説明

刈取収穫機

【課題】プラットホームオーガにおいて、穀稈の停滞を防止し、刈取搬送性能を向上させるコンバインを提供する。
【解決手段】
掻込オーガ内に変速部を設けて、同変速部を介して両オーガ形成体を連動連結しているので、従来のように、エンジンからの動力を他側オーガ形成体に入力するだけで、他側オーガ形成体を回転させることができ、さらに、変速部を介して一側オーガ形成体を回転させることができる。これにより、一側オーガ形成体の掻込力を他側オーガ形成体よりも大とすることで、一側オーガ形成体における穀稈の停滞を減少させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は刈取収穫機、詳しくは汎用コンバインの刈取部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、刈取収穫機の一形態として汎用コンバインがあり、その汎用コンバインの刈取部は、刈り取った穀稈を中央部寄りに掻き込む掻込部と、同掻込部で掻き込んだ穀稈を取込口から取り込んで後方へ搬送する搬送部とを装備している。そして、掻込部は、プラットホーム内に横架した掻込オーガにより刈取穀稈を略中央部寄りに横送りし、搬送部(フィーダハウス)は、掻込オーガの略中央部に近接させて配置した搬入口部に刈取穀稈を搬入すると共に、搬出口部より脱穀部へ搬出するようにしている。
【0003】
掻込オーガは、左右方向に軸線を向けたドラムの外周面に、刈取穀稈を左側方から略中央部寄りに搬送する左側螺旋形スクリュウ羽根と、刈取穀稈を右側方から略中央部寄りに搬送する右側螺旋形スクリュウ羽根とを設けている。このようにして、掻込オーガにより左右から寄せ集めながら、フィーダハウスの搬入口部に穀稈を搬入させている。例えば、特許文献1には、掻込オーガにより穀稈の搬送量を均平化する刈取収穫機が開示されている。
【0004】
【特許文献1】実公平08−001622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記掻込オーガの回転数は車速に対し一定である。また、フィーダハウスの搬入口部は、掻込オーガの中央よりオフセットした位置(運転者からみて左側)に設けられている。特に、刈幅の狭い(2m未満)の汎用コンバインでは、フィーダハウスの搬入口部の左端部と掻込オーガの左端部との間における穀稈の搬送スペースが狭いため、そのスペースにおいて穀稈の停滞が生じやすい。
【0006】
この発明は、上記問題を解決するためになされたもので、プラットホーム内の掻込オーガとフィーダハウスの搬入口部との間において、穀稈の停滞を防止し、刈取搬送性能を向上させるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、刈り取った穀稈を中央部寄りに掻き込む掻込部と、同掻込部で掻き込んだ穀稈を取込口から取り込んで後方へ搬送する搬送部とを装備し、掻込部には刈取全幅と略同一幅の掻込オーガを設けた刈取収穫機において、掻込オーガは、一側方から搬送部の取込口に穀稈を掻き込む一側オーガ形成体と、他側方から搬送部の取込口に穀稈を掻き込む他側オーガ形成体とを同軸的に配置して形成すると共に、一側オーガ形成体は、他側オーガ形成体と搬送能力を異ならせたことを特徴とする刈取収穫機である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、掻込オーガ内に変速部を設けて、上記一側オーガ形成体と他側オーガ形成体の掻込回転数を異ならせたことを特徴とする請求項1記載の刈取収穫機である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、掻込オーガ内にオーガ駆動用の電動モータと変速部を設けて、同電動モータにより変速部を介して両オーガ形成体の掻込回転数を可変となしたことを特徴とする請求項1記載の刈取収穫機である。
【発明の効果】
【0010】
