説明

内視鏡装置および内視鏡装置の焦点位置調整方法

【課題】生体内に存在する被写体の局所的な領域の内視鏡観察を行う際の焦点調整に要する時間を従来に比べて短縮する内視鏡装置を提供する。
【解決手段】可視光領域を含む広帯域光と可視光領域を離散化して得られる狭帯域光とを選択的に切り替えて物体に向けて照射する照明光を射出する光源と、物体側から順に、第1レンズ群、可動光学系、第2レンズ群を有し、照明光の戻り光を結像させる対物光学系と、第1レンズ群と第2レンズ群との間で可動光学系を光軸に沿って往復移動させ、物体からの戻り光の焦点位置調整を行なう駆動部と、可動光学系が前記第1レンズ群から所定の距離離間した位置に到達したか否かを検知する検知部と、検知部によって可動光学系が前記位置に到達したことを検知したときに、光源が出射する照明光を、広帯域光から狭帯域光に切り替える、又は狭帯域光から広帯域光に切り替えるように光源を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡装置および内視鏡装置の焦点位置調整方法に関し、特に、観察倍率を変倍可能な内視鏡装置および内視鏡装置の焦点位置調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内視鏡及び光源装置等を有して構成される内視鏡装置は、従来より、医療分野等において広く用いられている。特に、医療分野における内視鏡装置は、術者等が生体内の観察等を行うという用途において主に用いられている。
【0003】
また、医療分野の内視鏡装置を用いた観察として一般的に知られているものとしては、例えば、R(赤)、G(緑)及びB(青)の各色を含む光を生体内の被写体に照射することにより、肉眼による観察と略同様の色合いの画像を得ることが可能な通常光観察、及び、通常光観察の照明光に比べて狭い帯域の光を該被写体に照射することにより、生体の粘膜表層に存在する血管等が強調された画像を得ることが可能な狭帯域光観察が挙げられる。そして、前述した2種類の観察に対応したそれぞれのモードに切り替え可能な構成を具備する内視鏡装置が特許文献1に開示されている。
【0004】
一方、医療分野の内視鏡装置においては、生体内に存在する被写体の局所的な領域を、数十倍〜数百倍の観察倍率により観察することが可能なものもある。
【0005】
一般的に、ユーザは、生体内に存在する被写体の局所的な領域の内視鏡観察を行う際に、該内視鏡の先端部を所望の領域へ近づけながら観察倍率を低倍率側から高倍率側へ変化させる、という動作を行う。そして、通常光観察において得られる画像を見ながら前述の動作を行った場合、内視鏡に設けられた光学系の被写界深度の浅さと、焦点調整の手がかりとなる所見(粘膜表面の微細構造及び毛細血管パターンの少なくとも一方)のコントラストの低さとが相まって、観察対象に焦点を合わせ辛い、という問題が生じる。
【0006】
これに対し、狭帯域光観察においては、前述した動作を行う際の焦点調整の手がかりとなる所見(粘膜表面の微細構造及び毛細血管パターンの少なくとも一方)のコントラストが改善された画像を得ることができる。但し、内視鏡を用いて狭帯域光観察を行う場合においてこのような画像を得るためには、観察対象と内視鏡の先端部との間の距離をある程度まで近づける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−020728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、特許文献1によれば、所定の観察倍率を境に通常光観察モードと狭帯域光観察モードとを切り替える技術が開示されている反面、前述の動作、すなわち、生体内に存在する被写体の局所的な領域の内視鏡観察の際にユーザが実際に行う動作を想定したものとして両観察モードを切り替えることまでは言及されていない。
【0009】
そのため、特許文献1に記載の技術によれば、生体内に存在する被写体の局所的な領域の内視鏡観察を行う際に、適切な狭帯域光観察画像が得られない状況が発生し易くなり、結果的に、焦点調整に要する時間が長くなってしまう、という課題が生じている。
