説明

内視鏡用デバイス

【課題】内視鏡用デバイスにおいて、デバイス先端の処置部が内視鏡先端の近傍に到達したことを視覚に頼ることなく認識することができるようにする。
【解決手段】内視鏡用デバイス10において、シース13上に規制部材14を設け、規制部材を、内視鏡20の挿入口23の内径よりも大きな径を有する大径部14aと、大径部よりも処置部側に配置され、挿入口の内径よりも小さな径を有する小径部14bとで構成し、シースが挿入口内へ送られることにより挿入口内へ移動するとき、小径部が挿入口に接触して挿入口内への送りに抗する力を増大させるようにするとともに、大径部により、内視鏡先端からの処置部の突出量を制限するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡下での処置に用いられる内視鏡用デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内視鏡を用いて観察しながら腫瘍等を除去するEMR(内視鏡的粘膜切除術)やESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)が脚光を浴びている。このような内視鏡を用いた治療法においては各種の内視鏡用のデバイスが用いられる。治療に際しては、操作者は目的に合致した内視鏡用デバイスを内視鏡の鉗子口から挿入し、内視鏡の先端から処置部を突出させ、内視鏡により状況をモニタしながら処置部を操作し、目的とする処置を行う。
【0003】
このような内視鏡用デバイスの操作に際し、操作者が内視鏡視野内での距離感を良好に把握できなかった場合には、内視鏡の先端から処置部を過剰に突出させてしまい、円滑な施術が行えなくなるおそれがある。
【0004】
そこで、内視鏡用のデバイスとして、従来、内視鏡の先端からの処置部の最大突出量を適正な範囲に規制できるようにするとともに、使用する内視鏡の寸法の相違に応じて、その最大突出量を容易に調整できるようにしたものも知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
このデバイスにおいては、デバイスの内視鏡への挿入に際し、デバイスの操作部近傍に設けられた検出部材が、内視鏡の挿入口に設けられたストッパに当たることによって、内視鏡先端からのデバイスの突出量を、許容し得る範囲内に規制するようにしている。また検出部材と挿入口との位置関係を目視することにより、デバイスの先端が、内視鏡の先端に達したかどうかを確認することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3796805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この従来の内視鏡用デバイスによれば、操作者は、デバイスを内視鏡に挿入する際に、デバイス先端の処置部が内視鏡の先端やその近傍に到達したことを認識するためには、検出部材と挿入口との位置関係を目視により把握しながらデバイスの挿入を行う必要がある。したがってその間、操作者は、内視鏡のモニタ画面等から視線を外さなければならない。
【0008】
本発明の目的は、このような従来技術の問題点に鑑み、内視鏡用デバイスにおいて、デバイス先端の処置部が内視鏡先端の近傍に到達したことを視覚に頼ることなく認識することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため、本発明に係る内視鏡用デバイスは、内視鏡下での処置を施すための処置部と、前記処置部を操作するための操作部と、前記処置部及び操作部間を接続する部材を収納したシースと、前記シース上に設けられた規制部材とを備え、前記規制部材は、内視鏡へ前記処置部及びシースを挿入するために内視鏡に設けられた挿入口の内径よりも大きな径を有する大径部と、該大径部よりも前記処置部側の所定位置に配置され、該挿入口の内径よりも小さな径を有する小径部とを備え、前記小径部は、前記シースが前記挿入口内へ送られることにより前記挿入口内へ移動するとき、該挿入口に接触して該挿入口内への送りに抗する力を増大させるものであり、前記大径部は、前記挿入口内への移動が該挿入口によって阻止されることにより、内視鏡先端からの前記処置部の突出量を制限するものであることを特徴とする。
【0010】
