説明

刈取収穫機

【課題】プラットホームオーガにおいて、穀稈の停滞を防止し、刈取搬送性能を向上させるコンバインを提供する。
【解決手段】
掻込オーガは、一側方から搬送部の取込口に穀稈を掻き込む一側オーガ形成体と、他側方から搬送部の取込口に穀稈を掻き込む他側オーガ形成体とを同軸的に配置して形成すると共に、相対的に短幅な一側オーガ形成体の掻込力を、他側オーガ形成体の掻込力よりも大となしている。このようにして、掻込部の取込口に近接した一側オーガ形成体の掻込力を、他側オーガ形成体の掻込力よりも大となすことにより、一側オーガ形成体における穀稈の停滞が減少すると共に、搬送部に搬送する穀稈の搬送性を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は刈取収穫機、詳しくは刈取収穫機の刈取部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、刈取収穫機の一形態として汎用コンバインがあり、その汎用コンバインの刈取部には、刈取穀稈をプラットホーム内に横架した掻込オーガにより略中央部寄りに横送りして、搬送部(フィーダハウス)の取込口に搬入すると共に、同搬送部の搬出口部より脱穀部へ搬送するようにしたものがある。
【0003】
掻込オーガは、左右方向に軸線を向けたドラムの外周面に、刈取穀稈を左側方から略中央部寄りに搬送する左側螺旋形スクリュウ羽根と、刈取穀稈を右側方から略中央部寄りに搬送する右側螺旋形スクリュウ羽根とを設けている(例えば、特許文献1参照)。このようにして、掻込オーガにより左右から寄せ集めながら、搬送部の取込口に穀稈を搬送している。
【0004】
【特許文献1】実公平06−005703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記掻込オーガの回転数は車速に対し一定である。また、搬送部の取込口は、掻込オーガの中央より運転者からみて左側オフセットした位置に設けられている。特に、刈幅の狭い(2m未満)の汎用コンバインでは、搬送部の取込口の左端部と掻込オーガの左端部との間における穀稈の搬送スペースが狭いため、そのスペースにおいて穀稈の停滞が生じやすい。
【0006】
この発明は、上記問題を解決するためになされたもので、プラットホームオーガにおいて、穀稈の停滞を防止し、刈取搬送性能を向上することができる刈取収穫機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、刈り取った穀稈を中央部寄りに掻き込む掻込部と、同掻込部で掻き込んだ穀稈を取込口から取り込んで後方へ搬送する搬送部とを装備し、掻込部には刈取全幅と略同一幅の掻込オーガを設けた刈取収穫機において、掻込オーガは、一側方から搬送部の取込口に穀稈を掻き込む一側オーガ形成体と、他側方から搬送部の取込口に穀稈を掻き込む他側オーガ形成体とを同軸的に配置して形成すると共に、相対的に短幅の一側オーガ形成体の掻込力を、相対的に長幅の他側オーガ形成体の掻込力よりも大となしたことを特徴とする刈取収穫機である。ここで、掻込力とは、刈り取った穀稈を搬送部の取込口まで横搬送して、同穀稈が取込口に取り込まれるようにする能力をいう(以下、同様である)。
【0008】
請求項2に記載の発明は、一側オーガ形成体と他側オーガ形成体との接合部は、取込口の開口幅内に配置すると共に、同取込口の前方には略全幅にわたって一側オーガ形成体が位置するようにしたことを特徴とする請求項1記載の刈取収穫機である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、一側オーガ形成体の掻込回転数は、他側オーガ形成体の掻込回転数よりも大となして、一側オーガ形成体の掻込力を他側オーガ形成体の掻込力よりも大となしたことを特徴とする請求項1又は2記載の刈取収穫機である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、一側オーガ形成体と他側オーガ形成体には、それぞれ掻込用の螺旋状コンベアを設けると共に、一側オーガ形成体の螺旋状コンベアのピッチを他側オーガ形成体の螺旋状コンベアのピッチよりも大となして、一側オーガ形成体の掻込力を他側オーガ形成体の掻込力よりも大となしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の刈取収穫機である。
