説明

刈取穀稈の穂先位置検出方法

【課題】本発明では、コンバインの穀稈位置検出センサにおいて、取付位置調整頻度を少なくし、位置調整も容易な穀稈位置検出手段を提供することを課題とする。
【解決手段】搬送装置14の上側に一個の距離測定センサ1を設け、この距離測定センサ1で少なくとも穀稈の株元側と穂先側の二箇所の距離測定を交互に時系列で行い、穀稈までの距離によって穀稈の層厚を算出し、該層厚から穀稈の穂先位置を推測すべくしてコンバインの穀稈位置検出手段を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、刈取穀稈の穂先位置検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンバインの機体前部には、穀稈を引き起こす引起装置と引き起こした穀稈の株元を刈る刈取装置と刈り取った穀稈の稈身中間部を挟持して後方のフィードチェンへ送る搬送装置からなる穀稈刈取搬送装置を設け、搬送装置からフィードチェンに引き継がれた穀稈の穂先側が脱穀装置で脱穀されるのである。そして、搬送装置で移送中の穀稈は、穀稈センサで穀稈の穂先位置を検出してその穂先側が脱穀装置の最適位置に供給されるよう搬送装置を横移動しながら調整してフィードチェンに引き渡される。
【0003】
例えば、特開2001−320936号公報には、刈取部の防塵カバー内に接触式の穀稈センサを設けた構成が記載されている。
【特許文献1】特開2001−320936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の穀稈センサは、穀稈に接触して穀稈の穂先通過位置を検出する接触式センサのために穂先先端を挟む二箇所に設けていて穂先が両センサの中間を通過することで穂先位置を検出するようにしている。このため、穀稈長が違ってくると両センサの取付位置を調整しなければならない。この二個の穀稈センサの取付位置調整は、同じ圃場内でも穀稈の長さに違いが有ると頻繁に行わなければならず、面倒である。
【0005】
そこで、本発明では、コンバインの穀稈位置検出センサにおいて、取付位置調整頻度を少なくし、位置調整も容易な穀稈位置検出手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上述の如き課題を解決するために、以下のような技術的手段を講じる。すなわち、請求項1記載の発明では、搬送装置(14)の上側に一個の距離測定センサ(1)を設け、この距離測定センサ(1)で少なくとも穀稈の株元側までの距離と穂先側までの距離とを交互に時系列で測定し、この測定結果によって穀稈の層厚を算出し、該層厚から穀稈の穂先位置を推測することを特徴とする刈取穀稈の穂先位置検出方法とした。
【0007】
これにより、搬送装置14による穀稈の搬送位置を一個の距離測定センサ1で検出できて、穂先通過位置を最適位置にする移動調整が行える。
また、請求項2記載の発明では、距離測定センサ(1)の距離測定時間と距離測定周期のどちらか或いは両方をコンバインの走行速度に対応して変化させることを特徴とする請求項1に記載の刈取穀稈の穂先位置検出方法とした。
【0008】
これにより、刈取速度によって変化する搬送穀稈量の変動に対応した穀稈位置情報が検出される。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によると、一個の距離測定センサ1で穀稈の穂先側と株元側の層厚を検出して穀稈位置を推測するために、少々の穀稈長の違いでは距離測定センサ1の取付位置の変更が必要なく、穀稈長が極端に違って距離測定センサ1の取付位置を変更する際にも一個であるために取り付け調整を楽に行うことができる。
【0010】
また、請求項2記載の発明によると、穀稈の刈取速度を速くしても搬送装置14による穀稈の位置が迅速に検出されるために搬送位置の修正を支障なく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。なお、本説明で左右とは、機体の進行方向に向かって位置する側を言う。
図1に示すように、コンバインの車体10の下部側に土壌面を走行する左右一対の走行クローラ11を有するクローラ走行装置9を配設し、車体10の前端側に分草杆12を備えた刈取部13が設けられている。刈取部13の上方には操縦席を備えたキャビン16があり、また車体10の上方には刈取部13で刈り取られ搬送装置14で搬送されてくる穀桿をフィードチェン15で引き継いで搬送して脱穀・選別する脱穀装置19がキャビン16の左後方に設けられ、該脱穀装置19で脱穀選別された穀粒を一時貯溜するグレンタンク17が脱穀装置の右側に配置されている。グレンタンク17の後部にオーガ18を起伏可能に連接して、グレンタンク17内の穀粒をオーガ18の先端に設ける取出口20からコンバインの近くに停止しているトラックの穀粒タンクに排出する構成としている。
【0012】
