説明

光走査装置

【課題】カバーを備える場合において、付着物がカバーに付着したときの検出性能を確保するとともに、装置の大型化およびコストを抑制する光走査装置を提供する。
【解決手段】本光走査装置は、所定の回転軸を中心として回転しながら所定の検出範囲に対して投光した光を受光することにより、この検出範囲にある物体を検出する。本光走査装置は、投光された光および受光される光が透過するカバー19と、投光用ミラー4の所定の回転軸を回転させる回転機構と、回転機構を駆動するモータ14と、所定の回転軸の回転位置を検出する回転位置検出センサ30と、回転位置検出センサ30による検出結果および受光器18の受光による検出結果に基づいた演算により、検出物体の検出を行う制御装置100と、回転機構と連動してカバー19を回転させる回転伝達機構と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の検出範囲に光を走査し、物体からの反射光を受光した結果に基づいて物体の検出を行う光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光走査装置には、光学系の構成部品に汚れが付着することを防止するために、光が走査される経路に当該構成部品を保護するカバーが設けられている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このカバーに雨、泥、塵埃等の付着物が付着すると、付着物で覆われた領域の物体を検出できないという問題がある。
【0003】
また、この問題を解決しようとする光走査装置の従来例としては、例えば、特許文献2に記載のものがある。特許文献2に記載の光走査装置は、装置内部の光の透過面等に向けてエアを吹き出すエア吹出し部を備えている。そして、このエア吹出し部から当該透過面等に向けてエアを吹き出すことにより、透過面等に対する塵埃や水滴の付着を除去し、透過面等の汚れに起因する検出精度の低下を防止する。
【特許文献1】実開平5−23175号公報
【特許文献2】特開2005−44229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献2に記載の光走査装置では、透過面等に付着する塵埃等の付着を除去するためにエアポンプ等の送風手段が必要となるので、そのコスト面の負担が大きいという問題がある。また、既存の装置に新たに送風手段を追加する必要があるため、装置の体格が大きくなるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、カバーを備える場合の検出性能を確保するとともに、装置の大型化およびコストを抑制する光走査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の光走査装置の発明は、所定の回転軸を中心として回転しながら所定の検出範囲に対して光を投光し、反射してきた光を受光することにより、所定の検出範囲に位置する物体を検出する光走査装置に係る発明であって、所定の回転軸からの指向性を有して所定の検出範囲に光を投光する投光手段と、投光手段から投光された後、所定の検出範囲に位置する検出物体からの反射光を受光する受光手段と、投光手段から投光された光および受光手段に受光される光が透過するカバーと、所定の回転軸を回転させる回転機構と、回転機構を駆動する駆動手段と、所定の回転軸の回転位置を検出する回転位置検出手段と、回転位置検出手段による検出結果および受光手段の受光による検出結果に基づいた演算により、検出物体の検出を行う物体検出回路と、回転機構と連動する伝達機構を有してカバーを回転させる回転伝達機構と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、所定の検出範囲に向けて投光および受光を行いながら、光が透過するカバーを回転させることができる。この構成により、投光および受光を行いながら、カバーに付着した水滴等の付着物を遠心力によって除去することができる。この付着物除去に関わる構成要素は、回転機構と連動する回転伝達機構であるため、設置スペースが小さく、安価で簡単な構成の部品で提供することができる。したがって、付着物に対する検出性能を確保するとともに、装置の大型化およびコストを抑制する光走査装置が得られる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明においてさらに、カバーの外表面に接触した状態で配置され、カバーが回転されるときにカバー外表面を拭き取るカバー拭き取り手段を備えることを特徴とする。この発明によれば、所定の回転軸に連動して回転するカバーを拭き取るカバー拭き取り手段により、所定の検出範囲に向けて投光を行いながらカバーを回転させて付着物を遠心力によって飛ばすとともに、さらにカバー表面が拭き取られることになる。