説明

光ファイバー接続装置及び光ファイバー接続方法

【課題】マイクロベンディングロスなどの光伝送損失を抑えることができ、しかも比較的に簡便な作業で低損失な光接続を実現し得る光ファイバー接続装置を提供する。
【解決手段】光ファイバー接続装置10は、長手方向に沿って光ファイバー案内路12が形成される矩形状のベース部11と、前記ベース部11に形成される前記光ファイバー案内路12の一部に設けられ、露出した芯材同士を付き合わせて光接続をするためのフェルール13と、前記光ファイバー案内路12に案内された光ファイバー16,17を押し込むように保持させる一対のファイバー固定部14,15とを有してなり、前記フェルール13は前記一対のファイバー固定部14,15の一方の近傍に配設され、前記一対のファイバー固定部14,15の他方と前記フェルール13の間の前記光ファイバー案内路12は保持される光ファイバー16をたわみ状態で案内する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信に利用される光ファイバー同士を接続するための光ファイバー接続装置とその接続装置による光ファイバー接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバーを繋ぐ方法としては、一般的に光ファイバーの先端を溶かして溶着する方法と、メカニカルスプライスを用いる方法とが用いられる。メカニカルスプライスを用いる方法とは、2本の光ファイバーの先端部を専用の装置にて突き合わせて接続する方法である。
【0003】
メカニカルスプライスを用いる場合の光ファイバーの接続においては、光軸のずれや接続面に空隙が生じることによる接続損失を防ぐ必要があり、これらを防ぐために様々な装置が用いられている。しかし、一般的なメカニカルスプライスを用いる技術では、光ファイバーを接続するための装置の他に、この装置を設置するために専用の工具が必要となる。そのため、高所や作業ヤードが十分確保できない場所での作業が困難であり、作業効率も低いという現状がある。
【0004】
また、従来技術における光ファイバー接続装置では、光ファイバーを保持する力が弱いため、僅かな力であっても引っ張ると簡単に抜けてしまうものが大半であった。
【0005】
そこで、特許文献1では、2本の光ファイバーの先端部にアダプタを装着し、台部とアダプタとをスライド用レールにて係合することにより光軸の位置合わせを行い、光ファイバーの接続を行う技術が開示されている。この技術によると、専用の工具を用いることなく、台部に設けられたレバーにより台部とアダプタをロックすることで光ファイバーを接続することができる。
【0006】
また、特許文献2では、2本の光ファイバーの先端部に異なるコネクタを装着し、これらを嵌合することで、光ファイバーの先端を接続する技術が開示されている。この技術によると、一の光ファイバーからの押圧の反動により、もう一方の光ファイバーが前後に微動した場合であっても、コネクタ内にてたわみ状態を保持することで、フェルール内の接続を維持することができる。
【0007】
また、樹脂製ベースの該中央に設置されたフェルール内部にて突き合わせた光ファイバーを、押圧押出固定部にて所定のたわみ状態で樹脂製ベース両端にて固定することにより、専用の工具を必要とせずとも一の装置にて光接続を可能とした光ファイバー接続装置も知られており(例えば、特許文献3参照。)、このような光ファイバー接続装置を用いることで、たわみ状態にて光ファイバーを固定することができ、ベースに用いる樹脂には温度変化の少ないガラス入り樹脂を用いなくとも光接続状態を継続することができる。
【0008】
【特許文献1】特開2005−31708
【特許文献2】特開2005−92125
【特許文献3】特許3784826号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述の特許文献1、2に記載される構造をもつ光ファイバー接続装置であっても、光ファイバーの接続において専用の工具は不要であるものの、接続するそれぞれの光ファイバーに専用の装置を装着しなければならない。また、接続装置には、コスト面からも樹脂が用いられるが、光ファイバーに比較し、温度変化により膨張あるいは収縮が大きいため、光ファイバーに撓みを設けておく必要が生じることになる。光接続の特性を向上させるためには、その撓みを最小限に抑えるために、光ファイバー接続装置の材料は光ファイバーの膨張率あるいは収縮率と同程度のガラス入り樹脂を用いなければならない。そのため、光ファイバー接続装置の材料選択の幅が狭いという問題も生ずる。
【0010】
