説明

刈取収穫機

【課題】 刈取収穫機において刈取部にライトを備える場合、ライトの数を抑えながら、刈取部から比較的広い範囲に亘って照射することができるように構成する。
【解決手段】 複数のバルブ22,23、複数のリフレクタ24,25及び透明のカバー21を備えて、ライト20を構成する。機体の前部に備えられた刈取部2にライト20を備える。複数のバルブ22,23のうちの一つのバルブ22の光の向きと、複数のバルブ22,23のうちの別のバルブ23の光の向きとが異なるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取収穫機に備えられるライトの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバイン等の刈取収穫機では夕暮れ時や夜間でも刈取作業を行うことが増えてきており、例えば特許文献1に開示されているように、刈取部にライト(特許文献1の第1,2,3図の1)を備えたものがある。
【0003】
【特許文献1】実開昭63−23143号公報(第1,2,3図)
【特許文献2】特開平7−289058号公報(図1,3,4,5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンバイン等の刈取収穫機において、刈取部は比較的横幅が大きなものとなっている。これにより、刈取部から比較的広い範囲に亘って照射しようとすると、刈取部に多数のライトを備えなければならない。
本発明はコンバイン等の刈取収穫機において、刈取部にライトを備える場合、ライトの数を抑えながら、刈取部から比較的広い範囲に亘って照射することができるように構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(構成)
本発明の第1特徴は、刈取収穫機において次のように構成することにある。
複数のバルブと、複数のバルブの各々に備えられた複数のリフレクタと、複数のバルブ及び複数のリフレクタを覆う透明のカバーとを備えて、ライトを構成する。機体の前部に備えられた刈取部にライトを備える。複数のバルブのうちの一つのバルブの光の向きと、複数のバルブのうちの別のバルブの光の向きとが異なるものとなるように、一つのバルブの向き又は別のバルブの向き又はリフレクタの向きを設定している。
【0006】
本発明の第2特徴は、刈取収穫機において次のように構成することにある。
複数のバルブと、複数のバルブの各々に備えられた複数のリフレクタと、複数のバルブ及び複数のリフレクタを覆う透明のカバーとを備えて、ライトを構成する。機体の前部に備えられた刈取部にライトを備える。複数のバルブのうちの一つのバルブの光が刈取部の前方に向くように、一つのバルブの向き又はリフレクタの向きを設定し、複数のバルブのうちの別のバルブの光が刈取部の横外方に向くように、別のバルブの向き又はリフレクタの向きを設定している。
【0007】
(作用)
刈取部にライトを備える場合、バルブの光が一つの向きにしか設定されていないライトでは、刈取部から比較的広い範囲に亘って照射しようとすると、刈取部の各部に多数のライトを備える必要がある。
【0008】
本発明の第1特徴(第2特徴)によると、刈取部にライトを備えた場合、一つのライトから異なる向きにバルブの光が照射されるので(一つのライトから刈取部の前方及び横外方の向きにバルブの光が照射されるので)、一つのライトの照射範囲が広いものとなる。このように本発明の第1特徴(第2特徴)によると、一つのライトの照射範囲が広いものとなるので、刈取部の各部に多数のライトを備えなくても、刈取部の適切な位置に一つ又は複数のライトを備えることにより、刈取部から比較的広い範囲に亘って照射することができる。
【0009】
本発明の第1特徴(第2特徴)によると、刈取部の各部に多数のライトを備える必要がないので、多数のライトへの配線を刈取部の各部に配置する必要が少なくなる。このように本発明の第1特徴(第2特徴)によると、多数のライトへの配線を刈取部の各部に配置する必要が少なくなるので、刈取収穫機の生産時においてライトへの配線の取付作業が少なくなるのであり、ライトへの配線の生産後のメンテナンス作業も行い易くなる。
【0010】
(発明の効果)
本発明の第1特徴(第2特徴)によると、刈取収穫機において刈取部の各部に多数のライトを備えなくても、刈取部の適切な位置に一つ又は複数のライトを備えることにより、刈取部から比較的広い範囲に亘って照射することができるようになって、機体の運転部から広い範囲に亘って見易くなり、特に夕暮れ時や夜間での刈取作業の作業性及び路上での走行性を向上させることができた。
【0011】
