説明

光波干渉計測装置

【課題】 安価な光波干渉計測装置を提供すること。
【解決手段】 第1の多波長光源から射出し被検面で反射した被検光束と、前記第1の多波長光源と異なる波長を持つ第2の多波長光源から射出し参照面で反射した参照光束の干渉信号を検出し、前記参照面と前記被検面の光路長差を計測する光波干渉計測装置において、前記第1の多波長光源と前記第2の多波長光源は、広帯域な波長を持つ光源と光学フィルタとを有することを特徴とする構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光波干渉計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の狭帯域なスペクトルを有する多波長光源により参照面と被検面間の光路長を計測する干渉計が提案されている。従来の多波長光源を光源とする干渉計はモードロックレーザーや光周波数コム発生器から射出される光周波数コム光源を用いて構成されている。特許文献1では、複数の異なる周波数の干渉信号を同時にヘテロダイン検出している。また、特許文献2では、ヘテロダイン干渉信号を回折格子により分光検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−227911号公報
【特許文献2】特開2009−25245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の光波干渉計測装置においては、光源として、光周波数コム発生器、または、モードロックレーザーを使用している。これらは共に高価であるため、これらを光源として使用する光波干渉計測装置も必然的に高価となってしまい、応用用途が制限されるという課題がある。そこで、本発明は、安価な光波干渉計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
その目的を達成するために、本発明の一側面としての光波干渉計測装置は、第1の多波長光源から射出し被検面で反射した被検光束と、前記第1の多波長光源と異なる波長を持つ第2の多波長光源から射出し参照面で反射した参照光束の干渉信号を検出し、前記参照面と前記被検面の光路長差を計測する光波干渉計測装置において、前記第1の多波長光源と前記第2の多波長光源は、広帯域な波長を持つ光源と光学フィルタとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
安価な光波干渉計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態における光波干渉計測装置の構成図である。
【図2】第1、第2実施形態におけるファブリ・ペロー・エタロンによる多波長光生成の概念図である。
【図3】ファブリ・ペロー・エタロンのFSRとフィネスの関係を示す図である。
【図4】ファブリ・ペロー・エタロンにより作り出される狭帯域な多波長光の中心周波数と気体原子、分子の吸収線との関係を示す図である。
【図5】第1、第2実施形態における解析装置により実行される計測方法のフローチャートである。
【図6】第1実施形態における干渉信号の位相差と周波数との関係図である。
【図7】第2実施形態における光波干渉計測装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0009】
〔第1実施形態〕
まず、本発明の第1実施形態における光波干渉計測装置について説明する。図1は、本実施形態における光波干渉計測装置の構成図である。本実施形態の光波干渉計測装置は、白色光源1と光学フィルタとしてのファブリ・ペロー・エタロン2とを有する第1の多波長光源12aと、第2の多波長光源12bにより構成される。第2の多波長光源12bは、第1の多波長光源12aから射出した光束の一部を取り出し、その取り出した光束の周波数を周波数シフタ4でシフトすることにより構成される。
【0010】
