説明

切削装置

【課題】ダイシングテープに貼着固定される被加工物の向きや位置がターゲットパターン登録時とずれていた場合にもターゲットパターンをいち早く検出することを可能とする切削装置を提供することを目的とする。
【解決手段】チャックテーブル19は、鉛直方向を回転軸として回転する回転角度がコントローラにより制御され、カセット載置部9と仮置きテーブル12との間には撮像ユニット30(撮像手段)が配設され、撮像ユニット30は被加工物上面を撮像して得られた画像情報から仮置きテーブル12上での被加工物の分割予定ラインの角度を割り出し、撮像ユニット30によって割り出された分割予定ラインの角度がチャックテーブル19の加工送り方向と平行又は直交方向になるよう、チャックテーブル19が被加工物ユニットを保持後、所定の角度回転される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハやCSP基板等の被加工物を切削加工する切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウェーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等の回路を形成する。そして、半導体ウェーハを分割予定ラインに沿って切削することにより回路が形成された領域を分割して個々の半導体デバイスが製造される。
【0003】
さらに、分割された個々の半導体デバイスは、電気回路が形成された板状の樹脂やセラミックスからなる基板等にワイヤーボンド等で電気的に接続・接着された後に、周囲が樹脂で封止される。
【0004】
その後、樹脂で封止された状態の半導体デバイスについて、切削加工を行うことで個々のチップに分割されたものがCSP(Chip Size/Scale Package)やBGA(Ball Grid Array)等と呼ばれる電子部品のパッケージとなる。
【0005】
切削加工の対象となる半導体ウェーハ、CSP基板、BGA基板等の被加工物は、環状フレームに固定されたダイシングテープ(粘着テープ)に貼着固定された状態で搬送がなされ、切削加工等が実施される。
【0006】
以上に説明した切削加工では、ダイシングソーなどと呼ばれる切削装置が使用される。切削装置は、半導体ウェーハの切削加工の際にはデバイス上の特異なパターンがターゲットパターンとして認識される。また、CSP基板やBGA基板の切削加工の際には各ストリートに設けられた特異なパターンがターゲットパターンとして認識される。そして、ターゲットパターンから分割予定ラインが割り出され、自動的に個々のチップへ分割するための切削加工が行われる(特許文献1、2参照)。
【0007】
また、切削加工の前段階においては、撮像装置にて撮像されるターゲットパターンを自動認識するためのオートアライメント動作におけるターゲットサーチを実施するとともに、分割予定ラインの方向を切削ブレード(回転ブレード)の切削方向(加工送り方向)に合わせるアライメント動作が実施される。なお、ターゲットサーチを実施するために、予めターゲットパターンを登録させるターゲットパターン登録作業(ティーチング作業)が行われ、ターゲットサーチにおいては、ターゲットパターン登録作業にて記憶したターゲットパターンと、撮像装置にて都度撮像されるターゲットパターンとのパターンマッチングが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2617870号公報
【特許文献2】特許第3666068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように被加工物はダイシングテープに貼着固定されることで環状フレームに支持されることになるが、被加工物と環状フレームの向きが一定ない場合には、ターゲットサーチの際に撮像手段にて撮像されるターゲットパターンを認識できない、あるいは、認識し難い状況が生じる。
【0010】
具体的には、例えば、ターゲットパターンの位置がターゲットパターン登録作業(ティーチング作業)にて記憶したターゲットパターンの位置と大きくずれるために、アライメント動作に時間がかかることや、規定時間内にターゲットパターンが認識できずにアライメントエラーとしてオペレータが呼び出され、マニュアル操作でターゲットパターンを認識させる手間が架かってしまうということになる。
【0011】
