説明

内視鏡の湾曲部の外皮チューブの固定構造

【課題】外皮チューブの端部を緊縛固定して十分な固定強度を確保し、しかも熟練をさほど必要としない簡単な作業で滑らかな表面状態に組み上げることができる内視鏡の湾曲部の外皮チューブの固定構造を提供すること。
【解決手段】外皮チューブ24の緊縛固定部A,Bを全周にわたって囲む略円筒形状の熱可塑性のプラスチック材からなるカバー筒6,7を設け、カバー筒6,7の一端側には内方に突出する突起部6a,7aを内周面の全周にわたって形成してその突起部6a,7aを外皮チューブ24の外周部に食い込む状態に係合させ、カバー筒6,7の他端側は湾曲部2に隣接する部材3,13の外面に溶着P,Qした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は内視鏡の湾曲部の外皮チューブの固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡において、遠隔操作によって屈曲するように挿入部可撓管の先端に連結された湾曲部は一般に、小さな曲率半径であらゆる方向に曲がることができるように構成されているので、柔軟で弾力性に富んだゴム系の外皮チューブにより外装されている。
【0003】
そのような湾曲部の外皮チューブの固定は、端部付近を外周側から緊縛固定するのが一般的であるが、緊縛状態を固めるために緊縛部の上から接着剤を塗布すると滑らかでない段差ができてしまう場合がある。
【0004】
内視鏡の挿入部の外面にそのような滑らかでない段差ができると、体内への挿脱の際に粘膜面を損傷してしまう恐れがあるので、そのような段差ができないよう接着作業は熟練者が時間をかけて慎重に行う必要があり、著しく製造コストがかかっていた。
【0005】
そこで、外皮チューブの固定に緊縛を用いずに、外皮チューブの内面側に位置する相手部材に係止凹部を形成して、外皮チューブの端部をその係止凹部に係止させて固定する構成等が考えられている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平7−8444
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、湾曲部の外皮チューブには不規則で大きな引っ張り力が繰り返し加わるので、特許文献1に記載されている上述のような構造では固定強度が不足する場合があり、十分な耐久性が得られない。湾曲部の外皮チューブの固定強度を確保するのに、緊縛に勝るものはないと思われる。
【0007】
そこで本発明は、外皮チューブの端部を緊縛固定して十分な固定強度を確保し、しかも熟練をさほど必要としない簡単な作業で滑らかな表面状態に組み上げることができる内視鏡の湾曲部の外皮チューブの固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡の湾曲部の外皮チューブの固定構造は、遠隔操作によって屈曲するように挿入部可撓管の先端に連結された湾曲部を弾力性のある外皮チューブで外装し、外皮チューブの少なくとも一方の端部を外周側から緊縛固定した内視鏡の湾曲部の外皮チューブ固定構造において、外皮チューブの緊縛固定部を全周にわたって囲む略円筒形状の熱可塑性のプラスチック材からなるカバー筒を設け、カバー筒の一端側には内方に突出する突起部を内周面の全周にわたって形成してその突起部を外皮チューブの外周部に食い込む状態に係合させ、カバー筒の他端側は湾曲部に隣接する部材の外面に溶着したものである。
【0009】
なお、カバー筒は、外皮チューブの端部を囲んで取り付けられた状態で外面に露出する部分に角がない形状に形成されていてもよく、内周面が外皮チューブの緊縛固定部の外面に密接する大きさに形成されていてもよい。
【0010】
また、カバー筒が、湾曲部と挿入部可撓管との境界部の可撓性のない部分に配置されていてもよく、その場合、カバー筒の他端側が挿入部可撓管の外層被覆の外面に溶着されていてもよく、さらに、カバー筒が挿入部可撓管の外層被覆と同系の材料により形成されていてもよい。
【0011】
また、カバー筒が、湾曲部の先端に連結された先端部本体と湾曲部との境界部の可撓性のない部分に配置されていてもよく、その場合に、外皮チューブの他端側が先端部本体の外面に溶着されてもよい。そして、カバー筒が先端部本体と同系の材料により形成されていてもよい。
【0012】
