説明

光導波路および電子機器

【課題】長尺のものを簡単な設備で容易に製造し得る光導波路、および、前記光導波路を備える電子機器を提供すること。
【解決手段】光導波路フィルム10は、クラッド層で挟まれたコア層を有しており、このコア層には、平面視において渦巻き線を描くように配設されたコア部14と、コア部14以外の領域である側面クラッド部15と、が形成されている。また、光導波路フィルム10の側面クラッド部15に(図3の切断線20に)沿って切断することにより、長尺の光導波路を取り出すことができる。このように光導波路フィルム10は、それ自体が小面積であっても、十分な長さの長尺光導波路を製造し得るものである。なお、コア部14は、並列する複数のコア部で置き換えることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光搬送波を使用してデータを移送する光通信技術が開発され、近年、この光搬送波を、一地点から他地点に導くための手段として、光導波路が普及しつつある。この光導波路は、線状のコア部と、その周囲を覆うように設けられたクラッド部とを有している。コア部は、光搬送波の光に対して実質的に透明な材料によって構成され、クラッド部は、コア部より屈折率が低い材料によって構成されている。
【0003】
光導波路では、コア部の一端から導入された光が、クラッド部との境界で反射しながら他端に搬送される。光導波路の入射側には、半導体レーザー等の発光素子が配置され、出射側には、フォトダイオード等の受光素子が配置される。発光素子から入射された光は光導波路を伝搬し、受光素子により受光され、受光した光の明滅パターンもしくはその強弱パターンに基づいて通信を行う。
【0004】
特許文献1には、透明基材フィルムと、透明基材フィルムの第1の面に設けられた矩形状のコア部と、を有する光導波路フィルムの製造方法であって、長尺状の透明基材フィルムの表面に対して、ロール状の第1金型を用いてコア部形成用の活性エネルギー線硬化型樹脂材料を成形し、これを硬化させることで光導波路フィルムを製造する方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、このような製造方法では、透明基材フィルムを搬送するために多くのローラー、金型等の設備を必要とする。このため、製造装置の大型化および複雑化が避けられなかった。特に、スーパーコンピューターや大規模サーバーといった大型の電子機器に光導波路を使用する場合、とりわけ長尺の光導波路を製造する必要があることから、上記課題が顕著である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−10645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、長尺のものを簡単な設備で容易に製造し得る光導波路、および、前記光導波路を備える電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)〜(9)の本発明により達成される。
(1) コア部とクラッド部とを有する層状の光導波路であって、
平面視において前記コア部の少なくとも一部が渦巻き線を描くよう配設されていることを特徴とする光導波路。
【0009】
(2) 前記コア部は、前記渦巻き線の隣り合う線間を切断することにより、長尺の光導波路を形成し得るよう構成されている上記(1)に記載の光導波路。
【0010】
(3) 前記コア部の一部は、第1の渦巻き線と、構成する線が前記第1の渦巻き線の線間に位置するよう配置された第2の渦巻き線とを、それぞれの中心部において接続した多重渦巻き線を描くよう構成されている上記(1)または(2)に記載の光導波路。
【0011】
(4) 前記渦巻き線は、曲線と直線の組み合わせで構成されている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の光導波路。
【0012】
(5) 複数本並列して設けられた前記コア部を有しており、
前記複数本のコア部のうち、前記渦巻き線の中心側に位置するコア部を内側コア部とし、前記内側コア部よりも外側に位置するコア部を外側コア部としたとき、
前記内側コア部の端部の位置と前記外側コア部の端部の位置とが、前記コア部の長手方向において互いにずれている上記(1)または(2)に記載の光導波路。
【0013】
(6) 前記内側コア部の光路長と前記外側コア部の光路長とが略等しくなるように、前記内側コア部の端部の位置と前記外側コア部の端部の位置とのずれ量が設定されている上記(5)に記載の光導波路。
【0014】
(7) 複数本並列して設けられた前記コア部を有しており、
前記複数本のコア部のうち、前記渦巻き線の中心側に位置するコア部を内側コア部とし、前記内側コア部よりも外側に位置するコア部を外側コア部としたとき、
前記内側コア部の一部は、前記渦巻き線の中心側に向かって突出する円弧を描くよう構成されている上記(1)または(2)に記載の光導波路。
【0015】
(8) 前記渦巻き線の隣り合う線間に沿って設けられ、相対的に切断が容易な易切断部を有する上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の光導波路。
