説明

円筒状構築物の足場装置及びその移動方法

【課題】円筒状構築物の頂部から吊り下げることなく高さ方向への移動を可能とする足場装置及びその移動方法を簡易な構成で安価に提供する。
【解決手段】吊りバンド20は、周方向に沿って複数のバンドユニット20a,20a・・・に分割されていると共に、周方向に隣接するバンドユニット20a,20aの間隔を調整可能とするバンド接続手段201により接続されており、かつ、作業足場は、周方向に沿って複数の足場ユニット10,10・・・に分割されていると共に、周方向に隣接する足場ユニット10,10の間隔を調整可能とする足場接続手段40により接続されており、さらに、バンドユニット20aと足場ユニット10とは、バンドユニット20aに対する足場ユニット10の吊り下げ位置を調整可能に保持する吊り下げ位置調整手段30により接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状構築物の外壁(外周面)の補修等に用いられる足場装置及びその移動方法に関し、特に、テーパを有する煙突等の頂部から吊り下げることなく外周面の補修等を可能とする円筒状構築物の足場装置及びその移動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、煙突等の円筒状構築物の補修や解体には、高所作業用の足場が用いられており、かかる円筒状構築物に沿って上下に移動可能に構成した足場装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、特許文献1には、分割された複数の足場ユニットのそれぞれが独立して上下に移動可能なように構成された足場装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実願昭63−53501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された先行技術では、煙突等の頂部から各足場ユニットを吊り下げる構成であるため、まず、煙突等の頂部に足場ユニットを吊り下げる支持部材を取り付けることが必要となる。
【0006】
ここで、煙突頂部からはCO2等のガスが排出されていると共に、煙突頂部には一般に手摺等がないため、劣悪で危険な作業環境となっている。
【0007】
そして、このような頂部取り付け作業を行うためには、ときに地上高120mを超える高層煙突等の外周に取り付けられた既設の梯子等を用いることになるが、かかる梯子等は破損したり老朽化している場合が多く、このような梯子等を用いて煙突頂部まで登ること自体が困難であるといった問題が生じていた。
【0008】
また、上記特許文献1に開示された先行技術では、周方向に隣接する足場ユニットの間隔が固定されているため、煙突の途中に梯子の踊り場等の突設物(障害物)があると、当該突設物が障害となって足場ユニットの設置や移動が困難となるといった問題が生じていた。
【0009】
さらに、頂部に行くにつれ細くなるテーパの付いた煙突等では、周方向に一定の間隔で配置した足場ユニットと煙突の外周面との距離が足場ユニットの位置(高さ)により変動する(煙突上部に行くにつれ、煙突径が細くなって足場ユニットとの離隔距離が大きくなる)ので、煙突外周面との離隔距離を一定に維持することが困難であり、足場ユニットと煙突外周面との間に隙間が生じ易いといった問題も生じていた。
【0010】
そこで、本発明は、上述のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、円筒状構築物の頂部から吊り下げることなく高さ方向への移動を可能とする足場装置及びその移動方法を簡易な構成で安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る円筒状構築物の足場装置は、頂部に向かって先細りとなるテーパを有する円筒状構築物の足場装置であって、前記円筒状構築物の外周回りに水平に配設される円環状の吊りバンドと、前記吊りバンドに吊り下げられると共に、前記円筒状構築物の外周面と接触して前記円筒状構築物の周方向に沿って配設され、その上に矩形状の足場板が載置される作業足場とを備え、前記吊りバンドは、周方向に沿って複数のバンドユニットに分割されていると共に、周方向に隣接するバンドユニットは、その間隔を調整可能とするバンド接続手段により接続されており、かつ、前記作業足場は、周方向に沿って複数の足場ユニットに分割されていると共に、周方向に隣接する足場ユニットは、その間隔を調整可能とする足場接続手段により接続されており、さらに、前記バンドユニットと足場ユニットとは、前記バンドユニットに対する足場ユニットの吊り下げ位置を調整可能に保持する吊り下げ位置調整手段により接続されていることを特徴とするものである。