これによれば、大径部により処置部の突出量が制限される位置より手前の所定位置、たとえば内視鏡先端の近傍の位置まで、処置部がシースの送りによって近づいた場合、小径部が挿入口に接触して該挿入口内への送りに抗する力を増大させるので、この反発力が、シースを送っている操作者に対し、シースを介して伝達される。これにより操作者は、該所定位置まで処置部が近づいたことを、視覚に頼ることなく認識することができる。
【0011】
また、本発明においては、前記大径部は前記挿入口の内径よりも大きな径を有する球状の部材であり、前記小径部は前記挿入口の内径よりも小さな径を有する球状の部材であり、前記小径部は前記大径部から前記シースに沿って所定距離だけ離れた位置において、該所定距離を変更し得るように取り付けられることを特徴とする。
【0012】
これによれば、大径部及び小径部間の距離を変更することにより、各種の内視鏡用デバイスに適した大径部及び小径部間の距離を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る内視鏡用デバイス及び内視鏡を示す図である。
【図2】図1の内視鏡用デバイスにおける大径部及び小径部の機能を示す図である。
【図3】図1の内視鏡用デバイスにおける規制部材の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の一実施形態に係る内視鏡用のデバイス10及び内視鏡20を示す。同図においては、内視鏡20に対しその鉗子口23からデバイス10の先端側が挿入されている様子が示されている。デバイス10としては、種々の鉗子やスネア、電気メス等のデバイスが該当する。
【0015】
同図に示すように、デバイス10は、内視鏡20の視野内において外科的な処置を施すための処置部11と、処置部11を操作するための操作部12と、処置部11及び操作部12間を接続する操作ワイヤ等を収納した可撓性のシース13と、シース13上に設けられた規制部材14とを備える。
【0016】
規制部材14は、鉗子口23の内径よりも大きな径を有する球状の大径部14aと、大径部14aよりも処置部11側の所定位置に配置され、鉗子口23の内径よりも小さな径を有する小径部14bとを備える。
【0017】
内視鏡20へのデバイス10の挿入は、操作者の右手40によってシース13が処置部11側から鉗子口23内へ順次送られることにより行われる。デバイス10が挿入されると、処置部11が内視鏡20の先端から突出するので、操作者は操作部12により処置部11を操作することによって、デバイス10の種類に応じた機能を実施することができる。
【0018】
内視鏡20へのデバイス10の挿入量、すなわち内視鏡20先端からの処置部11の突出量については、デバイスの種類や患部の状態に応じて、一定の上限値を設定することができる。小径部14bは、デバイス10の挿入量がこの上限値の近傍に達したとき、操作者の手元に違和感を付与して注意を促す機能を有する。
【0019】
すなわち、処置部11が内視鏡20の先端から突出するとき、小径部14bは、鉗子口23内へ送られるシース13と一体的に鉗子口23内へ移動する。このとき、小径部14bは、鉗子口23に接触し、シース13の送り動作に抗する力をシース13に付与する。この抵抗力が、シース13を介して操作者の右手40に伝達される。
【0020】
シース13がさらに送られ、デバイス10の挿入量が上述の上限値に達した場合には、大径部14aが鉗子口23に接触し、それ以上のシース13の送りは阻止される。つまり大径部14aは、内視鏡20先端からの処置部11の突出量が上述の上限値を超えないように制限する機能を有する。
【0021】
シース13上における大径部14aの位置はこの機能を実現し得るように定められる。小径部14bの位置としては、たとえば、小径部14bが鉗子口23の入り口に位置するときに、処置部11の先端が丁度内視鏡23の先端に位置するような位置や、処置部11が内視鏡23の先端から若干突出したところに位置するような位置が該当する。
【0022】
大径部14a及び小径部14bは、各中心がシース13の中心軸上に位置するように、シース13上に取り付けられる。大径部14a及び小径部14bは、この取付けが、着脱可能に、かつ使用するデバイス10や内視鏡20の寸法等に応じて取付け位置が変更することができるように構成される。つまり、大径部14a及び小径部14bは、各種のデバイス10に対し、シース13上の所望の位置に対し、任意に取り付けることができる。
【0023】
このような取付けは、たとえば、大径部14a及び小径部14bを、それぞれ半球状の2つの部材により構成し、該2つの部材によりシース13を任意の位置において挟んで該2つの部材を結合させ、シース13上に取り付けるような構成とすることによって、実現することができる。
