説明

冷却サイクル及び冷蔵庫

【課題】可燃性冷媒の冷媒量の削減と高効率化を行う。
【解決手段】低圧容器型である圧縮機1と凝縮器2と流路制御手段12と第一の減圧手段7と第一の蒸発器3と第二の減圧手段8と第二の蒸発器5と第一の蒸発器3近傍に第一のファン13と第二の蒸発器近傍に第二のファン14を備え、圧縮機1と凝縮器2と第一の減圧手段7と第一の蒸発器3とで閉ループを形成するとともに、第一の減圧手段7と第一の蒸発器3に並列となるように第二の減圧手段8と第二の蒸発器5とを接続し、第一の減圧手段7と第二の減圧手段8の入口側に配設した流路制御手段12により第一の蒸発器3と第二の蒸発器5とを切り替えて冷媒回路を構成し、冷媒回路に封入される冷媒を可燃性冷媒とするとともに、第一の蒸発器3を高温側の蒸発器、第二の蒸発器5を低温側の蒸発器として、圧縮機1の停止中は流路制御手段12により第二の蒸発器5への冷媒回路を閉止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可燃性冷媒の冷媒量削減と高効率化を図った冷却サイクル並びに冷蔵庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7に従来の冷却サイクル並びに冷蔵庫の一例として、特許文献1に開示されている冷蔵庫の概略図を示す。
【0003】
1は一定速圧縮機,2は凝縮器,3は冷蔵室4内に配設された第一の蒸発器であり、5は冷凍室6内に配設された第二の蒸発器である。
【0004】
7は冷蔵室冷却用である第一の蒸発器3の冷媒回路上流側に配設された第一のキャピラリであり、8は冷凍室冷却用である第二の蒸発器5の冷媒回路上流側に配設された第二のキャピラリであり、9は冷凍室冷却用である第二の蒸発器5の下流側に設けた逆止弁である。
【0005】
10は第一の蒸発器3の冷媒回路下流側に配設された第一の開閉弁であり、11は第二のキャピラリ8の冷媒回路上流側に設けられた第二の開閉弁である。
【0006】
以上のように構成された従来例の冷蔵庫について、以下その動作を説明する。
【0007】
冷凍サイクルの運転は以下のように行われる。まず圧縮機1により圧縮された冷媒が凝縮器2で凝縮液化される。凝縮された冷媒は第一のキャピラリ7もしくは第二のキャピラリ8で減圧されて、それぞれ第一の蒸発器3,第二の蒸発器5へ流入、蒸発気化された後、再び圧縮機1へと吸入される。
【0008】
冷媒が蒸発気化することにより比較的低温となった第一の蒸発器3,第二の蒸発器5と冷蔵室4,冷凍室6の空気が熱交換することにより各室が冷却される。
【0009】
冷凍冷蔵庫の冷却運転は図示しない各室の温度検知手段と制御手段により以下のように行われる。
【0010】
冷蔵室4,冷凍室6の各温度検知手段が所定値以上の温度上昇を検知すると圧縮機1が起動し、冷凍サイクルの運転が行われる。冷蔵室4の温度検知手段が所定値以下となるまで第一の開閉弁10が開放となり、第二の開閉弁11は閉止となる。
【0011】
これにより冷媒は第二の蒸発器5には流入することなく、第一の蒸発器3へのみ流れる。このときの蒸発温度の設定は、冷蔵室4の温度設定が5℃程度に対して0〜−5℃であり、通常の−25〜30℃の蒸発温度に対して2〜2.5倍の成績係数で圧縮機の運転が可能である。
【0012】
冷蔵室4が冷却されて温度が低下し、温度検知手段が所定値以下を検知すると、第一の開閉弁10が閉止し、第二の開閉弁11が開放となる。
【0013】
これにより冷媒は第二の蒸発器5へと流入し、冷凍室6の冷却が行われる。このときの冷凍サイクルの蒸発温度は冷凍室の温度設定が−18℃程度に対し通常の蒸発温度で冷却される。
【0014】
以上のように冷蔵室4と冷凍室6とを蒸発器への冷媒供給時間を分配して、交互に繰り返し冷却するので、冷蔵室4冷却時は独立的に冷媒を第一の蒸発器へと循環させることで低圧圧力調整弁が不要で高蒸発温度(0〜−5℃)が可能であり、圧縮機1の圧縮比を小さくでき、高い成績係数で運転を行い効率化を図るものである。
