説明

分離式ラチェットバックル

【課題】引っ張り部の取りはずし可能な分離式ラチェットバックルを提供する。
【解決手段】ラッチ部と引っ張り部から構成され、ラッチ部と引っ張り部が、連接棒により連接され、引っ張り部が操作される時、ラッチ部のラッチに嵌合して回旋し、連接棒が、一方向に回旋し、連接棒上に巻き込まれる帯が、締め付けられるラチェットバックルであって、引っ張り部は、押圧機能を有するものとし、押圧することにより、引っ張り部を操作しても、ラッチ部が回旋せず、引っ張り部は、折り畳まれて収納されることができ、ラッチ部と連接棒から分離できるように構成された分離式ラチェットバックル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引っ張り部とラッチ部からなる分離式ラチェットバックルに関するものであり、さらに詳しくは、上記引っ張り部は、帯を締め固めた後でも、取り外すことができ、荷物等の盗難の防止にも有用であり、また単一の引っ張り部を、複数組のラッチ部に共通して使用することが可能な分離式ラチェットバックルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
貨物トラックで荷物を運搬する場合、荷物を荷積みした後、帯で荷物を締めれば、走行中、荷物が落下することを防止できるが、荷物を締め付ける帯が、通常、幅広くて堅いため、手で結ぶことが難しく、また、安定的に荷物を締め付けることができないので、ラチェットバックルを用いて、帯を緊密に締め付け固定することが必要である。
【0003】
既存のラチェットバックルは、殆どのものが、ラッチ部と引っ張り部とで構成され、ラッチ部と引っ張り部の両者が、連接棒に枢着され、その間に、一方向のみに回転可能なラッチが設けられてある。ラチェットバックルを使用する時、連接棒で帯を結合し、引っ張り部を、ラッチ部上で、繰り返して操作することにより、連接棒とラッチとが回旋され、連接棒に帯が巻き込まれて締め固められ、同時に、ラッチの回旋が、一方向に固定されるため、帯が緩められることがなく、荷物を安定的に締めることができる。
【0004】
しかしながら、ラッチ部と引っ張り部が、ともに、連接棒に枢着されるため、上記の三者は、分離不可の状態であり、荷物を緊密に締め付けた後、上記引っ張り部は、分離することが出来ず、荷物上で、ラチェット部を連結した状態にあるので、第三者により、ラッチ部に結合された引っ張り部を操作できれば、帯を緩めて荷物が紛失、盗難に合うおそれがある。
【0005】
また、一回の貨物トラックによる運送には、複数のラチェットバックルを必要とし、各ラチェットバックルに、それぞれ引っ張り部が設けられると、コストが高くなるという問題がある。
【0006】
かかる状況下において、貨物トラックおよび船舶等荷役設備の荷物の安定保持に使用されるラチェットバックルについては、種々の形態、機能のものが提案されているが、いずれも引っ張り部とラッチ部とが一体のものであり、これらが分離可能な構造のものについては、従来、提案はなく、上記問題点の解決のためには新たなラチェットバックルの開発が切望されてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の主な課題は、荷物等を運送する場合に所定の場所に保持するために帯を締めた後に、引っ張り部を取り外すことができる分離式ラチェットバックルを提供する点にある。
【0008】
また、本発明の他の課題は、一つの引っ張り部を、複数組のラッチ部に共通して使用することができ、コストの節約可能な分離式ラチェットバックルを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者は、上記課題を解消するため、慎重に研究し、また、学理を活用して、検討した結果、帯を締め付けた後、引っ張り部を取り外すことができ、ラッチ部のみでは帯を緩めることができず、所定の位置で荷物等の保持が十分であり、かつ、第三者により、引っ張り部が操作されて荷物の紛失、盗難に合うこともなく、さらには、一つの引っ張り部を複数のラッチ部に使用できることを見い出し、下記の通り、分離式ラチェットバックルにより有効に上記欠点を解消でき、設計が合理的であることに着目し、かかる知見に基いて本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして、本発明によれば、
引っ張り部が、帯を締めた後、取り外すことができ、ラッチ部だけでは、帯を緩めることができず、荷物の安定保持に有用であり、盗難を有効に防止でき、また、引っ張り部を不用意に取り扱うことにより、不意に帯が緩められることを防止でき、荷物運送中、より安全な分離式ラチェットバックルが提供される。
【0011】