【0010】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、生体内に存在する被写体の局所的な領域の内視鏡観察を行う際の焦点調整に要する時間を従来に比べて短縮することが可能な内視鏡装置および内視鏡装置の焦点位置調整方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明における一態様の内視鏡装置は、可視光領域を含む広帯域光と前記可視光領域を離散化して得られる狭帯域光とを選択的に切り替えて物体に向けて照射する照明光を射出する光源と、前記物体側から順に、第1レンズ群、可動光学系、第2レンズ群を有し、前記照明光の戻り光を結像させる対物光学系と、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間で前記可動光学系を光軸に沿って往復移動させ、前記物体からの戻り光の焦点位置調整を行なう駆動部と、前記可動光学系が前記第1レンズ群から所定の距離離間した位置に到達したか否かを検知する検知部と、前記検知部によって前記可動光学系が前記位置に到達したことを検知したときに、前記光源が出射する前記照明光を、前記広帯域光から前記狭帯域光に切り替える、又は前記狭帯域光から前記広帯域光に切り替えるように前記光源を制御する制御部と、を有する。
【0012】
本発明における一態様の内視鏡装置の焦点位置調整方法は、第1レンズ群、可動光学系、第2レンズ群の順に物体からの戻り光を透過させ、前記戻り光を結像させる対物光学系と、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間で前記可動光学系を光軸に沿って往復移動させ、前記物体からの戻り光の焦点位置調整を行なう駆動部とを有し、可視光領域を含む広帯域光と前記可視光領域を離散化して得られる狭帯域光とを選択的に切り替えて前記物体に向けて照射する内視鏡装置の焦点位置調整方法において、前記駆動部によって前記可動光学系が前記第1レンズ群から所定の距離離間した位置に到達した際に、前記物体に照明する光を前記広帯域光から前記狭帯域光に切り替える、又は前記狭帯域光から前記広帯域光に制御部は切り替える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例に係る内視鏡装置の要部の構成を示す図。
【図2】図1の内視鏡が有する対物光学系の構成の一例を示す図。
【図3】図1の光源装置が有する回転フィルタの構成の一例を示す図。
【図4】図3の第1のフィルタ群が有する各フィルタの透過特性の一例を示す図。
【図5】図3の第2のフィルタ群が有する各フィルタの透過特性の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明を行う。図1から図5は、本発明の実施例に係るものである。
【0015】
内視鏡装置1は、図1に示すように、観察倍率を変倍可能であるとともに、撮像した被写体101の像を撮像信号として出力する内視鏡2と、被検者の体腔内の被写体101を照明するための照明光を発する光源装置3と、内視鏡2からの撮像信号に対して画像処理を施すことにより、映像信号を生成して出力するプロセッサ4と、プロセッサ4からの映像信号に応じた画像を表示する表示装置5と、を有して構成されている。
【0016】
内視鏡2の内部には、光源装置3において発せられた照明光を内視鏡2の先端部21aへ伝送するためのライトガイド6が挿通されている。
【0017】
ライトガイド6の一方の端面(入射端面)は、光源装置3に接続されている。また、ライトガイド6の他方の端面(出射端面)は、内視鏡2の先端部21aに設けられた図示しない照明光学系の近傍に配置されている。このような構成により、光源装置3において発せられた照明光は、ライトガイド6及び図示しない照明光学系を経た後、被写体101に対して出射される。
【0018】
内視鏡2の先端部21aには、被写体の像を結像する対物光学系22と、対物光学系22を経た被写体の像を撮像するCCD24と、が設けられている。また、内視鏡2の基端側(後端側)の操作部21bには、変倍指示を行うためのズームスイッチ25が設けられている。
【0019】
変倍機能を具備する対物光学系22は、図2に示すように、先端部21aの最も先端側に設けられた第1レンズ群22aと、自身の光軸方向に沿って変移可能であり、第1レンズ群22aを通過した光が前面から入射される可動光学系22bと、該光軸方向に沿った方向(図2の矢印Dに沿った方向)に可動光学系22bを移動させることが可能な焦点位置調整部22cと、可動光学系22bを通過した光が前面から入射される第2レンズ群22dと、を有している。