また、特許文献3の技術においては、光接続させるためのフェルールにそれぞれ光ファイバーを挿入する際に、比較的に曲率の小さな光ファイバーの屈曲部が出来易く、所謂マイクロベンディングロスが発生し易くなる。このため撓みを予め小さいものに設定する必要から、膨張率の小さい高価な樹脂を選択する必要が生じており、また、光ファイバーの小さい曲率の曲げによる切断が発生しないように、作業には細心の注意が必要とされている。
【0011】
さらに、光接続させるためのフェルールに封入されるマッチングオイルの粘度を上げる方が光接続の特性が向上することになるが、粘度を高くしていった場合には、ファイバー挿入時においてマッチングオイルの逃げ場所が問題となり、このため光ファイバーの挿入を難しくしたり、マッチングオイル逃がし用のスリットを設けた場合にファイバーの突き合わせ位置をスリットの範囲にさせるために細心の作業が必要となるなどの問題が生ずる。
【0012】
そこで、本発明は上述の技術的な課題に鑑み、マイクロベンディングロスなどの光伝送損失を抑えることができ、しかも比較的に簡便な作業で低損失な光接続を実現し得る光ファイバー接続装置及び光ファイバー接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の技術的な課題を解決するため、本発明の光ファイバー接続装置は、芯材を被覆材で覆ってなる光ファイバーを、その先端部にて露出させた芯材同士を付き合わせることで光接続するための光ファイバー接続装置であって、長手方向に沿って光ファイバー案内路が形成される矩形状のベース部と、前記ベース部に形成される前記光ファイバー案内路の一部に設けられ、露出した芯材同士を付き合わせて光接続をするためのフェルールと、前記ベース部の長手方向の両端部に配され、前記フェルールに向かって前記光ファイバー案内路に案内された光ファイバーを押し込むように保持させる一対のファイバー固定部とを有してなり、前記フェルールは前記一対のファイバー固定部の一方の近傍に配設され、前記一対のファイバー固定部の他方と前記フェルールの間の前記光ファイバー案内路は保持される光ファイバーをたわみ状態で案内することを特徴とする。
【0014】
このような構造の本発明の光ファイバー接続装置は、前記フェルールは前記一対のファイバー固定部の一方の近傍に配設され、前記一対のファイバー固定部の他方と前記フェルールの間の前記光ファイバー案内路は保持される光ファイバーをたわみ状態で案内することから、前記一対のファイバー固定部の一方に固定される光ファイバーは撓みのほとんどない状態で固定されるが、前記一対のファイバー固定部の他方に固定される光ファイバーは固定部とフェルールの間の距離を長くすることができるため、大きな撓みを以って固定させることができる。従って、曲率が小さくなる形状で光ファイバーを保持する必要はなくなり、マイクロベンディングロスなどの光伝送損失を抑えることができる。
【0015】
本発明の光ファイバー接続装置の好適な実施形態によれば、前記一対のファイバー固定部の他方と前記フェルールの間の前記光ファイバー案内路は曲線状に延長されていることを特徴とする。該光ファイバー案内路内で光ファイバーは撓みを以って配設されることから、曲線状に延長する光ファイバー案内路を設けることが光ファイバー自体へのストレスを防止して、低損失な接続を実現させる。また、本発明の光ファイバー接続装置の一例によれば、前記ベース部に形成される前記光ファイバー案内路を覆うように蓋部が前記ベース部に取り付けられ、前記ファイバー固定部は光ファイバーを前記蓋部に押し付けることで固定する挟持部を有する構造とすることができる。
【0016】
フェルールは、露出させた芯材同士を付き合わせることで光接続する部材であり、両端から芯材を露出させた光ファイバーを押し込むようにして挿入することができる。このようなフェルールにおいては、光ファイバーの導入孔内部にマッチングオイルが充填される構成とすることができ、また、フェルールの光ファイバー接合部分にはスリットが形成されていても良く、スリットには、当該接続装置の組み立て時に接着剤を充填することができる。
【0017】
上述の技術的な課題を解決するための本発明の光ファイバー接続方法は、芯材を被覆材で覆ってなる光ファイバーを、その先端部にて露出させた芯材同士を付き合わせることで光接続するための光ファイバー接続方法であって、ベース部に形成された光ファイバー案内路の一部に組み込まれるフェルールの光ファイバーの導入孔内部にマッチングオイルを充填する工程と、前記マッチングオイルが充填された光ファイバーの導入孔内部に、光接続する一対の光ファイバーのうちの一方を端部が露出した状態で貫通するように挿入する工程と、挿入された前記光ファイバーをその端部が光接合位置に来るように戻す工程と、光接続する一対の光ファイバーのうちの他方の端部を光接合位置にある光ファイバーの一方の端部に突き当てる工程とを有することを特徴とする。
