説明

刈取収穫機の分草装置

【課題】菜種の如き茎稈の場合でも、絡み合いの解消精度がよい分草を、脱粒を回避しやすい状態で行なわせることができる刈取収穫機の分草装置を提供する。
【解決手段】植立茎稈に対して分草作用するよう機体上下向き姿勢で設けた分草杆31を備えてある。分草杆31の下端側を回転自在および機体上下方向に移動自在に支持する支点手段33を備えてある。分草杆71の支点手段33に連結する部位よりも分草杆上端側に位置する部位で分草杆71と連結する分草杆連結点45aを有し、この分草杆連結点45aが機体前後方向および機体上下方向に回転軌跡T1を描いて移動する状態で分草杆71を駆動する分草杆駆動機構40を備えてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取収穫機の分草装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動自在な分草杆を備えた分草装置として、従来、たとえば特許文献1に記載されたものがあった。
特許文献1に記載された分草装置では、分草杆としてのスイングデバイダ4aを前端に位置する左右向き軸芯P1まわりに揺動自在に備え、第2伝動軸S2の端部に装着されたクランクアーム16、及びクランクアーム16とスイングデバイダ4aとに連結された連動ロッド17を備え、スイングデバイダ4aがクランクアーム16の回転によって揺動駆動される。(各符号は、公報に記載されたものである。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−23543号公報(段落〔0014〕、〔0017〕、図1,2,6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の技術を適用した分草装置にあっては、茎稈によっては、分草不良および脱粒が発生しやすくなっていた。
つまり、従来の技術を適用した分草装置では、分草杆が機体横向きの軸芯まわりで前後揺動するだけの分草運動を行なうことから、植立茎稈を機体前方向きに押し分けることによる分草作用を得やすいが、植立茎稈を機体上方向きに押し分けることによる分草作用を得にくく、菜種など着粒部での絡み合いが著しい茎稈の場合、絡み合いが解消されにくくなっていた。また、絡み合いの解消が不十分なままで押し操作されてち切れや脱粒が発生しやすくなっていた。
【0005】
本発明の目的は、菜種の如き茎稈の場合でも、絡み合いの解消精度がよい分草を得やすい刈取収穫機の分草装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明による刈取収穫機の分草装置は、
植立茎稈に対して分草作用するよう機体上下向き姿勢で設けた分草杆を備え、
前記分草杆の下端側を回転自在および機体上下方向に移動自在に支持する支点手段を備え、
前記分草杆の前記支点手段に連結する部位よりも分草杆上端側に位置する部位で前記分草杆と連結する分草杆連結点を有し、この分草杆連結点が機体前後方向および機体上下方向に回転軌跡を描いて移動する状態で前記分草杆を駆動する分草杆駆動機構を備えてある。
【0007】
本第1発明の構成によると、分草杆が機体前方向きに移動して茎稈を機体前方向きに押し分ける分草作用を行なわせることができるのみならず、分草杆の機体上方向きの移動を精度よく行なわせて茎稈を機体上方向きに押し分ける分草作用を効果的に行なわせることができ、全体として効果的な分草作用を発揮させることができる。
【0008】
したがって、菜種の如き茎稈の場合でも、機体前方向きの押し分けと、機体上方向きの効果的な押し分けとによる分草作用によって絡み合いの解消を精度よく行なわせ、分草後の処理を良好に行わせることができ、かつ絡み合いの解消が不十分なままでの押し操作に起因したち切れや脱粒を回避しやすい。
【0009】
本第2発明は、前記分草杆駆動機構を、前記分草杆連結点の機体前方向きの移動速度が低速になり、前記分草杆連結点の機体後方向きの移動速度が高速になる状態で前記分草杆を駆動するよう構成してある。
【0010】