【特許文献1】特公昭62−22396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら上記のような冷蔵庫にあっては、冷蔵庫で通常使われているロータリータイプやレシプロタイプの圧縮機の特性を鑑みれば、高蒸発温度で運転するほど圧縮比の低減により成績係数は向上し、高効率な冷凍サイクルが期待できるが、同時に高蒸発温度化による吸込み冷媒比体積の減少により圧縮機1の冷凍能力が非常に増大する。
【0016】
例えば通常の蒸発温度とされる−25〜−30℃から0〜−5℃へと蒸発温度を引き上げることで圧縮機の冷凍能力は3〜5倍となるために圧縮機ON時間は短くなる。
【0017】
従来例においては、各室の温度検知手段によって温度調節を行うが、ユーザーの使い方や周囲温度条件などによって、冷却負荷量は大きく異なり、各室独立して温度検知手段に対して設定された所定温度により冷却回路の切り替えと圧縮機1の運転停止が行われると、非常に煩雑な動作となる。
【0018】
また、圧縮機1は一旦停止させると次回円滑な起動動作のためにサイクル高低圧がバランスするまでの時間(例えば3〜7分)強制停止させる必要がある。
【0019】
従来例のようなシステムでは複数の蒸発器を交互に切り替えて運転するので圧縮機1の停止と冷蔵室4の冷却運転と冷凍室6の冷却運転のタイミングが冷却負荷量によってバラバラとなりやすく、例えば冷蔵室冷却−停止−冷凍室冷却−停止のように頻繁に運転停止が入ったり、冷却が必要であっても圧縮機1の強制停止時間中であることが生じる。
【0020】
圧縮機1の起動時には冷媒が蒸発器に安定的に供給されるまで圧縮機1の入力に見合った出力が得られない運転ロスの大きい過渡期が生じる。さらに、冷蔵室4と冷凍室6の冷却切り替え時にも同様の運転ロスの大きい過渡期が生じる。
【0021】
このように煩雑な運転停止と冷却回路の切り替え動作は、大きな効率低下となる。
【0022】
さらに何よりも重要な問題は可燃性冷媒適用時の安全性の問題である。可燃性冷媒の適用にあって冷媒の封入量が多くなるほど危険度合いは増加する。従来例のようなシステムでは蒸発器の冷却能力も大きいものが必要であり、配管容量の増加につながり、冷媒封入量が多く必要となる。凝縮器も相応の放熱能力が要求されるので、同様に配管容量の増加となり冷媒封入量の増加につながる。
【0023】
また、複数の冷却サイクルを直列に接続するものも、冷媒封入量は多く必要となるが、特に複数のファンと直列接続した複数の蒸発器により一部のファン運転を停止させて運転させるようなものは余分な冷媒量を必要とするので可燃性冷媒適用上、危険度が高くなる。
【0024】
さらに、各室の温度が高い状態での電源投入時には一方の冷却が終了するまで他方の冷却が開始されず、いずれかの冷却スピードが遅くなる問題がある。
【0025】
本発明は、以上のような従来の課題を解決するもので、可燃性冷媒の冷媒量削減により可燃性冷媒使用時の安全性を高める冷却サイクル及び冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
この目的を達成するために本発明の冷却サイクルは、低圧容器型である圧縮機と凝縮器と流路制御手段と第一の減圧手段と第一の蒸発器と第二の減圧手段と第二の蒸発器と前記第一の蒸発器近傍に第一のファンと前記第二の蒸発器近傍に第二のファンを備え、圧縮機と凝縮器と第一の減圧手段と第一の蒸発器とで閉ループを形成するとともに、第一の減圧手段と第一の蒸発器に並列となるように第二の減圧手段と第二の蒸発器とを接続し、第一の減圧手段と第二の減圧手段の入口側に配設した流路制御手段により第一の蒸発器と第二の蒸発器とを切り替えて冷媒回路を構成し、前記冷媒回路に封入される冷媒を可燃性冷媒とするとともに、前記第一の蒸発器を高温側の蒸発器、前記第二の蒸発器を低温側の蒸発器として、前記圧縮機の停止中は前記流路制御手段により前記第二の蒸発器への冷媒回路を閉止することを特徴とする。