【0016】
(9) 上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の光導波路を有することを特徴とする電子機器。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、長尺のものを簡単な設備で容易に製造し得る光導波路および前記光導波路を備える電子機器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の光導波路の第1実施形態を適用した光導波路フィルムを示す平面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】光導波路フィルムを切断する際の切断線の一例を示す平面図である。
【図4】光導波路フィルムを切断してなる長尺光導波路の一例を示す平面図である。
【図5】本発明の光導波路の第2実施形態を適用した光導波路フィルムを示す平面図である。
【図6】本発明の光導波路の第3実施形態を適用した光導波路フィルムを示す平面図である。
【図7】本発明の光導波路の第4実施形態を適用した光導波路フィルムを示す平面図および部分拡大図である。
【図8】本発明の光導波路の第5実施形態を適用した光導波路フィルムを示す平面図および部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の光導波路および電子機器について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0020】
<光導波路>
≪第1実施形態≫
まず、本発明の光導波路の第1実施形態について説明する。
【0021】
図1は、本発明の光導波路の第1実施形態を適用した光導波路フィルムを示す平面図、図2は、図1に示すA−A線断面図である。
【0022】
図1に示す光導波路フィルム10は、平面視において1本のコア部14を有しており、このコア部14は渦巻き線を描くように配設されている。
【0023】
一方、光導波路フィルム10は、図2に示すように、下側から支持フィルム18、クラッド層11、コア層13、クラッド層12、カバーフィルム19がこの順で積層されてなる積層体で構成されている。そして、コア層13は、図2に示すように、コア部14とその両側に設けられた側面クラッド部15とを有している。なお、図1は、コア層13を透視した平面図になっている。
【0024】
このような光導波路フィルム10は、全体の面積が小さくても、長尺のコア部14を内包したものとなる。このため、渦巻き線の隣り合う線間、すなわち側面クラッド部15において光導波路フィルム10を切断すると、渦巻き線を描くように配設されていたコア部14を長尺のものとして取り出すことができる。このように光導波路フィルム10は、長尺光導波路1に転化可能なものであるといえる。
【0025】
なお、上記のような効果により、光導波路フィルム10は小面積であっても十分な長さの長尺光導波路1の製造が可能であるから、光導波路フィルム10自体を製造する際には、大型で複雑な製造装置は必要とせず、製造工程の簡略化および低コスト化を図ることができる。結果的に、容易かつ安価に長尺光導波路を得ることができる。
【0026】
以下、光導波路フィルム10の各部の構成について順次説明する。
前述したように、光導波路フィルム10を平面視したとき、コア層13中には渦巻き線を描くようにコア部14が配設されており、それ以外の領域が側面クラッド部15になっている。したがって、コア部14の側方には側面クラッド部15が隣接することとなる。
【0027】
一方、コア層13の下方にはクラッド層11、上方にはクラッド層12が隣接していることから、コア部14はクラッド部(側面クラッド部15およびクラッド層11、12)で囲まれた状態になっている。コア部14とクラッド部との界面で光を反射させることにより、コア部14中において信号光を伝搬させることができる。
【0028】
コア部14とクラッド部との界面で反射を生じさせるためには、界面に屈折率差が存在する必要がある。コア部14の屈折率は、クラッド部の屈折率より大きければよく、その差は特に限定されないものの、クラッド部の屈折率の0.5%以上であるのが好ましく、0.8%以上であるのがより好ましい。一方、上限値は、特に設定されなくてもよいが、好ましくは5.5%程度とされる。屈折率の差が前記下限値未満であると光を伝達する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えても、光の伝送効率のそれ以上の増大は期待できない。
【0029】
なお、前記屈折率差とは、コア部14の屈折率をA、クラッド部の屈折率をBとしたとき、次式で表わされる。
【0030】
屈折率差(%)=|A/B−1|×100
また、図1に示す構成では、コア部14は平面視で単線状に形成されているが、途中で湾曲、分岐等していてもよい。
【0031】
また、コア部14の横断面形状は、正方形または矩形(長方形)のような四角形であるのが一般的であるが、特に限定されず、真円、楕円のような円形、菱形、三角形、五角形のような多角形であってもよい。
