説明

切替器

【課題】地上波ディジタルテレビジョン放送システムの放送局、中継局等に適した切替器を実現する。
【解決手段】切替器は、各入力元と出力先とを高周波的に接続する複数の高周波線路と、高周波的接続を線路選択的に阻止するため高周波線路毎に設けられたスイッチ回路と、スイッチ回路を駆動するドライブ回路と、を備える。スイッチ回路のうち少なくともいずれかがシャント回路Sであり、高周波線路のうちシャント回路Sの配設箇所を含み入力元側及び出力先側に跨りλ/2の自然数倍の電気長(λ:高周波線路を伝搬する信号の搬送波長)を有する線路部分が、その線路部分から見て入力元側及び出力先側にある線路部分に対して低い固有インピーダンスを有する線路部分である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の出力先に対し複数の入力元のうちいずれかを選択的に接続するための切替器に関する。
【背景技術】
【0002】
無線送信機の台数冗長化は信頼性を高める有効な手法の一つである。ここでいう台数冗長化とは、例えば、2台の無線送信機のうち一方を現用、他方を予備ととし、これら現用送信機及び予備送信機を切替器を介して送信アンテナに接続することを指す。このように無線送信機が冗長化されていれば、通常は現用送信機を送信アンテナに接続して使用するが、保守・整備等の必要が生じた場合は、切替器を操作・制御して予備送信機を送信アンテナに接続する、といった運用形態を採ることができるため、切替器の動作に必要なわずかな時間を除けばほとんどとぎれなしに送信を継続できる、各無線送信機の状態を良好な状態に保ちやすい等、単独の無線送信機で送信を行う場合に比べて送信サービスの信頼性・品質が著しく向上する。また、複数台の無線送信機を送信アンテナに接続するモードを有する切替器を用いるのであれば、それらの無線送信機(このモードでは現用/予備の区別はない)を同時に送信に使用することができる。
【0003】
このように、所定の出力先に対し複数の入力元のうちいずれかを選択的に接続するための切替器を利用した冗長化は、送信サービスを間断なく提供し続けたいシステム、例えば地上波テレビジョン放送システムにて、実用されている。この種のシステムでは、例えば、放送局に2台の放送機(1号機と2号機)を設ける。更に、それら1号機及び2号機の放送信号出力のうちいずれかの放送機からの出力、例えば1号機からの放送信号出力を、切替器を介して送信アンテナ(又はその前段の各種回路。以下単に送信アンテナと記す)に供給する。送信アンテナから輻射されるのは、この場合、1号機から出力された放送信号である。故障部分を補修するため等、何らかの事情で1号機を停止させたい場合には、切替器を操作・制御することによって1号機を送信アンテナから切り離し、2号機を送信アンテナに接続する作業を行う。放送は2号機により続ける。このように放送機の台数を冗長化し、切替器を用いて選択的に使用可能にすることによって、放送システムの信頼性を向上させること、特に放送中時間帯を含めた適当な時期に保守・整備等を行いつつ送信を間断なく継続させることが、可能になる。
【0004】
このような送信機複数台方式に内在する問題点として、切替器における切替に要するわずかな時間ではあれ、信号送信がとぎれるという問題点がある。この問題即ち送信瞬断という問題は、情報圧縮率が高い信号を送信するシステムほど、また高速で変調された信号を送信するシステムほど、顕著になりやすい。例えば、日本では、本願出願時点から見て近い将来における地上波ディジタルテレビジョン放送システムの商業運用開始が、予定されている。地上波ディジタルテレビジョン放送システムでは、高度に圧縮されたデータを多数のキャリアを用いて高速で無線伝送即ち放送する。そのため、従来からサービスが実施されていた地上波アナログテレビジョン放送システム等に比べ、放送波の瞬断は、テレビジョン受像機側での同期はずれを招く原因となりやすい等、問題である。このような事情もあり、従来から、できるだけ高速で信号経路を切り替えることができるよう、切替器の開発・改良が行われている。また、特に、放送局用切替器のように大電力の高周波信号を取り扱う切替器では、切替の高速性だけでなく、高周波信号のアイソレーション、大電力信号に対する耐性等も、充分に確保する必要があることから、その面を考慮した開発・改良が行われている。
【0005】
図11及び図12に、従来技術に属する切替器の構成を示す。図11に示したものは多連スイッチ方式、図12に示したものはクロスオーバ方式と呼ばれる方式に従い構成された切替器であり、それぞれ、非特許文献1,2に記載されている。
【0006】
図11に示した装置は、放送機側に接続される入力端子として入力1及び2を有するほか、出力端子としては、送信アンテナANTに接続される端子及び整合吸収のためのダミーロードRDに接続される端子を有している。入力1は、その中央部分にλ/4ショートスタブSTB1,STB2が装荷されたλ/2線路を介して、切替器SW1,SW2に接続されている(λ:放送信号の搬送波長)。入力2は、その中央部分にλ/4ショートスタブSTB3,STB4が装荷されたλ/2の高周波線路を介して、切替器SW1,SW2に接続されている。切替器SW1,SW2は、それぞれ、λ/2の線路を介して送信アンテナANTに、またλ/2の線路を介してダミーロードRDに、接続されている。但し、これらのλ/2線路のうちSW1・ANT間線路の一部はλ/4固定整合器M1、SW2・RD間線路の一部はλ/4固定整合器M2により、それぞれ実現されている。
【0007】
更に、切替器SW1,SW2は、それぞれ、入力1と送信アンテナANTとを接続する高周波線路、入力2と送信アンテナANTとを接続する高周波線路、入力1とダミーロードRDとを接続する高周波線路、及び入力2とダミーロードRDとを接続する高周波線路を有している。切替器SW1,SW2に各4個含まれているこれらの高周波線路には、その高周波線路による信号伝送を許容/禁止するために、即ち線路選択的に信号伝送を制御するために、それぞれ機械的接点が設けられている。図中1〜4の符号が付されているこれらの機械的接点は、機械的な接触の開閉を伴う接触型接点とすることもできるし、静電容量を介した接続による非接触型接点とすることもできる。また、これらの接点は、ソレノイド駆動制御部10から供給される駆動信号に応じて励磁/励磁解除される電磁ソレノイドによって、駆動される。
【0008】
従って、ソレノイド駆動制御部10に対して例えば「入力1→送信アンテナANT、入力2→ダミーロードRD」という伝送経路を指令し、切替器SW1の接点1及び4を閉、接点2及び3を開に制御することにより、入力1に接続した放送機(図示せず)を用いた放送を行いつつ、入力2に接続した放送機(図示せず)の出力についてはダミーロードRDで吸収させることができる。また、切替器を2個(SW1,SW2)並列に設けているため、両放送機の出力を結合させそれにより電力を増して、送信アンテナANTから輻射させることができる。
【0009】
図12に示した装置は、2個の入力端子即ち入力1及び2に接続されたハイブリッドHYB1と、送信アンテナANT及びダミーロードRDに接続されたハイブリッドHYB2と、2個の移相器とにより、構成されている。各移相器は、ハイブリッドHYB1及びHYB2に接続されたハイブリッドHYB3又はHYB4と、このハイブリッドHYB3又はHYB4に接続された一端接地のバリコンVC1及びVC2又はVC3及びVC4とにより、構成されている。バリコンVC1〜VC4はバリコン駆動装置20から供給される駆動信号により駆動されその静電容量を変化させる。なお、ハイブリッドHYB1〜4は例えば3dBハイブリッドである。また図中下側の移相器にはλ/4ショートスタブSTB5が前置されている。