【0027】
また、第二の蒸発器の出口に冷媒逆流防止手段を設けたことを特徴とする。
【0028】
また、圧縮機の次回起動時には、前記流路制御手段を前記第一の蒸発器への冷媒回路を開放した状態で運転することを特徴とする。
【0029】
また、圧縮機を能力可変型の圧縮機としたことを特徴とする。
【0030】
また、本発明の冷蔵庫は、冷蔵室と冷凍室と請求項1から4のいずれか一項に記載の冷却サイクルとを備え、前記第一の蒸発器と前記第一のファンとを前記冷蔵室の冷却用として用い、前記第二の蒸発器と前記第二のファンとを前記冷凍室の冷却用として用いたことを特徴とする。
【0031】
この本発明によれば、可燃性冷媒の冷媒量削減により可燃性冷媒使用時の安全性を高めることが可能な冷却サイクル及び冷蔵庫を提供することができる。
【0032】
また、過渡期の冷却ロスを削減し効率向上による省エネルギー化を図ることが可能な冷却サイクル及び冷蔵庫を提供することができる。
【発明の効果】
【0033】
以上のように本発明によれば、可燃性冷媒の冷媒量削減により可燃性冷媒使用時の安全性を高めることが可能な冷却サイクル及び冷蔵庫を提供することができる。
【0034】
また、成績係数の向上と過渡特性改善による効率向上による省エネルギー化を図ることが可能な冷却サイクル及び冷蔵庫を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の請求項1に記載の冷却サイクルの発明は、低圧容器型である圧縮機と凝縮器と流路制御手段と第一の減圧手段と第一の蒸発器と第二の減圧手段と第二の蒸発器と前記第一の蒸発器近傍に第一のファンと前記第二の蒸発器近傍に第二のファンを備え、圧縮機と凝縮器と第一の減圧手段と第一の蒸発器とで閉ループを形成するとともに、第一の減圧手段と第一の蒸発器に並列となるように第二の減圧手段と第二の蒸発器とを接続し、第一の減圧手段と第二の減圧手段の入口側に配設した流路制御手段により第一の蒸発器と第二の蒸発器とを切り替えて冷媒回路を構成し、前記冷媒回路に封入される冷媒を可燃性冷媒とするとともに、前記第一の蒸発器を高温側の蒸発器、前記第二の蒸発器を低温側の蒸発器として、前記圧縮機の停止中は前記流路制御手段により前記第二の蒸発器への冷媒回路を閉止することを特徴とする。
【0036】
以上の構成により、可燃性冷媒を用いる冷却サイクルにあって、圧縮機には低圧容器型を用いるので、圧縮機の運転中に容器内のガス冷媒比体積が大きくなり容器内冷媒量を削減できる。さらに、可燃性冷媒と相溶性のある冷凍機油を用いる場合には圧縮機運転中の冷凍機油への冷媒とけ込みを軽減することができ、冷媒量の削減となる。
【0037】
また、第一の蒸発器と第二の蒸発器を切り替えて冷却を行うので、各々切り替えられる回路単独では、冷却システムの配管容量が削減でき、冷媒量が削減可能となる。
【0038】
さらに、圧縮機停止中は第二の蒸発器への冷媒回路を流路制御手段により閉止させるので、圧縮機停止中に凝縮器にあった高温のガス冷媒が低温の第二の蒸発器へ流入することがなく、熱負荷の流入による冷却効率の低下が少ない。
【0039】
また、停止中の冷却システムの圧力が低くバランスするので圧縮機起動時の圧力差が小さく、圧縮機モーターの低トルク化による低コスト,小型化が可能である。
【0040】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第二の蒸発器の出口に冷媒逆流防止手段を設けたことを特徴とするので、各々の蒸発器に温度差が生じて低温側の第二の蒸発器に冷媒が流入することがなく、第一の蒸発器での冷却運転中に冷媒が第二の蒸発器に寝込むことがないので冷媒量を低く押さえることができる。