本発明の第1特徴(第2特徴)によると、刈取収穫機の生産時においてライトへの配線の取付作業が少なくなる点により、生産コストの低減を図ることができるのであり、ライトへの配線の生産後のメンテナンス作業が行い易くなる点により、メンテナンス作業の作業性を向上させることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1及び図2に示すように、右及び左のクローラ式の走行装置1で支持された機体の前部に刈取部2を備えて、機体の前部の右側部に運転部3、機体の後部の左側部に脱穀装置4、機体の後部の右側部にグレンタンク5を備えて、刈取収穫機の一例であるコンバインが構成されている。これにより、圃場の作物が刈取部2によって刈り取られ、刈り取られた作物が脱穀装置4に送られて脱穀処理され、脱穀処理されて単粒化した作物が収穫物としてグレンタンク5に貯留される。
【0013】
図1,2,3に示すように、機体に上下揺動自在に支持された主フレーム6に、刈取部2の全体が支持されており、主フレーム6を昇降駆動する昇降シリンダ7が備えられている。刈取部2は5個のデバイダ8,9,10,11、引き起し爪13aを多数備えた4組の引き起し装置13、バリカン型式の刈取装置14及び搬送装置15を備えて、4条刈り型式に構成されている。
【0014】
図1及び図2に示すように、内部にスクリュー(図示せず)を備えたアンローダ12がグレンタンク5の後部に備えられており、スクリューが回転駆動されることにより、グレンタンク5の収穫物が搬送され、アンローダ12の吐出口12aから排出される。アンローダ12は横軸芯P1周りに上下に昇降駆動自在に構成され、縦軸芯P2周りに旋回駆動自在に構成されている。図1及び図2に示す状態は、運転部3の後部に備えられた受け台17にアンローダ12を乗せた状態であり、アンローダ12を格納位置に配置した状態である。アンローダ12を格納位置から上昇駆動し、横外側に旋回駆動することにより、トラック(図示せず)の荷台にグレンタンク5の収穫物を排出する。
【0015】
図1及び図3に示すように、刈取部2の右及び左側部の上部にカバー16が備えられており、右及び左のカバー16に右及び左のライト20が備えられている。右及び左のライト20は、上及び下のバルブ22,23、上及び下のバルブ22,23に対するリフレクタ(反射板)24,25、これらを覆う透明のカバー21等を備えて構成されている。
【0016】
図1及び図3に示すように、右及び左のカバー16の前部16a及び横部16bに亘る角部に開口部が形成されて、右及び左のカバー16の開口部に右及び左のライト20が嵌め込まれるように固定されている。カバー21の前面が右及び左のカバー16の前部16a及び引き起し装置13の前面と略同一面(又はカバー21の前面が右及び左のカバー16の前部16a及び引き起し装置13の前面よりも少し後側)に位置するように構成されており、カバー21の横面が右及び左のカバー16の横部16bと略同一面に位置するように構成されている。
【0017】
図3に示すように右のライト20において、上のバルブ22及びリフレクタ24が右のライト20の左右中央から右側(刈取部2の横外側)に位置し、下のバルブ23及びリフレクタ25が右のライト20の左右中央から左側(刈取部2の左右中央側)に位置している。リフレクタ24は上のバルブ22の光を前方に反射するように構成され、リフレクタ25は下のバルブ25の光を右斜め前方及び斜め下方に反射するように構成されている。これにより、刈取部2を地面に位置させている状態において、右のライト20の上のバルブ22の照射範囲RD1及び下のバルブ23の照射範囲RD2は、図5(a)及び図6に示すような状態となるのであり、右のライト20の下のバルブ23によりデバイダ8が照射されている。
【0018】
図3に示すように左のライト20において、上のバルブ22及びリフレクタ24が左のライト20の左右中央から左側(刈取部2の横外側)に位置し、下のバルブ23及びリフレクタ25が左のライト20の左右中央から右側(刈取部2の左右中央側)に位置している。リフレクタ24は上のバルブ22の光を前方に反射するように構成され、リフレクタ25は下のバルブ25の光を左斜め前方及び斜め下方に反射するように構成されている。これにより、刈取部2を地面に位置させている状態において、左のライト20の上のバルブ22の照射範囲LD1及び下のバルブ23の照射範囲LD2は、図5(a)及び図6に示すような状態となるのであり、左のライト20の下のバルブ23によりデバイダ10が照射されている。
【0019】
図6に示すように、刈取部2を地面に位置させている状態において、右のライト20の上のバルブ22の照射範囲RD1の左側部分と、左のライト20の上のバルブ22の照射範囲LD1の右側部分とが、刈取部2の前方で重なり合っている。この場合に、重なり合う部分ADが、刈取部2の中央の所定の近距離(例えば2メートル程度)から前方に位置する状態となる。図5(a)に示すように、刈取部2を地面に位置させている状態において、右及び左のライト20の上及び下のバルブ22,23の照射範囲RD1,RD2,LD1,LD2は斜め前方下方に向いている。