したがって、二つの手段で付着物を除去することができ、付着物の除去頻度をさらに高め、検出性能の確保が図れる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、所定の回転軸が一回転するときに要する回転周期と、カバーが一回転するときに要するカバー回転周期とは異なる周期であることを特徴とする。この発明によれば、所定の回転軸とカバーとの回転周期が異なることにより、投光された光が透過するカバーの部位と受光される光が透過するカバーの部位とが、所定の回転軸が一回転する毎にずれるようになる。このずれにより、仮に付着物の除去ミスがあった場合でも、一回転毎に光の透過部位からカバーの付着物がずれるようになるため、所定の検出範囲に位置する物体の検出確度を向上することができる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、所定の回転軸が一回転するときに要する回転周期は、カバーが一回転するときに要するカバー回転周期よりも長いことを特徴とする。この発明によれば、投光手段を構成する部分の回転速度よりもカバーの回転速度が速くなるので、遠心力がより大きくなり、カバーの付着物をより除去しやすくなる。また、カバー拭き取り手段を備えている場合には、投光手段を構成する部分が一回転する間にカバーは一回転以上回転するため、カバー拭き取り手段による付着物の拭き取り回数を増加させ、付着物の除去頻度をさらに高めることができる。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発明において、物体検出回路は、カバーが一回転する毎に上記検出結果を取得するように構成され、複数回に亘って取得された検出結果に基づいて演算を行うことを特徴とする。この発明によれば、複数回に亘る検出結果に基づいた演算によって物体の検出を行うことにより、カバーを一回転させることによってカバーに付着した付着物を完全に除去できていない場合であっても、複数の検出結果を取得する間に当該付着物が除去される可能性が高くなる。したがって、所定の検出範囲に位置する物体の検出確度を向上することができる。
【0012】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明の光走査装置を具現化した第1実施形態を図1〜図4を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る光走査装置1の構成を概略的に説明する概略図である。図2は、図1のII−II切断面を矢印方向に見た図である。図3は、光走査装置1の各部の関係を簡易的に示した構成図である。本実施形態の光走査装置1は、屋外に設置されて周囲環境を検出するレーザーレーダーであって、例えば、前方追尾レーダー等の車載用レーザーレーダー、ロボットや電動車椅子用等の障害物検出用装置、住宅用等のセキュリティ用装置に適用することができる。
【0014】
図1に示すように、光走査装置1は、カバー19および制御回路収納部40,41で囲まれる空間に、投光手段と、受光手段と、投光手段の構成部品を回転させる回転機構と、回転機構を駆動する駆動手段と、この回転における回転位置を検出する回転位置検出手段と、検出結果に基づいて演算し物体を検出する物体検出手段と、回転機構と連動してカバー19を回転させる回転伝達機構と、を配置して組み立て、ユニット化した装置である。
【0015】
カバー19は、光走査装置1の外郭部材の一部であり、略円筒状体の胴部に相当する。制御回路収納部40,41は、光走査装置1の外郭部材の一部である底板部および天板部に相当し、内部には投光用回路102と受光用回路103が収納されている。カバー19および制御回路収納部40,41が一体に組み合わされて光走査装置1の外郭部材となっている。
【0016】
カバー19は、略筒状体の上部および下部に、それぞれ高さ方向の所定の幅を有した投光用窓部および受光用窓部を備えている。投光用窓部、受光用窓部のそれぞれは、筒状体の全周に亘って設けられている。投光用窓部は、投光手段によって所定の角度範囲で投光されて所定の検出範囲に向かう光が透過する部分である。受光用窓部は、投光された光が所定の検出範囲に存在する物体で反射し、この反射光が受光手段に受光される途中に透過する部分である。
【0017】
投光用窓部および受光用窓部は、使用される光が透過可能な材質、または透明材料にて形成される。さらに、使用される光の波長のみを透過する材質の方が、太陽光等の外乱光の入射を防ぐことができるため、望ましい。投光用窓部および受光用窓部は、カバー19の主材料とは別の透明部材を継ぎ目なく嵌合したり、カバー19全体を透明材料で形成したりするなどの方法によって形成される。カバー19全体を透明材料で形成した場合には、必要に応じて投光用窓部および受光用窓部に対応する領域以外を遮光するようにしてもよい。
【0018】