そこで、本発明は、ダイシングテープに貼着固定される被加工物の向きや位置がターゲットパターン登録時とずれていた場合にもターゲットパターンをいち早く検出することを可能とする切削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、分割予定ラインによって区画された領域にデバイスが形成された被加工物が環状フレームの開口に粘着テープを介して固定された被加工物ユニットを保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持された被加工物を分割予定ラインに沿って切削加工する加工手段と、チャックテーブルを加工送り方向に移動させる加工送り手段と、被加工物ユニットを収容するカセットを載置するカセット載置部と、カセット載置部に載置されたカセットから被加工物ユニットを搬出する搬出手段と、搬出手段によって搬出された被加工物ユニットを仮置きする仮置きテーブルと、仮置きテーブルの被加工物ユニットをチャックテーブルに搬送する搬送手段と、を備えた切削装置であって、チャックテーブルは、鉛直方向を回転軸として回転する回転角度がコントローラにより制御され、カセット載置部と仮置きテーブルとの間には撮像手段が配設され、撮像手段は被加工物上面を撮像して得られた画像情報から仮置きテーブル上での被加工物の分割予定ラインの角度を割り出し、撮像出手段によって割り出された分割予定ラインの角度がチャックテーブルの加工送り方向と平行又は直交方向になるよう、チャックテーブルは被加工物ユニットを保持後、所定の角度回転されることを特徴とする切削装置が提供される。
【0013】
好ましくは、撮像手段は、撮像して得られた被加工物上面の画像情報から予め登録されたターゲットパターンと同一のターゲットパターンを認識し、画像情報において連続的に並んだターゲットパターンの列を仮想直線とし、仮想直線の角度を分割予定ラインの角度として検出する。
【0014】
好ましくは、撮像手段は、カセットから仮置きテーブルへ搬出中の被加工物の上面をライン状に撮像し、得られた複数のライン状の画像情報を合成して該被加工物の分割予定ラインを検出する。
【0015】
好ましくは、撮像手段は、撮像して得られた被加工物上面の画像情報から予め登録されたターゲットパターンと同一のターゲットパターンを認識し、連続的に並んだターゲットパターンの位置情報から、チャックテーブル保持後の被加工物のターゲットパターンの位置を割り出す。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被加工物が固定されたフレームを複数収容したカセットから、フレームを取り出す際に被加工物上面の画像を撮像することで、対象となる被加工物のターゲットパターンを認識し、分割予定ラインの角度やターゲットパターンの位置を割り出すことが可能となる。
【0017】
また、仮置きテーブルからチャックテーブルに搬送されてチャックテーブルに吸引保持された被加工物においては、既に割り出された分割予定ラインの角度がチャックテーブルの移動方向(加工送り方向)と平行または直交するように、チャックテーブルを回転させる角度補正がなされるため、被加工物の環状フレームに対する角度のばらつきによるターゲットパターンの検出不具合を改善することができるという効果を奏する。
【0018】
さらには、ターゲットパターンの並びに加え、位置も事前に割り出しているため、事前に登録されたアライメントで認識するターゲットパターンの位置を修正し、被加工物の向きや位置がターゲットパターン登録時とずれていた場合にもターゲットパターンをいち早く検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】切削装置の斜視図である。
【図2】被加工物が規定の位置に配置された被加工物ユニットの平面図である。
【図3】被加工物が規定の位置に配置されない被加工物ユニットの平面図である。
【図4】撮像ユニットによる被加工物の上面の撮影について示す側面図である。
【図5】撮像ユニットによる被加工物の上面の撮影を段階的に示す平面図である。
【図6】第1及び第2のプリアライメントについて説明する図である。
【図7】第3のプリアライメントについて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態としての切削装置2の外観斜視図を示している。
【0021】
切削装置2の前面側には、オペレータが加工条件等の装置に対する指示を入力するための操作パネル4が設けられている。装置上部には、オペレータに対する案内画面や後述する撮像ユニットによって撮像された画像が表示されるCRT等の表示ユニット6が設けられている。
