説明

光源装置

【課題】大型化を抑制しつつ、電極の溶解を防止する光源装置を提供する。
【解決手段】放電ランプ11、及び、この放電ランプ11の放射光を反射する楕円反射鏡12を備えた光源装置1において、放電ランプ11の発光点を楕円反射鏡12の第一焦点F1に配置し、楕円反射鏡12の第二焦点F2に反射光を照射する照射面13Aを配置し、この照射面13Aと楕円反射鏡12との間にカラーフィルタ15を設け、このカラーフィルタ15を楕円反射鏡12の光軸Xに対して傾斜させる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタを備えた光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源装置において、放電ランプ、及び、この放電ランプの放射光を反射する楕円反射鏡を備え、放電ランプの電極を楕円反射鏡の第一焦点に配置するとともに、楕円反射鏡の第二焦点に反射光を照射する照射面を配置し、この照射面と楕円反射鏡との間にカラーフィルタを設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の光源装置では、カラーフィルタを透過しなかった光、すなわち、カラーフィルタで反射された光が電極に集光し、電極が溶解して変形するのを防止するべく、カラーフィルタの位置を所定の範囲で規定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−145580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の構成では、カラーフィルタを楕円反射鏡の近くに配置することとなるため、カラーフィルタを大きく形成しなければならず、結果として、光源装置が大型化してしまう。
そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、大型化を抑制しつつ、電極の変形を防止する光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、放電ランプ、及び、この放電ランプの放射光を反射する楕円反射鏡を備えた光源装置において、前記放電ランプの電極を前記楕円反射鏡の第一焦点に配置し、前記楕円反射鏡の第二焦点に反射光を照射する照射面を配置し、この照射面と前記楕円反射鏡との間にカラーフィルタを設け、このカラーフィルタを前記楕円反射鏡の光軸に対して傾斜させたことを特徴とする。
【0006】
上記構成において、前記カラーフィルタを傾斜させる角度は、約10°以上であってもよい。
上記構成において、前記カラーフィルタを傾斜させる角度は、約15°以下であってもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、カラーフィルタを光軸に対して傾斜させたため、カラーフィルタを光源に近づけることなく、カラーフィルタからの反射光を電極からそらすことができるので、大型化を抑制しつつ、電極の変形を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係る光源装置を示す概略構成図である。
【図2】放電ランプを拡大して示す図である。
【図3】カラーフィルタの距離Dを変化させて解析したときの前側の電極で受光した光量を示す図である。
【図4】光源装置の光線強度を示す図であり、(A)はカラーフィルタを配置しない場合の光線強度を示し、(B)は(A)を拡大して示す図であり、(C)はカラーフィルタを距離D15に配置した場合の光線強度を示す図であり、(D)は(C)を拡大して示す図である。
【図5】カラーフィルタを傾斜させた光源装置を示す概略構成図である。
【図6】カラーフィルタの傾斜角度θを0°から7°まで1°ずつ変化させて解析したときの電極近傍の光線強度を示す図である。
【図7】カラーフィルタの傾斜角度θを0°から7°まで1°ずつ変化させて解析したときの前側の電極で受光した光量を示す図であるである。
【図8】カラーフィルタの傾斜角度θを0°、5°、7°、9°と変化させて実験したときの電極の状態を、カラーフィルタを配置する前の状態とともに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る光源装置を示す概略構成図である。
光源装置1は、放電ランプ11と、放電ランプ11の放射光を反射する楕円反射鏡(反射鏡)12と、この楕円反射鏡12の反射光を照射する(照射面)ロッド端面13Aと楕円反射鏡12との間に配置された紫外線・赤外線(UVIR)カットフィルタ14と、UVIRカットフィルタ14とロッド端面13Aとの間に配置されたカラーフィルタ15とを備え、放電ランプ11及び楕円反射鏡12により光源装置1の光源10が構成されている。なお、楕円反射鏡12の光軸Xにおいて、ロッド端面13A側を前側、楕円反射鏡12側を後側とする。