投光手段は、検出光L1を発する光源と、光源からの検出光L1を検出対象とする所定の検出範囲に向けて反射する投光用ミラー4と、を備えている。光源は、レーザーダイオード等の投光器2と、投光器2からの光を集光し、所定の強度分布と広がり角度に調整する投光用レンズ3とによって構成される。投光用ミラー4は光源と対向して配置されており、所定の回転軸Xを中心として回転するようになっている。所定の回転軸Xは、投光用ミラー4に一体に構成される軸部材8の中心軸である。光源から出射された検出光L1は、所定の回転軸Xの延長上にあり、所定の回転軸Xの方向を入射方向として投光用ミラー4に入射する。
【0019】
投光用ミラー4は、検出光L1を所定の回転軸Xと直交する方向に反射する角度(例えば、所定の回転軸Xと反射面とのなす角度が45度)に配された鏡面を備えている。投光手段は、回転する投光用ミラー4による反射によって、所定の回転軸Xからの指向性を有し、所定の検出範囲に光を投光できることになる。
【0020】
回転機構は、投光用ミラー4が固定されている支持部材5に連結された軸部材8と、軸部材8を中心にして回転する第1の外歯車11と、軸部材8を回転可能に支持する一対の軸受部材7,9と、第1の外歯車11と所定のギア比で互いに噛み合うように配置される第2の外歯車12と、第2の外歯車12の中心軸として連結される軸部材13と、によって構成されている。モータ14は軸部材13を回転軸とする駆動手段である。モータ14が駆動されると、軸部材13の回転に伴い第2の外歯車が回転し、第2の外歯車の回転により、第1の外歯車11が連動して回転するので、軸部材8が第1の外歯車11と一体に回転するようになる。軸受部材7,9は、例えばボール軸受、滑り軸受または流体動圧軸受で構成する。
【0021】
このように回転機構は、駆動手段の駆動力によって、所定の回転軸Xを中心として軸部材8を回転させるように機能するため、所定の検出範囲に向かう検出光L2の光軸は検出光L1の光軸に対して直交する方向になる。そして、検出光L2は、検出光L2の外部への放射を許容する放射可能角度範囲に基づいて、所定の回転軸X上にある投光用ミラー4の反射点を中心として所定の角度範囲に亘って放射されるため、所定の検出範囲を形成するようになる。この検出光L2の放射可能角度範囲は、軸部材8が回転する動作と、投光器2の発光動作時間あるいは検出光L2の外部への放射を遮蔽する遮蔽部を設置する範囲とによって、設定することができる。
【0022】
回転位置検出手段は軸部材8の回転位置(軸部材8が自転によって周方向に移動した結果の位置または回転角度)、すなわち、所定の回転軸Xの回転位置を検出する手段であり、エンコーダ等の回転位置検出センサ30で構成される。回転位置検出センサ30は、例えば、ロータリエンコーダを備える装置であり、所定の回転軸Xを中心として回転する円板を有し、この円板の外周部に沿って所定間隔で設けられたスリットを検出することにより、回転位置を検出するものである。図3に示すように、検出された回転位置の結果は、物体検出回路105に送られて内蔵されるプログラムにより演算され、検出物体の存在する方向が検出される。
【0023】
受光手段は、投光手段に対して反対側の下方に設けられる手段であって、検出光L2が検出物体60で反射して戻ってくる検出光L3を集光するとともに、集光された光を所定の回転軸Xの方向に反射する機能を有する凹面鏡の受光用ミラー17と、受光用ミラー17に対向して配置され反射された検出光L4を受光するフォトダイオード等の受光器18と、を備えている。受光用ミラー17は支持部材16に固定されており、光の反射点が所定の回転軸X上に存在するように配置されている。支持部材16は軸部材8に連結されているため、受光用ミラー17は軸部材8がモータ14の駆動力により回転することにより、投光用ミラー4とともに同軸上に同速度で回転する。
【0024】
また、受光用ミラー17が有する集光機能と反射機能は、別体で構成してもよい。この場合には、受光手段は、検出光L2が検出物体60で反射して戻ってくる検出光L3を集光する受光用レンズ15と、集光された光を所定の回転軸Xの方向に反射する機能を有する受光用ミラー17と、フォトダイオード等の受光器18と、によって構成される。
【0025】
図1および図2に示すように、回転伝達機構は、前述の回転機構と連動する伝達機構を有して構成され、カバー19を回転させる機構である。回転伝達機構は、モータ14の駆動軸である軸部材13に固定され、軸部材13を中心軸とする第2の外歯車12と、内接される第2の外歯車12と所定のギア比で互いに噛み合うように配置される内歯車20と、によって構成される。内歯車20は、カバー19の内周部に固定され、カバー19の内周の内側に歯が切られた歯車であり、カバー19の表面と一体となって回転するようになっている。この構成により、モータ14が駆動されると、第2の外歯車12が回転するとともに、所定のギア比に応じて第1の外歯車11および内歯車20が回転する。これに伴い、光走査装置1は、所定の検出範囲に向けて投光を行いながら、光が透過するカバー19が回転するようになる。