【0012】
このような構成によれば、円筒状構築物の頂部から吊り下げることなく、高さ方向の移動を可能とする足場装置を簡易な構成で安価に実現することができる。
【0013】
また、前記足場ユニットは、吊りロープを介して前記吊りバンドの高さ方向の移動を補助すると共に当該吊りバンドを仮支持する、前記円筒状構築物と対向するように立設された棒状の吊り支持部材を備えていてもよい。
【0014】
このように構成した場合には、吊りバンドを移動させる際の仮支持を可能として障害物等の回避を容易にすると共に、水平な位置決めを容易にして、吊りバンドを高さ方向に移動させる際の作業性を格段に向上させることができる。
【0015】
さらに、前記吊り支持部材は、その先端に前記吊りロープを架け回す滑車を備えていると共に、前記吊りロープの一端を固定する固定部を備えていてもよい。
【0016】
このように構成した場合には、吊りバンドの高さ方向の移動補助と仮支持とを可能とする吊り支持部材を簡易な構成で容易に実現することができる。
【0017】
以上において、前記足場ユニットは、上段足場と下段足場の上下2段に構成されており、上段足場と下段足場との間には、相互の連絡を可能とする連絡足場が取り付けられていてもよい。
【0018】
このように構成した場合には、隣接する足場ユニット間の接続作業や足場ユニットを円筒状構築物の外周面に補助的に固定する補助ワイヤーの取り付け作業を、下段足場からより安全に容易に可能とすると共に、既設の梯子等が利用できない状況でも、上下2段構成の足場間の移動及び複数の連絡通路の形成を容易に可能として作業性の一層の向上に寄与することができる。
【0019】
また、煙突外周面回りに配設され、前記上段足場と下段足場との間で前記足場ユニットを煙突外周面に固定する胴回しワイヤーをさらに備え、前記連絡足場は、前記上段足場と前記胴回しワイヤーとに番線固定することにより取り付けられていてもよい。
【0020】
このように構成した場合には、上段足場と下段足場との間を自由に往来する連絡足場を簡易な構成で設置することができる。
【0021】
さらに、前記円筒状構築物に対する設置高さに応じて、周方向に配置されるバンドユニット及び/又は足場ユニットの設置数を変更してもよい。
【0022】
このように構成した場合には、先細りとなる円筒状構築物の外周径に応じて、バンドユニットや足場ユニットの設置数を適切に変更して、円周上に配置された足場をより安定して外周面に固定すると共に、足場と外周面との隙間を最小限に抑制することができる。
【0023】
さらにまた、前記上段足場は、周方向に沿って水平に配置された二等辺三角形状の複数の上段フレームと、周方向に隣接する上段フレームに渡って敷設される長方形状の足場板とを備え、前記二等辺三角形状の上段フレームの頂角の開き角度は24〜46°の範囲に設定されていてもよい。
【0024】
このように構成した場合には、円筒状構築物の外周に沿って配設される長方形状の標準サイズの足場板を、上段フレームの斜辺(等辺)に沿って、足場板の長辺と略直交するように固定することができ、足場板をより安定して確実に固定することができる。
【0025】
本発明に係る円筒状構築物の足場装置の移動方法は、上記いずれかの円筒状構築物の足場装置を用い、前記吊りバンドを前記スタンドを介して吊りロープにより高さ方向に移動させた後、前記スタンドにより仮支持し、所定のテーパに従って変化する円筒状構築物の外径に応じて、前記吊りバンドの接続長やバンドユニットの接続数を変更して、円筒状構築物の外周に固定する吊りバンド移動設置工程と、前記吊りバンドの移動に伴い、前記吊り下げ位置調整手段により、前記足場ユニットの吊り下げ位置を変更する足場ユニット吊り下げ調整工程と、吊り下げ位置が変更された足場ユニットを、所定のテーパに従って変化する円筒状構築物の外径に応じて、隣接する足場ユニットの接続長や足場ユニットの接続数を変更して、円筒状構築物の外周に固定する足場ユニット接続設置工程とを備えることを特徴とするものである。
【0026】
このような移動方法によれば、足場装置を円筒状構築物の頂部から吊り下げることなく、所定のテーパに応じて変化する円筒状構築物の外径に応じて、適切に接続長を変更調整しつつ途中の障害物を回避可能とし、作業用足場を高さ方向に円滑に移動することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、煙突等の頂部に支持部材を設けることなく高さ方向に移動可能な足場装置及びその移動方法を簡易な構成で安価に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る円筒状構築物の足場装置の一実施形態を示す模式図である。
【図2】実施の形態に係る足場ユニットの構成を示す模式的斜視図である。