【0010】
この図に示した切替器は、動作モードとして、入力1に接続されている放送機(図示せず)の出力を送信アンテナANTから輻射させる1号機単独運転モード、入力2に接続されている放送機(図示せず)の出力を送信アンテナANTから輻射させる2号機単独運転モード、並びに両放送機の出力を合成して送信アンテナANTから輻射させる並列運転モードを、有している。1号機単独運転モードでは上側の移相器による移相量が下側の移相器による移相量に対して90゜多くなるよう、2号機単独運転モードでは逆に90゜少なくなるよう、バリコン駆動装置20が各移相器中のバリコンVC1〜VC4を駆動する。並列運転モードでは、2個の入力間に90゜の位相差を付すことで、移相作用をキャンセルする。
【0011】
図11及び図12に示した多連スイッチ方式及びクロスオーバ方式は、何れもその接点を機械的接触の開閉を伴わない接点とすることができるため、当該接点が故障する頻度を低くすることができ、従って信頼性を高めうるという利点を有している。しかしながら、機械的接触を伴わないとはいっても機械的駆動部分を有する接点(図11)又はバリコン(図12)を使用しているため、入力1から入力2へ又はその逆への切替の前後や過渡期間にて、送信アンテナANTからの出力に電力変動・位相変動が生じやすい。また、上掲の機械的接点として機械的接触の開閉を伴わない接点又はバリコンを用いることによって切替所要時間を短縮できるとはいっても、機械的接点であり従って機械的駆動部分を有する以上、切替所要時間を短縮するのには限度がある。可能な限り短縮したとしても、例えば図11に示した方式では500msec程度、図12に示した方式では数秒程度の時間が切替に必要となろう。更に、図11に示した方式には、多数の機械的接点を用いているため接点の保守が面倒・困難であるという問題があり、図12に示した方式には、現在送信に使用していない放送機の出力が送信アンテナANT側にわずかに漏れる等、アイソレーションがよくなく高々40dB程度にとどまるという問題がある。
【0012】
【特許文献1】特開平11−340945号公報
【特許文献2】特開2000−261409号公報
【特許文献3】特開平6−292157号公報
【非特許文献1】「VHFテレビ放送機用無停波合成切替器の開発」(砂川他、テレビジョン学会技術報告、vol.14,No.21,pp.1-6,RDFT'90-32(March,1990))
【非特許文献2】「VHF帯大電力クロスオーバー型無停波切換方式の開発」(砂川他、テレビジョン学会技術報告、RE81-28,pp77-82,昭和56年9月25日発表)
【非特許文献3】Pin Diode Handbook(Microsemi社発行、初版:1996年6月1日、2002年9月4日時点でhttp://www.microsemi.com/literature/products/rf/pinbook.aspからPDF形式でダウンロード可能)、特にChapter One(http://www.microsemi.com/literature/products/rf/chapter%201.pdf)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、このような問題点を解決することを課題としてなされたものであり、接点及びその周辺の不調・故障による停波・破損の発生頻度が低く、地上波ディジタルテレビジョン放送システムの放送局、中継局等に適した切替器を実現することを、その目的の一つとしている。また、本発明は、不調・故障発生個所の特定、アイソレーションの向上、切替前後・過渡期間における電力変動・位相変動の抑圧、切替所要時間の短縮、保守・整備等の作業の容易化、昼間保守可能化、小型・低価格化等も、達成できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る切替器は、所定の出力先例えば送信アンテナに対し、複数の入力元例えば複数台の放送機のうちいずれかを、選択的に接続するための切替器である。本発明に係る切替器は、前提として、各入力元と出力先とを高周波的に接続する複数の高周波線路と、当該高周波的接続を線路選択的に(即ちいずれかの1個又は複数個の高周波線路を適宜選んで)阻止するため高周波線路毎に設けられたスイッチ回路と、スイッチ回路を駆動するドライブ回路と、を備える。本発明の一態様に係る切替器は、(1)上記複数の高周波線路のうち少なくともいずれかについてスイッチ回路を複数個設けたこと、並びに(2)ドライブ回路をスイッチ回路毎に設けたことによって、特徴付けられている。
【0015】
切替器内のスイッチ回路は、切替器内の高周波線路による高周波的接続を経路選択的に阻止するためのものであるから、本来、高周波線路1個につき1個設ければ足りる。それにもかかわらず、本発明の一態様において(少なくともいずれかの)高周波線路に複数個のスイッチ回路を設けているのは、信頼性の向上やアイソレーションの向上のためである。
【0016】
まず、高周波線路に複数個のスイッチ回路を設けるに当たっては、その高周波線路上の同一箇所に、互いに並列になるよう、複数個のスイッチ回路を設けるか、その高周波線路上の異なる箇所にスイッチ回路を設けるか、両者の組合せか、いずれかの形態をとり得る。同一個所に並列配設する形態であれば、当該複数個のスイッチ回路のうちいずれかが不調・故障となっても、そのスイッチ回路と並列に設けられている他のスイッチ回路が正常に機能している限り、対応する高周波線路による高周波的接続の許容/阻止制御には差し障りなく、従って冗長化による信頼性向上の効果を得ることができる。更に、並列化されているため、各スイッチ回路の分担電流が減り又は合計電流容量・許容損失が増加する。また、異なる個所に設ける形態であれば、各スイッチ回路によるアイソレーションの効果が相乗的に作用するため、その高周波線路全体でのアイソレーションは顕著に高まる。両者の組合せ即ち異なる個所にそれぞれ複数個のスイッチ回路を並列配設する形態では、上掲の作用効果が共に得られる。
【0017】
また、複数個のスイッチ回路を1個のドライブ回路により駆動する回路構成下では、それら複数個のスイッチ回路のうち1個に不調・故障が発生すると、ドライブ回路や他のスイッチ回路の動作に影響が及び、結果として信頼性向上やアイソレーション向上の作用効果が損なわれることがあり得る。そのため、本発明においては、好ましくは、ドライブ回路をスイッチ回路毎に設ける。このようにすると、ドライブ回路とスイッチ回路とが対応付けられているため、不調・故障による異常の波及を防ぐことができるだけでなく、ドライブ回路によるスイッチ回路異常検出を通じて異常発生個所を特定することも可能になる。即ち、切替器内のスイッチ回路を、PINダイオード等、バイアス電圧に応じ導通/遮断する半導体素子を用いて実現し、ドライブ回路から対応するスイッチ回路内の半導体素子へとバイアス電圧を印加する回路例でいうと、各ドライブ回路が対応するスイッチ回路内の半導体素子におけるバイアス状況を当該ドライブ回路の出力電圧又は電流に基づき判別し、その結果に基づき、当該ドライブ回路又はその半導体素子における異常発生の有無を検出することができる。即ち、同一の高周波線路に配設されている複数個のスイッチ回路の何れに関連した不調・故障かを、特定できる。
【0018】
