説明

光学基板ウェハの検査方法

【課題】ガラス基板ウェハ等の光学基板ウェハの良否判定を短時間で行うことができる光
学基板ウェハの検査方法を提供する。
【解決手段】複数枚のガラス基板ウェハ10を積層するように重ねた状態で、ガラス基板
ウェハ10の一方の面10aに配置した光源1から積層した複数枚のガラス基板ウェハ1
0上の測定ポイント20−1に光を照射する。そして、複数枚のガラス基板ウェハ10の
他方面側10bに配置した受光素子2により複数枚のガラス基板ウェハ10を透過した光
を検出し、検出した検出光量から複数枚のガラス基板ウェハ10の光透過率を求めて、複
数枚のガラス基板ウェハ10が良品であるか不良品であるかの良否判定を行うようにした
ものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板ウェハ等の光学基板ウェハの透過率を検査するのに好適な光学基
板ウェハの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス基板等の光学基板面上に光学薄膜パターンを備えた構造の光学部品を量産
する場合には、例えば大面積のガラス基板ウェハ面上の各光学部品個片領域上にフォトリ
ソグラフィ技術とエッチング技術を用いて光学薄膜パターンを形成する。この際、個片領
域の境界線に沿って光学薄膜パターンから成る線状のダイシングラインが格子状に成膜さ
れる。ダイシングラインに沿って切断することによりガラス基板ウェハは光学部品個片に
分割される。
図4(a)及び(b)はガラス基板ウェハの状態を示した平面図及び正面図であり、ガ
ラス基板ウェハ10上には、格子状にダイシングライン11が形成されている。
【0003】
ところで、上記したようなガラス基板ウェハを作製する工程において、ガラス基板ウェ
ハ面上に光学薄膜パターンを成膜する際は、光学薄膜パターンの蒸着を行う蒸着室内にガ
ラス基板ウェハをセットしたり、或いは蒸着室内において光学薄膜パターンが成膜された
ガラス基板ウェハを回収したりする作業が必要になる。
しかしながらが、これらの作業は作業者が一枚一枚手作業で行っているため、人的ミス
等が発生する虞があった。例えば、蒸着室内にガラス基板ウェハをセットする際にガラス
基板ウェハの裏表を誤ってセットし、本来、光学薄膜パターンを成膜すべき面とは反対側
の面に光学薄膜パターンを成膜したり、或いは光学薄膜パターンの成膜が完了していない
ガラス基板ウェハを、光学薄膜パターンを成膜したものと勘違いして、光学薄膜パターン
を成膜したガラス基板ウェハに含めてしまったりすることがあった。
このため、従来はガラス基板ウェハの面上に光学薄膜パターンを成膜した後、この光学
薄膜パターンを成膜したガラス基板ウェハに人的ミスによる不良品が混入していないかど
うか検査を行うようにしていた。
【0004】
図5は、従来のガラス基板ウェハの検査方法を示した説明図であり、(a)は検査装置
の概略構成を示した図、(b)はガラス基板ウェハの良否判定を行う測定ポイントの一例
を示した図である。
従来、ガラス基板ウェハ10の検査を行う際は、ガラス基板ウェハ10の一方の面10
a側に配置した光源1からガラス基板ウェハ10上の測定ポイント20−1〜20−5の
何れかに光を照射する。そして、ガラス基板ウェハ10の他方の面10b側に配置した受
光素子2によりガラス基板ウェハ10を透過した光を検出し、検出した検出光量からガラ
ス基板ウェハ10の透過率を求めてガラス基板ウェハ10が良品であるか不良品であるか
の良否判定を行うようにした。
ガラス基板ウェハ10の良否判定は、1ロットあたりのガラス基板ウェハの枚数が例え
ば100枚で有れば、その中の数枚については、図5(b)に示すようなガラス基板ウェ
ハ10上の複数の測定ポイント20−1〜20−5において夫々光透過率を測定して良否
判定を行い、それ以外のガラス基板ウェハ10については中心に位置する測定ポイント2
0−1においてのみ光透過率を測定して良否判定を行うようにしていた。
【0005】
なお、先行文献として、特許文献1には、低コストで各種の欠陥を検出できる半導体ウ
ェハ欠陥検査装置として、ウェハ上に形成されたパターンの画像を投影する光学系と、投
影された画像を画像信号に変換するイメージセンサと、画像信号を処理して欠陥部分を検
出する信号処理装置とを備えるウェハ欠陥検査装置であって、光学系は対物レンズと、投
影経路中に設けられた半透鏡を有し、半透鏡で反射させた照明光を、対物レンズを通して
