説明

光走査装置および画像形成装置

【課題】標準仕様から仕様変更された場合の部品変更に際して新たに装置の製造を行うことなく、共通するハウジングを用いることでコスト上昇を招くことなく新たな仕様に対応できる構成を備えた光走査装置を提供する。
【解決手段】光源部81から偏向手段85及び偏向手段85から走査レンズ86に至る第1光学系に用いられる光源部81及びカップリングレンズ82は、シングルビームからマルチビームに仕様変更されるのに対応すべく、光源101が設けられる取り付け部102は、これを複数装填可能なスペースが確保されているハウジング800に取り付けられ、ハウジング800側には、カップリングレンズの接着固定部が光源から被走査面への光路上に2カ所以上設けられ、選択された接着固定部に対して光軸のばらつきを抑えるように位置調整した後に前記カップリングレンズが接着剤により固定されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置および画像形成装置に関し、さらに詳しくは、仕様変更への対応を可能にする部品設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いたプリンタ、ファクシミリ、複写装置さらにはプロッタなどの各種画像形成装置においては、感光体ドラムなどの潜像担持体の移動過程において均一帯電、光書き込みによる静電潜像形成、トナーを用いた可視像処理、可視像を記録紙等に転写する転写処理および転写された可視像の定着処理を経て出力画像が得られる。
【0003】
静電潜像形成に用いられる装置の一つとして、回転可能な偏向走査手段としての回転多面鏡が知られている。
回転多面鏡は、感光体ドラムの主走査方向に沿って光ビームを走査する光走査装置に用いられる。
【0004】
光走査装置の構成としては、半導体レーザ等の光源と偏向走査手段である回転多面鏡との間の光路中に設けられたカップリングレンズ、アパーチャそしてシリンドリカルレンズと、回転多面鏡と被走査面である感光体ドラムとの間に設けられたfθレンズおよび面倒れ補正レンズを含む走査レンズ群と、走査レンズと感光体ドラムとの間に設けられたミラーを備えた構成が知られている。
【0005】
ところで、近年では、プリント速度の高速化が望まれてきており、このための対策として、標準仕様に基づき設けられている回転多面鏡の回転数を変更することや、光源に用いられる半導体レーザを複数化してマルチビームを用いることなどが検討されている。
【0006】
標準仕様からの変更時には、標準仕様とは別に複数の半導体レーザや回転数を変更した仕様の回転多面鏡を組み込んだ光学ユニットを準備しておいたり、あるいは新規設計によって仕様変更に応じた光走査装置を準備しておき、仕様変更に順じて画像形成装置への組み込み内容を選択できるようにしている。
【0007】
しかし、新規な設計によって構成した光走査装置を用いたり、光学ユニットを新たに製造することは、設計コストを始め、製造に用いられる金型などの変更や新規制作による製造コストの上昇を招く虞がある。
そこで、回転多面鏡の速度を変更する場合を対象として、次の構成が提案されている。
つまり、標準仕様を前提として回転多面鏡を取り付けた駆動回路基板をダミーの基板に取り替え、駆動回路基板を光学ハウジングとは別の位置に設けるようにした構成である(例えば特許文献1)。
【0008】
上記特許文献1に開示された構成では、回転多面鏡の高速回転時に発生する熱が駆動回路基板、およびこれに設けられている素子に対して悪影響を及ぼすのを防ぐために、光学ハウジングに予め準備されている基板取り付け位置を利用することにより標準仕様を前提として用いられる光学ハウジングをそのまま適用できる点が特徴となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に開示されているように、1ビームによる走査を高速化するために、偏向器を高速回転可能なタイプに変更すると、高速回転可能な偏向器はそれ自体のコストが高く、また、高速回転に伴う風切り音等の騒音を低減する防音手段が必要になるため、光走査装置の大幅なコスト高を招く。
【0010】
本発明の目的は、上記従来の光走査装置における問題に鑑み、標準仕様から仕様変更された場合の部品変更に際して新たに装置の製造を行うことなく、共通するハウジングを用いて新たな仕様に対応できる構成を備えた光走査装置および画像形成装置を提供することにある。特に、コスト上昇を招くことなく新たな仕様に対応できる光走査装置および画像形成装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するため、本発明は、光源と、光源からの光ビームを偏向する偏向手段と、光源からの光ビームを偏向手段に導くカップリングレンズを含む第1光学系と、偏向手段により偏向された光束を所望の形状に結像させる光学素子と、前記光源および前記偏向手段そして前記光学素子を保持するハウジングとを備えた光走査装置において、