オーガ18の取出口20の側面には、刈取部13の前方に植立する穀稈に向けて倒伏センサ21を設けている。この倒伏センサ21は、レーザ線や赤外線或いは超音波を用いて距離を測定するセンサで、事前に入力或いは測定した地面までの距離から穀稈までの距離を減算して穀稈の長さを算出するが、算出された穀稈長が通常の穀稈長さより極端に短い場合に穀稈が倒伏していると判断し、走行速度の制御を行う。なお、この倒伏センサ21は、刈取部13から前方へ向けて張り出して設けるステーの先端に取り付けるようにしても良い。
【0013】
搬送装置14は、油圧シリンダ(図示省略)で機体の左右方向へ移動調整されて穀稈の穂先が脱穀装置19の適正位置を通過するように調整された穀稈をフィードチェン15に引き渡すが、その搬送装置14に挟持された穀稈の株元と穂先位置を検出する一個の距離測定センサ1が搬送装置14の上側でカバー2の下面に取り付けられている。距離測定センサ1は、レーザ線や赤外線或いは超音波を用いた非接触式のセンサで、図2の如く、センサから測定物までの距離と電圧の関係が図中の基準線SAで示されるようにセンサ出力電圧値として検出される。図中の距離A、Bが株元測定位置と穂先測定位置で、例えば、株元測定位置Aで電圧Kが検出され、穂先測定位置Bで電圧Hが検出されると、この電圧と基準線SA電圧との電圧差KVが株元側の層厚で、電圧差HVが穂先側の層厚として検出される。
【0014】
距離測定センサ1は、図3の如く、発光部LEDから株元光線5と穂先光線6が左右方向に分岐して照射され、その株元光線5の照射位置PAと穂先光線6の照射位置PBの反射光を受光部PSDで受けて距離を測定し、各照射位置までの距離との差が穀稈の層厚として検出される。そして、図4に示す如く、照射位置PA、PBの一定測定時間内の測定値が交互にコントローラに入力される。この照射位置PA、PBの測定時間は機体の走行速度が速くなるにしたがって短くして供給状況の変化に対応するようにしている。
【0015】
コントローラでは、測定時間内に複数回距離を測定するがその測定距離が加重平均されてその測定時間の平均層厚としている。また、穂先位置を推測するための上限層厚と下限層厚を設けて、測定した平均層厚が所定時間続いて上限層厚或いは下限層厚を超えていた場合に、搬送装置14を移動する制御を行う。すなわち、上限層厚を超えている場合には、搬送装置14を株元側へ移動し、下限層厚以下の場合には、搬送装置14を穂先側へ移動する。この上限層厚と下限層厚の制御データは、それぞれ手動で独立して変更可能にして、オペレータが層厚を入力して変更出来るようにしている。コントローラから搬送装置14の油圧シリンダを制御するバルブへの制御信号は、修正幅が大きいと制御信号を連続して出力して早く修正し、修正値が小さくなると制御信号をパルス的に出力してゆっくりと修正する。
【0016】
図5は、穂先検出センサ7と株元検出センサ8を別々に設けて穂先側と株元側の層圧を別々に検出する実施例で、穂先側検出センサ7と株元側検出センサ8を距離測定センサとし、穀稈KOの移送方向HOに対して移送前側が発光部LEDで移送後側が受光部PSDとなるようにカバー2に取付けられ、通常の穂先よりも外側には雑草検出センサ(図示省略)を設けて、穀稈より長い雑草を検出するようにしている。
【0017】
図6は、脱穀装置19の内部に設ける揺動棚22の穀粒層を検出する籾層センサ23を距離測定センサにした実施例で、揺動棚22の表面までの距離から籾表面までの距離を減算して籾の層厚を算出する。揺動棚22は上下に揺動しているので、上死点或いは下支点での測定距離から事前に測定した揺動棚22の上死点或いは下支点での距離を減算して籾層厚を算出するのである。
【0018】
図7は、コンバインの各種自動制御を行うコントローラ40の制御ブロック図で、扱ぎ深さ制御自動スイッチ30と穂先側検出センサ7と株元側検出センサ8と脱穀クラッチスイッチ33からの信号がデジタル信号入力処理回路36を通じて制御確認実行手段39へ入力する。また、その他センサ31からの信号がアナログ信号入力処理回路37を通じて制御確認実行手段39に入力する。
【0019】
エンジン回転センサ34と車速センサ35からの信号がパルス信号入力処理回路38を通じて走行検出手段41に入力する。
制御確認実行手段39と走行検出手段41とタイマカウント手段42と扱ぎ深さ制御手段43との間で情報信号の入出力が行われ、扱ぎ深さ制御手段43から供給深出力信号44と供給浅出力信号45が出力される。
【0020】
図8は、コンバインを実際に動かさずに自動制御が正常に作動するかを確認する制御確認のフローチャートである。
まず、ステップS1でモード確認が終了したかを判定し、終了していればステップS2の制御確認モード判定を行い、この判定がYESであればステップS3エンジン停止出力を開始し、ステップS4で自動制御確認モードを実行しリターンし、NOであればそのままでリターンする。なお、制御確認モードは運転席に設ける複数のスイッチ又はレバーを一定時間以上同時操作することで設定される。
【0021】