試料上に照射する明視野照明系と、対物レンズの投影経路を除く部分に設けられた反射鏡
を有し、反射鏡で反射させた照明光を対物レンズを通して試料上に照射する暗視野照明系
とを備えたウェハ欠陥検査装置が開示されている。
【特許文献1】特開2003−149169公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記したような従来のガラス基板ウェハの検査方法では、作業者がガラ
ス基板ウェハ10を一枚一枚、手作業により光透過率の測定を行って良否を判定する必要
があるため、検査に時間がかかるという問題点があった。
本発明は、上記したような点を鑑みてなされたものであり、ガラス基板ウェハ等の光学
基板ウェハの良否判定を短時間で行うことができる光学基板ウェハの検査方法を提供する
ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る光学基板ウェハの検査方法は、複数枚の光学基
板ウェハを重ねた状態で、前記光学基板ウェハの一方の面から光を照射し、前記複数枚の
光学基板ウェハを透過した光を他方の面において受光することにより得られる前記複数枚
の光学基板ウェハの光透過率から前記複数枚の光学基板ウェハの中に所定の光透過率を満
たしていない光学基板ウェハが含まれ得ているか否かの良否判定を行うようにした。この
ようにすれば、一回の検査で複数枚の光学基板ウェハの良否を判定できるので、光学基板
ウェハの検査時間を短縮することができる。
【0008】
また本発明に係る光学基板ウェハは、複数枚の光学基板ウェハにおいて光透過率を測定
する測定ポイントを1ポイントとした。従来は、光学基板ウェハの一部を抜き取って複数
の測定ポイントにおいて測定を行っていたが、少なくとも作業者のミスによる不良に関し
ては光学基板ウェハの1ポイントにおいてのみ光透過率の測定を行えば光学基板ウェハの
良否判定を行うことができることが分かった。従って、本発明によれば、測定ポイントを
減らした分だけ光学基板ウェハの検査時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るガラス基板ウェハの検査方法を示した説明図であり、
(a)は検査装置の概略構成を示した図、(b)はガラス基板ウェハの良否判定を行う測
定ポイントの一例を示した図である。
【0010】
本実施形態のガラス基板ウェハの検査方法によりガラス基板ウェハ10の検査を行う際
は、複数枚のガラス基板ウェハ10を積層するように重ねた状態で、ガラス基板ウェハ1
0の一方の面(図1の下方側)10aに配置した光源1から積層した複数枚のガラス基板
ウェハ10上の測定ポイント20−1に光を照射する。そして、複数枚のガラス基板ウェ
ハ10の他方面側(図1の上方側)10bに配置した受光素子2により複数枚のガラス基
板ウェハ10を透過した光を検出し、検出した検出光量から複数枚のガラス基板ウェハ1
0の光透過率を求めて、複数枚のガラス基板ウェハ10が良品であるか不良品であるかの
良否判定を行うようにしたものである。これにより、一回の検査で複数枚のガラス基板ウ
ェハ10の良否を判定できるので、ガラス基板ウェハ10の検査時間を短縮することが可
能になった。
【0011】
なお、本実施形態では、複数枚のガラス基板ウェハ10上の測定ポイント20−1にお
いて得られた光透過率により複数枚のガラス基板ウェハ10が良品であるか不良品である
かの良否判定を行うようにしているが、これはあくまでも一例であり、測定ポイント20
−1以外の測定ポイント20−2〜20−5により得られた光透過率により複数枚のガラ
ス基板ウェハ10が良品であるか不良品であるかの良否判定を行うようにしても良い。
【0012】
以下、本発明に至った背景について説明する。
先ず、本出願人は、あるロットの光学薄膜パターンが適正に成膜されたガラス基板ウェ
ハ(以下、「良品ウェハ」と表記する)の光透過率を測定した。
図2は、あるロットにおける良品ウェハの光透過率の分布状況を示した図である。なお
、ここでは、良品ウェハが目標とする光透過率を95.0%とする。
図2から、通常、同一ロッドにおける良品ウェハの光透過率は、その殆どが目標透過率
(例えば95.0%)の±0.5%以内に収まることがわかった。つまり、同一ロッドの
ガラス基板ウェハに光学薄膜パターンを成膜した場合は光透過率のバラツキが小さいこと
が分かった。
【0013】