【0041】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記圧縮機の次回起動時には、前記流路制御手段を前記第一の蒸発器への冷媒回路を開放した状態で運転することを特徴とするので、使用しない第二の蒸発器内には冷媒がほとんどなく、使用する第一の蒸発器内に存在しているので、すぐに使用する第一の蒸発器の温度が低下し、冷却ロスが少ない。
【0042】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、前記圧縮機を能力可変型の圧縮機としたので、負荷の変動に応じて冷却能力を変化させて冷却の過不足を防止しながら高効率化が図れる。
【0043】
請求項5に記載の冷蔵庫の発明は、冷蔵室と冷凍室と請求項1から4のいずれか一項に記載の冷却サイクルとを備え、前記第一の蒸発器と前記第一のファンとを前記冷蔵室の冷却用として用い、前記第二の蒸発器と前記第二のファンとを前記冷凍室の冷却用として用いたことを特徴とする。
【0044】
以上の構成により、高温側の第一の蒸発器と低温側の第二の蒸発器とを切り替えて冷蔵室と冷凍室を冷却し、冷蔵室冷却時に比較的高い蒸発温度とすることで低圧縮比運転を行い、圧縮機の成績係数を向上させる。
【0045】
また、冷蔵と冷凍を切り替えて冷却するので一つの蒸発器で冷蔵室と冷凍室をダクトで冷却を行う従来の冷蔵庫や、冷蔵室の蒸発器と冷凍室の蒸発器を直列に接続して冷却を行う従来の冷蔵庫や、直列に接続された冷蔵室の蒸発器と冷凍室の蒸発器をファンの運転のみで交互に冷却を行う従来の冷蔵庫に比べて冷却システムを小型化でき、蒸発器や凝縮器の配管容量を削減できるので、可燃性冷媒の封入量が削減可能である。
【0046】
さらに蒸発器の小型化により無効容積の削減も可能である。
【0047】
以下、本発明の実施の形態について図1〜図6を用いて説明する。従来例と同一構成についてはその詳細な説明を省略し、同一符号を付す。
【0048】
(実施の形態1)
図1と図2は、本発明の一実施の形態による冷却サイクル及び冷蔵庫の概略図である。
【0049】
低圧容器型である圧縮機1と凝縮器2と流路制御手段である電動三方弁12と第一の減圧手段であるキャピラリ7と第一の蒸発器3と第二の減圧手段であるキャピラリ8と第二の蒸発器5とを備え、圧縮機1と凝縮器2と第一のキャピラリ7と第一の蒸発器3とで閉ループを形成するとともに、第一のキャピラリ7と第一の蒸発器3に並列となるように第二のキャピラリ8と第二の蒸発器5と逆流防止手段である逆止弁9を接続してある。
【0050】
電動三方弁12は第一のキャピラリ7と第二のキャピラリ8の入口側に配設してあり、電動三方弁12への通電動作により第一の蒸発器3と第二の蒸発器5との冷媒回路を切り替える構成となっており、第一の蒸発器3への冷媒回路を開とする第一の状態と第二の蒸発器5への冷媒回路を開とする第二の状態を有する。
【0051】
また、冷蔵室4と冷凍室6が設けられており、冷蔵室4は冷蔵保存のために通常3〜5℃で設定されているが、保鮮性向上のため若干低めの温度、例えば0〜−3℃で設定されることもあり、収納物によって、使用者が自由に上記のような温度設定を切り替えることを可能としている場合もある。また、ワインや根野菜等の保鮮のために、例えば10℃前後の若干高めの温度設定とする場合もある。
【0052】
冷凍室6は冷蔵室4に比べて低い温度設定としており、通常は冷凍保存のために−18〜−22℃で設定されている。また、保鮮性向上のためより低温の温度、例えば−25〜−30℃で設定されることもある。
【0053】
また、冷蔵室4と冷凍室6は図示しないドアを通じて食品等の収納物を出し入れするものである。
【0054】
冷蔵室4には第一の蒸発器3が設けられ、近傍には第一のファン13が配設される。また、冷凍室6には第二の蒸発器5が設けられ、近傍には第二のファン14が配設されて、空気を循環させるものであり、必要に応じて図示しない冷却風路が設けられる。
【0055】
さらに、圧縮機1と電動三方弁12と第一のファン13と第二のファン14の運転を制御する制御手段を設けてある。