【0018】
本発明の光ファイバー接続方法によれば、マッチングオイルが存在していても、一旦貫通するように光ファイバーを挿入孔に挿入するため、挿入孔の内部に所定のマッチングオイルの空隙領域ができ、その後で他方の光ファイバーを確実に挿入孔内部に押し込むことができることになる。従って、例えばスリットの位置に合わせて両方から光ファイバーをその先端部にて露出させた芯材同士を付き合わせるように挿入する必要はなくなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の光ファイバー接続装置によれば、一対のファイバー固定部の他方に固定される光ファイバーは固定部とフェルールの間の距離を長くすることができるため、比較的に大きな撓みを以って固定させることができる。従って、曲率が小さくなる形状で光ファイバーを保持する必要はなくなり、マイクロベンディングロスなどの光伝送損失を抑えることができる。また、曲率が小さくなる形状で光ファイバーを保持する必要がなくなることで、作業者はその接続作業を簡便に行うことができる。
【0020】
本発明の光ファイバー接続方法によれば、マッチングオイルが存在していても、その後で他方の光ファイバーを確実に挿入孔内部に押し込むことができることになる。従って、例えばスリットの位置に合わせて両方から光ファイバーをその先端部にて露出させた芯材同士を付き合わせるように挿入する必要はなくなり、作業者はその光接続の作業を簡便に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の光ファイバー接続装置及び光ファイバー接続方法の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は本実施形態の光ファイバー接続装置を示す斜視図であり、光ファイバー接続装置10は、長手方向に沿って光ファイバー案内路12が形成される矩形状のベース部11と、該ベース部11に形成される前記光ファイバー案内路12の一部に設けられ、露出した芯材同士を付き合わせて光接続をするためのフェルール13と、ベース部11の長手方向の両端部に配され、フェルール13に向かって光ファイバー案内路12に案内された光ファイバー16、17を押し込むように保持させる一対のファイバー固定部14、15とを有し、ベース部11の上面側を覆うことで該ベース部に形成されている光ファイバー案内路12を覆うように蓋部18が設けられている。
【0023】
ベース部11は、所定の耐熱性や剛性を有した例えばポリカーボネート、ABSなどの合成樹脂製であり、ほぼ矩形状の筐体の長手方向の両端部にファイバー固定部14、15を配設した構造を有している。蓋部18が重ねられた状態でベース部11の両端部には、光ファイバー16、17を導入するための開口部19、20が設けられており、ベース部11と蓋部18に挟まれた位置に存在する矩形状のフェルール13に開口部19、20から挿入された光ファイバー16、17が導入される。ここでフェルール13の位置は、ベース部11の筐体の長手方向の中央付近ではなく、特に一方のファイバー固定部15に近く、他方のファイバー固定部14からは遠い位置にある。すなわち、フェルール13は一方のファイバー固定部15の近傍に配設され、他方のファイバー固定部14とフェルール13の間の光ファイバー案内路12は図2に示すように側断面において緩やかな曲線を描く形状に延長され、当該光ファイバー案内路12に保持される光ファイバー16をたわみ状態で案内する。
【0024】
光ファイバー案内路12は、ベース部11に形成された溝からなり、上面から見た場合には、ベース部11のほぼ中央を光ファイバー16、17を導入するための開口部19、20を直線状に結ぶように延長されている。この光ファイバー案内路12は、側部から見た場合には図2に示すように、ベース部11の一端部に形成された開口部19からほぼベース部の上面に水平に延長されてファイバー固定部14の上を通り、ファイバー固定部14を過ぎたところから徐々に底面側に近づくように曲げられて最下点12bに至り、そこから再び徐々に上昇して上面保持点12rまで緩やかな曲線を描くように延長されている。この上面保持点12rから、光ファイバー案内路12はほぼ水平に延長されてフェルール13に挿入される。フェルール13からファイバー固定部15側の光ファイバー案内路12はほぼ水平に延長されており、フェルール13から直線状に光ファイバー17は当該装置の外部に導かれており、ファイバー固定部15によって固定されている。