更に、スイッチ回路は、シリーズ回路型でもシャント回路型でもよい。シリーズ回路はスイッチ素子を高周波線路中心導体に対して直列接続した構成の回路であり、シャント回路はスイッチ素子を高周波線路中心導体接地導体間に接続した構成の回路である。スイッチ素子として半導体素子を用いた例でいうと、シリーズ回路とは、上記半導体素子が導通したときその高周波線路を介した伝送が許容され遮断したとき阻止されるよう、対応する高周波線路の中心導体に上記半導体素子を挿入した回路であり、シャント回路は、上記半導体素子が導通したときその高周波線路を介した伝送が阻止され遮断したとき許容されるよう、対応する高周波線路の中心導体と接地導体との間に上記半導体素子を挿入した回路である。半導体素子を用いることによって、切替所要時間を短縮することができ、切替前後・過渡期間における電力変動・位相変動を抑えることができ、切替器を小型・低価格化できるため、上に述べた冗長性・アイソレーションの向上や不調・故障箇所特定可能化による保守・整備等の作業の容易化、昼間保守可能化等と併せ、地上波ディジタルテレビジョン放送システムの放送局、中継局等に適した切替器を実現できる。切替所要時間の短縮という点では、スイッチ回路内の半導体素子(例えばPINダイオード)のバイアスを順逆切替する際に、バイアス電圧又は電流の値を一時的に増減制御すること、より詳細には、増減のうち切替所要時間が短くなる方向に制御することが、望ましい。そのための回路は、ドライブ回路に付設し又はドライブ回路内に設ければよい。
【0019】
また、一般に、シリーズ回路は、高周波線路1個につき1個設けるだけであれば、入力元及び出力先とのアイソレーションのためのλ/4線路(=λ/4の奇数倍の電気長を有する線路。以下同様。λ:高周波線路を伝搬する信号の搬送波長)が必要でなく、従って当該λ/4線路による帯域制限を受けないため、広帯域設計に適している。反面、上記半導体素子の電極のうち一つを接地導体に接続できるため当該接続を介して熱を逃がしやすいシャント回路の方が、放熱性が良好であり、従って大電力高周波信号を取り扱う放送機向けの用途に適している。また、同一個所に複数個のスイッチ回路を配設する場合には、シャント回路を用いることとなろう。その際、対応する高周波線路の中心導体及び接地導体にバイアス電圧が現れることを防ぐため、直流を遮断するコンデンサを、シャント回路に付加するのが望ましい。このコンデンサは、雷サージその他の過大入力/ノイズ入力に対して半導体素子を保護する役目も担う。また、シャント回路を用いるに当たっては、そのシャント回路と入力元及び出力先との間にλ/4線路を設けてアイソレーションを確保するのが望ましく、更に、同一の高周波線路上の異なる箇所にそれぞれシャント回路を設ける場合は、それらの間にもλ/4線路を設けて両者のアイソレーションを確保する。
【0020】
取り扱う信号の電力が大きいとき場合には、シャント回路を用いるに当たって、低インピーダンス法を用いるのが望ましい。本願発明の発明者が提唱する低インピーダンス法は、λ/4線路を利用して、シャント回路特にその半導体素子に加わる電圧を抑えることにより、比較的低電圧仕様の半導体素子により大電力(高周波)信号を取り扱えるようにする手法である。具体的には、高周波線路のうちシャント回路の配設箇所を含む第1の線路部分の固有インピーダンスを、この第1の線路部分と入力元側及び出力先側との間に介在する2個の第2の線路部分の固有インピーダンスに対して、低くする、という手法である。第1の線路部分はλ/2波長線路(=λ/2の自然数倍の電気長を有する線路。以下同様)とする。また、仮に、第2の線路部分における固有インピーダンスがZ0であり、シャント回路の配設個所を含む第1の線路部分の固有インピーダンスがZ0/2であるとし、この線路部分の中央にはその固有インピーダンスがZ0の線路部分が装荷されているとすると、第1の線路部分の中央部を当該第1の線路部分の一端から見たときのインピーダンスはZ0/4となるから、高周波線路全体をZ0線路とした場合に比べて、当該第1の線路部分の中央部の電圧は1/41/2=1/2となる。従って、第1の線路部分のいずれかの個所にシャント回路を配設することによって、低電圧仕様の半導体素子を用いることが可能になる。なお、電圧低下に伴う電流増大に対しては、シャント回路(半導体素子)の並列化又はその並列個数の増大によって対処すればよい。その際にも、ドライブ回路をスイッチ回路毎に設けるのが望ましい。
【0021】
更に、本発明に係る切替器内で、スイッチ回路として、シリーズ回路とシャント回路とを混在して用いることもできる。その場合、好ましくは、同一の入力元又は出力先に接続されている複数の高周波線路のうち、いずれかについてはスイッチ回路としてシリーズ回路を、残りの高周波線路についてはスイッチ回路としてシャント回路を、それぞれ設けることとする。更に、ドライブ回路は、そのシリーズ回路に対応して設ける。シャント回路は、シリーズ回路に対応付けられるこのドライブ回路により駆動される。そのため、そのドライブ回路からシャント回路に至るバイアス電圧供給経路を、シャント回路に対応して設ける。これによって、複数個のスイッチ回路を単一のドライブ回路により駆動することができる。更に、入力元及び出力先をドライブ回路に対して直流的に遮断するコンデンサを入力元、出力先又は高周波線路上に設けることにより、複数の高周波線路のうちシリーズ回路配設箇所からシャント回路配設箇所に至る線路部分を、シリーズ回路に対応して設けられたドライブ回路からシャント回路に至るバイアス電圧供給経路として、機能させることができる。即ち、ドライブ回路共用のためにバイアス用信号線を付加せずともよい。
【0022】
シャント回路を設けるに当たって、構造上の工夫として、異常発熱への対処を組み込むのが望ましい。例えば、シャント回路の構成部品例えば半導体素子やコンデンサが過剰に発熱したとき、対応する高周波線路の中心導体から、当該シャント回路又はその発熱した構成部品を切り離す過熱時自動切断部材を、シャント回路に設ける。過熱時自動切断部材としては、例えば温度ヒューズ等の部品を用いることができる。温度ヒューズのように柔軟性或いは緩衝性を有する部品を用いれば、シャント回路が組み込まれている線路部分に機械的・熱的ストレスが加わった場合におけるシャント回路の破損を、好適に防止できる。なお、過熱時自動切断部材は、部品に限られず、通常それ自体は部品と認められないような部材、たとえは低融点半田でもよい。
【0023】
更に、高周波線路のうちシャント回路等が組み込まれた部分を切り離して交換できるよう、高周波線路の設置形態を工夫するのが望ましい。
【0024】
まず、切替器内の任意の高周波線路を、1個又は複数個のスイッチ回路が設けられているスイッチ回路側線路部分と、このスイッチ回路側線路部分と入力元及び出力先との間に存する2個の端子側線路部分とに、区分して考える。スイッチ回路側線路部分は、そのスイッチ回路側線路部分に配設されているスイッチ回路のうち端子側線路部分に最も近いものと当該端子側線路部分との間に、スイッチ回路側線路部分の一部であるλ/4波長線路部分が介在するように、構成する。これにより、端子側線路部分に対するスイッチ回路(群)のアイソレーションが確保される。他方、各端子側線路部分は、それぞれ入力元又は出力先から電気長でλ/2波長の自然数倍だけ延びる線路部分とする。これにより、端子側線路部分とスイッチ回路側線路部分の接続個所の入力元及び出力先に対するアイソレーションが確保される。従って、(スイッチ回路内半導体素子に高周波電流が流れていない状態であれば)その高周波線路から必要に応じスイッチ回路側線路部分を切り離しても、特に、切替器の他の部分の機能や切替器の動作に影響は生じない。
【0025】
