説明

刈り込み機

【課題】芝刈り機等の刈り込み機において、従来本体部を支持する車輪を首振り可能に設けた場合に、移動中車輪が小石に乗り上げる等してその向きが変わってしまい、その結果直進性が損なわれてかえって操作性が悪くなる問題があった。本発明では、車輪の直進性を確保しつつスムーズに旋回できるようにする。
【解決手段】車輪10を支持する車輪支持体11を旋回不能に固定するロック機構20を設け、このロック機構20のロック、アンロック操作により車輪10を直進向きに固定したロック状態と首振り可能なアンロック状態とに切り換え可能な構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば芝刈り作業や雑草の刈り込み等の刈り込み作業に用いられる刈り込み機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、刈り込み刃を回転させながら使用者が手で押して移動させて芝生を刈り込む形態の刈り込み機が提供されている。この刈り込み機に関する技術として従来例えば、特開2004−159621号公報に開示された芝刈り機が公知になっている。この芝刈り機は、電動モータを駆動源として回転する刈り込み刃を有する本体と、本体に設けた車輪と、使用者が把持するハンドル部を備えたもので、本体の前部には刈り込み深さ調整機構を備えている。
また、同公報に開示された芝刈り機では、車輪の向きが本体に対して直進方向に固定されているため、本体を旋回させる場合に無理な力が車輪に付加されて結果的に本体を旋回させにくく、あるいは一旦車輪を地面から浮き上がらせる等の手間を掛ける必要があった。この問題を解消するため、従来車輪の向きを変更可能(首振り可能)な自在キャスタ式とした刈り込み機が提供されていた。
【特許文献1】特開2004−159621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の自在キャスタ式の車輪を備えた刈り込みによれば、その向きについて何ら規制されない構成であったため、当該車輪が小石に乗り上げる等してその向きが不用意に変化してしまい、かえってその直進性が損なわれて当該刈り込み機の使い勝手が悪くなる問題があった。
本発明は、車輪の向きが少なくとも直進方向に固定された状態と、本体旋回操作に追従する等してその向きがスムーズに変更される状態との切り替えを行うことができる刈り込み機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このため、本発明は、特許請求の範囲の各請求項に記載した構成の刈り込み機とした。
請求項1記載の刈り込み機によれば、旋回ロック機構をロック状態とすることにより、車輪の向きが水平方向に旋回不能な状態となって少なくとも直進向きに固定される。この状態では、本体を直線させる場合に、例えば車輪が小石に乗り上げてもその向きが変わることがなく、これにより本体部の直性性を確保することができ、ひいては当該刈り込み機の使い勝手(操作性)を確保することができる。
これに対して、旋回ロック機構をアンロック状態とすることにより車輪支持体はその旋回軸部を中心にして水平方向に回転自在な状態となり、これにより車輪をいわゆる自在キャスタと同様首振り可能な状態とすることができる。この状態では、本体を旋回させる操作に追従して車輪が旋回するため当該本体部をスムーズに旋回させることができることから、例えば壁際での刈り込み作業あるいは敷石回りの刈り込み作業を効率よく行うことができ、この点で当該刈り込み機の操作性を高めることができる。
このように請求項1記載の刈り込み機によれば、本体部の直進性と旋回性を両立させることができる。
請求項2記載の刈り込み機によれば、ロックボタンを操作するごとに、ロックピンが往復動して車輪がロック状態とアンロック状態とに交互に切り換えられる。このように簡単な1操作で車輪のロック、アンロック状態を切り換えることができることから、その良好な操作性を確保することができる。
請求項3記載の刈り込み機によれば、左右の車輪について一方のみを旋回不能にロックすることができることができることから、例えばロック側の車輪を中心にして本体部を最小半径で旋回させることができ、これにより狭小なスペースにおける当該刈り込み機の操作性(旋回性)を高めることができる。
請求項4記載の刈り込み機によれば、本体部の前部を支持する接地板が水平方向であって支持脚部回りに回転可能に設けられているので、本体部の旋回操作をスムーズに行うことができ、これにより当該刈り込み機の操作性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