前記光源は、取り付け部材に設けられ、
前記取り付け部材は、これを複数装填可能なスペースが確保されているハウジングに取り付けられ、
前記カップリングレンズは、前記ハウジング側に設けられている接着固定部に対して接着により固定され、
前記カップリングレンズを接着固定する接着固定部は、前記光源から被走査面への光路上に2カ所以上設けられ、選択された接着固定部に対して光軸のばらつきを抑えるように位置調整した後に前記カップリングレンズが接着剤により固定されることを特徴とする光走査装置にある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、標準仕様から仕様変更に応じて光源およびカップリングレンズの数量変更を行うことでハウジング自体への仕様変更を行わないで済ませることができる。特に、光源の数量変更に応じてカップリングレンズの配置構造を選択でき、しかも、ビーム数が増えた場合でもカップリングレンズ接着固定部の位置調整が可能であることから、カップリングレンズの焦点距離を変更できることにより光量を最適化してハウジング側での仕様変更を行うことなく仕様変更に拘わらず共通化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態にかかる光走査装置を用いる画像形成装置の構成を説明するための図である。
【図2】一実施形態にかかる光走査装置の構成を説明するための図である。
【図3】図2に示した光走査装置の要部構成を示す斜視図である。
【図4】図3に示した光走査装置における光源取り付け部の構成を説明するための図である。
【図5】図3に示した光走査装置におけるカップリングレンズの接着固定部の構成を説明するための図である。
【図6】図4に示した光源取り付け部の詳細構成を説明するための図である。
【図7】図6に示した光源取り付け部に光源を取り付けた状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明実施例による光走査装置が適用される画像形成装置を示しており、同図に示した画像形成装置は、複数の色画像を形成する作像部がベルトの展張方向に沿って並置されたタンデム方式を用いるカラープリンタあるが、本発明はこの方式に限ることはなく、またプリンタだけではなく複写機やファクシミリ装置などを対象とすることも可能である。
【0015】
図1において画像形成装置100は、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な像担持体としての感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkを並設したタンデム構造が採用されている。
【0016】
図1に示す構成の画像形成装置100は、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに形成された可視像が、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに対峙しながら矢印A1方向に移動可能な無端ベルトが用いられる中間転写体(以下、転写ベルトという)11に対して1次転写行程を実行してそれぞれの画像が重畳転写され、その後、記録シートなどが用いられる転写紙Sに対して2次転写行程を実行することで一括転写されるようになっている。
【0017】
各感光体ドラムの周囲には、感光体ドラムの回転に従い画像形成処理するための装置が配置されており、いま、ブラック画像形成を行う感光体ドラム20Bkを対象として説明すると、感光体ドラム20Bkの回転方向に沿って画像形成処理を行う帯電装置30Bk,現像装置40Bk、1次転写ローラ12Bkおよびクリーニング装置50Bkが配置されている。帯電後に行われる書き込みは、後述するように、光走査装置8が用いられる。
【0018】
転写ベルト11に対する重畳転写は、転写ベルト11がA1方向に移動する過程において、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに形成された可視像が、転写ベルト11の同じ位置に重ねて転写されるよう、転写ベルト11を挟んで各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに対向して配設された1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkによる電圧印加によって、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
【0019】
