光電子複合基板における光路のトリミング方法
【課題】光導波路と印刷回路配線とを含む光電子複合基板において、部品実装する前工程で、発光部と受光部との光学的な結合効率を最適化する。
【解決手段】受光部82側に所定本数のガラスファイバー12に跨る大きさのずれ確認用パターンを形成し、そのずれ確認用パターン上に受光センサ46を配置したうえで、発光部81より光路に光を照射して、光路からの出射光量を受光センサ46にて測定し、その出射光量があらかじめ設定されている基準出射光量に達しない場合には、光路上の所定の部分に、樹脂およびガラスファイバーの各一部分を除去して平面視でプリズム状の中継ビア56を形成したのち、その中継ビア56内にガラスファイバー12と異なる屈折率を有する透明材料を充填して光学プリズム63を形成し、光路を修正する。
【解決手段】受光部82側に所定本数のガラスファイバー12に跨る大きさのずれ確認用パターンを形成し、そのずれ確認用パターン上に受光センサ46を配置したうえで、発光部81より光路に光を照射して、光路からの出射光量を受光センサ46にて測定し、その出射光量があらかじめ設定されている基準出射光量に達しない場合には、光路上の所定の部分に、樹脂およびガラスファイバーの各一部分を除去して平面視でプリズム状の中継ビア56を形成したのち、その中継ビア56内にガラスファイバー12と異なる屈折率を有する透明材料を充填して光学プリズム63を形成し、光路を修正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路(光路)と印刷回路配線とを含む光電子複合基板に関し、さらに詳しく言えば、発光部と受光部との光学的な結合効率を最適化する光路のトリミング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の回路配線板の分野においては、配線の高密度化と高速信号伝達のために光ファイバーを利用した設計が行われている。その一例として、シリコンウェハー上にフォトリソ技術により光導波路を形成して、その両端に光学部品(集光レンズなどの光コネクタ)を配置してモジュール化したもの(特許文献1参照)や、光ファイバーを所定の配線路に沿って布線し樹脂で固めて板状としその両端に光デバイスを直接軸合わせして結合する技術(特許文献2,3参照)が知られている。
【0003】
また、内部に光導波路を有するプリント配線板にレーザなどにより孔開けを行って、その孔を通して光導波路に光入出力用コネクタとしてのくさび状のピンを圧入する技術が非特許文献1,2に報告されている。また、特許文献4にはフレキシブル基板に光回路と電気回路とを混在させた光電気複合配線板が提案されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のように、シリコンウェハー上に光学部品を配置する場合、その大きさに制約があるばかりでなくフォトリソ技術による光導波路は高価であり、さらには異なるモジュール間を光学的につなぐ方法がないという問題がある。
【0005】
特許文献2に記載のように、光ファイバーを所定の配線路に沿って布線し樹脂で固めて板状にするといった方法では、光ファイバーの曲げ半径を小さくすることができないため小型化に無理があり、また、光の入出力部分の大きさの制限もあることから接近した部品間の光伝送が不可能であり、かつ、光ファイバーの1本ごとに端末処理が必要であることから量産的な手法ではない。
【0006】
また、非特許文献1,2によるピン圧入方式では、レーザによる孔開けが行われるが、その孔開け位置の特定に細心の注意を要し生産性が悪い。そのうえ、別途にピンを調達する必要がありコスト的にも負担がかかる。
【0007】
特許文献3には、光回路と電気回路とを混在させた光電気複合配線板が提案されているが、結局のところ、その光導波路の光入出力用コネクタに上記非特許文献1,2によるピン圧入方式を採用しているため、依然として生産性が悪くコスト高になることは否めない。
【0008】
そこで、本出願人は、光入出力用コネクタを一連の生産工程のなかで形成することができるようにした発明を特許文献5に開示している。特許文献5に記載の発明によれば、例えば銅箔よりなる基板上の光入力側と光出力側とに円錐もくしは角錐状の光バンプを形成したのち、その各光バンプに目的方向以外への光漏れを防止するリフレクタを形成し、ガラスファイバーを含む織物基材に樹脂を含浸させたプリプレグを基板上に載置して、光バンプを貫通させることにより、各光バンプ間をガラスファイバーにて光結合することができる。
【0009】
【特許文献1】特開2000−121883号公報
【特許文献2】特開平7−176716号公報
【特許文献3】特開2000−147270号公報
【特許文献4】特開2001−311846号公報
【特許文献5】特開2005−316266号公報
【非特許文献1】「光表面実装技術」回路実装学会誌,Vol.10,No.5,pp.346〜350,1995.