【0010】
放電ランプ11は、楕円反射鏡12の第一焦点F1に配置されており、この放電ランプ11の放射光は楕円反射鏡12の第二焦点F2で集光し、この第二焦点F2に導光ロッド13のロッド端面13Aが配置されている。本実施の形態の第一焦点F1は、楕円反射鏡12の楕円放物面と光軸Xとが交わる基準点Oから距離DF1(例えば14.5mm)だけ離れた位置に設けられている。また、第二焦点F2は、基準点Oからは距離D13(例えば115.4mm)だけ離れた位置に設けられている。
導光ロッド13は、その中心軸を楕円反射鏡12の光軸Xと同軸に配されて、楕円反射鏡12が集光する光がロッド端面13Aから入射するように構成されている。UVIRカットフィルタ14は、紫外線及び赤外線を透過させないフィルタであり、基準点Oから距離D14(例えば80.4mm)だけ離れた位置に配置されている。カラーフィルタ15は、例えば、可視光以外の光を反射して可視光を透過させるフィルタであり、基準点Oから距離Dだけ離れた位置に配置されている。
【0011】
図2は、放電ランプ11を拡大して示す図である。
放電ランプ11は、水銀ランプやメタルハライドランプ等のショートアーク型のランプであり、石英ガラス管でなる発光管16を光軸Xと略同軸に備えている。発光管16の中間部には、発光管16を膨らませて形成した発光部16Aが設けられ、この発光部16A内には、一対の電極20A,20Bが比較的短いアーク長(電極間距離)Lで前後に対向するように配置されるとともに、水銀やハロゲン化金属(メタルハライド)等の発光物質と、アルゴンガス等の始動用希ガスとが封入されている。
各電極20A,20Bは、タングステン棒でなる芯棒21の先端側にタングステンワイヤで成るコイル22を巻装するとともに、芯棒21の先端に連続して芯棒21よりも大径に形成された電極先端部23を形成して構成されている。各電極20A,20Bは、芯棒21がモリブデン箔17を介して電力供給用のリード線18(図1)に接続されており、このリード線18からランプ電力が供給されるようになっている。電極20A,20Bは、アークを生じる電極先端部23間の発光点が楕円反射鏡12の第一焦点F1に位置するように配置されている。
【0012】
このように構成された光源装置1において、図1に示すように、放電ランプ11の放射光は、楕円反射鏡12で反射され、UVIRカットフィルタ14及びカラーフィルタ15を透過してロッド端面13Aに入射する。このとき、カラーフィルタ15で反射された光は、その一部が楕円反射鏡12内に入射し、楕円反射鏡12で反射されることにより、電極20A,20Bに集光するので、その熱によって電極20A,20Bが溶解して変形するおそれがある。電極20A,20Bが変形すると、アーク長Lやランプ電圧が変化するので、電極20A,20B間に生じるアークが不安定になり、例えば光源装置1をプロジェクタ等に用いた場合には、スクリーン状に映し出される映像にちらつきが生じやすくなる。電極20A,20Bに集光する光の量は、カラーフィルタ15の距離Dによって変動する。
【0013】
図3は、カラーフィルタ15の距離Dを変化させて解析したときの電極20Aで受光した光量を示す図である。この解析では、図2に示すコイル22を省略するとともに、図2に示すように、電極20Aの電極先端部23を後と前に半分に分けた半球に、光量を検出するセンサA,Bをそれぞれ設けており、図3には、センサAで受光した光量変化、センサBで受光した光量変化、及び、センサAで受光した光量とセンサBで受光した光量との和の光量変化が図示されている。
図3に示すように、電極20Aの後側に位置するセンサAで受光する光量の方が、電極20Aの前側に位置するセンサBで受光する光量より多くなっている。また、センサA,Bで受光する光量は、カラーフィルタ15の距離Dが長くなるほど多くなるとともに、カラーフィルタ15の距離Dがロッド端面13A(図1)の距離D13よりも短い位置でピークとなっている。より詳細には、カラーフィルタ15の距離Dが長くなるに従い、センサBで受光した光量がピークPBとなり、そして、センサAで受光した光量がピークPAとなる。センサA,Bで受光した総光量のピークPABは、ピークPB,PA間に位置している。
【0014】
したがって、カラーフィルタ15は、距離Dが短くなるように配置されるのが望ましいが、距離Dが短くなるほど、カラーフィルタ15を大きく形成する必要があるという課題がある。
そこで、カラーフィルタ15は、両センサA,Bで受光した光量がピークPA,PBとなる距離よりも短い距離D15(例えば105.4mm)の位置に配置されるのが望ましい。しかしながら、カラーフィルタ15を距離D15の位置に配置しても、電極20Aに集光する光の量は依然として多い。