分草杆は、機体前方向きに移動して茎稈に分草作用する。このとき、分草杆は茎稈に対して突入側に移動して茎稈が分草杆に対する大きな移動抵抗になりやすいことにより、分草杆が高速移動すると、茎稈の大きな振動が発生しやすくなる。分草杆は機体後方向きに移動して分草作用開始位置に戻る。このとき、分草杆は茎稈に対して後退側に移動して茎稈が分草杆に対する大きな移動抵抗になりにくいことにより、分草杆が高速移動しても、茎稈の大きな振動が発生しにくい。
【0011】
本第2発明の構成によると、分草杆が機体前方向きに低速移動し、機体後方向きに高速移動することにより、茎稈の振動発生を抑制しながら、かつ分草杆が分草作用開始位置に高速で復帰して、刈取収穫機が単位走行距離を移動する間に分草杆が分草作用する頻度を大にしながら分草杆による分草を行なわせることができる。
【0012】
したがって、菜種の如き茎稈の場合でも、茎稈の振動を発生しにくくしながら、かつ分草杆が適切な頻度で分草作用する状態で分草杆による分草を行なわせ、絡み合いが良好に解消されて分草後の処理を行わせやすくでき、しかも脱粒による穀粒損失を抑制できる。
【0013】
本第3発明は、前記分草杆駆動機構を、前記回転軌跡のうちの前記分草杆連結点の機体前方向き移動に対応する部分が直線になり、前記回転軌跡のうちの前記分草杆連結点の機体後方向き移動に対応する部分が機体上方向きに突の湾曲線になる状態で前記分草杆を駆動するよう構成してある。
【0014】
本第3発明の構成によると、分草杆駆動機構に構造簡単な伝動構造によって駆動力を入力しても、分草杆が茎稈の振動を発生しにくくしながら分草作用するように、かつ分草杆の分草作用頻度が適切になるように分草杆を駆動することができる。
つまり、分草杆駆動機構の分草杆連結点の回転軌跡のうちの分草杆機体前方向き移動に対応する部分が直線になり、分草杆連結点の回転軌跡のうちの分草杆機体後方向き移動に対応する部分が機体上方向きに突の湾曲線になる状態で分草杆が分草杆駆動機構によって駆動されるものだから、分草杆を機体前方向きに移動させるための時間と分草杆を機体後方向きに移動させるための時間とを同一にして分草杆を駆動しても、分草杆の機体前方向きの移動速度を低速にでき、分草杆の機体後方向きの移動速度を高速にできる。
分草杆は機体前方向きに移動して茎稈に対して分草作用するのであり、このとき、分草杆は茎稈に対して突入側に移動して茎稈が分草杆に対する大きな移動抵抗になりやすいことにより、分草杆が高速移動した場合、茎稈の大きな振動が発生しやすくなる。分草杆は機体後方向きに移動して分草作用開始位置に戻るのであり、このとき、分草杆は茎稈に対して後退側に移動して茎稈が分草杆に対する大きな移動抵抗になりにくいことにより、分草杆が高速移動しても、茎稈の大きな振動が発生しにくい。
【0015】
本第3発明の構成によると、分草杆を機体前方向きに低速移動させ、機体後方向きに高速移動させることができることにより、茎稈の振動発生を抑制しながら、かつ分草杆を適切な分草作用頻度で茎稈に分草作用するようにしながら分草杆による茎稈の分草を行なわせることができる。
【0016】
したがって、分草杆駆動機構に等速回転の駆動力を入力する構造簡単な伝動手段を採用しても、菜種の如き茎稈の場合でも、茎稈の振動を発生しにくくしながら分草杆を適切な分草作用頻度で茎稈に作用させ、絡み合いが良好にほぐれた状態に分草できて分草後の処理を行わせやすでき、しかも脱粒による穀粒損失を抑制できる。
【0017】
本第4発明では、前記分草杆の機体上方向き面が、機体上向きに突の湾曲面である。
【0018】
本第4発明の構成によると、分草杆は上向きに突の湾曲面によって茎稈に接触して、茎稈に折れやち切れを発生しにくくしながら分草作用するようにできる。
【0019】
したがって、菜種の如き茎稈の場合でも、茎稈の分草杆との接触による折れやち切れに起因した損失の発生を抑制しながら分草処理することができる。
【0020】
本第5発明は、前記分草杆が、機体後方側ほど機体横外側に位置するよう機体前後方向に対して傾斜した姿勢で備えられている。
【0021】