(1)請求項1記載の本発明では、刈り取った穀稈を中央部寄りに掻き込む掻込部と、同掻込部で掻き込んだ穀稈を取込口から取り込んで後方へ搬送する搬送部とを装備し、掻込部には刈取全幅と略同一幅の掻込オーガを設けた刈取収穫機において、掻込オーガは、一側方から搬送部の取込口に穀稈を掻き込む一側オーガ形成体と、他側方から搬送部の取込口に穀稈を掻き込む他側オーガ形成体とを同軸的に配置して形成すると共に、一側オーガ形成体は、他側オーガ形成体と搬送能力を異ならせている。
【0011】
このようにして、一側オーガ形成体の搬送能力を、他側オーガ形成体の搬送能力と異ならせる、例えば、穀稈の停滞が生じやすい側である一側オーガ形成体の掻込回転数を、他側オーガ形成体の掻込回転数よりも大となすことにより、一側オーガ形成体側の穀稈の搬送性を高めることができる。その結果、左右側から搬送される穀稈のぶつかりを軽減させて、搬送部への穀稈の搬入性(取り込み性)を向上させることができる。
【0012】
(2)請求項2記載の本発明では、掻込オーガ内に変速部を設けて、上記一側オーガ形成体と他側オーガ形成体の掻込回転数を異ならせているので、従来のように、エンジンからの動力を他側オーガ形成体に入力するだけで、他側オーガ形成体を回転させることができ、さらに、変速部を介して一側オーガ形成体を回転させることができる。これにより、一側オーガ形成体の掻込回転数と他側オーガ形成体の掻込回転数とを構造簡易に異ならせることができて、一側オーガ形成体における穀稈の停滞を減少させることができる。すなわち、一側オーガ形成体の掻込回転数と他側オーガ形成体の掻込回転数とを、変速部を設けるだけで、シンプルな構造により、所望の大きさだけ異ならせることができる。
【0013】
(3)請求項3記載の本発明では、掻込オーガ内にオーガ駆動用の電動モータと変速部を設けて、同電動モータにより変速部を介して両オーガ形成体の掻込回転数を可変となしているので、エンジンからの動力を伝達するために従来必要としている伝動チェンやプーリ等の伝動機構が不要となる。しかも、掻込オーガ内に設けたオーガ駆動用の電動モータにより変速部を介して両オーガ形成体の掻込回転数を適宜変更、すなわち、刈取穀稈の掻込量、搬送量及び作業速度に適応させて、各オーガ形成体の掻込回転数を変更させることができる。その結果、効率良く刈取作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本実施形態におけるコンバインは、基本的構造として、刈り取った穀稈を中央部寄りに掻き込む掻込部と、同掻込部で掻き込んだ穀稈を取込口から取り込んで後方へ搬送する搬送部とを装備し、掻込部には刈取全幅と略同一幅の掻込オーガを設けている。
【0015】
そして、掻込オーガは、一側方から搬送部の取込口に穀稈を掻き込む一側オーガ形成体と、他側方から搬送部の取込口に穀稈を掻き込む他側オーガ形成体とを同軸的に配置して形成すると共に、一側オーガ形成体は、他側オーガ形成体と搬送能力を異ならせている。
【0016】
以下に、本実施形態におけるコンバインを、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1および図2は、本実施形態における脱穀選別装置を備えたコンバインAとしての汎用コンバインを示しており、同コンバインAは、機体1の下部に左右一対のクローラ式の走行部3を配設すると共に、機体1の前端縁部に刈取部2を、搬送部4を介して昇降自在に取り付け、同搬送部4の直後方位置に脱穀部5を配設し、同脱穀部5の直下方位置に選別部6を配設する一方、同揺動体32の後方上部であって、脱穀部5の直後方位置に排藁処理部40を配設している。
【0018】
また、コンバインAは、機体1の前部であって、搬送部4の右側方位置に運転部7を配設し、同運転部7の直後方位置であって、脱穀部5の右側方位置に穀粒貯留部8を配設し、更には、同穀粒貯留部8の直後方位置に原動機部9を配設している。
【0019】
次に、コンバインAの各部の構造について図1および図2を参照して説明する。
【0020】
走行部3は、図1に示すように、機体1の下部に走行フレーム25を取付け、同走行フレーム25の前端部に駆動輪45を連動連結する一方、走行フレーム25の後端部に遊動輪46を回転自在に軸支し、これら駆動輪45と遊動輪46との間に履帯26を巻回している。図中、43は転動輪である。