【非特許文献2】「45゜端面ファイバの光路変換特性」エレクトロ実装技術,Vol.16,No.3,pp219〜220,2000.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、プリプレグ内でガラスファイバーが横方向(X軸方向)および/または縦方向(Y軸方向)に沿って規則正しく配列されていれば、光軸調整をする必要もなく、また、部品実装上も問題はないが、実際の製造工程では各種要因によってガラスファイバーが規則正しく配列されてなく、ねじれや位置ずれが起きている場合がある。
【0011】
そうすると、発光部と受光部との光学的な結合効率が低下するばかりでなく、部品実装(多くの場合、自動実装機による自動実装)上支障が生ずる。この点の解決策については、上記特許文献1〜5および非特許文献1,2のいずれにも示されていない。
【0012】
したがって、本発明の課題は、光導波路(光路)と印刷回路配線とを含む光電子複合基板において、部品実装する前工程で、発光部と受光部との光学的な結合効率を最適化する光路のトリミング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明は、ガラスファイバーの編組体に所定の樹脂が含浸され、上記ガラスファイバーの所定部位に発光部と受光部とが設けられているプリプレグと、印刷回路基板の回路基板材とが一体的に接合された積層体を含む光電子複合基板で、上記発光部と上記受光部との間の光路をトリミングする光電子複合基板における光路のトリミング方法において、上記受光部側に所定本数の上記ガラスファイバーに跨る大きさのずれ確認用パターンを形成し、上記ずれ確認用パターン上に受光センサを配置したうえで、上記発光部より上記光路に光を照射して、上記光路からの出射光量を上記受光センサにて測定し、上記出射光量があらかじめ設定されている基準出射光量に達しない場合には、上記光路上の所定の部分に、上記樹脂および上記ガラスファイバーの各一部分を除去して平面視でプリズム状の中継ビアを形成したのち、上記中継ビア内に上記ガラスファイバーと異なる屈折率を有する透明材料を充填して光学プリズムを形成し、上記光路を修正することを特徴としている。
【0014】
本発明において、上記光路の出射光量が上記基準出射光量に達するまで、上記中継ビアの形状および/または上記透明材料を変えてトリミングを繰り返し実施されてよい。
また、上記透明材料として、液状の透明樹脂もしくは透明ガラス粉末を用いることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、受光部側に所定本数のガラスファイバーに跨る大きさのずれ確認用パターンを形成し、そのずれ確認用パターン上に受光センサを配置したうえで、発光部より光路に光を照射して、光路からの出射光量を受光センサにて測定し、その出射光量があらかじめ設定されている基準出射光量に達しない場合には、光路上の所定の部分に、樹脂およびガラスファイバーの各一部分を除去して平面視でプリズム状の中継ビアを形成したのち、その中継ビア内に上記ガラスファイバーと異なる屈折率を有する透明材料を充填して光学プリズムを形成し、光路を修正するようにしたことにより、特に部品実装する前工程で、発光部と受光部との光学的な結合効率を最適化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、図1ないし図12を参照して、本発明のいくつかの実施形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。各図は本発明の理解を容易にするうえで誇張的に描いた模式図である。
【0017】
まず、図1ないし図8により本発明の第1実施形態について説明する。図1ないし図8は製造工程順となっているが、個々の説明に入る前に、図3により本発明に係る光電子複合基板1の基本的な構成について説明する。
【0018】
この光電子複合基板1は、光導波路となるガラスファィバー12を含むプリプレグ10と、印刷回路基板の回路基板材20とを一体に接合してなる片面基板を最小構成単位として備える。プリプレグ10の両面に回路基板材20を積層して両面基板としてもよいが、この例では、片面基板の2組を内層基材30の両側に積層してなる多層基板として構成されている。回路基板材20には例えば銅箔シートが用いられてよい。また、内層基材30を用いて多層基板とする場合、通常、内層基材30の少なくとも一方の面には内層回路が形成される。
【0019】
本発明では、部品コストを下げるためプリプレグ10を次のようにして作製する。図1(a)に示すように、プリプレグ10は、横糸としてのガラスファィバー12aと縦糸としてのガラスファィバー12bとを例えば平織りしてなる編組体11を備えるが、この縦横の光ネットワークを容易かつ安価に作製し、また、光の漏洩などによる混信を防止するため、プリプレグ10に含浸する透明樹脂に少なくとも2つの樹脂を使用する。なお、横糸のガラスファィバー12aと縦糸のガラスファィバー12bを区別する必要がない場合には、総称として単にガラスファィバー12という。
【0020】
まず、図1(b)に示すように、ガラスファィバー12の周りにクラッド材としての第1樹脂14をコーティングする。第1樹脂14には、ガラスファィバー12よりも低屈折率で光学特性に優れ、ガラスファィバー12との密着性に優れた例えばエポキシ系,シリコン系,フッ系などの樹脂が用いられる。第1樹脂14はガラスファィバー12に対して薄膜状に付着されるが、その付着量は希釈度や分子量などにより適宜調整することができる。なお、第1樹脂14には、メッキ付着性など印刷回路基板一般に必要とされる特性は要求されない。
【0021】
熱や光重合などにより第1樹脂14を硬化もしくは半硬化させたのち、図1(c)に示すように、残余の部分(少なくとも網目の部分)に第2樹脂15を含浸する。第2樹脂15には、印刷回路基板の品質上不可欠なメッキ付着性や、耐湿性などの耐環境特性に優れた樹脂が用いられる。この第2樹脂15の使用量は第1樹脂14よりもはるかに多く、プリプレグ10に含浸される樹脂のほとんどを占める。
【0022】
第1樹脂14および第2樹脂15ともに、化学式において末端に同じ反応基(例えば、水酸基,エポキシ基,アクリル基など)や相溶性の高い親水基もしくは疎水基を持たせることにより、第1樹脂14と第2樹脂15との化学的な密着力を高めることができる。
【0023】