【0026】
カバー19の下部と底板部を構成する制御回路収納部41との間には、カバー19を回転可能に支持する一対の軸受部材21を設ける。軸受部材21は、例えばボール軸受、滑り軸受または流体動圧軸受で構成する。
【0027】
本実施形態では、投光器2は所定の検出範囲に向けて投光される検出光L1を継続的に放射し、受光器18は所定の検出範囲から反射されてきた検出光L3を継続的に受光する。投光用ミラー4で反射して投光された検出光L2が、保って光走査装置1の外部に予定通り放射されずに予定の光軸から外れる場合や、所定の検出範囲に予定通り放射されて検出物体60によって反射して戻ってきたとしても受光器18で受光できない場合がある。このような場合は、光が透過する部分のカバー19の外表面に水滴等の付着物が存在し、光の進行を妨げていることがある。このような付着物の存在により、カバー19を透過して放射された検出光L2が受光器18で受光されないときでも、カバー19が投光用ミラー4の回転運動と連動して回転するため、カバー19が一回転する間に当該付着物が飛ばされたり、カバー外表面の別の箇所に移動したりする。これにより、カバー19が一回転し、次に同じ方角に向かって投光が実施されるときには、光の透過面から当該付着物が除去されているため、予定の光軸が形成されて良好な投光および受光が行われ、検出物体60を正確に検出することができるようになる。
【0028】
光走査装置1は、さらにカバー19の表面に接触した状態で配置され、カバー19が回転されるときにカバー19の表面を拭き取るカバー拭き取り手段を備えている。このカバー拭き取り手段は、カバー19の表面を滑る部材であればよい。カバー拭き取り手段は、例えば、ゴム製のブロック材50で構成することができ、カバー19の表面に接触した状態で静止しカバー19が回転することによってカバー19の表面をすべるようにしてもよいし、カバー19の回転とともに、カバー19の表面に接触しながら上下または左右に往復運動するようにしてもよい。また、ブロック材50は、少なくとも投光用窓部および受光用窓部の外表面を拭き取り可能なように配置されていればよいが、またはカバー19の外周面全体を拭き取り可能な上下方向の幅を有して構成されてもよい。
【0029】
投光用ミラー4および受光用ミラー17(軸部材8、すなわち所定の回転軸X)が一回転する時間のミラー回転周期T1とカバー19が一回転する時間のカバー回転周期T2とは、回転伝達機構を構成する各部品のギア比や回転比によって設定することができる。図2に示す例では、第2の外歯車12の歯数(例えば16個)と内歯車20の歯数(例えば32個)は異なるように設定されており、さらに第2の外歯車12の歯数(例えば16個)と第1の外歯車11の歯数(例えば16個)は同数になるように設定されている。つまり、第2の外歯車12と内歯車20のギア比は異なるように設定されている。これにより、第2の外歯車12が一回転する時間の回転周期と内歯車20が一回転する時間の回転周期は異なるようになる。すなわち、当該ミラー回転周期T1と当該カバー回転周期T2とは、異なる周期となる。すなわち、ミラー回転周期T1とカバー回転周期T2のいずれか一方が長い周期となり、他方が一方より短い周期となる。
【0030】
図3に示すように、制御装置100は、マイクロコンピュータ101、投光用回路102、受光用回路103、モータ駆動回路104および物体検出回路105等の各種電子部品を備え、光走査装置1の作動全体の制御を司る。マイクロコンピュータ101は、記憶手段としてROMおよびRAMを内蔵し、あらかじめ設定された制御プログラムや更新可能な制御プログラムを有している。物体検出回路105は、受光器18が受光した光の電気信号、回転位置検出センサ30から入力される位置検出信号等を用いて各種演算を実行し、物体の方位、距離等を求めることで、所定の検出範囲に位置する物体の状態を検出し、その検出結果をマイクロコンピュータ101に出力する。また、物体検出回路105はマイクロコンピュータ101内に含まれる構成であってもよい。また、制御装置100は、制御回路収納部40,41に収納される構成でもよい。
【0031】
より好ましくは、物体検出回路105は、受光用回路103からの電気信号、回転位置検出センサ30からの位置検出信号を複数回取得した結果に基づいて演算を行い、物体の検出を判定する。換言すれば、物体検出回路105は1回の信号取得でなく、カバー19や投光用ミラー4が一回転する毎に信号を取得し、このように取得した複数回の信号を活用して検出結果を得る。
【0032】