本第5発明の構成によると、分草杆の前端側で絡み合いのほぐしを受けた茎稈が分草杆に沿って分草杆の後端側に移動するに伴い、その茎稈を分草杆の後端側によって機体横外側に押圧操作させ、分草杆の前端側でほぐしを受けて分離し合った茎稈が分草杆の後端側で株元側まで分離するようにほぐしを行なわせることができる。
【0022】
したがって、ほぐしが株元側まで至る優れた分草を行なわせ得る分草装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】刈取収穫機の全体を示す左側面図である。
【図2】刈取収穫機の全体を示す平面図である。
【図3】刈取収穫機の全体を示す右側面図である。
【図4】分草装置を示す側面図である。
【図5】分草杆及び分草杆駆動機構を示す側面図である。
【図6】図5のVI−VI断面矢視図である。
【図7】分草杆駆動機構における分草杆連結点の回転軌跡を示す説明図である。
【図8】分草杆駆動機構の連結リンクの長さ調節が行なわれた状態を示す説明図である。
【図9】分草杆駆動機構の回転体におけるリンク連結位置の調節が行なわれた状態を示す説明図である。
【図10】分草杆駆動機構の揺動リンクの長さ調節が行なわれた状態を示す説明図である。
【図11】第2実施形態を有した刈取前処理装置が備えられた刈取収穫機の全体を示す右側面図である。
【図12】第2実施形態を有した刈取前処理装置が備えられた刈取収穫機の全体を示す平面図である。
【図13】第2実施形態を有した刈取前処理装置を示す左側面図である。
【図14】第3実施形態を有した刈取前処理装置が備えられた刈取収穫機の全体を示す平面図である。
【図15】第3実施形態を有した刈取前処理装置を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の実施の形態に係る分草装置が装備された刈取収穫機の全体を示す左側面図である。図2は、本発明の実施の形態に係る分草装置が装備された刈取収穫機の全体を示す平面図である。図3は、本発明の実施の形態に係る分草装置が装備された刈取収穫機の全体を示す右側面図である。これらの図に示すように、この刈取収穫機は、運転座席20を有した運転部2が装備された走行機体1を備え、走行機体1の機体フレーム10の後部側に走行機体横方向に並べて設けられた脱穀装置4と袋詰め部13とを備え、脱穀装置4の前部にフィーダ60が走行機体横向き軸芯Xまわりに上下揺動自在に連結された刈取前処理装置6を備えて構成してある。
【0025】
この刈取収穫機は、菜種などの収穫作業を行う。
つまり、走行機体1は、左右一対のクローラ式の走行装置11,11を備え、運転座席20の下方に位置するエンジン3からの駆動力によって左右一対の走行装置11,11を駆動して自走する。
【0026】
刈取前処理装置6は、フィーダ60の前端部に連設された前処理フレーム61を備え、フィーダ60が昇降シリンダ12によって軸芯Xまわりに上下に揺動操作されることにより、前処理フレーム61が地面近くに下降した下降作業状態と、前処理フレーム61が地面から高く上昇した上昇非作業状態とに昇降する。
【0027】
刈取前処理装置6を下降作業状態にして走行機体1を走行させると、刈取前処理装置6は、植立茎稈を刈取り、刈取茎稈の株元から穂先までの全体をフィーダ60によって脱穀装置4の扱室に送り込む。脱穀装置4は、扱室に投入された刈取茎稈を回動する扱胴によって脱穀処理し、脱穀粒を揚穀装置21によって穀粒袋詰め部13のホッパー形の穀粒タンク14に供給する。
【0028】
刈取前処理装置6について詳述する。
刈取前処理装置6の前処理フレーム61は、フィーダ60の前端部に連結している後壁61Bと、この後壁61Bの走行機体横方向での両端部に後端部が連結している横壁61Cと、後壁61B及び左右一対の横壁61C,61Cの下部にわたって連結しているプラットホーム61Aとを備えている。
【0029】
刈取前処理装置6は、フィーダ60及び前処理フレーム61を備える他、前処理フレーム61の内部に駆動自在に設けられた横送りオーガ65、プラットホーム61Aの前端部に駆動自在に設けられたバリカン形の刈取装置63、前処理フレーム61の左右の横壁61Cの前端部に連設された分草具62、前処理フレーム61の基端側の上部から走行機体前方向きに上下揺動操作自在に延出した左右一対の支持アーム64Aの先端部に駆動自在に支持された回転リール64、前処理フレーム61の走行機体横方向での左外側に設けられた本発明の実施の形態に係る分草装置30を備えている。