次に、本出願人は、人的ミスにより作製されたガラス基板ウェハ(以下、「不良品ウェ
ハ」と表記する)の光透過率の測定を行った。具体的には、光学薄膜パターンを成膜すべ
き面とは反対側の面に光学薄膜パターンを成膜した不良品ウェハAの光透過率、及び光学
薄膜パターンを成膜し忘れた不良品ウェハBの光透過率の測定を行い、不良品ウェハAの
光透過率は約91%、不良品ウェハBの光透過率は89%であることがわかった。これら
の結果から、良品ウェハと人的ミスによる不良品ウェハとでは、光透過率の値が大きく異
なることがわかった。
そこで、本出願人は、このような良品ウェハと不良品ウェハとの光透過率の違いに着目
し、以下の(式1)の条件を満たす範囲内においてガラス基板ウェハを重ね合わせた状態
で光透過率の測定を行い、その測定結果から複数枚のガラス基板ウェハの中に不良ウェハ
が含まれているか否かの良否判定を行うようにした。
【0014】
(X−0.05)n>(X+0.05)n-1×Y・・・(1)
【0015】
ここで、良品ウェハの光透過率をX、1ロットにおける光透過率の最大公差を±0.0
5、ウェハ枚数をn、不良ウェハの光透過率をY、但し、X>Yとする。
そして、n枚のガラス基板ウェハを重ね合わせたときの光透過率Tが、T>(X−0.
05)nであった場合は、測定を行ったn枚のガラス基板ウェハは全て良品ウェハである
と判定する。
一方、n枚のガラス基板ウェハを重ね合わせたときの光透過率Tが、T<(X−0.0
5)nであった場合は、測定を行ったn枚のガラス基板ウェハの中に不良ウェハが含まれ
ていると判定し、その場合はn枚のガラス基板ウェハの光透過率を一枚一枚測定して検査
を行うようにした。
従って、このような本実施形態によれば、ガラス基板ウェハ10が良品ウェハの場合は
、一回に複数枚のガラス基板ウェハ10の検査を行うことができるので検査時間の短縮を
図ることが可能になる。
【0016】
ところで、従来のガラス基板ウェハの検査では、1ロットあたり5%程度のガラス基板
ウェハについては複数の測定ポイント20−1〜20−5において夫々光透過率を測定し
て検査を行うようにしていた。
図3は、良品ウェハ及び不良品ウェハの複数の測定ポイントにおける光透過率を示した
図であり、この図3に示すように良品ウェハ及び不良品ウェハの何れにおいても測定ポイ
ント20−1〜20−5においてほぼ同じ値になることがわかった。
そこで、本実施の形態では、ガラス基板ウェハ10の検査を行う際は、複数の測定ポイ
ント20−1〜20−5において夫々光透過率を測定することなく、何れかの測定ポイン
トにおいて光透過率の測定を行うだけでガラス基板ウェハ10の良否判定を行うこととし
た。これにより、ガラス基板ウェハ10の検査時間をより短縮することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るガラス基板ウェハの検査方法の説明図。
【図2】或るロットにおける良品ウェハの光透過率の分布状況を示した図。
【図3】良品ウェハと不良品ウェハの測定ポイントにおける光透過率の値を示した図。
【図4】ガラス基板ウェハの状態を示した平面図、及び正面図。
【図5】従来のガラス基板ウェハの検査方法の説明図。
【符号の説明】
【0018】
1…光源、2…受光素子、10…ガラス基板ウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の光学基板ウェハを重ねた状態で、前記光学基板ウェハの一方の面から光を照射
し、前記複数枚の光学基板ウェハを透過した光を他方の面において受光することにより得
られる前記複数枚の光学基板ウェハの光透過率から前記複数枚の光学基板ウェハの中に所
定の光透過率を満たしていない光学基板ウェハが含まれ得ているか否かの良否判定を行う
ようにしたことを特徴とする光学基板ウェハの検査方法。
【請求項2】
前記複数枚の光学基板ウェハにおいて光透過率を測定する測定ポイントを1ポイントと
したことを特徴とする請求項1に記載の光学基板ウェハの検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−278918(P2007−278918A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−107271(P2006−107271)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】