【0021】
刈取部2は、図1および図2に示すように、搬送部4を、機体1の前端部に上下回動自在に取り付けており、前後方向に伸延させて筒状に形成した搬送ケースであるフィーダハウス60の内部に、搬送コンベアであるフィーダハウスコンベア(以下「FHコンベア14」ということがある)を配設している。同FHコンベア14は、搬送ケース60内の前部に従動側軸23に軸支したドラム20を左右方向に伸延させて横架する一方、フィーダハウス60内の後部に駆動側軸22を左右方向に伸延させて横架している。また、上記ドラム20は、上記駆動側軸22にフィーダチェーン24を介して連動連結している。
【0022】
フィーダハウス60の前端に形成した搬入口部としての取込口93に、プラットホーム21の本体21aを連通連設し、同本体21aの左右側端部にそれぞれ設けた左右一対のオーガ支持壁39,39間に、掻込オーガ13を左右方向の軸線廻りに回転自在に横架して掻込部16を構成している。また、上記掻込オーガ13の前側上方には、掻き込みリール11を配設している。さらに、上記プラットホーム21の下面側には、左右長手状に伸延したバリカン状の刈刃12を設けている。27はディバイダーである。
【0023】
このようにして、圃場に植立した穀稈を掻き込みリール11により掻き込むと共に、刈刃12により穀稈の根元部分を刈り取り、その後、掻込オーガ13により刈り取った穀稈を同掻込オーガ13の略中央部に寄せ集めて、後方の搬送部4のFHコンベア14へ受け渡すようにしている。そして、掻込オーガ13により寄せ集められた穀稈を、FHコンベア14を介して後方の脱穀部5に搬送するようにしている。なお、掻込オーガ13およびFHコンベア14の構成については詳細に後述する。
【0024】
脱穀部5は、図1に示すように、搬送部4の直後方位置に扱室44を形成し、同扱室44の内部に円筒状の扱胴28を、回動軸線を機体1の長さ方向に向けた状態で配設している。また、扱胴28の本体の周壁には螺旋状の羽根体29を取付けている。そして、扱胴28の直下方位置にコンケーブ47(受網体)を扱胴28の下半部周面に沿わせて周方向に連続的に張設している。
【0025】
選別部6は、図1に示すように、扱胴28の直下方位置に揺動体32を、揺動機構33を介して上下方向に揺動可能に配設している。35は、左右方向に伸延して一番穀粒を受ける一番穀粒受樋、37は、左右方向に伸延して二番穀粒を受ける二番穀粒受樋、41は唐箕である。42は、プレクーリングファンである。
【0026】
揺動体32には、上記扱胴28の直下方に位置させたフィードパン48と、穀粒漏下量を調節自在とした前側チャフシーブ30と、同前側チャフシーブ30の下方に設けるグレンシーブ49と、上記前側チャフシーブ30の後方に配置して穀粒漏下量を調節自在とした後側チャフシーブ31とが配設されている。
【0027】
そして、一番穀粒受樋35内には左右方向に伸延する一番コンベア36を配置し、同一番コンベア36の左側端部に上下方向に伸延する揚穀コンベア(図示せず)の下端部を連設する一方、同揚穀コンベアの上端部を上記した穀粒貯留部8に連設して、一番穀粒受樋35内の一番穀粒を一番コンベア36→揚穀コンベア→穀粒貯留部8へ搬送するようにしている。
【0028】
また、二番穀粒受樋37内には左右方向に伸延する二番コンベア38を配置し、同二番コンベア38の左側端部に前後方向に伸延する還元コンベア(図示せず)の後端部を連設する一方、同還元コンベアの前端部を上記した扱室44に連設して、二番穀粒受樋37内の二番穀粒を選別部6に還元して、再度選別するようにしている。
【0029】
排藁処理部40は、図1および図6に示すように、脱穀部5の扱胴28の直後方位置に後部搬送ビータ(図示せず)を配設し、同後部搬送ビータの後方位置に排藁カッター(図示せず)を配設している。そして、脱穀部5で脱穀処理された後の排藁を後部搬送ビータの搬送作用によって排藁カッター66へ搬送し、同排藁カッター(図示せず)により排藁を細断した後に、機体1の外部へ排出するようにしている。
【0030】
運転部7は、機体1の前端右側(平面視)上部に略矩形箱型状のキャビン50を配設し、同キャビン50内の平面視中央後部に座席81などを配設している。