【0030】
分草具62及び分草装置30は、植立茎稈を刈取対象の植立茎稈と非刈取対象の植立茎稈とに分草する。回転リール64は、刈取対象の植立茎稈の穂先側を前処理フレーム61の内部に掻き寄せる。刈取装置63は、刈取対象の植立茎稈の刈取りを行なう。横送りオーガ65は、刈取茎稈をフィーダ60の前側に移送し、フィーダ60の前側に到達した刈取茎稈を横送りオーガ65が一体回転自在に備える掻き送りバー65aによってフィーダ60の搬送ダクトの前端部内に送り込む。フィーダ60は、搬送ダクトに送り込まれた刈取茎稈を搬送ダクトの内部に位置する無端回動形のコンベヤ60aによって脱穀装置4の前端部に揚送して刈取茎稈の株元から穂先までの全体を脱穀装置4の扱室に送り込む。
【0031】
穀粒袋詰め部13について説明する。
図2,3に示すように、袋詰め部13は、前記穀粒タンク14を備える他、この穀粒タンク14の底部に走行機体前後方向に並べて設けられた二つの穀粒吐出筒16,16、穀粒タンク14の下方に設けた袋支持バー17及び袋受けデッキ18、袋受けデッキ18の走行機体横方向での外側に設けられた作業台15を備えている。
【0032】
籾袋の袋口を穀粒吐出筒16に装着し、籾袋の袋口の両端部を袋支持バー17に装着して、籾袋を袋支持バー17によって吊り下げ支持させるともに袋受けデッキ18によって受け止め支持させることにより、穀粒タンク14に貯留された脱穀粒が穀粒吐出筒16から籾袋に排出され、脱穀粒の袋詰めを行なうことができる。
【0033】
作業台15は、機体フレーム10に上下揺動自在に支持されており、上昇格納姿勢と下降使用姿勢とに切り換えることができる。
【0034】
分草装置30について詳述する。
図4は、分草装置30を示す側面図である。この図に示すように、前処理フレーム61の走行機体横方向での左横外側に設けた走行機体上下向きの分草杆31を備え、この分草杆31の長手方向での中間部に走行機体側面視でヘ字形の連結リンク41が連結している分草杆駆動機構40を備えて構成してある。
【0035】
分草杆31は、分草杆31の下端側に支持作用する支点手段33と、前記分草杆駆動機構40の連結リンク41とにより、分草杆31の上端側ほど走行機体後方側に位置した後倒れ傾斜状態での機体上下向き姿勢で支持されている。
【0036】
支点手段33は、分草具62の横側部に固定された支軸33aと、この支軸33aに回転自在に支持されたローラ33bとによって構成してある。ローラ33bは、分草杆31の下端部に連結板34を付設することによって設けた連結長孔35に転動自在に係入している。連結長孔35は、後端側ほど走行機体上方側に位置した後上がり傾斜の状態で配置されており、支点手段33は、分草杆31の下端側を回転自在に、および走行機体上下方向に移動自在に支持している。
【0037】
分草杆駆動機構40は、前記連結リンク41を備える他、この連結リンク41の中間部に連結ピン42を介して一端側が連結された揺動リンク43と、連結リンク41の分草杆31に連結している側とは反対側の端部に連結された回転体44とを備えて構成してある。
【0038】
分草杆31は、支点手段33に連結している部位よりも分草杆上端側に位置した部位にブラケットを付設して設けた連結部32を備えている。
連結リンク41は、分草杆31の連結部32に連結ピン45を介して一端側が連結された分草杆側ロッド41aと、回転体44のこれの回転軸芯44aと偏倚した部位に連結ピン46を介して一端側が連結された回転体側ロッド41bと、この回転体側ロッド41bの他端側と分草杆側ロッド41aの他端側とを連結している連結体41cとによって構成してある。連結体41cは、揺動リンク43が連結する部材になっている。揺動リンク43の連結リンク41に連結している側とは反対側の端部は、前処理フレーム61の横壁61Cの外面側に設けた支持部47に連結ピン48を介して連結されている。連結リンク41と分草杆31の連結部32とは、連結ピン45が備える走行機体横向き軸芯45aまわりに相対回転に連結している。連結リンク41と揺動リンク43とは、連結ピン42が備える走行機体横向き軸芯42aまわりに相対回転自在に連結している。連結リンク41と回転体44とは、連結ピン46が備える走行機体横向き軸芯46aまわりに相対回転自在に連結している。揺動リンク43は、連結ピン48が備える走行機体横向き軸芯48aまわりに支持部47に対して揺動する。
