説明

内視鏡装置

【課題】遠位端の吸入管路に吸着した物体を容易に取り外すことができる内視鏡装置を得る。
【解決手段】押圧ボタン421を押すと、位置決め突起411が第1の位置決め溝310に案内されて、吸引ピストン400が吸引シリンダ300の底部に向けて押し下げられる。吸引ピストン400が完全に押し下げられると、通気口412が負圧管路233と接続され、負圧が吸入管路241に供給される。遠位端部246に粘膜組織が吸着しているときに押圧ボタン421を放すと、粘膜組織が遠位端部246に吸着したまま離れない。吸引ピストン400を軸回りに回転すると、位置決め突起411が第1の位置決め溝310に係合して案内されて第1の位置決め溝310の末端に突き当たり、通気口412が開放溝320と接続される。開放溝320は大気開放されているため、通気口412に大気が流入する。これにより、遠位端部246と粘膜組織との吸着が解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡装置の遠位端まで負圧を送り、所望の物体を吸引することが可能な内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡装置は、対物レンズや観察対象物を洗浄等するための液体を送り出す送水管路、観察対象の臓器に気体を送り、あるいは対物レンズに付着した異物を吹き払うために気体を送る送気管路、及び所望の物体を吸引、あるいは鉗子を挿入する吸入管路を備えるものが知られている。所望の物体を吸引するために遠位端まで負圧が送られる。吸入管路は負圧源に接続され、負圧源と遠位端との間には、負圧の通過・遮断を制御する吸引バルブが設けられる(特許文献1、2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−225908号公報
【特許文献2】特開2007−111266号公報
【特許文献3】特開2006−081756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内視鏡装置を用いて人体の体内を観察することがある。このとき、体内の粘膜表面近傍で吸引を行うと、遠位端の吸入管路に粘膜の表面が吸い込まれて吸着するおそれがある。吸入管路に吸着した状態のままで負圧を遮断すると、吸引バルブから遠位端までの吸入管路が負圧のまま維持されるため、遠位端から粘膜を容易に取り外すことができない。無理に取り外そうとすると、吸入管路が吸着した跡が粘膜に残り、この跡を病変部位と判断してしまうおそれがある。さらに、遠位端から粘膜を容易に取り外すことができないと、円滑に観察を行うことができない。
【0005】
本発明はこれらの問題に鑑みてなされたものであり、遠位端の吸入管路に吸着した物体を容易に取り外すことができる内視鏡装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明による内視鏡装置は、有底筒状であって、内周面に開口する第1の供給口と、底面に開口する第2の供給口とを有するシリンダと、円筒形状を有し、シリンダの内周面に挿入されて軸方向に進退するピストンとを備え、第1の供給口は、内視鏡プロセッサまで伸びる管路に接続され、第2の供給口は、内視鏡装置の遠位端部まで伸びる管路に接続され、ピストンは、ピストンの外周面から内周面に貫通する通気口を有し、シリンダは、シリンダの外部とシリンダの内周面とを接続する開放溝を有し、ピストンがシリンダの軸方向において所定の軸方向位置にあるとき、第1の供給口と通気口とが重合し、ピストンが所定の軸方向位置になく、かつピストンがシリンダの周方向において所定の周方向位置にあるとき、開放溝と通気口とが重合することを特徴とする。
【0007】
ピストンは、ピストンの外周面から径方向に突出する位置決め突起をさらに有し、シリンダは、シリンダの内周面に設けられて位置決め突起と係合する位置決め溝をさらに有することが好ましい。
【0008】
位置決め溝は、管の開口端部から管の軸方向に延びる軸方向溝と、軸方向溝から管の周方向に延びる周方向溝とから成ることが好ましい。
【0009】
位置決め溝は、軸方向溝における管の底部付近から、周方向溝において軸方向溝と接続する端部とは反対側の端部まで延びる斜行溝をさらに備えてもよい。
【0010】
斜行溝は、曲線を描くようにシリンダの内周面に設けられてもよい。
【0011】
軸方向溝、周方向溝、及び斜行溝により囲まれるシリンダの内周面が溝を成してもよい。
【0012】
所定の軸方向位置は、シリンダにおいてピストンがシリンダの底部まで押し込まれた位置であることが好ましい。
【0013】
所定の周方向位置は、シリンダにおける第1の供給口の周方向位置とは異なる位置であることが好ましい。