【0031】
穀粒貯留部8は、上記した脱穀部5に設けた扱胴28の右側方方位置にグレンタンク58を配設し、同グレンタンク58に上記した選別部6に設けた一番穀粒受樋35を、揚穀コンベア(図示せず)を介して連通連結すると共に、グレンタンク58内の右側下部に横搬出用スクリュウコンベア(図示せず)を前後方向に軸線を向けて横架し、同横搬出用スクリュウコンベア(図示せず)の後端部に下端部を連通連結した縦搬出用スクリュウコンベア(図示せず)を原動機部9の右側方位置にて上下方向に軸線を向けて配置し、同縦搬送用スクリュウコンベアの上端部に後端部を連通連結した排出オーガ10を前方へ向けて伸延させ、かつ、後端部を中心に旋回及び上下回動自在としている。13は、排出オーガ10の排出口である。
【0032】
原動機部9は、機体1の左前部にエンジンEを配設し、同エンジンEをミッション(図示せず)等の各動力機構部に伝動機構(図示せず)を介して連動連結している。そして、エンジンEを駆動させることによって、各動力機構部が連動して作動するようにしている。
【0033】
上記のような構成において、本発明の要旨は、上記のような構成した刈取部2に設けた掻込部16において、掻込オーガ13を、一側方(本実施形態では左側方)から搬送部4の取込口93に穀稈を掻き込む一側オーガ形成体91と、他側方(本実施形態では右側方)から搬送部4の取込口93に穀稈を掻き込む他側オーガ形成体92とを同軸的に配置して形成すると共に、相対的に短幅な一側オーガ形成体91の掻込力、すなわち、刈り取った穀稈を搬送部4の取込口93まで右側方へ横搬送して、同穀稈が取込口93に取り込まれるようにする能力を、他側オーガ形成体92の掻込力、すなわち、刈り取った穀稈を搬送部4の取込口93まで左側方へ横搬送して、同穀稈が取込口93に取り込まれるようにする能力よりも大となしたことにある。以下、掻込オーガ13およびFHコンベア14について詳細に説明する。
【0034】
FHコンベア14は、フィーダハウス60内の前部に左右方向に伸延する従動側軸に軸支したドラム20を横架する一方、フィーダハウス60内の後部に左右方向に伸延する駆動側軸22を横架して、上記ドラム20と駆動側軸22との間にスプロケットを介して左右一対のフィーダチェーン24,24を無端状に巻回して、両フィーダチェーン24,24間に多数の搬送体83を前後方向に間隔を開けて横架している。そして、フィーダハウス60の底面とFHコンベア14の下側搬送部との間に穀稈を搬送する搬送経路を形成している。このようにして、上記搬送経路を通して刈取した穀稈が刈取部2から脱穀部5に搬送されるようになっている。
【0035】
掻込オーガ13は、図3及び図4に示すように、左右方向(機体の左右幅方向)に伸延させて形成した一側オーガ形成体91と他側オーガ形成体92とに2分割して構成している。すなわち、掻込オーガ13は、一側方(本実施形態では左側方)からフィーダハウス60の取込口93に穀稈を掻き込む一側オーガ形成体91と、他側方(本実施形態では右側方)からフィーダハウス60の取込口93に穀稈を掻き込む他側オーガ形成体92とを同軸的に配置して形成している。そして、各オーガ形成体91,92は、それぞれ左右方向に伸延する円筒状の形成体本体71a,71bの外周部に螺旋状の羽根体54a,54b(螺旋状コンベア)を取り付けて形成している。
【0036】
そして、一側オーガ形成体91の右側端縁部と他側オーガ形成体92左側端縁部は、それぞれ軸線廻りに回転自在に接合させて接合部94を形成している。ここで、本実施形態では、フィーダハウス60は、機体の右側部に運転部7を配設している関係上、プラットホーム21の左側方に偏倚させて取込口93を介して連通連設している。そのため、一側オーガ形成体91の左右幅は相対的に短幅となり、他側オーガ形成体92の左右幅は相対的に長幅となる。
【0037】