【0039】
回転体44の回転支軸49は、前処理フレーム61の横壁61Cの外面側に設けた支持部材50に回転自在に支持されている。回転支軸49は、この回転支軸49に一体回転自在に設けたベルトプーリ51aを備えたベルト伝動機構51、このベルト伝動機構51の入力軸51bと横送りオーガ65の回転支軸65bとに巻回された伝動チェーン52を介して横送りオーガ65の駆動力を伝達されて等速回転で駆動される。
【0040】
図5は、分草杆31及び分草杆駆動機構40を示す側面図である。図5に示す回転軌跡T1は、連結リンク41が分草杆31の連結部32に連結している分草杆連結点としての走行機体横向き軸芯45aの回転軌跡を示している。図5に示す回転軌跡T2は、分草杆31の上端31cの回転軌跡を示している。
図4,5に示すように、分草杆駆動機構40は、四節回転連鎖近似直線連動機構を構成しており、回転体44を等速回転の駆動力によって駆動して、連結リンク41の分草杆連結点としての走行機体横向き軸芯45aが回転軌跡T1を描くように連結リンク41を回転体44によって揺動駆動し、連結リンク41の駆動力を分草杆31に伝達する。
【0041】
図7は、分草杆駆動機構40の分草杆連結点としての機体横向き軸芯45aの回転軌跡T1を示す説明図である。この図及び図5に示すように、機体横向き軸芯45aの回転軌跡T1は、この回転軌跡T1のうちの機体横向き軸芯45aの走行機体前方向き移動に対応する部分Tfが直線になり、回転軌跡T1のうちの機体横向き軸芯45aの走行機体後方向き移動に対応する部分Trが機体上方向きに突の湾曲線になっている。
回転軌跡T1におけるD−E間において、分草杆31を約20度の角度で機体前方向きに移動させる。E−A間において、分草杆31にややすくい上げ機能を持たせる。A―B間において、分草杆31をなめらかに持ち上げて分離作用を発揮させる。B−C間において、分草杆31を次第に平行に移動させる。C−D間において、分草杆31をゆっくり逃がす。
【0042】
これにより、分草杆駆動機構40は、分草杆31の上端31cが分草杆31の下端側を支点側にして回転軌跡T2を描いて走行機体前後方向及び走行機体上下方向に移動するように、回転軌跡T2のうちの分草杆上端31cの走行機体前方向き移動に対応する部分が直線になり、回転軌跡T2のうちの分草杆上端31cの走行機体後方向き移動に対応する部分が走行機体上方向きに突の湾曲線になるように分草杆31を駆動する。
【0043】
機体横向き軸芯45a及び分草杆上端31cが走行機体後方向きに移動する距離が走行機体前方向きに移動する距離よりも大になることにより、かつ回転体44が等速回転で駆動されることにより、分草杆駆動機構40は、機体横向き軸芯45a及び分草杆上端31cの走行機体前方向きの移動速度が低速になり、機体横向き軸芯45a及び分草杆上端31cの走行機体後方向きの移動速度が高速になる状態で分草杆31を駆動する。
【0044】
したがって、分草装置30は、分草杆31が分草作用開始位置S(図5参照)から機体前方向きに移動して植立茎稈に対して分草作用する場合、分草杆31が植立茎稈に突入して植立茎稈が分草杆31に対する大きな移動抵抗になりやすいことから、分草杆31が低速で植立茎稈に突入するように分草杆31を分草杆駆動機構40によって低速駆動し、分草杆31を植立茎稈の大きな振動を発生しにくくしながら植立茎稈に分草作用させて植立茎稈を刈取り対象の植立茎稈と非刈取り対象の植立茎稈とに分草する。
【0045】