白色光源1からの光は、ファブリ・ペロー・エタロン2へ入射する。図2に示すように、白色光源1からファブリ・ペロー・エタロン2へ入射する広帯域なスペクトルをもつ光は、ファブリ・ペロー・エタロン2を透過後、複数の狭帯域なスペクトルをもつ光として出力される。ファブリ・ペロー・エタロンは、反射膜を有する平行平面間の光の多重反射を利用しており、白色光源のスペクトルの中から半波長の整数倍が平行平面間の光路長に等しい光のみ透過する。ファブリ・ペロー・エタロン2は、他の光学フィルタに比べて、透過する光の周波数帯域を非常に狭くできる。尚、参照光束と被検光束の光路長差が小さく、光のコヒーレンスが低くてもよい場合には、複数のバンドパスフィルタを用いて狭帯域な多波長光を生成してもよい。ファブリ・ペロー・エタロンの性質は、図3に示すように、FSR(自由スペクトル領域)とFinesse(フィネス)により決まる。透過光はFSRごとにピークを繰り返す櫛歯状のスペクトルをもつ。FSRはファブリ・ペロー・エタロンを構成する平行平面間の光路長により決まる。また、FSRに対する各ピークの半値全幅の比がフィネスであり、フィネスが大きいほどピークの幅は狭くなる。フィネスの値は、ファブリ・ペロー・エタロンを構成する平行平面端の反射率に依存し、反射率が高いほど大きくなる。後述するように、本実施形態では回折型分波器により櫛歯状スペクトルの一本一本を分光して検出するため、ファブリ・ペロー・エタロンのFSRは、使用する回折型分波器の分解能より大きくなければならない。また、櫛歯状スペクトル一本一本の線幅が狭いほど干渉性がよく、距離計測に都合がいいため、フィネスが出来るだけ大きな値になるよう反射膜は設計される。
【0011】
光源の周波数揺らぎは測定誤差となるため、第1多波長光の中心周波数とFSRを安定化する必要がある。中心周波数を安定化するために、図4に示すように、生成される多波長光の強度スペクトルの中心周波数15と、気体原子や分子の透過スペクトルにおける吸収線16とをロックする。ロックする方法としては、ファブリ・ペロー・エタロンにより生成される多波長光からバンドパスフィルタなどで一本のスペクトルのみを取り出し、取り出した光をガスセルに通して透過光強度を検出する。取り出したスペクトルの周波数がガスの吸収線と一致し、検出光の強度が最小になるように、ピエゾアクチュエーター(不図示)によりファブリ・ペロー・エタロンのキャビティー長を変える。また、気圧や温度などの外部環境によりエタロンの分散に揺らぎが生じFSRが不安定になる。FSRを安定化するために、分散の影響の小さい真空エタロンやエアギャップエタロンを使用し、更に、温度コントローラ3によりエタロンの分散を保証する。その他のFSR安定化方法としては、第1多波長光、または、第2多波長光自身の隣接するスペクトル間の差周波信号を検出して位相同期回路(PLL)により安定化する方法がある。第1多波長光、または、第2多波長光の強度信号には、自身の隣接するスペクトルピーク間のビート信号が含まれている。第1多波長光、または、第2多波長光のスペクトルはFSR周期でピークをもつため、ビート信号の周波数はFSRの整数倍である。このビート信号の周波数は光の周波数に比べて十分に小さく電気的に検出することが可能なため、この信号をPLL検出することにより安定化できる。
【0012】
ファブリ・ペロー・エタロンの透過効率は低いため、ファブリ・ペロー・エタロン2の直後に光増幅器13を置き、ファブリ・ペロー・エタロン2を透過した光の強度を増幅する。フィルタリングした櫛歯状スペクトルの強度を光増幅器によって強めることにより、白色光源の光量を大きくする場合に比べて不要光の光量が小さいため、発熱や戻り光による位相誤差を低減できる。
【0013】
多波長光は無偏光ビームスプリッタ5aにより異なる二つの光路に分岐される。無偏光ビームスプリッタ5aを透過する光は第1多波長光源として用いられる。無偏光ビームスプリッタ5aで反射される光は周波数シフタ4に入射する。周波数シフタ4では、音響光学素子などにより第1多波長光のスペクトル全体を一律に周波数dfだけシフトさせ、第1多波長光と直交するように偏光を90度回転させて射出する。周波数シフタ4を透過した光は第2多波長光として用いられる。第1、または、第2多波長光の周波数は非常に高いため電気的に検出することはできないが、第1多波長光と第2多波長光の間に生じるビート信号の周波数dfは電気的に検出可能なため、このビート信号から第1、第2多波長光の位相の情報を取り出せる。このような検出方法を一般にヘテロダイン検出と呼ぶ。ヘテロダイン検出では上記シフト周波数dfの揺らぎが計測する位相の誤差になってしまう。そこで、本実施形態の光波干渉計測装置では、シフト量の保証された音響光学素子などを周波数シフタ4として用いることにより、第1多波長光と第2多波長光の波長差を安定的に維持している。
【0014】