【0022】
図2は、被加工物となる基板Kについて示すものであり、基板Kは粘着テープT(ダイシングテープ)に貼着され、粘着テープTの外周縁部が環状フレームFに貼着されて被加工物ユニット15が形成される。被加工物ユニット15では、基板Kは粘着テープTを介して環状フレームFに支持された状態となり、図1に示したカセット8中に被加工物ユニット15が複数枚(例えば25枚)収容される。カセット8は上下動可能なカセット載置部9(カセットエレベータ)上に載置される。
【0023】
図2に示されるように、基板Kの表面には、縦方向、横方向において所定の間隔を空けて複数のターゲットパターンP11,P12が配置されており、縦方向に並ぶ各ターゲットパターンPを結ぶラインが第1の分割予定ラインS1(第1の方向の端部のストリート)とされ、横方向に並ぶ各ターゲットパターンPを結ぶラインが第2の分割予定ラインS2(第2の方向の端部のストリート)とされる。そして、第1の分割予定ラインS1と第2の分割予定ラインS2とが直交して形成されており、第1の分割予定ラインS1と第2の分割予定ラインS2によって区画された各領域に半導体パッケージDが形成されている。なお、図2においては、代表的な分割予定ラインS1と第2の分割予定ラインS2が示されている。
【0024】
図1において、カセット8の後方には、カセット8から切削前の基板Kを搬出するとともに、切削後の基板Kをカセット8に搬入する搬出入ユニット10が配設されている。
【0025】
搬出入ユニット10はクランプ11を有しており、クランプ11が被加工物ユニット15の環状フレームFを把持して、カセット8に対して被加工物ユニット15を搬出及び搬入する。搬出入ユニット10はY軸方向に直線移動される。
【0026】
カセット8と搬出入ユニット10との間には、搬出入対象の被加工物ユニット15が一時的に載置される領域である仮置きテーブル12が設けられており、仮置きテーブル12には、被加工物ユニット15の環状フレームFをセンタリングする一対の位置決め部材14が配設されている。
【0027】
仮置きテーブル12の近傍には、被加工物ユニット15を吸着して搬送する旋回アームを有する搬送ユニット16が配設されており、仮置きテーブル12に搬出された被加工物ユニット15は、搬送ユニット16により吸着されてチャックテーブル19上に搬送され、このチャックテーブル19に吸引保持されるとともに、複数のフレームクランプ21により環状フレームFがクランプされて固定される。
【0028】
チャックテーブル19は、回転可能且つX軸方向に往復動可能に構成されており、チャックテーブル19のX軸方向の移動経路の上方には、基板Kの切削すべきストリートを検出するアライメントユニット20が配設されている。
【0029】
アライメントユニット20は、基板Kの表面を撮像する撮像素子及び顕微鏡を有する撮像ユニット22を備えており、撮像により取得した画像に基づき、コントローラによるパターンマッチング等の画像処理によって切削すべきストリートを検出することができる。撮像ユニット22によって取得された画像は、表示ユニット6に表示される。
【0030】
また、アライメントユニット20を用いることで、マニュアル操作による「オートアライメントのためのティーチング作業」が予め実施される。即ち、以下の各情報がティーチング作業によって登録される。なお、このティーチング作業においては、環状フレームFに対し基板Kが規定配置Hに配置された被加工物ユニット15(図2参照)が使用される。
・第1の方向に離れあう少なくとも二つのターゲットパターンPの画像とXY座標
・第2の方向に離れあう少なくとも二つのターゲットパターンPの画像とXY座標
・ターゲットパターンPから第1の分割予定ラインS1までの距離
・ターゲットパターンPから第2の分割予定ラインS2までの距離
・隣り合う第1の分割予定ラインS1同士の距離(インデックス距離)
・隣り合う第2の分割予定ラインS2同士の距離(インデックス距離)
【0031】
アライメントユニット20の左側には、チャックテーブル19に保持された基板Kに対して切削加工を施す切削ユニット24が配設されている。切削ユニット24はアライメントユニット20と一体的に構成されており、両者が連動してY軸方向及びZ軸方向に移動する。
【0032】
切削ユニット24は、回転可能なスピンドル26の先端に切削ブレード28が装着されて構成され、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能となっている。切削ブレード28は撮像ユニット22のX軸方向の延長線上に位置している。