各感光体ドラム感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkは、A1方向の上流側からこの順で並んでいる。各感光体ドラム感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkは、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの画像をそれぞれ形成するための画像ステーションに備えられている。
【0020】
画像形成装置100は、各色の画像形成処理を行う4つの画像ステーションと、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkの上方に対向して配設され、転写ベルト11及び1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkを備えた転写ベルトユニット10と、転写ベルト11に対向して配設され転写ベルト11に従動し、連れ回りする転写部材としての転写ローラである2次転写ローラ5と、転写ベルト11に対向して配設され転写ベルト11上をクリーニングする中間転写ベルトクリーニング装置13と、これら4つの画像ステーションの下方に対向して配設された光書き込み装置としての光走査装置8とを有している。
【0021】
図2および図3は、光走査装置8の構成を説明するための図である。
光走査装置8は、装置本体の不動部に設置されるハウジング800を備えており、ハウジング800内には、レーザ光を出射する光源である半導体レーザ101(以下、便宜上LDを称する場合もある)を備えた光源部81,発散光状態で出射されるレーザ光を平行光に変換するカップリングレンズ82,図示しないが平行光を所望の形状に成形するためのアパーチャ、アパーチャにより成形されたレーザ光を線状(ビーム状)に集光するシリンドリカルレンズ83,正多角形の側面に反射面を有し高速回転によりレーザ光を偏向・走査する偏向手段として用いられるポリゴンスキャナ85の設置部を密閉する防音ガラス84(図3参照),fθ補正機能と面倒れ補正機能を併せ持つ走査レンズ86,感光体ドラム20(Y,C,M,Bk)へとレーザ光を導く反射ミラー87,87’(a,b,c,d)、ハウジング800の上段部および下段部を密閉する上段蓋801,下段蓋801’のうちで上段蓋801に設けられてハウジング800内への塵などの侵入を防止する防塵ガラス88(a,b,c,d)がそれぞれ設けられている。なお、図2において符号L1〜L4は、感光体ドラム20(Y,C,M.Bk)への光路を示している。
上述した光源からポリゴンスキャナへとレーザ光を導くカップリングレンズおよびシリンドリカルレンズ83は第1光学系を構成する部材として用いられている。
【0022】
図4は、図2に示した光源部81の詳細構造を示す図であり、同図において光源部81は、光源として用いられる半導体レーザ101の装填部と装填された半導体レーザ101を装填位置で押圧する取り付け部材102が装備されている。
光源部81では、標準仕様でのシングルビームから仕様変更によりマルチビーム化することに対応できるように、複数の半導体レーザ101を装填できるスペースが確保されており、各装填位置では、光出射口を兼ねた半導体レーザ101の位置決め孔が設けられている。位置決め孔は、半導体レーザ101の回転を許容できるように半導体レーザ101の外径よりも少し大きく形成されている。
【0023】
シングルビームあるいはマルチビームのいずれにおいても、半導体レーザ101の回転方向位置が決められると、取り付け部材102をネジ103によりケーシング800に締結することで半導体レーザ101がハウジング800側に押し付けられた状態で固定される。
【0024】
図5は、第1光学系に含まれるカップリングレンズ82の設置構造を説明するための図である。
カップリングレンズ82の位置は、半導体レーザ101からの光軸のばらつきを調整することで設置位置が決まる。このため、光軸のばらつき度合いによって予め決められた位置にカップリングレンズ82を設けられないことがあるので、調整後の位置に接着剤を用いて固定することになる。接着剤には紫外線硬化樹脂が用いられ、位置調整後の決定位置にカップリングレンズ82を置いた状態で紫外線を照射して硬化させる。
【0025】
図5に示すカップリングレンズ82の設置構造においては、ハウジング800側の接着固定座面802に対してカップリングレンズ82の位置を調整して光軸のばらつきを抑える必要があるため、紫外線硬化型の接着剤を用いて接着固定座面802に対してカップリングレンズ82の位置を変化させて調整した後に固定する構成が用いられる。このため、ハウジング800側の接着固定座面802の円弧径は、ここに塗布される接着剤の層厚分だけカップリングレンズ82の外径よりも大きくされている。この場合、当然のことではあるが、接着固定座面802の円弧中心は、カップリングレンズ82の光軸中心と一致させてあるので、接着剤上に搭載されたカップリングレンズ82の光軸中心が理想の光軸位置から外れることがないようにされる。