次に、本発明の実施形態を図1〜図24に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る刈り込み機1を示している。この刈り込み機1は、電動モータ2bを駆動源として水平回転する刈り込み刃2aを備えた本体部2と、使用者が本体部2を押し操作等する際に把持するハンドル部3とハンドル部に対して着脱可能に装備され、刈り取った芝等を収容しておくダストボックス4を備えている。ハンドル部3は本体部2の後部付近を中心にして前後(図1において左右)に傾動可能に支持されている。図1では、ハンドル部3が前側の格納位置に位置する状態が示されている。ハンドル部3の先端にはループ状のグリップ部3aが設けられている。このグリップ部3aの内側にトリガ形式のスイッチレバー3bが設けられている。使用者は、このグリップ部3aを把持したまま指先でスイッチレバー3bを押し操作すると、本体部2の電動モータ2bが起動して刈り込み刃2aが回転する。刈り込みは2aを回転させながら、当該刈り込み機1を図1において右側に前進させることにより刈り込みが行われる。以下、部材等の前後方向については、図1及び図2において右側を前側といい、左側を後ろ側ともいう。
本体部2の後部には左右一対の車輪10,10が設けられている。両車輪10,10は、それぞれ車輪支持体11を介して本体部2に支持されている。左右の車輪10,10の支持構造は相互に同じ構成を備えている。以下進行方向に向かって右側の車輪10の支持構造について説明する。図1では、この右側の車輪10が手前側に見えている。
【0006】
車輪10は、車輪支持体11の下部に水平方向の車軸12を介して回転自在に支持されている。この車輪支持体11の上部には、台座部11aが設けられている。この台座部11aの上面中央には旋回軸部11cが鉛直方向に沿って上方へ突き出す状態に設けられている。また、台座部11aの上面には2つのロック孔11b,11dが設けられている。このロック孔11b,11dは、旋回軸部11cの軸線を中心とする同一円周上の前部と後部に相互に180°の間隔をおいて設けられている。図2において右側が主として前進用のロック孔11bで、左側が主として後退用のロック孔11dとなっている。
車輪支持体11は、旋回軸部11cを介して本体部2のフレーム2cに支持されている。フレーム2cの後部には、支持孔2dが上下に貫通して設けられている。この支持孔2dに対して旋回軸部11cが下方から回転自在な状態で挿入されている。フレーム2cの上面側に突き出された旋回軸部11cの上部には止め輪13が装着されている。この止め輪13により当該旋回軸部11cの支持孔2dに対する軸方向の移動が規制され、また支持孔2dからの抜け出しが防止されている。止め輪13とフレーム2cとの間、及び台座部11aとフレーム2cとの間にはそれぞれ摺動部材14,15が挟み込まれている。この摺動部材14,15により、当該車輪支持体11は、旋回軸部11cの軸線回りに回転自在かつ旋回軸部11cの軸線方向には移動不能に支持されている。
旋回軸部11cの軸線に対して車軸12は前後方向にずれて配置されている。このため、旋回軸部11cの軸線回りに当該車輪支持体11を水平方向に180°回転させると車軸12が前後に変位し、これにより車輪10が前後に変位する。通常、この種の首振り車輪(自在キャスタ)は、進行方向後ろ側に変位する。
【0007】
車輪10の位置は、以下説明するロック機構20によってロックすることができる。車輪支持体11は、このロック機構20によってその旋回軸部11cを中心として水平回転可能なアンロック状態と回転不能に固定されたロック状態とに切り換えられる。
このロック機構20は、左右の車輪10,10についてそれぞれ設けられている。左右のロック機構20,20は同様の構成を備えているので、車輪10と同様進行方向右側のロック機構20についてのみ説明する。図2に示すようにこのロック機構20は、本体部2のフレーム2cに設けられている。
このロック機構20は、上記台座部11aのロック孔11b(又はロック孔11d、以下同じ)に挿入される係合部材21と、第1及び第2作動部材22,23と、押しボタン24と、円筒形状の支持筒体25を備えている。これら各部材は、相互に同軸に配置されている。
