説明

免震構造および免震構造施工方法

【課題】タンクヤード等の敷地の全体または一部を対象とし、地盤中に特殊な免震装置等を要さない免震層を設け、外部からの地震波が伝わりにくい地盤ブロックを形成する免震構造および免震構造の施工方法を提供する。
【解決手段】パイプ後方から推進力を与えて推進する掘削機で地盤を掘削し、前記掘削機を引き戻しながら掘削部へ免震材を注入し、前記掘削機を引き抜き、前記免震材を封入することで設けられる免震層において、前記免震材として、液状化材または球状粒子の集合体を充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクヤードやプラントヤードなどの敷地の全体または一部を対象とし、地盤中に免震層を設けることで、外部からの地震波が伝わりにくい地盤ブロックを形成する免震構造および免震構造の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
浮き屋根式の液体燃料タンクでは、地震時にスロッシングが生じ、浮き屋根の損傷や液面の露出による火災などの被害が生じる事がある。
【0003】
スロッシングによる被害を防止するためには、スロッシングが生じてもタンクが損傷しないようにタンク自体の強度を高めたり、地震時に共振するタンク内液位のまま長時間放置しないといった運用方法が考えられるが、いずれの方法も現実的ではない。このため、地震による振動を抑制する免震方法が望まれる。
【0004】
このような構造物を免震する方法としては、構造物を載せた地盤を周囲の地盤と絶縁し、その間に免震装置を介入させた免震地盤を設け、当該免震地盤の固有振動周期を考慮して、当該免震地盤の深さおよび面積を定める免震化方法がある(特許文献1)。
【0005】
また、敷地全体ないし都市街域全体の地盤について、免震化する地盤ブロックの下面と基盤との間に免震層を介設するとともに、当該地盤ブロックの側面と基盤側との間に側面免震遮断層を介設する免震化構造がある(特許文献2)。
【特許文献1】特開平10−299025号公報
【特許文献2】特開平9−221767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の方法では、個々の構造物であるタンクが巨大構造物であるため、かかる基礎に対して免震装置は大掛かりなものとなり、特に既設のタンクを対象とした工事においては経済的でないという問題がある。また、タンクに接続された配管類などが外部と接続されているため、タンク自体が免震できたとしても、地震時に不等沈下等により、当該配管等との接続部が損傷する恐れがある。
【0007】
また、特許文献2に記載の免震化構造では、敷地全体を免震化する免震層を設けるため、タンクヤードの広範囲にわたって免震化することはできるが、当該免震層は、コンクリート層と当該コンクリート層に設置された免震構造体を要するため、タンクヤードのような大きな範囲への適用は、大掛かりな工数を要し、経済的ではなく、特に既設のタンクヤードへの適用が困難であるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、タンクヤードやプラントヤードなどの敷地の全体または一部を対象とし、地盤中に特殊な免震装置等を要さない免震層を設け、外部からの地震波が伝わりにくい地盤ブロックを形成する免震構造および免震構造の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、免震を行うエリアの地盤に、振動により液状化する免震材が充填された免震層を有し、地震発生時に前記免震層が液状化することで免震することを特徴とする免震構造である。
【0010】
前記免震層上部にパイプルーフを有してもよく、前記免震層の少なくとも一方の端部に、溝状の立坑を有してもよい。また、前記免震層の少なくとも一方の端部に、鉛直方向に設けられた免震材充填部を有してもよい。
【0011】
第1の発明によれば、タンクヤードやプラントヤードなどの敷地の全体または一部を対象とし、地盤中に特殊な免震装置等を要さない免震層を設け、外部からの地震波が伝わりにくい地盤ブロックを形成する免震構造を提供することができる。
【0012】