また、本発明によれば、一つの引っ張り部を、複数組のラッチ部に共通して使用することができ、コストの節約可能な分離式ラチェットバックルが提供される。
【0012】
すなわち、請求項1の発明によれば、
ラッチ部と引っ張り部からなる分離式ラチェットバックルであって、
ラッチ部と引っ張り部が、連接棒により連接され、ラッチ部は、両側において、連接棒と同期に回旋できるラッチが連接棒に螺着され、その中央において、ばねによりラッチに付勢されるチェックシートが設けられ、チェックシートが、ラッチ部の両側に設けられた軌道溝に位置し、引っ張り部は、主体とチェックシート、ねじりばね及び側カーバを有し、主体の一端に、連接棒が枢着される枢着穴が形成され、中段に、軌道溝が形成され、上記チェックシートが、軌道溝に枢着されて、軌道溝に沿って移動でき、上記チェックシートの両側から軌道溝の外まで伸びる羽部があり、その上に、更に、チェックシートと一体に連結される作動部があり、ねじりばねが、チェックシートと軌道溝の間に固定され、上記チェックシートが結合された後、ねじりばねにより付勢されて、ラッチに噛み合い、ラッチが、一方向に回旋し、枢着穴の一側に、連接棒周縁より大きい直径を有する欠け口が形成され、引っ張り部が、上記欠け口を利用して、連接棒に対して離間及び結合をすることができ、側カーバが、主体の外側面に嵌合され、連接棒から離間した一端が、上記主体上に結合固定され、側カーバが、金属シートであるため、結合されても、そのもう一端を外へ開くことができ、また、側カーバにおいて、主体の枢着穴と軌道溝に対応する位置に、それぞれ、係合穴と羽部が退避できる退避溝が設けられてあり、係合穴が、主体の枢着穴の枢着することに補助でき、その欠け口を隠れて封止し、退避溝が、チェックシートが移動する時、その辺壁で、羽部に当接して、側カーバが外へ開かれるように構成された
ことを特徴とする分離式ラチェットバックル
が提供される。
【0013】
請求項2の発明によれば、側カーバが、リベットにより、主体上に結合固定されることを特徴とする請求項1に記載の分離式ラチェットバックルが提供される。
【0014】
請求項3の発明によれば、チェックシートの羽部が、三角形状であることを特徴とする請求項1に記載の分離式ラチェットバックルが提供される。
【0015】
請求項4の発明によれば、主体とチェックシートの両側に、ともに、ねじりばねが設けられることを特徴とする請求項1に記載の分離式ラチェットバックルが提供される。
【0016】
請求項5の発明によれば、ねじりばねが、主体とチェックシートの対向する一側に設けられることを特徴とする請求項1に記載の分離式ラチェットバックルが提供される。
【0017】
請求項6の発明によれば、側カーバの係合穴の外周縁に、リング状なリブが設けられることを特徴とする請求項1に記載の分離式ラチェットバックルが提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、荷締め後に引っ張り部が分離可能の構造のラチェットバックルを提供するものであり、後述するように荷物等を所定の位置に安定に保持できることに加えて、一つの引っ張り部で複数のラッチ部に使用することができ、経済性にも有利である。
【0019】
また、引っ張り部の不注意な操作による荷物等の不意の落下防止または盗難の防止にも有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の特徴や技術内容について、詳しく説明する。もっとも、それらの図面等は、参考や説明のためのものであり、本発明は、それらによって限定されるものではない。
【0021】
図1及び図2に示すように、本発明に係る分離式ラチェットバックルは、ラッチ部10と引っ張り部20とから構成され、ラッチ部10と引っ張り部20が、連接棒30により連接されたものである。引っ張り部20が操作されると、ラッチ部10に係止するラッチ11が回旋して、連接棒30が、一方向のみに回旋し、連接棒30に巻かれた帯も、対応して締め付けられる。
【0022】
また、引っ張り部20には、押圧機能があり、押圧されると、引っ張り部20は操作できるが、ラッチ11が回旋しなくなり、これにより、引っ張り部20は、折り畳まれて収納されることができ、また、ラッチ部10と連接棒30から分離することができる。
【0023】
ラッチ部10は、連接棒30を利用して、その両側に、連接棒30と同期に回旋できるラッチ11が螺着され、中央部位に、ばね12により付勢されてラッチ11に係合されるチェックシート13が設けられてあり、また、上記チェックシート13は、ラッチ部10の両側に設けた軌道溝14に位置する。
【0024】
