説明

光記録媒体及び情報記録方法

【課題】少なくとも光重合性化合物及び光重合開始剤を含有する記録層を備えた光記録媒体のダイナミックレンジの浪費を抑えること
【解決手段】光重合性化合物、光重合開始剤、バインダー及びホストゲスト化合物を含有する記録層、或いは、さらに増感剤を含有する記録層を備え、前記光重合開始剤及び/又は増感剤がゲストとして前記ホストゲスト化合物に内包されている光記録媒体とする。そして、情報を記録しようとする部位に局部的な発熱を起こし、当該部位に存在するホストゲスト化合物に内包されていた光重合開始剤及び/又は増感剤を記録層内に露出させることで、目的とする記録エリアのみ記録可能な状態とする。その結果、ダイナミックレンジの浪費を抑えることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光記録媒体及び情報記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年における高速情報ネットワーク技術の進歩に伴い、高速大容量ストレージに対する社会的ニーズが益々高まっている。このような社会的ニーズに応えるための次世代ストレージの一つとして、ホログラムの原理を利用して記録・再生を行うホログラムメモリーが注目されている。ホロクラムメモリーは、情報を2値化した画像のホログラムを多重記録するという原理に基づいており、三次元的な記録による大容量化、及び2次元ページ単位での情報の入出力による高速データ転送を可能にする。
【0003】
図6は、ホログラムの原理を利用した記録再生装置1の一例を示している。この記録再生装置1で情報を記録する場合、まずレーザー光源10から記録再生用のレーザー光(例えば、波長400〜410nm、532nm)を出力し、偏光ビームスプリッタ11によって信号用と参照用のレーザー光に分光する。信号用のレーザー光は、2枚のレンズを含むビームエキスパンダ12によって拡大され、空間光変調器13に照射される。そして信号用のレーザー光は、エンコーダ14で符号化された記録情報に従って光変調され、情報信号成分を含んだ信号光となる。次いで、信号光は、対物レンズとしてのフーリエ変換レンズ15によって情報信号成分がフーリエ変換され、光記録媒体2の記録層21(不図示)に集光される。一方で、偏光ビームスプリッタ11で分光された参照用のレーザー光(参照光)は、反射ミラー16で反射され、ガルバノスキャナーのミラー17,レンズ18,19によって光記録媒体2への入射角度が調整されて照射される。このようにして信号光と参照光を干渉させることにより、情報を干渉縞として記録層21に記録する。
【0004】
記録した情報を再生する場合には、例えば光路遮断機(不図示)を用いて信号光を遮断し、再生する情報を記録したときの入射角度で参照光のみを照射することによって再生波を発生させる。そして、この再生波を逆フーリエ変換レンズ3で逆フーリエ変換することによって情報信号成分が再現される。再現された情報信号成分は、撮像手段であるセンサー(例えば、CMOSなど)31で受光して電気信号に変換し、これをデコーダ32で復号することによって情報を再生する。
【0005】
また、レーザー光源4は、光ピックアップ(特に、対物レンズ)のサーボ制御(トラッキングサーボ、フォーカスサーボ)を行うためのレーザー光として、記録再生用の波長とは異なる波長のレーザー光を出力するためのレーザー光源(例えば、赤色レーザー)である。レーザー光源4から出力されたレーザー光は、ダイクロイックミラー41によって記録用のレーザー光と共軸にされて光記録媒体2に照射され、透過光をセンサー31で検出し、その検出結果に従ってサーボ制御を行う構成である。
【0006】
上述のような、ホログラム方式の記録再生に適用される光記録媒体2としては、図7に模式的に示すように、記録材料である光重合性モノマー及び光重合開始剤、並びにバインダーポリマーを含有する記録層を備えた光記録媒体が知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる光記録媒体は、光重合開始剤が吸収特性を有する波長のレーザー光を照射することによって重合性モノマーの重合反応を起しめて情報を記録する。
【0007】