第2樹脂15を硬化もしくは半硬化させた状態で、プリプレグ10と回路基板材20との積層が行われるが、ガラスファィバー12にねじれや位置ずれがあると、後工程でガラスファイバー12に対する光入射位置と光出射位置に光入出力用コネクタとしての後述する光学プリズムを配置する際に支障が生ずる。
【0024】
そこで、本発明では、次のようにしてガラスファィバー12のねじれや位置ずれを修正する。そのための治具として、図2(a)に示すように、LEDなどの光源41および受光センサ42と、一対のプリプレグ保持具43(43a,43b)とを用いる。
【0025】
受光センサ42はリニアセンサであることが好ましい。また、各プリプレグ保持具43は、それぞれステッピングモータなどのアクチュエータ44により送りねじなどの直線往復運動機構を介して個別的に駆動される。各プリプレグ保持具43は、真空吸着型もしくは挟持型のいずれであってもよい。
【0026】
光源41はプリプレグ10の対向する2辺のうちの一方の辺側に配置され、受光センサ42は他方の辺側に配置される。また、一方のプリプレグ保持具43aにより光源41側の辺を保持し、他方のプリプレグ保持具43bにより受光センサ42側の辺を保持する。
【0027】
図2の例は、横糸のガラスファィバー12aの位置ずれを修正する状態を示しており、光源41より所定のガラスファィバー12aに光をあて、受光センサ42でガラスファィバー12aから出射される光を受光する。各ガラスファィバー12は含浸樹脂(第2樹脂15)により一体に固められているため、光をあてるガラスファィバー12aは1本であってよい。
【0028】
そのガラスファィバー12aの光入射位置と光出射位置とが同一の水平線上であれば、ガラスファィバー12aは横方向に真っ直ぐに延びていると判定されるが、図2(a)に示すように、光入射位置に対して光出射位置が下方に距離Xだけずれている場合には、図2(b)に示すように、アクチュエータ44により例えば受光センサ42側のプリプレグ保持具43bを上方(矢印A方向)に移動させ、光入射位置と光出射位置とが同一の水平線上になるようにしてずれ距離Xを0とする。
【0029】
なお、プリプレグ保持具43bの移動だけではずれを調整しきれない場合には、光源41側のプリプレグ保持具43aを下方(反矢印A方向)に移動させればよい。プリプレグ10を90度回転させてプリプレグ保持具43a,43bにて保持させることにより、縦糸のガラスファィバー12bについても、同様にしてそのずれを修正することができる。
【0030】
上記のようにして、ガラスファィバー12のずれを修正してからプリプレグ10と回路基板材20とを一体的に接合して片面基板もしくは両面基板としたのち、この例では、図3に示すように片面基板の2組を内層基材30の両側に積層して多層基板とする。
【0031】
次に、ガラスファイバー12に対する光入射位置と光出射位置に光入出力用コネクタとして光学プリズムを配置する。そのためまず、図4に示すように、各プリプレグ10の光入射位置と光出射位置に、それぞれ穴51を開ける。その穴開け手段は、レーザー光などのエネルギー照射,機械加工または化学的エッチングのいずれかを採用することができる。
【0032】
穴51の形状は、光学的な結合効率の観点からして、円錐や角錐またはくさび状であることが好ましいが、なかでも図4に示すように、垂直面51aと、垂直面51aに対してほぼ45度の傾斜面51bとを含むくさび状であることが好ましい。なお、対として用いられる光入射側と光出射側の穴51,51は左右対称すなわち、それらの垂直面51a,51a同士が対向するように形成される。
【0033】
この穴開けに伴ってガラスファイバー12も切断され、その切断端面が穴51内に露出することになるが、図5に示すように、ガラスファイバー12の切断端面121はボールレンズ状に形成される方が光学的な結合効率がよいため、レーザー光もしくは集光された赤外線により穴開けを行うことが好ましい。
【0034】
しかるのち、図6に示すように、各穴51内にガラスファイバー12よりも高屈折率の透明樹脂を充填し、必要に応じて表面研磨を施して光入出力用コネクタとしての光学プリズム61を形成する。これにより、光学プリズム61,61間のガラスファイバー12が光導波路となる。
【0035】
次に、図7に示すように、常法にしたがって上面と下面の各回路基板材20に所定の外層回路21を形成する。その際、スルーホール配線22やバイアホールを形成し、内層基材30の内層回路31と外層回路21とを接続することもできる。
【0036】
そして最終工程として、図8に示すように、対となる光学プリズム61,61のいずれか一方に発光素子2を配置し、その他方に受光素子3を実装するとともに、外層回路21上に所定のチップ電子部品4を実装する。
【0037】
このようにして、光電子複合回路基板が提供されるが、発光素子2とこれに対向する光学プリズム61との間、および受光素子3とこれに対向する光学プリズム61との間の各々に、それら各素子の受発光面と光学プリズムの各屈折率の平均値にほぼ等しい屈折率を有する光学的結合樹脂71をアンダーフィルとして充填することにより、各部材の接合強度を安定させることができるとともに、光学的な結合効率をさらに向上させることができる。
【0038】
次に、図9(a)〜(d)により本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態によれば、発光部と受光部のいずれか一方を横糸のガラスファイバー12a側に配置し、その他方を縦糸のガラスファイバー12b側に配置し、2次元的な光導波路を形成することができる。
【0039】
まず、図9(a)を参照して、プリプレグ10に含まれている例えば横糸のガラスファイバー12aのうちのガラスファイバー12aMが受光側で、縦糸のガラスファイバー12bのうちのガラスファイバー12bNが発光側であるとして、ガラスファイバー12aM,12bNの所定位置に光学プリズムを配置するための穴52,53を形成し、また、ガラスファイバー12aM,12bNの交点部分13に中継ビア54を形成する。
【0040】
穴52,53は、上記第1実施形態と同様にして形成されてよい。中継ビア54は、ガラスファイバーは除去しないが、含浸されている樹脂成分は蒸発除去し得る程度のエネルギーを有するレーザー光もしくは赤外線を照射することにより形成される。中継ビア54は、穴52,53の穴開けと同時もしくは別工程のいずれで形成されてよい。
【0041】
次に、図9(b)に示すように、中継ビア54内に露出している交点部分13のうち光導波路として不要な部分、すなわち横糸のガラスファイバー12aMでは交点部分13から穴52とは反対側に延びている部分,縦糸のガラスファイバー12bNでは交点部分13から穴53とは反対側の延びている部分を、ガラスファイバーを蒸発除去し得る波長および出力を有するレーザー光もしくは赤外線で除去する。