【0025】
光ファイバー案内路12は、ベース部11を覆うように設けられている蓋部18によってフェルール13と共に覆われている。蓋部18は所定の耐熱性や剛性を有した例えばポリカーボネート、ABSなどの合成樹脂製の板材であり、透明性を有していることからフェルール13に光ファイバーを挿入する作業を目視しながら行うことができる。フェルール13の上半分は蓋部18の裏面に設けられた矩形状の凹部22に嵌合され、フェルール13の底部側半分はベース部11に設けられた矩形状の凹部21に嵌合される。
【0026】
フェルール13はその内部で一対の光ファイバー16、17の光接続を行うための部材であり、光ファイバーの導入孔23の内部にはマッチングオイルと呼ばれる光ファイバーの屈折率との差を小さくして接続損失を低減するための液体が注入されており、この光ファイバーの導入孔23の内部で光ファイバー16、17の接続がなされる。フェルール13にはマッチングオイルの代わりにマッチンググリスなどを用いても良い。フェルール13の導入孔23はほぼ直線状に穿孔された孔であり、その径は光ファイバー16、17の芯材よりわずかに大きな径を有している。従って、後述するように導入孔23を貫通してから戻すように一方の光ファイバー17をフェルール13に組み込み、次いで他方の光ファイバー16をフェルール13内で突き合わせていくことで、確実な光接続が行われることになる。フェルール13の両端部には、テーパー24が形成され、一対の光ファイバー16、17をフェルール13側に押し込むことで、光ファイバーの先端はテーパー24の面に沿って導入孔23の内部へと導かれる。フェルール13は接続損失を低減するために、酸化ジルコニアなどのセラミック材料や、ニッケル、鉄、銅、コバルト、タングステンや或いはこれらの合金などの金属材料から構成される。
【0027】
ここで、本実施形態の光ファイバー接続装置10に用いられる光ファイバーについて簡単に説明すると、光の透過率が高い中心部分を有した芯材と、その芯材を覆ってなる被覆材とからなり、例えばφ0.25mmやφ0.9mmの径などを有する光ファイバーが用いられる。フェルール13の導入孔23の径は、導入される光ファイバーの径に合わせて適宜選択されるものである。最適なフェルールの内径は径φ0.125mmの石英ファイバーの場合はφ0.1252mm〜φ0.1258mmであり、POF(プラスチックファイバー)の場合はφ0.23mm、φ0.5mmなどの種類があるが、その外径にφ0.002mm〜φ0.008mmを加えた値、より好ましくはφ0.0002mm〜φ0.0008mmを加えた値をフェルールの内径とすることが好ましい。
【0028】
一対の光ファイバー16、17はそれぞれファイバー固定部14、15によって、当該光ファイバー接続装置10に固定されており、具体的にはファイバー固定部14、15によってフェルール13の内部で突き当てられるように支持されている。ファイバー固定部14について、図3、図4に示すように、ファイバー固定部14は、回動支点14cを中心に4分の1円周程度回動する回動片14aを有しており、その回動片14aの先端部にはベース部11に固定されている係合部25と係合するためのフック14mが設けられている。回動片14aの基端部には、光ファイバー16に接して摩擦力によって当該光ファイバー16をフェルール側に押し出すための摩擦部14fが設けられており、回動片14aのフック14mが係合部25と係合する際には、図4に示すように摩擦部14fが光ファイバー16を蓋部18に対して押し込むようにして光ファイバー16を固定する。この際、光ファイバー16は回動片14aの回転動作に伴ってフェルール側に押しだされるため、摩擦部14fと光ファイバー16の噛み合いが生じた地点よりも、ややフェルール側に押し込まれた状態で光ファイバー16は固定されることになり、このようなフェルール方向への力を伴った状態で光ファイバー同士はフェルール内で突き合わされることになる。この接続作業時には、光ファイバー16をフェルール13内に挿入して余計なマッチングオイルを押し出し、定位置まで戻してファイバー固定部14で固定した後、光ファイバー17をフェルール13内で突き合わせ、ファイバー固定部15で固定することにより、自動的に必要な撓みが発生する。この時ファイバー固定部15が撓みを発生する量だけ光ファイバー17を送り込み、光ファイバー16が撓みを以って固定されることになる。係合部25は、回動片14aが回動した結果、弾性変形するフック14mの先端部に係合するための部材であり、ベース部11の一部を突設させて形成される。係合部25にフック14mが係合することで、ファイバー固定部14はロックされた状態となるが、作業者が係合部25とフック14mの係合を解除することで、光ファイバー16に対する固定が解除されることになり、光ファイバー16を当該装置から外したり、再度固定するなどの作業を進めることができる。