しかしながら、従来の光記録媒体の場合、記録材料が感度を有する光を照射すると、露光されたすべての部位で反応が進行してしまい、記録層のダイナミックレンジが浪費されるという問題があった。ダイナミックレンジの浪費は、結果として光記録媒体の記録容量を低下させてしまう。
【0008】
ダイナミックレンジが浪費される主要因としては、下記の2つの要因が考えられる。すなわち、一つ目の要因としては、空間光変調器13を構成する各ピクセルが微小開口として作用することによって高次成分の光が発生し、図8に模式的に示すように、信号光が記録層21に照射された際に記録スポット以外の場所(点線枠の部分)にも光が照射されてしまうことが挙げられる。この現象は、図6に示したような信号光と参照光を別々に入射させる二光束干渉方式の場合のみならず、信号光と参照光を同軸に重ねあわせて入射させるコリニア方式の場合も同様に発生する。
【0009】
また、2つ目の要因としては、信号光と参照光が交差するように照射する角度多重方式の場合は、図9に模式的に示すように、信号光が集光される記録スポットの周辺部分(点線枠の部分)にも参照光が照射されてしまうことが挙げられる。この要因によるダイナミックレンジの浪費は、参照光の入射角度が大きくなればなるほど顕著となる。
【0010】
【特許文献1】特開2005−3790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題には、上述した問題が一例として挙げられる。そこで、本発明の目的としては、少なくとも光重合性化合物及び光重合開始剤を含有する記録層を備えた光記録媒体のダイナミックレンジの浪費を抑えることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の光記録媒体は、請求項1に記載の通り、光重合性化合物、光重合開始剤、バインダー及びホストゲスト化合物を含有する記録層、或いは、さらに増感剤を含有する記録層を備えた光記録媒体であって、前記光重合開始剤及び/又は増感剤がゲストとして前記ホストゲスト化合物に内包されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の情報記録方法は、請求項8に記載の通り、光重合性化合物、光重合開始剤、バインダー及びホストゲスト化合物を含有する記録層、或いは、さらに増感剤を含有する記録層を備え、前記光重合開始剤及び/又は増感剤がゲストとして前記ホストゲスト化合物に内包されている光記録媒体に情報を記録する方法であって、前記記録層の情報を記録しようとする部位に局部的な発熱を起こし、当該部位に存在するホストゲスト化合物に内包されていた光重合開始剤及び/又は増感剤を記録層内に露出させることにより記録可能な状態とする工程と、光重合開始剤及び/又は増感剤が反応する波長領域の記録光を照射し、前記光重合性化合物の重合反応を起しめて情報を記録する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の光記録媒体に従う好ましい実施形態について、添付図面を参照しながら詳しく説明する。但し、本発明の技術的範囲は、以下に説明する実施形態によって何ら限定解釈されることはない。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る光記録媒体2の記録層21を模式的に示したものである。図1に示すように、光記録媒体2の記録層21は、光重合性化合物としての光重合性モノマーと、光重合反応を開始させるための光重合開始剤と、バインダーとしてのバインダーポリマーを含有している。注目すべきは、前記記録層21は、化学的に連結されたホストゲスト化合物(例えば、後述する中空の球状錯体)と光熱変換物質(例えば、後述する金ナノロッド)をさらに含有し、光重合開始剤がゲストとしてホストゲスト化合物に内包されていることである。
【0016】
ホストゲスト化合物としては、内包している光重合開始剤が熱劣化する温度よりも低い温度で当該光重合開始剤を露出させることのできる化合物を選択する。光重合開始剤を露出させるとは、ホストゲスト化合物の全部又は一部が熱破壊することによって光重合開始剤を記録層中に露出させる場合や、熱をエネルギーにして内包している光重合開始剤を放出することによって露出させる場合も含む。また、光重合開始剤の熱劣化とは、光重合開始剤が熱破壊してしまう場合や、光重合反応を起しめる機能が低下してしまう場合も含む。
【0017】
