説明

光源装置、照明装置、モニタ装置、画像表示装置及びプロジェクタ

【課題】シンチレーションの発生を軽減することが可能な光源装置、照明装置、モニタ装置、画像表示装置及びプロジェクタを提供すること。
【解決手段】各波長選択素子という異なる位置から波長λ1〜波長λ4という異なる波長のレーザ光を射出することができる。この結果、干渉の位置が時間的にずれることになり、干渉がレーザ光の全体に亘って平準化されることになる。加えて、状態1と状態2とが交互に繰り返されるようにレーザ光を射出することができる。この結果、やはり干渉の位置が時間的にずれることになり、干渉がレーザ光の全体に亘って平準化されることになる。このように、シンチレーションの発生を相乗的に軽減することが可能な光源装置4を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置、照明装置、モニタ装置、画像表示装置及びプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
投射型画像表示装置では、光源として超高圧水銀ランプなどの放電ランプが用いられるのが一般的である。しかし、このような放電ランプは、寿命が比較的短い、瞬時点灯が難しい、色再現性範囲が狭い、ランプから放射された紫外線が液晶ライトバルブを劣化させてしまうことがある等の課題がある。そこで、このような放電ランプの代わりに、レーザ光源を用いた投射型画像表示装置が提案されている。
【0003】
レーザ光源は、上記の課題を持たない反面、干渉性を有するという欠点を持っている。所定の位置に干渉光を含んだ光が光源装置から照射されると、当該光源装置を用いたプロジェクタにおいては、表示画像に干渉縞が形成されてしまう。観察者がこの画像を観察するとき、この干渉縞をシンチレーションとして認識することになる。このため、高精細な画像を表示させるためには、スペックルノイズの対策が必要となる。
【0004】
スペックルノイズの対策方法として、光源の温度を制御する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の画像表示装置は、アレイ光源の一つ一つの半導体レーザが、異なる温度に維持されており、各半導体レーザが、この温度の違いに応じて異なる波長の光束を射出している。このように、出力波長を異ならせることにより、半導体レーザ同士のコヒレンスが低減し、出力光全体としてスペックルノイズが低減する。
【特許文献1】特開2003−31872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の手法では、コヒレント長に匹敵する光路長の差異を設ける必要があるため、小型化が困難であるという問題がある。光源装置のみならず、当該光源装置を搭載する照明装置、モニタ装置、画像表示装置及びプロジェクタについても同様の問題がある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、シンチレーションの発生を軽減することが可能であり小型化が可能な光源装置、照明装置、モニタ装置、画像表示装置及びプロジェクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る光源装置は、レーザ光を射出する光源部と、前記光源部からの前記レーザ光のうち第1波長成分を選択し当該第1波長成分が共振するように前記光源部に向けて反射する第1波長選択部と、前記光源部からの前記レーザ光のうち前記第1波長成分とは異なる第2波長成分を選択し当該第2波長成分が共振するように前記光源部に向けて反射する第2波長選択部と、前記光源部からの前記レーザ光が前記第1波長選択部と前記第2波長選択部とのそれぞれに入射可能となるように、前記光源部から光が射出する位置と、前記第1波長選択部及び前記第2波長選択部の位置とを相対的に変動させる位置変動手段とを具備することを特徴とする。
本発明によれば、光源部からのレーザ光のうち第1波長成分を選択し当該第1波長成分が共振するように光源部に向けて反射する第1波長選択部と、光源部からのレーザ光のうち第1波長成分とは異なる第2波長成分を選択し当該第2波長成分が共振するように光源部に向けて反射する第2波長選択部と、光源部からのレーザ光が第1波長選択部と第2波長選択部とのそれぞれに入射可能となるように、光源部から光が射出される位置と、第1波長選択部及び第2波長選択部の位置とを相対的に変動させる位置変動手段とを具備するので、第1波長選択部及び第2波長選択部という異なる位置から第1波長成分及び第2波長成分という異なる波長の光を射出することができる。この結果、干渉の位置が時間的にずれることになり、干渉がレーザ光の全体に亘って平準化されることになる。加えて、第1波長成分と第2波長成分という異なる波長の光を時系列的に異なるように射出することができる。この結果、やはり干渉の位置が時間的にずれることになり、干渉がレーザ光の全体に亘って平準化されることになる。このように、シンチレーションの発生を相乗的に軽減することが可能な光源装置を得ることができる。