【0014】
開放溝は、管の内周面において管の開口端部から管の軸方向に延びる溝が好適である。
【0015】
ピストンは、シリンダの軸方向に進退可能であって、かつシリンダの軸回りに回転自在であって、ピストンは、シリンダの軸方向に進退することによって所定の軸方向位置に置かれ、シリンダの軸回りに回転することによって所定の周方向位置に置かれることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、遠位端の吸入管路に吸着した物体を容易に取り外すことができる内視鏡装置を得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本願発明による内視鏡装置を概略的に示した図である。
【図2】吸引ピストンの斜視図である。
【図3】吸引ピストンの斜視図である。
【図4】位置決め溝の側面図である。
【図5】開放溝の側面図である。
【図6】吸引ピストン及び吸引シリンダの平面図である。
【図7】第2の実施形態による位置決め溝の側面図である。
【図8】第3の実施形態による位置決め溝の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態である内視鏡装置100について添付図面を参照して説明する。
【0019】
図1を用いて内視鏡装置100の構成について説明する。
【0020】
内視鏡装置100は、図示しない内視鏡用プロセッサに接続されるコネクタ部210と、使用時にユーザが把持する操作部220と、コネクタ部210と操作部220とを接続するユニバーサルケーブル部230と、操作部220から延びて被験者の体内に挿入される挿入部240とから成る。
【0021】
コネクタ部210は、給気口211、給水口212、及び負圧供給口213を有する。給気口211及び給水口212には、給気給水タンクから延びる給気給水コネクタが接続され、給気口211に空気を、給水口212に水を供給する。これらの空気及び水は、所定の圧力まで加圧されている。負圧供給口213には、負圧ポンプから延びる負圧コネクタが接続されて負圧が加えられる。給気給水タンク、給気給水コネクタ、負圧ポンプ、及び負圧コネクタは図示されない。
【0022】
コネクタ部210の内部及びユニバーサルケーブル部230を経て操作部まで延びる気体流入管路231、液体流入管路232、及び負圧管路233が給気口211、給水口212、及び負圧供給口213のコネクタ内部側端部に各々接続される。
【0023】
挿入部240の遠位端部246には、図示しない対物レンズ及び照明レンズと、吸入口245、及び送液口である送気送液口243とが設けられる。操作部から延びる吸入管路241が吸入口245に接続され、操作部から延びる液体流出管路242は、同じく操作部から延びる気体流出管路221と接続された後に送気送液口243と接続される。送気送液口243にはノズル244が取り付けられ、対物レンズに向けて水及び空気を噴射可能にする。
【0024】
操作部220は、鉗子を挿入、又は薬剤を注入するための鉗子挿入口222と、送気送液スイッチ110と、吸引スイッチ150とを備える。吸入管路241から分岐した鉗子管路223が鉗子挿入口222に接続される。鉗子管路223を介して流れて来る気体、液体、異物等が鉗子挿入口222から外部に流出しないように、鉗子挿入口222にはスリットが入った鉗子栓224が装着されている。ユーザが鉗子等を挿入して異物等を回収、切除などの処置を行う場合は、鉗子栓224のスリットを押し広げて鉗子等を鉗子挿入口222に挿入する。
【0025】
送気送液スイッチ110は、有底円筒状の送気送液シリンダ120と、送気送液シリンダ120の内周面に挿入される円柱状の送気送液ピストン130とから成る。送気送液シリンダ120は、操作部の外部に開口し、気体流入管路231、気体流出管路221、液体流入管路232、及び液体流出管路242が接続される。送気送液ピストン130は、送気送液シリンダ120の軸上で進退し、送気送液シリンダ120内の位置に応じて、気体流入管路231と気体流出管路221とが接続又は遮断され、液体流入管路232と液体流出管路242とが接続又は遮断される。
【0026】
吸引スイッチ150は、有底円筒状の吸引シリンダ300と、吸引シリンダ300の内周面であるシリンダ内側面301に挿入される吸引ピストン400とから成る。吸引ピストン400は、吸引シリンダ300内で軸方向に進退可能である。吸引シリンダ300には、負圧管路233及び吸入管路241が接続される。吸引ピストン400は、吸引シリンダ300の軸上で進退し、吸引シリンダ300内の位置に応じて、負圧管路233と吸入管路241とを接続又は遮断する。
【0027】