【0020】
第1レンズ群22aは、被写体101からの光が入射される先端レンズ22eを少なくとも含む、位置が夫々固定された複数のレンズを具備して構成されている。
【0021】
焦点位置調整部22cは、例えばリニアアクチュエータを用いて構成されている。具体的には、焦点位置調整部22cは、可動光学系22bの側部に接続されるアーム22fと、プロセッサ4の制御に応じてアーム22fを図2の矢印Dに沿った方向に移動させるアーム駆動部22gと、を具備して構成されている。そして、このような構成によれば、焦点位置調整部22cの動作に伴って可動光学系22bが移動することにより、対物光学系22の焦点位置及び観察倍率が夫々変更される。
【0022】
第2レンズ群22dは、位置が夫々固定された複数のレンズを具備して構成されており、第1レンズ群22a及び可動光学系22bを介して入射される光をCCD24の撮像面に結像させる。
【0023】
観察倍率変更指示部としての機能を備えたズームスイッチ25は、ユーザによる(押下等の)操作が行われている期間中において変倍指示をプロセッサ4へ継続的に出力するようなボタンまたはレバー等を備えて構成されている。そして、このようなズームスイッチ25の構成によれば、ユーザによりズームスイッチ25が操作されている間、対物光学系22の観察倍率が次第に増加または減少する。
【0024】
光源装置3は、キセノンランプ等からなる白色光源31と、白色光源31から発せられた白色光を面順次な照明光とする回転フィルタ32と、回転フィルタ32を回転駆動させるモータ33と、回転フィルタ32及びモータ33を白色光源31の出射光路に垂直な方向に移動させるモータ34と、プロセッサ4の制御に基づいてモータ33及び34を駆動させる回転フィルタ駆動部35と、回転フィルタ32を通過した照明光を集光してライトガイド6の入射端面に供給する集光光学系36と、を有している。
【0025】
回転フィルタ32は、図3に示すように、中心を回転軸とした円板状に構成されており、内周側の周方向に沿って設けられた複数のフィルタを具備する第1のフィルタ群32Aと、外周側の周方向に沿って設けられた複数のフィルタを具備する第2のフィルタ群32Bと、を有している。そして、モータ33の駆動力が前記回転軸に伝達されることにより、回転フィルタ32が回転する。なお、回転フィルタ32において、第1のフィルタ群32A及び第2のフィルタ群32Bの各フィルタが配置されている部分以外は、遮光部材により構成されているものとする。
【0026】
第1のフィルタ群32Aは、各々が回転フィルタ32の内周側の周方向に沿って設けられた、赤色の波長帯域の光を透過させるRフィルタ32rと、緑色の波長帯域の光を透過させるGフィルタ32gと、青色の波長帯域の光を透過させるBフィルタ32bとを有して構成されている。
【0027】
Rフィルタ32rは、例えば図4に示すように、主に600nmから700nmまでの光(R光)を透過させるような構成を有している。また、Gフィルタ32gは、例えば図4に示すように、主に500nmから600nmまでの光(G光)を透過させるような構成を有している。さらに、Bフィルタ32bは、例えば図4に示すように、主に400nmから500nmまでの光(B光)を透過させるような構成を有している。
【0028】
すなわち、白色光源31において発せられた白色光は、第1のフィルタ群32Aを経ることにより、通常光観察モード用の広帯域光となる。
【0029】
第2のフィルタ群32Bは、各々が回転フィルタ32の外周側の周方向に沿って設けられた、青色かつ狭帯域な光を透過させるBnフィルタ321bと、緑色かつ狭帯域な光を透過させるGnフィルタ321gと、を有して構成されている。
【0030】
Bnフィルタ321bは、例えば図5に示すように、B光の短波長側の狭帯域光(Bn光)を透過させるような構成を有している。
【0031】
また、Gnフィルタ321gは、例えば図5に示すように、中心波長が540nm付近の狭帯域光(Gn光)を透過させるような構成を有している。
【0032】
すなわち、白色光源31において発せられた白色光は、第2のフィルタ群32Bを経て離散化されることにより、狭帯域光観察モード用の複数の帯域の狭帯域光となる。
【0033】
プロセッサ4は、画像処理部41と、光学系制御部42と、ズームスイッチ25におけ