【0033】
そして、アライメントユニット20と切削ユニット24により、オートアライメントが実施されるようになっている。このオートアライメントでは、まず、アライメントユニット20により、X軸方向(加工送り方向)に並ぶ少なくとも二つのターゲットパターンPが認識された後、当該二つのターゲットパターンPを結ぶ直線がX軸方向と平行になるようにチャックテーブル19が回転される。このようにして、第1の分割予定ラインS1をX軸方向と平行にするための第1のオートアライメントが実施される。
【0034】
次いで、ティーチング作業により登録されたターゲットパターンPの位置から第1の分割予定ラインS1の位置に切削ブレード28がY軸方向に移動させられる。このようにして、切削ブレード28の位置を第1の分割予定ラインS1に一致させるための第2のオートアライメントが実施される。なお、本実施形態においては、ターゲットパターンPが第1の分割予定ラインS1上にあるため、ここでの切削ブレード28のY軸方向の移動はおこなわれない。
【0035】
以上のようにオートアライメントにおいては、チャックテーブル19の回転(第1のオートアライメント)と、切削ブレード28のY軸方向の移動(第2のオートアライメント)により、切削ブレード28が第1の分割予定ラインS1に自動的に一致させられる。
【0036】
オートアライメントがなされた状態で、チャックテーブル19がX軸方向に加工送りされることにより、第1の分割予定ラインS1に沿った切削加工が行われる。ある第1の分割予定ラインS1に沿った切削加工の後に、切削ブレード28をY軸方向にインデックス距離だけ移動させることで、全ての第1の分割予定ラインS1について、順次切削加工が行われる。その後に、チャックテーブル19を90度回転させ、同様にオートアライメントを実施した後、第2の分割予定ラインS2に沿った切削加工が行われる。
【0037】
25は切削加工の終了した被加工物ユニット15を吸着してスピンナ洗浄ユニット27まで搬送する搬送ユニットであり、スピンナ洗浄ユニット27では被加工物ユニット15がスピン洗浄及びスピン乾燥される。
【0038】
以上のように、図1に示す切削装置2は、分割予定ラインによって区画された領域にデバイス(半導体パッケージD)が形成された被加工物(基板K)が環状フレームFの開口に粘着テープTを介して固定された被加工物ユニット15を保持するチャックテーブル19と、チャックテーブル19に保持された被加工物を分割予定ラインに沿って切削加工する加工手段(切削ユニット24)と、チャックテーブル19を加工送り方向に移動させる加工送り手段(不図示)と、被加工物ユニット15を収容するカセットを載置するカセット載置部9と、カセット載置部9に載置されたカセット8から被加工物ユニット15を搬出する搬出手段(搬出入ユニット10)と、搬出手段によって搬出された被加工物ユニット15を仮置きする仮置きテーブル12と、仮置きテーブル12の被加工物ユニット15をチャックテーブル19に搬入する搬送手段(搬送ユニット16)と、を備えた構成としている。
【0039】
ここで、前述のオートアライメントによるターゲットパターンの認識の際には、図2に示すように、撮像ユニット22による撮像領域22a内に、全てのターゲットパターンPが収められることが理想的である。
【0040】
しかし、例えば、図3に示すように、基板Kの環状フレームFに対する向きや位置がターゲットパターン登録時の規定配置Hとずれていた場合には、いくつかのターゲットパターンPが撮像領域22aの外に配置され、規定時間内にターゲットパターンが認識できずにアライメントエラーとしてオペレータが呼び出され、マニュアル操作でターゲットパターンを認識させる手間が架かってしまうということになる。
【0041】
そこで、上述のオートアライメントの際にターゲットパターンをいち早く検出することを可能とするために、図1に示されるように、カセット載置部9と仮置きテーブル12との間に撮像手段となるプリアライメントのための撮像ユニット30を設け、この撮像ユニット30により撮像された角度割出用画像40(図5参照)を利用したプリアライメントを実施可能としている。
【0042】
この撮像ユニット30は、図4に示すように、カセット載置部9と仮置きテーブル12との間であって、その上方となる位置に配置されており、カセット載置部9から搬出入ユニット10によって搬出される被加工物ユニット15の上面を、上側から撮像できるように構成されている。