【0008】
上記の光源装置は、前記位置変動手段が、前記光が射出する位置を変動させることを特徴とする。
本発明によれば、位置変動手段が光が射出する位置を変動させることとしたので、第1波長選択部及び第2波長選択部の位置を固定することができる。これにより、第1波長選択部及び第2波長選択部の位置を変動させるのに比べて設計・制御が容易となる。
【0009】
上記の光源装置は、前記位置変動手段が、前記第1波長選択部及び前記第2波長選択部の位置を変動させることを特徴とする。
本発明によれば、位置変動手段が第1波長選択部及び第2波長選択部の位置を変動させることとしたので、光が射出する位置を固定することができる。これにより、レーザ光の光路を固定させることができ、光を安定して供給することができる。
【0010】
上記の光源装置は、前記第1波長選択部が、前記レーザ光のうち前記第1波長成分に変換する第1波長変換素子を有しており、前記第2波長選択部が、前記レーザ光のうち前記第2波長成分に変換する第2波長変換素子を有していることを特徴とする。
本発明によれば、第1波長選択部がレーザ光のうち第1波長成分に変換する第1波長変換素子を有しており、第2波長選択部がレーザ光のうち第2波長成分に変換する第2波長変換素子を有しているので、当該第1波長変換素子及び第2波長変換素子によって所望の波長の光成分(第1波長成分、第2波長成分)を得ることができる。
【0011】
上記の光源装置は、前記レーザ光の射出のタイミングと前記位置変動手段による位置の変動のタイミングを制御する制御部を更に具備し、前記制御部が、前記レーザ光の射出のタイミングと前記位置の変動のタイミングとを同期させるように制御することを特徴とする。
本発明によれば、レーザ光の射出のタイミングと位置変動手段による位置の変動のタイミングを制御する制御部によって、レーザ光の射出のタイミングと位置の変動のタイミングとを同期させるように制御することとしたので、レーザ光を無駄なく利用することができる。
【0012】
本発明に係る照明装置は、上記の光源装置を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、干渉の位置を時間的にずらすことのできる上記の光源装置を備えているので、シンチレーションの発生を低減することが可能な照明装置を得ることができる。
【0013】
本発明に係るモニタ装置は、上記の光源装置と、前記光源装置から射出された光を伝送する光伝送部と、前記光伝送部によって伝送された光によって対象物をセンシングするセンサ部とを具備することを特徴とする。
本発明によれば、干渉の位置を時間的にずらすことのできる上記の光源装置を備えているので、シンチレーションの発生を低減することが可能なモニタ装置を得ることができる。
【0014】
本発明に係る画像表示装置は、上記の光源装置と、前記光源装置から射出される光を変調する光変調手段とを具備することを特徴とする。
本発明によれば、干渉の位置を時間的にずらすことのできる上記の光源装置と、この光源装置から射出される光を変調する光変調手段とを具備することとしたので、当該画造形性装置によって形成される画像においては干渉縞が平準化されることとなる。観察者はこのように標準化された画像を観察することとなるため、観察者が感じるシンチレーションは軽減されることになる。
【0015】
本発明に係るプロジェクタは、上記の光源装置と、前記光源装置から射出される光を変調する光変調手段と、前記光変調手段によって変調された光を投射する投射レンズとを具備することを特徴とする。
本発明によれば、干渉の位置を時間的にずらすことのできる光源装置と、この光源装置から射出される光を変調する光変調手段と、この光変調手段によって変調された光を投射する投射レンズとを具備することとしたので、投射された画像においては干渉縞が平準化されることになる。観察者はこのように標準化された画像を観察することとなるため、観察者が感じるシンチレーションは軽減されることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を図面に基づき説明する。