【0056】
また、冷媒として例えば地球温暖化係数の低いHC冷媒(プロパン,イソブタン)の可燃性冷媒を封入している。
【0057】
以下この冷却サイクル及び冷蔵庫の動作について説明を行う。
【0058】
圧縮機1を作動することにより高温高圧の冷媒が吐出され、凝縮器2により凝縮液化する。
【0059】
液化した冷媒は、第一のキャピラリ7と第二のキャピラリ8のいずれかに流れ込むように電動三方弁12により切り替えられる。
【0060】
冷媒は第一のキャピラリ7もしくは第二のキャピラリ8で減圧された後、第一の蒸発器3もしくは第二の蒸発器5へと流入し、蒸発気化することで低温となる。第一のファン13もしくは第二のファン14により空気が循環し、比較的低温とされた各蒸発器と熱交換することで、低温の空気となり冷蔵室4,冷凍室6を低温に維持する。
【0061】
気化した冷媒は、再び、圧縮機12に吸入される。
【0062】
次にこの冷却サイクル及び冷蔵庫の制御方法について図3のタイムチャートをもとに説明する。
【0063】
T1〜T2の間に第一の蒸発器3による冷蔵室の冷却が行われ、T2〜T3の間に第二の蒸発器5による冷凍室の冷却が行われる。
【0064】
第一の蒸発器3による冷却は制御手段により圧縮機1が運転され、電動三方弁12が通電されて第一の状態となり第一の蒸発器3への回路が開となり第二の蒸発器5への回路が閉となる。さらに、冷媒回路が開となる蒸発器近傍の第一のファン13が運転される。これにより第一の蒸発器3の温度が低下し、冷蔵室の冷却が行われる。
【0065】
T2で電動三方弁12が通電され第一の状態から第二の状態となる。また、第一のファン13は停止し、第二のファン14は運転を開始する。電動三方弁12の第二の状態は第一の蒸発器3への回路を閉とし第二の蒸発器5への回路を開とするので、第二の蒸発器5の温度は低下し冷凍室が冷却されるとともに、第一の蒸発器3及び冷蔵室の温度は冷媒が流れないので上昇する。
【0066】
T3で再び電動三方弁12が通電され第一の状態に戻り、第二のファンが停止、第一のファンが運転される。
【0067】
以上の動作を繰り返すことで圧縮機1を停止させることなく、複数の蒸発器とファンによる冷却運転が行われる。ファンは各々蒸発器の回路の切り替えと併せて運転停止を繰り返す。
【0068】
冷却の切り替えは図示しないタイマーを有する制御手段により(T1−T2),(T2−T3)等の所定の時間間隔で行われる。
【0069】
時間間隔は例えば標準的な条件の冷蔵室と冷凍室の冷却負荷量の比率によってきめられる。
【0070】
以上のように、第一の蒸発器3と第二の蒸発器5を交互に切り替えて冷却を行うので、一つの蒸発器で冷却を行う冷却システムや、複数の蒸発器に平行して冷媒を流す冷却を行う冷却システムや、複数の蒸発器に平行して冷媒を流す冷却を行う冷却システムや、複数の蒸発器に直列に冷媒を流す冷却システムに比べて、冷却システムの配管容量が削減でき、冷媒量が削減可能となる。
【0071】
さらに、圧縮機1を停止させずに運転することで、蒸発器の必要な能力を低く設定可能であり、さらに蒸発器の小型化と冷媒量の削減が可能である。
【0072】
また、圧縮機1を停止させないので運転停止時のエネルギロスを防止でき高効率化が可能である。
【0073】
また、例えば区画の異なる被冷却物に対して、ダクト及び送風装置で冷却を行うのではなく、各々専用に蒸発器を配置し専用のファンで冷却を行うシステムであり、区画が分離している場合など、熱搬送時のエネルギー損失が少なく効率的である。
【0074】
また、圧縮機1が連続運転であっても第一のファン13と第二のファン14は交互に運転停止となるので耐久性確保の面で有利であり低コスト化につながる。
【0075】
また、可燃性冷媒を用いる冷却サイクルにあって、圧縮機1には低圧容器型を用いるので、圧縮機1の運転中に容器内のガス冷媒比体積が大きくなり容器内冷媒量を削減できる。
【0076】
