説明

再生セメント・コンクリート砂の製造方法

【課題】 セメントペーストの付着が少なく、したがって吸水率が小さく、絶乾密度の高い再生セメント・コンクリート砂の製造方法を提供する。
【解決手段】 投入口(15)と排出口(16)を設けた中空のドラム(1)が駆動軸(5)を中心に回転する。ドラム(1)の駆動軸(5)に対して偏心した回転軸(8)を有するフリーローラー(2)がドラム(1)内で回転自在に支承されている。投入口(15)からドラム(1)内に再生セメント・コンクリート細粒を供給する。ドラムの中で、ドラム(1)とフリーローラー(2)の相互作用に基づいて再生セメント・コンクリート細粒を摩砕する。それによりセメント・コンクリート砂からセメントを分離・除去して、再生セメント・コンクリート砂を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生セメント・コンクリート砂の製造方法、たとえば、セメント・コンクリート構造物を解体したときに生じるセメント・コンクリート廃材を破砕して再生セメント・コンクリート細粒をつくり、それから再生セメント・コンクリート砂を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビル等のセメント・コンクリート構造物を解体すると、その解体物であるセメント・コンクリート廃材(最大寸法が例えば30〜500mm程度のセメント・コンクリート塊)が大量に発生する。このようなセメント・コンクリート廃材は、通常、産業廃棄物として最終処分場で埋め立て処理されているか、又は再生砕石として道路用路盤材として使用されている。
【0003】
しかし、近年においては、上記のようなセメント・コンクリート廃材の処分場を確保することが困難となってきている。また、新設道路などの需要が減退し、路盤材としての利用も減少傾向にある。
【0004】
このため、セメント・コンクリート廃材を効率よく再資源化あるいはリサイクルする方法が強く要望されている。
【0005】
他方、セメント・コンクリート廃材には、構成材料として砂が含まれているが、この種の砂についても、近年は、環境保全の観点から採取場の確保が困難となってきている。
【0006】
したがって、産業廃棄物であるセメント・コンクリート廃材から砂等の材料が効率よく得られるようにすれば、環境保全に役立つだけでなく、資源の有効活用の点でも大きく貢献できる。
【0007】
セメント・コンクリート廃材を例えば含有骨材の最大寸法に近い大きさ以下に破砕しただけの破砕物である再生セメント・コンクリート細粒は、骨材に、骨材を結合していたセメントペーストが付着した粒や塊となっており、加えてセメントペーストの微小粉粒も混在している。セメントペーストは、通常の骨材に比べると、強度的にもかなり低く脆弱であるため、セメント・コンクリート細粒を骨材として再利用すると、セメント・コンクリートの強度や耐久性が著しく低下する。
【0008】
また、セメントペーストが付着した骨材は、吸水率が大きいため、これをセメント・コンクリートの製造に使用すると、セメント・コンクリートの乾燥収縮が大きくなり、凍結融解抵抗性が低下するなど、耐久性上の問題が生じていた。
【0009】
このため、骨材に付着したセメントペースト分や混在するセメントペースト粒を除去する試みが行われているが、従来の機械的除去手法では、実用上支障を生じない程度まで付着ペーストを除去するのは骨材粒形が小さくなるほど容易ではない。
【0010】
特開平8−109052号公報や特開平8−198652号公報には、セメント・コンクリート廃材をセ氏数百度以上に加熱し、付着セメントペーストを脱水することで脆弱化させたり、骨材とセメントペーストとの熱膨張差から付着強度を低減させたりすることで、後の機械的手法による骨材からのセメントペースト剥離を容易にした再生骨材製造の前処理技術が開示されている。
【0011】
一般に、このような加熱処理は、温度を高くするほど剥離を容易にする。しかし、高温加熱を行うと、骨材自身の強度や耐久性が劣化することがあり、また、加熱設備やエネルギー消費の面で処理コストがかかるという問題が生じる。
【特許文献1】特開平8−109052号公報
【特許文献2】特開平8−198652号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記問題点を解決することを目的とする。即ち、セメントペーストの付着が少なく、したがって吸水率が小さく、絶乾密度の高い再生セメント・コンクリート砂の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の解決手段を例示すると、以下のとおりである。
【0014】
(1) 投入口(15)と排出口(16)を有する中空のドラム(1)をその駆動軸(5)を中心に回転させ、ドラム(1)の駆動軸(5)に対して偏心した回転軸(8)を有するフリーローラー(2)をドラム(1)内で回転自在に支承し、投入口(15)からドラム(1)内に再生セメント・コンクリート細粒を供給し、ドラム(1)内でドラム(1)とフリーローラー(2)の相互作用に基づいて再生セメント・コンクリート細粒を摩砕し、それにより再生セメント・コンクリート細粒からセメントを除去して再生セメント・コンクリート砂を製造することを特徴とする再生セメント・コンクリート砂の製造方法。
【0015】
(2) ドラム(1)を回転数300rpm未満の低速で回転させることを特徴とする前述の再生セメント・コンクリート砂の製造方法。
【0016】