図1は、本実施形態に係るプロジェクタ1の模式的な構成を示す図である。
同図に示すように、プロジェクタ1は、画像表示装置2と、投射レンズ3と、スクリーンSとを主体として構成されている。
【0017】
画像表示装置2は、光源装置4と、光変調装置5とを有している。
光源装置4は、発光素子6、プリズム7、制御部8を有する光源部9と、波長変換素子10、波長選択素子11を有する波長選択部12と、赤外線反射ミラー13と、電気光学素子14とを有している。
【0018】
発光素子6は、レーザ光を発する複数例えば2つの半導体レーザ(LD)からなる。図1では、紙面の奥行き方向に重なるように配置されており、2つの半導体レーザが並ぶように配列されている。発光素子6は、支持部6aに固定されている。発光素子6から射出される光の発光波長は概ね一致している。完全に一致している必要は無く、多少のばらつきが合っても構わない。
【0019】
プリズム7は、レーザ光の射出方向上に配置されており、レーザ光を反射可能な反射面7aを有している。プリズム7は、発光素子6からのレーザ光を反射面7aによって当該発光素子6の配列方向に直交する方向に反射する。このプリズム7は、例えば図1の点Pを中心軸として、反射面7aが反射方向を向くように回動可能に設けられている。例えば図1に示す状態(状態1)でレーザ光を反射した場合、レーザ光は光路α(紙面手前側)及び光路γ(紙面奥側)に沿って進行することになる。この状態から反射面7aを図中反時計回りに所定の角度だけ回動させた状態(状態2)にすると、レーザ光は光路β(紙面手前側)及び光路δ(紙面奥側)に沿って進行することになる。このように、光源部9においては、プリズム7を回動させることによって、レーザ光の射出される位置が波長選択部12に対して相対的に変動するようになっている。この回動角度を切り替えることにより、光源部9からは光路αのレーザ光と光路βのレーザ光が射出されるようになっている。制御部8は、発光素子6の発光のタイミングと、プリズム7の回動角度及びタイミングとを時間的に制御する。
【0020】
波長変換素子10は、入射光をほぼ半分の波長に変換する非線形光学素子である。波長変換素子10による波長変換効率は非線形の特性を有している。例えば、波長変換素子10に入射するレーザ光の強度が強いほど、変換効率が向上する。波長変換素子10の変換効率は40〜50%程度である。
【0021】
波長変換素子10は、レーザ光の光軸方向に沿って分極反転された領域(図中斜線で示す領域)と分極反転されて無い領域とが交互に並んだストライプ状の構成になっている。このようなストライプ状の構成が、発光素子6の半導体レーザごとに図中上下方向(レーザの光軸方向に垂直な方向)に2つずつ、合計で4つ設けられている。図1には上下方向に1つずつの波長変換素子10のみが示されているが、発光素子6の半導体レーザと同様、紙面の奥行き方向(半導体レーザの配列方向)に配置されている。図中紙面手前側の下側を領域A、図中紙面手前側の上側を領域B、図中紙面奥側の下側を領域C、図中紙面奥側の上側を領域Dとする。領域A及び領域Cは、上記のプリズム7を状態1にした場合にレーザ光が入射する位置に配置されている。領域B及び領域Dは、上記のプリズム7を状態2にした場合にレーザ光が入射する位置に配置されている。電極パターンの幅及び電極パターン同士の間隔は、例えば領域A>領域B>領域C>領域Dとなるように形成されている。この波長変換素子10は、領域ごとに異なった分極が互いに反転したドメインの繰り返し構造(分極周期構造)を有している。この分極周期構造内を光が透過することにより、ピーク波長の光に含まれる様々な波長成分のうち互いに異なる波長の成分が変換作用を受ける。この作用により、入射した光の波長を変換するようになっている。
【0022】
波長選択素子11は、図2に示すように、波長変換素子10の領域A〜領域Dのそれぞれに対して光軸方向上に平面視で重なる位置に1つずつ配置されている(11a〜11d)。この波長選択素子11は、図2に示すように、光軸方向に垂直な平面に対して所定の角度だけ傾くように配置されている。この所定の角度については、波長選択素子11a〜11dのそれぞれにおいて異なっている。各波長選択素子11a〜11dは、図3(a)又は図3(b)に示すように、複数の屈折率の異なる層が積層された構成になっている。各層の層厚については、波長選択素子11a〜11dで同一になっている。図3(a)に示すように、波長選択素子11の傾きがない場合、レーザ光の進行方向における波長選択素子11の距離がW1となる。図3(b)に示すように、波長選択素子11が傾いている場合、レーザ光の進行方向における波長選択素子11の距離がW2となる。ここでは、傾いている分図3(b)に示す場合の方が波長選択素子11の距離が大きくなる(W2>W1)。この傾きを調節することにより、それぞれ異なる波長成分の光を選択して反射することが可能になっている。波長選択素子11は、選択した波長以外の波長成分を透過するようになっている。波長選択素子11としては、例えば、周期格子を有するホログラムのような光学素子を用いることができる。