【0043】
図5は、搬出入ユニット10によって被加工物ユニット15が搬出される様子を段階1〜段階4にかけて連続的に示すものである。まず、段階1に示されるように、被加工物ユニット15の環状フレームFが搬出入ユニット10のクランプ11に把持されて、仮置きテーブル12の方向へと移動される。
【0044】
そして、撮像ユニット30の撮像領域Rに、基板Kの先端部(送り方向において前側となる端部)が入っているタイミングにおいて、図示せぬコントローラの制御部によって、撮像領域Rの範囲が撮像ユニット30によって撮像されるとともに、コントローラの記憶部に記憶される。
【0045】
次いで、段階2に示されるように、被加工物ユニット15が仮置きテーブル12により近くなったタイミングにおいて、同様に、撮像領域Rの範囲が撮像ユニット30によって撮像されるとともに、コントローラの記憶部に記憶される。段階3、段階4においても同様であり、段階4においては、基板Kの後端部(送り方向において後側となる端部)が入っているタイミングにおいて撮像がなされる。
【0046】
以上の段階1〜4における撮像がなされることにより、「角度割出用画像40」がコントローラに記憶されたプログラムにより作成され、コントローラの記憶部に記憶される。なお、撮像する回数については、基板Kの全範囲が撮像されるものであればよく、特に限定されるものではない。
【0047】
以上のように、撮像ユニット30はカセット8から仮置きテーブル12へ搬出中の被加工物の上面をライン状に撮像し、得られた複数のライン状の画像情報を合成して角度割出用画像40を取得し、後述するように、角度割出用画像40を用いることで被加工物の分割予定ラインを検出する。
【0048】
次に、角度割出用画像40を用いたプリアライメントについて説明する。まず、プリアライメントを自動的に可能とするために、予め行われる「プリアライメントのためのティーチング作業」について説明する。
【0049】
プリアライメントのためのティーチング作業では、図2に示すように、環状フレームFに対し基板Kが規定配置Hに配置された被加工物ユニット15が用いられ、まず、被加工物ユニット15について角度割出用画像40が撮像される。
【0050】
次いで、表示ユニット6に表示される角度割出用画像40を利用して、マニュアル操作により、角度割出用画像40の第1の方向(第2の方向でもよい)に離れあう少なくとも二つのターゲットパターンP11,P12の画像と、ターゲットパターンP11,P12を結ぶ直線である基準線41(第1の分割予定ラインS1)と、ターゲットパターンP11の座標値AP(xa,ya)が登録される。ここで、座標値AP(xa,ya)を定義する座標は、被加工物ユニット15の中心を原点とする。
【0051】
このようにティーチング作業により登録された情報を元に、図3に示すように、規定配置Hとずれた位置に基板Kが配置された被加工物ユニット15について、プリアライメントが実施される。
【0052】
本実施形態のプリアライメントでは、チャックテーブル19は、鉛直方向を回転軸として回転する回転角度がコントローラにより制御され、カセット載置部9と仮置きテーブル12との間には撮像ユニット30(撮像手段)が配設され、撮像ユニット30は被加工物上面を撮像して得られた画像情報から仮置きテーブル12上での被加工物の分割予定ラインの角度(基準線41に対する仮想直線42の角度ズレ量である角度補正値θ)を割り出し、撮像ユニット30によって割り出された分割予定ラインの角度がチャックテーブル19の加工送り方向(X軸方向)と平行(第1の分割予定ラインS1が割り出された場合)又は直交方向(第2の分割予定ラインS2が割り出された場合)になるよう、チャックテーブル19が被加工物ユニットを保持後、所定の角度回転される(第1のプリアライメント)。
【0053】
具体的な手順について説明すると、まず図6の状態J1に示すように、コントローラは、取得された角度割出用画像40に基づいて、ティーチング作業において登録されたターゲットパターンP11,P12と基板Kにおいて同一の場所(例えば、基板Kの右隅)に配置されるターゲットパターンPA11,PA12の画像を認識し、ターゲットパターンPA11,PA12を結ぶ直線である仮想直線42(第1の分割予定ラインS1)を認識する。また、ターゲットパターンPA11の座標値BP(xb,yb)を認識する。
【0054】