そして、物体検出回路105は、複数回に亘って取得された検出結果に基づいて演算を行い、その物体検出の判定結果をマイクロコンピュータ101に送る。この複数回の信号を活用した物体検出の判定によれば、カバー19の一回転の間に付着物を完全に除去できていない場合でも、複数回の検出結果を取得する間に付着物が除去される場合がある。この場合には、複数回の検出結果のうち、所定回数の検出結果において物体の検出が認識できたときには、所定の検出範囲に位置する検出物体60を正確に検出できたことになる。したがって、付着物の除去が不十分な場合を補って、検出物体60を検出する確度を向上することができる。
【0033】
マイクロコンピュータ101は、駆動回路等を備える投光用回路102を介して投光器2に光を放射させる信号を送る。受光器18が出力した検知物体からの反射光の電流信号は、受光用回路103に含まれる増幅回路で増幅され、電流/電圧変換器で電圧信号に変換されて電気信号として物体検出回路105に入力される。そして、マイクロコンピュータ101は、物体検出回路105での演算結果や各種入力信号を用いて各種演算を実行し、演算結果に基づいた信号を出力して各種機器の作動を制御する。例えば、光走査装置1が車載用レーザーレーダーに適用される場合には、運転支援に基づいた、操舵制御、車速制御、制動制御、警告制御等の各種制御が実施される。
【0034】
次に、光走査装置において、より好ましいミラー回転周期T1およびカバー回転周期T2を説明する。図4は、より好ましい投光用ミラーの回転周期とカバーの回転周期とを説明するタイムチャートである。図5は図4のタイムチャートを実現する他の光走査装置の構成を説明する概略図である。図6は図5のVI−VI切断面を矢印方向に見た図である。
【0035】
図5および図6に示すように、光走査装置1Aにおける回転伝達機構は、前述の回転機構と連動する伝達機構(第3の外歯車22および第4の外歯車23)を有して構成され、カバー19Aを回転させる機構である。この回転伝達機構は、モータ14の駆動軸である軸部材13に固定され、軸部材13を中心軸とする第3の外歯車22と、第3の外歯車22と所定のギア比で互いに噛み合うように配置される第4の外歯車23と、によって構成される。
【0036】
第4の外歯車23は、カバー19Aの天板の内面に固定され、当該天板内面の中心に一致する回転中心軸を備える歯車であり、カバー19Aの天板と一体となって回転するようになっている。また、カバー19Aの天板は、光の透過面を備えるカバー19Aの側板と一体に構成されているため、第4の外歯車23が回転すると光の透過面も同時に回転するようになる。この構成により、モータ14が駆動されると、第3の外歯車22が回転するとともに、所定のギア比に応じた速度で第4の外歯車23が回転する。これに伴い、光走査装置1は、所定の検出範囲に向けて投光を行いながら、光が透過するカバー19Aが回転するようになる。なお、軸部材13は、固定されている制御回路収納部40を貫通しているが、回転可能に設けられている。
【0037】
さらに、第3の外歯車22と第4の外歯車23のギア比は、第3の外歯車22の歯数は第4の外歯車23の歯数よりも多くなるように構成されている。これにより、図4に示すように、ミラー回転周期T1は、カバー回転周期T2よりも長くなる。つまり、図4に示すように、時間の経過とともに、両者が一回転する時間は、ずれていき、カバー19Aの方が早く回転を重ねるようになる。
【0038】
次に、光走査装置1の動作について説明する。制御装置100が投光用回路102によって投光器2を駆動させて、検出光L1が出射されると、検出光L1が投光用ミラー4に入射されて反射し、検出光L2として所定の検出範囲に向けて放射される。検出光L2は所定の検出範囲の空間に位置する検出物体60にて反射し、反射光の一部である検出光L3が受光用ミラー17に入射する。受光用ミラー17は検出光L3を受光器18側に反射し、受光器18は受光したときの受光量に応じた電気信号を受光用回路103を介して物体検出回路105に出力する。
【0039】
本構成では、このように受光器18で受光されて受光用回路103を介して物体検出回路105に出力された電気信号の出力タイミングと、投光器2の駆動を開始したタイミングとの時間差を計測することによって、検出物体60までの距離を求めることができる。さらに、このときの回転位置検出センサ30による回転位置を検出することで検出物体60の方位を求めることができる。
【0040】
光走査装置1の動作時には、検出光L2や検出光L3はカバー19の投光用窓部や受光用窓部を透過するので、前述のように良好な検出精度を確保するためには投光用窓部および受光用窓部の外表面の汚れを防止しなければならない。特に屋外で使用される場合においては、水滴、塵埃等の付着物が付着しやすいため、当該窓部の清潔度を保つ手段を備えることは重要である。しかも、その当該手段は、光走査装置が適用される製品に要求される大きさや価格の面からも負担の小さい手段であることが必要である。
【0041】