【0023】
光学素子14は、例えば計算機合成ホログラム(Computer Generated Hologram:CGH)からなり、レーザ光の光路上に設けられている。計算機合成ホログラムは、計算機で計算して人工的に作成した干渉縞がホログラム原板に形成された構成になっている。計算機合成ホログラムは、回折格子の分割領域の自由な設定が可能であり、収差の問題が生じないので好適に用いられる。計算機合成ホログラムからなる電気光学素子14は、照明領域設定機能及び拡散光生成機能(照度均一化機能)を有している。
【0024】
画像表示装置2を構成する光変調装置5は、所定の画像信号に基づいて光源装置4からのレーザ光を変調する素子であり、例えばTFTアクティブマトリクス型液晶装置などからなる。
【0025】
プロジェクタ1を構成する投射レンズ3は、画像表示装置2から射出された画像光をスクリーンSに投射する。
【0026】
次に、上記のように構成されたプロジェクタ1の動作を説明する。
制御部8によって、発光素子6からのレーザ光の発光タイミングとプリズム7の回動のタイミング(状態1と状態2との切替のタイミング)とが同期するように制御する。このときの周波数は、それぞれ60Hz程度であることが好ましい。また、制御部8によって状態1と状態2とが交互に繰り返されるように制御する。状態1では、発光素子6から射出されたレーザ光は、このプリズム7によって光路α、光路γを進行するように反射される。状態2では、レーザ光は光路β、光路δを進行するように反射される。
【0027】
光路αを進行するレーザ光は領域Aによって波長λ1の光(第1波長成分)に変換される。光路βを進行するレーザ光は領域Bによって波長λ2の光(第2波長成分)に変換される。光路γを進行するレーザ光は領域Cによって波長λ3の光(第1波長成分)に変換される。光路δを進行するレーザ光は領域Dによって波長λ4の光(第2波長成分)に変換される。
【0028】
その後、光路α〜光路δを進行する各レーザ光は、波長選択素子11で選択された波長の光線が発光素子6と波長選択ミラー13の間で反射を繰り返し、増幅され、波長変換素子10で波長変換された後、レーザ光L1〜レーザ光L4として波長選択ミラー13から射出される。射出されたレーザ光L1〜L4は、光学素子14に入射する。経路Aの場合と経路Bの場合とで異なる位置に入射する。レーザ光は、この光学素子14の拡散光生成機能によって拡散され均一な照度分布となる。均一な照度分布となったレーザ光は、光学素子14の照明領域設定機能によって所定の領域に設定される。光学素子14においては、画像表示装置2から射出される光が投射レンズ3の呑み込み角の範囲内となるように、照明領域が設定される。光源装置4からは、光学素子14によって設定された照明領域でレーザ光Lが射出される。
【0029】
光源装置4から射出されたレーザ光Lは、光変調装置5に入射し、所定の画像光に変調される。画像表示装置2からは、このように変調された画像光が射出される。画像表示装置2から射出された画像光は、投射レンズ3に入射する。入射した画像光は、スクリーンSに投射される。このように、プロジェクタ1による画像表示が行われる。
【0030】
このように、本実施形態によれば、各波長選択素子11a〜11dという異なる波長選択されたレーザ光に対し波長λ1〜波長λ4という異なる波長のレーザ光を射出することができる。この結果、干渉の位置が時間的にずれることになり、干渉が投影光の全体に亘って平準化されることになる。加えて、状態1と状態2とが交互に繰り返されるようにレーザ光を射出することができる。この結果、やはり干渉の位置が時間的にずれることになり、干渉がレーザ光の全体に亘って平準化されることになる。このように、シンチレーションの発生を相乗的に軽減することが可能な光源装置4を得ることができる。切り替え周波数はおよそ60Hz以上とすれば、観察者の視覚特性を考慮して、干渉位置の移動状態が確認し難くなり、シンチレーションを感じることを軽減できる。
【0031】