【0032】
コア部14の幅および高さは、特に限定されないが、それぞれ、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、20〜70μm程度であるのがさらに好ましい。
【0033】
また、コア部14は、平面視で渦巻き線を描くよう構成されていれば、渦巻き線の形状等は特に限定されない。例えば、渦巻き線の全体が曲線であってもよく、一部が直線であってもよい。
【0034】
また、渦巻き線を構成する曲線の曲率半径は、特に限定されないが、10mm以上であるのが好ましく、20mm以上であるのがより好ましい。曲率半径が前記範囲内であれば、曲線部分での伝送損失の著しい低下が抑制されるため、得られる長尺光導波路は、伝送損失が小さく、高品質な光通信が可能なものとなる。一方、伝送損失抑制の観点では曲率半径ができるだけ大きければよいが、光導波路フィルム10自体が巨大化して製造し難くなるのを避けるためには、上限値を1000mm程度とすればよい。
【0035】
コア層13の構成材料は、上記の屈折率差が生じる材料であれば特に限定されないが、具体的には、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料の他、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス材料等である。
【0036】
また、これらの中でも特にノルボルネン系樹脂が好ましい。これらのノルボルネン系ポリマーは、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカルまたはカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等、公知のすべての重合方法で得ることができる。
【0037】
一方、各クラッド層11、12は、コア層13の下方および上方に位置している。クラッド層11、12の平均厚さは、コア層13の平均厚さ(各コア部14の平均高さ)の0.1〜1.5倍程度であるのが好ましく、0.2〜1.25倍程度であるのがより好ましく、具体的には、クラッド層11、12の平均厚さは、特に限定されないが、それぞれ、通常、1〜200μm程度であるのが好ましく、3〜100μm程度であるのがより好ましく、5〜60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光導波路1が必要以上に大型化(厚膜化)するのを防止しつつ、クラッド層としての機能が好適に発揮される。
【0038】
また、各クラッド層11、12の構成材料としては、例えば、前述したコア層13の構成材料と同様の材料を用いることができるが、特にノルボルネン系ポリマーが好ましい。
【0039】
また、コア層13の構成材料およびクラッド層11、12の構成材料を選択する場合、両者の間の屈折率差を考慮して材料を選択すればよい。具体的には、コア層13とクラッド層11、12との境界において光を確実に反射させるため、コア層13の構成材料の屈折率がクラッド層11、12の屈折率に比べ十分に大きくなるように材料を選択すればよい。これにより、光導波路1の厚さ方向において十分な屈折率差が得られ、コア部14からクラッド層11、12に光が漏れ出るのを抑制することができる。
【0040】
また、光の減衰を抑制する観点からは、コア層13の構成材料とクラッド層11、12の構成材料との密着性(親和性)が高いことも重要である。
【0041】
なお、図2に示す光導波路1は、前述したように、クラッド層11の下面に設けられた支持フィルム18およびクラッド層12の上面に設けられたカバーフィルム19を有している。これらの支持フィルム18およびカバーフィルム19は、必要に応じて設ければよく、省略されてもよい。
【0042】
このような支持フィルム18およびカバーフィルム19の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド等の各種樹脂材料等が挙げられる。
【0043】
また、支持フィルム18およびカバーフィルム19の各平均厚さは、特に限定されないが、5〜200μm程度であるのが好ましく、10〜100μm程度であるのがより好ましい。これにより、支持フィルム18およびカバーフィルム19は、適度な柔軟性を有するものとなるため、光導波路1の柔軟性を阻害し難くなる。
【0044】
なお、支持フィルム18とクラッド層11との間、および、カバーフィルム19とクラッド層12との間は、接着または接合されているが、その方法としては、熱圧着、接着剤または粘着剤による接着等が挙げられる。
【0045】
このうち、接着層としては、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤の他、各種ホットメルト接着剤(ポリエステル系、変性オレフィン系)等が挙げられる。また、特に耐熱性の高いものとして、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリイミドアミドエーテル、ポリエステルイミド、ポリイミドエーテル等の熱可塑性ポリイミド接着剤が好ましく用いられる。このような材料で構成された接着層は、比較的柔軟性に富んでいるため、光導波路1の形状が変化したとしても、その変化に自在に追従することができる。その結果、形状変化に伴う剥離を確実に防止し得るものとなる。