第2の発明は、免震を行うエリアの地盤に、振動により互いにすべりを生じる球状粒子の集合体が充填された免震層を有し、前記免震層内で前記球状粒子同士がすべりを生じることで免震することを特徴とする免震構造である。
【0013】
前記免震層上部にパイプルーフを有してもよく、前記免震層の少なくとも一方の端部に、溝状の立坑を有してもよい。また、前記免震層の少なくとも一方の端部に、鉛直方向に設けられた免震材充填部を有してもよい。
【0014】
第2の発明によれば、タンクヤードやプラントヤードなどの敷地の全体または一部を対象とし、地盤中に特殊な免震装置等を要さない免震層を設け、外部からの地震波が伝わりにくい地盤ブロックを形成する免震構造を提供することができる。
【0015】
第3の発明は、パイプ後方から推進力を与えて推進する掘削機で地盤を掘削する工程(a)と、前記掘削機を引き戻しながら掘削部へ免震材を注入する工程(b)と、前記掘削機を引き抜き、前記免震材を封入する工程(c)と、を有することを特徴とする免震層施工方法である。
【0016】
第3の発明によれば、タンクヤードやプラントヤードなどの敷地の全体または一部を対象とし、地盤中に特殊な免震装置等を要さない免震層を設け、外部からの地震波が伝わりにくい地盤ブロックを形成する免震構造の施工方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、タンクヤードやプラントヤードなどの敷地の全体または一部を対象とし、地盤中に特殊な免震装置等を要さない免震層を設け、外部からの地震波が伝わりにくい地盤ブロックを形成する免震構造および免震構造の施工方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本実施の形態にかかる免震層を施工する工程を示したフローチャートである。
【0019】
まず、免震を行うエリアの端部に溝状の立坑を設ける(ステップ101)。図2は、免震エリアとして複数のタンク1が設置されたタンクヤードの端部に立坑5を設けた図である。連続壁7を有する立坑5はタンクヤードの端部の地面3下に溝状に設けられる。なお、図2においては、立坑5は対面するように2箇所設けられているが、いずれか一方のみでもよく、また、タンクヤードを囲うように4箇所に設けてもよい。なお、連続壁7は例えばソイルセメント地中連続壁とすることができる。
【0020】
次に、パイプ後方から推進力を与えて推進する掘削機で、立坑5より地盤11を掘削する(ステップ102)。図3は、立坑5から地盤11を掘削する方法を示した図である。
【0021】
まず、立坑5の連続壁7の一部のソイルセメントのはつりを行い、連続壁7の芯材9を表出させ、また、掘削する部位の連続壁7の背面側の地盤11に止水薬注12を行う(図3(a))。
【0022】
次に、掘削を行う部分の芯材9を切断し、当該部位にモルタル17を打設する。その後、フランジを有する鞘管13を掘削部位に該当する芯材9へ溶接等で接合する(図3(b))。鞘管13は、後述する掘削機をガイドするために適した形状を有する筒状部材であり、内面には、掘削時に外部への地下水の漏水を防ぐための止水ブラシ15が周方向に設けられている。鞘管13の材質は問わないが、例えば鋼材が使用できる。
【0023】
次に、掘削機19を鞘管13内に設置する(図3(c))。
【0024】
次に、通常のパイプルーフの施工方法と同様に、掘削機19の後方へ逐次パイプ21を接合しながら、パイプ21を油圧ジャッキ等により前方(図3(d)中A方向)へ推進させ、地盤11を掘削し、掘削孔25を設ける(図3(d))。
【0025】
パイプ21は、掘削機19の掘削形状と適合する外形を有し、内部は、掘削土砂の排出や加泥材注入のための配管が外部まで接続される。また、掘削機19に接合されたパイプ21の内面には、後述するPC鋼線の一方の端部が取り付けられ、もう一方のPC鋼線の端部は外部まで導出される。パイプ21同士の接合は、予め設けられたねじ等により接合されてもよく、また、溶接により接合されても良い。なお、パイプ21の材質は問わないが、例えば鋼管が使用できる。
【0026】
図4は、免震層31を施工する方法を示した図である。掘削孔25が所定の長さまで到達したら、次に、掘削機19を後方へ引き戻しながら、免震材25を掘削機19先端から掘削孔25へ充填する(ステップ103)。図4(a)は、掘削機19を引き戻しながら、免震材23を掘削孔25へ充填する工程を示す図である。