支持筒体25は、フレーム2cに設けた支持ボス部2eの内周側に軸方向移動不能かつ回転不能に固定されている。図3に示すように支持筒体25の左右側部にはそれぞれ弾性変形可能な係合爪部25bが設けられている。一方、支持ボス部2eの内周側には、係合凹部2g,2gが外周側へはみ出す状態で相互に対向して設けられている。この両係合凹部2g,2g内に係合爪部25bを進入させることにより当該支持筒体25が支持ボス部2eの内周側に回転不能に挿入されている。また、図13に示すように両係合爪部25b,25bが、係合凹部2gの上部に設けたフランジ部2fに対してそれぞれ係合されることにより、当該支持筒体25の支持ボス部2eからの抜け出しが防止されている。なお、両係合爪部25b,25bは、取り付け時に弾性変形するいわゆる嵌め殺しの取り付け構造をとっている。
【0008】
支持筒体25の内周側には段付き形状の支持孔部25aが設けられている。この支持孔部25aの内周側に第1作動部材22が軸方向へ移動可能かつ軸回りに回転可能に支持されている。この第1作動部材22の上部に押しボタン24が固定されている。また、第1作動部材22の下部に第2作動部材23の上部が軸方向移動可能かつ軸回りに回転可能に挿入されている。
第2作動部材23の下部に係合部材21の支軸部21aが挿入されて、当該係合部材21が第2作動部材23に対して一体化されている。係合部材21の大径部21bと、支持ボス部2eの底部との間には圧縮ばね26が介装されている。この圧縮ばね26によって係合部材21及び第2作動部材23が上方へ変位する方向に付勢されている。係合部材21の大径部21bの下面からはロックピン部21cが同軸に設けられている。このロックピン部21cは、支持ボス部2eの底面を貫通してフレーム2cの下面側に突き出されている。
このロック機構20は、使用者が押しボタン24を押し下げ操作すると、操作ごとに係合部材21が上下に移動して、そのロックピン部21cがフレーム2cの下面から大きく突き出すロック位置若しくはこれよりも突き出し寸法が小さいアンロック位置に保持される。
【0009】
図4には支持筒体25が単独で示され、図7には第1作動部材22が押しボタン24を取り付けた状態で示され、図10には第2作動部材23が単独で示されている。
図4〜図6に示すように支持筒体25の内周側には上記支持孔部25aの他、8本の突条25f〜25fが内周面に沿って一体に設けられている。この突条25f〜25fは、上記支持孔部25aと同じ内径を有し、かつ相互に同じ幅で形成されている。各突条25fの下端側には、傾斜案内面25dが設けられている。各傾斜案内面25dは、図6において右側に下る方向に相互に同じ角度で傾斜(以下、単に右傾斜という)している。隣接する突条25f,25f間には、深さが深い深溝部25cとこれよりも深さが浅い浅溝部25gが交互に設けられている。従って、当該支持筒体25の内周側に4つの深溝部25c〜25cと4つの浅溝部25g〜25gが周方向に沿って交互に配置されている。各浅溝部25gの下端部には、傾斜当接面25eが形成されている。この傾斜当接面25eは、上記傾斜案内部25dに面一に連続する傾斜面(右傾斜面)に形成されている。
図7〜図9に示すように第1作動部材22の下端部外周面には、合計8つの案内凸部22aが周方向に沿って等間隔で、かつ放射方向に突き出す状態に設けられている。各案内凸部22aは、上記支持筒体25の各深溝部25c及び各浅溝部25gのいずれにも挿入可能な幅及び突き出し高さで形成されている。また、各案内凸部22aに対応して、この第1作動部材22の下端面には、合計8つの山形の歯部が設けられている。各歯部の図9において右傾斜面である左側の傾斜規制面22bは、上記支持筒体25の傾斜案内面25d及び傾斜当接面25eと同じ角度で傾斜している。この第1作動部材22の下部に開口状態で設けた支持孔22c内に、第2作動部材23の頭部23aが回転可能かつ軸方向に移動可能に挿入されている。なお、前記したようにこの第1作動部材22の頭部には押しボタン24が取り付けられている。
図10〜図12に示すように第2作動部材23の外周面には、合計4つの係合突条23b〜23bが周方向四等分位置で放射方向に突き出す状態に設けられている。各係合突条23bの上端部には、傾斜係合面23cが設けられている。各傾斜係合面23cは、支持筒体25の傾斜案内面25d及び傾斜当接面25eと第1作動部材22の傾斜規制面22bに対応して設けられたもので、これらと同様同じ角度で右側に傾斜する右傾斜面に形成されている。この第2作動部材23の下面に開口する状態で支持孔23dが設けられている。この支持孔23d内に、係合部材21の支軸部21aが回転可能に挿入されている。
【0010】