【0046】
このような接着層の平均厚さは、特に限定されないが、1〜100μm程度であるのが好ましく、5〜60μm程度であるのがより好ましい。
【0047】
このような光導波路フィルム10は、前述したように、渦巻き線の隣り合う線間において切断されることにより、長尺光導波路として用いることができる。
【0048】
切断作業は、いかなる方法で行われてもよいが、例えばカッター等を用いた機械加工、レーザー加工、抜型を用いた打ち抜き加工等が挙げられる。
【0049】
図3は、光導波路フィルムを切断する際の切断線の一例を示す平面図、図4は、光導波路フィルムを切断してなる長尺光導波路の一例を示す平面図である。なお、図3は、コア層13を透視した平面図になっている。
【0050】
図3に示す切断線20に沿って切断することにより、図4に示すような長尺光導波路1が得られる。このようにすれば、光導波路フィルム10の一辺の長さより数倍も長いものも製造可能である。すなわち、光導波路フィルム10の一辺の長さを、製造すべき長尺光導波路1の長さより短くすることができるので、大型で複雑な製造装置を用いることなく光導波路フィルム10を製造することができる。したがって、容易かつ低コストで光導波路フィルム10を製造することができ、その結果、容易かつ安価に長尺光導波路1を製造することができる。
【0051】
なお、光導波路フィルム10の切断線20には、必要に応じて、他の部位に比べて切断を容易にする易切断部が設けられているのが好ましい。このような易切断部を設けることで、切断線20に沿って容易に切断することができ、切断作業の効率を高めることができる。また、光導波路フィルム10を引っ張る等、外部応力を加えるだけで切断することも可能になる。さらに、易切断部から外れた部位は相対的に切断され難くなるため、易切断部を確実に切断することができ、長尺光導波路1の寸法精度を高めることができる。
【0052】
易切断部としては、例えば、他の部位に比べて厚さが薄くなっている部位、他の部位に比べて脆性が高い部位、ミシン目が入っている部位等が挙げられる。
【0053】
また、光導波路フィルム10における渦巻き線の線間は、図1に示すように中心部に向かうにつれて徐々に狭くなるよう設定されていてもよいし、図示しないものの、その離間距離がほぼ一定になるよう設定されていてもよい。特に後者の場合、幅がほぼ一定の長尺光導波路1が得られるため、受発光素子との光結合が容易になる等の利点がある。
【0054】
一方、前者の場合、線間が狭くなるため、後者に比べて同一面積でもより長い光導波路1が得られる。また、前者のように、中心部に向かうにつれて線間が徐々に狭くなっていると、その分曲率半径を大きくすることができる。このため、光路が曲げられることによる伝搬損失の上昇を抑えることができる。
【0055】
切断により得られた長尺光導波路1は、自然状態では平面状になっているが、いずれか一端を引っ張ることにより螺旋状に伸びることができる。また、引っ張るのを止めると、長尺光導波路1は元の平面状に戻る。すなわち、長尺光導波路1は、長手方向に一定の弾性を有している。このため、長尺光導波路1は、例えばカールコードのように引張力に応じて自在に長さを変化させることができ、敷設作業が容易である。また、他の光導波路や電気配線と絡み難いことから、敷設時の取り回しが良好であるという利点もある。
【0056】
さらに、長尺光導波路1は、螺旋状に伸びることから、屈折し(折れ曲がり)難いあるいは破断し難いという利点もある。屈折した場合には、その部位の曲率半径が著しく小さくなるため、伝送損失が著しく増加し、場合によっては挫屈することもあるが、長尺光導波路1であればそのような問題の発生を抑えることができる。
【0057】
なお、上記説明では、コア部14が1つ(シングルチャンネル)である場合について説明したが、複数のコア部14が並列したマルチチャンネルであってもよい。
【0058】
≪第2実施形態≫
次に、本発明の光導波路の第2実施形態について説明する。
【0059】
図5は、本発明の光導波路の第2実施形態を適用した光導波路フィルムを示す平面図である。
【0060】
以下、第2実施形態について説明するが、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、図5において、第1実施形態と同様の構成部分については、先に説明したのと同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0061】
図5に示す光導波路フィルム10は、コア部14の平面視形状が異なる以外、第1実施形態と同様である。
【0062】
本実施形態では、コア部14が、第1の渦巻き線141と、構成する線が第1の渦巻き線141の線間に位置するよう配置された第2の渦巻き線142とを、それぞれの中心部において接続した多重渦巻き線を描くよう配設されている。