【0026】
一方、接着固定座面802は、光軸方向(図中、符号Lで示す線)に沿って異なる位置に2カ所設けられている。
これは、焦点距離の異なるカップリングレンズを設置するのを考慮したものである。
つまり、焦点距離の異なるカップリングレンズ82を選択できるようにする目的は、カップリングレンズ82の焦点距離により光利用効率を変更することにある。例えば焦点距離を伸ばすと、半導体レーザ101(図3参照)からの光束のうちカップリングレンズ82を透過する光の割合が、焦点距離が短い場合に比べると少なく、光利用効率が低下する。
光利用効率を選択する目的としては、光走査装置に要求される光量によるものである。
【0027】
光走査装置はポリゴンスキャナ85を用いているため、回転数に限界がある。
例えば、標準仕様から仕様の変更が選択された場合のような、1ビームで対応できる生産性以上のものが要求される場合には、ポリゴンスキャナ85の面数を増やすかビーム数を増やすことが考えられる。ビーム数を増やす場合は、対応できる生産性が拡大し、1ビーム時よりも低い回転数で対応できるが、1ビーム当たりに要求される光量は小さくなる。
【0028】
半導体レーザ101は、光量の低い状態ではLD発光せずLED発光となり、LED発光の場合は被走査面上では所望のビーム形状が得られなくなる。
ビーム数を増やした場合1ビーム当たりに要求される光量は小さくなるので、確実なLD発光状態を得るためには効率を落として1ビーム時と同等なLD発光光量を得る必要がある。
光利用効率を落とす方法は、光路上にある素子の透過率や反射率を落とすことで実現できるが、効率を変更するための表面処理を変更するとコストアップする要因となり、ハウジング共通化によるコストダウン効果は得られない。
【0029】
一方、カップリングレンズ82の焦点距離の変更は、表面処理などを変更する必要なく光量を変更することが可能なため、ハウジングや、その他の部品は共通のまま、光源とカップリングレンズを変更するだけで幅広い要求仕様に対応することができる。図5に示した構成は、上述した理由により光軸に沿って複数箇所に接着固定座面802が設けられている。
【0030】
またカップリングレンズ82の接着固定座面は、光軸方向に沿って設けられている位置での形態が異ならせてあり、その形態の一つとして、円弧径が2箇所で異なる円弧径とされ、また形態の他の一つである光軸方向に沿った長さも異ならせてある。
これは、カップリングレンズ82の焦点距離によるもので、カップリングレンズ82を透過した後の光軸移動量は、同じ移動量を得ようとすると、焦点距離が長い方がカップリングレンズを多く移動させる必要がある。このことは光軸方向も同様である。
このような理由から、カップリングレンズ82の調整は、レンズ透過後の光線移動量を確保する必要があるため、焦点距離の長いカップリングレンズの接着固定座面の円弧径は、焦点距離の短いカップリングレンズ接着固定座面の円弧径よりも大きく、光軸方向も同様に焦点距離の長い方が座面の長さも、光源に近い側よりも遠い側の方を長く確保している。
【0031】
上述した説明は、ビーム数を増やし、ポリゴンスキャナ85の回転数を落として生産性向上に対応するものであるが、解像度変更の場合も同様である。
つまり、1ビームで600dpiの解像度を有している光走査装置で、ビーム数を2に増やし、ビーム間のピッチを半分にし、ポリゴンスキャナ85の回転数をそのままとすると1200dpiへと変更することが可能である。
この場合も、1ビーム当たりの光量の要求仕様は変更になるが、カップリングレンズ82にて効率を落とすことで他の光学素子を変更することなく解像度変更に対応することが可能である。
【0032】
以上のように、カップリングレンズ82の設置構造において、マルチビーム化した場合においても、第1光学系において光軸方向に沿って設けられたカップリングレンズ82の接着固定座面802の形態を異ならせることにより、レンズ透過後の光線移動量が確保されることになる。
これにより、ポリゴンスキャナ85をはじめとする既製部品の利用が可能となり、仕様変更に拘わらず、ハウジングを含めて多くの部品の共通使用が可能となる。この結果、仕様変更に伴う新たなポリゴンスキャナをはじめとしたハウジングの製造を要することがないので、コスト上昇を抑制することが可能となる。
【0033】
図6、図7は、光源として用いられる半導体レーザ81(以下、便宜上、光源部81と称する場合もある)が取り付けられる光源部81の構成を示す図である。