次に図2及び3を用いて吸引ピストン400の詳細について説明する。
【0028】
吸引ピストン400は、シリンダ内側面301に挿入される挿入軸部410と、挿入軸部410に接続されて吸引シリンダ300から突き出る頭部420とから成る。吸引ピストン400において、吸引シリンダ300の底部303と対向する端部を吸引先端部417とする。吸引ピストン400は、図示しないバネの働きにより吸引シリンダ300の底部303から離間する方向に付勢される。
【0029】
頭部420の軸方向における一端は挿入軸部410に接続され、他端には押圧ボタン421が取り付けられる。
【0030】
挿入軸部410は、筒状の部材であって、その側面に開口する通気口412と、通気口412から吸引先端部417まで延びる負圧導入管414とを備える(図2参照)。負圧導入管414は、吸引先端部417から軸方向に延びる。通気口412と負圧導入管414は、挿入軸部410の軸に対して直角に延びる接続管413により接続される。
【0031】
吸引先端部417の側面には、Oリング415が取り付けられる。吸引ピストン400が吸引シリンダ300に取り付けられたとき、挿入軸部410の側面とシリンダ内側面301とにOリング415が密着して、吸入先端部の気密性を保持する。
【0032】
通気口412の周囲には、弾性を有するパッキン416が取り付けられる。吸引ピストン400が吸引シリンダ300に取り付けられたとき、挿入軸部410の側面とシリンダ内側面301とにパッキン416が密着して、通気口412の気密性を保持する。
【0033】
挿入軸部410は、外側面から突出する半球状の位置決め突起411をさらに備える(図3参照)。位置決め突起411は、頭部近辺に設けられる。
【0034】
次に、図4及び5を用いて吸引シリンダ300について説明する。
【0035】
吸引シリンダ300は、シリンダ内側面301に第1の位置決め溝310と開放溝320とを備える。開放溝320は開放部を成す。
【0036】
図4は、吸引シリンダ300の外周側からシリンダ内側面301及び吸引ピストン400を見た図である。第1の位置決め溝310は、吸引シリンダ300の軸方向、つまり吸引ピストン400の進退方向に延びる第1の進退ガイド311と、吸引シリンダ300の周方向に延びる第1の回動ガイド312とを備える。第1の進退ガイド311は、矩形の溝であって、吸引シリンダ300の底部近くまで延びる。より詳しく説明すると、吸引ピストン400が吸引シリンダ300内で完全に押圧された状態であっても、第1の進退ガイド311に位置決め突起411が突き当たらない位置まで、第1の進退ガイド311が延びる。第1の回動ガイド312は、矩形の溝であって、第1の進退ガイド311の長手方向中程で第1の進退ガイド311と直角に接合する。押圧ボタン421が押されていないとき、位置決め突起411は、第1の回動ガイド312と第1の進退ガイド311とが接合される位置に置かれる。
【0037】
図5は、吸引シリンダ300の外周側からシリンダ内側面301及び吸引ピストン400を見た図である。開放溝320は、吸引シリンダ300の開放端302から底部303に向けて軸方向に延びる。開放溝320の一端は、吸引シリンダ300の開放端302に接続されて大気開放されており、開放端302から開放溝320に大気圧が出入り可能である。開放溝320の他端は、吸引シリンダ300の軸方向中程まで延びる。より詳しく説明すると、吸引ピストン400が吸引シリンダ300内で押圧されない状態において、通気口412が置かれる位置まで、開放溝320が延びる。
【0038】
次に、図4から6を用いて吸引スイッチ150の動作について説明する。
【0039】
ユーザが、押圧ボタン421を押すと、吸引ピストン400が吸引シリンダ300の底部303に向けて押し下げられる。このとき、位置決め突起411が第1の進退ガイド311に係合して案内される。これにより、吸引ピストン400が底部303に向けて直線的に押し下げられる。
【0040】
吸引ピストン400が完全に押し下げられると、シリンダ内側面301において負圧管路233が開口する位置に通気口412が移動する。これにより、通気口412が負圧管路233と接続される。そして、負圧管路233を介して負圧が通気口412に供給され、さらに通気口412から接続管413及び負圧導入管414を介して吸入管路241に供給される。これにより、遠位端部246に負圧が供給される。
【0041】