引っ張り部20は、主体21とチェックシート22、二つのねじりばね23及び二つの側カーバ24を備え、主体21の一端に、連接棒30が枢着されるための枢着穴211が設けられる。枢着穴211の一側に、直径が連接棒30の周縁より大きい欠け口212が形成され、引っ張り部20は、上記欠け口212を利用して、連接棒30に対して離間及び結合をすることができる。
【0025】
主体21は、中段に、軌道溝213が設けられ、チェックシート22は、軌道溝213に枢着されて、軌道溝213に沿って移動できる。上記チェックシート22は、両側に設けた羽部221が、軌道溝213の外まで伸び、その上に、更に、チェックシート22と一体に連結される作動部222が備えてある。ねじりばね23が、チェックシート22と軌道溝213の間に固定され、チェックシート22が結合された後、ねじりばね23により付勢されて、ラッチ11に噛み合い、ラッチ11が、一方向のみに回旋する。
【0026】
側カーバ24は、主体21の外側面上に嵌合され、連接棒30から離間する一端が、リベットにより結合されることにより、主体21上に固定される。また、側カーバ24が、金属シートであるため、結合されても、そのもう一端を外へ開くことができる。
【0027】
また、側カーバ24において、主体21の枢着穴211と軌道溝213に対応する位置に、それぞれ、係合穴241と羽部221が退避できる退避溝242がある。上記係合穴241は、主体21の枢着穴211に枢着することにより補助でき、また、その欠け口212を隠れて封止し、退避溝242は、チェックシート22が移動する時、その辺壁で、羽部221に当接(抵当)して、側カーバ24が、外へ開かれることができるようになってあり、また、係合穴241の外周縁に、囲むように側カーバ24の枢着強度を強化できるリブ243が設けられる。
【0028】
本発明によれば、連接棒30で帯を結合し、引っ張り部20を、ラッチ部10上で、繰り返して操作することにより、連接棒30とラッチ11とが、回旋されることにより、帯が巻き込まれて締め付けられ、同時に、ラッチ11が、一方向に固定されるため、帯の締め付けが緩められることがない。帯が完全に締め付け固定された後は、運送中、荷物は、振動により落下するようなことがない。また、荷物が締め付けられてから、作動部222を押し下げることにより、チェックシート22が、軌道溝213のもう一端に連動される。これにより、羽部221が、側カーバ24の退避溝242の辺壁に当接(抵当)し、側カーバ24の係合穴241を有する一端が、外へ開かれて、連接棒30に枢着しなくなる。主体21の欠け口212も、それにより、側カーバ24によって隠されて封止されず、上記欠け口212を利用して、連接棒30から脱離する。そのため、引っ張り部20は、ラッチ部10と連接棒30から取り外され(図3及び4に示すように)、例えば、運転手が、一時にトラックの周りから離れても、ラッチ部10だけで、帯を緩めることが出来ないので(図5のように)、締め付けられた荷物も、より安全に保持できる。同時に、上記状態にあるラッチ部10に、引っ張り部20が取りはずされているため、無関係な人が、好奇心により、触ったり、遊んだりすることにより、荷物が散乱して落下することを防止できる効果が得られる。
【0029】
また、貨物トラックが目的地に到着して、ラチェットバックルで締め付けた帯を緩めて荷物をおろす場合、作動部222を押し下げることにより、側カーバ24の係合穴241を有する一端が、再び、外へ開かれ、主体21が、欠け口212を利用して、連接棒30に枢着され、作動部222が開放されると、ねじりばね23による弾性の作用を利用して、チェックシート22が連動されて復帰し、側カーバ24が、外へ押されなくなり、係合穴241により連接棒30に係合される。
【0030】
それにより、上記引っ張り部20が、ラッチ部10上に組み立てられ、それにより、帯を緩めることができ、また、上記の方式によっても、一つの引っ張り部20を利用して、複数組のラッチ部10を操作することができ、そのため、ラチェットバックルの購入コストを低減することができる。
【0031】
また、チェックシート22の羽部221が、三角形状に形成されてあるので、その斜辺の案内により、側カーバ24に抵当することにより省力化が図られるように構成してある。
【0032】
上述の具体的な実施例によれば、次の利点が得られる。
1.引っ張り部20は、帯を締め付けた後、取り外すことができるため、ラッチ部10だけで帯を緩めることができない。従って、荷物の紛失及び盗難のおそれが低減され、また、引っ張り部20を不用意に操作することにより、不意に帯が緩められることを防止でき、荷物運送中、より安全になる。
2.一つの引っ張り部20を、複数組のラッチ部10に共通して使用でき、ラチェットバックルを購入するコストを節約できる。
【0033】