【図3】実施の形態に係る足場装置の構成を示す平面図である。
【図4】実施の形態に係る吊りバンドの構成を示す斜視図である。
【図5】実施の形態に係る足場装置における足場板の敷設状態を示す平面図である。
【図6】実施の形態に係る連絡足場の設置状況を説明するための模式図である。
【図7】実施の形態に係る足場装置を用いた作業手順を説明するための模式図である。
【図8】実施の形態に係る足場装置を用いた作業手順を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明に係る円筒状構築物の足場装置(以下、単に足場装置とも称する)の一実施形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1は本発明に係る足場装置の一実施形態を説明するための模式図であり、図2は足場ユニットの構成を示す模式的斜視図であり、図3は上記足場装置の平面図である。
【0030】
本発明に係る足場装置1は、頂部に向かって先細りとなる所定のテーパ(例えば、1/40〜1/100)を有する煙突等の円筒状構築物の点検調査、補修、解体等を行うための保守作業用の足場であり、本実施の形態に係る足場装置1は、図1〜図3に示すように、煙突100の外周面100Sに沿って周方向に配設された複数の足場ユニット10,10・・・を備えている。
【0031】
具体的には、図1及び図2に示すように、本実施の形態に係る足場装置1は、煙突100の外周面100S回りに水平に取り付けられた円環状の鋼鉄製吊りバンド20を備え、各足場ユニット10は吊り下げ位置調整手段であるレバーブロック(登録商標)30を介して吊りバンド20から吊り下げられている。上記レバーブロック30は、先端に鉤状のチェーンフック30Fcを有するチェーン30Cと本体フック30Fとを有し、このチェーン30Cをハンドル30Hの揺動操作により巻き揚げ又は巻き戻しすることによりチェーンの長さが調整可能となっている。本実施の形態では、株式会社キトー製の3/4t吊りのレバーブロックを用いており、本体フック30Fを吊りバンド20に取り付けると共に、チェーンフック30Fcを足場ユニット10に取り付けてセットし、ハンドル30Hの操作により足場ユニット10の取付位置(高さ)を調整するようになっている。
【0032】
なお、図1において、符号14Rは、フレーム状の足場ユニット10の強度を補強するための筋交い部材であり、符号100wは、煙突外周面100S回りに略水平に配設され、足場ユニット10の煙突外周面100Sへの固定を補助する胴回しワイヤー(本例ではφ19mm)である。また、符号10Hは安全対策用の手摺であり、符号10Nは足場ユニット10全体を覆う防護ネットである。
【0033】
図3に最も良く示されるように、周方向に隣接する足場ユニット10,10は、足場接続手段であるターンバックル40により周方向の長さが可変なように互いに連結(接続)されている。そして、かかるターンバックル40を締め付けることにより、円周上に配置された複数の足場ユニット10,10・・・の円周径を縮めて、各足場ユニット10を煙突100の外周面100Sに押し付けることにより、複数の足場ユニット10,10・・・が円状に接続された足場装置1を煙突100に固定設置するようになっている。
【0034】
このように複数の足場ユニット10,10・・・を煙突100の外周面100Sに沿って配置すると共に、隣接する足場ユニット10,10間の距離を変更可能に接続することにより、円形状に形成された足場装置1の周長を、所定のテーパに基づいて変化する煙突100の外周径に応じて適宜調整することが可能となる。
【0035】
また、外周面100Sと足場ユニット10との隙間を略均一に最小に抑制して、当該足場ユニット上からの機材の落下等の危険性を未然に回避することができる。
【0036】
一方、上記吊りバンド20は、図4に示すように、複数に分割された厚さ約6mm程度の円弧状の鋼板製バンドユニット20a,20a・・・から構成されており、隣接するバンドユニット20a,20aは、バンド接続手段である全ネジボルト(締め付けボルト)201により互いに接続されて円環状に形成され、煙突100の外周径に応じてバンドユニット20aの接続数や締め付けボルト201の接続長(全ネジボルト201の両端部に取り付けられる不図示の端部締結ナット間の離隔距離)を変更して、吊りバンド20の周長を適宜調整できるようになっている。また、各円弧状のバンドユニット20aには、レバーブロック30や後述する吊りロープ10Srを取り付けるための複数の吊り環203,203・・・が所定のピッチ間隔(例えば、300mmピッチ)で径方向に突出するように形成されている。
【0037】