【発明の効果】
【0011】
(1)請求項1記載の本発明では、刈り取った穀稈を中央部寄りに掻き込む掻込部と、同掻込部で掻き込んだ穀稈を取込口から取り込んで後方へ搬送する搬送部とを装備し、掻込部には刈取全幅と略同一幅の掻込オーガを設けた刈取収穫機において、掻込オーガは、一側方から搬送部の取込口に穀稈を掻き込む一側オーガ形成体と、他側方から搬送部の取込口に穀稈を掻き込む他側オーガ形成体とを同軸的に配置して形成すると共に、相対的に短幅の一側オーガ形成体の掻込力を、相対的に長幅の他側オーガ形成体の掻込力よりも大となしている。
【0012】
このように、相対的に短幅で穀稈が停滞しがちな一側オーガ形成体の掻込力を、他側オーガ形成体の掻込力よりも大となすことにより、相対的に短幅の一側オーガ形成体が、刈り取った穀稈を搬送部の取込口まで横搬送して、同取込口に取り込まれるようにする穀稈の量と、相対的に長幅の他側オーガ形成体が、刈り取った穀稈を搬送部の取込口まで横搬送して、同取込口に取り込まれるようにする穀稈の量とを均等化させて、掻込オーガの左右両側方から取込口に穀稈が均等にバランス良くかつ円滑に取り込まれて、一纏めにして搬送部により搬送されるようにすることができる。この際、一側オーガ形成体の掻込力を、他側オーガ形成体の掻込力よりも大となすことで、相対的に短幅の一側オーガ形成体側においても穀稈が停滞することがないため、搬送部への穀稈の搬送効率を良好に確保することができる。特に、従来の課題となっていた搬送部の取込口の左端部と掻込オーガの左端部との間における穀稈の搬送スペースに、穀稈の停滞が生じるという不具合を解消することができて、刈り取った穀稈の搬送能率を向上させることができる。
【0013】
(2)請求項2記載の本発明では、一側オーガ形成体と他側オーガ形成体との接合部は、取込口の開口幅内に配置すると共に、同取込口の前方には略全幅にわたって一側オーガ形成体が位置するようにしている。このように、相対的に短幅の一側オーガ形成体を取込口の前方に略全幅にわたって位置させると共に、一側方から横送りされる穀稈と他側方から横送りされる穀稈との合流箇所となる両オーガ形成体の接合部を、取込口の開口部幅内に位置させることにより、一側オーガ形成体と他側オーガ形成体との搬送幅の差異を減少させて、両オーガ形成体により取込口に取り込まれる穀稈の量とをより一層均等化させることができる。その結果、掻込オーガの左右両側方から取込口に穀稈が均等にバランス良くかつ円滑に取り込まれて、掻込オーガから搬送部への穀稈の搬送をスムーズに行うことができる。
【0014】
(3)請求項3記載の本発明では、一側オーガ形成体の掻込回転数は、他側オーガ形成体の掻込回転数よりも大きくして、一側オーガ形成体の掻込力を他側オーガ形成体の掻込力よりも大となしているので、相対的に短幅の一側オーガ形成体により取込口に取り込まれる穀稈の量と、相対的に長幅の他側オーガ形成体により取込口に取り込まれる穀稈の量とを均等化させて、掻込オーガの全幅にわたって穀稈を停滞させることなく効率よく取込口に取り込ませて、効率よく搬送部により搬送させることができる。
【0015】
(4)請求項4記載の本発明では、一側オーガ形成体と他側オーガ形成体には、それぞれ掻込用の螺旋状コンベアを設けると共に、一側オーガ形成体の螺旋状コンベアのピッチを他側オーガ形成体の螺旋状コンベアのピッチよりも大となして、一側オーガ形成体の掻込力を他側オーガ形成体の掻込力よりも大となしている。
【0016】