【0029】
以上の如き構成を有する本実施形態の光ファイバー接続装置は、そのフェルール13の位置が一方の光ファイバー固定部15寄りであり、他方の光ファイバー固定部14側では光ファイバー案内路12の長さは長く採ることができるため、その光ファイバー案内路12に挿入される光ファイバー16のマイクロベンディングロスを抑えて光接続を実現することができる。一方の光ファイバー固定部15では短い距離であるが、直線的であり、曲げ部分などはないために光透過の損失は極力抑えられることになる。また、たわみが発生するのは他方の光ファイバー固定部14側だけであるため、フェルール13の両側を撓ませる場合に比べて光接続の作業を簡便化し、作業時間の短縮化も実現される。
【0030】
次に、図5乃至図8を参照しながら、本発明にかかる光ファイバー接続装置を用いて、光ファイバーをフェルールへ入れる作業を工程順に説明する。まず、図5に示すように、先端部32t付近で被覆材が外され芯材32が剥き出された光ファイバー31と、一対の光ファイバーを内部で光接続させるフェルール33が用意される。フェルール33は前述の如きベース部と蓋部挟まれて固定されているが、図5乃至図8で図示を省略している。フェルール33の内部には、その長手方向に縦断するように導入孔34が形成されており、フェルール33の両端部には光ファイバーを導入孔34に導くためのテーパー部35も形成されている。このフェルール33の導入孔34には、予め接続時の光損失を抑えるためのマッチングオイル36が封入されている。光ファイバー31の芯材32を剥き出す際には、例えばファイバーストリッパーのような工具を用いることで、先端部32tの周囲の被覆材を除去することができ、剥き出した部分をアルコールを浸み込ませたペーパーや不織布などにより擦って洗浄する。また、光ファイバー31の先端部32tはファイバーカッターを用いてきれいにカットされる。
【0031】
次に、図6に示すように、一方の光ファイバー31をフェルール33の導入孔34の内部に挿入する。この時、従来の接続方法では、最終的にはフェルール33の導入孔34のほぼ中央付近で光接続がなされるため、単にほぼ中央付近まで先端部32tを入れていたが、本実施形態では、一方の光ファイバー31をその先端部32tがフェルール33を貫通するように挿入する。このように最初の光ファイバーの先端部32tをフェルール33を貫通するように操作することで、フェルール33の導入孔34に導入されていたマッチングオイル36がフェルール33の導入孔34の外部に押し出されることになる。
【0032】
フェルール33を貫通するように挿入した後、図7に示すように、光ファイバー31の先端部32tをフェルール33内の所定の位置まで戻す。その結果、フェルール33の導入孔34の内部では、マッチングオイル36が導入孔34の内壁には残されているが、光ファイバー31の芯材32の通過によって空隙部が形成された状態となる。光ファイバー31の先端部32tをフェルール33内の所定の位置まで戻したときに、ファイバー固定部の回動部が操作されて、光ファイバー31が蓋部に押し付けられる形で固定される。
【0033】
次に、フェルール33の内部で突き合わされるもう一方の光ファイバー38がその芯材37をフェルール33に挿入して導入されると、図8に示すように、先端部32tと先端部37tがフェルール33の略中央付近で突き合わされ、所望の光接続が実現する。この時、光ファイバー38の芯材37のフェルール33の導入孔34への挿入に際しては、既に光ファイバー31を貫通するように操作していることで、導入孔34の内部のマッチングオイル36には空隙が形成されており、円滑に光ファイバー38の芯材37を導入孔34の内部に導くことができる。
【0034】
従来のように比較的に粘度の高いマッチングオイルをフェルール33の導入孔34の内部に多量に残存させていた場合では、フェルール33の導入孔34への両側からの光ファイバーの挿入によってマッチングオイルは逃げ場所がなくなり、このため光ファイバーの挿入が困難となっていたり、マッチングオイルを逃がすためのスリットなどが必要となっていたが、本実施形態の方法では、光ファイバー31をフェルール33の導入孔34を貫通するように操作していることで、導入孔34の内部のマッチングオイル36には空隙が形成されており、粘度の高いマッチングオイル36であっても円滑に光ファイバー38の芯材37を導入孔34の内部に導くことができ、その作業効率は高いものとなる。換言すれば、作業の重点を光接続自体よりも光接続における低損失に絞った作業にできることから、本実施形態の方法では精度の高い接続作業を簡便に行うことが実現される。