光源部81に設けられている取り付け部は、光軸と垂直方向で半導体レーザ101の装填位置決めを行う位置決め部81Aと、光軸方向(矢印Lで示す光軸の延長方向)で半導体レーザ101の光出射側の端面を突き当て可能な突き当て面81Bとを備えている。
【0034】
取り付け部における位置決め部81Aは、円弧状断面形状、つまり、光軸方向一方側から見た形状が円弧形状とされ、光軸と垂直方向での半導体レーザ101の外径よりも大きくされている。これにより、半導体レーザ101は、位置決め部81A内で回転することができ、ビーム数に応じたビームピッチを調整して位置決めすることができる。
【0035】
位置決め部81Aは、ハウジング800の表面から突出した周壁であり、これのハウジング側底部には、半導体レーザ101からの光出射口内周面と位置決め部81Aの内周面との寸法差によって得られる平坦面が形成されており、この平坦面が半導体レーザ101の光出射側端面を突き当て可能な突き当て面81Bとして用いられる。
突き当て面81Bに光出射側端面を突き当てられた半導体レーザ101は、図7に示すように、取り付け部材102がネジ103によりケーシング800に締結固定されると、光出射側と反対側に位置する押圧部101Aが取り付け部材102により突き当て面側に向けて押圧されて固定される。
【0036】
上述した位置決め部81Aには、半導体レーザ101の光出射側と反対側において光軸方向に沿って延長された壁部からなるガイド部81A1が設けられている。ガイド部81A1は、位置決め部81Aの周方向で円弧状断面の中心を挟んで対向する位置の2カ所に設けられてリブ状を呈する部分である。
ガイド部81A1の先端部内周面端部は面取りが行われており、半導体レーザ101の装填作業の際にガイドできるようにして挿入しやすくしている。なお、ガイド部81A1の設置数は、位置決め部81Aの周方向で少なくとも2カ所であればよく、ガイドする際の容易性などを考慮してその設置数を決めることが可能である。なお、図6において符号803は、取り付け部材102を締結するネジ止め部を示している。
【0037】
以上のような構成においては、標準仕様としてシングルビームを用いる光走査装置を対象として、マルチビーム化する際には、光源の数に応じたカップリングレンズ82の数が変更される。
カップリングレンズ82は、ハウジング800において光軸方向に沿って設けられている接着固定座面802のいずれかが選択され、選択された接着固定座面802において光軸調整が行われた後、紫外線照射による接着剤の効果が行われることによりハウジング800に接着固定される。
【0038】
光源部81では、半導体レーザ101を取り付け部に装填する際に、半導体レーザ101が位置決め部81Aのガイド部81A1により突き当て面81Bに向けてガイドされて挿入され、位置決め部81Aの内周面に半導体レーザ101の外周面が対向する。
位置決め部81Aに装填された半導体レーザ101は、自身の外径寸法よりも位置決め部81Aのサイズが大きいことによるギャップを利用して回転させることによりビームピッチが決められ、この後、取り付け部材102がハウジング800に締結されると、ハウジング800に締結固定される。
【0039】
以上の構成においては、仕様変更によるビーム数の変更に際して、光源数の変更に併せて設けられるカップリングレンズの焦点距離を変更することで光量の最適化が可能となる。これにより、仕様が異なる場合においても、光学ハウジングを共通利用できるようにして改めてハウジングを制作する場合と違ってコストダウンを図ることができる。
【0040】
ところで、上述した構成は光源部81からポリゴンスキャナ85に至る第1光学系を対象としているが、図1、2に示した画像形成装置においては、ポリゴンスキャナ85から出射された光ビームは、感光体ドラム20に至る部分で走査レンズ及び折り返しミラーにより折り曲げられて感光体ドラム20に達する。
【0041】
そこで、図3に示した構成のハウジング800、つまり、光源部81から走査レンズ86までを含むハウジング800を第1のハウジングとし、走査レンズ以降の光路に配置されている折り返しミラーを搭載したハウジングを第2のハウジングとして準備し、第2のハウジングに第1のハウジングを搭載することで感光体ドラム20に向けて走査光を導く第2の光走査装置とする。
【0042】
このような構成においては、仕様変更に応じて第1のハウジング側での光源部81、カップリングレンズ82の接着固定座面802をそれぞれ選択することにより仕様変更が可能となるので、ハウジング800,これに装備されるポリゴンスキャナ85に加えて、第2のハウジングも変更することなく共通使用することが可能となり、光走査装置での共通部品の拡大が図れる。
【0043】
ところで、上記構成は、リサイクルの際の部品調達においても有利となる。
つまり、上述した構成においては、共通部品を多く使用しながら、部品の変更がなるべく少ない変更量により仕様変更に対応する構成としている。