る変倍指示に応じた制御を行う主制御部43と、を有して構成されている。
【0034】
画像処理部41は、主制御部43の制御に基づき、ノイズ除去処理、A/D変換処理、画像生成処理、及び、D/A変換処理等の処理を入力される撮像信号に対して順番に施すことにより、映像信号を生成して表示装置5へ出力する。
【0035】
光学系制御部42は、主制御部43の制御に基づき、観察倍率に応じた位置に可動光学系22bが配置されるように焦点位置調整部22cを動作させる。
【0036】
モード切替部としての機能を備えた主制御部43は、ズームスイッチ25における変倍指示を随時モニタリングし、モニタリング結果に応じて回転フィルタ駆動部35、画像処理部41及び光学系制御部42の動作を切り替える制御(通常光観察モードと狭帯域光観察モードとを切り替える制御)を行う。
【0037】
ここで、内視鏡装置1の作用について説明を行う。なお、内視鏡装置1の各部は、電源投入時の初期状態において、等倍の観察倍率の通常光観察モードとして起動するものとして以降の説明を行う。
【0038】
主制御部43は、プロセッサ4の電源投入に伴い、等倍の観察倍率の通常光観察モードとして動作させるための制御を回転フィルタ駆動部35、画像処理部41及び光学系制御部42に対して行う。
【0039】
その後、回転フィルタ駆動部35は、主制御部43の制御に基づき、白色光源31の光路状に第1のフィルタ群32Aが介挿されるようにモータ33及び34を駆動させる。また、画像処理部41は、主制御部43の制御に基づき、入力される撮像信号に基づいて通常光観察画像(フルカラー画像)を生成するための動作を行う。さらに、光学系制御部42は、主制御部43の制御に基づき、等倍の観察倍率に応じた位置に可動光学系22bが配置されるようにアーム駆動部22gを動作させる。
【0040】
ユーザは、内視鏡装置1の各部の電源を投入した後、表示装置5に表示される画像を見ながら、被検者の体腔内の被写体101の近辺へ先端部21aを移動させる。
【0041】
さらに、ユーザは、被写体101を局所的に観察するため、観察倍率を低倍率側から高倍率側へ次第に変化させる変倍指示をズームスイッチ25において行いながら(例えばズームスイッチ25の観察倍率増加側のボタンを押下したままの状態を維持しながら)、先端部21aを被写体101の表面へ近づける動作を行う。
【0042】
一方、主制御部43は、ズームスイッチ25において低倍率側から高倍率側への変倍指示がなされている間、観察倍率が等倍から次第に増加されていることを検知するとともに、光学系制御部42に対する制御を継続する。このような制御に応じ、光学系制御部42は、可動光学系22bが低倍率側から高倍率側へ移動するようにアーム駆動部22gを動作させる。
【0043】
ここで、被写体101の局所的な観察の際にこのような動作をユーザが行う場合においては、観察倍率と、先端部21aから被写体101の表面までの距離との間には、所定の相関関係が成立すると推定される。具体的には、観察倍率が低倍率である場合には、先端部21aから被写体101の表面までの距離が比較的離れていると推定される。また、観察倍率が低倍率から高倍率へ次第に変化している場合には、先端部21aから被写体101の表面までの距離が次第に近づいていると推定される。さらに、観察倍率が高倍率から低倍率へ次第に変化している場合には、先端部21aから被写体101の表面までの距離が次第に遠くなっていると推定される。そして、このような相関関係が成立するとした場合、被写体101の粘膜表層の微細構造及び毛細血管パターンの少なくとも一方を狭帯域光観察により観察可能となる直前の観察倍率に相当する所定の観察倍率と、該所定の観察倍率になった際の先端部21aから被写体101の表面までの距離との間にも同様の相関関係が成立すると考えられる。
【0044】
主制御部43は、ズームスイッチ25における変倍指示に応じた観察倍率の増加を随時モニタリングすることにより、前述の所定の観察倍率以上になったことを検知すると、先端部21aから被写体101の表面までの距離が狭帯域光観察に適した距離になったとみなし、狭帯域光観察モードとして動作させるための制御を回転フィルタ駆動部35及び画像処理部41に対して行う。
【0045】
その後、回転フィルタ駆動部35は、主制御部43の制御に基づき、白色光源31の光路状に第2のフィルタ群32Bが介挿されるようにモータ33及び34を駆動させる。また、画像処理部41は、主制御部43の制御に基づき、入力される撮像信号に基づいて狭帯域光観察画像(擬似カラー画像)を生成するための動作を行う。