【0027】
前述のとおり、掘削機19に接続されたパイプ21の内面には、PC鋼線が接続されており、外部まで繋がっている。PC鋼線27を立坑5より巻き取りながら引っ張ることで、掘削機19は後方(図中A方向)へ引き抜かれる。
【0028】
立坑5内では、引き抜かれたパイプ21を逐次切断等により分断し、掘削機19およびパイプ21を後方へ引き抜きぬく。免震材23の注入は、掘削機19に接続されていた、例えば加泥材注入用の配管を用いれば、加泥材の代わりに免震材23を注入することで、掘削機19先端より免震材23を充填することができる。
【0029】
ここで、本実施の形態における免震材23は、地震等の振動により液状化しやすい材料を用いる。例えば、炭酸カルシウム粉末と水と流動化剤からなる液状化材料が使用できる。液状化材料は、充填時には流動性を有するが、施工後には流動性が消失し、締まった砂礫と同等の性状となる。
【0030】
次に、掘削機19を引き抜き、免震材23を封入する(ステップ104)。図4(b)は、掘削機19が芯材9の外面まで引き抜かれた状態を示す図である。掘削孔25には、掘削機19を引き抜きながら免震材23が充填されるが、止水薬注12付近で充填材を免震材23からモルタル29へ代え、免震材23をモルタル29により掘削孔25内へ封入する。
【0031】
なお、モルタル29の養生を行う際に、掘削機19とモルタル29が固着することを避けるため、モルタル29と掘削機19との間に、再度免震材23を充填しても良い。
【0032】
図4(c)は、掘削機19および鞘管13を取り除き、免震材23の充填が完了した状態を示す図である。以上に説明した、免震材23が充填された掘削孔25を、立坑5より水平方向に繰り返し併設する事で、免震層を得ることができる(ステップ105)。
【0033】
図5は地盤中に設けられた免震層31を示した概念図であり、図5(a)は、掘削孔25断面が丸穴の場合を示し、図5(b)は掘削孔25断面が矩形の場合を示す図である。
【0034】
ここで、掘削孔25は、図5に示したように連続していなくてもよい。例えば、図5(a)において、個々の掘削孔25が一つ置きであり、各掘削孔25が隣り合う掘削孔25と離れていても良い。なお、図5のような連続した免震層31を施工するためには、個々の掘削孔25の施工は、まず一個おきに行い、次いでその間を埋めるように掘削孔25を施工するほうが、掘削する際の曲がりが少なく望ましい。また、掘削孔25は、一個づつ設けてもよく、一度に複数の掘削孔25を設けても良い。
【0035】
図6は、タンクエリアに免震層31が設けられた状態を示す図である。本実施の形態においては、立坑5を対面するように2箇所設けているが、この場合は、各立坑5より、免震層31を施工することができる。各立坑5より設けられた免震層31は、立坑5同士の間の任意の位置、例えばほぼ中央で接合しても良く、または、完全に接続されていなくても良い。なお、立坑5が1箇所のみの場合は、一方より免震層31を設ければよい。
【0036】
ここで、免震層31上方の地盤は、必要に応じて、立坑5または地面3から薬液注入等の地盤補強を行っても良い。また、免震層31上方かつ各タンクの周囲に地中梁などを施工して地盤を補強しても良い。
【0037】
なお、免震層31に充填された免震材23は液状化材料であるため、常時免震機能を得るためには、免震層31は地下水位よりも深い位置とする必要がある。脱水すると液状化しないためである。
【0038】
以上説明してきたように、本実施の形態によれば、地震等の振動により液状化しやすい免震材23が充填された免震層31を得ることができる。免震層31は、地震等の振動により液状化するため、地盤11からの振動を遮断し、上部のタンク等の構造物へ振動伝達を防ぐ事ができる。
【0039】
また、免震層31内には、コンクリートの打設も必要なく、特殊な免震構造物を設置する必要もないため、広範囲にわたる工事であっても、施工が容易であり、経済的にも優れる。
【0040】
なお、地震により一度液状化した免震層31は、振動が収まると再び流動性が消失し締まった砂礫と同等の性状となるため、地震の度に再度施工を行う必要はない。
【0041】