また、カバー筒の突起部が係合する円周溝が外皮チューブの外周面に形成されていてもよく、その場合、カバー筒の突起部が円周溝の底面に弾力的に食い込んでいてもよく、或いは、カバー筒の突起部が、外皮チューブの外周面に直接弾力的に食い込んでいてもよい。
【0013】
また、カバー筒の突起部と外皮チューブとの係合部に接着剤が塗布されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外皮チューブの緊縛固定部を全周にわたって囲む略円筒形状の熱可塑性のプラスチック材からなるカバー筒を設け、カバー筒の一端側には内方に突出する突起部を内周面の全周にわたって形成してその突起部を外皮チューブの外周部に食い込む状態に係合させ、カバー筒の他端側は湾曲部に隣接する部材の外面に溶着したことにより、外皮チューブの端部を緊縛固定して十分な固定強度を確保し、しかも熟練をさほど必要としない簡単な作業で滑らかな表面状態に組み上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
遠隔操作によって屈曲するように挿入部可撓管の先端に連結された湾曲部を弾力性のある外皮チューブで外装し、外皮チューブの少なくとも一方の端部を外周側から緊縛固定した内視鏡の湾曲部の外皮チューブ固定構造において、外皮チューブの緊縛固定部を全周にわたって囲む略円筒形状の熱可塑性のプラスチック材からなるカバー筒を設け、カバー筒の一端側には内方に突出する突起部を内周面の全周にわたって形成してその突起部を外皮チューブの外周部に食い込む状態に係合させ、カバー筒の他端側は湾曲部に隣接する部材の外面に溶着する。
【実施例】
【0016】
図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図2は内視鏡の全体構成を示しており、体内に挿入される挿入部可撓管1の先端に湾曲部2が連結され、観察窓や照明窓等が配置された先端部本体3が湾曲部2の先端に連結されている。
【0017】
挿入部可撓管1の基端に連結された操作部4には、湾曲部2を遠隔操作するための湾曲操作ノブ5が回転操作自在に配置されており、湾曲操作ノブ5を適宜回転させることにより、二点鎖線で例示されるように、湾曲部2を任意の方向に任意の角度だけ屈曲させることができる。
【0018】
図1は湾曲部2付近を示しており、挿入部可撓管1は、金属螺旋管11の外周に網状管12を被覆して、最外層に例えばポリウレタン樹脂等からなる外層被覆13が被せられた構成になっていて、その最先端部分には可撓管接続口金14が取り付けられている。
【0019】
湾曲部2は、短筒状の複数(例えば5〜20個程度)の節輪21をリベット22で回動自在に連結して、外面に網状管23を被覆し、最外層に柔軟で弾力性に富むゴム系材料からなる外皮チューブ24が被せられた構成になっていて、その後端部分には湾曲部接続口金25が取り付けられている。26は、操作部4側から牽引操作される操作ワイヤである。
【0020】
そのような挿入部可撓管1と湾曲部2とは、可撓管接続口金14と湾曲部接続口金25とを嵌合接続してその状態を固定ビス15で固定することにより連結され、湾曲部2と先端部本体3とは、先端部本体3の外周部に形成された孔に係合する係止駒片8に、湾曲部2の最先端の節輪21aを固定ビス9で固定することにより連結されている。
【0021】
湾曲部2を外装する外皮チューブ24の両端部は、各々外周側から例えば糸又はモノフィラメント等で緊縛することにより機械的に固定されており(後端側緊縛固定部A、先端側緊縛固定部B)、各緊縛部A,Bは、略円筒形状の熱可塑性のプラスチック材からなるカバー筒6,7によって全周が囲まれている。
【0022】
図3は、製造工程において、湾曲部2に外皮チューブ24が被覆される前の状態を示しており、挿入部可撓管1と湾曲部2とが連結され、先端部本体3は湾曲部2の先端に取り付けられていない。ただし、湾曲部2の先端に先端部本体3を取り付けておく工程を採っても差し支えない。
【0023】
その状態で、図4に示されるように、湾曲部2に外皮チューブ24を被せて、二つのカバー筒6,7を外皮チューブ24の中寄りの位置に係合させておく。なお、後側カバー筒6の内周面の先端部分には内方に向かって突出する突起部6aが全周に形成されていて、その突起部6aが係合する円周溝24aが外皮チューブ24の外周面に全周にわたって形成されている。