【0042】
しかる後、交点部分13にガラスファイバーを溶融し得る程度の波長を有するレーザー光もしくは赤外線を照射して、交点部分13でガラスファイバー12aM,12bNを溶融一体化する。なお、このガラスファイバー同士の溶融一体化を例えば中継ビア54の形成と同時に行ってもよい。
【0043】
次に、図9(c)に示すように、中継ビア54内にクラッドとして機能する低屈折率の透明樹脂である透明樹脂,好ましくは上記第1実施形態で説明した第2樹脂15を印刷もしくはディスペンサなどにより充填する。
【0044】
そして、図9(d)に示すように、穴52,53内に上記第1実施形態と同じく高屈折率の透明樹脂を充填して光学プリズム61を形成する。中継ビア54を複数箇所に設けることにより、多様な光導波路を形成することができる。なお、この第2実施形態では、上記第1実施形態でのプリプレグ10を例としているが、多成分系の光ファイバーやフッ素樹脂を含むプラスチックファイバーを含むプリプレグにも適用することができる。
【0045】
次に、図10ないし図12により本発明の第3実施形態について説明する。ガラスファイバー12が横方向(X軸方向)および/または縦方向(Y軸方向)に規則正しく配列されていれば部品実装上問題はないが、製造上の各種要因によってガラスファイバー12が規則正しく配列されていない場合がある。この第3実施形態は、その位置ずれ(光路ずれ)を修正するトリミング方法を提供する。
【0046】
この第3実施形態は、図10に示すように、部品実装前に実施する点で先の図2で説明した位置ずれの修正方法と異なる。図10(a)は先の図7と同じく部品実装前の光電子複合基板1を示す模式的な断面図で、図10(b)はその模式的な平面図で、横糸のガラスファイバー12aをトリミングする場合を例示している。ここでは、発光部に参照符号81を付し、受光部に参照符号82を付す。
【0047】
トリミングするにあたって、図10(a)(b)に示すように、発光部81から見て受光部82の後方に光路ずれ確認パターン82aを形成し、この光路ずれ確認パターン82a上に受光センサ46を配置する。光路ずれ確認パターン82aは、例えば隣接する数本のガラスファイバー12aを跨る大きさの小窓状に形成され、部品の実装に支障のない位置、好ましくは捨て基板に設けられるとよい。
【0048】
図10(a)に示すように、発光部81に光源45を配置して対象とするガラスファイバー12aに光を照射し、光路ずれ確認パターン82a上に配置されている受光センサ46にてガラスファイバー12aから出力される出射光量を測定し、その測定値(出射光量)が図示しない例えばマイクロコンピュータからなるトリミング制御手段に与える。
【0049】
トリミング制御手段は、測定された出射光量Ldと、真っ直ぐに配線されているガラスファイバーでの測定値から設定された基準出射光量Lrefとを比較し、Ld<Lrefの場合に光路ずれありと判定し、また、その差分からずれ量Xaを推定してトリミング量を算出する。
【0050】
そして、図11(a)に示すように、ガラスファイバー12aの光路上で部品実装の支障のない部分に、レーザー光の照射,機械加工もしくは化学エッチングなどにより平面視でプリズム状(図12(b)参照)の中継ビア56を開けて光路の一部分を除去する。
【0051】
しかるのち、図11(b)に示すように、穴開けされた中継ビア56内にガラスファイバー12aよりも高屈折率の透明樹脂もしくは透明ガラス粉末を充填し固化させて光学プリズム63を形成する。充填は印刷法やディスペンサなどにより行われてよい。
【0052】
図12(a)の断面図と同図(b)の平面図に、トリミングにより光路が変更された状態を示す。トリミング後に、受光部82上に受光センサ46を配置し、再度発光部81から光を照射し、受光部82側での出射光量Ldを測定する。その際、出射光量Ldが基準出射光量Lrefに達しない場合には、再度トリミングを実施するが、トリミングに使用する透明材料を数種類使い分けて、光路変更量を調整することもできる。
【0053】
このように、本発明の第3実施形態によれば、発光部81と受光部82との光学的な結合効率を高めることができる。この第3実施形態によるトリミング方法は、上記第1実施形態で説明したプリプレグ10のみならず、多成分系の光ファイバーやフッ素樹脂を含むプラスチックファイバーを含むプリプレグにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1実施形態でプリプレグの作製工程を説明するための模式図。
【図2】上記第1実施形態でガラスファィバーの位置ずれ修正方法を示す模式図。
【図3】上記第1実施形態における光電子複合基板を示す断面図。
【図4】上記第1実施形態で穴開け工程を示す要部拡大断面図。
【図5】上記第1実施形態でガラスファイバーの好ましい端部形状を示す拡大図。
【図6】上記第1実施形態で光学プリズム形成工程を示す要部拡大断面図。
【図7】上記第1実施形態で回路パターン形成工程を示す要部拡大断面図。
【図8】上記第1実施形態で受発光素子を実装した状態を示す要部拡大断面図。
【図9】本発明の第2実施形態で2次元的な光導波路を形成する手順を示す模式図。
【図10】本発明の第3実施形態で光路ずれを検出する状態を示す(a)断面図,(b)平面図。
【図11】本発明の第3実施形態でトリミング用のプリズムを形成する工程を示す断面図。
【図12】本発明の第3実施形態でトリミング後の状態を示す(a)断面図,(b)平面図。
【符号の説明】
【0055】
1 光電子複合基板
2 発光素子
3 受光素子
4 電子部品
10 プリプレグ
11 編組体
12,12a,12b ガラスファイバー
13 交点部分
14 第1樹脂
15 第2樹脂
20 回路基板材
21 外層回路
30 内層基材
31 内層回路
41,45 光源
42,46 受光センサ
43a,43b プリプレグ保持具
44 アクチュエータ
51,52,53 穴
61,63 光学プリズム
71 光学的結合樹脂
81 発光部
82 受光部