前述のようなホストゲスト化合物としては、中空の球状錯体が好ましい一例として挙げられる。このような中空の球状錯体としては、例えば国際公開2007/102501号公報(公知文献1)や,特許第3892796号公報(公知文献2)などに開示されているような、中空の殻構造を形成している球状遷移金属錯体が挙げられる。かかる球状遷移金属錯体(C)は、n個(nは、例えば6,12,24,30,60、好ましくは12)の遷移金属(M)と、2n個の二座有機配位子(L)が配位結合を駆動力に自己組織化して形成された錯体であり、限定はされないが直径が約4〜14nmの中空の殻構造を形成している。従って、光重合開始剤をゲストとして内包することができ、その殻構造によって殻構造内部と殻構造外部の環境を物理的及び化学的に分離し光重合開始剤がバインダーモノマーに作用することを規制することができる。光重合開始剤は、自己組織化によって殻構造を形成した後に殻の開口部を介して内部に導入してもよく、あるいは公知文献1で参照されるように光重合開始剤が化学的に結合した二座有機配位子(L)を調製し、自己組織化によって内面に配向させるようにしてもよい。このような球状遷移金属錯体(C)は、公知文献1,2に参照されるように、遷移金属(M)と二座有機配位子(L)を溶媒中で加熱することによって容易に、また比較的低温(例えば100℃以下)で製造される。換言すると、当該球状遷移金属錯体(C)は、低温加熱で殻構造を破壊することができ、これにより後述するような新規な記録再生方式を好適に実現することが可能である。但し、本実施形態においては、ホストゲスト化合物が球状錯体に制限されることはなく、ミセルやシクロデキストリンなどの公知のホストゲスト化合物のいずれをも使用することができる。
【0018】
前記光熱変換物質とは、公知の如く、その物質の種類に応じた特定波長の光を照射すると、吸収した光を主として熱に変換して放出する物質である。このような光熱変換物質としては、赤色から赤外領域に吸収特性を有する物質が好ましく、近赤外領域に強いプラズモン吸収を有する金ナノロッド及び/又は金微粒子(好ましくは金ナノ粒子)がさらに好ましい一例として挙げられる。但し、本実施形態で使用する光熱変換物質は、光熱変換機能を有していればよく、金ナノロッド及び/又は金微粒子に制限されることはない。その他の光熱変換物質としては、カーボンブラック、グラファイト粉、鉄、アルミニウム、銅、銀、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、亜鉛等、又はこれらの化合物からなる微粒子(好ましくはナノ粒子)及び/又はナノロッドが一例として挙げられる。
【0019】
ホストゲスト化合物及び光熱変換物質は、各々が独立して記録層中に分散されていてもよいが、光熱変換により発生した熱を効率良くホストゲスト化合物に伝達するために、両者を化学結合(すなわち、連結基)によって連結することが好ましい。図2には、電極−分子結合の一つである金−硫黄結合(化学式:Au−Sで表すことができる)を利用して、球状錯体と金ナノロッドを連結した一例を模式的に示している。金−硫黄結合は、例えばチオール反応を利用して形成することができる。また、化学式:−(CH)n−で示されるアルキレン基は、例えば連結基の長さを調節するための付加要素であり、省略してもよく、あるいは他の公知の連結基であってもよい。
【0020】
なお、本実施形態においては、前述の構成を有していれば光重合性モノマー、光重合開始剤及びバインダーモノマーについては特に制限されることはなく、従来において公知の材料のいずれをも使用することができる。一例を挙げておくと、光重合性モノマーとしては、例えばエポキシ基、オキセタン基、ビニルエーテル基、アルケニルエーテル基、アレンエーテル基、ケテンアセタール基の中から選ばれる少なくとも一種以上のカチオン重合可能な反応基を有する化合物を挙げることができる。カチオン重合に限らず、ラジカル重合やアニオン重合が可能な反応基を有する化合物あってもよい。ラジカル重合開始剤の一例は、特開2006−113164号公報に記載されている。アニオン重合開始剤の一例は、特開2002−297006号公報に記載されている。また、光重合開始剤(例えば、カチオン重合開始剤)としては、赤色よりも短い波長領域に吸収特性を有するものが好ましい。