説明

光源装置

【課題】半導体レーザダイオードからなる励起光源と、その励起光を集光する光学系と、集光された励起光によって励起されて蛍光を励起光源とは反対側に放射する蛍光体と、該蛍光体が形成されたガラス基板とからなる光源装置において、カラーホイールを使用することなく、蛍光体の使用量を少なく抑えることができるとともに、蛍光体を効率よく冷却できて、回転機構などの複雑な装置を設けずに装置の小型化が図れる構造を提供することである。
【解決手段】前記ガラス基板に冷却機構が設けられ、該冷却機構には、前記蛍光体に対応する窓部が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクター等に利用される光源装置に関し、特に、青色レーザ光を励起光にして緑色の光に変換する蛍光体を用いた光源装置に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
液晶プロジェクター等の画像投影機に用いられる光源として、発光ダイオード(LED)を利用するものが知られている。しかし、光源にLEDを利用する場合は、画像を投射した場合の明るさが不足しているのが現状であり、全体としての光量アップが切望されていた。特に、緑色の光源の光量が不足していた。
このような事情を踏まえて、緑色の光の光量を改善するために、蛍光体を用いる技術が提案されている。例えば、特開2010−086815号公報(特許文献1)には、ガラス等から成る基板に蛍光体を塗布し、該蛍光体を励起する励起光源に青色光、または、紫外光を放射する発光ダイオードや半導体レーザを利用することが記載されている。
より具体的には、円盤状のガラス基板に緑色光の蛍光を発する蛍光体を塗布し、この円盤状ガラス基板(いわゆるカラーフィルター)を円周方向に回転できるような回転機構を持ち、励起光源として、青色光を放射する発光ダイオードを配置した光源装置が開示されている。
また、同公報には、励起光の入射方向と反対方向に蛍光を取出す透過型のみならず、同公報の図10に示されるように、蛍光体からの蛍光を反射させて励起光入射方向側に取り出す、いわゆる反射型の構造も開示されている。
【0003】
ところで、上記従来技術のようにカラーホイールを利用するものにあっては、カラーホイールに蛍光体を塗布し、青色光、または、紫外光を励起光として該蛍光体から、例えば、緑色を放射する場合、該カラーホイールの円周方向全体に渡って該蛍光体を配置する必要があり、発光に直接寄与する領域、即ち、励起光が照射される領域に比べて、塗布する蛍光体の領域が格段に広くなる。この蛍光体は非常に高価であって、その使用量を極力少なくしたいという要請に応えることができていない。
また、蛍光体は加熱されて温度が上昇すると発光効率が低下してしまうという問題点があり、これを解消するために、カラーホイールを回転させる必要があって、そのため、モーター等を含めた回転機構が必要となり装置構造が複雑かつ大型化するという問題があった。
【0004】
さらに、反射型構造においては、反射機能を持つ基板に蛍光体を塗布し、該基板に励起光を入射して蛍光体からの放射を利用する場合、該蛍光体から放射される蛍光と励起光を分離するダイクロイックミラーを配置する必要があるため構造が複雑になり、小型化できない、といった問題がある。
また、励起光入射方向と蛍光取り出し方向を同一軸上に配置することができない、等レイアウト上の自由度が低くなる、といった問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−86815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、半導体レーザダイオードからなる励起光源と、その励起光を集光する光学系と、集光された励起光によって励起されて蛍光を放射する蛍光体と、該蛍光体が形成されたガラス基板とからなる光源装置において、カラーホイールを使用することなく、蛍光体の使用量を少なく抑えることができるとともに、蛍光体を効率よく冷却できて、回転機構などの複雑な装置を設けずに装置の小型化が図れる構造を提供するものである。
また、透過型とすることにより、装置構造の複雑化を避け、レイアウトの自由度を確保できる構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明に係る光源装置は、前記ガラス基板に冷却機構が設けられ、該冷却機構には、前記蛍光体に対応する窓部が形成されていることを特徴とする。
また、前記蛍光体と励起光源との間には、励起光を透過し、蛍光を反射する蛍光反射膜が設けられていることを特徴とする。