【0046】
そして、以上に述べた内視鏡装置1の作用によれば、ユーザは、表示装置5に表示される被写体101の狭帯域光観察画像を見ながら、迅速に焦点調整を行うことができる。
【0047】
なお、主制御部43は、観察倍率の増加により前述の所定の観察倍率以上になったか否かを、ズームスイッチ25における変倍指示のモニタリング結果に基づいて検知するものに限らず、例えば、光学系制御部42の制御量のモニタリング結果に応じて算出される可動光学系22bの配置位置に基づいて検知するものであってもよい。
【0048】
また、前述の所定の観察倍率は、被写体101の粘膜表層の微細構造及び毛細血管パターンの少なくとも一方を狭帯域光観察により観察可能となる直前の観察倍率である限りにおいては、表示装置に表示される入力画面等においてユーザ毎の所望の観察倍率に適宜設定しても良く、内視鏡毎に個別に観察倍率が設定されるものであっても良く、または、予め定められた固定の観察倍率であっても良い。
【0049】
一方、ユーザは、被写体101の局所的な観察を完了すると、観察倍率を高倍率側から低倍率側へ次第に変化させる変倍指示をズームスイッチ25において行いながら(例えばズームスイッチ25の観察倍率減少側のボタンを押下したままの状態を維持しながら)、先端部21aを被写体101の表面から遠ざける動作を行う。
【0050】
主制御部43は、ズームスイッチ25において高倍率側から低倍率側への変倍指示がなされている間、観察倍率が前述の所定の観察倍率以上の倍率から次第に減少されていることを検知するとともに、光学系制御部42に対する制御を継続する。このような制御に応じ、光学系制御部42は、可動光学系22bが高倍率側から低倍率側へ移動するようにアーム駆動部22gを動作させる。
【0051】
主制御部43は、ズームスイッチ25における変倍指示に応じた観察倍率の減少を随時モニタリングすることにより、前述の所定の観察倍率未満になったことを検知すると、先端部21aから被写体101の表面までの距離が狭帯域光観察に適さない距離になったとみなし、通常光観察モードとして動作させるための制御を回転フィルタ駆動部35及び画像処理部41に対して行う。
【0052】
その後、回転フィルタ駆動部35は、主制御部43の制御に基づき、白色光源31の光路状に第1のフィルタ群32Aが介挿されるようにモータ33及び34を駆動させる。また、画像処理部41は、主制御部43の制御に基づき、入力される撮像信号に基づいて通常光観察画像(フルカラー画像)を生成するための動作を行う。
【0053】
なお、主制御部43は、観察倍率の減少により前述の所定の観察倍率未満になったか否かを、ズームスイッチ25における変倍指示のモニタリング結果に基づいて検知するものに限らず、例えば、光学系制御部42の制御量のモニタリング結果に応じて算出される可動光学系22bの配置位置に基づいて検知するものであってもよい。
【0054】
以上に述べたように、本実施例の内視鏡装置1によれば、変倍指示に応じた観察倍率の増加のモニタリング結果に基づき、被写体101の粘膜表層の微細構造及び毛細血管パターンの少なくとも一方を狭帯域光観察により観察可能となる直前の観察倍率以上になったことが検知された際に、通常光観察モードから狭帯域光観察モードへの切り替えを行うような構成及び作用を有している。すなわち、本実施例の内視鏡装置1によれば、生体内に存在する被写体の局所的な領域の内視鏡観察の際にユーザが実際に行う動作において、焦点調整が必要になるタイミングの直前に通常光観察モードから狭帯域光観察モードへの切り替えを行うような構成及び作用を有している。その結果、本実施例の内視鏡装置1によれば、生体内に存在する被写体の局所的な領域の内視鏡観察を行う際の焦点調整に要する時間を従来に比べて短縮することができる。
【0055】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更や応用が可能であることは勿論である。
【0056】
本出願は、2009年4月9日に日本国に出願された特願2009−95040号を優先権主張の基礎として出願するものであり、上記の開示内容は、本願明細書、請求の範囲、図面に引用されたものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光領域を含む広帯域光と前記可視光領域を離散化して得られる狭帯域光とを選択的に切り替えて物体に向けて照射する照明光を射出する光源と、