このように構成されたロック機構20によれば押しボタン24を押し操作するごとに、車輪支持体11を回転不能なロック状態と回転可能なアンロック状態に切り換え、これにより車輪10の向きを直進向きに固定したロック状態と任意の方向に向きを変更可能で自在キャスタとして機能するアンロック状態とに切り換えることができる。
図13は図2と同様ロック機構20のアンロック状態を示している。このアンロック状態では、係合部材21のロックピン部21cが車輪支持体11のロック孔11bから上方へ抜き出された状態となっている。すなわち、図14に示すようにこのアンロック状態では、第2作動部材23の各係合突条23bが支持筒体25の深溝部25c内に深く進入し、かつ第1作動部材22の各案内凸部22aが、支持筒体25の各深溝部25c及び各浅溝部25gの上端部(奥部)に進入し、これにより第1及び第2作動部材22,23が支持筒体25に対して上動側に位置する状態となっている。この状態では、第2作動部材23の各傾斜係合面23cが第1作動部材22の各傾斜規制面22bに当接した状態となっている。
このため、押しボタン24が上側のアンロック位置に位置し、また第2作動部材23及び係合部材21が圧縮ばね26によって上動側に移動しており、これにより上記したように係合部材21のロックピン部21cが上動側に位置して、ロック孔11bから上方へ抜き出された状態となっている。
このアンロック状態から使用者が押しボタン24を下方へ押し操作すると、図15に示すように係合部材21と第1及び第2作動部材22,23が一体で下方へ移動する。このため、この押し操作は、圧縮ばね26に抗してなされる。係合部材21が下方へ移動することによりそのロックピン部21cが車輪支持体11のロック孔11bに挿入され、これにより車輪支持体11ひいては車輪10が直進向きにロックされた状態となる。
【0011】
第1作動部材22が下方へ変位すると、各案内凸部22aが支持筒体25の深溝部25c〜25c及び浅溝部25g〜25gの下部側に移動する。この状態が図16に示されている。第1作動部材22が下方へ移動する段階では、その傾斜規制面22bに第2作動部材23の各傾斜係合面23cを当接した状態に維持しつつ当該第1作動部材22が移動することにより第2作動部材23が一体で下方へ移動する。
第2作動部材23の下方への移動により、その傾斜係合面23cが支持筒体25の各突条25fの先端部に至って深溝部25c及び浅溝部25gから離脱すると、これと同時に第1作動部材22の各傾斜規制面22bが支持筒体25の各傾斜案内面25dに一致する。すると、圧縮ばね26により第2作動部材23には上方への付勢力が作用しているため、当該第2作動部材23はその傾斜係合面23cを第1作動部材22の傾斜規制面22bに摺接させて僅かに上方へ移動しながら回転する。回転した状態が図17に示されている。図16と図17を比較すると明らかなように、第2作動部材23の各傾斜係合面23cは第1作動部材22の各傾斜規制面22bの先端側(図16)から基端側(図17)に移動し、その結果当該第2作動部材23が図において左側に変位し、従って僅かに回転した状態となっている。また、この段階で、第2作動部材23の各傾斜係合面23cは、第1作動部材22の傾斜規制面22bと支持筒体25の傾斜案内面25dの双方に跨った状態となっている。以上の動作が押しボタン24の押し操作によりなされる。
【0012】
次に、図18に示すように押しボタン24の押し操作を解除すると、係合部材21と第1及び第2作動部材22,23が一体で上方へ移動する。支持筒体25に対して第1作動部材22が上方へ相対移動することにより、当該第1作動部材22の各傾斜規制面22bが支持筒体25の傾斜案内面25d及び傾斜当接面25eに対して上方へ退避し、その結果第2作動部材23の各傾斜係合面23cから傾斜規制面22bが離脱して、当該各傾斜係合面23cが傾斜案内面25d側に乗り移る。乗り移った後、第2作動部材23の各傾斜係合面23cは、係合部材21を経て作用する圧縮ばね26の付勢力により第2作動部材23がその傾斜係合面23cを支持筒体25側の傾斜案内面25d及び傾斜当接面25eに沿って摺接させつつさらに回転する。この回転動作により、第2作動部材23の各係合突条23bが支持筒体25の深溝部25cからこれに隣接する浅溝部25gの下側に移動する。この状態が図19に示されている。
その後、係合部材21と第1及び第2作動部材22,23が圧縮ばね26の付勢力によりさらに上方へ戻されることにより、第2作動部材23の各傾斜係合円23cが支持筒体25の傾斜当接面25eに当接して浅溝部25g内へ進入不能となる。このため、当該第2作動部材23の上方への移動が規制され、またこれにより第1作動部材22に対する圧縮ばね26の付勢力が作用しなくなる結果、当該第1作動部材22及び押しボタン24の上動が終了する。