また、前記冷却機構は、前記ガラス基板に当接されたヒートシンクであることを特徴とする。
また、前記ヒートシンクには、前記ガラス基板とは反対側に伸びる冷却フィンが設けられていることを特徴とする。
また、前記蛍光体は、ガラス基板の励起光入射側に設けられるとともに、前記ヒートシンクはガラス基板の励起光入射側に当接され、前記励起光は該ヒートシンクの窓部を通して蛍光体に入射するものであることを特徴とする。
また、前記蛍光体の励起光入射側に、励起光を透過し、蛍光を反射する蛍光反射膜が設けられていることを特徴とする。
また、前記蛍光体は、前記ヒートシンクの窓部内に形成されていることを特徴とする。
また、前記蛍光体の出射側には、発散する蛍光を集光するレンズが設けられていることを特徴とする。
また、前記ガラス基板が、集光レンズ機能を有するものであることを特徴とする。
また、前記蛍光体に対して複数の励起光源から励起光が入射されていることを特徴とする。
また、前記ガラス基板上には複数箇所に蛍光体が形成されるとともに、前記ヒートシンクには各蛍光体に対応する位置に複数の窓部が形成されており、前記蛍光体にはそれぞれ励起光源が対応配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の光源装置によれば、蛍光体を塗布した基板に冷却機構を具備していることにより、回転機構等の複雑な装置を設ける必要が無く、また、蛍光体を塗布した領域が即ち、蛍光発光領域となるので、該蛍光体の使用量を少なく出来ると共に、装置全体を小型化できる、といった効果がある。
更には、蛍光体と励起光源との間に、励起光を透過し、蛍光を反射する蛍光反射膜が設けられているので、励起光入射側に向かう蛍光を反射して前方に取出すので、効率良く蛍光を取り出せる、といった効果がある。
その上、蛍光体周辺に冷却機構が設けられているので、蛍光体を効率よく冷却してその発光効率の低下を抑制し、長寿命の光源を実現できる、といった効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の光源装置を示す断面図。
【図2】図1の部分拡大断面図。
【図3】本発明の他の実施例の部分断面図。
【図4】本発明の他の実施例の断面図。
【図5】本発明の他の実施例の断面図。
【図6】本発明の他の実施例の断面図。
【図7】本発明の他の実施例の断面図。
【図8】本発明の他の実施例の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1で全体が示され、図2で詳細が示されるように、本発明の光源装置は、基本的構造として、青色、または、UVの励起光を放射する半導体レーザダイオード(以下、LDという場合もある)からなる励起光源1と、該励起光源1からの励起光を集光する集光レンズからなる光学系2と、該集光された励起光が入射してこれにより励起されて緑色などの蛍光を放射する蛍光体3と、該蛍光体3が形成されたガラス基板4とからなる。
そして、前記ガラス基板4には、ヒートシンクからなる冷却機構5が設けられている。該ヒートシンク5は前記ガラス基板4の前面側、即ち、励起光入射側に当接されていて、その中央部には窓部6が形成されるとともに、その前面側には冷却フィン7が形成されている。
そして、図2にその詳細が示されるように、前記蛍光体3は、前記窓部6内に位置するようにガラス基板4上に塗布形成されている。
【0011】
上記構成において、半導体レーザダイオード1からの青色、またはUVの励起光は集光レンズ2によって集光されてヒートシンク5の窓部6を通り、蛍光体3に入射する。
励起光Aは蛍光体3によって緑色の蛍光Bに変換されて、ガラス基板4を通して前方に放射される。
なお、蛍光体3は、ガラス基板4に対して、励起光入射側に形成するものを示したが、ガラス基板4の反対側に形成してもよい。
また同様に、ヒートシンク5も、ガラス基板4の励起光入射側に当接するものを示したが、その反対側に当接させるものであってもよい。
つまり、これらの組み合わせが採用できるものである。
【0012】
ただ、上記組み合わせ構造のうち、以下の理由により、図1に示す配置、即ち、蛍光体3もヒートシンク5も共に励起光源1側に配置する構成が好ましい。
つまり、ガラス基板4の反対側にヒートシンク5を配置した場合には、放射される蛍光に対して邪魔になることがあり、その構造上の制約を受けるという不都合がある。
また、ヒートシンク5を励起光入射側に配置した場合、蛍光体3も同じ励起光入射側に配置することによって、蛍光体3はヒートシンク5による冷却効果を有効に受けることができるものである。