【0035】
図9は他の実施形態の光ファイバー接続装置の例である。図9において、図2に示した先の実施形態の光ファイバー接続装置と同じ機能の部材については、同じ参照番号を付して重複した説明はここでは省力する。特に、本実施形態の光ファイバー接続装置において先の装置と異なる構造部分については、フェルール43はマッチングオイルを逃がすためのスリット44を有した構造とされ、そのスリット44に接着剤45が充填されている点である。
【0036】
すなわち、フェルール43は、一方のファイバー固定部15の近傍に配設され、他方のファイバー固定部14とフェルール43の間の光ファイバー案内路12は図9に示すように側断面において緩やかな曲線を描く形状に延長され、当該光ファイバー案内路12に保持される光ファイバー16をたわみ状態で案内し、他方のファイバー固定部15との間の光ファイバー17は短い距離をほぼ直線状に支持する。これら光ファイバー16、17の先端部同士は、フェルール43の中央付近で突き合わせられ、これによって光接続が行われる。この光ファイバー16、17の先端部同士が突き合わせられた接合部分を開口するように蓋部48の凹部42とフェルール43に連通してスリット44が設けられており、突き合わせの際にマッチングオイルを有効に逃がすことができ、突合せの完了後に、接着剤45を充填することでスリット44は埋められる。このため組み立ての後で、光接続部の強度は保たれ、光接続部での損失の発生は未然に防止される。
【0037】
スリット44に導入される接着剤45としては、種々のものが利用可能であるが、耐熱性などの面から筐体である蓋部48と同じ合成樹脂材料や、エポキシ、その他の樹脂材料、或いはフェノール、その他の熱硬化性樹脂などを利用することも可能である。
【0038】
このように光接続部分において、接着剤45をスリット44に導入する構造であっても、そのフェルール43の位置が一方の光ファイバー固定部15寄りであり、他方の光ファイバー固定部14側では光ファイバー案内路12の長さを長く採ることができるため、その光ファイバー案内路12に挿入される光ファイバー16のマイクロベンディングロスを抑えて光接続を実現できる。一方の光ファイバー固定部15では短い距離であるが、直線的であり、曲げ部分などはないために光透過の損失は極力抑えられることになり、たわみが発生するのは他方の光ファイバー固定部14側だけであるため、フェルールの両側を撓ませる場合に比べて光接続の作業を簡便化し、作業時間の短縮化も実現される。
【0039】
上述の実施形態においては、光ファイバーの固定に回動片を回して光ファイバーを固定するファイバー固定部14、15を挙げて説明したが、他の構造の押し圧を光ファイバーに与える構造で光ファイバーを固定するものであっても良い。また、ベース部の形状として矩形状としたが、特に矩形状には限定されず、例えば多角柱状や円柱状のものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態の光ファイバー接続装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態の光ファイバー接続装置の側断面図である。
【図3】本発明の一実施形態の光ファイバー接続装置のファイバー固定部の部分図であって、固定前の様子を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態の光ファイバー接続装置のファイバー固定部の部分図であって、固定時の様子を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態の光ファイバー接続装置を用いた接続方法の工程断面図であり、光ファイバー挿入前の状態を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態の光ファイバー接続装置を用いた接続方法の工程断面図であり、光ファイバーをフェルールを貫通させた状態を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態の光ファイバー接続装置を用いた接続方法の工程断面図であり、光ファイバーを所定の位置まで戻した状態を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態の光ファイバー接続装置を用いた接続方法の工程断面図であり、他方の光ファイバーを挿入した状態を示す図である。