このことを利用し、本発明の好適な実施形態では、スイッチ回路又はこれと共にドライブ回路を収納するユニットたるUリンクを形成する。Uリンクは、上で述べたスイッチ回路側線路部分をユニット化したものであり、端子側線路部分から取り外し可能に設けられ、把持又は挟持可能な形状、例えば把手或いはステープルと同様の形状を有する。高周波線路がリジッドな線路であれば、特に、Uリンクの着脱作業は簡便であり、取扱性が優れたものになる。また、Uリンク内にスイッチ回路としてシャント回路を収納した場合、直流を遮断するコンデンサをそのシャント回路に設け、そのシャント回路内の半導体素子に印加されるバイアス電圧がUリンクの筐体に現れることを防ぐことができるため、バイアス電圧が高電圧であってもその電圧はUリンクの外表面等には現れず、従って作業に支障・危険は生じない。また、Uリンクの配設先パネルにスイッチを設け、そのスイッチによって、そのパネルからUリンクが取り外されたこと又は取り外されかけたことを検知するようにすれば、当該検知に応じてバイアス電圧を停止させること等が可能になる。更に、切替器の使用に当たっては、無素子Uリンクを準備しておくのが望ましい。ここでいう無素子Uリンクは、Uリンクに代えてUリンクの配設先パネルに装着できるが、その内部にスイッチ回路を有していない線路部分ユニットである。この無素子Uリンクをパネルに着脱することによって、スイッチ回路に全く依存しない即ち手動での強制切替が可能になり、緊急時の運用には有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施形態に関し図面に基づき説明する。なお、以下の説明では、地上波テレビジョン放送局にて放送機2台方式を実施するために本発明の切替器を用いる例を、示す。これは記載の簡明化のためであり、本発明の適用範囲を限定するものではない。即ち、高信頼性、高品質、低コスト等が要求される切替器、中でも大電力高周波信号を扱うことがある切替器に対して本発明を適用できることは、以下の記載からも明らかであろう。
【0027】
(1)基本構成
本発明の一実施形態に係る放送局用切替器の構成を図1に、そのスイッチ回路の構成とドライブ回路との関係を図2に、スイッチ回路たるシャント回路の構造例を図3に、シャント回路を含めたユニットであるUリンクの例を図4に、それぞれ示す。図1に示すように、本実施形態に係る切替器SWは、入力元たる放送機を接続するための入力端子として入力1及び2を有するほか、出力先例えば送信アンテナANTに接続するための出力端子や、送信アンテナANTに接続されていない放送機の出力を整合終端・吸収するためのダミーロードRDが接続される出力端子を、有している。切替器SW内には4個の高周波線路が設けられており、各高周波線路上にはそれぞれ2組のシャント回路が設けられている。
【0028】
入力1と送信アンテナANTとを接続する高周波線路を例として説明すると、図1に示すように、この高周波線路上、入力1から電気長でnλ/2+4/λ(λ:放送信号の搬送波長)離れた個所Aに1組のシャント回路S1及びS2が、また送信アンテナANTへの出力端子から電気長でnλ/2+4/λ離れた個所Bにもう1組のシャント回路S1及びS2が、それぞれ設けられており、シャント回路配設個所Aとシャント回路配設個所Bとの間には電気長でλ/4の線路が設けられている。入力2とダミーロードRDとを接続する高周波線路上のC及びD、入力1とダミーロードRDとを接続する高周波線路上のE及びF、並びに入力2と送信アンテナANTとを接続する高周波線路上のG及びHも、その高周波線路により接続されている入力及び出力端子に対して同様の関係を有し、それぞれにシャント回路S1,S2のペアが設けられている個所である。
【0029】
シャント回路S1,S2は、図2に示すように、それぞれ、コンデンサC11,C12を介してPINダイオードD11,D12のアノードを高周波線路の中心導体に接続し、PINダイオードD11,D12のカソードを高周波線路の接地導体に接続した回路構成を有している。また、図1では図示が省略されているが、シャント回路S1,S2内のPINダイオードD11,D12を駆動するためのドライブ回路31,32は、図2に示すように個々のシャント回路S1,S2に対応して設けられている。ドライブ回路31,32は、LPFを構成するインダクタL11,L12及びC21,C22を介して、PINダイオードD11,D12のカソードにバイアス電圧を印加する。ドライブ回路31,32は、外部から与えられる指令に応じて対応するPINダイオードD11,D12に対しバイアス電圧を印加する一方、PINダイオードD11,D12に実際に加わっているバイアス電圧や流れている電流を監視することによって、そのPINダイオードD11,D12を含め対応するシャント回路S1,S2における異常発生を検知する。その結果は、図示しない報知手段によりドライブ回路31,32から適宜使用者又は外部装置に供給される。
【0030】
更に、シャント回路は、具体的には、例えば図3に示す構造を採る。図3はシャント回路1個分の構造であるから、実際には図3に示した構造が図1に示したシャント回路個数分設けられることに留意されたい。図3に示した構造においては、配設先高周波線路として、気相誘電体又は真空を中心導体・接地導体間に介在させた同軸線路、特にその外導体である接地導体の剛性が高いリジッドな同軸線路を、想定している。シャント回路は、この同軸線路の内導体である同軸中心導体38と、当該同軸線路の外導体である接地導体との間に、収納される。図3及び後述する図4においては、シャント回路特にそのPINダイオードが(場合によってはドライブ回路の一部も)収納されている個所をダイオード実装部と称しており、ダイオード実装部の外形又は中仕切りをなす接地導体をダイオード実装部筐体39と称している。
【0031】
図3に示した部材中、PINダイオードD1は図2でD11,D12として示したものに相当する。PINダイオードD1のアノードは、インダクタL1を介してダイオード実装部外に接続されている。インダクタL1は、図2でL11,L12として示したものに相当する。ダイオードD1のカソードは、ダイオード実装部筐体39又はそれに接続されている図示しない導体に、接続されている。また、ダイオード実装部筐体39には貫通コンデンサC2が実装されており、インダクタL1の一端はこの貫通コンデンサC2の中心を介しダイオード実装部外にあるドライブ回路にむけ引き出される。即ち、コンデンサC2は、図2でC21,C22として示したものに相当している。更に、コンデンサC1は、図2でC11,C12として示したものに相当する部材であり、所定のシャント回路配設個所において同軸中心導体38に接続されている。
【0032】
図3に示した構造においては、更に、一対の取付金具40を用いて温度ヒューズFが組み込まれている。取付金具40は良好な導電性を有する部材であり、そのうち一方にはコンデンサC1が、他方にはダイオードD1のアノードが、それぞれ接続されている。取付金具40同士の間に設けられている温度ヒューズFは、導電体であって比較的低温でも溶融断裂する素材から構成されている。即ち、ダイオードD1或いはコンデンサC1等、シャント回路構成部品が発熱し、その結果温度ヒューズFの温度が所定温度以上に至ると、温度ヒューズFは溶断して、コンデンサC1対PINダイオードD1間の接続が断たれる。また、温度ヒューズFは、柔軟性・緩衝性をも有する素材から形成されており、熱膨張等を原因とするストレスがダイオード実装部に加わってもシャント回路及びその内外の導電経路が破損しないよう、当該ストレスによる変形の少なくとも一部を吸収する。
【0033】