螺旋状コンベアのピッチを広くすれば横送りオーガの一回転当たりの横送りされる距離が大きくなることから、一側オーガ形成体の螺旋状コンベアのピッチを他側オーガ形成体の螺旋状コンベアのピッチよりも大とすることにより、一側オーガ形成体の掻込力を他側オーガ形成体の掻込力よりも大となして、穀稈の搬送性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本実施形態におけるコンバインは、基本的構造として、刈り取った穀稈を中央部寄りに掻き込む掻込部と、同掻込部で掻き込んだ穀稈を取込口から取り込んで後方へ搬送する搬送部とを装備し、掻込部には刈取全幅と略同一幅の掻込オーガを設けている。
【0018】
そして、掻込オーガは、一側方から搬送部の取込口に穀稈を掻き込む一側オーガ形成体と、他側方から搬送部の取込口に穀稈を掻き込む他側オーガ形成体とを同軸的に配置して形成すると共に、相対的に短幅な一側オーガ形成体の掻込力を、他側オーガ形成体の掻込力よりも大となしている。
【0019】
以下に、本実施形態におけるコンバインを、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1および図2は、本実施形態における脱穀選別装置を備えたコンバインAとしての汎用コンバインを示しており、同コンバインAは、機体1の下部に左右一対のクローラ式の走行部3を配設すると共に、機体1の前端縁部に刈取部2を、搬送部4を介して昇降自在に取り付け、同搬送部4の直後方位置に脱穀部5を配設し、同脱穀部5の直下方位置に選別部6を配設する一方、同揺動体32の後方上部であって、脱穀部5の直後方位置に排藁処理部40を配設している。
【0021】
また、コンバインAは、機体1の前部であって、搬送部4の右側方位置に運転部7を配設し、同運転部7の直後方位置であって、脱穀部5の右側方位置に穀粒貯留部8を配設し、更には、同穀粒貯留部8の直後方位置に原動機部9を配設している。
【0022】
次に、コンバインAの各部の構造について図1および図2を参照して説明する。
【0023】
走行部3は、図1に示すように、機体1の下部に走行フレーム25を取付け、同走行フレーム25の前端部に駆動輪45を連動連結する一方、走行フレーム25の後端部に遊動輪46を回転自在に軸支し、これら駆動輪45と遊動輪46との間に履帯26を巻回している。図中、43は転動輪である。
【0024】
刈取部2は、図1および図2に示すように、搬送部4を、機体1の前端部に上下回動自在に取り付けており、前後方向に伸延させて筒状に形成した搬送ケースであるフィーダハウス60の内部に、搬送コンベアであるフィーダハウスコンベア(以下「FHコンベア14」ということがある)を配設している。同FHコンベア14は、搬送ケース60内の前部に従動側軸23に軸支したドラム20を左右方向に伸延させて横架する一方、フィーダハウス60内の後部に駆動側軸22を左右方向に伸延させて横架している。また、上記ドラム20は、上記駆動側軸22にフィーダチェーン24を介して連動連結している。
【0025】
フィーダハウス60の前端に形成した取込口93に、プラットホーム21の本体21aを連通連設し、同本体21aの左右側端部にそれぞれ設けた左右一対のオーガ支持壁39,39間に、掻込オーガ13を左右方向の軸線廻りに回転自在に横架している。また、上記掻込オーガ13の前側上方には、掻き込みリール11を配設している。さらに、上記プラットホーム21の下面側には、左右長手状に伸延したバリカン状の刈刃12を設けている。18は掻き込みタインであり、27はディバイダーである。
【0026】
このようにして、圃場に植立した穀稈を掻き込みリール11により掻き込むと共に、刈刃12により穀稈の根元部分を刈り取り、その後、掻込オーガ13により刈り取った穀稈を同掻込オーガ13の略中央部に寄せ集めて、後方の搬送部4のFHコンベア14へ受け渡すようにしている。そして、掻込オーガ13により寄せ集められた穀稈を、FHコンベア14を介して後方の脱穀部5に搬送するようにしている。なお、掻込オーガ13およびFHコンベア14の構成については詳細に後述する。
【0027】