【図9】本発明の他の実施形態の光ファイバー接続装置の側断面図である。
【符号の説明】
【0041】
10 接続装置
11 ベース部
12 光ファイバー案内路
13 フェルール
14、15 ファイバー固定部
16、17 光ファイバー
18 蓋部
19、20 開口部
21、22 凹部
23 導入孔
25 係合部
31 光ファイバー
32 芯材
32t 先端部
33 フェルール
34 導入孔
35 テーパー
36 マッチングオイル
42 凹部
43 フェルール
44 スリット
45 接着剤
48 蓋部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材を被覆材で覆ってなる光ファイバーを、その先端部にて露出させた芯材同士を付き合わせることで光接続するための光ファイバー接続装置であって、
長手方向に沿って光ファイバー案内路が形成されるベース部と、
前記ベース部に形成される前記光ファイバー案内路の一部に設けられ、露出した芯材同士を付き合わせて光接続をするためのフェルールと、
前記ベース部の長手方向の両端部に配され、前記フェルールに向かって前記光ファイバー案内路に案内された光ファイバーを押し込むように保持させる一対のファイバー固定部とを有してなり、
前記フェルールは前記一対のファイバー固定部の一方の近傍に配設され、前記一対のファイバー固定部の他方と前記フェルールの間の前記光ファイバー案内路は保持される光ファイバーをたわみ状態で案内することを特徴とする光ファイバー接続装置。
【請求項2】
前記一対のファイバー固定部の他方と前記フェルールの間の前記光ファイバー案内路は曲線状に延長されていることを特徴とする請求項1記載の光ファイバー接続装置。
【請求項3】
前記ベース部に形成される前記光ファイバー案内路を覆うように蓋部が前記ベース部に取り付けられ、前記ファイバー固定部は光ファイバーを前記蓋部に押し付けることで固定する挟持部を有していることを特徴とする請求項1記載の光ファイバー接続装置。
【請求項4】
光ファイバーの接合の際に前記フェルールの光ファイバーの導入孔内部にはマッチングオイルが充填されていることを特徴とする請求項1記載の光ファイバー接続装置。
【請求項5】
前記フェルールの光ファイバー接合部分にはスリットが形成されていることを特徴とする請求項4記載の光ファイバー接続装置。
【請求項6】
前記スリットには、組み立て時に接着剤が充填されることを特徴とする請求項1記載の光ファイバー接続装置。
【請求項7】
前記光ファイバーは石英系ファイバーであり、前記フェルールの内径は挿入される前記光ファイバーの外径に0.0002〜0.0008mmを加えた直径を有することを特徴とする請求項1記載の光ファイバー接続装置。
【請求項8】
芯材を被覆材で覆ってなる光ファイバーを、その先端部にて露出させた芯材同士を付き合わせることで光接続するための光ファイバー接続方法であって、
ベース部に形成された光ファイバー案内路の一部に組み込まれるフェルールの光ファイバーの導入孔内部にマッチングオイルを充填する工程と、
前記マッチングオイルが充填された光ファイバーの導入孔内部に、光接続する一対の光ファイバーのうちの一方を端部が露出した状態で貫通するように挿入する工程と、
挿入された前記光ファイバーをその端部が光接合位置に来るように戻す工程と、
光接続する一対の光ファイバーのうちの他方の端部を光接合位置にある光ファイバーの一方の端部に突き当てる工程とを有することを特徴とする光ファイバー接続方法。
【請求項9】
前記光ファイバー案内路に案内された光ファイバーを押し込むように保持させる一対のファイバー固定部が設けられ、前記一対の光ファイバーのうちの他方の端部を突き当てる際に該光ファイバーを突き当てる操作は前記ファイバー固定部を操作することで行われることを特徴とする請求項8記載の光ファイバー接続方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−117985(P2011−117985A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332120(P2007−332120)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(507057538)株式会社NFテクノサミット (2)
【出願人】(507420798)
【Fターム(参考)】