更に、図1に示した各高周波線路は、シャント回路側線路部分(U1〜U4)と、それ以外の部分である端子側線路部分とに、区分されている。入力1と送信アンテナANTとを接続する高周波線路を例として説明すると、2個の端子側線路部分により挟まれた部分、即ち図中aからA及びBを経てbに亘る部分が、シャント回路側線路部分である。シャント回路配設個所Aとシャント回路配設個所Bとの間にはそれらの間のアイソレーションのためλ/4線路を設け、シャント回路配設個所Aと点aとの間及びシャント回路配設個所Bと点bとの間にもそれらの間のアイソレーションのためλ/4線路を設けるため、シャント回路側線路部分の電気長は都合3λ/4になる。また、入力1から点aまで延びた部分と、送信アンテナANTへの出力端子から点bまで延びた部分が、端子側線路部分である。各端子側線路部分の電気長は、入力1又は送信アンテナANTへの出力端子と、点a又はbとのアイソレーションを確保しUリンクの取り外しを可能又は容易にするため、nλ/2とされる(nは1以上の整数)。なお、Uリンク着脱を行う必要がないなら、即ちUリンクなる構造を採らないなら、n=0であってもよい。
【0034】
図4に示すように、Uリンクとは、シャント回路側線路部分をリジッドな同軸線路により構成しておき、図3に示した如き構造を有するシャント回路(及びドライブ回路の一部)をその一部であるダイオード実装部33,34内に収納したものである。例えばUリンクU1は、シャント回路配設個所A及びBを含む線路部分であり、その両端は図1中の点a及びbに相当している。UリンクUは、把手又はステープルに類似した「U」の字或いは「C」の字状の管であり、その端部位置(U1であればa及びb)において切替器SW側から切り離し、また装着することができる。そのようにするため、装着先である切替器SWのパネル41には、UリンクUの形状及び寸法に応じて端子側線路部分の一端が配置されている。更に、UリンクUの装着先パネル41上には、UリンクUがパネル41から離れるのに伴い接点が開いていくよう、即ち作業者又は所定の工具・装置がUリンクUに接しUリンクUの取り外し作業を始めたときにそのことを検出できるよう、マイクロスイッチ42が設けられている。
【0035】
(2)利点
このように、本実施形態では、図11に示した多連スイッチ方式による切替器SW1又はSW2における各機械的接点1〜4に代えて、PINダイオードD11,D12をスイッチ素子として用いたシャント回路S1,S2を設けている。半導体スイッチ素子を用いているため、機械的接点を有する多連スイッチ方式や、バリコン駆動のための機構を有するクロスオーバ方式に比べて、切替に要する時間が短い。回路の実現形態及び用途・要求仕様にもよるが、1μsec程度の時間で切り替えられる高速切替器も実現可能である。また、同じく機械駆動部が介在しないという理由で、切替前後及び過渡期間における送信アンテナ出力の電力変動・位相変動が生じにくく、従って受像機側での同期はずれを招きにくい。更に、半導体素子たるPINダイオードの使用により小型・低価格化が達成され、保守機会・保守要員削減等も可能になる。
【0036】
特に、地上波ディジタルテレビジョン放送システムでは、放送信号に、一部のデータをリピートする期間であるガードインターバルがマルチパス対策のため設けられていることから、ガードインターバル長以内の瞬断或いは位相変動なら受像機内で吸収できる。従って、例えばガードインターバル検出を行いガードインターバルタイミングに同期して切替器SWによる切替を行う、というように、ガードインターバル同期切替手法を併用すれば、瞬断等の影響を好適に抑えることができる。即ち、本実施形態に係る切替器SWは、地上波ディジタルテレビジョン放送の放送局や中継局に適した切替器である。なお、ガードインターバル検出等に関しては、前掲の特許文献1又は2を参照されたい。
【0037】
また、本実施形態では、スイッチ回路としてシャント回路を使用している。シャント回路は、図2或いは図3の記載からも明らかなように、スイッチ素子の電極(ここではPINダイオードのカソード)を接地導体に接続した構成とすることができる回路方式であるため、スイッチ素子にて発生した熱を接地導体に逃がすことが容易であり、放熱性に優れている。放送機用切替器のように大電力高周波信号を取り扱う切替器においては、その安定性、信頼性を確保するため、放熱性に優れたシャント回路を用いるのが望ましい。放熱性の確保により、切替器SW特にそのスイッチ素子の不調・故障、ひいては停波・破損の発生確率・頻度を抑えることができる。
【0038】
また、本実施形態では、高周波線路上の同一の個所において、2個のシャント回路S1,S2を並列に設けている。そのため、シャント回路を1個しか設けない実施形態と比べると、電流容量、許容損失等が増大するため、より大電力を扱うことが可能になり、また負荷分担(ディレーティング)効果も生じる。
【0039】
更に、本実施形態では、同一高周波線路上の2個所にそれぞれ1対ずつシャント回路を設けている(2段接続)。従って、入出力間のアイソレーションが高い。仮に、1段でN(dB)のアイソレーションが得られるとすると、2段なら2N(dB)、3段なら3N(dB)というように段数に応じアイソレーションが高まるため、段数は、回路規模・コスト等が許容する範囲内でできるだけ多くするのが望ましい。なお、段と段の間には、図1にも示したようにλ/4線路を設けて両者の間のアイソレーションを確保するのが望ましい。また、切替器SWを介してダミーロードRDに接続されている放送機から出力された放送信号の内容・信号状態を調べるに当たり、送信アンテナANTに接続されている放送機から出力された放送信号がダミーロードRD側に漏れだしていると、正確に調べることができず不都合である。本実施形態では入出力間のアイソレーションが良好であるため、そのような支障は生じにくく、従って放送時間中における信号内容・信号状態の点検(昼間保守)を好適に行うことができる。放送時間外の深夜・早朝に行う必要はない。また、昼間保守のために別途切替器を設けるといった設備上の負担が軽減される。
【0040】
更に、本実施形態では、シャント回路S1,S2それぞれについて個別に、ドライブ回路31,32を設けている。従って、仮にシャント回路S1にショートモードの故障又は耐圧劣化が生じた場合でも、シャント回路S2に対しては、ドライブ回路31から独立したバイアス電圧源であるドライブ回路32からバイアス電圧が供給されるため、シャント回路S2内のPINダイオードD12のバイアス状態は実質的に変動せず、その高周波線路の状態は従前と同様の状態に保たれる。結果として、冗長化による信頼性向上効果が得られ、停波してしまう恐れが少なくなる。
【0041】
また、本実施形態における各ドライブ回路は、対応するシャント回路における異常の発生を、そのシャント回路特にPINダイオードに対し実際に加わっているバイアス電圧や流れている電流の監視によって、検出している。ドライブ回路がシャント回路に対応して設けられているため、いずれのドライブ回路にて異常が検出されたかにより、いずれのシャント回路にて異常が生じたかを知ることができる。そのため、各ドライブ回路における異常検出状況を総合することにより、正確かつ迅速に、異常発生個所を少なくともシャント回路単位で特定することができる。これにより、異常発生時における対処を迅速化できる。
【0042】
