得られるようにする。蛇腹状の金属保護層10の外面には、外層シース4が押出し成型により形成され、接着一体化される。金属保護層10を蛇腹状とすることにより、光ファイバケーブルに可撓性をもたせることができ、敷設作業を容易にする。
【0021】
図3は、外層シース4の内面に、上記の蛇腹状の金属保護層10を用いたときの、他の実施形態を説明する図である。蛇腹状の金属保護層10が用いられるとき、内層シース3の外面に設けた突条3aに、蛇腹の波ピッチに一致させた間欠的な凹凸を設けるようにしてもよい。凹部の深さは、蛇腹の波の高さ(又は深さ)による他、巻テープ5の厚さ、使用枚数によっても異なる。なお、後述する試験品を用いて、突条3aの凹部の深さを0.1mm〜0.3mmとして蛇腹状の金属保護層10と嵌合させたところ、突条3aに凹凸を設けない場合と比べて外層シース4(蛇腹状の金属保護層10を含む)の引抜き力が30%〜60%増大した。すなわち、外層シース4の締付け力が低い場合でも、図3のような嵌合構造を用いることにより、外層シース4の引抜き力が大きくなるように調節することができる。
【0022】
図1〜図3の構成において、巻テープ5には、プラスチック材料からなる不織布やフィルム等を用いることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(ナイロン)、ポリプロピレン(PP)、又はこれらの繊維による不織布などを用いることができる。巻テープ5の厚さについては、特に制限はないが、ケーブルの細径化や経済性の観点から0.5mm以下(1枚当たり)とするのが好ましい。
【0023】
また、内層シース3と一体に設けられる突条3aは、少なくとも互いに対向するように2本設けることが望ましい。対向する位置に突条3aを設けることにより、内層シース3と外層シース4との接触の程度をバランスさせることができ、摩擦力の調整をしやすくすることができる。
【0024】
また、引裂き紐8は、内層シース3と一体に設けられる突条3aの位置の真下乃至はその近傍に埋設するのが好ましい。引裂き紐8は、内層シース3の内側に埋設されるので、その埋設位置が解りにくくなるが、突条3aを目印とし、その部分に切込みを入れることにより、容易に取り出すことができる。また、図2の自己支持型の光ファイバケーブル1bにおいては、互いに対向する位置にある突条3a又は引裂き紐8を結ぶ直線が、支持線部とケーブル本体部中心を結ぶ直線にほぼ直交するように形成されているのが好ましい。これにより、引裂き紐8を支持線部の首部に邪魔されずに取り出すこともできる。
【0025】
図4は、本発明による外層シースの引抜き時の動作状態を説明する図で、図4(A)は外層シースを輪切りにした状態を示す図、図4(B)は外層シースを引抜いた状態を示す図である。図中の符号は図1で用いたのと同じ符号を用いることにより説明を省略する。
【0026】
図4(A)に示すように、外層シース4を光ファイバケーブルから引抜く場合、ケーブル端から所定の長さ位置(例えば、50mm程度)の所に、カッタ等で切込みを入れ輪切り状にする。次いで、図4(B)に示すように、外層シース4を矢印方向に引抜くと、内層シース3の突条3aによって摩擦力が調整されている接触面を、外層シース4の内面又は巻テープ5が滑って引抜かれる。
【0027】
上述した構成で、外層シース4の引抜き力は、50N/50mm〜200N/50mmとなるように、それぞれの摩擦係数等が設定されているのが望ましい。金属保護層10を有する場合は、外層シース4と金属保護層10が一体となった状態での引抜き力である。外層シース4は、押出し成型時の残留歪みの解放による経時的な収縮や低温時の収縮により、ケーブル端部から後退(内層シース3は突き出る)するが、引抜き力が50N/50mm未満では摩擦力が小さく、内層シース3の突き出し抑制が難しくなる。また、引抜き力が200N/50mmを越えると、人手による引抜きが難しくなり作業性が低下する。
【0028】
次に本発明による光ファイバケーブルの評価結果について説明する。評価用に作製した試験品としての光ファイバケーブルの共通の構成は、以下の通りとした。
(1)内外層のシース材料:直鎖状低密度ポリエチレン
(2)外層シース :直径=15mm
(3)金属保護層 :外径=11mm,ステンレステープ(両面に接着樹脂を塗布)をパイプ状に成型して蛇腹状に加工
(4)巻テープ :金属保護層と内層シースとの間に、不織布とPETフィルムを貼り合せた厚さ0.15mmのテープ2枚を巻回,試験品eは無し(不織布は0.1mm厚さのポリエチレンテレフタレート繊維による不織布、PETフィルムは0.05mm厚さのポリエチレンテレフタレートフィルム)
(5)内層シース :外径=9mm 内径=5mm
(6)抗張力体 :内層シース内の対向位置に1mmφの鋼線を埋設
(7)支持線部 :1.4mmφの鋼線7本を撚って埋設
(8)ケーブルコア :SM光ファイバ心線の4心テープ心線(幅1.1mm、厚さ0.3mm)を6枚重ねて緩衝材と共に実装
【0029】
上述の構成を共通として、図5に示すように、内層シース3の突条3aの大きさとケーブル長手方向の引抜き力のバラツキの関係を調べた。図5(A)に示す突条3aの突条高さをH、突条幅をDとして、外層シースの引抜き力が100N/50mmとなるように蛇腹状金属保護層の締付け力を調整設定した。突条3aの突条高さH、突条幅Dを、図5(B)に示すような値の試験品(イ)〜(ホ)の光ファイバケーブルを作製し、この評価をケーブル長手方向の複数点における外層シースの引抜き力を測定し、その最大値と最小値の差でバラツキを評価した。
【0030】
この結果、試験品(イ)はH=0,D=0、すなわち突条無しの場合の引抜き力のバラツキは、30N/50mmで大きかった。試験品(ロ)〜(ニ)は、引抜き力のバラツキは、3N/50mm〜8N/50mmの一桁の範囲で小さかった。また、試験品(ホ)は、引抜き力のバラツキは、22N/50mmで大きかった。この結果から、突条がない場合はバラツキが大きく、突条を設けることによりバラツキを小さくすることができる。
【0031】