【0024】
一方、先側カバー筒7の内周面の後端部分にも内方に向かって突出する突起部7aが全周に形成されている。その突起部7aは後側カバー筒6の突起部6aより突出量が小さく形成されていて、外皮チューブ24にはその突起部7aと係合するための円周溝の類は形成されていない。
【0025】
ただし、突起部7aと係合するための円周溝を後側カバー筒6側と同様に外皮チューブ24の外周部に形成してもよく、逆に、後側カバー筒6側において、先側カバー筒7側と同様に外皮チューブ24の外周部に円周溝を形成しない構成を採っても差し支えない。
【0026】
次いで、図5に示されるように、湾曲部2の先端に先端部本体3を連結したら、図6に示されるように、外皮チューブ24の両端を緊縛固定する。後端側緊縛固定部Aは、可撓性のない可撓管接続口金14の上に位置する挿入部可撓管1の外層被覆13の端部の外面に外皮チューブ24の端部を重ね合わせて締め付ける状態になっており、先端側緊縛固定部Bは、可撓性のない最先端の節輪21a(又は、先端部本体3)の外表面に外皮チューブ24の端部を緊縛固定している。
【0027】
図1に戻って、そのような外皮チューブ24の後端側緊縛固定部Aを全周にわたって囲むように後側カバー筒6をスライド移動させる。そして、後側カバー筒6の先端側の突起部6aを外皮チューブ24の円周溝24a内に食い込む状態に係合させ、後側カバー筒6の後端側の部分は挿入部可撓管1の外層被覆13の外面に溶着する(溶着部P)。後側カバー筒6を挿入部可撓管1の外層被覆13と同じポリウレタン樹脂系の材料で形成しておくと、溶着性がよい。
【0028】
なお、後側カバー筒6の外面は、そのようにして外皮チューブ24の後端側緊縛固定部Aを囲む状態に取り付けられたときに露出する部分に角がない形状に形成されており、内面は後端側緊縛固定部Aの外面に密接する大きさに形成されている。
【0029】
そのようにして後端側緊縛固定部Aを囲む状態に取り付けられた後側カバー筒6は、挿入部可撓管1と湾曲部2との境界部の剛体部に位置しているので、挿入部可撓管1の可撓性や湾曲部2の湾曲動作を妨げない。
【0030】
そして、溶着部Pでは後側カバー筒6と外層被覆13とが一体化された状態で水密に結合し、後側カバー筒6の突起部6a側は外皮チューブ24の円周溝24aに食い込んでいるのでその部分のシール性が確保され、体内汚液等が後端側緊縛固定部Aに達しない。
【0031】
なお、後側カバー筒6の突起部6aが円周溝24aの底面を押し潰す状態に弾力的に食い込むように各部の寸法を設定すればシール性が一段と安定し、突起部6aと円周溝24aとの係合部に接着剤を塗布しておけばより完璧なシール性が得られる。
【0032】
先側カバー筒7の取り付け作業も、後側カバー筒6と同様にして、先端側緊縛固定部Bを全周にわたって囲むように先側カバー筒7をスライド移動させる。先側カバー筒7の後端側の突起部7aは外皮チューブ24の外周面に直接弾力的に食い込んだ状態になる。
【0033】
そして先側カバー筒7の先端側の部分は先端部本体3の外面に溶着する(溶着部Q)。先側カバー筒7を先端部本体3と同じ例えばポリカーボネート樹脂系の材料等で形成しておくと、溶着性がよい。
【0034】
なお、先側カバー筒7の外面も、そのようにして外皮チューブ24の先端側緊縛固定部Bを囲む状態に取り付けられたときに露出する部分に角がない形状に形成されており、内面は先端側緊縛固定部Bの外面に密接する大きさに形成されている。
【0035】
そのようにして先端側緊縛固定部Bを囲む状態に取り付けられた先側カバー筒7は、湾曲部2の最先端の節輪21aと先端部本体3との境界部に位置しているので、湾曲部2の湾曲動作を妨げない。
【0036】
そして、溶着部Qでは先側カバー筒7と先端部本体3とが一体化された状態で水密に結合し、先側カバー筒7の突起部7a側は外皮チューブ24の表面に弾力的に食い込んでいてその部分のシール性が確保され、体内汚液等が先端側緊縛固定部Bに達しない。なお、先側カバー筒7の突起部7aと外皮チューブ24との係合部に接着剤を塗布しておけばより完璧なシール性が得られる。
【0037】