このように第2作動部材23の各傾斜係合面23cが支持筒体25の傾斜当接面25eに当接して当該第2作動部材23ひいては係合部材21の上方への移動が規制されることにより、そのロックピン部21がロック孔11b内に進入した状態に維持される。この状態が図18に示されている。
こうして押しボタン24及び第1作動部材22が上下に1往復されると、アンロック状態からロック状態に切り換えられ、これにより車輪支持体11及び車輪10の自由回転状態がロックされて、当該車輪10が直進向きに固定される。当該ロック機構20は、車輪支持体11に設けた2つのロック孔11b,11bのうち、図2において右側のロック孔11bに係合部材21のロックピン部21cが挿入されて車輪10をロックする場合、若しくは車輪支持体11が旋回軸部11cを中心にして前後方向に180°反転した場合には図2において左側のロック孔11bにロックピン部21cが挿入されて車輪10をロックする場合に同様に機能する。
【0013】
次に、車輪10のロック状態を解除する場合には、図20に示すように再度押しボタン24を圧縮ばね26に抗して押し下げ操作する。すると前記ロック操作の場合と同様、第1作動部材22が下動してその各傾斜規制面22bで各傾斜係合面23cが下方へ押されることにより、各係合突条23bが支持筒体25の突条25fに対して相対的に下動する。図21に示すように第2作動部材23の各傾斜係合面23cが突条25fの先端に至ると、圧縮ばね26の付勢力により第2作動部材23は図示左側に回転して、その各係合突条23bが浅溝部25gに隣接する深溝部25cの下側に移動する。この状態が図22に示されている。その後、押しボタン24の押し下げ操作を解除すると、圧縮ばね26の付勢力によって係合部材21と第1及び第2作動部材22,23が上方へ変位する。この段階では、第2作動部材23の各係合突条23bが支持筒体25の深溝部25cの下側に移動しているので、当該各係合突条23bを深溝部25c内に進入させつつ、第1及び第2作動部材22,23が支持筒体25に対して上動し、これにより係合部材21のロックピン部21cがロック孔11bから抜き出されて車輪10のロック状態が解除される。この状態が図23及び図24に示されている。図23は図13と同じアンロック状態を示している。但し、同じアンロック状態であっても、図24と図14を比較すれば明らかなように、図24の段階では、第2作動部材23が図14に示す段階よりも左側に移動して隣接する2つの深溝部25c,25c間に相当する角度だけ回転した状態となっている。
以上のように構成した左右一対のロック機構20,20によれば、押しボタン24,24を押し下げ操作することにより、車輪10の向きを直進向きに固定したロック状態と、車輪支持体11が水平回転自在で本体部2の進行方向に倣って車輪10の向きが何ら規制を受けることなく変更されるアンロック状態とに簡単に切り換えることができる。
次に、図1に示すように本体部2の前部には、支持脚部30が設けられている。この支持脚部30は地面に対して本体部2の前部を支持するもので、その下端部に円板形の接地板31を備えている。図示するようにこの接地板31の下面側(接地面側)は、概ね椀形に湾曲した形状を有している。この椀形の接地板31により地面の凹凸をスムーズに通過することができる。この接地板31はその中心で水平回転自在に設けられている。地面に接地される接地板31が水平回転自在であるので、本体部2の旋回動作をスムーズに行うことができる。
【0014】
以上説明した本実施形態の刈り込み機1によれば、本体部2の後部に左右一対の車輪10,10が設けられている。この両車輪10,10は、それぞれ水平回転可能な車輪支持体11に支持されるとともに、それぞれについてロック機構20を備えている。このため、ロック機構20をアンロック側に操作した状態(アンロック状態)では、両車輪10,10は、その転動方向を任意に変更することができ、従って使用者の操作により本体部2の左方又は右方へ旋回させる場合に、両車輪10,10に横方向の無理な力が付加されることなくその場で旋回軸部11cを中心にして水平回転することにより当該両車輪10,10が本体部2にスムーズに追従されることから、使用者は楽に本体部2を旋回操作することができ、この点で当該刈り込み機1の操作性を向上させることができる。旋回操作性の向上により、例えば壁際や敷石回りに沿って刈り込みを行う場合の作業性を高めることができる。