本発明に係る分離式ラチェットバックルは、上記の通り、貨物トラック等の荷役手段の荷物の保持固定に有用であるが、これに限定されるものではなく、物体の所定の場所での固定保持が必要な設備には制限なく適用することができる。
【0034】
以上の説明から、本発明は、より進歩的かつより実用的であることは明らかであり、法に従い、本発明について保護を求めるものである。
【0035】
以上は、本発明のより良い実施例であり、本発明は、それによって限定されるものでないことは明らかであり、本発明に係わる特許請求の範囲や明細書の内容に基づいて行った等価の変更や修正は、全てが、本発明の特許請求の範囲内に含まれることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る分離式ラチェットバックルを例示する立体斜視図である。
【図2】本発明に係る分離式ラチェットバックルを例示する分解斜視図である。
【図3】本発明に係る分離式ラチェットバックルの押圧動作を説明するための平面図である。
【図4】本発明に係る分離式ラチェットバックルの引っ張り部とラッチ部が分離される状態を示す概念図である。
【図5】本発明に係る分離式ラチェットバックルで荷物を締め付ける使用状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0037】
10 ラッチ部
11 ラッチ
12 ばね
13 チェックシート
14 軌道溝
20 引っ張り部
21 主体
211 枢着穴
212 欠け口
213 軌道溝
22 チェックシート
221 羽部
222 作動部
23 ねじりばね
24 側カーバ
241 係合穴
242 退避溝
243 リブ
30 連接棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラッチ部と引っ張り部からなる分離式ラチェットバックルであって、
ラッチ部と引っ張り部が、連接棒により連接され、ラッチ部は、両側において、連接棒と同期に回旋できるラッチが連接棒に螺着され、その中央において、ばねによりラッチに付勢されるチェックシートが設けられ、チェックシートが、ラッチ部の両側に設けられた軌道溝に位置し、引っ張り部は、主体とチェックシート、ねじりばね及び側カーバを有し、主体の一端に、連接棒が枢着される枢着穴が形成され、中段に、軌道溝が形成され、上記チェックシートが、軌道溝に枢着されて、軌道溝に沿って移動でき、上記チェックシートの両側から軌道溝の外まで伸びる羽部があり、その上に、更に、チェックシートと一体に連結される作動部があり、ねじりばねが、チェックシートと軌道溝の間に固定され、上記チェックシートが結合された後、ねじりばねにより付勢されて、ラッチに噛み合い、ラッチが、一方向に回旋し、枢着穴の一側に、連接棒周縁より大きい直径を有する欠け口が形成され、引っ張り部が、上記欠け口を利用して、連接棒に対して離間及び結合をすることができ、側カーバが、主体の外側面に嵌合され、連接棒から離間した一端が、上記主体上に結合固定され、側カーバが、金属シートであるため、結合されても、そのもう一端を外へ開くことができ、また、側カーバにおいて、主体の枢着穴と軌道溝に対応する位置に、それぞれ、係合穴と羽部が退避できる退避溝が設けられてあり、係合穴が、主体の枢着穴の枢着することに補助でき、その欠け口を隠れて封止し、退避溝が、チェックシートが移動する時、その辺壁で、羽部に当接して、側カーバが外へ開かれるように構成された、
ことを特徴とする分離式ラチェットバックル。
【請求項2】
上記側カーバが、リベットにより、上記主体上に結合固定されることを特徴とする請求項1に記載の分離式ラチェットバックル。
【請求項3】
上記チェックシートの羽部が、三角形状であることを特徴とする請求項1に記載の分離式ラチェットバックル。
【請求項4】
上記主体と上記チェックシートの両側に、ともに、ねじりばねが設けられることを特徴とする請求項1に記載の分離式ラチェットバックル。
【請求項5】
上記ねじりばねが、上記主体と上記チェックシートの対向する一側に設けられることを特徴とする請求項1に記載の分離式ラチェットバックル。
【請求項6】
上記側カーバの係合穴の外周縁に、リング状のリブが設けられることを特徴とする請求項1に記載の分離式ラチェットバックル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−36349(P2011−36349A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185296(P2009−185296)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(508242229)
【Fターム(参考)】