光重合開始剤の一例としては、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩などが挙げられる。さらにまた、バインダーとしては、透明又は半透明で一般に無色な天然ポリマー,合成ポリマー,コポリマーを用いることができ、その他、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース系樹脂、オレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリサルフォン、ポリカプロラクトン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ゴム系樹脂等、あるいは、これらの共重合樹脂のバインダー樹脂が一例として挙げられる。
【0021】
続いて、上述の光記録媒体に情報を記録する手順について、図3を参照しながら説明する。情報記録方式としては、ホログラムの原理を利用した記録方式が一例として挙げられる。さらに記録を行う装置として、図6に示したような記録再生装置が一例として挙げられるが、これに限定されることはない。
【0022】
先ず、図3(a)に模式的に示すように、光熱変換物質が吸収特性を有するレーザー光(以下、「第1レーザー光」と称す)を、目的とする記録エリア(すなわち、記録しようとする部位)22に向けて照射することにより、この部位22に存在する光熱変換物質に熱を発生させ、これにより記録しようとする部位22に局部的な内部発熱を起しめる。このとき、第1レーザー光の入射角度が、記録層21の入射面に対して鉛直となるように照射するのが好ましい。さらに、第1レーザー光は、光熱変換物質が吸収特性を有する波長領域を含み、且つ、記録用レーザー光(例えば、400〜410nm、532nm)の波長領域とは異なる波長領域であることが好ましい。このような第1レーザー光としては、赤色領域から赤外領域のレーザー光が一例として挙げられ、例えば光熱変換物質が金ナノロッドの場合は、近赤外領域(750〜1100nm)において強いプラズモン吸収を有するので、近赤外光を照射するようにする。
【0023】
前記第1レーザー光のレーザー光源としては、図6に示したようなサーボ用のレーザー光源を共用することができる。このようにすれば、光学系の構成を複雑化することなく第1レーザー光を照射可能となる利点がある。
【0024】
上記のようにして局部的な熱を発生させることによって、図3(b)に模式的に示すように、記録しようとする部位22に存在する球状錯体が熱によって破壊される。特に、光熱変換物質と球状錯体が化学結合によって連結されている場合には、この化学結合を通じて球状錯体への熱伝達を確実に行なうことができる。
【0025】
上記のようにして球状錯体が破壊されることによって、図3(c)に模式的に示すように、球状錯体に内包されていた光重合開始剤が記録しようとする部位22内に露出する。すなわち、光重合開始剤が露出することによって、目的の記録エリアのみ記録可能な状態となる。従って、図3(d)に模式的に示すように、従来方法と同様にして記録用のレーザー光(すなわち、信号光と参照光)を照射すれば、露出した光重合開始剤が反応して光重合性モノマーの重合反応が進行し、情報が記録されることとなる。
【0026】
以上のように、本実施形態の光記録媒体は、ホストゲスト化合物の一例である球状錯体に光重合開始剤を内包させて記録層に分散させたことにより、光重合開始剤がバインダーモノマーと物理的及び化学的に分離されているため、球状錯体が破壊されるまでは記録(すなわち、重合反応)を行なうことができない。そして、記録層21に分散させている光熱変換物質の光熱変換を利用して目的の記録エリア(22)に発熱を起こし、球状錯体を破壊して光重合開始剤を露出させることにより、目的の記録エリアのみ記録可能な状態を形成することができる。従って、従来と同様に記録光を照射して周辺部分が記録光に曝されたとしても、図4及び図5に示すように、目的の記録エリア(22)でのみ重合反応を進行させることができ、その周辺部分で重合反応が進行するのを防止することができる。その結果、記録層のダイナミックレンジを浪費することが抑えられ、記録容量の大容量化を図ることが可能となる。
【0027】