ステップS1の判定がNOであれば、ステップS5で制御開始時間をカウントし、ステップS6で制御開始時間経過の判定を行い、この判定がYESであればステップS16でモード確認終了を記憶し、リターンする。
【0022】
ステップS6の判定がNOであればステップS7のスイッチ入力監視時間をカウントし、ステップS8でスイッチ入力監視時間経過を判定し、この判定がYESであればステップS15で制御確認モードを記憶し、ステップS16でモード確認終了を記憶し、リターンする。
【0023】
ステップS8の判定がNOであればステップS9でスイッチ入力を読込み、ステップS10でホーンスイッチ操作中の判定を行う。この判定がNOであれば、ステップS17でスイッチ入力監視時間を初期化しリターンする。
【0024】
ステップS10の判定がYESであればステップS11のモード切換スイッチ操作中の判定を行い、この判定がNOであれば、ステップS17でスイッチ入力監視時間を初期化しリターンする。
【0025】
ステップS11の判定がYESであれば、ステップS12でエンジン回転センサが所定値以上かの判定を行い、この判定がNOであればステップS13車速センサが所定値以上かの判定を行い、この判定がNOであればステップS14ノ刈取脱穀レバーが入加の判定を行い、この判定もNOであればそのままリターンする。
【0026】
ステップS12かステップS13かステップS14のどれかの判定がYESであれば、ステップS18でモード確認終了を記憶してリターンする。
図9は、扱ぎ深さ制御の動作確認フローチャートである。
【0027】
ステップS20の制御確認モード判定において、この判定がNOであれば何もせずにリターンする。この判定がYESであればステップS21でスイッチやセンサのデータを読込み、ステップS22の扱ぎ深さ制御スイッチの「入」判定を行う。この判定がNOであれば何もせずにリターンする。この判定がYESであればステップS23でエンジン回転定格相当のデータを強制入力し、ステップS24で車速0.5m/S相当のデータを強制入力し、ステップS25で刈取脱穀ものレバー入力のデータを強制入力し、ステップS26で穀稈検出センサのデータを強制入力し、ステップS27の扱ぎ深さ、穂先センサがオンの判定を行う。この判定がYESであれば、ステップS29で浅扱ぎ出力を開始し、リターンする。この判定がNOであれば、ステップS28の扱ぎ深さ、株元センサがオフの判定を行う。この判定がYESであれば、ステップS30で負深扱ぎ出力を開始し、リターンする。この判定がNOであれば、そのままでリターンする。
【0028】
図10は、エンジンコントローラの制御ブロック図である。
コントローラ50に入力する信号は、水温センサ51からのエンジン冷却水の温度と、回転センサ52からの出力軸回転数と、振動センサ53からのエンジン振動振れ幅と、負荷自動制御スイッチ56のオン/オフ信号と、マイコンチェッカ57からの制御信号である。コントローラ50からは、電子キャブレータ55へエンジン回転数指令が出され、モニタ54にエンジン回転数や異常状態表示が行われる。
【0029】
異常状態は、エンジンの過熱や制御外のエンジン回転やエンジンの過大振動等で、この異常状態は負荷自動制御スイッチ56がオンであっても表示される。
マイコンチェッカ57からは、主変速レバーの前後進操作テスト信号や脱穀レバーの入テスト信号や籾排出レバーのテスト信号で、これらのテスト信号でエンジンが所定の回転数まで上昇するか確認する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】距離測定センサの出力線図
【図3】穀稈センサの作用説明図
【図4】穀稈センサの出力タイムチャート図
【図5】別実施例の穀粒センサ平面図
【図6】脱穀装置内部の揺動棚側断面図
【図7】制御ブロック図
【図8】制御フローチャート図
【図9】制御フローチャート図
【図10】エンジンの制御ブロック図
【符号の説明】
【0031】
1 距離測定センサ
14 搬送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送装置(14)の上側に一個の距離測定センサ(1)を設け、この距離測定センサ(1)で少なくとも穀稈の株元側までの距離と穂先側までの距離とを交互に時系列で測定し、この測定結果によって穀稈の層厚を算出し、該層厚から穀稈の穂先位置を推測することを特徴とする刈取穀稈の穂先位置検出方法。
【請求項2】
距離測定センサ(1)の距離測定時間と距離測定周期のどちらか或いは両方をコンバインの走行速度に対応して変化させることを特徴とする請求項1に記載の刈取穀稈の穂先位置検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−178045(P2009−178045A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17208(P2008−17208)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】