遠位端部246に負圧が発生しているとき粘膜組織に遠位端部246を近づけすぎると、遠位端部246が粘膜組織に吸着する。遠位端部246に粘膜組織が吸着しているときに、ユーザが押圧ボタン421を押圧することを中止すると、吸引シリンダ300の底部303から吸引ピストン400が離間して、通気口412が負圧管路233から切断される。このとき、通気口412の周囲に設けられたパッキン416が通気口412を周囲から遮断するため、通気口412から遠位端部246までの吸入管路241が負圧のまま保持される。そのため、粘膜組織が遠位端部246に吸着したまま離れなくなる。
【0042】
次に、ユーザは吸引ピストン400を軸回りに回転する。このとき、位置決め突起411が第1の回動ガイド312に係合して案内される。これにより、吸引ピストン400が周方向に回動する。位置決め突起411が第1の回動ガイド312の末端に突き当たると、通気口412が開放溝320と接続される。開放溝320の一端は大気開放されているため、開放溝320を介して通気口412に大気が流入する。そして、通気口412から接続管413及び負圧導入管414を介して大気が吸入管路241に供給され、通気口412から遠位端部246までの吸入管路241が大気圧となる。これにより、遠位端部246と粘膜組織との吸着が解除され、物体が遠位端から離れる。
【0043】
本実施形態によれば、吸引ピストン400を回転させるだけで、遠位端の吸入管路241に吸着した物体を取り外すことができる。
【0044】
次に、図7を用いて第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、第2の位置決め溝710の構成が第1の実施形態と異なる。よってこの構成について以下に説明し、第1の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0045】
吸引シリンダ300は、シリンダ内側面301に第2の位置決め溝710を備える。図7は、吸引シリンダ300の外周側からシリンダ内側面301及び吸引ピストン400を見た図である。
【0046】
第2の位置決め溝710は、吸引シリンダ300の軸方向、つまり吸引ピストン400の進退方向に延びる第2の進退ガイド711と、吸引シリンダ300の軸方向及び周方向に広がる第2の回動ガイド712とを備える。第2の進退ガイド711は、矩形の溝であって、吸引シリンダ300の底部近くまで延びる。より詳しく説明すると、吸引ピストン400が吸引シリンダ300内で完全に押圧された状態であっても、第2の進退ガイド711に位置決め突起411が突き当たらない位置まで、第2の進退ガイド711が延びる。
【0047】
第2の回動ガイド712は、90度の内角を持つ扇形の溝であって、その径の1つを成す第1の径部713が第2の進退ガイド711と接続し、他方の径を成す第2の径部714が吸引シリンダ300の周方向に延びる。第2の進退ガイド711の底部側端部715の近辺から扇形の弧である第1の弧部716が延びる。底部側端部715と第1の弧部716との接続部分では、第2の進退ガイド711と第2の回動ガイド712とが滑らかに接続されるように、第2の弧部717が設けられる。第2の弧部717は、第1の弧部716と反対方向に凸である。第2の径部714は、第2の進退ガイド711と直角に接合する。押圧ボタン421が押されていないとき、位置決め突起411は、第2の径部714と第2の進退ガイド711とが接合される位置よりも、位置決め突起411の軸方向長さだけ底部303寄りに置かれる。
【0048】
次に、吸引スイッチ150の動作について説明する。
【0049】
ユーザが、押圧ボタン421を押すと、吸引ピストン400が吸引シリンダ300の底部303に向けて押し下げられる。このとき、位置決め突起411が第2の進退ガイド711に係合して案内される。これにより、吸引ピストン400が底部303に向けて直線的に押し下げられる。吸引ピストン400が完全に押し下げられると、シリンダ内側面301において負圧管路233が開口する位置に通気口412が移動する。遠位端部246に負圧が発生しているとき粘膜組織に遠位端部246を近づけすぎると、遠位端部246が粘膜組織に吸着する。
【0050】
底部側端部715の近辺から第2の弧部717及び第1の弧部716が延びるため、遠位端部246が粘膜組織に吸着したときに押圧ボタン421を放さなくても、ユーザは吸引ピストン400を軸回りに回転することができる。このとき、位置決め突起411が第2の回動ガイド712に係合して案内される。これにより、吸引ピストン400が周方向に回動する。第1の弧部716と第2の径部714とが接続される位置まで位置決め突起411が運ばれると、通気口412が開放溝320と接続される。開放溝320の一端は大気開放されているため、開放溝320を介して通気口412に大気が流入する。そして、遠位端部246と粘膜組織との吸着が解除され、物体が遠位端から離れる。