ここで、第1の座標値BP(xb,yb)を定義する座標は、被加工物ユニット15の中心を原点とする。また、同一の場所(例えば、基板Kの右隅)に配置されるターゲットパターンの特定は、例えば、本実施形態のように、認識される全てのターゲットパターンの内、右隅に配置されるターゲットパターンを特定することにより行うことができる。
【0055】
このように、撮像ユニット30は、撮像して得られた被加工物上面の画像情報から予め登録されたターゲットパターンと同一のターゲットパターンを認識し、画像情報において連続的に並んだターゲットパターンの列を仮想直線42とし、仮想直線42の角度を分割予定ラインの角度(角度補正値θ)として検出することとしている。
【0056】
次いで、コントローラは、図6の状態J2に示すように、基準線41に対する仮想直線42の角度ズレ量である角度補正値θを演算により求め、記憶する。
【0057】
なお、第1の方向に並ぶターゲットパターンPA11,PA12を結ぶ直線である仮想直線42(第1の分割予定ラインS1)を認識して角度補正値θを割り出すほか、第2の方向に並ぶターゲットパターンを結ぶ直線である基準線(第2の分割予定ラインS2)を規定して角度補正値θを割り出してもよい。
【0058】
次いで、被加工物ユニット15は、搬送ユニット16によって仮置きテーブル12からチャックテーブル19へと搬送され、プリアライメントが実施される。まず、図6の状態J3に示すように、チャックテーブル19を角度補正値θに相当する角度だけ回転させることにより、仮想直線42を基準線41と平行とさせる第1のプリアライメントが実施される。
【0059】
この第1のプリアライメントにより被加工物ユニット15が回転するため、図6の状態J3に示すように、ターゲットパターンPA11の座標値は、第1の座標値BP(xb,yb)から第2の座標値CP(xc,yc)にズレルことになる。この第2の座標値CP(xc,yc)は、被加工物ユニット15の中心を原点とし、第1の座標値BP(xb,yb)を角度補正値θに相当する角度移動させた位置にて定義することができる。
【0060】
そして、この第2の座標値CP(xc,yc)とティーチング作業によって登録されたターゲットパターンP11の座標値AP(xa,ya)の座標のズレから、ズレ量|Xn|,|Yn|を演算により求める。なお、座標のズレた方向を「ズレ方向」とする。
【0061】
次いで、図6の状態J4に示すように、ズレ量におけるY軸方向の値|Yn|だけ「ズレ方向」に移動させることによって、ターゲットパターンPA11に対する撮像ユニット22のY軸方向の相対位置関係を、ティーチング作業において登録されたターゲットパターンP11に対する撮像ユニット22のY軸方向の相対位置関係と一致させることができる。このように、撮像ユニット22をY軸方向に移動させる動作が、第2のプリアライメントとして実施される。
【0062】
次いで、図7の状態J5に示すように、チャックテーブル19(基板K)をX軸方向において、ズレ量におけるX軸方向の値|Xn|だけ「ズレ方向」と逆側(図7におけるX軸の正の方向)に移動させることによって、ターゲットパターンPA11に対する撮像ユニット22のX軸方向の相対位置関係を、ティーチング作業において登録されたターゲットパターンP11に対する撮像ユニット22のX軸方向の相対位置関係と一致させることができる。このように、チャックテーブル19をX軸方向に移動させる動作が、第3のプリアライメントとして実施される。なお、第2と第3のプリアライメントを行う順番は、逆であってもよく、また、いずれか一方が行われることとしてもよい。
【0063】
以上のように、プリアライメントを実施することにより、チャックテーブル19の角度調整(第1のプリアライメント)、撮像ユニット22のY軸方向位置調整(第2のプリアライメント)、チャックテーブル19のX軸方向位置調整(第3のプリアライメント)、が行われることで、ターゲットパターンを撮像ユニット22に検出され易い位置にセットすることができ、アライメントユニット20によるオートアライメントの際には、ターゲットパターンをいち早く検出することが可能となる。
【0064】
また、以上の実施形態では、撮像ユニット30は、撮像して得られた被加工物上面の画像情報(角度割出用画像40)から予め登録されたターゲットパターンと同一のターゲットパターンを認識し、連続的に並んだターゲットパターンの位置情報から、チャックテーブル保持後の被加工物のターゲットパターンの位置を割り出すこととしている。なお、「チャックテーブル保持後の被加工物のターゲットパターンの位置を割り出す」には、図6、図7の手順で説明したように、角度補正値θ、第1ズレ量、第2ズレ量を用いることで行える。また、「位置」は、被加工物ユニット15の中心を原点とする座標にて定義される。