このようにして後端側緊縛固定部Aと先端側緊縛固定部Bとを各々囲んで取り付けられた後側カバー筒6と先側カバー筒7の露出部分は滑らかで角がないので、本発明により、外皮チューブ24の端部を緊縛固定して十分な固定強度を確保することができると共に、熟練をさほど必要としない簡単な作業で滑らかな表面状態に組み上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例の内視鏡の湾曲部の側面断面図である。
【図2】本発明の実施例の内視鏡の側面図である。
【図3】本発明の実施例の内視鏡の湾曲部の外皮チューブを組み付ける工程を順に示す側面断面図である。
【図4】本発明の実施例の内視鏡の湾曲部の外皮チューブを組み付ける工程を順に示す側面断面図である。
【図5】本発明の実施例の内視鏡の湾曲部の外皮チューブを組み付ける工程を順に示す側面断面図である。
【図6】本発明の実施例の内視鏡の湾曲部の外皮チューブを組み付ける工程を順に示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 挿入部可撓管
2 湾曲部
3 先端部本体(湾曲部に隣接する部材)
6 後側カバー筒
6a 突起部
7 先側カバー筒
7a 突起部
13 外層被覆(湾曲部に隣接する部材)
24 外皮チューブ
24a 円周溝
A 後端側緊縛固定部
B 先端側緊縛固定部
P,Q 溶着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔操作によって屈曲するように挿入部可撓管の先端に連結された湾曲部を弾力性のある外皮チューブで外装し、上記外皮チューブの少なくとも一方の端部を外周側から緊縛固定した内視鏡の湾曲部の外皮チューブ固定構造において、
上記外皮チューブの緊縛固定部を全周にわたって囲む略円筒形状の熱可塑性のプラスチック材からなるカバー筒を設け、上記カバー筒の一端側には内方に突出する突起部を内周面の全周にわたって形成してその突起部を上記外皮チューブの外周部に食い込む状態に係合させ、上記カバー筒の他端側は上記湾曲部に隣接する部材の外面に溶着したことを特徴とする内視鏡の湾曲部の外皮チューブの固定構造。
【請求項2】
上記カバー筒は、上記外皮チューブの端部を囲んで取り付けられた状態で外面に露出する部分に角がない形状に形成されている請求項1記載の内視鏡の湾曲部の外皮チューブの固定構造。
【請求項3】
上記カバー筒は、内周面が上記外皮チューブの緊縛固定部の外面に密接する大きさに形成されている請求項1又は2記載の内視鏡の湾曲部の外皮チューブの固定構造。
【請求項4】
上記カバー筒が、上記湾曲部と上記挿入部可撓管との境界部の可撓性のない部分に配置されている請求項1、2又は3記載の内視鏡の湾曲部の外皮チューブの固定構造。
【請求項5】
上記カバー筒の上記他端側が上記挿入部可撓管の外層被覆の外面に溶着されている請求項4記載の内視鏡の湾曲部の外皮チューブの固定構造。
【請求項6】
上記カバー筒が上記挿入部可撓管の外層被覆と同系の材料により形成されている請求項5記載の内視鏡の湾曲部の外皮チューブの固定構造。
【請求項7】
上記カバー筒が、上記湾曲部の先端に連結された先端部本体と上記湾曲部との境界部の可撓性のない部分に配置されている請求項1、2又は3記載の内視鏡の湾曲部の外皮チューブの固定構造。
【請求項8】
上記外皮チューブの上記他端側が上記先端部本体の外面に溶着される請求項7記載の内視鏡の湾曲部の外皮チューブの固定構造。
【請求項9】
上記カバー筒が上記先端部本体と同系の材料により形成されている請求項8記載の内視鏡の湾曲部の外皮チューブの固定構造。
【請求項10】
上記カバー筒の突起部が係合する円周溝が上記外皮チューブの外周面に形成されている請求項1ないし9のいずれかの項に記載の内視鏡の湾曲部の外皮チューブの固定構造。
【請求項11】
上記カバー筒の突起部が、上記円周溝の底面に弾力的に食い込んでいる請求項10記載の内視鏡の湾曲部の外皮チューブの固定構造。
【請求項12】
上記カバー筒の突起部が、上記外皮チューブの外周面に直接弾力的に食い込んでいる請求項1ないし9のいずれかの項に記載の内視鏡の湾曲部の外皮チューブの固定構造。
【請求項13】
上記カバー筒の突起部と上記外皮チューブとの係合部に接着剤が塗布されている請求項請求項1ないし12のいずれかの項に記載の内視鏡の湾曲部の外皮チューブの固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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