【0015】
図4は、光源装置1の光線強度の解析結果を示す図であり、図4(A)はカラーフィルタ15を配置しない場合の光線強度を示し、図4(B)は図4(A)を拡大して示す図であり、図4(C)はカラーフィルタ15を距離D15(例えば105.4mm)に配置した場合の光線強度を示す図であり、図4(D)は図4(C)を拡大して示す図である。この解析では、図2に示すコイル22を省略するとともに、電極20Aの電極先端部23を透過物体としている。なお、図4では、光線強度の強い部分に符号Sを付し、光線強度の弱い部分に符号Wを付し、光線強度の中位部分に符号Mを付して光線強度を示す。
図4(A)及び図4(B)に示すように、カラーフィルタ15を配置しない場合、電極20A,20Bの芯棒21に光は集光していない。一方、図4(C)及び図4(D)に示すように、カラーフィルタ15を距離D15に配置した場合、カラーフィルタ15の反射光が電極20Aの芯棒21に集光しており、特に、先端側の芯棒21にカラーフィルタ15の反射光が集光している。
【0016】
そこで、本実施の形態では、図5に示すように、カラーフィルタ15を基準点Oから遠い位置に配置するとともに、カラーフィルタ15に入射する光の入射角αが90°より大きくなるように、カラーフィルタ15を光軸Xに対し傾斜角度(角度)θだけ傾斜させることで、カラーフィルタ15の大型化を抑制しつつ、カラーフィルタ15による反射光が電極20Aの芯棒21に集光するのを抑制している。電極20A,20Bに集光する光の量は、カラーフィルタ15の傾斜角度θによって変動する。
なお、本実施の形態では、カラーフィルタ15の距離Dは、第二焦点F2から、第一焦点F1と第二焦点F2の間の焦点間距離DF(D13−DF1)の約15%の範囲Rに設定される(D13−DF×15%≦D<D13)。
【0017】
図6は、カラーフィルタ15の傾斜角度θを0°から7°まで1°ずつ変化させて解析したときの電極20A,20B近傍の光線強度を示す図である。この解析では、図2に示すコイル22を省略するとともに、電極20Aの電極先端部23を透過物体としており、カラーフィルタ15を距離D15(105.4mm)、すなわち、第二焦点F2から焦点間距離DFの約10%の位置に配置している。なお、図6では、光線強度の強い部分に符号Sを付し、光線強度の弱い部分に符号Wを付し、光線強度の中位部分に符号Mを付して光線強度を示す。
図6に示すように、傾斜角度θが大きくなるほど、電極20Aの芯棒21に集光する光は弱くなる。より詳細には、傾斜角度θが大きくなるに従い、光線強度の強い部分S及び中位部分Mで形成される光源像が図中下方にずれて、光線強度の強い部分Sが電極20Aの芯棒21から離れている。
【0018】
図7は、カラーフィルタ15の傾斜角度θを0°から7°まで1°ずつ変化させて解析したときの電極20Aで受光した光量を示す図である。この解析では、図2に示すコイル22を省略するとともに、図2に示すように、光量を検出するセンサA,Bをそれぞれ設けており、図7には、センサAで受光した光量変化、センサBで受光した光量変化、及び、センサAで受光した光量とセンサBで受光した光量との和の光量変化が図示されている。
図7に示すように、電極20Aの光量は、カラーフィルタ15の傾斜角度θが大きくなるほど少なくなる。より詳細には、センサAで受光した光量は、傾斜角度θが0°から約1°までの範囲において略一定であり、傾斜角度θが約1°より大きくなるにつれて減少している。センサBで受光した光量は、傾斜角度θが0°から約2°までの範囲において一定であり、傾斜角度θが約2°より大きくなるにつれて減少している。したがって、センサA,Bで受光した光量の和は、傾斜角度θが約2°より大きくなるにつれて減少する。そして、傾斜角度θを10°まで大きくすると、電極20Aの光量は、カラーフィルタ15を配置しない場合の光量に近くなる。
【0019】
図8は、カラーフィルタ15の傾斜角度θを0°、5°、7°、9°と変化させて実験したときの電極20A,20Bの状態を、カラーフィルタ15を使用する前の状態とともに示す図である。この実験では、カラーフィルタ15を使用して2分間照射実験を行っており、図8には、傾斜角度θ毎に、カラーフィルタ15使用前後の電極20A,20Bの形状変化と、アーク長L変化と、ランプ電圧変化とが示されている。
図2及び図8に示すように、カラーフィルタ15の傾斜角度θが0°及び5°の場合、電極20Bの形状は変化していないが、電極20Aのコイル22が1巻分溶解して消失しており、また、電極20Aの電極先端部23が変形している。その結果、アーク長Lが長くなるとともに、ランプ電圧も上昇している。