以上の理由から、図1に示す配置が好ましいものであるが、であるからといってその配置構成に限定されるわけではない。
【0013】
こうして蛍光体3からの蛍光Bは前方に放射されるが、同時にその一部は後方に、即ち、励起光入射側に向けても放射される。この蛍光を更に前方側に戻して有効利用するために、蛍光体3と励起光源1との間に、励起光を透過し、蛍光を反射する蛍光反射膜8を設ける構造が図3に示されている。
図3は、蛍光体3部分の拡大図であって、図3(A)で示すように、ガラス基板4上に形成された蛍光体3の上に、励起光を透過して、蛍光を反射する蛍光反射膜8が形成されている。
こうすることにより、蛍光体3で発生した蛍光のうち後方、即ち、励起光源側に向う一部の蛍光Cは、該蛍光反射膜8によって反射されて、ガラス基板4を通過して前方に放射され、その有効利用が図られる。
【0014】
また、前記蛍光体3と蛍光反射膜8の配置はこれに限られず、図3(B)に示すように、蛍光体3がガラス基板4の前方側、即ち励起光入射方向と反対側に形成され、蛍光反射膜8がガラス基板4の励起光入射側に形成されるものでもよい。この場合、蛍光体3から後方に向う一部の蛍光Cはガラス基板4を通過して反射膜8によって反射され、前方に放射される。
更には、図3(C)に示すように、ガラス基板4の前方側、即ち、励起光入射方向と反対側に蛍光反射膜8を形成し、その上に、蛍光体3を形成してもよい。この場合にも、蛍光体3からの一部の蛍光Cは反射膜8によって反射されて前方に放射される。
【0015】
ところで、蛍光体3からの蛍光は全方位に放射される発散光であるので、本発明の光源装置をプロジェクターなどの光学系に利用する場合、これを集光あるいは平行光にする必要がある。
図4にそのための実施例が示されていて、蛍光が放射されるガラス基板4の放射方向前方に集光レンズ9が設けられている。これによって、蛍光体3からの放射光は集光されて、この例では、平行光となって放射される。
【0016】
図5は、図4の例の変形実施例であって、図4の集光レンズ9の機能をガラス基板40に持たせたものである。蛍光体3はこのガラス基板上に形成されている。
該蛍光体3からの蛍光は、この集光レンズ機能付きガラス基板40によって集光されて放射される。
【0017】
また、輝度の高い光源とするために、図6に示すように、蛍光体に対して複数の励起光源を用いることもできる。
図6において、励起光源1として複数のLD11、12、13を備え、これらからの励起光は、コリメートレンズ15a、15b、15cを介して、集光レンズ2によって集光されて、ガラス基板4上の蛍光体3に入射する。
こうすることにより、より輝度の高い光源を得ることができる。
【0018】
また、面光源や複数光源を得るためには、図7に示すように、蛍光体3を複数備えて、そのそれぞれに励起光源1を対応配置することもできる。
図7において、ガラス基板4上には複数個所に蛍光体31、32、33、34が形成され、ヒートシンク5にはこれら蛍光体31〜34に対応して複数の窓部61、62、63、64が形成されている。そして、これら蛍光体3に対してそれぞれ励起光源11、12、13、14および集光レンズ21、22、23、24が対向配置されている。
そして、各励起光源1からの励起光はそれぞれ集光レンズ2を介してそれぞれ蛍光体3に入射され、ここで蛍光に変換されて前方に放射される。
これにより、面光源あるいは複数光源として利用することができる。
【0019】
また、上記図7の配置構成のものでは、図8に示すように、光源からの放射光を中央に集中して放射する構成とすることができる。
図8において、複数の蛍光体3(31〜34)は集中して隣接されるように形成されていて、ヒートシンク5の窓部6(61〜64)が中央部に集約して配置され、前記各蛍光体3は、レンズ機能を有するガラス基板40(41〜44)上にそれぞれ形成されている。
各励起光源1(11〜14)は、この蛍光体3(31〜34)に対して斜め方向から入射するように傾けて配置されている。
これによって、蛍光体3からの蛍光が集中して放射される小さな光源とすることができる。
【0020】
なお、蛍光体3が塗布形成されるガラス基板4として用いることのできる材料としては、励起光、及び、蛍光を透過できる材料(対象波長の光に対して透明な材料)であれば良いが、熱伝導率が高いものがより望ましい。具体的には、以下に示す材料が利用可能である。
材料名 熱伝導率(W/m/k)
サファイア結晶 25
結晶化ガラス 1.53
石英ガラス 1.38