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路(光路)と印刷回路配線とを含む光電子複合基板に関し、さらに詳しく言えば、発光部と受光部との光学的な結合効率を最適化する光路のトリミング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の回路配線板の分野においては、配線の高密度化と高速信号伝達のために光ファイバーを利用した設計が行われている。その一例として、シリコンウェハー上にフォトリソ技術により光導波路を形成して、その両端に光学部品(集光レンズなどの光コネクタ)を配置してモジュール化したもの(特許文献1参照)や、光ファイバーを所定の配線路に沿って布線し樹脂で固めて板状としその両端に光デバイスを直接軸合わせして結合する技術(特許文献2,3参照)が知られている。
【0003】
また、内部に光導波路を有するプリント配線板にレーザなどにより孔開けを行って、その孔を通して光導波路に光入出力用コネクタとしてのくさび状のピンを圧入する技術が非特許文献1,2に報告されている。また、特許文献4にはフレキシブル基板に光回路と電気回路とを混在させた光電気複合配線板が提案されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のように、シリコンウェハー上に光学部品を配置する場合、その大きさに制約があるばかりでなくフォトリソ技術による光導波路は高価であり、さらには異なるモジュール間を光学的につなぐ方法がないという問題がある。
【0005】
特許文献2に記載のように、光ファイバーを所定の配線路に沿って布線し樹脂で固めて板状にするといった方法では、光ファイバーの曲げ半径を小さくすることができないため小型化に無理があり、また、光の入出力部分の大きさの制限もあることから接近した部品間の光伝送が不可能であり、かつ、光ファイバーの1本ごとに端末処理が必要であることから量産的な手法ではない。
【0006】
また、非特許文献1,2によるピン圧入方式では、レーザによる孔開けが行われるが、その孔開け位置の特定に細心の注意を要し生産性が悪い。そのうえ、別途にピンを調達する必要がありコスト的にも負担がかかる。
【0007】
特許文献3には、光回路と電気回路とを混在させた光電気複合配線板が提案されているが、結局のところ、その光導波路の光入出力用コネクタに上記非特許文献1,2によるピン圧入方式を採用しているため、依然として生産性が悪くコスト高になることは否めない。
【0008】
そこで、本出願人は、光入出力用コネクタを一連の生産工程のなかで形成することができるようにした発明を特許文献5に開示している。特許文献5に記載の発明によれば、例えば銅箔よりなる基板上の光入力側と光出力側とに円錐もくしは角錐状の光バンプを形成したのち、その各光バンプに目的方向以外への光漏れを防止するリフレクタを形成し、ガラスファイバーを含む織物基材に樹脂を含浸させたプリプレグを基板上に載置して、光バンプを貫通させることにより、各光バンプ間をガラスファイバーにて光結合することができる。
【0009】
【特許文献1】特開2000−121883号公報
【特許文献2】特開平7−176716号公報
【特許文献3】特開2000−147270号公報
【特許文献4】特開2001−311846号公報
【特許文献5】特開2005−316266号公報
【非特許文献1】「光表面実装技術」回路実装学会誌,Vol.10,No.5,pp.346〜350,1995.
【非特許文献2】「45゜端面ファイバの光路変換特性」エレクトロ実装技術,Vol.16,No.3,pp219〜220,2000.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、プリプレグ内でガラスファイバーが横方向(X軸方向)および/または縦方向(Y軸方向)に沿って規則正しく配列されていれば、光軸調整をする必要もなく、また、部品実装上も問題はないが、実際の製造工程では各種要因によってガラスファイバーが規則正しく配列されてなく、ねじれや位置ずれが起きている場合がある。
【0011】
そうすると、発光部と受光部との光学的な結合効率が低下するばかりでなく、部品実装(多くの場合、自動実装機による自動実装)上支障が生ずる。この点の解決策については、上記特許文献1〜5および非特許文献1,2のいずれにも示されていない。
【0012】
したがって、本発明の課題は、光導波路(光路)と印刷回路配線とを含む光電子複合基板において、部品実装する前工程で、発光部と受光部との光学的な結合効率を最適化する光路のトリミング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明は、ガラスファイバーの編組体に所定の樹脂が含浸され、上記ガラスファイバーの所定部位に発光部と受光部とが設けられているプリプレグと、印刷回路基板の回路基板材とが一体的に接合された積層体を含む光電子複合基板で、上記発光部と上記受光部との間の光路をトリミングする光電子複合基板における光路のトリミング方法において、上記受光部側に所定本数の上記ガラスファイバーに跨る大きさのずれ確認用パターンを形成し、上記ずれ確認用パターン上に受光センサを配置したうえで、上記発光部より上記光路に光を照射して、上記光路からの出射光量を上記受光センサにて測定し、上記出射光量があらかじめ設定されている基準出射光量に達しない場合には、上記光路上の所定の部分に、上記樹脂および上記ガラスファイバーの各一部分を除去して平面視でプリズム状の中継ビアを形成したのち、上記中継ビア内に上記ガラスファイバーと異なる屈折率を有する透明材料を充填して光学プリズムを形成し、上記光路を修正することを特徴としている。
【0014】
本発明において、上記光路の出射光量が上記基準出射光量に達するまで、上記中継ビアの形状および/または上記透明材料を変えてトリミングを繰り返し実施されてよい。
また、上記透明材料として、液状の透明樹脂もしくは透明ガラス粉末を用いることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、受光部側に所定本数のガラスファイバーに跨る大きさのずれ確認用パターンを形成し、そのずれ確認用パターン上に受光センサを配置したうえで、発光部より光路に光を照射して、光路からの出射光量を受光センサにて測定し、その出射光量があらかじめ設定されている基準出射光量に達しない場合には、光路上の所定の部分に、樹脂およびガラスファイバーの各一部分を除去して平面視でプリズム状の中継ビアを形成したのち、その中継ビア内に上記ガラスファイバーと異なる屈折率を有する透明材料を充填して光学プリズムを形成し、光路を修正するようにしたことにより、特に部品実装する前工程で、発光部と受光部との光学的な結合効率を最適化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、図1ないし図12を参照して、本発明のいくつかの実施形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。各図は本発明の理解を容易にするうえで誇張的に描いた模式図である。