なお、本実施の形態において、少なくとも一のバンドユニットは、他のバンドユニット20aの長さ(例えば、3.5m)よりも短い、長さ調整用のバンドユニット20a0(例えば、1m)として形成されている。
【0038】
このように長さ調整用のバンドユニット20a0を設けることにより、所定のテーパに伴い変化する煙突径に対応して、吊りバンド20の周長をより適切に調整可能とし、吊りバンド20を外壁面100Sに密着させて取付信頼性の向上に寄与することができる。
【0039】
また、本実施の形態では、コストダウンの観点から隣接するバンドユニット20a,20aの接続に全ネジボルトを用いたが、接続長を適宜変更できるものであれば差し支えなく、例えば、バンドユニット20a,20a間の少なくとも一の接続箇所にチェーンブロック(ブロック内のギアを介して、チェーンを一方向に引けば締まり反対方向に引けば緩む)を用いてもよい。
【0040】
このように、バンドユニット20aの接続箇所にチェーンブロックを用いた場合には、チェーンブロックから吊り下がったチェーンを巻き揚げ/巻き戻し操作することにより足場ユニット10から吊りバンド20の締め付け/緩めを容易に行うことができ、吊りバンド20を接続固定する際の作業性の一層の向上に寄与することができる。
【0041】
そして、上述した足場ユニット10,10間の接続長を変更する足場接続手段(本例では、ターンバックル40)と、バンドユニット20aに対する足場ユニット10の吊り下げ位置を調整可能に接続保持する吊り下げ位置調整手段(本例では、レバーブロック30)との協働作用が相俟って、高さ方向に沿って外周径が変化する煙突100の外壁(外周面100S)に複数の足場ユニット10,10・・・から構成される足場装置1を安定して設置することが可能となる。
【0042】
図1〜図3に戻って、各足場ユニット10は、径方向に水平に延在する平面視二等辺三角形状の枠状の上段フレーム12と、上段フレーム12と直交する方向に延在する断面略矩形状の枠状の下段フレーム14とを有し、かかる上段フレーム12と下段フレーム14とは一体に形成されている。そして、本実施の形態に係る足場ユニット10は、上段フレーム12及び下段フレーム14のそれぞれに略長方形状の鋼製又はアルミ製の足場板SBを載置(配設)した上下2段の足場構成となっている。
【0043】
ここで、上段フレーム12上に形成される足場は、主に外周面100Sの補修や解体等の保守作業用の足場(以下、上段作業足場15Uとも称する)であり、下段フレーム14上に形成される足場は、主にターンバックル40や胴回しワイヤー100wの締め込み等の補助作業を行うための補助足場(以下、下段補助足場15Dとも称する)である。
【0044】
また、上段フレーム12の煙突100(外周面100S)側には、当該外周面100Sと接触する2つの接触部12Pが形成されていると共に、下段フレーム14の底辺14bの煙突100(外周面100S)側には、当該外周面100Sと接触する1つの接触部14Pが形成されている。
【0045】
すなわち、本実施の形態では、複数の各足場ユニット10,10・・・を周方向に接続するターンバックル40を締め付けることにより、各足場ユニット10の3つの接触部12P,12P,14Pを煙突100の外周面100Sに押圧接触(3点支持)させて、吊りバンド20から吊り下げられた2段構成の足場装置1を外周面100Sに固定設置するようになっている。
【0046】
また、図5に拡大して示すように、隣接する足場ユニット10,10間には、長方形状の複数(例えば、3〜4枚)のアルミ製足場板SBが上段フレーム12上に径方向に沿って隣接載置されている。この足場板SBとしては、仮設工業会認定の標準品(長さ2000mm×幅240mm)を用いることができ、本実施の形態において、一の足場ユニット10の上段フレーム12上には、両隣の足場ユニット10からの足場板SBが当該上段フレーム12上で重ねられ、かつ、重ねられた足場板SBは、上段フレーム12の斜辺12Rに沿って鉄線(番線)FWにて固定されて上段作業足場15Uを構成している。
【0047】
本実施の形態において、二等辺三角形状の上段フレーム12の等辺(斜辺)12Rのなす頂角θは、24〜46°の範囲に設定されている。上段フレーム12の頂角θをこのような範囲に設定することにより、煙突100の外壁(外周面100S)に沿って配設される長方形状の足場板SBを上段フレーム12の斜辺12Rに沿って番線FWにて固定する際、所定のテーパ角度(1/40〜1/100)に基づいて高さに応じて変化する煙突径に対して、上段フレーム12上で重なる足場板SBのそれぞれをその長辺と略直交するように番線固定することが可能となる。また、長方形状の標準足場板SBを外周に沿って配置する場合、外周面100Sから矩形状のフレームを放射状に配置する態様に比し、三角形状のフレームを放射状に配置した方が、標準足場板SBをフレームの辺に沿って番線固定する際に、長方形状の足場板SBをより円周に近似して配置することができ、足場板SBと外周面100Sとの隙間をより小さく抑制することが可能となる。これにより、補修作業やハツリ作業といった主たる保守作業を行う作業用足場15Uをより確実に固定すると共に安全性の向上に寄与することができる。