【0065】
そして、プリアライメントでは、チャックテーブル19の角度補正値θと、撮像ユニット22のズレ量|Yn|に応じたY軸方向の移動をさせることで、オートアライメントにおけるチャックテーブル19の回転(第1のオートアライメント)と、切削ブレード28のY軸方向の移動(第2のオートアライメント)、切削ブレード28のX軸方向の移動が実施されることになる。
【0066】
これにより、プリアライメントを実施することで、切削ブレード28を第1の分割予定ラインS1に自動的に一致させるというオートアライメントの目的を達成することができる。このため、プリアライメントによってオートアライメントを代替することが可能となり、オートアライメントを省略することとしてもよい。
【0067】
ただし、例えば、インデックス距離が短く、緻密なアライメントが要求される場合には、プリアライメントとオートアライメントを段階的に実施することが好ましいこととなる。
【符号の説明】
【0068】
S1 分割予定ライン
S2 分割予定ライン
θ 角度補正値
19 チャックテーブル
20 アライメントユニット
22 撮像ユニット
24 切削ユニット
28 切削ブレード
30 撮像ユニット
40 角度割出用画像
41 基準線
42 仮想直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割予定ラインによって区画された領域にデバイスが形成された被加工物が環状フレームの開口に粘着テープを介して固定された被加工物ユニットを保持するチャックテーブルと、
該チャックテーブルに保持された該被加工物を該分割予定ラインに沿って切削加工する加工手段と、
該チャックテーブルを加工送り方向に移動させる加工送り手段と、
該被加工物ユニットを収容するカセットを載置するカセット載置部と、
該カセット載置部に載置された該カセットから該被加工物ユニットを搬出する搬出手段と、
該搬出手段によって搬出された該被加工物ユニットを仮置きする仮置きテーブルと、
該仮置きテーブルの該被加工物ユニットを該チャックテーブルに搬送する搬送手段と、を備えた切削装置であって、
該チャックテーブルは、鉛直方向を回転軸として回転する回転角度がコントローラにより制御され、
該カセット載置部と該仮置きテーブルとの間には撮像手段が配設され、
該撮像手段は該被加工物上面を撮像して得られた画像情報から該仮置きテーブル上での該被加工物の該分割予定ラインの角度を割り出し、
該撮像出手段によって割り出された該分割予定ラインの角度が該チャックテーブルの該加工送り方向と平行又は直交方向になるよう、該チャックテーブルは該被加工物ユニットを保持後、所定の角度回転されることを特徴とする切削装置。
【請求項2】
前記撮像手段は、撮像して得られた前記被加工物上面の画像情報から予め登録されたターゲットパターンと同一のターゲットパターンを認識し、該画像情報において連続的に並んだ該ターゲットパターンの列を仮想直線とし、該仮想直線の角度を前記分割予定ラインの角度として検出することを特徴とする請求項1に記載の切削装置。
【請求項3】
前記撮像手段は、前記カセットから前記仮置きテーブルへ搬出中の前記被加工物の上面をライン状に撮像し、得られた複数のライン状の画像情報を合成して該被加工物の前記分割予定ラインを検出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の切削装置。
【請求項4】
前記撮像手段は、撮像して得られた前記被加工物上面の画像情報から予め登録されたターゲットパターンと同一のターゲットパターンを認識し、連続的に並んだ該ターゲットパターンの位置情報から、該チャックテーブル保持後の該被加工物の該ターゲットパターンの位置を割り出すことを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の切削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−84681(P2013−84681A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222149(P2011−222149)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】