さらに、本実施形態によれば、光重合開始剤が球状錯体に内包されているので、外部からの化学成分が光重合開始剤に作用することも規制することができる。従って、例えば酸素等の化学成分によって光重合開始剤が劣化することが少なく、光重合開始剤の劣化に起因する記録機能の低下を抑えることができる。すなわち、本実施形態の光記録媒体は、従来の光記録媒体に比して保存安定性が良いという利点がある。
【0028】
さらに、詳しくは既述したように、球状錯体をホストゲスト化合物に用いたことにより、比較的低温において破壊することができるので、光熱変換物質が発する熱によっても容易に破壊して光重合開始剤を露出させることができる。さらに、高温を必要としない分において、内包している光重合開始剤のみならず光重合性モノマー及びバインダーモノマーについても熱による悪影響が少ない。特に、これまでに球状錯体と金ナノロッドがホログラム方式の記録材料に利用された例はなく、これらを組み合わせることによって記録材料への無駄な露光を回避し、従来よりも大容量のホログラムメモリーを作製することが可能となる本実施形態は、次世代ストレージとしてのホログラムメモリー技術に多大な貢献をすることができると言える。
【0029】
(第2実施形態)
続いて第2実施形態に係る光記録媒体について説明する。本実施形態の光記録媒体は、図示は省略するが、記録層にさらに増感剤を含有しており、光重合開始剤に代えて、あるいは光重合開始剤と共に増感剤がホストゲスト化合物に内包された構成である。このような構成としたことを除けば、第1実施形態と同様の構成及び記録再生の手順を採用することができる。そして、第1実施形態と同様の作用・効果を得ることができ、さらに増感剤を含有することによって光の吸収領域を任意に変えることが可能となる。
【0030】
なお、増感剤は特に制限されることはなく、公知のものを使用することができる。一例を挙げておくと、例えば、シアニン、メロシアニン、スピロ化合物、フェロセン、フルオレン、フルギド、イミダゾール、ペリレン、フェナジン、フェノチアジン、ポリエン、アゾ化合物、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、ポリメチンアクリジン、クマリン、クマリン誘導体、ケトクマリン、キナクリドン、インジゴ、スチリル、ピリリウム化合物、ピロメテン化合物、ピラゾロトリアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、バルビツール酸誘導体、チオバルビツール酸誘導体等、ケトアルコールボレート錯体などの増感色素が挙げられる。
【0031】
また、上述の第1及び第2実施形態では、光熱変換物質を利用した内部発熱によってホストゲスト化合物を破壊しているが、光熱変換物質を省略し、外部から熱(例えば、熱線)を照射してホストゲスト化合物を破壊することにより光重合開始剤及び/又は増感剤を露出させるか、あるいは熱をエネルギーにして光重合開始剤及び/又は増感剤を放出することにより露出させるようにしてもよい。
【0032】
以上のように、本発明に係る光記録媒体及び光記録方法によれば、少なくとも光重合性化合物及び光重合開始剤を含有する記録層を備えた光記録媒体のダイナミックレンジの浪費を抑えることができる。その結果、光記録媒体の大容量化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態に従う光記録媒体の記録層を模式的に示した図である。
【図2】上記記録層に含有される球状錯体と金ナノロッドを模式的に示す図である。
【図3】上記記録層に情報を記録する手順を示す図である。
【図4】上記手順で記録した際の作用を説明するための図である。
【図5】上記手順で記録した際の作用を説明するための図である。
【図6】ホログラム方式の記録再生装置の概略構成を示す図である。
【図7】従来の光記録媒体の記録層を模式的に示した図である。
【図8】ダイナミックレンジが浪費される理由を説明するための図である。
【図9】ダイナミックレンジが浪費される理由を説明するための図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合性化合物、光重合開始剤、バインダー及びホストゲスト化合物を含有する記録層、或いは、さらに増感剤を含有する記録層を備えた光記録媒体であって、
前記光重合開始剤及び/又は増感剤がゲストとして前記ホストゲスト化合物に内包されていることを特徴とする光記録媒体。
【請求項2】