一方、左右のロック機構20,20をロック側に操作すると(ロック状態)、左右の車輪支持体11,11が回転不能に固定されて、左右の車輪10,10が直進向きに固定される。この状態では、本体部2の直進性が確保され、例えば車輪10が小石に乗り上げた場合等であっても車輪10が直進向きに固定されていることから本体部2をそのまま直進させることができ、この点で当該刈り込み機1の操作性を確保することができる。
このように本実施形態の刈り込み機1によえば、左右のロック機構20,20をロック、アンロック操作することにより車輪10,10の向きを直進向きに固定した状態と、任意の方向に向きを変更可能な首振り状態とに切り換えることができるので、従来の刈り込み機に比してその操作性を格段に高めることができる。
また、ロック機構20のロック状態とアンロック状態の切り換えは、押しボタン24を押し操作するのみで足り、簡単な操作で確実な切り換えを行うことができる。
【0015】
以上説明した実施形態には、種々変更を加えることができる。例えば、本体部2の後部に設けた車輪(後輪)10,10についてロック機構20,20を備える構成を例示したが、前輪について同様のロック機構を備える構成としてもよい。
また、車輪支持体11は旋回軸部11cを介して1回転可能な構成を例示したが、一定の範囲、例えば左右に45°ずつ合計90°の範囲でのみ回転可能としてもよい。
さらに、車輪支持体11の旋回軸部11cの周囲二等分位置に2つのロック孔11b,11dを設けて、この二等分位置で車輪10の向きを固定する構成を例示したが、このロック孔の数(ロック位置)は前進用の一つとしてもよく、逆に旋回軸部11cの周囲に三つ以上のロック孔を設けて、より多くの向きに車輪を固定可能な構成としてもよい。
また、左右個別にロック、アンロックするロック機構20,20を例示したが、例えば左右の押しボタン24,24を連結バーを経て連結することにより、左右のロック機構を1操作でロック、アンロックする構成としてもよい。また、左右の車輪支持体11,11を連結部材で連結して相互に一体で左右に首振り可能とすることにより、左右の車輪10,10を一つのロック機構でロック、アンロックすることができる。
また、本体部2側にロック機構20を設ける構成を例示したが、車輪支持体にロック機構を設け、このロック機構のロックピン部を本体部側に設けたロック孔に進退させて、ロック、アンロックの切り換えを行う構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係るロック機構を備えた刈り込み機の全体側面図である。
【図2】車輪及び車輪支持体周辺の側面図である。本図では、車輪支持体及びフレームの一部が縦断面で示されている。
【図3】図2の(3)-(3)線断面矢視図であって、ロック機構の横断面図である。
【図4】支持筒体単体の縦断面図である。
【図5】支持筒体単体を、図4の矢印(5)方向から見た下面図である。
【図6】支持筒体の下部内周面の展開図である。
【図7】第1作動部材及び押しボタンの縦断面図である。
【図8】第1作動部材を、図7の矢印(8)方向から見た下面図である。
【図9】第1作動部材の下部外周面の展開図である。
【図10】第2作動部材単体の縦断面図である。
【図11】第2作動部材を、図10の矢印(11)方向から見た下面図である。
【図12】第2作動部材の下部外周面の展開図である。
【図13】ロック機構及びロック孔の縦断面図である。本図は、アンロック状態を示している。
【図14】ロック機構において、支持筒体に対する第1及び第2作動部材の位置関係を示す図である。それぞれの部材が展開図で示されている。本図は、図13と同様アンロック状態を示している。
【図15】ロック機構及びロック孔の縦断面図である。本図は、アンロック状態から第1作動部材が押し下げ操作された状態を示している。
【図16】図15に対応する図であり、ロック機構において、支持筒体に対する第1及び第2作動部材の位置関係を示す図である。それぞれの部材が展開図で示されている。本図は、図15と同様アンロック状態から第1作動部材が押し下げ操作されて、第2作動部材の各係合突条が支持筒体の深溝部から抜き出された状態を示している。
【図17】ロック機構において、支持筒体に対する第1及び第2作動部材の位置関係を示す図である。それぞれの部材が展開図で示されている。本図は、図16に示す状態からそのまま第2作動部材が僅かに回転して各係合突条が深溝部の直下から傾斜当接面の直下に至る途中で第1作動部材の傾斜規制面により位置保持された状態を示している。
【図18】ロック機構及びロック孔の縦断面図である。本図は、ロック状態を示している。