【0020】
図5(b)に示すように、刈取部2を上限位置まで上昇駆動すると、右及び左のライト20の上及び下のバルブ22,23の照射範囲RD1,RD2,LD1,LD2は、略前方を向く状態となる。この場合、前述の重なり合う部分AD(図6参照)が、刈取部2の中央の所定の遠距離(例えば8メートル程度)から前方に位置する状態となる。
【0021】
図1及び図2に示すように、アンローダ12の吐出口12aの前側部にライト18が下向きに取り付けられており、ライト18を上側から覆うカバー26が備えられている。受け台17にアンローダ12を乗せた状態(アンローダ12を格納位置に配置した状態)において、アンローダ12の吐出口12aがデバイダ9,11の前方上方の付近に位置している。これにより、刈取部2の中央直前の範囲SD(前述の重なり合う部分ADと刈取部2との間の付近)(図6参照)が、アンローダ12のライト18によって照射される。
【0022】
図4に示すように、運転部3にライトスイッチ19が備えられている。ライトスイッチ19をON2位置に操作すると、右及び左のライト20の上及び下のバルブ22,23が点灯し、アンローダ12のライト18が点灯する。ライトスイッチ19をON1位置に操作すると、右及び左のライト20の下のバルブ23が点灯して、右及び左のライト20の上のバルブ22が消灯し、アンローダ12のライト18が点灯する。ライトスイッチ19をOFF位置に操作すると、右及び左のライト20の上及び下のバルブ22,23が消灯し、アンローダ12のライト18が消灯する。
【0023】
コンバインでは例えば図2に示すように、刈取部2の運転部3とは反対側が未刈り側A1(作物がまだ刈り取られていない側)となり、刈取部2の運転部3側が既刈り側A2(作物が既に刈り取られた側)となる。この場合、デバイダ9,10,11は作物の株元付近に位置し作物よって隠れている状態で、運転部3からデバイダ9,10,11を目視できない状態である。これに対して、未刈り側A1の作物における既刈り側A2の端部の列B1の横外側にデバイダ8が位置しており、運転部3からデバイダ8を目視することができるのであり、未刈り側A1の作物における既刈り側A2の端部の列B1とデバイダ8との位置関係を目視しながら、運転部3の操縦者はコンバインの運転を行う。
この場合、右のライト20の上及び下のバルブ22,23により、未刈り側A1の作物における既刈り側A2の端部の列B1が照射されるようになるので、未刈り側A1の作物における既刈り側A2の端部の列B1を目視しながらの運転が行い易くなる。
【0024】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]に代えて、図7及び図8に示すように構成してもよい。
図7に示すように右のライト20において、上のバルブ22及びリフレクタ24が右のライト20の左右中央から左側(刈取部2の左右中央側)に位置し、下のバルブ23及びリフレクタ25が右のライト20の左右中央から右側(刈取部2の横外側)に位置している。リフレクタ24は上のバルブ22の光を前方に反射するように構成され、リフレクタ25は下のバルブ25の光を右斜め前方及び斜め下方に反射するように構成されている。これにより、刈取部2を地面に位置させている状態において、右のライト20の上のバルブ22の照射範囲RD1及び下のバルブ23の照射範囲RD2は、図5(a)及び図8に示すような状態となるのであり、右のライト20の下のバルブ23によりデバイダ8が照射されている。
【0025】
図7に示すように左のライト20において、上のバルブ22及びリフレクタ24が左のライト20の左右中央から右側(刈取部2の左右中央側)に位置し、下のバルブ23及びリフレクタ25が左のライト20の左右中央から左側(刈取部2の横外側)に位置している。リフレクタ24は上のバルブ22の光を前方に反射するように構成され、リフレクタ25は下のバルブ25の光を左斜め前方及び斜め下方に反射するように構成されている。これにより、刈取部2を地面に位置させている状態において、左のライト20の上のバルブ22の照射範囲LD1及び下のバルブ23の照射範囲LD2は、図5(a)及び図8に示すような状態となるのであり、左のライト20の下のバルブ23によりデバイダ10が照射されている。
【0026】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態]に代えて、図9に示すように構成してもよい。
図9に示すように右のライト20において、バルブ22及びリフレクタ24が右のライト20の左右中央から左側(刈取部2の左右中央側)に位置し、バルブ23及びリフレクタ25が右のライト20の左右中央から右側(刈取部2の横外側)に位置して、バルブ22及びリフレクタ24とバルブ23及びリフレクタ25とが左右に並んだ状態となっている。リフレクタ24はバルブ22の光を前方に反射するように構成され、リフレクタ25はバルブ25の光を右斜め前方及び斜め下方に反射するように構成されている。これにより、刈取部2を地面に位置させている状態において、右のライト20のバルブ22の照射範囲RD1及びバルブ23の照射範囲RD2は、図5(a)及び図8に示すような状態となるのであり、右のライト20のバルブ23によりデバイダ8が照射されている。