【0017】
まず、図1ないし図8により本発明の第1実施形態について説明する。図1ないし図8は製造工程順となっているが、個々の説明に入る前に、図3により本発明に係る光電子複合基板1の基本的な構成について説明する。
【0018】
この光電子複合基板1は、光導波路となるガラスファィバー12を含むプリプレグ10と、印刷回路基板の回路基板材20とを一体に接合してなる片面基板を最小構成単位として備える。プリプレグ10の両面に回路基板材20を積層して両面基板としてもよいが、この例では、片面基板の2組を内層基材30の両側に積層してなる多層基板として構成されている。回路基板材20には例えば銅箔シートが用いられてよい。また、内層基材30を用いて多層基板とする場合、通常、内層基材30の少なくとも一方の面には内層回路が形成される。
【0019】
本発明では、部品コストを下げるためプリプレグ10を次のようにして作製する。図1(a)に示すように、プリプレグ10は、横糸としてのガラスファィバー12aと縦糸としてのガラスファィバー12bとを例えば平織りしてなる編組体11を備えるが、この縦横の光ネットワークを容易かつ安価に作製し、また、光の漏洩などによる混信を防止するため、プリプレグ10に含浸する透明樹脂に少なくとも2つの樹脂を使用する。なお、横糸のガラスファィバー12aと縦糸のガラスファィバー12bを区別する必要がない場合には、総称として単にガラスファィバー12という。
【0020】
まず、図1(b)に示すように、ガラスファィバー12の周りにクラッド材としての第1樹脂14をコーティングする。第1樹脂14には、ガラスファィバー12よりも低屈折率で光学特性に優れ、ガラスファィバー12との密着性に優れた例えばエポキシ系,シリコン系,フッ系などの樹脂が用いられる。第1樹脂14はガラスファィバー12に対して薄膜状に付着されるが、その付着量は希釈度や分子量などにより適宜調整することができる。なお、第1樹脂14には、メッキ付着性など印刷回路基板一般に必要とされる特性は要求されない。
【0021】
熱や光重合などにより第1樹脂14を硬化もしくは半硬化させたのち、図1(c)に示すように、残余の部分(少なくとも網目の部分)に第2樹脂15を含浸する。第2樹脂15には、印刷回路基板の品質上不可欠なメッキ付着性や、耐湿性などの耐環境特性に優れた樹脂が用いられる。この第2樹脂15の使用量は第1樹脂14よりもはるかに多く、プリプレグ10に含浸される樹脂のほとんどを占める。
【0022】
第1樹脂14および第2樹脂15ともに、化学式において末端に同じ反応基(例えば、水酸基,エポキシ基,アクリル基など)や相溶性の高い親水基もしくは疎水基を持たせることにより、第1樹脂14と第2樹脂15との化学的な密着力を高めることができる。
【0023】
第2樹脂15を硬化もしくは半硬化させた状態で、プリプレグ10と回路基板材20との積層が行われるが、ガラスファィバー12にねじれや位置ずれがあると、後工程でガラスファイバー12に対する光入射位置と光出射位置に光入出力用コネクタとしての後述する光学プリズムを配置する際に支障が生ずる。
【0024】
そこで、本発明では、次のようにしてガラスファィバー12のねじれや位置ずれを修正する。そのための治具として、図2(a)に示すように、LEDなどの光源41および受光センサ42と、一対のプリプレグ保持具43(43a,43b)とを用いる。
【0025】
受光センサ42はリニアセンサであることが好ましい。また、各プリプレグ保持具43は、それぞれステッピングモータなどのアクチュエータ44により送りねじなどの直線往復運動機構を介して個別的に駆動される。各プリプレグ保持具43は、真空吸着型もしくは挟持型のいずれであってもよい。
【0026】
光源41はプリプレグ10の対向する2辺のうちの一方の辺側に配置され、受光センサ42は他方の辺側に配置される。また、一方のプリプレグ保持具43aにより光源41側の辺を保持し、他方のプリプレグ保持具43bにより受光センサ42側の辺を保持する。
【0027】
図2の例は、横糸のガラスファィバー12aの位置ずれを修正する状態を示しており、光源41より所定のガラスファィバー12aに光をあて、受光センサ42でガラスファィバー12aから出射される光を受光する。各ガラスファィバー12は含浸樹脂(第2樹脂15)により一体に固められているため、光をあてるガラスファィバー12aは1本であってよい。
【0028】
そのガラスファィバー12aの光入射位置と光出射位置とが同一の水平線上であれば、ガラスファィバー12aは横方向に真っ直ぐに延びていると判定されるが、図2(a)に示すように、光入射位置に対して光出射位置が下方に距離Xだけずれている場合には、図2(b)に示すように、アクチュエータ44により例えば受光センサ42側のプリプレグ保持具43bを上方(矢印A方向)に移動させ、光入射位置と光出射位置とが同一の水平線上になるようにしてずれ距離Xを0とする。
【0029】
なお、プリプレグ保持具43bの移動だけではずれを調整しきれない場合には、光源41側のプリプレグ保持具43aを下方(反矢印A方向)に移動させればよい。プリプレグ10を90度回転させてプリプレグ保持具43a,43bにて保持させることにより、縦糸のガラスファィバー12bについても、同様にしてそのずれを修正することができる。
【0030】
上記のようにして、ガラスファィバー12のずれを修正してからプリプレグ10と回路基板材20とを一体的に接合して片面基板もしくは両面基板としたのち、この例では、図3に示すように片面基板の2組を内層基材30の両側に積層して多層基板とする。
【0031】
次に、ガラスファイバー12に対する光入射位置と光出射位置に光入出力用コネクタとして光学プリズムを配置する。そのためまず、図4に示すように、各プリプレグ10の光入射位置と光出射位置に、それぞれ穴51を開ける。その穴開け手段は、レーザー光などのエネルギー照射,機械加工または化学的エッチングのいずれかを採用することができる。
【0032】
穴51の形状は、光学的な結合効率の観点からして、円錐や角錐またはくさび状であることが好ましいが、なかでも図4に示すように、垂直面51aと、垂直面51aに対してほぼ45度の傾斜面51bとを含むくさび状であることが好ましい。なお、対として用いられる光入射側と光出射側の穴51,51は左右対称すなわち、それらの垂直面51a,51a同士が対向するように形成される。