分草装置30は、分草杆31が機体後方向きに移動して分草作用開始位置Sに戻る場合、分草杆31が茎稈に対して後退側に移動して植立茎稈が分草杆31に対する大きな移動抵抗になりにくくて植立茎稈の振動を発生させにくいことから、分草杆31が高速で分草作用開始位置Sに復帰するように分草杆31を分草杆駆動機構40によって高速駆動して、走行機体1が単位走行距離を移動する間に分草杆31が分草作用する頻度が菜種などの植立茎稈に適応した頻度になる状態で分草杆31を植立茎稈に分草作用させる。
【0046】
分草杆31は、先細り形状の前端部31aを備え、この前端部31aの先細り形状により、分草杆31の前端部による植立茎稈の押し倒しを発生させないで絡み合った植立茎稈に突入していく。
【0047】
図6は、図5のVI−VI断面矢視図である。この図に示すように、分草杆31は、機体上方向きに突の湾曲面になった機体上方向き面31bを備えるように円形筒体の半割り部分によって構成してあり、機体上方向き面31bによる植立茎稈との接触による茎稈の折れやち切れを発生しにくくしながら植立茎稈に分草作用する。
【0048】
図2に示すように、分草杆31は、走行機体後方側ほど走行機体横外側に位置するよう走行機体前後方向に対して傾斜した姿勢で支持されている。
これにより、分草杆31の前端側で絡み合いのほぐしを受けた植立茎稈が分草杆31に沿って分草杆31の後端側に移動するに伴い、その植立茎稈を分草31の後端側によって機体横外側に押圧操作させ、分草杆31の前端側でほぐしを受けて分離し合った植立茎稈が分草杆31の後端側で株元側まで分離するようにほぐしを行なわせることができる。
【0049】
図1に示すように、分草装置30は、分草杆31と、前処理フレーム61から延出した支持部材70とにわたって張り渡されたカバー71を備えている。このカバー71は、可撓性のシート材によって構成してあり、分草杆31の動きによって湾曲した状態に変形したり伸展状態に戻ったりして分草杆31の動きを可能にしながら、分草杆駆動機構40への茎稈の入り込みを防止するように分草杆駆動機構40を覆っている。
【0050】
分草杆駆動機構40は、連結リンク41の分草杆側ロッド41aに設けた伸縮調節部41d、揺動リンク43に設けた伸縮調節部43a、回転体44に設けた連結位置調節手段44bを備えている。
【0051】
分草杆側ロッド41a及び揺動リンク43の伸縮調節部41d,43aは、ターンバックル形の伸縮ネジを利用して構成してある。回転体44の連結位置調節手段44aは、回転体44にこれの半径方向に並べて設けた複数の連結孔44cを利用して、回転体44の連結リンク41が連結する位置を変更するものである。
【0052】
図8は、分草杆連結機構40の連結リンク41における分草杆側ロッド41aの長さ調節が行なわれた状態を示す説明図である。この図に示すように、分草杆駆動機構40は、連結リンク41の分草杆側ロッド41aの長さが変更されることにより、連結リンク41の分草杆連結点としての軸芯45aの回転軌跡T1を走行機体前後方向に位置変更し、かつこの回転軌跡T1の上下向き角度を変更する。すると、分草杆31の上端の回転軌跡T2が連結リンク31の回転軌跡T1の変更と同様に変更される。
【0053】
図9は、分草杆駆動機構40の回転体44におけるリンク連結位置としての軸芯46aの調節が行なわれた状態を示す説明図である。この図に示すように、分草杆駆動機構40は、回転体44の連結リンク41が連結する位置の変更が行なわれることにより、連結リンク41の分草杆31が連結する点の回転軌跡T1を径が大小異なるものに変更する。すると、分草杆31の上端の回転軌跡T2が連結リンク41の回転軌跡T1の変更と同様に変更される。
【0054】
図10は、分草杆駆動機構40の揺動リンク43の長さ調節が行われた状態を示す説明図である。この図に示すように、分草杆駆動機構40は、揺動リンク43の長さが変更されることにより、連結リンク41の分草杆31が連結する点の回転軌跡T1を走行機体の前後及び上下方向に変更する。すると、分草杆31の上端の回転軌跡T2が連結リンク41の回転軌跡T1の変更と同様に変更される。
【0055】