(3) ドラム(1)に投入する再生セメント・コンクリート細粒の最大寸法が10mm以下であることを特徴とする前述の再生セメント・コンクリート砂の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、セメントペーストの付着が少なく、したがって吸水率が小さく、絶乾密度の高い再生セメント・コンクリート砂を製造しやすい。
【0018】
とくに、ドラムを回転数300rpm未満の低速で回転させると、吸水率と絶乾密度の規定値をほぼ達成することができ、優れた再生効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明による再生セメント・コンクリート砂の製造方法においては、ドラムとフリーローラーを使用して、再生セメント・コンクリート細粒を摩砕する。たとえば、投入口と排出口を設けた中空のドラムが駆動軸を中心に回転するようにする。ドラムの駆動軸に対して偏心した回転軸を有するフリーローラーがドラム内で回転自在に支承されている。投入口からドラム内に再生セメント・コンクリート細粒が供給され、ドラムの中で、ドラムとフリーローラーの相互作用に基づいて再生セメント・コンクリート細粒を摩砕する。それによりセメント・コンクリート砂が破砕されずに、セメント・コンクリート砂とセメントが分離される。
【0020】
再生セメント・コンクリート細粒は、セメント・コンクリート構造物を解体したときに生じるセメント・コンクリート廃材(通例、約30〜500mmの寸法を有する廃材)をそのまま使用することもできるが、そのようなセメント・コンクリート廃材を破砕装置によって最大寸法10mm以下の細粒、例えば10mm角のスクリーン(ふるい)を通過したセメントと砂からなる小塊を使用することが好ましい。
【0021】
ドラムは、回転数300rpm未満の低速で回転させるのが好ましい。ドラムを回転数300rpm以上の高速で回転させると、セメントを砂から分離するだけでなく、本来の砂まで破砕してしまい、歩留まりが悪くなる傾向が強くなる。
【0022】
以下に、本発明による再生セメント・コンクリート砂の製造方法の一例を説明する。
【0023】
図1は、再生セメント・コンクリート砂の製造方法を好適に実施するための再生セメント・コンクリート砂製造装置を示す部分断面図である。図2は、図1の製造装置の主要部分を拡大して示す断面図である。なお、図1と図2において装置の形状は多少異なっているが、基本的に同じものである。
【0024】
製造装置は、駆動軸5を中心に回転駆動されるドラム1と、ドラム1内で回転軸8を中心に回転自在に支持されたフリーローラー2を備えている。ドラム1の駆動軸心1aとフリーローラー2の回転軸心2aは、所定距離aだけずれている。
【0025】
ドラム1は中空円筒状の容器であって、側壁17と端壁3、9から構成されている。端壁3、9には、それぞれ投入口15及び排出口16が形成されている。側壁17の内面には、耐磨耗対策としてセラミックス製の部材が設けられている。投入口15には投入シュート11が配置されている。排出口16は投入口15よりも大きく形成されている。
【0026】
ドラム1の端壁3側には、リング状の板10が強固に取付けてある。端壁3とリング状板10の間には排出通路18が形成されている。
【0027】
端壁3とリング状板10は、カバー12で覆われている。カバー12の下部には、排出通路18に連通する排出シュート13が取付けられている。
【0028】
端壁3には、駆動軸5が固定されている。駆動軸5は、軸受4によって支持されている。駆動軸5の右端には、プーリ6が固定してあり、図示しない駆動手段によってドラム1を回転駆動する構成になっている。
【0029】
フリーローラー2は、前述したように、ドラム1内で所定距離aだけ偏心して配置されている。フリーローラー2の回転軸8は、軸受7によって回転自在に支持されている。
【0030】
固定軸8の外側にはベヤリングケース20がベヤリング21を介して自由回転可能に設けられている。ベヤリングケース20にはフリーローラー本体22が着脱可能に取り付けられている。フリーローラー本体22は耐磨耗性の材料で形成されていて、外周が二重構造になっている。フリーローラー本体22の周端面には、耐磨耗対策としてセラミックス製の部材が設けられている。
【0031】
次に、製造装置を用いて再生セメント・コンクリート砂を製造する方法の一例を説明する。
【0032】
まず、図示しない駆動装置によって、プーリ6を介してドラム1を回転させる。そして、投入シュート11から投入口15を経て、最大寸法10mm以下の再生セメント・コンクリート細粒を所定の流量でドラム1内に連続的に投入する(図2の矢印A)。
【0033】
投入された再生セメント・コンクリート細粒は遠心力の作用で、ドラム1の内周面に強く付着して、層14a、14bを形成する。これらの層14a、14bは、ドラム内周に沿って環状となる。
【0034】
なお、符号14a、14bは、内周面に付着した再生セメント・コンクリート細粒層のうちドラムの下部と上部に位置する部分を示している。
【0035】
図示された実施例では、フリーローラー2の回転軸8が下方に距離aだけ偏心しているので、ドラム1内の空間は下方領域で少し狭くなっている。すなわち、ドラム1内の下方領域では、ドラム1内面とフリーローラー2先端との間隙が狭くなっているのである。このため、フリーローラー2は、ドラム1の下部の層14aに侵入して回転する。これによって、層下部14aの再生セメント・コンクリート細粒が流動(体積移動)し、その結果、再生セメント・コンクリート細粒が摩砕される。この摩砕によって、砂が破砕されずに、砂(粒子)に付着したセメントが除去される。つまり、砂からセメントが分離れ、再生砂が製造される。