第1多波長光12a、及び、第2多波長光12bは、それぞれ、無偏光ビームスプリッタ5bにより2つに分岐される。以下、無偏光ビームスプリッタ5bで分岐後、分波器9aに入射する光路を基準光路、無偏光ビームスプリッタ5bで分岐後、偏光ビームスプリッタ6へ入射する光路を計測光路と称す。
【0015】
計測光路において、第1多波長光は、偏光ビームスプリッタ6を透過する。一方、第1多波長光と直交する偏光成分を有する第2多波長光は、偏光ビームスプリッタ6で反射する。偏光ビームスプリッタ6で反射された第2多波長光は、複数の反射面からなるコーナキューブによって構成される参照面7で反射される。参照面7で反射された光束は、偏光ビームスプリッタ6で再度反射されて分波器9bに入射する。ここで、参照面7は、距離計測の基準となる基準位置上に固定されているものとする。
【0016】
一方、偏光ビームスプリッタ6を透過した第1多波長光は、被検物体上に固定された被検面8において反射される。被検面8は、参照面7と同様にコーナキューブで構成される。被検面8で反射された光束は、再び偏光ビームスプリッタ6を透過して分波器9bに入射する。このように、基準光路及び計測光路の両方において、第1多波長光、及び、第2多波長光は、分波器9a、9bにより分光される。
【0017】
分波器9a、9bとしては、例えばアレイ導波路回折型波長分波器が用いられる。以下の説明において、アレイ導波路回折型分波器をAWGと称す。AWGは、光路長差の異なるアレイ上の導波路射出後の回折により分波する素子であり、小型で安価に入手可能である。分波器9a、9bは、第1多波長光、及び、第2多波長光の波長間隔、つまりFSRを分解できるだけの波長分解能を有することが要求される。分波器9a、9bはAWGに限定されるものではなく、例えばバルク型の回折格子を用いてもよい。使用する波長帯域によっては、AWGよりもバルク型の分光器の方が低コストで構成できる場合がある。また、本実施形態の分波器として、バンドパスの干渉フィルタを用いてもよい。このような干渉フィルタを用いると、多波長光源のスペクトルの数が少なくて計測対象の波長の数が少ない場合に、分波器の構成が簡単になるという利点がある。
【0018】
分波器9a、9bから多波長光源のスペクトル毎に分岐された出力は、それぞれの分岐に対応して複数個の検出器を備えて構成された検出装置10a、10bにて受光される。検出装置10a、10bにて受光された光は、第1多波長光12aと第2多波長光12bの干渉信号として、解析装置11へ伝送される。ここで、第1多波長光12aと第2多波長光12bの干渉信号を得るため、両光の共通偏光成分を抽出する手段として偏光子(不図示)が分波器9a、9bの入射前に配置されている。
【0019】
なお本実施形態では、所定の方向の偏光成分のみが検出されるが、検出される偏光成分と直交する成分に関しても同様に、分波器9a、9b及び検出装置10a、10bで干渉信号を検出してもよい。このとき、検出装置10a、10bの両方で検出される信号の位相が互いに反転するように波長板を偏光子前に挿入することで、差動検出が可能となる。これにより、さらに高精度な計測が可能となる。
【0020】
次に、本実施形態の解析装置11で実行される解析の内容について説明する。図5は、本実施形態における解析装置11により実行される計測方法のフローチャートである。ステップS101〜ステップS103で干渉信号の位相差から被検面と参照面との間の距離をラフに求める。更に高精度に距離を算出するために、ステップ104〜ステップ105で基準光路と計測光路との間の光路長差を求め、ステップS106で干渉次数Nを求める。最後にステップS107で、求めた干渉次数と、基準光路と計測光路との間の光路長差から、ステップ103とは別の解析式により高精度に距離を算出する。
【0021】
まず、解析装置11は、ステップS101において、基準光路及び計測光路のそれぞれに対してスペクトル毎(周波数毎)に得られる干渉信号の位相(干渉位相)を計測する。すなわち解析装置11は、複数の周波数についての各干渉信号から参照面7と被検面8との間の干渉位相を計測する。干渉位相の計測は、位相計を構成することにより可能となる。分波器9a、9bで分岐されたp番目の波長を検出するため、検出装置10a、10b中のp番目の検出器で計測される干渉信号は、基準光路の干渉信号をIref、計測光路の干渉信号をItestとすると、式(1)及び式(2)のように表される。
【0022】
【数1】