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一の機能を果たす構成要素については、図1から図6に示した番号と同一の番号を用い、重複した説明を避ける。
【0042】
第2の実施の形態は、第1の実施の形態と、免震材23および免震材23充填方法のみが異なる。すなわち、図1に示す免震層31の施工ステップはまったく同一である。まず、エリア端部に立坑5を設け(ステップ101)、立坑5より地盤に掘削孔25を設ける(ステップ102)。
【0043】
次いで、掘削機19が引き戻されながら掘削孔25へ免震材23を充填され(ステップ103)、免震材が封入される(ステップ104)。本実施の形態においては、免震材23として球状粒子の集合体が充填される(図4(a))。球状粒子は、ガラス製またはステンレス製等の剛性のある錆の生じ難い部材であり、地震による振動により、互いにすべりを生じたり、ベアリングのような回転運動を生じる。このため、球状粒子表面は平滑であることが望ましく、また球状粒子同士はほぼ同程度の大きさであることが望ましい。また、球状粒子のサイズは、大きすぎると施工性に問題があるため、例えば直径0.1〜10mm程度が望ましい。
【0044】
なお、第2の実施の形態においては、免震材23は、例えば加泥材注入用の配管とは別に設置されたスクリューコンベア等を用いて充填される。
【0045】
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を奏する。すなわち、免震材23が充填された免震層31を得ることができる。免震層31は、地震等の振動により内部の球状粒子同士が互いに滑動したり、ベアリングのような回転運動をすることにより、地盤11からの振動を遮断し、上部のタンク等の構造物へ振動伝達を防ぐ事ができる。
【0046】
また、振動による液状化現象を利用したものではないため、免震層31の施工深さは、前述のような地下水位とは無関係である。すなわち、本実施の形態にかかる免震層31は、地下水位の深い地域等においても効果を得ることができるため、施工エリアを選ばず、免震層31の適用自由度が高い。
【0047】
次に、第3の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、第1の実施の形態と同一の機能を果たす構成要素については、図1から図6に示した番号と同一の番号を用い、重複した説明を避ける。また、免震材23としては、第1の実施の形態にかかる液状化材、および第2の実施の形態にかかる球状粒子の集合体のいずれを用いても良いが、以下の説明においては、液状化材を用いた場合について説明する。
【0048】
第3の実施の形態は、図1においてステップ101〜105は同様である。すなわち、免震材23が充填された免震層31を施工する。次に、施工された免震層31の上部に、新たにパイプルーフを施工する。
【0049】
図7は、地盤中の免震層31およびパイプルーフ33の断面を示す概念図である。パイプルーフ33は一般的な方法で施工される。すなわち、ステップ101〜102を幅方向に繰り返し施工する。
【0050】
パイプルーフ33で使用されるパイプとしては、図7に示すように角パイプでも良く、または丸パイプでも良い。また、よりパイプルーフ33の強度を得るためには、隣り合うパイプ同士を接合することが望ましい。
【0051】
図8は、タンクエリアに設けられた免震層31の上部にパイプルーフ33が設けられた状態を示す図である。本実施の形態においては、立坑5を対面するように2箇所設けているが、この場合は、免震層31の施工と同様に、各立坑5より、パイプルーフ33を施工することができる。各立坑5より設けられたパイプルーフ33は、立坑5同士の間の任意の位置、例えばほぼ中央で接合しても良く、または、完全に接続されていなくても良い。なお、立坑5が1箇所のみの場合は、一方よりパイプルーフ33を設ければよい。
【0052】
第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を奏する。すなわち、地震等の振動により液状化しやすい免震材23が充填された免震層31を得ることができる。免震層31は、地震等の振動により液状化するため、地盤11からの振動を遮断し、上部のタンク等の構造物へ振動伝達を防ぐ事ができる。