【0036】
摩砕されたて再生された砂は、リング状板10を超えて流動し(図2矢印B)、排出通路18から再生砂として外部に排出される(図2矢印C)。ドラム1の周囲には、遠心力で排出された再生砂を集めるカバー12が設けられ、その下部に排出シュート13が連結されていて再生砂が回収容器(図示せず)に送られる。
【実施例】
【0037】
以下、実際に行った再生セメント・コンクリート砂の回収テストの試験結果を説明する。
【0038】
図3は、試験結果として絶乾密度(g/cm)を示すグラフである。原料として、38年前の砕石および砕砂を用いたセメント・コンクリート廃材を破砕した再生セメント・コンクリート細粒を用いた。
【0039】
図4は、試験結果として吸水率(%)を示すグラフである。
【0040】
横軸は異なる条件の試料を示し、表1に試料の条件を示す。規格値は、絶乾密度2.5g/cm以上、吸水率3.5%以下である。
【0041】
図3〜4において、A〜Kの左側は、図1〜2の製造装置で3回くり返し処理(パス)した結果を示し、右側は、図1〜2の製造装置で4回くり返し処理(パス)した結果を示す。
【表1】

【0042】
再生セメント・コンクリート砂の回収テストの結果から、以下の条件が好ましいことが分かった。
【0043】
本発明 比較例
再生セメント・コンクリート細粒の場合 鋳物砂の場合
原料投入量 1,000kg/h以下 1,000kg/h
隙間 12mm以上 13mm以下
回転数 300rpm未満 400rpm以上
とくに、隙間(ドラム1の底部とローラー2の端面の距離)が12mm、ドラムの回転数が200rpmのときに絶乾密度と吸水率の規定値を達成でき、より好ましい結果が得られることが分かった。
【0044】
砂であっても、再生セメント・コンクリート砂と違って、鋳物砂の場合は、砂同士を結合するバインダーがレジン系の樹脂からなり、その付着力は非常に強固で、且つ使用する砂も1.2mm〜0.1mmと細かい。そのため、砂の表面に付いた樹脂を剥ぐのは、かなり厳しい運転条件、例えばドラムを高速で回転させることが要求される。
【0045】
一方、再生セメント・コンクリート細粒から砂を再生する場合は、砂の表面に付着したセメントを剥ぐことが目的であり、セメントの硬化物は、セメントの粉体が水硬反応で固まったもので、その凝結力はそれ程強くなく、砂及びセメントの粒子も粗い。そのため、剥離は比較的穏やかな条件で起こる。従って、再生セメント・コンクリート細粒から再生砂をつくる場合は、鋳物砂の場合とは対照的に、ドラムを低速、特に300rpm未満の速度で回転させることが好ましい。
【0046】
なお、本発明は前述の実施例に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明による製造方法を好適に実施するための再生セメント・コンクリート砂製造装置を示す部分断面図。
【図2】図1に示された製造装置の主要部分を拡大して示す断面図。
【図3】試験結果として特に絶乾密度(g/cm)を示すグラフ。
【図4】試験結果として特に吸水率(%)を示すグラフ。
【符号の説明】
【0048】
1 ドラム
1a、2a 回転軸心
2 フリーローラー
3、9 端壁
4、7 軸受
5 駆動軸
6 プーリ
8 回転軸
10 リング状板
11 投入シュート
12 カバー
13 排出シュート
14a、14b 層
15 投入口
16 排出口
17 側壁
18 排出通路
20 ベヤリングケース
21 ベヤリング
22 フリーローラー本体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入口(15)と排出口(16)を有する中空のドラム(1)をその駆動軸(5)を中心に回転させ、ドラム(1)の駆動軸(5)に対して偏心した回転軸(8)を有するフリーローラー(2)をドラム(1)内で回転自在に支承し、投入口(15)からドラム(1)内に再生セメント・コンクリート細粒を供給し、ドラム(1)内でドラム(1)とフリーローラー(2)の相互作用に基づいて再生セメント・コンクリート細粒を摩砕し、それにより再生セメント・コンクリート細粒からセメントを除去して再生セメント・コンクリート砂を製造することを特徴とする再生セメント・コンクリート砂の製造方法。
【請求項2】
ドラム(1)を回転数300rpm未満の低速で回転させることを特徴とする請求項1に記載の再生セメント・コンクリート砂の製造方法。
【請求項3】
ドラム(1)に投入する再生セメント・コンクリート細粒の最大寸法が10mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の再生セメント・コンクリート砂の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−16274(P2006−16274A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197609(P2004−197609)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(593083295)関西マテック株式会社 (4)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】