【0023】
【数2】

【0024】
ここで、fはファブリ・ペロー・エタロンによって切り出される櫛歯状のスペクトルの中心周波数、fmはファブリ・ペロー・エタロンのFSRである。また、a1、a2は、それぞれ第1多波長光源12aと第2多波長光源12bのp番目の周波数成分の振幅である。ここで、nは無偏光ビームスプリッタ5b以前における第1多波長光12aの光路と第2多波長光12bの光路の光路長差を表す。また、nは基準光路に対する測定光路の第2多波長光の光路の光路長差である。また、nDは、偏光ビームスプリッタ6以降における第1多波長光源12a及び第2多波長光源12bからの光束の光路長差である。周波数dfの信号を位相計で検出した場合の位相は、基準光路及び計測光路における信号の位相をそれぞれφref、φtestとすると、以下の式(3)及び式(4)で表される。
【0025】
【数3】

【0026】
【数4】

【0027】
次に、解析装置11は、ステップS102において計測光路及び基準光路の信号間の位相差を計算する。位相差は、上記の式(3)と式(4)の差を算出することにより以下の式(5)のように得られる。
【0028】
【数5】

【0029】
次に、解析装置11は、ステップS103において参照面7と被検面8との間の光路長差nDの1回目の計算を行う。屈折率の分散が無視できるものとすると、光路長差nDは、複数の周波数に対する基準光路と計測光路との間の位相差(干渉位相)の変化率を用いて、以下の式(6)で表される。
【0030】
【数6】

【0031】
光源の中心周波数fは安定化されているので、式(5)において中心周波数の位相差から求まる光路長差nDと、式(6)より求まるnDを比較することでfm、つまり、ファブリ・ペロー・エタロンのFSRを校正することができる。
【0032】
図6は、本実施形態における干渉信号の位相差と周波数との関係図である。図6における複数の基準光路と計測光路との位相差を周波数に対して線形近似した場合の傾き(変化率)を算出することにより、光路長差nDが算出される。ところが、上記の式(6)で得られる光路長差nDの計測精度は、位相計の10−5rad程度の計測精度を考慮すると、10GHz程度の周波数fmでも数100nm程度になる。この精度は、最終的な出力として用いるには不十分である。このため、以下において、より高精度に光路長差nDを算出するための解析手段について説明する。
【0033】
まず、解析装置11は、ステップS105において基準光路と計測光路との間の光路長差nを計算する。光路長差nは通常変化する値ではないため、毎回計算する必要はない。このため、図5に示されるように、光路長差nの計算を行うか否かはステップS104にて判定される。上記の式(5)から、式(6)の光路長差nDmeas1を用いて光路長差nを表すと、以下の式(7)を得る。
【0034】
【数7】

【0035】
ここで、式(7)中のオーバーラインはpに対する平均値を意味する。上述のとおり、光路長差nの計算頻度は低いため、十分な時間をかけて平均化することにより光路長差nmeas1を高精度に算出しておくことが望ましい。また、式(7)の光路長差nDmeas1に関しても、後述の式(9)で得られる光路長差nDを利用して反復計算を行うことにより精度を高めることができる。
【0036】
次に、解析装置11は、ステップS106において、算出された光路長差から干渉信号の干渉次数を算出する。ここで干渉次数とは、干渉信号で検出される位相の2πの整数倍の成分において、2πに乗じられる整数を意味する。p番目のスペクトルにおける計測光路と参照光路との位相差に着目すれば、p番目の干渉信号の干渉次数Nは、以下の式(8)で表される。
【0037】
【数8】

【0038】
ここで、「round()」は引数を丸める関数を表す。
【0039】
最後に、解析装置11は、ステップS107において参照面7と被検面8との間の光路長差nDを再度算出する。光路長差nDは、それぞれのスペクトル(複数の周波数毎)について、上述の干渉次数と、計測光路と参照光路との間の位相差(干渉位相)とを用いて算出される。このため、高精度化のために全てのスペクトルに対して平均化を行うことにより、光路長差nDは以下の式(9)のように表される。
【0040】
【数9】