そこで、光走査装置1では、前述の回転伝達機構の働きにより、所定の検出範囲に向けて投光および受光を行いながら、光の透過面であるカバー19を回転させる。このカバー19の回転により、投光および受光を行いながら、カバー19に水滴等が付着したときに回転による遠心力を活用して付着物を除去することができる。
【0042】
以下に、本実施形態の光走査装置1がもたらす作用効果を述べる。光走査装置1は、所定の回転軸を中心として回転しながら所定の検出範囲に対して投光した光の反射光を受光することにより、所定の検出範囲に位置する物体を検出する。光走査装置1は、投光された光および受光される光が透過するカバー19と、少なくとも投光用ミラー4の所定の回転軸を回転させる回転機構と、この回転機構を駆動するモータ14と、所定の回転軸の回転位置を検出する回転位置検出センサ30と、回転位置検出センサ30による検出結果および受光器18の受光による検出結果に基づいた演算により、検出物体60の検出を行う制御装置100と、回転機構と連動してカバー19を回転させる回転伝達機構と、を備える。
【0043】
この構成によれば、所定の検出範囲に向けて投光および受光を行うために駆動される構成部品にカバー19を連動させる回転伝達機構を有することにより、物体を検出する動作を行いながら、カバー19を回転させることができる。カバー19の自転により、カバー19の外表面に付着した水滴等に遠心力が作用するため、水滴等を光が透過する部位から移動させたり、外部に飛ばしたりすることができる。この回転伝達機構は、安価で簡単な機構であり、設置スペースが小さいものである。したがって、付着物に対する安定した検出特性(ロバスト性の向上)が得られるとともに、装置の大型化およびコストを抑制することができる。
【0044】
また、光走査装置1は、カバー19の外表面に接触した状態で配置され、カバー19が回転されるときにカバー19の外表面を拭き取るカバー拭き取り手段としてのブロック材50を備えている。この構成によれば、カバー拭き取り手段により、所定の検出範囲に向けて投光を行いながらカバーを回転させて付着物を遠心力によって飛ばす作用効果に加え、さらにカバー19の外表面が拭き取られることになる。二つの手段によって、付着物の除去頻度をさらに高め、光の透過面をより清潔に維持することができる。
【0045】
また、光走査装置1は、投光用ミラー4の回転軸である軸部材8が一回転するのに要する回転周期(所定の回転軸が一回転する時間である回転周期)と、カバー19が一回転するのに要するカバー回転周期とは異なる周期となるようになっている。この構成によれば、両回転周期が異なることにより、投光および受光された光が透過するカバー19の各透過部位が、投光用ミラー4が一回転する毎に回転周期の差に応じてずれるようになる。このずれを生じさせることにより、一回転する間に除去できない付着物があったとしても、投光用ミラー4の一回転毎に光の各透過部位からカバー19の付着物がずれるため、検出光L2および検出光L3は各透過部位を適正な状態で透過することができる。
【0046】
また、光走査装置1は、投光用ミラー4の回転軸である軸部材8が一回転するのに要する回転周期T1(所定の回転軸が一回転する回転周期T1)は、カバー19が一回転するのに要するカバー回転周期T2よりも長い周期とすることが好ましい。この構成を採用した場合には、投光用ミラー4の回転速度よりもカバー19の回転速度が速いため、カバー19の付着物に作用する遠心力をより大きくして付着物が飛ばされやすくなる。さらに、カバー拭き取り手段を備えている場合には、投光用ミラー4の回転数に比してカバー19の回転数が多くなるため、付着物の拭き取り回数が増加し、さらに付着物の除去頻度を向上することができる。
【0047】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0048】
上記実施形態では、回転機構および回転伝達機構として歯車を用いた例を説明したが、この構成に限定するものではない。例えば、プーリーとベルトの組み合わせによって回転機構および回転伝達機構を構成し、同様の作用効果が得られるように実現してもよい。回転伝達機構は、回転軸Xの回転方向とカバー19の回転方向が同一となるように構成してもよいし、逆方向となるように構成してもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、所定の回転軸Xの回転とともに、投光用ミラー4と受光用ミラー17の両方が回転する例を説明したが、これに限定するものではなく、例えば、投光手段を構成する部品のみが回転し、受光手段を構成する部品は静止状態の固定式である構成としてもよい。
【0050】