しかし、試験品(ホ)のように、突条の幅Dが内層シースの外径の3/5を越えると突条表面と金属保護層との接触範囲が広がるため、突条としての効果が小さくなるためと考えられる。また、突条の高さHについては、金属保護層が円形状に締付けるため、突条の高さHがある程度以上に高くなると、扁平率が大きくなり過ぎて十分な締付けができなくなる。このため、金属保護層内面と内層シース表面との接触が不安定となり、外層シースの引抜き力にバラツキが生じやすくなるものと考えられる。
【0032】
図6は内層シースの突条の数と引抜き力の変化の状態、並びに外層シースの引抜き力と除去性及び内層シース突き出し(又は、コア突き出し)の評価結果を示す図である。図6(A)は、突条の数及び巻テープを試験品(a)〜(e)のように選択し、それぞれについて外層シースの締付け力の設定値を変えたときの、外層シースの引抜き力の変化を示したものである。また、図6(B)は、図6(A)をグラフ化した図である。ここで、締付け力の設定とは、設備上の設定(樹脂温度、樹脂圧力)等を変えるもので、同一試験品内での相対的な大小関係を表しているに過ぎない。なお、本評価においては、ステンレスのテープを円筒状に成型(金属保護層とする)する際の径で調節した。
【0033】
図6(A)及び図6(B)の結果から、試験品aは内層シースに突条を有しない例(比較例)で、締付け力の設定に対して引抜き力の変化が大きく、引抜き力を安定した設定値に調整するのが難しい。これに対し、試験品b〜dは、締付け力の設定による引抜き力の変化が比較的緩やかであるため、引抜き力を適切な範囲に調整しやすい。また、試験品b〜dに示すように、突条の数が多いほど引抜き力は大きくなる傾向を示している。試験品eは、巻テープを有しない例で、このため金属保護層(両面に接着樹脂が塗布)が内層シースに直接接着して全体的に引抜き力が大きくなっているが、試験品aよりは引抜き力の変化は緩やかで、試験品b〜dと同等の効果を得ることができる。しかし、試験品b〜dは、試験品eよりも傾斜が緩やかで、より有効な例であるといえる。
【0034】
図6(C)は上記の試験品bについて、人手による外層シースの除去性と内層シースの突き出しの評価結果を示した図である。除去性については、人手による外層シースの引抜きが容易であるかどうかで判定した。また、内層シース突き出しは、ケーブル長1000mで、−30℃〜+70℃のヒートサイクルを3サイクルかけ、ケーブル両端での内層シースの突き出し量を合計した。
【0035】
この結果からは、外層シースの締付け力の設定レベルが比較的弱い(1),(2)の引抜き力が5N/50mm,15N/50mmの場合は、外層シースの除去性は良好であるが、内層シース突き出しが1.0mm以上となるため、判定結果としては不合格であった。また、外層シースの締付け力の設定レベルが比較的強い(6)の引抜き力が300N/50mmでは、内層シース突き出しは、0.1mm以下で良好であるが引抜きが困難で、判定結果としては不合格であった。これに対し、外層シースの締付け力の設定レベルが(3)〜(5)の引抜き力が50N/50mm〜200N/50mmの場合は、人手による引抜きを容易に行なうことができ、内層シース突き出しも0.5mm以下で問題ないことが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態を説明する図である。
【図2】本発明の他の実施形態を説明する図である。
【図3】本発明による蛇腹状の金属保護層の嵌合例を説明する図である。
【図4】本発明による外層シースの引抜き時の動作を説明する図である。
【図5】本発明による内層シースの突条の形状による引抜き力のバラツキの関係を説明する図である。
【図6】本発明による評価結果を説明する図である。
【符号の説明】
【0037】
1a,1b…光ファイバケーブル、2…ケーブルコア、3…内層シース、4…外層シース、5…巻テープ、6…支持線部、6a…撚鋼線、7…首部、8…引裂き紐、9…抗張力体、10…金属保護層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線を少なくとも内層シースと外層シースの2層からなる外被で被覆した光ファイバケーブルであって、前記外層シースと接する前記内層シースの外面に長手方向に連続する1本以上の突条を有していることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記内層シースと前記外層シースとの間に巻テープが配されていることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記外層シースの内面に、蛇腹状に加工された金属保護層が密着して配されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記内層シースの突条に断続する凹部が形成され、前記蛇腹状の金属保護層が嵌合していることを特徴とする請求項3に記載の光ファイバケーブル。
【請求項5】
前記内層シースの突条は、少なくとも相対向するように2本設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光ファイバケーブル。
【請求項6】
前記内層シースの内面側で、前記突条のある位置に引裂き紐が埋設されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光ファイバケーブル。
【請求項7】
前記内層シースの突条は、高さが0.3mm〜1.3mmで、幅が0.5mm以上で前記内層シース直径の3/5以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光ファイバケーブル。
【請求項8】
前記外層シースを輪切り状にして引抜くときの引抜き力が50N/50mm〜200N/50mmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の光ファイバケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−11020(P2007−11020A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−192110(P2005−192110)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(399040405)東日本電信電話株式会社 (286)
【Fターム(参考)】