脱穀部5は、図1に示すように、搬送部4の直後方位置に扱室44を形成し、同扱室44の内部に円筒状の扱胴28を、回動軸線を機体1の長さ方向に向けた状態で配設している。また、扱胴28の本体の周壁には螺旋状の羽根体29を取付けている。そして、扱胴28の直下方位置にコンケーブ47(受網体)を扱胴28の下半部周面に沿わせて周方向に連続的に張設している。
【0028】
選別部6は、図1に示すように、扱胴28の直下方位置に揺動体32を、揺動機構33を介して上下方向に揺動可能に配設している。35は、左右方向に伸延して一番穀粒を受ける一番穀粒受樋、37は、左右方向に伸延して二番穀粒を受ける二番穀粒受樋、41は唐箕である。42は、プレクーリングファンである。
【0029】
揺動体32には、上記扱胴28の直下方に位置させたフィードパン48と、穀粒漏下量を調節自在とした前側チャフシーブ30と、同前側チャフシーブ30の下方に設けるグレンシーブ49と、上記前側チャフシーブ30の後方に配置して穀粒漏下量を調節自在とした後側チャフシーブ31とが配設されている。
【0030】
そして、一番穀粒受樋35内には左右方向に伸延する一番コンベア36を配置し、同一番コンベア36の左側端部に上下方向に伸延する揚穀コンベア(図示せず)の下端部を連設する一方、同揚穀コンベアの上端部を上記した穀粒貯留部8に連設して、一番穀粒受樋35内の一番穀粒を一番コンベア36→揚穀コンベア→穀粒貯留部8へ搬送するようにしている。
【0031】
また、二番穀粒受樋37内には左右方向に伸延する二番コンベア38を配置し、同二番コンベア38の左側端部に前後方向に伸延する還元コンベア(図示せず)の後端部を連設する一方、同還元コンベアの前端部を上記した扱室44に連設して、二番穀粒受樋37内の二番穀粒を選別部6に還元して、再度選別するようにしている。
【0032】
排藁処理部40は、図1および図6に示すように、脱穀部5の扱胴28の直後方位置に後部搬送ビータ(図示せず)を配設し、同後部搬送ビータの後方位置に排藁カッター(図示せず)を配設している。そして、脱穀部5で脱穀処理された後の排藁を後部搬送ビータの搬送作用によって排藁カッター66へ搬送し、同排藁カッター(図示せず)により排藁を細断した後に、機体1の外部へ排出するようにしている。
【0033】
運転部7は、機体1の前端右側(平面視)上部に略矩形箱型状のキャビン50を配設し、同キャビン50内の平面視中央後部に座席81などを配設している。
【0034】
穀粒貯留部8は、上記した脱穀部5に設けた扱胴28の右側方方位置にグレンタンク58を配設し、同グレンタンク58に上記した選別部6に設けた一番穀粒受樋35を、揚穀コンベア(図示せず)を介して連通連結すると共に、グレンタンク58内の右側下部に横搬出用スクリュウコンベア(図示せず)を前後方向に軸線を向けて横架し、同横搬出用スクリュウコンベア(図示せず)の後端部に下端部を連通連結した縦搬出用スクリュウコンベア(図示せず)を原動機部9の右側方位置にて上下方向に軸線を向けて配置し、同縦搬送用スクリュウコンベアの上端部に後端部を連通連結した排出オーガ10を前方へ向けて伸延させ、かつ、後端部を中心に旋回及び上下回動自在としている。13は、排出オーガ10の排出口である。
【0035】
原動機部9は、機体1の左前部にエンジンEを配設し、同エンジンEをミッション(図示せず)等の各動力機構部に伝動機構(図示せず)を介して連動連結している。そして、エンジンEを駆動させることによって、各動力機構部が連動して作動するようにしている。
【0036】
上記のような構成において、本発明の要旨は、刈取部2において、掻込オーガ13を、一側方(本実施形態では左側方)から搬送部4の取込口93に穀稈を掻き込む一側オーガ形成体91と、他側方(本実施形態では右側方)から搬送部4の取込口93に穀稈を掻き込む他側オーガ形成体92とを同軸的に配置して形成すると共に、相対的に短幅な一側オーガ形成体91の掻込力、すなわち、刈り取った穀稈を搬送部4の取込口93まで右側方へ横搬送して、同穀稈が取込口93に取り込まれるようにする能力を、他側オーガ形成体92の掻込力、すなわち、刈り取った穀稈を搬送部4の取込口93まで左側方へ横搬送して、同穀稈が取込口93に取り込まれるようにする能力よりも大となしたことにある。以下、掻込オーガ13およびFHコンベア14について詳細に説明する。