【0041】
式(9)は光路長差nDに対する計算式であるが、必要に応じて屈折率nで除算することにより、幾何学的距離Dを算出するようにしてもよい。屈折率nは、光波干渉計測装置の近傍において気圧、温度、湿度等の環境状態を計測し、計測周波数に応じて屈折率の分散式からの計算により得られる。式(9)によれば、式(6)と比較して、同一の位相差の計測精度においてf:fmの比で高精度に幾何学的距離Dを算出することが可能となる。
【0042】
本実施形態では、光源1に対して光波干渉計が一つの場合について説明したが、複数軸を同時に計測する場合には一つの光源1に対し複数個の光波干渉計を構成してもよい。この場合、無偏光ビームスプリッタ5以降で必要数だけ光束を分岐し、偏光ビームスプリッタ6、参照面7、被検面8を備えて構成される干渉計を計測軸毎に配置し、干渉計毎に分波器9a、9bと検出装置10a、10bを追加すればよい。
【0043】
以上のとおり、本実施形態によれば、安価で高精度な測距が可能な光波干渉計測装置を提供することができる。
【0044】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態における光波干渉計測装置について説明する。図7は本実施形態における光波干渉計測装置の構成図である。本実施形態では、第1、第2の多波長光源が、それぞれ異なるファブリ・ペロー・エタロン22a、22bにより構成される。また、第2実施形態では、AWGによって分光検出するのではなく、第1と第2の多波長光の干渉信号は検出ユニット25a、25bにより検出される。本実施形態によれば、屈折率変動の影響を補正した高精度な測距が可能な光波干渉計測装置を安価に提供することができる。
【0045】
本実施形態では光源部の構成、及び、干渉信号の検出方法が第1実施形態と異なる。まず、光源部は低コヒーレンスな白色光源21から射出される光束を無偏光ビームスプリッタ24aにより異なる二つの光路に分岐する。無偏光ビームスプリッタ24aを透過する光束はファブリ・ペロー・エタロン22aを透過し、複数の狭帯域なスペクトルを有する第1多波長光を生成する。無偏光ビームスプリッタ24aで反射される光束はファブリ・ペロー・エタロン22bを透過し、第1多波長光とは異なる複数の狭帯域なスペクトルを有する第2多波長光を生成する。また、本実施形態でもビート信号をヘテロダイン検出するため波長差を安定的に維持するための手段が必要である。しかし、本実施形態では、第1実施形態とは異なり、第1多波長光と第2多波長光の波長差を安定的に維持する手段として、二つのファブリ・ペロー・エタロン22a、22bを用いる。そのために、ファブリ・ペロー・エタロン22aとファブリ・ペロー・エタロン22bはそれぞれ異なるFSR、fm1とfm2をもつように制御する。まず、第1多波長光の中心周波数をガスの吸収線にロックし、FSRの絶対値を保証する。次に、FSRの相対値を保証する。第1多波長光と第2多波長光の間に生じる干渉信号の周波数は|fm2−fm1|の整数倍である。そこで、周波数が|fm2−fm1|である安定な外部信号を用意し、この外部信号を参照信号として干渉信号をロックイン検出し、検出信号の強度が最大になるようにファブリ・ペロー・エタロン22bのキャビティ―長を制御する。同時に、共通の温度コントローラ23によりファブリ・ペロー・エタロン22aとファブリ・ペロー・エタロン22bを構成する媒質の分散を保証する。ここでは、第1多波長光をガスの吸収線にロックしてFSRの絶対値を保証し、第2多波長光のFSRを変えてFSRの相対値を保証したが、逆にしてもよい。検出される干渉信号の周波数帯ν-−ν-はファブリ・ペロー・エタロンの分散により決まってしまう。しかし、ファブリ・ペロー・エタロン22a、22bの後に音響光学素子などの周波数シフタ(不図示)を挿入することで、検出に都合のよい周波数帯へと制御できる。ファブリ・ペロー・エタロンの透過効率は低いので、ファブリ・ペロー・エタロン22a、ファブリ・ペロー・エタロン22bの直後に光増幅器30a、30bを置き、透過光の強度を増幅する。
【0046】
次に干渉信号検出部についてであるが、第2実施形態では参照信号検出ユニット25a、被検信号検出ユニット25bから構成される。第1実施形態ではAWGによりスペクトルごとに分波して検出していたため解析に使用できるスペクトルが制限されていた。しかし、第2実施形態では干渉信号をAD変換機でデジタル信号に変換して解析装置29へ転送するため、解析に使用できるスペクトルの制限がなくなるため、特に、媒質の揺らぎの影響を低減することに効果的である。
【0047】
次に、本実施形態の解析装置29で実行される解析の内容について説明する。図5は、本実施形態における解析装置29により実行される計測方法のフローチャートである。
【0048】
参照信号検出ユニット25aで検出される参照信号Iref、被検信号検出ユニット25bで検出される被検信号Itestはそれぞれ以下のように表せる。
【0049】
【数10】