【0053】
また、免震層31上部にパイプルーフ33が設けられたため、地震等の振動により、免震層31内の免震材23と免震層31上部の地盤11とが混ざることがなく、免震層31の機能が劣化することを防ぐことができる。さらに、免震層31上方の地盤11の強化を図ることができる。
【0054】
次に、第4の実施の形態について説明する。第4の実施の形態は、図1においてステップ101〜105は同様である。すなわち、免震材23が充填された免震層31を施工する。次に、立坑5の設けられていた部位に免震材23を充填する。
【0055】
図9は、立坑5の部位に、免震材23が充填された免震材充填部35が設けられた状態を示す図である。なお、図9においては、免震材充填部35は対面するように2箇所設けられているが、いずれか一方のみとしてもよい。すなわち、設置されているすべての立坑5を免震材充填部35とする必要はなく、立坑5の一部を残存させても良く、この場合は立坑5に水をはっても良い。また、タンクヤード周囲を立坑5で囲んでいた場合は、同様に免震材充填部35をタンクヤードを囲うように設けることもできる。
【0056】
立坑5へ免震材23を充填する際は、連続壁7等を残存させておいても構わない。但し、より免震効果を高めるためには、図9に示すように、立坑5における連続壁7等のコンクリート部を撤去した後に、免震材23を充填することが望ましい。この場合、コンクリートなどの構造物による振動の伝達をなくすことができ、免震材23が外部からの振動の伝達を効果的に遮断することができる。
【0057】
第4の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を奏する。すなわち、地震等の振動により液状化しやすい免震材23が充填された免震層31を得ることができる。免震層31は、地震等の振動により液状化するため、地盤11からの振動を遮断し、上部のタンク等の構造物へ振動伝達を防ぐ事ができる。
【0058】
また、免震エリア地盤の周方向にも免震材充填部35が設けられるため、側方からの振動に対しても、地下水面よりも深い位置の免震材充填部35が液状化し、地盤上のタンク等の造物への振動伝達を防ぐことができる。このため、より高い免震効果を得ることができる。
【0059】
次に、第5の実施の形態について説明する。第5の実施の形態は、立坑5を設けずに直接免震層31を施工するものである。図10は、第5の実施の形態にかかる免震層31を示す図である。
【0060】
免震層31の施工方法は、図1におけるステップ102〜104とほぼ同様であるが、ステップ102において、掘削孔25は地面3より施工される。すなわち、第5の実施の形態にかかる免震層31の施工においては、立坑5を設けることを要しない。
【0061】
掘削方法は、図3(d)に示した方法と同様であり、掘削機19は、後方より油圧ジャッキおよびパイプ21による推力により、所定の曲線を描きながら掘削を行う。所定の位置まで掘削を終えると、ステップ103と同様に、掘削孔25へ免震材23を充填しながら掘削機19を引き戻し、免震材23を封入する(ステップ104)。
【0062】
第5の実施の形態にかかる免震層31は、免震エリアの両側より施工することが望ましい。この場合、免震層31は、各施工開始位置の間の任意の位置、例えばほぼ中央で接合しても良く、または、完全に接続されていなくても良い。また、一方より免震層31を設けてもよい。
【0063】
第5の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を奏する。すなわち、地震等の振動により液状化しやすい免震材23が充填された免震層31を得ることができる。免震層31は、地震等の振動により液状化するため、地盤11からの振動を遮断し、上部のタンク等の構造物へ振動伝達を防ぐ事ができる。
【0064】
また、免震層31の施工において、予め立坑5を設けることを要せず、地上からの施工のみとなるため、施工が容易である。また、免震層31施工後に、別途免震材充填部35を設けなくとも、免震層31が地盤周囲方向からの振動伝達を効率よく遮断することができる。
【0065】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0066】