また、順バイアス時にPINダイオードがショートモード故障した場合は電流が増加し、オープンモード故障した場合は電流が流れなくなり、その他の“中途半端な”モードでの故障でも正常時と異なる電流が流れる。逆バイアス時にPINダイオードがショートモード故障した場合は逆バイアス電源が高圧であるため電流が激増し、オープンモード故障した場合は電流が流れなくなり、その他耐圧劣化等の“中途半端な”モードでの故障でも正常時と異なる電流が流れる。ドライブ回路が故障した場合も正常値と異なる電流値となる。従って、予め、正常時における電流値をバイアスの順/逆の別等に対応して計測又は計算しておき、実使用時には、各ドライブ回路が対応するシャント回路に流れる電流を所定頻度で計測し、その結果得られた電流値と予め得ておいた正常時電流値とをバイアス状態を勘案して比較することにより、各ドライブ回路にて故障モードをも判別でき、ドライブ回路自身の故障も検知できる。特に、その際、温度変化や品毎のばらつきを考慮に入れるのが望ましい。例えば温度が上昇すると一般に電流が増大するので、故障に至ってはいないが発熱が進んでいる状態をも検知できる。また、逆バイアス時にショートモード故障が生じた場合、電源容量が不足して電圧が降下し又は保護回路が動作して電源供給が断たれることから、その種の故障を検知する上で、バイアス電圧或いはドライブ回路の電源状態を監視することが有効である。
【0043】
また、本実施形態では、各シャント回路S1,S2を、コンデンサC11,C12を介して高周波線路の中心導体に接続している。雷サージ等に対するシャント回路S1,S2の耐性が高い。この面でも、信頼性が向上している。
【0044】
更に、本実施形態では、PINダイオードD1やコンデンサC1が異常発熱したとき溶断するよう、温度ヒューズFを設けている。これによって、異常発熱を起こしたPINダイオードD1等を高周波線路から切り離せるため、制御不能、ひいては停波等の事態が、より生じにくくなる。温度ヒューズFとして柔軟で緩衝性を有するものを用いることにより、熱膨張等によるストレスを温度ヒューズFにより吸収して、破損しにくくすることができる。温度ヒューズFに代え、低融点半田等を用いることもできる。
【0045】
また、本実施形態では、各シャント回路側線路部分をUリンク化している。従って、必要に応じ、UリンクUをパネル41から取り外すこと、即ち端子側線路部分から強制的に切り離すことができる。そのため、図示しない制御装置に異常が発生してしまい各ドライブ回路によるシャント回路の駆動が正常に行われない可能性がある状況等に、Uリンク取り外しによる手動強制切替を以て好適に対処できる。また、マイクロスイッチ42によって取り外し開始が検出されたとき順バイアス電源を自動的にオフすることにより、PINダイオードに高周波電力が導通していない状態で取り外しを行うことが可能になる。更に、マイクロスイッチ42によって取り外し開始が検出されたときにも、逆バイアス電源を自動的にオフし可能な限りは放送機をも停止させる。しかしながら、コンデンサC2によりバイアス電圧が遮断されるため、UリンクUの外表面には直流電圧は(少なくとも逆バイアス電圧のような高電圧は)現れないから、それら逆バイアス電源停止/放送機停止を実施せず放送を継続させることもできる。更に、PINダイオード等のスイッチ素子ひいてはスイッチ回路を内蔵しない無素子Uリンクを準備しておき、スイッチ回路に依存しないで切替器を運用することもできる。
【0046】
(3)変形例
上述した実施形態に対しては各種の変形が可能である。まず、図1に示した構成では1個の高周波線路上の2個所に1対ずつシャント回路S1,S2が設けられているが、アイソレーションがさほど必要でない場合は1個所でもよいし、よりアイソレーションを良好にしたい場合は3個所以上でもよい。また、1個所に2個ずつ並列にシャント回路を設けているが、冗長化が特に必要でない高周波線路については1個所に1個としてもよいし、装置規模・コスト等が許すのであれば1個所に3個以上設けてもよい。最も単純な構成は、図5に示すようにシャント回路を高周波線路上の1個所のみに1個(シャント回路S)設ける構成であり、要求されるアイソレーションや信頼性に応じてこれを適宜多段化・並列化する。更に、Uリンク化等、スイッチ回路側線路部分の切り離しを行わない場合は、n=0とすることもできる。
【0047】
また、上述した実施形態においては、半導体のスイッチ素子としてPINダイオードを使用している。スイッチ素子として、MESFET等のトランジスタを用いることもできるが、特に大電力信号を取り扱う場合はPINダイオードを用いるのが望ましい。また、PINダイオードの向きは図2に示したものと逆向きでもよいが、その場合はバイアス電圧の極性も逆にする。NIPダイオードでも同様である。
【0048】
更に、PINダイオードを高周波にてハイインピーダンスとするには、十分な逆バイアス電圧を印加する必要がある。即ち、十分な逆バイアス電圧が加わっていない状態で高周波電力が加わるとスプリアス発生等の問題が生じる。そのため、ドライブ回路の電源が断たれないよう、2台の放送機双方から各ドライブ回路に電源を供給する等、電源についても冗長化の措置を施すのが望ましい。それによって、スプリアス等が生じにくいPINダイオード型切替器を実現できる。また、大電力を取り扱う切替器でPINダイオードを使用するには、逆バイアス用の電源として、十分に高圧の電源を用いる必要があるが、高圧電源は低圧電源よりインピーダンスが高いため切替所要時間短縮効果が損なわれる恐れがある。この点を考慮し、逆バイアスへと切り替えるときは多段階の電源切替を行い、半導体型切替器の効果の一つである切替所要時間短縮効果を確保するのが望ましい。
【0049】
PINダイオードによる切替に要する時間を更に短縮するには、切替の瞬間を含むごく短い期間において一時的に、バイアス電圧又は電流を増減制御すればよい。例えば、ドライブ回路31,32(及び後に掲げる変形例における35〜37)を、それぞれ、図13に示す構成にしたとする。この回路構成においては、ドライブ回路内の半導体スイッチS11がオンすると正電源44が、また半導体スイッチS21がオンすると負電源45が、PINダイオード側につながる。正電源44は順バイアス電流を、負電源45は逆バイアス電圧を、PINダイオード側に供給/印可する。制御回路43は、ドライブ回路31,32に付設され又はその一部として設けられた回路であり、バイアス回路46又は47を通じて半導体スイッチS1,S2の制御電極(図ではFETを半導体スイッチとして使用しているためゲート)に制御電圧を印可することによって、半導体スイッチS11,S21を選択的にオン・オフさせる。切替所要時間を短縮するため、制御回路43は、順バイアス電流及び逆バイアス電圧のうちいずれか又は双方を、正電源44や負電源45の制御によって一時的に変更する手順を、実行する。図14に示す例では、制御回路43は、順→逆方向の切替時には(100)、順バイアス電流を一時的に例えば0.5Aから0.25Aに低減させ逆バイアス電圧を−500Vから−400Vに上昇させる(102)。逆に、逆→順方向の切替時には(100)、順バイアス電流を一時的に例えば0.5Aから1Aに増加させ又は逆バイアス電圧を一時的に例えば−500Vから−400Vに上昇させる(104)。切替後バイアス状態が安定したら又はそれに充分と見られる時間が経過したら、制御回路43は、一時的に変更していたバイアス状態を通常時のバイアス状態に原状復帰させる(106)。このような手順を実行することによって、切替所要時間の短縮ひいてはデータビット欠落減少、PINダイオード発熱又は消費電力の低減ひいては大電力切替実現等の効果が得られる。非特許文献3も参照されたい。なお、図14に示した手順は図13に示した回路を前提としたものであるため順バイアス電流が正で逆バイアス電圧が負であるが、これらの極性は設計次第で反転する。また、この電源制御機能を利用して、通常時に非使用側の電源を休止させておく制御も実行できる。また、正電源44及び負電源45を各1個とした例を示したが、それより多い個数の電源を設けた回路でも、上記手順又はこれに類する手順を実行して、切替所要時間を短縮することができる。
【0050】