【0024】
内視鏡20は、内視鏡20を操作するための操作部21と、体内に挿入される挿入部22と、デバイス10を挿入するための鉗子口23と、鉗子口23に設けられた蓋24と、操作部21を外部の光源装置、空気や水の供給源、モニタ等に接続する接続ケーブル25とを備える。蓋24はデバイス10を使用しない場合に、塵埃の流入等を防止するために閉じられる。
【0025】
挿入部22の先端には、外科的処置等の対象部位を観察するための対物レンズや、水や空気を噴出されるためのノズル、デバイス10先端の処置部11を突出させるための鉗子口、観察対象を照明するためのライトガイド等が設けられている。挿入部22には、これら先端の各要素に通じる光ファイバや供給路等の各種チャンネルが収納される。各種チャンネルには、デバイス10を挿入するためのデバイス用チャンネルが含まれる。
【0026】
操作部21には、挿入部22の先端部の向きを制御するためのアングルノブ211や、送気送水ボタン212、吸引ボタン213等が設けられている。送気送水ボタン212は挿入部22先端の対物レンズが汚れた場合に、接続ケーブル25を介して供給される水や空気を挿入部22先端のノズルから噴出させて汚れを洗い流すためのものである。吸引ボタン213は粘液等の吸引を行うためのものである。
【0027】
図2は大径部14a及び小径部14bの機能を示す。同図においては、内視鏡20における鉗子口23の近傍の部分が2点鎖線で示されている。図中の26は、デバイス10を挿入するために内視鏡20に設けられたデバイス用チャンネルである。デバイス用チャンネル26は鉗子口23から挿入部22の先端にわたって設けられている。鉗子口23側の端部は鉗子口23の入り口となっている。
【0028】
措置部11の先端が挿入部22の先端又はその近傍に達するまでデバイス10が内視鏡20に挿入されたとき、図2(a)に示されるように、小径部14bが鉗子口23の端部に接触し、それにより生じる抵抗力がシース13を介して操作者に伝わる。これにより、操作者は、措置部11の先端が挿入部22の先端又はその近傍に存在することを認識することができる。
【0029】
この状態においては、小径部14bは鉗子口23の内径よりも小さな径を有するので、操作者は小径部14bによる抵抗力に抗してさらにデバイス10の挿入を行うことができる。しかしながら、図2(b)のように、大径部14aが鉗子口23に達した場合には、それ以上の挿入は阻止される。
【0030】
この構成において、挿入部22が体内に挿入された状態にある内視鏡20に対してデバイス10を挿入する際には、操作者は、図1に示すように、左手30で内視鏡20の操作部21を保持する。そして右手40で、シース13を処置部11側から、鉗子口23を経てデバイス用チャンネル26内へ順次送ることにより、デバイス10の挿入を行う。
【0031】
この間、操作者は内視鏡20によるモニタ映像から視線を逸らす必要はなく、挿入部22の先端が体腔の内壁に異常に接近していないかどうかをモニタ映像で確認しながらシース13を送ることができる。処置部11の先端が挿入部22の先端又はその近傍に達すると、図2(a)のように、小径部14bが鉗子口23の端部に接触し、シース13を送ることに対する反発力を、シース13を介して操作者の右手40に伝達する。
【0032】
これにより、操作者は処置部11が挿入部22の先端又はその近傍に達したことを認識する。この認識に応じ、操作者は内視鏡20によるモニタ映像をより注意深く観察しながら、慎重にシース13の送り加減を調整し、処置部11を挿入部22の先端から突出させ、好ましい突出量を得ることができる。その際、誤ってシース13を送り過ぎた場合には、大径部14aにより処置部11の過剰な突出が防止される。
【0033】
このようにして、デバイス10の挿入時には、処置部11を突出させる十分前から、操作者は視線を移す必要なくモニタ映像を観察しながらデバイス10の挿入を行い、右手40で抵抗力の増加を感じた場合にはそれによって処置部11の突出を認識し、その後処置部11を安全に突出させることができる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態によれば、大径部14a及び小径部14bからなる規制部材14を設けるようにしたため、操作者は、処置部11の先端が挿入部22の先端又はその近傍に達したことを、目視による確認を要することなく、認識することができる。したがって、内視鏡20によるモニタ映像から視線を移す必要なく、処置部11を安全に突出させることができる。その際、大径部14aにより、処置部11の過剰な突出を防止することができる。