さらに、例えばイソブタンと鉱油の組み合わせのように、相溶性のある冷凍機油を用いる場合には低温高圧になると冷媒の溶解度が増加する。圧縮機1容器内には多量の冷凍機油が存在しており、圧縮機1運転中に容器内圧力が低くなることで冷凍機油への冷媒とけ込みを軽減することができ、冷媒量の削減となる。非相溶の冷凍機油を用いるならばさらによい。
【0077】
また、設定時間毎で冷却を切り替えるので簡単な制御で済む。
【0078】
なお、電動三方弁12はソレノイドや直流モーターやパルスモーターにより駆動され、通電方式も自己保持型と通電保持型とある。自己保持型の通電方式であれば消費電力量の低減と弁での発熱による熱ロスを防止することができる。
【0079】
なお、凝縮器2は自然対流により放熱を行う方式や、ファンによる強制冷却を行う方式や、両者の組み合わせによるものがあり、ファン冷却方式では単位長さ当たりの放熱能力を増加させることができ配管容量削減によって可燃性冷媒の封入量を減少させることができる。
【0080】
また、流路制御手段12は電動三方弁としたが、二つの二方弁を第一,第二のキャピラリの入口側に設置しても同等の効果が得られる。
【0081】
また、流路制御手段12は各々減圧手段の入口側としたが、図2に示すように、第一の減圧手段7と第二の減圧手段8とを一つにまとめて減圧手段15とし、減圧手段15の出口側に流路制御手段12を設けるならば、冷媒減圧後の回路切り替えとなるので流路制御手段12の作動圧力差が小さく、小トルクでよいので小型化が可能であり、消費電力量の低減にもなる。
【0082】
なお、減圧手段はキャピラリで行ったが電子膨張弁を用いれば、減圧量の調整が可能であるとともに、回路閉動作を兼ねることで三方弁を用いずに実現できる。
【0083】
また、冷蔵室4と冷凍室6の温度検知手段を設け、各々の蒸発器による冷却開始時の検知温度によってその蒸発器での冷却時間を決定することで、簡単な制御で冷却量の一定化が可能である。
【0084】
なお、第一の蒸発器3で冷却を行う場合の蒸発温度と第二の蒸発器5で冷却を行う場合の蒸発温度を異ならせることで、冷蔵室4と冷凍室6のように設定温度が異なる場合や、特に冷却スピードが要求され蒸発温度を下げたい場合など、各々の蒸発器で蒸発温度の適正化を図ることができる。設定温度が異なる場合には冷蔵室4と冷凍室6の各々の温度に見合って蒸発温度を変えて、高効率な冷却サイクル運転を行い、冷却スピードが要求される場合には冷却を行う蒸発温度を下げることで可能となる。
【0085】
また、第一の蒸発器3が高温側で第二の蒸発器5が低温側であり、第二の蒸発器5出口に冷媒逆流防止手段である逆止弁9を設けたので、各々の蒸発器に温度差が生じて第二の蒸発器5に冷媒が流入することがなく、第一の蒸発器3での冷却運転中に冷媒が第二の蒸発器5に寝込むことがないので冷媒量を低く押さえることができる。
【0086】
さらに、電動三方弁12を圧縮機1停止中は第二の蒸発器5への冷媒回路を閉止させるならば、圧縮機1停止中に凝縮器2にあった高温のガス冷媒が第二の蒸発器5へ流入することがなく、熱負荷の流入がない。
【0087】
また、停止中の冷却システムの圧力が低くバランスするので圧縮機1起動時の圧力差が小さく、圧縮機モーターの低トルク化による低コスト,小型化が可能である。
【0088】
また、次回起動時に第一の蒸発器3から運転する場合は、冷媒が使用しない第二の蒸発器5内にはほとんどなく、使用する第一の蒸発器3内に存在しているので、すぐに使用する第一の蒸発器3の温度が低下し、冷却ロスが少ない。
【0089】
また、冷蔵室4冷却用の第一のファン13は冷蔵室4の冷却が終了し、冷蔵室4から冷凍室6へと冷却モードの切り替えにより停止させるとしたが、冷却モード切り替え後、所定時間運転を行うことにより第一の蒸発器に着霜した水分を庫内に還元することで、冷蔵室4の高湿度化を実現することができる。
【0090】