しかも、相対的に短幅で穀稈が停滞しがちな一側オーガ形成体91の掻込力を、他側オーガ形成体92の掻込力よりも大となすことにより、相対的に短幅の一側オーガ形成体91が、刈り取った穀稈を搬送部4の取込口93まで横搬送して、同取込口93に取り込まれるようにする穀稈の量と、相対的に長幅の他側オーガ形成体92が、刈り取った穀稈を搬送部4の取込口93まで横搬送して、同取込口93に取り込まれるようにする穀稈の量とを均等化させて、掻込オーガ13の左右両側方から取込口93に穀稈が均等にバランス良くかつ円滑に取り込まれて、一纏めにして搬送部4により搬送されるようにしている。そのため、一側オーガ形成体91の掻込力を、他側オーガ形成体92の掻込力よりも大となすことで、相対的に短幅の一側オーガ形成体91側においても穀稈が停滞することがないため、搬送部4への穀稈の搬送効率を良好に確保することができる。
【0038】
ここで、掻込力は、後述するように、一側オーガ形成体91と他側オーガ形成体92の回転数により設定しており、一側オーガ形成体91の回転数が他側オーガ形成体92の回転数よりも大きくなるように設定して、一側オーガ形成体91が穀稈を取込口93へ掻き込む掻込力を、他側オーガ形成体92が穀稈を取込口93へ掻き込む掻込力よりも大きく設定することにより、掻込オーガ13の左右両側方から取込口93に穀稈が均等にバランス良くかつ円滑に取り込まれるようにしている。その結果、掻込オーガ13からFHコンベア14へ穀稈を効率良く搬送することができる。
【0039】
取込口93の前方に対向する一側オーガ形成体91の形成体本体71aの外周部には、掻込フィンガ53が放射方向に出没可能に設けられている。すなわち、図5に示すように、掻込オーガ13は、プラットホーム21のオーガ支持壁39に回動自在に軸支された第1回動軸95と、一側オーガ形成体91と他側オーガ形成体92との間の接合部94の中央部で回動自在に軸支された第2回動軸96とを備え、それらを中心として偏心回転自在に設けられた第3回動軸97の外周部に掻込フィンガ53が放射状に設けられている。
【0040】
このようにして、掻込フィンガ53は、一側オーガ形成体91の回動に伴って、プラットホーム21内に貯留した刈取穀稈を引っかけながら掻き込んで、搬送部4の取込口93へ移送するようにしている。
【0041】
そして、図4に示すように、一側オーガ形成体91の右側端部には、変速部の一形態として遊星歯車機構100が配設されている。その遊星歯車機構100は、1つのサンギヤ101と、同サンギヤ101の外周で噛合う3つのプラネタリギヤ102と、各プラネタリギヤ102に噛合うインターナルギヤ103などで構成されている。
【0042】
サンギヤ101は、他側オーガ形成体92の左側端部内で上記掻込フィンガ53の第2回動軸96に一体化されている。すなわち、他側オーガ形成体92の左側端部の中央にはベアリング105が配設され、そのベアリング105には上記掻込フィンガ53の第2回動軸96が軸支され、その第2回動軸96の周囲にサンギヤ101が固設されている。
【0043】
また、各プラネタリギヤ102の中心には、それぞれ他側オーガ形成体92の左側端部から突出した入力軸107が連結されている。さらに、インターナルギヤ103の外周部は一側オーガ形成体91の本体部と一体になっている。
【0044】
そして、他側オーガ形成体92は、通常の掻込オーガの駆動時と同様にエンジンEの動力を受けて回転を受けて、他側オーガ軸70を軸として回転する。また、他側オーガ形成体92の左側端部に設けた3つの入力軸107が、他側オーガ軸70を軸として、他側オーガ形成体92とともに回動自在となしている。このようにして、他側オーガ形成体92が回転すると、3つの入力軸107も回転し、固定されたサンギヤ101の周囲をプラネタリギヤ102が回転することになる。そして、プラネタリギヤ102に噛合うインターナルギヤ103も回転し、インターナルギヤ103に連動連結した一側オーガ形成体91の本体が回転自在となる。
【0045】
一側オーガ形成体91と他側オーガ形成体92との回転数の比は、遊星歯車機構100の各歯数により任意に設定することができる。例えば、サンギヤ101の歯数aを16T、プラネタリギヤ102の歯数bを16T、インターナルギヤ103の歯数cを48Tとする。そして、サンギヤ101を固定し、プラネタリギヤ102を入力、インターナルギヤ103を出力とする。この場合、速度比(入力/出力)は、速度比=c/(a+c)となる。したがって、入力側のプラネタリギヤ102の回転数を1とすれば、出力側のインターナルギヤ103の回転数はその1.3333・・・倍となる。例えば、他側オーガ形成体92を158rpmの回転数で回転させると、一側オーガ形成体は210.7rpmで回転させることができる。