【0035】
図3(a)及び(b)は規制部材14の代わりに採用し得る別の規制部材15及び16を示す。図3(a)の規制部材15は処置部11側に頂点を有する円錐形状の部材であり、その中心軸上においてシース13に固定される。上述の規制部材14が相互に分離した大径部14a及び小径部14bにより構成されるのに対し、規制部材15は、大径部及び小径部が一体化した構成となっている。
【0036】
すなわち、規制部材15を用いた場合には、処置部11の先端が挿入部22の先端又はその近傍に達すると、まず、規制部材15における頂点近傍の径が小さい部分が鉗子口23内面の端部に接触し、シース13の送りに対する抵抗力を増大させる。この抵抗力がシース13を介して操作者に伝わる。すなわち、規制部材15のこの部分は規制部材14の小径部14bの場合と同様の作用効果を奏する。
【0037】
この抵抗力は、デバイス10の挿入量が増大するのに伴って増大する。そして、鉗子口23内面の端部に接触する規制部材15部分の径が鉗子口23の内径と等しくなると、それ以上のデバイス10の挿入が阻止される。すなわち、規制部材15のこの部分は規制部材14における大径部14aの場合と同様の作用効果を奏する。
【0038】
円錐状部材15は、このように徐々に抵抗感が増大する特性を有するので、そのような特性に適したデバイス10に適用するのが望ましい。規制部材15のシース13における取付け位置や寸法は、要求される特性に応じて決定される。
【0039】
図3(b)の規制部材16は大きな径を有する球状の大径部材16a及びこれよりも小さな径を有する球状の小径部材16bにより構成される。大径部材16a及び小径部材16bはいずれも完全な球体ではなく、両極が平面で切り取られた形状を有する。両極間をシース13が貫通している。
【0040】
大径部材16aは規制部材14の大径部14aの場合と同様に、処置部11の過剰な突出を防止する機能を有する。小径部材16bの径は鉗子口23の内径より小さいが、小径部14bの径よりも大きい。また、小径部14bは大径部14aから離れているのに対し、小径部材16bは大径部材16aに隣接している。したがって、小径部材16bは小径部14bに比べ、シース13の送りに対する抵抗力がかなり大きい。
【0041】
規制部材16のシース13における位置や寸法は、このような特性を考慮して決定される。また規制部材16はこのような特性に適したデバイス10に対して適用される。規制部材15及び16はいずれも、規制部材14の場合と同様に、シース13上の任意の位置に、着脱可能に取り付けることができるように構成することができる。
【符号の説明】
【0042】
10…内視鏡用デバイス、11…処置部、12…操作部、13…シース、14,15,16…規制部材、14a…大径部、14b…小径部、16a…大径部材、16b…小径部材、20…内視鏡、23…鉗子口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡下での処置を施すための処置部と、
前記処置部を操作するための操作部と、
前記処置部及び操作部間を接続する部材を収納したシースと、
前記シース上に設けられた規制部材とを備え、
前記規制部材は、内視鏡へ前記処置部及びシースを挿入するために内視鏡に設けられた挿入口の内径よりも大きな径を有する大径部と、該大径部よりも前記処置部側の所定位置に配置され、該挿入口の内径よりも小さな径を有する小径部とを備え、
前記小径部は、前記シースが前記挿入口内へ送られることにより前記挿入口内へ移動するとき、該挿入口に接触して該挿入口内への送りに抗する力を増大させるものであり、
前記大径部は、前記挿入口内への移動が該挿入口によって阻止されることにより、内視鏡先端からの前記処置部の突出量を制限するものであることを特徴とする内視鏡用デバイス。
【請求項2】
前記大径部は前記挿入口の内径よりも大きな径を有する球状の部材であり、
前記小径部は前記挿入口の内径よりも小さな径を有する球状の部材であり、
前記小径部は前記大径部から前記シースに沿って所定距離だけ離れた位置において、該所定距離を変更し得るように取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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