また、本実施形態では、干渉の位置を時間的にずらすことのできる上記の光源装置4を具備することとしたので、画像表示装置2、プロジェクタ1によって形成される画像においては干渉縞が平準化されることとなる。観察者はこのように標準化された画像を観察することとなるため、観察者が感じるシンチレーションは軽減されることになる。
【0032】
[第2実施形態]
次に、図4をもとにして本発明の第2実施形態を説明する。第1実施形態と同様、以下の図では、各部材を認識可能な大きさとするため、縮尺を適宜変更している。
同図に示すように、プロジェクタ101は、第1実施形態と同様、画像表示装置102と、投射レンズと、スクリーンとを主体として構成されている。図4では投射レンズ及びスクリーンの図示を省略している。
【0033】
画像表示装置102は、光源装置104と、光変調装置105とを有している。光源装置104は、光源部106と、波長選択部107と、電磁石108及び電磁石109と、電気光学素子110とを有している。
【0034】
光源部106は、4つの発光素子106a〜106dが支持部106eに支持された構成になっている。発光素子106a〜106dからは第1実施形態と同様のレーザ光が射出されるようになっている。このように本実施形態では発光素子106a〜106dが光源部の光の射出する位置となっている。支持部106eの位置は固定されている。
【0035】
波長選択部107は、ベース盤107aと、波長変換素子111と、共振器112とを主体として構成されている。
ベース盤107aは、例えば鉄などの磁性材料からなる。電磁石108及び電磁石109の磁極を時系列的に変化させることで、当該電磁石108と電磁石109との間を移動するようになっている。本実施形態では、光源部106の位置が固定されており、波長選択部107の位置が変動するように設けられている。このように、光源部106のうち光の射出する位置と波長選択部107の位置とが相対的に変動するようになっている。
【0036】
波長変換素子111は、第1実施形態と同様分極反転された領域と分極反転されない構成とが交互に配置されたストライプ状の構成を成している。波長変換素子111は、領域111a、領域111b及び領域111cの3つの領域を有している。各領域ではストライプの幅(レーザ光の光軸方向の寸法)が異なっている。ここでは、領域111a、領域111c、領域111bの順に幅が狭くなっている。共振器112は、波長変換素子111の領域111a〜領域111cにそれぞれ対応するように反射波長が異なる3つの共振器112a〜112cが配列されている。
【0037】
本実施形態では、波長選択部107が電磁石108側にある状態(状態3)と、波長選択部107が電磁石109側にある状態(状態4)とで、発光部106から射出されるレーザ光の入射位置が異なる。状態3では、レーザ光は波長変換素子111の領域a及び領域bに入射して波長変換される。波長変換の後、外部共振器112a、外部共振器112bにそれぞれ入射してレーザ光が増幅される。この光は光学素子110に入射し、光学素子110から光変調装置105に照射される。
【0038】
このように、本実施形態によれば、電磁石108及び電磁石109の磁極を時系列的に変化させることによって波長選択部107の位置を変動することとしたので、光源部106の位置(光の射出する位置)を固定することができる。これにより、レーザ光の光路を固定させることができ、光を安定して供給することができる。
【0039】
[第3実施形態]
次に、図5〜図7をもとにして本発明の第3実施形態を説明する。第1実施形態と同様、以下の図では、各部材を認識可能な大きさとするため、縮尺を適宜変更している。プロジェクタ201は、第1実施形態と同様、画像表示装置202と、投射レンズと、スクリーンとを主体として構成されている。図5では、投射レンズとスクリーンの図示は省略した。本実施形態では、プリズムが上下に移動する点で第1実施形態とは異なっている。以下、この点を中心に説明する。
【0040】
プリズム207は、制御部208によって発光素子206の光射出方向に上下に移動するようになっている。図5に実線で示した状態(状態5)と、図5に一点鎖線で示した状態(状態6)との、2つの状態をとるようになっている。
【0041】
状態5では、発光素子206から射出されたレーザ光がプリズム207の反射面207aによって反射され、波長変換素子210の領域A及び領域Cに入射する。領域A及び領域Cに入射したレーザ光は波長変換された後、外部共振器211に入射する。状態6では、発光素子206から射出されたレーザ光がプリズム207の反射面207aによって反射され、波長変換素子210の領域B及び領域Dに入射する。領域B及び領域Dに入射したレーザ光は波長変換された後、外部共振器211に入射する。