【0046】
この結果、エンジンEからの動力を他側オーガ形成体92に入力するだけで、他側オーガ形成体92を回転させることができる。また、遊星歯車機構100を介して、他側オーガ形成体92よりも掻込回転数を大きくして一側オーガ形成体91を回転させることができる。このように、一側オーガ形成体91の掻込回転数と他側オーガ形成体92の掻込回転数を異ならせて、一側オーガ形成体91の掻込力を他側オーガ形成体92よりも大とすることで、特に一側オーガ形成体91における穀稈の停滞を減少させることができる。
【0047】
次に、コンバインAの動力伝達について図5を参照して説明する。
エンジンEから動力は、図5に示すように、脱穀クラッチ61を介して、脱穀部5の扱胴28などの駆動用として伝達される。また、エンジンEからの動力は、選別・走行クラッチ62を介して、唐箕41、揺動体32などの選別部6の駆動用として選別駆動軸65を介して伝達されると共に、走行部3のトランスミッション部64などにも伝達される。
【0048】
また、本実施形態におけるコンバインAは、上記選別・走行用の動力を、刈取クラッチ63および刈取部伝達機構72を介して、刈取部2の各駆動部に伝達するように構成している。すなわち、刈取部伝達機構72は、上流側伝達機構73と下流側伝達機構74とから形成しており、同下流側伝達機構74は、リール側伝達機構75と刈刃側伝達機構76と他側オーガ伝達機構77とから形成している。上流側伝達機構73は、エンジンEに刈取クラッチ63を介してFHコンベア14の駆動側軸22を連動連結する一方、プラットホーム21の本体21aの背後に、軸支持体79を介して左右方向に伸延する中間軸67をフィーダハウス14の直下方に通すと共に回転自在に架設して、同軸支持体79の中途部と上記駆動側軸22の中途部との間に介設している。下流側伝達機構74のリール側伝達機構75は、中間軸67の右側中途部と掻き込みリール11のリール駆動軸15との間に介設している。下流側伝達機構74の刈刃側伝達機構76は、中間軸67の右側端部と刈刃12の刈刃駆動軸78との間に介設している。下流側伝達機構74の他側オーガ伝達機構77は、中間軸67の右側部と他側オーガ形成体92の他側オーガ軸70との間にスプロケット85a,85bを介して伝動チェン85cを巻回して介設している。
【0049】
このようにして、エンジンEからの動力を上流側伝達機構73→下流側伝達機構74のリール側伝達機構75、刈刃側伝達機構76、他側オーガ伝達機構77→掻き込みリール11、刈刃12、他側オーガ形成体92にそれぞれ伝達して駆動するようにしている。そして、他側オーガ形成体92に入力した動力を、遊星歯車機構100を介して、一側オーガ形成体91に入力している。
【0050】
図6は、第2実施形態としての掻込部16を示しており、同掻込部16では、エンジンEの動力を用いずに、電動モータの動力を用いて掻込オーガ13を駆動するようにしている。すなわち、図6に示すように、電動モータ110の駆動軸106を他側オーガ形成体92の他側オーガ軸70に直結して、電動モータ110の動力により他側オーガ形成体92を回転させている。また、他側オーガ形成体92に入力した電動モータ110の動力を、遊星歯車機構100を介して、一側オーガ形成体91に伝達して、同一側オーガ形成体91を回転させるようにしている。
【0051】
具体的には、図6に示すように、プラットホーム21のオーガ支持壁39の内部に電動モータ110を配設して、その電動モータ110で他側オーガ形成体92を駆動するようにしている。また、他側オーガ形成体92を駆動して、遊星歯車機構100を介して一側オーガ形成体91を駆動するようにしている。
【0052】