【0048】
一方、本実施の形態に係る下段フレーム14は、筋交い部材14Rにより足場ユニット10の強度を補強すると共に、底辺14b上に上段フレーム12と同様な複数(例えば、2枚)のアルミ製足場板(長さ2000mm×幅240mm)を載置して番線固定することにより下段補助足場15Dを構成している。
【0049】
さらに、本実施の形態に係る足場装置1では、図1に最も良く示されるように、上段フレーム12の外周面100S側の端部(本例では、上段フレーム12の斜辺12Rの煙突側端部)に、吊りバンド20の高さ方向の移動を補助すると共に、当該吊りバンド20の仮支持を可能とする吊り支持部材であるスタンド10Sが鉛直方向に立設されている。
【0050】
上記スタンド10Sは、少なくとも上段作業足場15Uと吊りバンド20との離隔距離よりも長尺(例えば、長さ2.5〜3.5m程度)の棒状に形成されていると共に、その頂部に滑車10Spが取り付けられている。かかる滑車10Spには、さらに吊りロープ10Srが架け回されており、その一端が吊りバンド20の吊り環203に接続されていると共に、他端は作業者が握る(掴む)開放端となっている。また、スタンド10Sの高さ方向中間部には、吊りバンド20を一時的に支持(仮支持)するために、上記吊りロープ10Srの開放端を巻き付けて固定する鉤状のフック(固定部)10Sfが形成されている。
【0051】
なお、上記スタンド10Sは、全ての足場ユニット10に設ける必要はなく、一つおきの足場ユニット10ごとに設ける等、設置数は適宜任意に設定することができる。
【0052】
また、図6に示すように、本実施の形態に係る足場装置1は、足場ユニット10を構成する上段作業足場15Uと下段補助足場15Dとを連絡する連絡足場CSBを備えている。
【0053】
具体的には、本実施の形態において、煙突100S側の足場板SBには、長手方向中間部から上方に開放可能な開口部SB0が設けられており、かかる開口部SB0を開放することにより乗降口が形成されるようになっている。そして、図6に示すように、足場板SBを開放した状態で、梯子状の連絡足場CSBを下段補助足場15D上に載置し、当該連絡足場CSBを番線FWにて胴回しワイヤー(本例では、上下2本の胴回しワイヤー)100wに取り付けると共に、連絡足場CSBの長辺片側を近接する上段フレーム12の斜辺12Rに番線FWにて取り付けることにより上段作業足場15Uと下段補助足場15Dとの連絡通路が形成されるようになっている。
【0054】
なお、図6では、足場板SBに開口部SB0を設けた構成を例示しているが、このような開口部SB0を設けずに、乗降口に対応する足場板SB自体を取り外して、開口部を形成してももちろんよい。なおこの場合には、連絡足場CSBに対応する上段作業足場15Uの足場板SB(例えば、煙突100側に近接する足場板)は、乗降の際に容易に取り外し/取り付けが可能なように、隣接する他の足場板SBとは独立に上段フレーム12の斜辺12Rに番線固定しておくことが好ましい。また、連絡足場CSBの先端長さを延長して、かかる先端部を吊りバンド20に番線固定するようにしてもよい。
【0055】
以下に、このように構成した本実施の形態に係る足場装置1による作業手順(移動方法)を図面を参照して説明する。
【0056】
まず、図7(a)に模式的に示すように、煙突100の下部に接続された煙道等の既設の設備を回避するため、地上近傍に設けた所定の高さ(例えば、地上高1.5m程度)の作業床WBを事前に組み立てる。
【0057】
その後、この作業床WBを利用して、作業者が吊りバンド20を煙突100の外周面100Sに沿って所定の位置(例えば作業床WBからの高さ1.8m程度)に水平に取り付ける。
【0058】
次に、図7(b)に示すように、複数(例えば16個)のレバーブロック(3/4t吊)30が略均等な間隔で配置されるように、吊りバンド20の吊り環203にレバーブロック30の本体フック30Fを取り付けると共に、吊り下げられたレバーブロック30先端のチェーンフック30Fcを足場ユニット10(本例では、上段フレーム12の煙突100側の対向辺12fの略中央)に取り付ける(図2参照)。そして、レバーブロック30のハンドル30Hを操作し、吊りバンド20よりも下方の適当な位置に足場ユニット10を吊り下げてメカニカルブレーキにてロックする。
【0059】