一方、仕様変更とは別に、リサイクル処理の場合には、回収されてくる画像形成装置は選ぶことができず、出荷可能なリサイクル機は回収される装置と同じ生産性仕様のものに限られてしまう。つまり、回収された装置の仕様がそのまま出荷される装置の仕様となる。
【0044】
しかし市場から要求されるリサイクル機は、回収されて出荷可能となるリサイクル機と同仕様とは限らず、市場要求と在庫のアンマッチが生じてしまう。
そこで上述した実施例のように、生産性仕様を変更できる構成とすることで、寿命部品である光源の交換時に光源仕様を変更することができ、要求される生産性仕様に対応することが可能である。
これにより、市場要求に応じたリサイクル機の出荷体制を取ることが可能となる。
【符号の説明】
【0045】
20 感光体ドラム
81 光源部
81A 位置決め部
81A1 ガイド部
81B 突き当て面
82 カップリングレンズ
100 画像形成装置
101 半導体レーザ
800 ハウジング
802 接着固定座面
【先行技術文献】
【特許文献】
【0046】
【特許文献1】特開2006−326901号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、光源からの光ビームを偏向する偏向手段と、光源からの光ビームを偏向手段に導くカップリングレンズを含む第1光学系と、偏向手段により偏向された光束を所望の形状に結像させる光学素子と、前記光源および前記偏向手段そして前記光学素子を保持するハウジングとを備えた光走査装置において、
前記光源は、取り付け部材に設けられ、
前記取り付け部材は、これを複数装填可能なスペースが確保されているハウジングに取り付けられ、
前記カップリングレンズは、前記ハウジング側に設けられている接着固定部に対して接着により固定され、
前記カップリングレンズを接着固定する接着固定部は、前記光源から被走査面への光路上に2カ所以上設けられ、選択された接着固定部に対して光軸のばらつきを抑えるように位置調整した後に前記カップリングレンズが接着剤により固定されることを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記接着固定部は、断面形状を円弧形状とされ、各位置での円弧半径が異ならせてあることを特徴とする請求項1記載の光走査装置。
【請求項3】
前記接着固定部は、前記カップリングレンズの光軸に沿った光軸方向の長さにおいて、各位置での光軸方向に沿った長さが、前記光源に近い側よりも遠い側のものが長く設定されていることを特徴とする請求項1または2記載の光走査装置。
【請求項4】
前記ハウジングにおける前記光源が装填される光源の取り付け部は、光軸と垂直方向での位置決め部が円弧断面形状とされ、該円弧断面形状は、前記光軸と垂直方向での前記光源外径よりも大きくされていることを特徴とする請求項1記載の光走査装置。
【請求項5】
前記光源の取り付け部には、該光源の光軸方向での突き当て面を備え、前記光源は、該突き当て面に光出射側の面を突き当てた状態で前記取り付け部材により該突き当て面に向け押圧されて固定されることを特徴とする請求項1または4記載の光走査装置。
【請求項6】
前記光源の取り付け部には、前記円弧断面形状の周方向に、前記光源の光出射側と反対側で光軸方向に延長されたガイド部が設けられ、前記光源は、前記取り付け部材により押圧される部分の側方を位置決め部に位置させて前記光軸と垂直方向の位置決めされることを特徴とする請求項1,4,5のうちの一つに記載の光走査装置。
【請求項7】
前記取り付け部に設けられているガイド部は、前記円弧状断面形状の周方向において、少なくとも円弧中心を挟んで対向する2カ所に設けられていることを特徴とする請求項6記載の光走査装置。
【請求項8】
潜像担持体に対して光り書き込みにより形成された静電潜像を可視像処理した画像を記録媒体に転写することで複写出力を得る画像形成装置であって、前記光書き込みのための光走査装置として、請求項1乃至7のうちの一つに記載の光走査装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
前記光走査装置は、前記潜像担持体への走査光を反射させて導光する長尺ミラーを保持する第2のハウジングに対して締結固定されて一体化されて用いられることを特徴とする請求項8記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−109312(P2013−109312A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−124216(P2012−124216)
【出願日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】