【0063】
ここで、第1の渦巻き線141においては、コア部14の幅の一端部と他端部とで光路長に差が生じる。これは、第2の渦巻き線142でも同様である。この差は、コア部14の幅のうち、渦巻き線の内側と外側とで中心からの距離が異なることによるものである。
【0064】
これに対し、多重渦巻き線では、第1の渦巻き線141と第2の渦巻き線142とを接続したので、それぞれの光路長の差が相殺されることとなる。このようなコア部14では、その幅の一端部と他端部とで長さが同じになる。このため、複数のコア部14が並列している場合には、各コア部14の長さ(光路長)を同じにすることができる。その結果、コア部14間で位相差が生じ難いマルチチャンネルの長尺光導波路1が得られる。
【0065】
また、第1の渦巻き線141と第2の渦巻き線142とが接続線143で接続されているが、この接続線143は屈折しないように曲線で構成されている。これにより、接続線143において伝送損失が増加しないようになっている。
【0066】
≪第3実施形態≫
次に、本発明の光導波路の第3実施形態について説明する。
【0067】
図6は、本発明の光導波路の第3実施形態を適用した光導波路フィルムを示す平面図である。
【0068】
以下、第3実施形態について説明するが、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、図6において、第1実施形態と同様の構成部分については、先に説明したのと同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0069】
図6に示す光導波路フィルム10は、コア部14の平面視形状が異なる以外、第1実施形態と同様である。
【0070】
本実施形態では、コア部14が、直線部144と曲線部145とを組み合わせた渦巻き線を描くように配設されている。このような光導波路フィルム10から得られる長尺光導波路1は、直線部144において高い伝送効率が得られることから、直線部144を含むことにより全体の伝送効率が高められる。
【0071】
また、直線部144にコネクターを取り付けることにより、他の光学素子との結合が容易になるとともに光結合効率が高められるという利点もある。
【0072】
≪第4実施形態≫
次に、本発明の光導波路の第4実施形態について説明する。
【0073】
図7は、本発明の光導波路の第4実施形態を適用した光導波路フィルムを示す平面図および部分拡大図である。
【0074】
以下、第4実施形態について説明するが、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、図7において、第1実施形態と同様の構成部分については、先に説明したのと同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0075】
図7に示す光導波路フィルム10は、図1に示すのと同様の渦巻き線に沿って並列する4本のコア部14が配設されており、かつ、長手方向の両端部において各コア部14の端部の位置が互いに長手方向にずれている以外、第1実施形態と同様である。
【0076】
本実施形態では、並列する複数のコア部14が揃って渦巻き線を描くように配設されている。
【0077】
図7には、複数のコア部14の両端部における部分拡大図を示している。図7には並列する4本のコア部14a、14b、14c、14dが図示されている。これらのコア部のうち最も渦巻き線の中心側に位置するコア部14aは、その両端部において、コア部14aの長さが長くなる方向に端部の位置がずれている。コア部14bは、コア部14aよりも短くなる方向に、コア部14cは、コア部14bよりも短くなる方向に、コア部14dは、コア部14cよりも短くなる方向に、それぞれ端部の位置がずれている。すなわち、内側に位置するコア部14とそれより外側に位置するコア部14は、その端部の位置が長手方向に互いにずれている。
【0078】
並列する複数のコア部14が揃って渦巻き線を描くように配設されていると、渦巻き線の中心からの距離に応じて各コア部14a、14b、14c、14dの周長が異なることから、光路長に差が生じてしまう。
【0079】
これに対し、前述したようにして両端部において端部の位置がずれていることにより、この光路長の差を相殺することができる。これにより、各コア部14a、14b、14c、14d間で位相差が生じ難いマルチチャンネルの長尺光導波路1が得られる。したがって、端部の位置のずれ量は、前述した光路長の差とほぼ等しくなるように適宜設定される。これにより、全体において各コア部14a、14b、14c、14d間の光路長がほぼ等しくなる。
【0080】
なお、前述した各コア部14a、14b、14c、14dの端部の位置のずれは、両端部に設定されていなくてもよく、一端部のみに設定されていてもよい。
【0081】
以上、本実施形態に係る光導波路フィルム10は、各コア部14a、14b、14c、14d間で位相差が生じ難いマルチチャンネルの長尺光導波路1を製造可能なものとなる。
【0082】
≪第5実施形態≫
次に、本発明の光導波路の第5実施形態について説明する。
【0083】