図11は、第2実施形態を有した刈取前処理装置6が備えられた刈取収穫機を示す右側面図である。図12は、第2実施形態を有した刈取前処理装置6が備えられた刈取収穫機を示す平面図である。図13は、第2実施形態を有した刈取前処理装置6を示す左側面図である。これらの図に示すように、第2実施形態を備えた刈取前処理装置6は、前処理フレーム61の走行機体横方向での右横外側に設けた分草装置30を備え、前処理フレーム61の走行機体横方向での左横外側に走行機体上下向きに設けたバリカン形の縦刈取装置75を備えている。
【0056】
第2実施形態を有した刈取前処理装置6が備える分草装置30は、第1実施形態を有した刈取前処置装置6が備える分草装置30と同じ構成を備えている。
【0057】
第2実施形態を有した刈取前処理装置6が備える縦刈取装置75は、刈取対象の植立茎稈と非刈取対象の植立茎稈との絡み合いを切断によって解消する。
【0058】
図14は、第3実施形態を有した刈取前処理装置6が備えられた刈取収穫機の全体を示す平面図である。図15は、第3実施形態を有した刈取前処理装置6を示す左側面図である。これらの図に示すように、第3実施形態を備えた刈取前処理装置6は、前処理フレーム61の走行機体横方向での右横外側に設けた分草装置30を備え、前処理フレーム61の走行機体横方向での左横外側に設けた分草装置30及び走行機体上下向きのバリカン形の縦刈取装置75を備えている。
【0059】
第3実施形態を有した刈取前処理装置6が備える左右の分草装置30は、第1実施形態を有した刈取前処置装置6が備える分草装置30と同じ構成を備えている。
【0060】
第3実施形態を有した刈取前処理装置6が備える縦刈取装置75は、刈取対象の植立茎稈と非刈取対象の植立茎稈との絡み合いを切断によって解消する。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、植立茎稈を刈取対象の茎稈と非刈取対象の茎稈とに分草する分草装置の他、刈取対象の植立茎稈を左右の引起し経路に分草する分草装置にも利用できる。
【符号の説明】
【0062】
31 分草杆
31b 分草杆の機体上方向き面
33 支点手段
40 分草杆駆動機構
45a 分草杆連結点
T1 分草杆連結点の回転軌跡
Tf 回転軌跡の分草杆連結点の機体前方向き移動に対応する部分
Tr 回転軌跡の分草杆連結点の機体後方向き移動に対応する部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植立茎稈に対して分草作用するよう機体上下向き姿勢で設けた分草杆を備え、
前記分草杆の下端側を回転自在および機体上下方向に移動自在に支持する支点手段を備え、
前記分草杆の前記支点手段に連結する部位よりも分草杆上端側に位置する部位で前記分草杆と連結する分草杆連結点を有し、この分草杆連結点が機体前後方向および機体上下方向に回転軌跡を描いて移動する状態で前記分草杆を駆動する分草杆駆動機構を備えてある刈取収穫機の分草装置。
【請求項2】
前記分草杆駆動機構を、前記分草杆連結点の機体前方向きの移動速度が低速になり、前記分草杆連結点の機体後方向きの移動速度が高速になる状態で前記分草杆を駆動するよう構成してある請求項1記載の刈取収穫機の分草装置。
【請求項3】
前記分草杆駆動機構を、前記回転軌跡のうちの前記分草杆連結点の機体前方向き移動に対応する部分が直線になり、前記回転軌跡のうちの前記分草杆連結点の機体後方向き移動に対応する部分が機体上方向きに突の湾曲線になる状態で前記分草杆を駆動するよう構成してある請求項1又は2記載の刈取収穫機の分草装置。
【請求項4】
前記分草杆の機体上方向き面が、機体上向きに突の湾曲面である請求項1〜3のいずれか一項に記載の刈取収穫機の分草装置。
【請求項5】
前記分草杆が、機体後方側ほど機体横外側に位置するよう機体前後方向に対して傾斜した姿勢で備えられている請求項1〜4のいずれか一項に記載の刈取収穫機の分草装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−193733(P2010−193733A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39757(P2009−39757)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】