【0037】
FHコンベア14は、フィーダハウス60内の前部に左右方向に伸延する従動側軸に軸支したドラム20を横架する一方、フィーダハウス60内の後部に左右方向に伸延する駆動側軸22を横架して、上記ドラム20と駆動側軸22との間にスプロケットを介して左右一対のフィーダチェーン24,24を無端状に巻回して、両フィーダチェーン24,24間に多数の搬送体83を前後方向に間隔を開けて横架している。そして、フィーダハウス60の底面とFHコンベア14の下側搬送部との間に穀稈を搬送する搬送経路を形成している。このようにして、上記搬送経路を通して刈取した穀稈が刈取部2から脱穀部5に搬送されるようになっている。
【0038】
掻込オーガ13は、図3に示すように、左右方向(機体の左右幅方向)に伸延させて形成した一側オーガ形成体91と他側オーガ形成体92とに2分割して構成している。すなわち、掻込オーガ13は、一側方(本実施形態では左側方)からフィーダハウス60の取込口93に穀稈を掻き込む一側オーガ形成体91と、他側方(本実施形態では右側方)からフィーダハウス60の取込口93に穀稈を掻き込む他側オーガ形成体92とを同軸的に配置して形成している。そして、各オーガ形成体91,92は、それぞれ左右方向に伸延する円筒状の形成体本体71a,71bの外周部に螺旋状の羽根体54a,54b(螺旋状コンベア)を取り付けて形成している。
【0039】
そして、一側オーガ形成体91の右側端縁部と他側オーガ形成体92左側端縁部は、それぞれ軸線廻りに回転自在に接合させて接合部94を形成しており、同接合部94は、取込口93の開口幅内で取込口93の右側端部の前方位置に配置している。ここで、本実施形態では、フィーダハウス60は、機体の右側部に運転部7を配設している関係上、プラットホーム21の左側方に偏倚させて取込口93を介して連通連設している。そのため、一側オーガ形成体91の左右幅は相対的に短幅にとなり、他側オーガ形成体92の左右幅は相対的に長幅となる。
【0040】
しかも、相対的に短幅で穀稈が停滞しがちな一側オーガ形成体91の掻込力を、他側オーガ形成体92の掻込力よりも大となすことにより、相対的に短幅の一側オーガ形成体91が、刈り取った穀稈を搬送部4の取込口93まで横搬送して、同取込口93に取り込まれるようにする穀稈の量と、相対的に長幅の他側オーガ形成体92が、刈り取った穀稈を搬送部4の取込口93まで横搬送して、同取込口93に取り込まれるようにする穀稈の量とを均等化させて、掻込オーガ13の左右両側方から取込口93に穀稈が均等にバランス良くかつ円滑に取り込まれて、一纏めにして搬送部により搬送されるようにしている。そのため、一側オーガ形成体91の掻込力を、他側オーガ形成体92の掻込力よりも大となすことで、相対的に短幅の一側オーガ形成体91側においても穀稈が停滞することがないため、搬送部4への穀稈の搬送効率を良好に確保することができる。
【0041】
ここで、掻込力は、後述するように、一側オーガ形成体91と他側オーガ形成体92の回転数により設定しており、一側オーガ形成体91の回転数が他側オーガ形成体92の回転数よりも大きくなるように設定して、一側オーガ形成体91が穀稈を取込口93へ掻き込む掻込力を、他側オーガ形成体92が穀稈を取込口93へ掻き込む掻込力よりも大きく設定することにより、掻込オーガ13の左右両側方から取込口93に穀稈が均等にバランス良くかつ円滑に取り込まれるようにしている。その結果、掻込オーガ13からFHコンベア14へ穀稈を効率良く搬送することができる。
【0042】