このようにして、電動モータ110と遊星歯車機構100とを設けて、同電動モータ110により他側オーガ形成体92を回転させ、遊星歯車機構100を介して一側オーガ形成体91を回転可能としているので、従来エンジンEからの動力を伝達する伝動チェン85cやスプロケット85a,85b(図4に示す)等の伝動機構が不要であり、伝動系の構造を簡単にして、両オーガ形成体91,92の掻込回転数を可変とすることができる。
【0053】
図7は、第3実施形態としての掻込部16を示しており、同掻込部16では、掻込オーガ13内にオーガ駆動用の電動モータ111と遊星歯車機構100を設けている。すなわち、一側オーガ形成体91の右側端部に遊星歯車機構100を設ける。また、他側オーガ形成体92の他側オーガ軸70を、一側オーガ形成体91の右側端部まで突出させて一側オーガ形成体91の右側端部に設けたベアリング105に軸支させると共に、サンギヤ101に連動連結している。
【0054】
また、上記掻込フィンガ53の第2回動軸96の端部に電動モータ111の本体部を連結している。さらに、電動モータ111の駆動軸106と各プラネタリギヤ102の入力軸107とプラネタリキャリア104で連結し、電動モータ111の駆動軸106の回転により、サンギヤ101の周囲でプラネタリギヤ102を回転自在としている。
【0055】
そして、他側オーガ形成体92を通常のエンジンEからの動力により回転させると、他側オーガ形成体92内の他側オーガ軸70に連動連結したサンギヤ101が回転する。そして、一側オーガ形成体91に設けた電動モータ111の駆動軸106を回動させることにより、プラネタリキャリア104を介してプラネタリギヤ102がサンギヤ101の周囲で回転(公転)する。これにより、プラネタリギヤ102の周囲にあるインターナルギヤ103と一体的に一側オーガ形成体91の本体が回転する。
【0056】
このように、掻込オーガ13内にオーガ駆動用の電動モータ111と遊星歯車機構100を設けて、同電動モータ111により遊星歯車機構100を介して両オーガ形成体91,92の掻込回転数を可変となしているので、従来のエンジンEからの動力を伝達する伝動チェンやプーリが不要であり、エンジンEからの動力を用いる伝動系の構造を簡単して、両オーガ形成体91,92の掻込回転数を可変とすることができる。
【0057】
さらには、上記のような遊星歯車機構100を用いずに、他側オーガ形成体92にはエンジンEからの動力を入力するようにし、一側オーガ形成体91には電動モータ(図示せず)の動力を入力してもよい。一側オーガ形成体91と他側オーガ形成体92とは異なる動力で駆動することにより、一側オーガ形成体91の掻込力を他側オーガ形成体92の掻込力よりも大となして、穀稈の搬送性を向上することができる。また、作物に応じて任意に回転数を変更することができる。
【0058】
次に、掻込オーガ13から搬送部4への穀稈の搬送について詳細に説明する。
【0059】
まず、コンバインAを走行させることにより、圃場に植立した穀稈を、掻き込みリール11により掻き込みながら、刈刃12により穀稈の根元部分を刈り取って、PFオーガに搬送するようにしている。その後、穀稈を、掻込オーガ13により同掻込オーガ13の略中央部に寄せ集めて、後方の搬送部4のFHコンベア14へ受け渡すようにしている。
【0060】
そして、一側オーガ形成体91の回転数を、他側オーガ形成体92の回転数よりも大きくして、一側オーガ形成体91の掻込力を他側オーガ形成体92の掻込力よりも大となしている。
【0061】
このようにして、搬送部4の取込口93に近接した一側オーガ形成体91の掻込力を、他側オーガ形成体92の掻込力よりも大とすることができ、一側オーガ形成体91において穀稈の停滞が減少し、搬送部4に搬送する穀稈の搬送性を向上することができる。
【0062】
特に、図4、図6及び図7に示すように、搬送部4の取込口93の左端部と掻込オーガ13の左端部との間の搬送スペースBが狭くても、一側オーガ形成体91の掻込力を大きくしているので、従来に比べて穀稈の停滞が減少する。
【0063】