前記ホストゲスト化合物は、中空の球状錯体であることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項3】
前記球状錯体は、前記光重合開始剤及び/又は増感剤が熱劣化する温度よりも低い温度で破壊する球状錯体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光記録媒体。
【請求項4】
前記記録層は、光を吸収して前記ホストゲスト化合物に内包されている前記光重合開始剤及び/又は増感剤を露出させるための熱を発する光熱変換物質をさらに含有しており、
前記光熱変換物質は、光重合開始剤及び/又は増感剤が反応する波長領域とは異なる波長領域に吸収特性を有する物質であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光記録媒体。
【請求項5】
前記光熱変換物質は、金ナノロッド及び/又は金微粒子であることを特徴とする請求項4に記載の光記録媒体。
【請求項6】
前記光熱変換物質は、化学結合によって前記球状錯体と連結されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の光記録媒体。
【請求項7】
前記光熱変換物質は、赤色から赤外領域に吸収特性を有する物質であり、前記光重合開始剤及び増感剤は、赤色よりも短い波長領域に吸収特性を有する物質であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の光記録媒体。
【請求項8】
光重合性化合物、光重合開始剤、バインダー及びホストゲスト化合物を含有する記録層、或いは、さらに増感剤を含有する記録層を備え、前記光重合開始剤及び/又は増感剤がゲストとして前記ホストゲスト化合物に内包されている光記録媒体に情報を記録する方法であって、
前記記録層の情報を記録しようとする部位に局部的な発熱を起こし、当該部位に存在するホストゲスト化合物に内包されていた光重合開始剤及び/又は増感剤を記録層内に露出させることにより記録可能な状態とする工程と、
光重合開始剤及び/又は増感剤が反応する波長領域の記録光を照射し、前記光重合性化合物の重合反応を起しめて情報を記録する工程と、を含むことを特徴とする情報記録方法。
【請求項9】
前記ホストゲスト化合物は、中空の球状錯体であることを特徴とする請求項8に記載の情報記録媒体。
【請求項10】
前記記録光は情報を持ったレーザー光と参照用レーザー光を含み、これらレーザー光を干渉させることによって情報をホログラムとして記録することを特徴とする請求項8又は9に記載の情報記録方法。
【請求項11】
前記記録層は、光重合開始剤及び増感剤が反応する波長領域とは異なる波長領域に吸収特性を有する光熱変換物質をさらに含有しており、情報を記録しようとする部位に前記光熱変換物質が吸収する波長領域の光を照射して局部的な内部発熱を起こすことを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の情報記録方法。
【請求項12】
前記光熱変換物質は金ナノロッド及び/又は金微粒子であり、近赤外領域の光を照射することによるプラズモン吸収によって局部的な内部発熱を起こすことを特徴とする請求項11に記載の情報記録方法。
【請求項13】
前記光熱変換物質は前記球状錯体と化学結合によって連結されており、この化学結合を通じて光熱変換物質から球状錯体への熱伝導を促進させることを特徴とする請求項11又は12に記載の情報記録方法。
【請求項14】
前記記録可能な状態とする工程は、記録しようとする部位に外部から熱を照射して当該部位に存在するホストゲスト化合物に内包されていた光重合開始剤及び/又は増感剤を記録層内に露出させる工程を含むことを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の情報記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−20260(P2010−20260A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183258(P2008−183258)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】