さらに、吊りロープ10Srの一端についても、吊りバンド20の吊り輪203に取り付けておく。なお、レバーブロック30の本体フック30F及び吊りロープ10Srは、吊りバンド20に設けられた任意の吊り輪203を適宜選択して取り付けることができる。
【0060】
周方向に沿って同様な作業を行って、複数の足場ユニット10,10・・・をレバーブロック30を介して吊りバンド20から吊り下げると共に、対応するスタンド10Sの吊りロープ10Srを吊りバンド20に取り付ける。その後、隣接する足場ユニット10,10同士をターンバックル40にて連結して締め込む。これにより、各足場ユニット10の接触部12P,12P,14Pを外周面100Sに押圧させて複数の足場ユニット10,10・・・を煙突外壁に沿って円形に接続して外周面100Sに固定する。
【0061】
なおこの際、例えば図3に示すように、既設の梯子STが設置されている箇所は、かかる梯子STを跨いで(梯子STの設置箇所に対応する足場ユニット10を周方向に移動させて又は省いて)隣接する足場ユニット10,10同士を接続する。このように、本実施の形態に係る足場装置1によれば、煙突100の外周面100Sの状態に応じて、柔軟に足場ユニット10の接続数や接続長(接続間隔)を変更することができるので、既設の突設物等の障害物を回避しつつ高さ方向に移動可能な足場装置1を容易に設置することができる。
【0062】
さらに、安全性向上の観点から、胴回しワイヤー100wにて、各足場ユニット10を下段フレーム14の対向辺(外周面100Sに対向する辺)14fを介して(含んで)締め付けて各足場ユニット10の外周面100Sへの位置決め固定を補助する(図1参照)。
【0063】
次に、上段フレーム12及び下段フレーム14のそれぞれに足場板SBを敷設(番線固定)し、上段作業足場15U及び下段補助足場15Dをそれぞれ形成し足場装置1を組み立てる。
【0064】
なお、上段作業足場15Uと下段補助足場15D間の移動は、既設の梯子STが利用可能な場合には当該梯子STを用いることができるが、老朽化等により既設の梯子STが利用不能である場合には、前述したように、任意の足場ユニット10の上段作業足場15Uと下段補助足場15D間に連絡足場CSBを設けることにより容易に移動可能となる。
【0065】
すなわち、本実施の形態に係る足場装置1では、既設の梯子STが利用できないような状況でも保守作業及びこれに伴う補助作業を容易に行うことが可能となる。これにより、特に、大径(例えば、10m超)の煙突100の補修等を行う際の作業性を一層向上させることができる。
【0066】
足場装置1を組立固定した状態で煙突100回りの補修等の保守作業を行った後、足場装置1を上昇させる際には、まず、吊りバンド20が移動可能なようバンド接続手段(全ネジボルトやチェーンブロック)を緩める。
【0067】
次に、図8(a)に模式的に示すように、スタンド10Sの吊りロープ10Srを引っ張り、吊りバンド20を所望の位置(例えば、上段作業足場15Uから3m程度)まで吊り上げて水平に固定する(吊りバンド移動設置工程)。
【0068】
なおこの際、作業効率の観点からは、複数の作業者(好ましくは、煙突の中心から見て点対称に配置された作業者)が同時に吊りロープ10Srを引っ張って吊りバンド20を引き上げることが好ましいが、単独の作業者が周方向に移動しながら吊りバンド20を徐々に引き上げるようにしてもよい。
【0069】
また、移動領域中の煙突外周面100Sに梯子の手摺や部分的に突出した踊り場等の障害物がある場合には、上記スタンド10Sを用いて吊りバンド20(バンドユニット20a)を一時的に支持(仮支持)し、この状態で対応する位置にあるバンドユニット20aや足場ユニット10を移動若しくは省略したり(間引いたり)、又は接続長を変更することにより当該障害物を回避することが可能となる。
【0070】
さらに、吊りバンド20を吊り上げる(移動させる)際には、鉛直方向に立設されたスタンド10Sをスケール(目盛り)代わりに用いることにより、移動させた吊りバンド20をより安定して外周面100S回りに水平に取り付けることが可能となる。
【0071】
次に、図8(b)に模式的に示すように、レバーブロック30のハンドル30Hを操作して、足場ユニット10を所定の位置(例えば、吊りバンド20の下方約30cm)まで吊り上げてメカニカルブレーキにてロックする(足場ユニット吊り下げ調整工程)。
【0072】
さらに、ターンバックル40及び胴回しワイヤー100wを締め込んで足場装置1を外周面100Sに固定する(足場ユニット接続設置工程)。
【0073】