【0033】
この穴開けに伴ってガラスファイバー12も切断され、その切断端面が穴51内に露出することになるが、図5に示すように、ガラスファイバー12の切断端面121はボールレンズ状に形成される方が光学的な結合効率がよいため、レーザー光もしくは集光された赤外線により穴開けを行うことが好ましい。
【0034】
しかるのち、図6に示すように、各穴51内にガラスファイバー12よりも高屈折率の透明樹脂を充填し、必要に応じて表面研磨を施して光入出力用コネクタとしての光学プリズム61を形成する。これにより、光学プリズム61,61間のガラスファイバー12が光導波路となる。
【0035】
次に、図7に示すように、常法にしたがって上面と下面の各回路基板材20に所定の外層回路21を形成する。その際、スルーホール配線22やバイアホールを形成し、内層基材30の内層回路31と外層回路21とを接続することもできる。
【0036】
そして最終工程として、図8に示すように、対となる光学プリズム61,61のいずれか一方に発光素子2を配置し、その他方に受光素子3を実装するとともに、外層回路21上に所定のチップ電子部品4を実装する。
【0037】
このようにして、光電子複合回路基板が提供されるが、発光素子2とこれに対向する光学プリズム61との間、および受光素子3とこれに対向する光学プリズム61との間の各々に、それら各素子の受発光面と光学プリズムの各屈折率の平均値にほぼ等しい屈折率を有する光学的結合樹脂71をアンダーフィルとして充填することにより、各部材の接合強度を安定させることができるとともに、光学的な結合効率をさらに向上させることができる。
【0038】
次に、図9(a)〜(d)により本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態によれば、発光部と受光部のいずれか一方を横糸のガラスファイバー12a側に配置し、その他方を縦糸のガラスファイバー12b側に配置し、2次元的な光導波路を形成することができる。
【0039】
まず、図9(a)を参照して、プリプレグ10に含まれている例えば横糸のガラスファイバー12aのうちのガラスファイバー12aMが受光側で、縦糸のガラスファイバー12bのうちのガラスファイバー12bNが発光側であるとして、ガラスファイバー12aM,12bNの所定位置に光学プリズムを配置するための穴52,53を形成し、また、ガラスファイバー12aM,12bNの交点部分13に中継ビア54を形成する。
【0040】
穴52,53は、上記第1実施形態と同様にして形成されてよい。中継ビア54は、ガラスファイバーは除去しないが、含浸されている樹脂成分は蒸発除去し得る程度のエネルギーを有するレーザー光もしくは赤外線を照射することにより形成される。中継ビア54は、穴52,53の穴開けと同時もしくは別工程のいずれで形成されてよい。
【0041】
次に、図9(b)に示すように、中継ビア54内に露出している交点部分13のうち光導波路として不要な部分、すなわち横糸のガラスファイバー12aMでは交点部分13から穴52とは反対側に延びている部分,縦糸のガラスファイバー12bNでは交点部分13から穴53とは反対側の延びている部分を、ガラスファイバーを蒸発除去し得る波長および出力を有するレーザー光もしくは赤外線で除去する。
【0042】
しかる後、交点部分13にガラスファイバーを溶融し得る程度の波長を有するレーザー光もしくは赤外線を照射して、交点部分13でガラスファイバー12aM,12bNを溶融一体化する。なお、このガラスファイバー同士の溶融一体化を例えば中継ビア54の形成と同時に行ってもよい。
【0043】
次に、図9(c)に示すように、中継ビア54内にクラッドとして機能する低屈折率の透明樹脂である透明樹脂,好ましくは上記第1実施形態で説明した第2樹脂15を印刷もしくはディスペンサなどにより充填する。
【0044】
そして、図9(d)に示すように、穴52,53内に上記第1実施形態と同じく高屈折率の透明樹脂を充填して光学プリズム61を形成する。中継ビア54を複数箇所に設けることにより、多様な光導波路を形成することができる。なお、この第2実施形態では、上記第1実施形態でのプリプレグ10を例としているが、多成分系の光ファイバーやフッ素樹脂を含むプラスチックファイバーを含むプリプレグにも適用することができる。
【0045】
次に、図10ないし図12により本発明の第3実施形態について説明する。ガラスファイバー12が横方向(X軸方向)および/または縦方向(Y軸方向)に規則正しく配列されていれば部品実装上問題はないが、製造上の各種要因によってガラスファイバー12が規則正しく配列されていない場合がある。この第3実施形態は、その位置ずれ(光路ずれ)を修正するトリミング方法を提供する。
【0046】
この第3実施形態は、図10に示すように、部品実装前に実施する点で先の図2で説明した位置ずれの修正方法と異なる。図10(a)は先の図7と同じく部品実装前の光電子複合基板1を示す模式的な断面図で、図10(b)はその模式的な平面図で、横糸のガラスファイバー12aをトリミングする場合を例示している。ここでは、発光部に参照符号81を付し、受光部に参照符号82を付す。
【0047】
トリミングするにあたって、図10(a)(b)に示すように、発光部81から見て受光部82の後方に光路ずれ確認パターン82aを形成し、この光路ずれ確認パターン82a上に受光センサ46を配置する。光路ずれ確認パターン82aは、例えば隣接する数本のガラスファイバー12aを跨る大きさの小窓状に形成され、部品の実装に支障のない位置、好ましくは捨て基板に設けられるとよい。
【0048】
図10(a)に示すように、発光部81に光源45を配置して対象とするガラスファイバー12aに光を照射し、光路ずれ確認パターン82a上に配置されている受光センサ46にてガラスファイバー12aから出力される出射光量を測定し、その測定値(出射光量)が図示しない例えばマイクロコンピュータからなるトリミング制御手段に与える。
【0049】
トリミング制御手段は、測定された出射光量Ldと、真っ直ぐに配線されているガラスファイバーでの測定値から設定された基準出射光量Lrefとを比較し、Ld<Lrefの場合に光路ずれありと判定し、また、その差分からずれ量Xaを推定してトリミング量を算出する。
【0050】
そして、図11(a)に示すように、ガラスファイバー12aの光路上で部品実装の支障のない部分に、レーザー光の照射,機械加工もしくは化学エッチングなどにより平面視でプリズム状(図12(b)参照)の中継ビア56を開けて光路の一部分を除去する。