取込口93の前方に対向する一側オーガ形成体91の形成体本体71aの外周部には、掻き込みフィンガ53が放射方向に出没可能に設けられている。すなわち、図5に示すように、掻込オーガ13は、プラットホーム21のオーガ支持壁39に回動自在に軸支された第1回動軸95と、一側オーガ形成体91と他側オーガ形成体92との間の接合部94の中央部で回動自在に軸支された第2回動軸96とを備え、それらを中心として偏心回転自在に設けられた第3回動軸97の外周部に掻き込みフィンガ53が放射状に設けられている。
【0043】
このようにして、掻き込みフィンガ53は、一側オーガ形成体91の回動に伴って、プラットホーム21内に貯留した刈取穀稈を引っかけながら掻き込んで、搬送部4の取込口93へ移送するようにしている。
【0044】
次に、コンバインAの動力伝達について図4を参照して説明する。
エンジンEから動力は、図4に示すように、脱穀クラッチ61を介して、脱穀部5の扱胴28などの駆動用として伝達される。また、エンジンEからの動力は、選別・走行クラッチ62を介して、唐箕41、揺動体32などの選別部6の駆動用として選別駆動軸65を介して伝達されると共に、走行部3のトランスミッション部64などにも伝達される。
【0045】
また、本実施形態におけるコンバインAは、上記選別・走行用の動力を、刈取クラッチ63および刈取部伝達機構72を介して、刈取部2の各駆動部に伝達するように構成している。すなわち、刈取部伝達機構72は、上流側伝達機構73と下流側伝達機構74とから形成しており、同下流側伝達機構74は、リール側伝達機構75と刈刃側伝達機構76と他側オーガ伝達機構77とから形成している。上流側伝達機構73は、エンジンEに刈取クラッチ63を介してFHコンベア14の駆動側軸22を連動連結する一方、プラットホーム21の本体21aの背後に、軸支持体79を介して左右方向に伸延する中間軸67をフィーダハウス14の直下方に通すと共に回転自在に架設して、同軸支持体79の中途部と上記駆動側軸22の中途部との間に介設している。下流側伝達機構74のリール側伝達機構75は、中間軸67の右側中途部と掻き込みリール11のリール駆動軸15との間に介設している。下流側伝達機構74の刈刃側伝達機構76は、中間軸67の右側端部と刈刃12の刈刃駆動軸78との間に介設している。下流側伝達機構74の他側オーガ伝達機構77は、中間軸67の右側部と他側オーガ形成体92の他側オーガ軸70との間にスプロケット85a,85bを介して伝動チェン85cを巻回して介設している。
【0046】
このようにして、エンジンEからの動力を上流側伝達機構73→下流側伝達機構74のリール側伝達機構75、刈刃側伝達機構76、他側オーガ伝達機構77→掻き込みリール11、刈刃12、他側オーガ形成体92にそれぞれ伝達して駆動するようにしている。
【0047】
また、FHコンベア14の駆動側軸22の動力は、図4に示すように、一側オーガ伝達機構68を介して、一側オーガ形成体91に伝達するように構成している。すなわち、一側オーガ伝達機構68は、図4および図5に示すように、上記中間軸67をフィーダハウス60の左側壁よりも外方に延出させる一方、上記中間軸67と一側オーガ形成体91の一側オーガ軸82との間にスプロケット66a,66bを介して第2オーガ伝動チェン84を巻回している。このようにして、一側オーガ伝達機構68は、FHコンベア14の駆動側軸22から一側オーガ軸82に動力を伝達して、一側オーガ形成体91を回動させるようにしている。
【0048】
このように、FHコンベア14の駆動側軸22の動力を、一側オーガ伝達機構68を介して一側オーガ形成体91に伝達する一方、他側オーガ伝達機構77を介して他側オーガ形成体92に伝達させると共に、一側オーガ形成体91の一側オーガ軸82に設けたスプロケット66bの歯数よりも、他側オーガ形成体92の他側オーガ軸70に設けたスプロケット85bの歯数を多くしている。このように、一側オーガ形成体91の回転数(掻込力)を他側オーガ形成体92の回転数(掻込力)より大きくなるように設定している。
【0049】