ホウケイ酸ガラス 1.09
ソーダガラス 1
【0021】
また、励起光を透過し、蛍光を反射する蛍光反射膜の組成としては、
1.ユーロピウム付活のβ-サイアロン蛍光体:
組成 SrSiAlON:Eu
励起波長 300〜500nm
発光波長 540nm
2.セリウム付活のYAG蛍光体:
組成 (Y,Gd)(Al,Ga)12:Ce3+
励起波長 200、340、450nm付近
発光波長 530nm
などを使用できる。
【0022】
以上説明したように、本発明に係る光源装置は、励起光源と、その励起光を集光する光学系と、集光された励起光によって励起されて蛍光を励起光源とは反対側に放射する蛍光体と、該蛍光体が形成されたガラス基板とからなる光源装置において、前記ガラス基板に冷却機構が設けられ、該冷却機構に、前記蛍光体に対応する窓部を形成したことにより、蛍光体を効果的に冷却できて発光効率の低下を回避できるので、カラーホイールといった大型構造物を使用することなく、蛍光体の使用量を少なく抑えることができるとともに、回転機構などの複雑な装置を設けずに装置の小型化が図られるものである。
また、透過型であるので、装置構造の複雑化を避けて、レイアウトの自由度を確保できる。
【符号の説明】
【0023】
1 励起光源(半導体レーザダイオード)
2 集光工学系(集光レンズ)
3 蛍光体
4 ガラス基板
40 集光レンズ機能を有するガラス基板
5 冷却機構(ヒートシンク)
6 窓部
7 冷却フィン
8 蛍光反射膜
9 集光レンズ
A 励起光
B 蛍光




【特許請求の範囲】
【請求項1】
青色、または、UVの励起光を放射する半導体レーザダイオードからなる励起光源と、該励起光を集光する光学系と、集光された励起光によって励起されて蛍光を励起光源とは反対側に放射する蛍光体と、該蛍光体が形成されたガラス基板とからなる光源装置において、
前記ガラス基板には冷却機構が設けられ、該冷却機構には、前記蛍光体に対応する窓部が形成されていることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記蛍光体と励起光源との間には、励起光を透過し、蛍光を反射する蛍光反射膜が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記冷却機構は、前記ガラス基板に当接されたヒートシンクであることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項4】
前記ヒートシンクには、前記ガラス基板とは反対側に伸びる冷却フィンが設けられていることを特徴とする請求項3に記載の光源装置。
【請求項5】
前記蛍光体は、ガラス基板の励起光入射側に設けられるとともに、前記ヒートシンクはガラス基板の励起光入射側に当接され、前記励起光は該ヒートシンクの窓部を通して蛍光体に入射するものであることを特徴とする請求項3に記載の光源装置。
【請求項6】
前記蛍光体の励起光入射側に、励起光を透過し、蛍光を反射する蛍光反射膜が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の光源装置。
【請求項7】
前記蛍光体は、前記ヒートシンクの窓部内に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の光源装置。
【請求項8】
前記蛍光体の出射側には、発散する蛍光を集光するレンズが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項9】
前記ガラス基板が、集光レンズ機能を有するものであることを特徴とする請求項8に記載の光源装置。
【請求項10】
前記蛍光体に対して複数の励起光源から励起光が入射されていることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項11】
前記ガラス基板上には複数箇所に蛍光体が形成されるとともに、前記ヒートシンクには各蛍光体に対応する位置に複数の窓部が形成されており、前記蛍光体にはそれぞれ励起光源が対応配置されていることを特徴とする請求項3に記載の光源装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−169049(P2012−169049A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26674(P2011−26674)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】