なお、足場装置1を上昇させる際には、事前に胴回しワイヤー100wを緩めておくことが好ましいが、移動領域内の外周面100Sが平滑な場合(突設物等がない場合)には、当該外周面100Sに対して線接触している胴回しワイヤー100wは、面接触している吊りバンド20に比し、先細りとなるテーパに沿って容易に上方へ移動(スライド)可能となるので、上記ワイヤー100wを緩める作業を省略することができる(ワイヤー100wを緩めることなくレバーブロック30のハンドル操作のみで足場ユニット10を上昇させることができる)。
【0074】
また、上段作業足場15Uと下段補助足場15Dとの往復による作業効率の低下を抑制するという観点からは、例えば、足場装置1の上昇に伴う足場ユニット10等の接続数削減により余剰の作業人員が生じた場合には、少なくとも1名の作業者を下段補助足場15Dに残しておくことが好ましい。
【0075】
このような手順を繰り返すことにより、煙突頂部に足場を吊り下げるための支持部材を設けることなく(煙突頂部から足場を吊り下げることなく)、足場装置1を徐々に上昇させながら煙突100の外周面100S回りの保守作業を行うことができる。
【0076】
また、足場装置1を下降させる際にもスタンド10Sを用いて同様な手順により行うことができる。特に、移動領域中に障害物がある場合には、スタンド10Sを用いて吊りバンド20を一時的に仮支持して当該障害物をかわすことにより、一層の作業性の向上を図ることができる。また、煙突径が大きい場合にも、バンドユニット20aの接続数が増えて当該バンドユニット20aの支持や水平な位置決めが困難となるため、上記スタンド10Sを用いて下降させることが好ましい。
【0077】
このように、スタンド10Sの滑車10Spを介して吊りロープ10Srにより吊りバンド20を引き上げることにより、作業者が直接吊りバンド20を持ち上げる態様に比し、吊りバンド20と外周面100Sとの間に作業者が指を挟む等の危険を未然に回避して作業の安全性の向上を図ることができる。併せて、長尺のスタンド10Sを用いることにより、移動作業の際の吊りバンド20の移動可能距離を拡大させることができ、作業性の向上及び工期の短縮に寄与することができる。
【0078】
なお、上記スタンド10Sを用いない場合には、吊りバンド20を移動(上昇/下降)させる際に、当該吊りバンド20を支えながら作業を行う必要があるため、バンドユニット20a毎に約1名の作業者が必要であったが、上記スタンド10Sを用いることにより、上記吊りバンド20の移動作業が約半分の作業人員で実施可能であることが検証できた。これにより、吊りバンド20の移動距離の拡大と相俟って、足場装置1を移動(上昇/下降作業)させる際の生産性を大幅に向上(作業時間及び作業人員の大幅な削減)できることが確認できた。
【0079】
以上、本発明に係る足場装置1によれば、超高所作業となる高層煙突頂部から足場を吊り下げることなく、地上近辺に設けた作業床WBから順次足場ユニット10を移動させて、煙突100の外周面100Sの保守作業が可能となると共に、高さによって外径が変化するテーパを有する煙突においても作業足場の位置決めを安定して行うことができる。
【0080】
また、足場ユニット10の設置数や隣接する足場ユニット10,10の離隔距離(接続間隔)を任意に変更できるので、高さによって外径が変化するテーパを有する煙突において足場板SBと外周面100Sとの隙間を最小限に抑制して安全性の向上に寄与することができる。
【0081】
さらに、吊りバンド20の高さ方向の移動を補助すると共に、仮支持を可能とする吊り支持部材10Sを用いることにより、移動領域の途中に踊り場等の障害物が外周面100Sから突設している場合でも当該障害物を容易に回避することができ、かつ、足場装置1を移動させる際の作業性を著しく向上させることができる。
【0082】
なお、本発明の技術的範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨に逸脱しない範囲において多様な変更もしくは改良を加え得るものである。例えば、上記実施の形態では、コスト面からバンド接続手段として全ネジボルトやチェーンブロックを用いたが、さらなる作業性の向上を図ってレバーブロック30を用いてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1:足場装置、10:足場ユニット、10H:手摺、10N:防護ネット、10S:スタンド、10Sf:フック、10Sp:滑車、10Sr:吊りロープ、12:上段フレーム、12P,12P,14P:接触部、12R:斜辺、12f:対向辺、14:下段フレーム、14R:筋交い部材、14b:底辺、15U:上段作業足場、15D:下段補助足場、20:吊りバンド、20a:バンドユニット、20a0:長さ調整用バンドユニット、30:レバーブロック、30C:チェーン、30F:本体フック、30Fc:チェーンフック、30H:ハンドル、40:ターンバックル、100:煙突、100S:外周面、100w:胴回しワイヤー、201:全ネジボルト、203:吊り輪、FW:番線、SB:足場板、SB0:開口部、ST:梯子、WB:作業床、CSB:連絡足場