また、図6に示すように、2個のPINダイオードD11a,D11bを逆向きに接続するバックツウバック接続を採用してもよい。これによって、必要な逆バイアス電圧を低くすること、歪を低減すること等が可能である。なお、ダイオードが2個であるため、図6では、図2中のインダクタL11に対応するインダクタを2個(L11a,L11b)設けている。
【0051】
更に、上述の実施形態ではスイッチ回路としてシャント回路を用いているが、一部又は全部のスイッチ回路をシリーズ回路としてもよい(特許文献3も参照されたい)。図7は、各高周波線路上に1個ずつシリーズ回路R1〜R4を設けた例である。シリーズ回路は、バイアス電源が停止した場合停波になる他、放熱性等の点でシャント回路より劣るため大電力よりは小電力に適している。反面、この図のように1段であればλ/4線路を必要としないため、シリーズ回路を用いればより広帯域の切替器を実現できる。また、シリーズ回路は、図8に示す回路により実現できる。図8においては、PINダイオードD2が高周波線路の中心導体上に直列に挿入されており、その前後にはバイアス電圧遮断のためのコンデンサC4及びC5並びにインダクタL3が設けられている。ドライブ回路35は、指令に応じ、コンデンサC3及びインダクタL2を介して、PINダイオードD2にバイアス電圧を供給する。
【0052】
図9に示した例は、シャント回路とシリーズ回路を混在させた例である。入力1から送信アンテナANT側に至る高周波線路上の点αにはシャント回路たるPINダイオードD1aが、入力2からダミーロードRD側に至る高周波線路上の点βにはシャント回路たるPINダイオードD1bが、それぞれ設けられている。点α及びβは至近の入出力端子から電気長でλ/4離れた位置にある。また、入力2から送信アンテナANT側に至る高周波線路上の点γにはシリーズ回路の一部であるPINダイオードD2aが、入力1からダミーロードRD側に至る高周波線路上の点δにはシリーズ回路の一部であるPINダイオードD2bが、それぞれ設けられている。
【0053】
ドライブ回路は2個(36及び37)設けられており、ドライブ回路36から出力されるバイアス電圧はコンデンサC3a及びインダクタL2aを介してPINダイオードD2aへ、更に高周波線路の一部を介してPINダイオードD1aへと供給されている。同様に、ドライブ回路37から出力されるバイアス電圧はコンデンサC3b及びインダクタL2bを介してPINダイオードD2bへ、更に高周波線路の一部を介してPINダイオードD1bへと供給されている。バイアス電圧を遮断するため、点γ及びδから見てシリーズ回路のPINダイオードD2a又はD2bと逆側にコンデンサC4a又はC4bを、また各端子にコンデンサC6を、それぞれ設けている。この構成においては、ドライブ回路の個数が抑えられ、またバイアス電圧印加用の信号線も節約される他、バイアス電源が停止したときは入力1が送信アンテナANTにまた入力2がダミーロードRDに自動接続されるため、電源断に伴う不確定な状態の発生を防ぐことができる。また、各スイッチ回路を多段にしアイソレーションを向上させることも可能である。
【0054】
更に、上述の実施形態は、図11に示した従来技術中の切替器SW1又はSW2に対する本発明の適用・改良例であるといえる。しかしながら、本発明は、図12に示した従来技術に適用すること、例えばその移相器をPINダイオード型移相器とし本発明の如く冗長化等の措置を施すことも可能である。更に、図11及び図12のいずれも、2台の放送機の出力を合成して送信するモードを有していた。上述の実施形態に係る切替器SWを利用して、かつ先に掲げた文献による開示を参照して、その種のモードを実現することが可能である。
【0055】
加えて、切替器SW内の各高周波線路、特にシャント回路近傍の部分に低インピーダンス法を適用することができる。簡便のため1個の高周波線路にシャント回路を1個のみ設けた構成を考えると、低インピーダンス法では、図10(a)に示すように、シャント回路S前後の例えばλ/4線路の固有インピーダンスを、他の部分の固有インピーダンスZ0に対して例えば1/2のZ0/2とする。図10(b)に示すように、この高周波線路とシャント回路との接続点から出力側を見たときのインピーダンスは、固有インピーダンスZ0/2のλ/4線路をインピーダンスZ0で終端したときのインピーダンスであるため、既知の法則によりZ0/4となる。また、図10(c)に示すように、当該接続点から見て入力側にλ/4離れた位置から当該接続点を見たときのインピーダンスは、固有インピーダンスZ0/2のλ/4線路をインピーダンスZ0/4で終端したときのインピーダンスであるため、既知の法則によりZ0となる。従って、図10(d)に示すように、上記接続点から見て入力側にλ/4離れた位置から出力側にλ/4離れた位置を見たときのインピーダンスはZ0であり、不整合は生じない。上記接続点に現れる高周波電圧に着目すると、インピーダンスがZ0/4に低下しているため、V=(PZ)1/2の式から、低インピーダンス法非適用時に比べて1/2倍に低下していることがわかる。
【0056】
従って、低インピーダンス法の適用によって、より低い電圧仕様の半導体素子(PINダイオード)を使用することが可能になる。電圧低下に伴う電流増大については半導体素子並列個数の増加によって補えばよい。高電圧対応の半導体素子は高価でありまた入手困難である場合があるが、低電圧仕様の半導体素子は安価であり入手は一般に容易であるため、半導体素子並列個数の増加ひいてはそれによるコスト増を補ってあまりあるコスト低減効果が得られる。これによって、大電力向けの切替器をより安価に実現でき部品調達も迅速化できる。更に、図10では上記接続点がλ/2線路の中央に位置しているが、厳密に中央である必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、ディジタル地上波テレビジョン放送機向けの切替器を初めとして、各種の切替器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態に係る切替器の構成を示す回路図である。
【図2】本実施形態におけるスイッチ回路の構成を示す回路図である。
【図3】本実施形態におけるシャント回路の構造を示す図である。
【図4】本実施形態におけるUリンクの外観を示す側面図である。
【図5】本実施形態の変形例を示す部分回路図である。
【図6】本実施形態におけるスイッチ回路の変形例を、(a)及び(b)に一つずつ示す図である。
【図7】本実施形態に係る切替器の変形例の構成を示す回路図である。
【図8】その変形例におけるスイッチ回路の構成を示す回路図である。
【図9】更に他の変形例に係る切替器の構成を示す回路図である。
【図10】更に他の変形例における高周波線路の例を示す図であり、(a)は回路構成を、(b)〜(d)は高周波線路の合成原理をそれぞれ示す図である。
【図11】従来技術に係る切替器の構成を示す回路図である。
【図12】従来技術に係る他の切替器の構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の好適な実施形態におけるドライブ回路の一例を示す図である。
【図14】バイアス電源制御による切替所要時間短縮手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0059】