また、刈り取る穀稈の負荷に応じて、掻込オーガ13の回転数を変化させることができる。すなわち、刈り取る穀稈の量が多く負荷が大きい場合には、負荷が少ない場合に比べて、掻込オーガ13の回転数を増やした状態で、一側オーガ形成体91の掻込力を他側オーガ形成体92の掻込力よりも大きくする。このようにして、穀稈の負荷に応じて、掻込オーガ13の掻込力を調整することができる。
【0064】
上記穀稈の負荷の検出は、掻込オーガ13の回転数を検出するセンサなどを設け、そのセンサで検出した掻込オーガ13の回転数に応じて、機体1の所定位置に設けたコントローラ(図示せず)により、掻込オーガ13にフィードバックさせて回転数を調整するようにしてもよい。
【0065】
運転部7においての図示しない切換スイッチにより、上記の負荷に同調して掻込オーガ13の回転数を変化させることもできるし、負荷に同調しないで掻込オーガ13の回転数を一定とすることもできる。
【0066】
さらに、コンバインAの車速に応じて、掻込オーガ13の回転数を変化させることもできる。すなわち、コンバインAの車速が大きい場合には、車速が、小さい場合に比べて掻込オーガ13の回転数を増やした状態で、一側オーガ形成体91の掻込力を他側オーガ形成体92の掻込力よりも大きくする。このようにして、穀稈の負荷に応じて、掻込オーガ13の掻込力を調整することができる。
【0067】
上記車速は、車軸部に車速を検出するセンサなどを設け、そのセンサで検出した車速に応じて、機体の所定位置に設けたコントローラにより、フィードバックさせて車速を調整するようにしてもよい。
【0068】
運転部7においての切換スイッチにより、上記の車速に同調して掻込オーガ13の回転数を変化させることもできるし、車速に同調しないで、掻込オーガ13の回転数を一定とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】この発明の実施の形態におけるコンバインの全体構成を示す側面図である。
【図2】この発明の実施の形態におけるコンバインの全体構成を示す平面図である。
【図3】この発明の実施の形態におけるコンバインの刈取部の全体構成を示す平面図である。
【図4】この発明の実施の形態におけるコンバインの掻込オーガの構成を示す平面図である。
【図5】この発明の実施の形態におけるコンバインの動力伝達の構成を示す動力伝達図である。
【図6】第2実施形態としての掻込オーガの構成を示す一部切欠平面説明図である。
【図7】第3実施形態としての掻込オーガの構成を示す一部切欠平面説明図である。
【符号の説明】
【0070】
A 汎用コンバイン、
2 刈取部、
13 掻込オーガ、
14 フィーダハウスコンベア、
91 一側オーガ形成体、
92 他側オーガ形成体
93 取込口、
94 接合部、
100 遊星歯車機構(変速部)
110 111 電動モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈り取った穀稈を中央部寄りに掻き込む掻込部と、同掻込部で掻き込んだ穀稈を取込口から取り込んで後方へ搬送する搬送部とを装備し、掻込部には刈取全幅と略同一幅の掻込オーガを設けた刈取収穫機において、
掻込オーガは、一側方から搬送部の取込口に穀稈を掻き込む一側オーガ形成体と、他側方から搬送部の取込口に穀稈を掻き込む他側オーガ形成体とを同軸的に配置して形成すると共に、
一側オーガ形成体は、他側オーガ形成体と搬送能力を異ならせたことを特徴とする刈取収穫機。
【請求項2】
掻込オーガ内に変速部を設けて、上記一側オーガ形成体と他側オーガ形成体の掻込回転数を異ならせたことを特徴とする請求項1記載の刈取収穫機。
【請求項3】
掻込オーガ内にオーガ駆動用の電動モータと変速部を設けて、同電動モータにより変速部を介して両オーガ形成体の掻込回転数を可変となしたことを特徴とする請求項1記載の刈取収穫機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−22291(P2010−22291A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188328(P2008−188328)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】