【0051】
しかるのち、図11(b)に示すように、穴開けされた中継ビア56内にガラスファイバー12aよりも高屈折率の透明樹脂もしくは透明ガラス粉末を充填し固化させて光学プリズム63を形成する。充填は印刷法やディスペンサなどにより行われてよい。
【0052】
図12(a)の断面図と同図(b)の平面図に、トリミングにより光路が変更された状態を示す。トリミング後に、受光部82上に受光センサ46を配置し、再度発光部81から光を照射し、受光部82側での出射光量Ldを測定する。その際、出射光量Ldが基準出射光量Lrefに達しない場合には、再度トリミングを実施するが、トリミングに使用する透明材料を数種類使い分けて、光路変更量を調整することもできる。
【0053】
このように、本発明の第3実施形態によれば、発光部81と受光部82との光学的な結合効率を高めることができる。この第3実施形態によるトリミング方法は、上記第1実施形態で説明したプリプレグ10のみならず、多成分系の光ファイバーやフッ素樹脂を含むプラスチックファイバーを含むプリプレグにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1実施形態でプリプレグの作製工程を説明するための模式図。
【図2】上記第1実施形態でガラスファィバーの位置ずれ修正方法を示す模式図。
【図3】上記第1実施形態における光電子複合基板を示す断面図。
【図4】上記第1実施形態で穴開け工程を示す要部拡大断面図。
【図5】上記第1実施形態でガラスファイバーの好ましい端部形状を示す拡大図。
【図6】上記第1実施形態で光学プリズム形成工程を示す要部拡大断面図。
【図7】上記第1実施形態で回路パターン形成工程を示す要部拡大断面図。
【図8】上記第1実施形態で受発光素子を実装した状態を示す要部拡大断面図。
【図9】本発明の第2実施形態で2次元的な光導波路を形成する手順を示す模式図。
【図10】本発明の第3実施形態で光路ずれを検出する状態を示す(a)断面図,(b)平面図。
【図11】本発明の第3実施形態でトリミング用のプリズムを形成する工程を示す断面図。
【図12】本発明の第3実施形態でトリミング後の状態を示す(a)断面図,(b)平面図。
【符号の説明】
【0055】
1 光電子複合基板
2 発光素子
3 受光素子
4 電子部品
10 プリプレグ
11 編組体
12,12a,12b ガラスファイバー
13 交点部分
14 第1樹脂
15 第2樹脂
20 回路基板材
21 外層回路
30 内層基材
31 内層回路
41,45 光源
42,46 受光センサ
43a,43b プリプレグ保持具
44 アクチュエータ
51,52,53 穴
61,63 光学プリズム
71 光学的結合樹脂
81 発光部
82 受光部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスファイバーの編組体に所定の樹脂が含浸され、上記ガラスファイバーの所定部位に発光部と受光部とが設けられているプリプレグと、印刷回路基板の回路基板材とが一体的に接合された積層体を含む光電子複合基板で、上記発光部と上記受光部との間の光路をトリミングする光電子複合基板における光路のトリミング方法において、
上記受光部側に所定本数の上記ガラスファイバーに跨る大きさのずれ確認用パターンを形成し、上記ずれ確認用パターン上に受光センサを配置したうえで、上記発光部より上記光路に光を照射して、上記光路からの出射光量を上記受光センサにて測定し、上記出射光量があらかじめ設定されている基準出射光量に達しない場合には、
上記光路上の所定の部分に、上記樹脂および上記ガラスファイバーの各一部分を除去して平面視でプリズム状の中継ビアを形成したのち、上記中継ビア内に上記ガラスファイバーと異なる屈折率を有する透明材料を充填して光学プリズムを形成し、上記光路を修正することを特徴とする光電子複合基板における光路のトリミング方法。
【請求項2】
上記光路の出射光量が上記基準出射光量に達するまで、上記中継ビアの形状および/または上記透明材料を変えてトリミングを繰り返し実施することを特徴とする請求項1に記載の光電子複合基板における光路のトリミング方法。
【請求項3】
上記透明材料として、液状の透明樹脂もしくは透明ガラス粉末を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の光電子複合基板における光路のトリミング方法。
【請求項1】
ガラスファイバーの編組体に所定の樹脂が含浸され、上記ガラスファイバーの所定部位に発光部と受光部とが設けられているプリプレグと、印刷回路基板の回路基板材とが一体的に接合された積層体を含む光電子複合基板で、上記発光部と上記受光部との間の光路をトリミングする光電子複合基板における光路のトリミング方法において、
上記受光部側に所定本数の上記ガラスファイバーに跨る大きさのずれ確認用パターンを形成し、上記ずれ確認用パターン上に受光センサを配置したうえで、上記発光部より上記光路に光を照射して、上記光路からの出射光量を上記受光センサにて測定し、上記出射光量があらかじめ設定されている基準出射光量に達しない場合には、
上記光路上の所定の部分に、上記樹脂および上記ガラスファイバーの各一部分を除去して平面視でプリズム状の中継ビアを形成したのち、上記中継ビア内に上記ガラスファイバーと異なる屈折率を有する透明材料を充填して光学プリズムを形成し、上記光路を修正することを特徴とする光電子複合基板における光路のトリミング方法。
【請求項2】
上記光路の出射光量が上記基準出射光量に達するまで、上記中継ビアの形状および/または上記透明材料を変えてトリミングを繰り返し実施することを特徴とする請求項1に記載の光電子複合基板における光路のトリミング方法。
【請求項3】
上記透明材料として、液状の透明樹脂もしくは透明ガラス粉末を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の光電子複合基板における光路のトリミング方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−26370(P2008−26370A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−195443(P2006−195443)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】
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