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂部に向かって先細りとなるテーパを有する円筒状構築物の足場装置であって、
前記円筒状構築物の外周回りに水平に配設される円環状の吊りバンドと、
前記吊りバンドに吊り下げられると共に、前記円筒状構築物の外周面と接触して前記円筒状構築物の周方向に沿って配設され、その上に矩形状の足場板が載置される作業足場と
を備え、
前記吊りバンドは、周方向に沿って複数のバンドユニットに分割されていると共に、周方向に隣接するバンドユニットは、その間隔を調整可能とするバンド接続手段により接続されており、かつ、
前記作業足場は、周方向に沿って複数の足場ユニットに分割されていると共に、周方向に隣接する足場ユニットは、その間隔を調整可能とする足場接続手段により接続されており、さらに、
前記バンドユニットと足場ユニットとは、前記バンドユニットに対する足場ユニットの吊り下げ位置を調整可能に保持する吊り下げ位置調整手段により接続されていることを特徴とする円筒状構築物の足場装置。
【請求項2】
前記足場ユニットは、吊りロープを介して前記吊りバンドの高さ方向の移動を補助すると共に当該吊りバンドを仮支持する、前記円筒状構築物と対向するように立設された棒状の吊り支持部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載の円筒状構築物の足場装置。
【請求項3】
前記吊り支持部材は、その先端に前記吊りロープを架け回す滑車を備えていると共に、前記吊りロープの一端を固定する固定部を備えていることを特徴とする請求項2に記載の円筒状構築物の足場装置。
【請求項4】
前記足場ユニットは、上段足場と下段足場の上下2段に構成されており、上段足場と下段足場との間には、相互の連絡を可能とする連絡足場が取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の円筒状構築物の足場装置。
【請求項5】
煙突外周面回りに配設され、前記上段足場と下段足場との間で前記足場ユニットを煙突外周面に固定する胴回しワイヤーをさらに備え、前記連絡足場は、前記上段足場と前記胴回しワイヤーとに番線固定することにより取り付けられていることを特徴とする請求項4に記載の円筒状構築物の足場装置。
【請求項6】
前記円筒状構築物に対する設置高さに応じて、周方向に配置されるバンドユニット及び/又は足場ユニットの設置数を変更することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の円筒状構築物の足場装置。
【請求項7】
前記上段足場は、周方向に沿って水平に配置された二等辺三角形状の複数の上段フレームと、周方向に隣接する上段フレームに渡って敷設される長方形状の足場板とを備え、前記二等辺三角形状の上段フレームの頂角の開き角度は24〜46°の範囲に設定されていることを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載の円筒状構築物の足場装置。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれかに記載の円筒状構築物の足場装置を用い、
前記吊りバンドを前記スタンドを介して吊りロープにより高さ方向に移動させた後、前記スタンドにより仮支持し、所定のテーパに従って変化する円筒状構築物の外径に応じて、前記吊りバンドの接続長やバンドユニットの接続数を変更して、円筒状構築物の外周に固定する吊りバンド移動設置工程と、
前記吊りバンドの移動に伴い、前記吊り下げ位置調整手段により、前記足場ユニットの吊り下げ位置を変更する足場ユニット吊り下げ調整工程と、
吊り下げ位置が変更された足場ユニットを、所定のテーパに従って変化する円筒状構築物の外径に応じて、隣接する足場ユニットの接続長や足場ユニットの接続数を変更して、円筒状構築物の外周に固定する足場ユニット接続設置工程と
を備えることを特徴とする円筒状構築物の足場装置の移動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−219551(P2012−219551A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88109(P2011−88109)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(511091955)大正鉄筋コンクリート株式会社 (1)
【Fターム(参考)】