【図19】図18に対応する図であり、ロック機構において、支持筒体に対する第1及び第2作動部材の位置関係を示す図である。それぞれの部材が展開図で示されている。本図は、図18と同様ロック状態を示している。本図は、第2作動部材の各係合突条が支持筒体の傾斜当接面に当接して、当該第2作動部材の上方への移動が阻止された状態を示している。
【図20】ロック機構及びロック孔の縦断面図である。本図は、ロック状態から第1作動部材が押し下げ操作された状態を示している。
【図21】図20に対応する図であり、ロック機構において、支持筒体に対する第1及び第2作動部材の位置関係を示す図である。それぞれの部材が展開図で示されている。本図は、図20と同様ロック状態から第1作動部材が押し下げ操作されて、第2作動部材の各係合突条が支持筒体の傾斜当接面から離間した状態を示している。
【図22】ロック機構において、支持筒体に対する第1及び第2作動部材の位置関係を示す図である。それぞれの部材が展開図で示されている。本図は、図21に示す状態からそのまま第2作動部材が僅かに回転して各係合突条が傾斜当接面の直下から深溝部の直下に至る途中で第1作動部材の傾斜規制面により位置保持された状態を示している。
【図23】ロック機構及びロック孔の縦断面図である。本図は、アンロック状態を示している。
【図24】図23に対応する図であり、ロック機構において、支持筒体に対する第1及び第2作動部材の位置関係を示す図である。それぞれの部材が展開図で示されている。本図は、各係合突条が支持筒体の深溝部に進入して第2作動部材が上動した状態を示している。また、図14と比較すると、本図の場合は、第2作動部材が隣接する2つの深溝部に相当する角度だけ回転して左側に変位した状態となっている。
【符号の説明】
【0017】
1…刈り込み機
2…本体部
2a…刈り込み刃、2b…電動モータ、2c…フレーム、2d…支持孔
2e…支持ボス部、2g…係合凹部、2f…フランジ部
3…ハンドル部、3a…グリップ部、3b…スイッチレバー
4…ダストボックス
10…車輪
11…車輪支持体
11a…台座部、11b…ロック孔(前進用)、11c…旋回軸部
11d…ロック孔(後退用)
12…車軸
13…止め輪
14,15…摺動部材
20…ロック機構
21…係合部材、21a…支軸部、21b…大径部、21c…ロックピン部
22…第1作動部材
22a…案内凸部、22b…傾斜規制面
23…第2作動部材
23a…頭部、23b…係合突条、23c…傾斜係合面、23d…支持孔
24…押しボタン
25…支持筒体
25a…支持孔部、25b…係合爪部、25c…深溝部、25d…傾斜案内面
25e…傾斜当接面、25f…突条、25g…浅溝部
26…圧縮ばね
30…支持脚部
31…接地板



【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈り込み刃を備えた本体部と、該本体部を支持する車輪を備えた刈り込み機であって、前記車輪は、車輪支持体に回転自在に支持されており、該車輪支持体はその旋回軸部を介して前記本体部に支持されて前記車輪の向きを水平方向に旋回可能であり、前記本体部と前記車輪支持体との間に、当該車輪支持体の旋回動作を規制して前記車輪を少なくとも直進向きに固定するための旋回ロック機構を備えた刈り込み機。
【請求項2】
請求項1記載の刈り込み機であって、前記ロック機構は、ロックピンを前記車輪支持体に係脱させてその旋回動作を規制するロック状態と規制しないアンロック状態にとに切り換え可能であり、前記ロックピンの前記車輪支持体に対する係脱動作を、ロックボタンの操作により前記ロックピンを軸方向に往復動させて前記ロック状態と前記アンロック状態を交互に切り換え可能な構成とした刈り込み機。
【請求項3】
請求項1又は2記載の刈り込み機であって、左右の車輪のそれぞれについて旋回ロック機構を備えて左右個別にロック、アンロック可能な構成とした刈り込み機。
【請求項4】
刈り込み刃を備えた本体部と、該本体部の後部を支持する車輪と、該本体部の前部に支持脚部を備え、該支持脚部はその下端部に接地用の接地板を水平方向に回転可能な状態で備えた刈り込み機。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2008−118890(P2008−118890A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305167(P2006−305167)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】