カラーフィルタ15の傾斜角度θが7°の場合、電極20Bの形状は変化していないが、電極20Aのコイル22が半巻分溶解して消失しており、また、電極20Aの電極先端部23が変形している。その結果、アーク長Lが長くなるとともに、ランプ電圧も上昇している。
カラーフィルタ15の傾斜角度θを9°まで大きくすると、電極20A,20Bの形状は変化しておらず、アーク長Lにも変化はない。ランプ電圧は上昇しているが、その上昇量はわずかである。したがって、カラーフィルタ15の傾斜角度θは、9°より大きく設定されるのが望ましい。
【0020】
一方、カラーフィルタ15の傾斜角度θが大きくなるほど、カラーフィルタ15を透過する可視光の波長の範囲が変化してしまう。そこで、本実施の形態の傾斜角度θは、電極20A,20Bの形状が変化せず、アーク長Lやランプ電圧に変化が生じず、また、透過させる可視光の波長の範囲の変化量が比較的少ない値、例えば約10°以上かつ約15°以下の範囲に設定している。
このように、カラーフィルタ15を、楕円反射鏡12から遠い位置であって、電極20A,20Bに集光する光の少ない位置(範囲R)に配置するとともに、カラーフィルタ15の傾斜角度θを約10°以上かつ約15°以下に設定することで、カラーフィルタ15の大型化や、カラーフィルタ15を透過する可視光の波長のずれを抑制しつつ、電極20A,20Bの変形を防止できる。
【0021】
以上説明したように、本実施の形態によれば、放電ランプ11の電極20A,20Bを楕円反射鏡12の第一焦点F1に配置し、楕円反射鏡12の第二焦点F2に反射光を照射する照射面13Aを配置し、この照射面13Aと楕円反射鏡12との間にカラーフィルタ15を設け、このカラーフィルタ15を楕円反射鏡12の光軸Xに対して傾斜させる構成とした。この構成により、カラーフィルタ15を楕円反射鏡12に近づけることなく、カラーフィルタ15からの反射光を電極20A,20Bから遠ざけることができるので、カラーフィルタ15の大型化を抑制しつつ、電極20A,20Bの変形を防止できる。
【0022】
また、本実施の形態によれば、カラーフィルタ15を傾斜させる傾斜角度θは、約10°以上であるため、カラーフィルタ15からの反射光を電極20A,20Bからより効果的に遠ざけることができるので、電極20A,20Bの変形を確実に防止できる。
【0023】
また、本実施の形態によれば、カラーフィルタ15を傾斜させる傾斜角度θは、約15°以下であるため、カラーフィルタ15を透過する可視光の波長のずれを抑制しつつ、電極20A,20Bの変形を防止できる。
【0024】
但し、上記実施の形態は本発明の一態様であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能であるのは勿論である。
例えば、上記実施の形態では、カラーフィルタ15は、当該カラーフィルタ15に入射する光の入射角αが90°より大きくなるように、光軸Xに対し傾斜角度θだけ傾斜されていたが、カラーフィルタ15に入射する光の入射角αが90°より小さくなるように、光軸Xに対し傾斜角度θだけ傾斜されてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 光源装置
11 放電ランプ
12 楕円反射鏡
13 ロッド端面(照射面)
15 カラーフィルタ
20A,20B 電極
F1 第一焦点
F2 第二焦点
X 光軸
θ 傾斜角度(角度)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電ランプ、及び、この放電ランプの放射光を反射する楕円反射鏡を備えた光源装置において、
前記放電ランプの電極を前記楕円反射鏡の第一焦点に配置し、前記楕円反射鏡の第二焦点に反射光を照射する照射面を配置し、この照射面と前記楕円反射鏡との間にカラーフィルタを設け、このカラーフィルタを前記楕円反射鏡の光軸に対して傾斜させたことを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記カラーフィルタを傾斜させる角度は、約10°以上であることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記カラーフィルタを傾斜させる角度は、約15°以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−238442(P2011−238442A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108259(P2010−108259)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】