【0051】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ると共に、底部近辺に第2の回動ガイド712が設けられるため、ユーザは押圧ボタン421を完全に放さなくても吸引ピストン400を回転させることができる。また、押圧ボタン421を放しながら吸引ピストン400を回転させることができるため、遠位端部246と粘膜組織との吸着を迅速に解除することができる。
【0052】
次に、図8を用いて第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、第3の位置決め溝810の構成が第2の実施形態と異なる。よってこの構成について以下に説明し、第2の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0053】
吸引シリンダ300は、シリンダ内側面301に第3の位置決め溝810を備える。図8は、吸引シリンダ300の外周側からシリンダ内側面301及び吸引ピストン400を見た図である。
【0054】
第3の位置決め溝810は、吸引シリンダ300の軸方向、つまり吸引ピストン400の進退方向に延びる第3の進退ガイド811と、吸引シリンダ300の軸方向及び周方向に広がる第3の回動ガイド812とを備える。第3の進退ガイド811の構成は、第2の進退ガイド711と同様であるため説明を省略する。
【0055】
第3の回動ガイド812は、90度の内角を持つ扇形の溝と三角柱とから成る。扇形の径の1つを成す第3の径部813が第3の進退ガイド811と接続し、他方の径を成す第4の径部814が吸引シリンダ300の周方向に延びる。第3の進退ガイド811の底部側端部815の近辺から扇形の弧である第3の弧部816が延びる。底部側端部815と第3の弧部816との接続部分では、第3の進退ガイド811と第3の回動ガイド812とが滑らかに接続されるように、第4の弧部817が設けられる。第4の弧部817は、第3の弧部816と反対方向に凸である。第4の径部814は、第3の進退ガイド811と直角に接合する。
【0056】
三角柱は直角三角形の断面を有し、直角三角形の一辺である第1の側面821は第3の進退ガイド811と接続し、第1の側面821と直角を成す第2の側面822は、第4の径部814と平行となるように吸引シリンダ300の周方向に延びる。第3の側面823は、第3の弧部816と対向する。
【0057】
押圧ボタン421が押されていないとき、位置決め突起411は、吸引シリンダ300の軸方向において第4の径部814と第2の側面822との間に置かれる。
【0058】
次に、吸引スイッチ150の動作について説明する。
【0059】
ユーザが、押圧ボタン421を押すと、吸引ピストン400が吸引シリンダ300の底部303に向けて押し下げられる。このとき、位置決め突起411が第3の進退ガイド811と第1の側面821に係合して案内される。これにより、吸引ピストン400が底部303に向けて直線的に押し下げられる。吸引ピストン400が完全に押し下げられると、シリンダ内側面301において負圧管路233が開口する位置に通気口412が移動する。遠位端部246に負圧が発生しているとき粘膜組織に遠位端部246を近づけすぎると、遠位端部246が粘膜組織に吸着する。
【0060】
底部側端部815の近辺から第4の弧部817及び第3の弧部816が延びるため、遠位端部246が粘膜組織に吸着したときに押圧ボタン421を放さなくても、ユーザは吸引ピストン400を軸回りに回転することができる。このとき、第3の弧部816及び第3の側面823に位置決め突起411が係合して案内される。これにより、吸引ピストン400が周方向に回動する。第3の弧部816と第4の径部814とが接続される位置まで位置決め突起411が運ばれると、通気口412が開放溝320と接続される。開放溝320の一端は大気開放されているため、開放溝320を介して通気口412に大気が流入する。そして、遠位端部246と粘膜組織との吸着が解除され、物体が遠位端から離れる。
【0061】
本実施形態によれば、第1及び第2の実施形態と同様の効果を得る。また、第1の側面821と第3の進退ガイド811によって位置決め突起411が案内されるため、滑らかに吸引ピストン400を進退させることができる。さらに、第2の側面822と第4の径部814とにより、あるいは第3の側面823と第3の弧部816とによって位置決め突起411が案内されるため、滑らかに吸引ピストン400を回転させることができる。
【0062】
なお、第2の回動ガイド712及び第3の回動ガイド812は扇形でなく、三角形であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
100 内視鏡装置