図8は、本発明の光導波路の第5実施形態を適用した光導波路フィルムを示す平面図および部分拡大図である。
【0084】
以下、第5実施形態について説明するが、第3実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、図8において、第3実施形態と同様の構成部分については、先に説明したのと同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0085】
図8に示す光導波路フィルム10は、図6に示すのと同様の渦巻き線に沿って並列する4本のコア部14が配設されており、かつ、コア部14の曲線部145の平面視形状が異なる以外、第3実施形態と同様である。
【0086】
本実施形態では、4本のコア部14のうち、渦巻き線の中心からの距離が最も短いコア部(内側コア部)14aの曲線部145は、渦巻き線の中心側に向かって突出する円弧146を描くように配設されている。また、図8では、このような円弧146が、コア部14b、14cにも設定されている。このような形状にすることで、円弧146の部分で光路長を稼ぐことができるので、前述した各コア部14a、14b、14c、14d間の周長の差に伴う光路長の差を、この曲線部145において相殺することができる。したがって、円弧146の突出量は、この曲線部145における各コア部14a、14b、14c、14d間の光路長の差が、前述した各コア部14a、14b、14c、14d間の周長の差に伴う光路長の差と同程度になるように適宜設定される。
【0087】
なお、このような円弧146は、全ての曲線部145に設定されていなくてもよく、必要に応じて設けられればよい。
【0088】
以上、本実施形態に係る光導波路フィルム10は、各コア部14a、14b、14c、14d間で位相差が生じ難いマルチチャンネルの長尺光導波路1を製造可能なものとなる。
【0089】
<光導波路の製造方法>
次に、上述したような光導波路を製造する方法の一例について説明する。
【0090】
図2に示す光導波路1は、下方から支持フィルム18、クラッド層11、コア層13、クラッド層12およびカバーフィルム19をこの順で積層してなる積層体を有している。
【0091】
積層体のうち、クラッド層11、コア層13およびクラッド層12の3層は、クラッド層11、コア層13およびクラッド層12を順次成膜して形成する方法、あるいは、クラッド層11、コア層13およびクラッド層12をあらかじめ基材上に成膜した後、それぞれを基板から剥離して貼り合わせる方法等により製造される。
【0092】
一方、支持フィルム18およびカバーフィルム19は、上述したようにして製造された3層に対して貼り合わせる方法により製造される。
【0093】
クラッド層11、コア層13およびクラッド層12の各層は、それぞれ形成用の組成物を基材上に塗布して液状被膜を形成した後、液状被膜を均一化するとともに揮発成分を除去することにより形成される。
【0094】
塗布方法としては、例えば、ドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法等の方法が挙げられる。
【0095】
また、液状被膜中の揮発成分を除去するには、液状被膜を加熱したり、減圧下に置いたり、あるいは乾燥ガスを吹き付けたりする方法が用いられる。
【0096】
なお、各層の形成用組成物としては、例えば、クラッド層11、コア層13またはクラッド層12の構成材料を各種溶媒に溶解または分散してなる溶液(分散液)が挙げられる。
【0097】
ここで、コア層13中にコア部14と側面クラッド部15とを形成する方法としては、例えば、フォトブリーチング法、フォトリソグラフィー法、直接露光法、ナノインプリンティング法、モノマーディフュージョン法等が挙げられる。これらの方法はいずれも、コア層13の一部領域の屈折率を変化させる、あるいは、一部領域の組成を異ならせることにより、相対的に屈折率の高いコア部14と相対的に屈折率の低い側面クラッド部15とを作り込むことができる。したがって、この一部領域として前述したような渦巻き線を描く領域を設定することにより、光導波路1が得られる。
【0098】
これらの方法のうち、モノマーディフュージョン法が好ましく用いられる。モノマーディフュージョン法は、ポリマー中にこのポリマーと屈折率の異なる光重合性モノマーが分散してなる材料で構成された層に対して部分的に光を照射し、光重合性モノマーの重合を生起させるとともに、それに伴って光重合性モノマーを移動、偏在させることにより、層内に屈折率の偏りを生じさせてコア部14および側面クラッド部15を形成する方法である。この方法では、光を照射する領域を選択するのみで、いかなる形状のコア部14をも簡単に形成することができるので、渦巻き線に沿ったコア部14を簡単かつ高精度に得ることができる。また、照射する光は、例えば紫外線ランプから発せられるような広範に広がる光であってもよいが、レーザー光のような指向性の高い光であってもよい。指向性の高い光を用いた場合、照射領域の選択にあたってフォトマスク等を用いる必要がないことから、製造に係る工数およびコストを大幅に削減することができる。さらには、指向性の高い光を用いることで、照射領域の位置精度も高められることから、微細な渦巻き線を描く場合も高精度に行うことができる。