また、上記実施形態のカバー19の外表面には、親水性を有する親水性被覆剤を塗布するように構成してもよい。親水性とは、カバー19の外表面上に付着した水をはじかずに馴染んだ状態にする性質である。親水性被覆剤が塗布されたカバー19の外表面においては、表面と水滴の接触角が、例えば10度以下となるように小さくなり、水が一様の膜状に広がる。これにより、カバー拭き取り手段により、水滴とともに、塵埃等のよごれが表面から浮き上がるようになり、よりカバー表面の清潔度を向上することができる。さらに、水が一様の膜状に広がることにより、水滴によるレンズ効果を低減できるため、光学系の性能劣化を低減することができる。
【0051】
また、上記実施形態のカバー19の形状は円筒状であるがこの形状の限定されるものではない。例えば、板状のカバーを用い、この板状のカバーを所定の回転軸に対して並行に設置し、板状のカバーの中心部を回転伝達機構により回転中心として回転させ、当該カバーを投光用ミラーとともに回転するようにしてもよい。また、カバー19の形状は円錐形状や算盤玉形状等としてもよい。これにより、カバー表面の水滴が流れやすくなるため、水滴を付着しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】第1実施形態に係る光走査装置の構成を概略的に説明する概略図である。
【図2】図1のII−II切断面を矢印方向に見た図である。
【図3】第1実施形態に係る光走査装置の各部の関係を簡易的に示した構成図である。
【図4】光走査装置における好ましい投光用ミラーの回転周期とカバーの回転周期を説明するタイムチャートである。
【図5】図4のタイムチャートを実現する他の光走査装置の構成を説明する概略図である。
【図6】図5のVI−VI切断面を矢印方向に見た図である。
【符号の説明】
【0053】
1…光走査装置
2…投光器(投光手段)
3…投光用レンズ(投光手段)
4…投光用ミラー(投光手段)
7,9…軸受部材(回転機構)
8…軸部材(所定の回転軸)
11…第1の外歯車(回転機構)
12…第2の外歯車(回転機構、回転伝達機構)
13…軸部材(回転機構)
14…モータ(駆動手段)
17…受光用ミラー(受光手段)
18…受光器(受光手段)
19…カバー
20…内歯車(伝達機構、回転伝達機構)
30…回転位置検出センサ(回転位置検出手段)
50…ブロック材(カバー拭き取り手段)
60…検出物体
105…物体検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の回転軸を中心として回転しながら所定の検出範囲に対して光を投光し、反射してきた光を受光することにより、前記所定の検出範囲に位置する物体を検出する光走査装置であって、
前記所定の回転軸からの指向性を有して前記所定の検出範囲に光を投光する投光手段と、
前記投光手段から投光された後、前記所定の検出範囲に位置する検出物体からの反射光を受光する受光手段と、
前記投光手段から投光された光および前記受光手段に受光される光が透過するカバーと、
前記所定の回転軸を回転させる回転機構と、
前記回転機構を駆動する駆動手段と、
前記所定の回転軸の回転位置を検出する回転位置検出手段と、
前記回転位置検出手段による検出結果および前記受光手段の受光による検出結果に基づいた演算により、前記検出物体の検出を行う物体検出回路と、
前記回転機構と連動する伝達機構を有して前記カバーを回転させる回転伝達機構と、
を備えることを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記カバーの外表面に接触した状態で配置され、前記カバーが回転されるときに前記カバー外表面を拭き取るカバー拭き取り手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記所定の回転軸が一回転するときに要する回転周期と、前記カバーが一回転するときに要するカバー回転周期とは異なる周期であることを特徴とする請求項2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記所定の回転軸が一回転するときに要する回転周期は、前記カバーが一回転するときに要するカバー回転周期よりも長いことを特徴とする請求項1または2に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記物体検出回路は、前記カバーが一回転する毎に前記検出結果を取得するように構成され、複数回に亘って取得された前記検出結果に基づいて演算を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光走査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−107591(P2010−107591A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277268(P2008−277268)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】