上記ではFHコンベア14の駆動側軸22からの動力を用いて一側オーガ形成体91を駆動していたが、FHコンベア14の従動側軸23からの動力を用いて一側オーガ形成体91を駆動することもできる。このFHコンベア14の従動側軸23からの動力を用いることにより、一側オーガ伝達機構68の駆動経路を短くすることができ、同一側オーガ伝達機構68を簡単化することができる。
【0050】
または、他側オーガ形成体92に入力される動力を用いて、ギアを介して一側オーガ形成体91に入力するようにして、一側オーガ形成体91の回転数を他側オーガ形成体92の回転数より大きくするようにしてもよい。
【0051】
次に、掻込オーガ13から搬送部4への穀稈の搬送について詳細に説明する。
【0052】
まず、コンバインAを走行させることにより、圃場に植立した穀稈を、掻き込みリール11により掻き込みながら、刈刃12により穀稈の根元部分を刈り取って、PFオーガに搬送するようにしている。その後、穀稈を、掻込オーガ13により同掻込オーガ13の略中央部に寄せ集めて、後方の搬送部4のFHコンベア14へ受け渡すようにしている。
【0053】
そして、一側オーガ形成体91の回転数を、他側オーガ形成体92の回転数よりも大きくして、一側オーガ形成体91の掻込力を他側オーガ形成体92の掻込力よりも大となしている。
【0054】
このようにして、搬送部4の取込口93に近接した一側オーガ形成体91の掻込力を、他側オーガ形成体92の掻込力よりも大とすることができ、一側オーガ形成体91において穀稈の停滞が減少し、搬送部4に搬送する穀稈の搬送性を向上することができる。
【0055】
特に、図5に示すように、搬送部4の取込口93の左端部と掻込オーガ13の左端部との間の搬送スペースBが狭くても、一側オーガ形成体91の掻込力を大きくしているので、従来に比べて穀稈の停滞が減少する
【0056】
また、刈り取る穀稈の負荷に応じて、掻込オーガ13の回転数を変化させることができる。すなわち、刈り取る穀稈の量が多く負荷が大きい場合には、負荷が少ない場合に比べて、掻込オーガ13の回転数を増やした状態で、一側オーガ形成体91の掻込力を他側オーガ形成体92の掻込力よりも大きくする。このようにして、穀稈の負荷に応じて、掻込オーガ13の掻込力を調整することができる。
【0057】
上記穀稈の負荷の検出は、掻込オーガ13の回転数を検出するセンサなどを設け、そのセンサで検出した掻込オーガ13の回転数に応じて、機体1の所定位置に設けたコントローラ(図示せず)により、掻込オーガ13にフィードバックさせて回転数を調整するようにしてもよい。
【0058】
運転部7においての図示しない切換スイッチにより、上記の負荷に同調して掻込オーガ13の回転数を変化させることもできるし、負荷に同調しないで掻込オーガ13の回転数を一定とすることもできる。
【0059】
さらに、コンバインAの車速に応じて、掻込オーガ13の回転数を変化させることもできる。すなわち、コンバインAの車速が大きい場合には、車速が、小さい場合に比べて掻込オーガ13の回転数を増やした状態で、一側オーガ形成体91の掻込力を他側オーガ形成体92の掻込力よりも大きくする。このようにして、穀稈の負荷に応じて、掻込オーガ13の掻込力を調整することができる。
【0060】
上記車速は、車軸部に車速を検出するセンサなどを設け、そのセンサで検出した車速に応じて、機体の所定位置に設けたコントローラにより、フィードバックさせて車速を調整するようにしてもよい。
【0061】
運転部7においての切換スイッチにより、上記の車速に同調して掻込オーガ13の回転数を変化させることもできるし、車速に同調しないで、掻込オーガ13の回転数を一定とすることもできる。
【0062】
本実施形態におけるコンバインAは、掻込オーガ13を2分割した構造としているが、一側オーガ形成体91の螺旋状の羽根体54aのピッチを他側オーガ形成体92の螺旋状の羽根体54bのピッチよりも大となすことにより、搬出口部に近い一側オーガ形成体91の穀稈の搬送性(掻込力)を向上させることができる。
【0063】