例えば、免震層31と免震材充填部35とでそれぞれ別の免震材を充填させてもよい。また、第3の実施の形態において、免震層31の上部だけでなく、下部にもパイプルーフ33を設けても良い。この場合は、免震層31と免震層31下部の地盤とが混ざりにくく、免震層31の劣化を防止することができる。また、第5の実施の形態にかかる曲線状の免震層31において、免震層31上部にさらにパイプルーフ33を設けても良い。なお、本発明にかかる免震層31は、タンクヤードへの適用に限られず、免震を要する一定範囲のいずれのエリアに対しても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本実施の形態にかかる免震層を施工する工程を示したフローチャート。
【図2】免震エリアとして複数のタンク1が設置されたタンクヤードの端部に立坑5を設けた図。
【図3】立坑5から地盤11を掘削する方法を示した図であり、(a)は連続壁7の芯材9を表出させ、連続壁7の背面側に止水薬注12を行った状態を決めす図、(b)は鞘管13を芯材9へ溶接等で接合した状態を示す図、(c)は掘削機19を鞘管13内に設置した状態を示す図、(d)は地盤11を掘削し掘削孔25を設けた状態を示す図。
【図4】免震層31を施工する方法を示した図であり、(a)は掘削機19を引き戻しながら、免震材23を掘削孔25へ充填する工程を示す図、(b)は掘削機19が芯材9の外面まで引き抜かれた状態を示す図、(c)は掘削機19および鞘管13を取り除き、免震材23の充填が完了した状態を示す図。
【図5】地盤中に設けられた免震層31を示した概念図であり、(a)は掘削孔25断面が丸穴の場合を示す図、(b)は掘削孔25断面が矩形の場合を示す図。
【図6】タンクエリアに免震層31が設けられた状態を示す図。
【図7】地盤中の免震層31およびパイプルーフ33の断面を示す概念図。
【図8】タンクエリアに設けられた免震層31の上部にパイプルーフ33が設けられた状態を示す図。
【図9】立坑5の部位に、免震材23が充填された免震材充填部35が設けられた状態を示す図。
【図10】第5の実施の形態にかかる免震層31を示す図。
【符号の説明】
【0068】
1………タンク
3………地面
5………立坑
7………連続壁
11………地盤
12………止水薬注
13………鞘管
15………止水ブラシ
17………モルタル
19………掘削機
21………パイプ
23………免震材
25………掘削孔
27………PC鋼線
29………モルタル
31………免震層
33………パイプルーフ
35………免震材充填部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免震を行うエリアの地盤に、振動により液状化する免震材が充填された免震層を有し、地震発生時に前記免震層が液状化することで免震することを特徴とする免震構造。
【請求項2】
免震を行うエリアの地盤に、振動により互いにすべりを生じる球状粒子の集合体が充填された免震層を有し、前記免震層内で前記球状粒子同士がすべりを生じることで免震することを特徴とする免震構造。
【請求項3】
前記免震層上部にパイプルーフを有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の免震構造。
【請求項4】
前記免震層の少なくとも一方の端部に、溝状の立坑を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の免震構造。
【請求項5】
前記免震層の少なくとも一方の端部に、鉛直方向に設けられた免震材充填部を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の免震構造。
【請求項6】
パイプ後方から推進力を与えて推進する掘削機で地盤を掘削する工程(a)と、
前記掘削機を引き戻しながら掘削部へ免震材を注入する工程(b)と、
前記掘削機を引き抜き、前記免震材を封入する工程(c)と、
を有することを特徴とする免震層施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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