【0050】
【数11】

【0051】
数式10、及び、数式11においてν-、ν-はそれぞれ第1多波長光、第2多波長光の中心周波数であり、fm、fmは第1多波長光、第2多波長光のFSRに相当する。検出される干渉信号は中心周波数差ν-−ν-を中心に、一定間隔fm−fmごとに櫛歯状のスペクトルを有する。周波数ν-−ν-+p(fm−fm)の信号の位相は、基準光路及び計測光路における信号の位相をそれぞれφref、φtestとすると、式(12)及び式(13)で表される。
【0052】
【数12】

【0053】
【数13】

【0054】
位相差は、上記の式(12)と式(13)の差を算出することにより以下の式(14)のように得られる。
【0055】
【数14】

【0056】
ステップS103からステップS107は第1実施形態と同様の解析を行えばよいので、省略する。
【0057】
本実施形態では、計測光路の屈折率変動の補正を含めて参照面28と被検面27の間の光路長差における幾何学的距離を算出する解析処理が実行される。周波数fに対する光路長差nD(f)は、参照面28で反射された光束と被検面27で反射された光束の光路の幾何学的距離をDとすると、以下の式15で表される。
【0058】
【数15】

【0059】
式15において、Ntpは参照面28と被検面27との間の非同一光路における媒質の密度に依存する成分であり、B(f)は波長のみに依存する関数である。なお、式(10)で表されるように、参照面28と被検面27との間の媒質の既知の分散特性は、媒質の密度に依存する成分と光周波数成分に依存する成分との積、及び、媒質の真空中の屈折率の和で近似される。
【0060】
関数B(f)は、参照面28と被検面27との間の非同一光路における媒質が湿度0の空気である場合、Edlenの式を用いて以下の式16で表される。
【0061】
【数16】

【0062】
なお、参照面28と被検面27との間の媒質が上述の条件と異なる場合には、適切な関数を設定すればよい。
【0063】
本実施形態の解析装置29は、多数の周波数に対する光路長差の測定結果から媒質密度の変化分を補正するために、光路長差の計測結果に対して所定の関数をフィッティングさせることにより幾何学的距離Dを算出する。ここで所定の関数は、幾何学的距離Dと、参照面28と被検面27との間の媒質の屈折率によって変化する光路長差の変化分の和で表される。光路長差の変化分は、参照面28と被検面27との間の既知の分散特性を有する媒質の屈折率に幾何学的距離Dを乗算して得られる。光路長差の計測結果をnDmeas(f)とし、所定の関数をD+Ntp・D・B(f)とすると、フィッティング残差の平方和は式17のように表される。
【0064】
【数17】

【0065】
式17を最小化する幾何学的距離DとNtp・Dは、正規方程式を解くことにより決定される。これにより、参照面28と被検面27との間の媒質の屈折率揺らぎの影響を補正して幾何学的距離Dを求めることが出来、従って、高精度な測定が可能になる。また、参照面28と被検面27との間の媒質の屈折率が必要な場合、光周波数毎の光路長の計測結果を参照面28と被検面27との間の幾何学的距離Dで除算することで屈折率を算出することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 白色光源
2 ファブリ・ペロー・エタロン
3 温度コントローラ
4 周波数シフタ
5a、5b 無偏光ビームスプリッタ
6 偏光ビームスプリッタ
7 参照面
8 被検面
9a、9b 分波器
10a、10b 検出装置
11 解析装置
12a 第1多波長光源
12b 第2多波長光源
13 光増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の多波長光源から射出し被検面で反射した被検光束と、前記第1の多波長光源と異なる波長を持つ第2の多波長光源から射出し参照面で反射した参照光束の干渉信号を検出し、前記参照面と前記被検面の光路長差を計測する光波干渉計測装置において、
前記第1の多波長光源と前記第2の多波長光源は、広帯域な波長を持つ光源と光学フィルタとを有する
ことを特徴とする光波干渉計測装置。
【請求項2】
前記第1多波長光源と前記第2多波長光源の波長差を維持する手段を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記第1多波長光源と前記第2多波長光源は、前記光学フィルタを透過した光の強度を増幅するための光増幅器を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記光学フィルタは、ファブリ・ペロー・エタロンである
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項5】
前記維持する手段は、前記第1多波長光源から射出した光束の一部を取り出し、その取り出した光束の周波数をシフトして前記第2多波長光源を生成する周波数シフタである
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項6】
前記維持する手段は、前記第1多波長光源または前記第2多波長光源のファブリ・ペロー・エタロンのFSRの制御装置である
ことを特徴とする請求項4に記載の計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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