前記物体側から順に、第1レンズ群、可動光学系、第2レンズ群を有し、前記照明光の戻り光を結像させる対物光学系と、
前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間で前記可動光学系を光軸に沿って往復移動させ、前記物体からの戻り光の焦点位置調整を行なう駆動部と、
前記可動光学系が前記第1レンズ群から所定の距離離間した位置に到達したか否かを検知する検知部と、
前記検知部によって前記可動光学系が前記位置に到達したことを検知したときに、前記光源が出射する前記照明光を、前記広帯域光から前記狭帯域光に切り替える、又は前記狭帯域光から前記広帯域光に切り替えるように前記光源を制御する制御部と、
を有することを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記検知部は、前記駆動部によって前記可動光学系を前記第1レンズ群側から前記第2レンズ群側に移動させたときに、前記可動光学系が前記第1レンズ群から所定の距離離間した位置に到達したか否かを検知し、
前記制御部は、前記検知部によって前記可動光学系が前記位置に到達したことを検知したときに、前記光源が出射する前記照明光を、前記広帯域光から前記狭帯域光に切り替えるように前記光源を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記検知部は、前記駆動部によって前記可動光学系を前記第2レンズ群側から前記第1レンズ群側に移動させたときに、前記可動光学系が前記第1レンズ群から所定の距離離間した位置に到達したか否かを検知し、
前記制御部は、前記検知部によって前記可動光学系が前記位置に到達したことを検知したときに、前記光源が出射する前記照明光を、前記狭帯域光から前記広帯域光に切り替えるように前記光源を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記可動光学系が前記第1レンズ群から所定の距離離間した位置に到達したか否かを検知したときの観察倍率は、生体粘膜表層の微細構造及び毛細血管パターンの少なくとも一方を観察可能となる直前の倍率であることを特徴とる請求項2に記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記検知部は、前記可動光学系が前記第1レンズ群から所定の距離離間した位置をユーザ毎の所望に設定可能であることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記狭帯域光は、複数の帯域からなることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項7】
第1レンズ群、可動光学系、第2レンズ群の順に物体からの戻り光を透過させ、前記戻り光を結像させる対物光学系と、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間で前記可動光学系を光軸に沿って往復移動させ、前記物体からの戻り光の焦点位置調整を行なう駆動部とを有し、可視光領域を含む広帯域光と前記可視光領域を離散化して得られる狭帯域光とを選択的に切り替えて前記物体に向けて照射する内視鏡装置の焦点位置調整方法において、
前記駆動部によって前記可動光学系が前記第1レンズ群から所定の距離離間した位置に到達した際に、前記物体に照明する光を前記広帯域光から前記狭帯域光に切り替える、又は前記狭帯域光から前記広帯域光に制御部は切り替える
ことを特徴とする内視鏡装置の焦点位置調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−245362(P2012−245362A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−170283(P2012−170283)
【出願日】平成24年7月31日(2012.7.31)
【分割の表示】特願2010−538240(P2010−538240)の分割
【原出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】