110 送気送液スイッチ
120 送気送液シリンダ
130 送気送液ピストン
150 吸引スイッチ
210 コネクタ部
211 給気口
212 給水口
213 負圧供給口
220 操作部
221 気体流出管路
222 鉗子挿入口
223 鉗子管路
224 鉗子栓
230 ユニバーサルケーブル部
231 気体流入管路
232 液体流入管路
233 負圧管路
240 挿入部
241 吸入管路
242 液体流出管路
243 送気送液口
244 ノズル
245 吸入口
246 遠位端部
300 吸引シリンダ
301 シリンダ内側面
302 開放端
303 底部
310 第1の位置決め溝
311 第1の進退ガイド
312 第1の回動ガイド
320 開放溝
400 吸引ピストン
410 挿入軸部
411 位置決め突起
412 通気口
413 接続管
414 負圧導入管
415 Oリング
416 パッキン
417 吸引先端部
420 頭部
421 押圧ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状であって、内周面に開口する第1の供給口と、底面に開口する第2の供給口とを有するシリンダと、
円筒形状を有し、前記シリンダの内周面に挿入されて軸方向に進退するピストンとを備え、
前記ピストンは、前記ピストンの外周面から内周面に貫通する通気口を有し、
前記シリンダは、前記シリンダの外部と前記シリンダの内周面とを接続する開放溝を有し、
前記第1の供給口は、内視鏡プロセッサまで伸びる管路に接続され、
前記第2の供給口は、内視鏡装置の遠位端部まで伸びる管路に接続され、
前記ピストンが前記シリンダの軸方向において所定の軸方向位置にあるとき、前記第1の供給口と前記通気口とが重合し、
前記ピストンが前記所定の軸方向位置になく、かつ前記ピストンが前記シリンダの周方向において所定の周方向位置にあるとき、前記開放溝と前記通気口とが重合する内視鏡装置。
【請求項2】
前記ピストンは、前記ピストンの外周面から径方向に突出する位置決め突起をさらに有し、前記シリンダは、前記シリンダの内周面に設けられて前記位置決め突起と係合する位置決め溝をさらに有する請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記位置決め溝は、前記管の開口端部から前記管の軸方向に延びる軸方向溝と、前記軸方向溝から前記管の周方向に延びる周方向溝とから成る請求項2に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記位置決め溝は、前記軸方向溝における前記管の底部付近から、前記周方向溝において前記軸方向溝と接続する端部とは反対側の端部まで延びる斜行溝をさらに備える請求項3に記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記斜行溝は、曲線を描くように前記シリンダの内周面に設けられる請求項4に記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記軸方向溝、前記周方向溝、及び前記斜行溝により囲まれる前記シリンダの内周面が溝を成す請求項5に記載の内視鏡装置。
【請求項7】
前記所定の軸方向位置は、前記シリンダにおいて前記ピストンが前記シリンダの底部まで押し込まれた位置である請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項8】
前記所定の周方向位置は、前記シリンダにおける前記第1の供給口の周方向位置とは異なる位置である請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項9】
前記開放溝は、前記管の内周面において前記管の開口端部から前記管の軸方向に延びる溝である請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項10】
前記ピストンは、前記シリンダの軸方向に進退可能であって、かつ前記シリンダの軸回りに回転自在であって、
前記ピストンは、前記シリンダの軸方向に進退することによって前記所定の軸方向位置に置かれ、前記シリンダの軸回りに回転することによって前記所定の周方向位置に置かれる請求項1に記載の内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−147990(P2012−147990A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9868(P2011−9868)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】