具体的には、図6に示すように、一側オーガ形成体91と他側オーガ形成体92には、それぞれ掻込用の螺旋状の羽根体54a,54bを設けると共に、一側オーガ形成体91の螺旋状の羽根体54aのピッチを他側オーガ形成体92の螺旋状の羽根体54bのピッチよりも大きくすることにより、一側オーガ形成体91の掻込力を他側オーガ形成体92の掻込力よりも大となしている。
【0064】
このようにして、一側オーガ形成体91と他側オーガ形成体92を同じ回転数で回転させたとしても、一側オーガ形成体91の掻込力を他側オーガ形成体92の掻込力よりも大となしているため、一側オーガ形成体91における穀稈の停滞を解消すると共に、搬送部4に搬送する穀稈の搬送性を向上させることができる。
【0065】
また、必要に応じて、一側オーガ形成体91回転数を他側オーガ形成体92の回転数よりも大きくし、かつ、一側オーガ形成体91の螺旋状の羽根体54aのピッチを他側オーガ形成体92の螺旋状の羽根体54bのピッチよりも大きくして、一側オーガ形成体91の掻込力を他側オーガ形成体92の掻込力よりも大となしてもよい。この場合には、一側オーガ形成体91の掻込力と他側オーガ形成体92の掻込力とに大きな差異をもたせることができ、掻込力の設定の自由度を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】この発明の実施の形態におけるコンバインの全体構成を示す側面図である。
【図2】この発明の実施の形態におけるコンバインの全体構成を示す平面図である。
【図3】この発明の実施の形態におけるコンバインの刈取部の全体構成を示す平面図である。
【図4】この発明の実施の形態におけるコンバインの動力伝達の構成を示す動力伝達図である。
【図5】この発明の実施の形態におけるコンバインの掻込オーガの構成を示す平面図である。
【図6】この発明の実施の形態におけるコンバインの一側オーガ形成体と他側オーガ形成体との螺旋状のコンベアのピッチが異なる状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0067】
A 汎用コンバイン、
2 刈取部、
13 掻込オーガ、
14 フィーダハウスコンベア、
54a,54b 螺旋状の羽根体、
91 一側オーガ形成体、
92 他側オーガ形成体
93 取込口、
94 接合部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈り取った穀稈を中央部寄りに掻き込む掻込部と、同掻込部で掻き込んだ穀稈を取込口から取り込んで後方へ搬送する搬送部とを装備し、掻込部には刈取全幅と略同一幅の掻込オーガを設けた刈取収穫機において、
掻込オーガは、一側方から搬送部の取込口に穀稈を掻き込む一側オーガ形成体と、他側方から搬送部の取込口に穀稈を掻き込む他側オーガ形成体とを同軸的に配置して形成すると共に、
相対的に短幅の一側オーガ形成体の掻込力を、相対的に長幅の他側オーガ形成体の掻込力よりも大となしたことを特徴とする刈取収穫機。
【請求項2】
一側オーガ形成体と他側オーガ形成体との接合部は、取込口の開口幅内に配置すると共に、同取込口の前方には略全幅にわたって一側オーガ形成体が位置するようにしたことを特徴とする請求項1記載の刈取収穫機。
【請求項3】
一側オーガ形成体の掻込回転数は、他側オーガ形成体の掻込回転数よりも大となして、一側オーガ形成体の掻込力を他側オーガ形成体の掻込力よりも大となしたことを特徴とする請求項1又は2記載の刈取収穫機。
【請求項4】
一側オーガ形成体と他側オーガ形成体には、それぞれ掻込用の螺旋状コンベアを設けると共に、一側オーガ形成体の螺旋状コンベアのピッチを他側オーガ形成体の螺旋状コンベアのピッチよりも大となして、一側オーガ形成体の掻込力を他側オーガ形成体の掻込力よりも大となしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の刈取収穫機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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