【0042】
この外部共振器211は、図6に示すように、例えば体積型ホログラムグレーティングで形成された波長選択型ミラーである。波長変換素子210の領域A〜領域Dから射出される各レーザ光の光路上に配列されている。第1実施形態と同様に、図中手前側に2つ、図中奥側に2つ配列されている。この共振器211の特性を図7に示した。図7は、発光素子206から発光されるレーザ光の発信波長と、共振器211の共振波長との関係を示している。同図によれば、領域A〜領域Dの共振波長は、領域C、領域B、領域A、領域Dの順に大きくなっていることがわかる。
【0043】
本実施形態によれば、プリズム207を発光素子206の光射出方向に上下に移動することとしたので、プリズム207を回転する場合に比べて移動の制御を容易に行うことができる。本実施形態では、レーザ光の発信周波数と状態5及び状態6の移動周期とを同期させるように制御しても構わない。
図7は光源206の発光特性を示す図である。横軸は発光周波数、縦軸は発光強度を示す。図からわかるとおり、AからDの範囲において強い発光強度を示していることがわかり、この範囲の周波数であれば、共振周波数A、B、C、Dに設定した異なった周波数でレーザ発光させることが可能である。例えばA、B、C、Dの発振周波数は、外部共振器のグレーティングピッチや、バンドパスフィルタの傾斜角度により変更することができる。なお、この発光特性については、本実施形態に限られるものではない。
【0044】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。本実施形態では、上述の各実施形態で説明した光源装置を応用した照明装置の一例について説明する。
図8は、本実施形態に係る照明装置300を示す概略構成図である。図8に示すように、照明装置300は、上述の各実施形態で説明した光源装置304を備えている。この光源装置304は、光源部306と、波長変換素子307と、外部共振器309と、拡散板310と、図示しない変動機構とを備えている。
【0045】
以上のように構成された照明装置300によれば、シンチレーションの発生を軽減することが可能な光源装置304を備えているので、照明装置300自体もシンチレーションの発生が軽減されるものとなる。
【0046】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態について説明する。本実施形態では、上述の各実施形態で説明した光源装置を搭載したモニタ装置の一例について説明する。
図9は、本実施形態に係るモニタ装置400を示す概略構成図である。
同図に示すように、モニタ装置400は、装置本体410と、光伝送部420とを主体として構成されている。
【0047】
装置本体410には、上述の各実施形態で説明した光源装置と同一構成の光源装置404と、カメラ411(センサ部)とが設けられている。光伝送部420には、多数本の光ファイバを束ねたライトガイド421、422と、拡散板423と、集光レンズ424とが設けられている。
【0048】
ライトガイド421は、光源装置404と拡散板423との間に設けられており、光源装置404からの光を拡散板423に伝送可能となっている。
ライトガイド422は、カメラ411と集光レンズ424との間に設けられており、集光レンズ424からの光をカメラ411に伝送可能となっている。
【0049】
拡散板423は、光伝送部420の先端部分のうちライトガイド421側に設けられており、光源装置404からのレーザ光を拡散して外部に射出するようになっている。
集光レンズ424は、光伝送部420の先端部分のうちライトガイド422側に設けられており、外部からの光をライトガイド422内に集光するようになっている。
【0050】
次に、外部の被写体を撮像する場合を例に挙げて、モニタ装置400の動作を説明する。
光伝送部420の先端部分を被写体に向けた状態で光源装置404を起動する。光源装置404から射出されたレーザ光は、ライトガイド421を介して拡散板423に伝送され、拡散板423により拡散されて外部に照射される。外部に照射されたレーザ光は被写体によって反射され、反射光が集光レンズ424に入射する。このレーザ光は集光レンズ424によって集光され、ライトガイド422を介してカメラ411に伝送される。このレーザ光がカメラ411によって撮像されることになる。
【0051】