【0027】
図9に示すように左のライト20において、バルブ22及びリフレクタ24が左のライト20の左右中央から右側(刈取部2の左右中央側)に位置し、バルブ23及びリフレクタ25が左のライト20の左右中央から左側(刈取部2の横外側)に位置して、バルブ22及びリフレクタ24とバルブ23及びリフレクタ25とが左右に並んだ状態となっている。リフレクタ24はバルブ22の光を前方に反射するように構成され、リフレクタ25はバルブ25の光を左斜め前方及び斜め下方に反射するように構成されている。これにより、刈取部2を地面に位置させている状態において、左のライト20のバルブ22の照射範囲LD1及びバルブ23の照射範囲LD2は、図5(a)及び図8に示すような状態となるのであり、左のライト20のバルブ23によりデバイダ10が照射されている。
【0028】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態][発明の実施の第2別形態]において、右のライト20(デバイダ8側、運転部3側)をカバー16の低い位置に備え、左のライト20(デバイダ10側、運転部3とは反対側)をカバー16の高い位置に備えるように構成してもよい。
【0029】
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態][発明の実施の第2別形態]において機体の前部の左側部に運転部3を備えるように構成してもよい。このように構成すると、右のライト20(デバイダ8側、運転部3とは反対側)をカバー16の高い位置に備え、左のライト20(デバイダ10側、運転部3側)をカバー16の低い位置に備えるように構成してもよい。
【0030】
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態][発明の実施の第2別形態]において、ライト20に3個以上のバルブ22,23及びリフレクタ24,25を備えるように構成したり、ライト20に方向指示器(図示せず)や車幅灯(図示せず)を備えるように構成してもよい。ライト20のカバー21は無色透明のものばかりではなく、薄く着色(例えば薄い黄色)された半透明のものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】コンバインの全体平面図
【図3】刈取部の正面図
【図4】ライトスイッチの平面図
【図5】刈取部を地面に位置させている状態及び刈取部を上限位置まで上昇駆動した状態での刈取部の付近の側面図
【図6】右及び左のライトの照射範囲を示す平面図
【図7】発明の実施の第1別形態の刈取部の正面図
【図8】発明の実施の第1別形態の右及び左のライトの照射範囲を示す平面図
【図9】発明の実施の第2別形態の刈取部の正面図
【符号の説明】
【0032】
2 刈取部
20 ライト
21 カバー
22,23 バルブ
24,25 リフレクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバルブと、前記複数のバルブの各々に備えられた複数のリフレクタと、前記複数のバルブ及び複数のリフレクタを覆う透明のカバーとを備えて、ライトを構成して、
機体の前部に備えられた刈取部に前記ライトを備えると共に、
前記複数のバルブのうちの一つのバルブの光の向きと、前記複数のバルブのうちの別のバルブの光の向きとが異なるものとなるように、前記一つのバルブの向き又は別のバルブの向き又はリフレクタの向きを設定している刈取収穫機。
【請求項2】
複数のバルブと、前記複数のバルブの各々に備えられた複数のリフレクタと、前記複数のバルブ及び複数のリフレクタを覆う透明のカバーとを備えて、ライトを構成して、
機体の前部に備えられた刈取部に前記ライトを備えると共に、
前記複数のバルブのうちの一つのバルブの光が刈取部の前方に向くように、前記一つのバルブの向き又はリフレクタの向きを設定し、
前記複数のバルブのうちの別のバルブの光が刈取部の横外方に向くように、前記別のバルブの向き又はリフレクタの向きを設定している刈取収穫機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−81408(P2006−81408A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266770(P2004−266770)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】