また、冷蔵室4冷却から冷凍室6冷却に切り替え後、しばらく第一の蒸発器3は冷蔵室温度と比較して低温の状態にあるので、第一のファン13を運転することで冷蔵室4の温度維持を行い、均温化ができる。さらに自然対流により第一の蒸発器3下方が局所的に冷却過剰となることを防止できる。
【0091】
(実施の形態2)
図4は本発明の他の実施の形態による冷却サイクル及び冷蔵庫の概略図であり、図5は同タイムチャート、図6は同フローチャートである。
【0092】
圧縮機として能力可変型圧縮機16を備え、制御手段により圧縮機冷却能力を変化させることができる。能力可変手段はインバータであり、圧縮機運転周波数を変化させることにより、冷却能力を制御する。
【0093】
また、冷蔵室4には食品等の収納物の温度状態を調査するサーミスタ等である第一の温度検知手段と冷凍室6には第二の温度検知手段を設けてある。温度検知手段は直接、食品等の収納物の温度を測定するものでもよいが、通常、冷却空気の温度を検知して代替する。また、蒸発器の温度により代替してもかまわない。
【0094】
以上の構成により、負荷の変動が生じる場合であっても圧縮機16の冷却能力を変化させるので、冷却の過不足を防止できる。
【0095】
以下、図5のタイムチャートと図6のフローチャートを参考に冷却サイクル及び冷蔵庫の運転制御について説明する。
【0096】
通常冷却動作が行われており、圧縮機16は運転動作を続けている(ステップ1)。
【0097】
T1で第一の温度検知手段が所定温度(tlu)より高い温度を検知すると(ステップ2)、制御手段により電動三方弁12は通電動作されて第一の蒸発器3への回路が開となる第一の状態となる(ステップ3)。
【0098】
併せて第一のファン13が運転されて、第一の蒸発器3による冷却が行われる(ステップ4)。
【0099】
T2で第一の温度検知手段が(tlu)より高い設定の所定温度(tluu)より低く(ステップ5)かつ(tlu)より低い設定の所定温度(tll)より低い温度を検知すると(ステップ7)、制御手段により電動三方弁12は通電動作されて第一の蒸発器5への回路が開となる第二の状態となる(ステップ8)。
【0100】
さらに第二のファン14が運転されて、第一の蒸発器5による冷却が行われる(ステップ9)。
【0101】
このとき第二の温度検知手段が所定温度(t2l)より高く(ステップ10)かつ所定温度(t2u)より高い温度を検知すると(ステップ12)、冷却能力不足とみなして制御手段により圧縮機16はインバータを高周波数運転として高能力運転を行う(ステップ13)。
【0102】
T3で第二の温度検知手段が所定温度(t2l)より低い温度を検知すると(ステップ10)、冷却能力過剰とみなして制御手段により圧縮機16はインバータを低周波数運転として低能力運転を行う(ステップ11)。
【0103】
この間第一の蒸発器3による冷却は行われないので、第一の温度検知手段の検知温度は上昇する。T4で再び第一の温度検知手段が(tlu)より高い温度を検知すると(ステップ2)、制御手段により電動三方弁12は第一の状態となり(ステップ3)、第一のファン13が運転されて、第一の蒸発器3による冷却が行われる(ステップ4)。
【0104】
T5で第一の蒸発器3による冷却中に第一の温度検知手段が(tluu)より高い温度を検知すると(ステップ5)、冷却能力不足とみなして制御手段により圧縮機16はインバータを高周波数運転として高能力運転を行う(ステップ6)。
【0105】
T6で第一の温度検知手段が(tll)より低い温度を検知すると(ステップ7)、制御手段により電動三方弁12は第二の状態となり(ステップ8)、さらに第二のファン14が運転されて、第一の蒸発器5による冷却が行われる(ステップ9)。このとき第二の温度検知手段は(t2u)より高い温度や(t2u)より低い温度を検知していないので、圧縮機は能力可変を行わない(ステップ10,12)。
【0106】
以上のように二つの蒸発器を交互に切り替えて冷却を行い、負荷に応じて圧縮機能力で冷却能力の調節を行うので、冷却不足や冷却過剰を防止しつつ圧縮機16の連続運転による高効率化が図れる。