このように、本実施形態によれば、干渉の位置を時間的にずらすことのできる光源装置404を備えているので、シンチレーションの発生を低減することが可能なモニタ装置400を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプロジェクタの全体構成を示す図。
【図2】波長選択素子の構成を示す図。
【図3】波長選択素子の構成を示す図。
【図4】本発明の第2実施形態に係るプロジェクタの一部の構成を示す図。
【図5】本発明の第3実施形態に係るプロジェクタの一部の構成を示す図。
【図6】共振器の構成を示す図。
【図7】光源の発光特性を示すグラフ。
【図8】本発明の第4実施形態に係る照明装置の構成を示す図。
【図9】本発明の第5実施形態に係るモニタ装置の構成を示す図。
【符号の説明】
【0053】
1…プロジェクタ 2…画像表示装置 3…投射レンズ 4…光源装置 5…光変調装置 6…発光素子 6a…支持部 7…プリズム 7a…反射面 8…制御部 9…光源部 10…波長変換素子 11…波長選択素子 12…波長選択部 13…赤外線反射ミラー 14…電気光学素子 107…波長選択部 107a…ベース盤 108、109…電磁石 112…共振器 300…照明装置 400…モニタ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を射出する光源部と、
前記光源部からの前記レーザ光のうち第1波長成分を選択し当該第1波長成分が共振するように前記光源部に向けて反射する第1波長選択部と、
前記光源部からの前記レーザ光のうち前記第1波長成分とは異なる第2波長成分を選択し当該第2波長成分が共振するように前記光源部に向けて反射する第2波長選択部と、
前記光源部からの前記レーザ光が前記第1波長選択部と前記第2波長選択部とのそれぞれに入射可能となるように、前記光源部から光が射出する位置と、前記第1波長選択部及び前記第2波長選択部の位置とを相対的に変動させる位置変動手段と
を具備することを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記位置変動手段が、前記光が射出する位置を変動させる
ことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記位置変動手段が、前記第1波長選択部及び前記第2波長選択部の位置を変動させる
ことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項4】
前記第1波長選択部が、前記レーザ光のうち前記第1波長成分に変換する第1波長変換素子を有しており、
前記第2波長選択部が、前記レーザ光のうち前記第2波長成分に変換する第2波長変換素子を有している
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項5】
前記レーザ光の射出のタイミングと前記位置変動手段による位置の変動のタイミングを制御する制御部を更に具備し、
前記制御部が、前記レーザ光の射出のタイミングと前記位置の変動のタイミングとを同期させるように制御する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のうちいずれか一項に記載の光源装置を備えたことを特徴とする照明装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のうちいずれか一項に記載の光源装置と、
前記光源装置から射出された光を伝送する光伝送部と、
前記光伝送部によって伝送された光によって対象物をセンシングするセンサ部と
を具備することを特徴とするモニタ装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項5のうちいずれか一項に記載の光源装置と、
前記光源装置から射出される光を変調する光変調手段と
を具備することを特徴とする画像表示装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項5のうちいずれか一項に記載の光源装置と、
前記光源装置から射出される光を変調する光変調手段と、
前記光変調手段によって変調された光を投射する投射レンズと
を具備することを特徴とするプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−175868(P2008−175868A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6869(P2007−6869)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】