31,32,35〜37 ドライブ回路、33,34 ダイオード実装部、43 制御回路、44 正電源、45 負電源、a〜h Uリンク端部位置、A〜H,α,β シャント回路配設個所、ANT 送信アンテナ、C1〜C6,C11,C12,C21,C22,C3a,C3b,C4a,C4b コンデンサ、D1,D1a,D1b,D11,D11a,D11b,D12,D2,D2a,D2b PINダイオード、F 温度ヒューズ、L1〜L3,L11,L11a,L11b,L12,L2a,L2b インダクタ、R1〜R4 シリーズ回路、RD ダミーロード、S,S1,S2 シャント回路、S11,S21 半導体スイッチ、SW 切替器、U,U1〜U4 Uリンク、Z0 固有インピーダンス、γ,δ シリーズ回路配設個所、λ 波長。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の出力先に対し複数の入力元のうちいずれかを選択的に接続するための切替器であって、
各入力元と出力先とを高周波的に接続する複数の高周波線路と、当該高周波的接続を線路選択的に阻止するため高周波線路毎に設けられたスイッチ回路と、スイッチ回路を駆動するドライブ回路と、を備える切替器において、
スイッチ回路が、バイアス電圧に応じ導通/遮断する半導体素子を含み、
ドライブ回路が、対応するスイッチ回路内の半導体素子に対しバイアス電圧を印加する回路であり、
スイッチ回路のうち少なくともいずれかが、上記半導体素子が導通したときその高周波線路を介した伝送が阻止され遮断したとき許容されるよう、対応する高周波線路の中心導体と接地導体との間に上記半導体素子を挿入したシャント回路であり、
高周波線路のうち上記シャント回路の配設箇所を含み入力元側及び出力先側に跨りλ/2の自然数倍の電気長(λ:高周波線路を伝搬する信号の搬送波長)を有する線路部分が、その線路部分から見て入力元側及び出力先側にある線路部分に対して低い固有インピーダンスを有する線路部分であることを特徴とする切替器。
【請求項2】
請求項1記載の切替器において、
上記複数の高周波線路のうち少なくともいずれかについてスイッチ回路を複数個設け、
ドライブ回路をスイッチ回路毎に設けたことを特徴とする切替器。
【請求項3】
請求項1記載の切替器において、
上記スイッチ回路内の半導体素子が、バイアスの順逆切替によって導通/遮断する半導体素子であり、更に、
上記半導体素子のバイアスを順バイアスから逆バイアスへ切替する際に、切替に要する時間が短くなるよう一時的に、順バイアス電流の値を減らす手段を、ドライブ回路に付設し又はドライブ回路内に設けたことを特徴とする切替器。
【請求項4】
請求項1記載の切替器において、
上記スイッチ回路内の半導体素子が、バイアスの順逆切替によって導通/遮断する半導体素子であり、更に、
上記半導体素子のバイアスを逆バイアスから順バイアスへ切替する際に、切替に要する時間が短くなるよう一時的に、逆バイアス電圧の値を減らす手段を、ドライブ回路に付設し又はドライブ回路内に設けたことを特徴とする切替器。
【請求項5】
所定の出力先に対し複数の入力元のうちいずれかを選択的に接続するための切替器であって、
各入力元と出力先とを高周波的に接続する複数の高周波線路と、当該高周波的接続を線路選択的に阻止するため高周波線路毎に設けられたスイッチ回路と、スイッチ回路を駆動するドライブ回路と、を備える切替器において、
各スイッチ回路が、バイアス電圧に応じ導通/遮断する半導体素子を含み、
ドライブ回路が、対応するスイッチ回路内の半導体素子に対しバイアス電圧を印加する回路であり、
スイッチ回路のうち少なくともいずれかのスイッチ回路が、その半導体素子が導通したときその高周波線路を介した伝送が許容され遮断したとき阻止されるよう、対応する高周波線路の中心導体に半導体素子を挿入したシリーズ回路であり、他のスイッチ回路が、その半導体素子が導通したときその高周波線路を介した伝送が阻止され遮断したとき許容されるよう、対応する高周波線路の中心導体と接地導体との間に上記半導体素子を挿入したシャント回路であり、
同一の入力元又は出力先に接続されている複数の高周波線路のうちいずれかについてはスイッチ回路としてシリーズ回路を、残りの高周波線路についてはスイッチ回路としてシャント回路をそれぞれ設け、
シリーズ回路に対応してドライブ回路を設ける一方、そのドライブ回路からシャント回路に至るバイアス電圧供給経路をシャント回路に対応して設け、
入力元及び出力先をドライブ回路に対して直流的に遮断するコンデンサを入力元、出力先又は高周波線路上に設けることにより、複数の高周波線路のうちシリーズ回路配設箇所からシャント回路配設箇所に至る線路部分を、シリーズ回路に対応して設けられたドライブ回路からシャント回路に至るバイアス電圧供給経路として機能させ、
上記スイッチ回路内の半導体素子が、バイアスの順逆切替によって導通/遮断する半導体素子であり、更に、
上記半導体素子のバイアスを順バイアスから逆バイアスへ切替する際に、切替に要する時間が短くなるよう一時的に、順バイアス電流の値を減らす手段を、ドライブ回路に付設し又はドライブ回路内に設けたことを特徴とする切替器。
【請求項6】
所定の出力先に対し複数の入力元のうちいずれかを選択的に接続するための切替器であって、
各入力元と出力先とを高周波的に接続する複数の高周波線路と、当該高周波的接続を線路選択的に阻止するため高周波線路毎に設けられたスイッチ回路と、スイッチ回路を駆動するドライブ回路と、を備える切替器において、
各スイッチ回路が、バイアス電圧に応じ導通/遮断する半導体素子を含み、
ドライブ回路が、対応するスイッチ回路内の半導体素子に対しバイアス電圧を印加する回路であり、
スイッチ回路のうち少なくともいずれかのスイッチ回路が、その半導体素子が導通したときその高周波線路を介した伝送が許容され遮断したとき阻止されるよう、対応する高周波線路の中心導体に半導体素子を挿入したシリーズ回路であり、他のスイッチ回路が、その半導体素子が導通したときその高周波線路を介した伝送が阻止され遮断したとき許容されるよう、対応する高周波線路の中心導体と接地導体との間に上記半導体素子を挿入したシャント回路であり、
同一の入力元又は出力先に接続されている複数の高周波線路のうちいずれかについてはスイッチ回路としてシリーズ回路を、残りの高周波線路についてはスイッチ回路としてシャント回路をそれぞれ設け、
シリーズ回路に対応してドライブ回路を設ける一方、そのドライブ回路からシャント回路に至るバイアス電圧供給経路をシャント回路に対応して設け、
入力元及び出力先をドライブ回路に対して直流的に遮断するコンデンサを入力元、出力先又は高周波線路上に設けることにより、複数の高周波線路のうちシリーズ回路配設箇所からシャント回路配設箇所に至る線路部分を、シリーズ回路に対応して設けられたドライブ回路からシャント回路に至るバイアス電圧供給経路として機能させ、
上記スイッチ回路内の半導体素子が、バイアスの順逆切替によって導通/遮断する半導体素子であり、更に、
上記半導体素子のバイアスを逆バイアスから順バイアスへ切替する際に、切替に要する時間が短くなるよう一時的に、逆バイアス電圧の値を減らす手段を、ドライブ回路に付設し又はドライブ回路内に設けたことを特徴とする切替器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2007−43746(P2007−43746A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288524(P2006−288524)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【分割の表示】特願2003−529566(P2003−529566)の分割
【原出願日】平成14年9月12日(2002.9.12)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【出願人】(391006991)ノーブル無線株式会社 (6)
【Fターム(参考)】