【0099】
<電子機器>
本発明の光導波路を備える電子機器(本発明の電子機器)は、光信号と電気信号の双方の信号処理を行ういかなる電子機器にも適用可能であるが、例えば、ルーター装置、WDM装置、携帯電話、ゲーム機、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等の電子機器への適用が好適である。これらの電子機器では、いずれも、例えばLSI等の演算装置とRAM等の記憶装置との間で、大容量のデータを高速に伝送する必要がある。したがって、このような電子機器が本発明の光導波路を備えることにより、電気配線に特有なノイズ、信号劣化等の不具合が解消されるため、その性能の飛躍的な向上が期待できる。
【0100】
さらに、光導波路部分では、電気配線に比べて発熱量が大幅に削減される。このため、基板内の集積度を高めて小型化が図られるとともに、冷却に要する電力を削減することができ、電子機器全体の消費電力を削減することができる。
【0101】
また、本発明の光導波路は、電気配線上に実装される用途の他、空間中に比較的中長距離(例えば数十cm以上)に敷設される用途にも好適に用いられる。このような用途には、例えば、サーバー等の基板同士を繋ぐもの、あるいは、サーバー等のラック同士を繋ぐもの等が挙げられる。なお、光導波路を用いることにより、配線の高集積化が図られるため、配線の量が減少する。このため、冷却効率が向上するという利点もある。
【0102】
以上、本発明の光導波路および電子機器の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば光導波路を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよく、複数の実施形態同士を組み合わせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0103】
1 光導波路
10 光導波路フィルム
11、12 クラッド層
13 コア層
14 コア部
14a、14b、14c、14d コア部
141 第1の渦巻き線
142 第2の渦巻き線
143 接続線
144 直線部
145 曲線部
146 円弧
15 側面クラッド部
18 支持フィルム
19 カバーフィルム
20 切断線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部とクラッド部とを有する層状の光導波路であって、
平面視において前記コア部の少なくとも一部が渦巻き線を描くよう配設されていることを特徴とする光導波路。
【請求項2】
前記コア部は、前記渦巻き線の隣り合う線間を切断することにより、長尺の光導波路を形成し得るよう構成されている請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記コア部の一部は、第1の渦巻き線と、構成する線が前記第1の渦巻き線の線間に位置するよう配置された第2の渦巻き線とを、それぞれの中心部において接続した多重渦巻き線を描くよう構成されている請求項1または2に記載の光導波路。
【請求項4】
前記渦巻き線は、曲線と直線の組み合わせで構成されている請求項1ないし3のいずれかに記載の光導波路。
【請求項5】
複数本並列して設けられた前記コア部を有しており、
前記複数本のコア部のうち、前記渦巻き線の中心側に位置するコア部を内側コア部とし、前記内側コア部よりも外側に位置するコア部を外側コア部としたとき、
前記内側コア部の端部の位置と前記外側コア部の端部の位置とが、前記コア部の長手方向において互いにずれている請求項1または2に記載の光導波路。
【請求項6】
前記内側コア部の光路長と前記外側コア部の光路長とが略等しくなるように、前記内側コア部の端部の位置と前記外側コア部の端部の位置とのずれ量が設定されている請求項5に記載の光導波路。
【請求項7】
複数本並列して設けられた前記コア部を有しており、
前記複数本のコア部のうち、前記渦巻き線の中心側に位置するコア部を内側コア部とし、前記内側コア部よりも外側に位置するコア部を外側コア部としたとき、
前記内側コア部の一部は、前記渦巻き線の中心側に向かって突出する円弧を描くよう構成されている請求項1または2に記載の光導波路。
【請求項8】
前記渦巻き線の隣り合う線間に沿って設けられ、相対的に切断が容易な易切断部を有する請求項1ないし7のいずれかに記載の光導波路。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の光導波路を有することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−104979(P2013−104979A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248028(P2011−248028)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】