【0107】
また、第一の蒸発器3による冷却が第二の蒸発器5による冷却に対して優先されるので、温度調節が重要な被冷却物を第一の蒸発器3に割り当てるとよい。なお、圧縮機16の能力可変はインバーター周波数f1,f2の2段階で行ったが、さらに複数の能力可変段階で行うことでさらにきめ細やかな能力制御が可能である。この場合の能力可変制御は温度検知手段の設定温度を複数段階設けて各々の温度段階に応じて運転周波数を割り当てる等して行う。
【0108】
またなお、圧縮機能力可変はインバーターによる回転数制御としたが、ピストンストローク制御によるものであっても良いし、複数気筒を有する圧縮機の動作気筒数の制御によっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の一実施の形態による冷却サイクル及び冷蔵庫の概略図
【図2】同実施の形態による冷却サイクル及び冷蔵庫の概略図
【図3】同実施の形態による冷却サイクル及び冷蔵庫の運転タイムチャート
【図4】他の実施の形態による冷却サイクル及び冷蔵庫の概略図
【図5】同実施の形態による冷却サイクル及び冷蔵庫の運転タイムチャート
【図6】同実施の形態による冷却サイクル及び冷蔵庫の運転フローチャート
【図7】従来の冷凍冷蔵庫の断面概略図
【符号の説明】
【0110】
1 低圧容器型の圧縮機
2 凝縮器
3 第一の蒸発器
4 冷蔵室
5 第二の蒸発器
6 冷凍室
7 第一の減圧手段
8 第二の減圧手段
9 逆流防止手段
12 流路制御手段
13 第一のファン
14 第二のファン
15 減圧手段
16 低圧容器型の能力可変型圧縮機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低圧容器型である圧縮機と凝縮器と流路制御手段と第一の減圧手段と第一の蒸発器と第二の減圧手段と第二の蒸発器と前記第一の蒸発器近傍に第一のファンと前記第二の蒸発器近傍に第二のファンを備え、圧縮機と凝縮器と第一の減圧手段と第一の蒸発器とで閉ループを形成するとともに、第一の減圧手段と第一の蒸発器に並列となるように第二の減圧手段と第二の蒸発器とを接続し、第一の減圧手段と第二の減圧手段の入口側に配設した流路制御手段により第一の蒸発器と第二の蒸発器とを切り替えて冷媒回路を構成し、前記冷媒回路に封入される冷媒を可燃性冷媒とするとともに、前記第一の蒸発器を高温側の蒸発器、前記第二の蒸発器を低温側の蒸発器として、前記圧縮機の停止中は前記流路制御手段により前記第二の蒸発器への冷媒回路を閉止する冷却サイクル。
【請求項2】
前記第二の蒸発器の出口に冷媒逆流防止手段を設けた請求項1に記載の冷却サイクル。
【請求項3】
前記圧縮機の次回起動時には、前記流路制御手段を前記第一の蒸発器への冷媒回路を開放した状態で運転する請求項1または2に記載の冷却サイクル。
【請求項4】
前記圧縮機を能力可変型の圧縮機とした請求項1から3のいずれか一項に記載の冷却サイクル。
【請求項5】
冷蔵室と冷凍室と請求項1から4のいずれか一項に記載の冷却サイクルとを備え、前記第一の蒸発器と前記第一のファンとを前記冷蔵室の冷却用として用い、前記第二の蒸発器と前記第二のファンとを前記冷凍室の冷却用として用いた冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−125843(P2006−125843A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−26834(P2006−26834)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【分割の表示】特願平11−30944の分割
【原出願日】平成11年2月9日(1999.2.9)
【出願人】(000004488)松下冷機株式会社 (25)
【Fターム(参考)】