説明

制振装置及びそれを用いた間仕切り壁

【課題】制振性能に優れた制振装置及び間仕切り壁を提供する。
【解決手段】建物の上部側で水平にのびる上側水平部材2と、上側水平部材2よりも下方を水平にのびる下側水平部材3との間に取り付けられ、上側水平部材2と下側水平部材3との間の水平力を吸収する制振装置1である。上側水平部材2に固着されかつトラス構造を有した枠組からなる上部枠体5と、下側水平部材3に固着されかつトラス構造を有した枠組からなる下部枠体6と、上部枠体5と下部枠体6との間に、上下に引っ張られた状態で取り付けられた振動吸収部7とを含む。振動吸収部7は、上部枠体5と下部枠体6との相対的な水平変位によりせん断変形される粘弾性体8を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振性能に優れた制振装置及びそれを用いた間仕切り壁に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物に生じる振動を減衰させる装置が種々提案されている。例えば、下記特許文献1では、建物の上下の梁間に生じるせん断変形を、粘弾性体に伝えて振動エネルギーを吸収することが提案されている。また、下記特許文献2には、建物の天井裏などに所定の固有振動数を有するマスユニットを配設して振動エネルギーを吸収することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−169952号公報
【特許文献2】特開2005−188272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成では、振幅が小さい例えば交通振動のような微振動は、各部材の締結部分の遊びなどで吸収されてしまい、粘弾性体に十分にせん断変形が生じず、ひいては制振効果が得られない場合があった。
【0005】
また、特許文献2のような構造は、建物とマスユニットの固有振動数を合致させることが必要であるが、経年劣化や生活スタイルの変化により建物の振動特性が変化すると、本来の効果を発揮できなくなり、メンテナンスが必要となる。また、1台あたり数百キロのマスユニットを建物規模によっては複数台設置する必要があるため、設置する屋根面の補強を含めたコストの問題もある。
【0006】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、地震時等の大きな振動を早期に減衰させるのみならず、交通振動や強風などで生じる微振動についても応答性良く減衰しうる制振装置及びそれを用いた間仕切り壁を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のうち請求項1記載の発明は、建物の上部側で水平にのびる上側水平部材と、前記上側水平部材よりも下方を水平にのびる下側水平部材との間に取り付けられ、前記上側水平部材と下側水平部材との間の水平力を吸収する制振装置であって、前記上側水平部材に固着されかつトラス構造を有した枠組からなる上部枠体と、前記下側水平部材に固着されかつトラス構造を有した枠組からなる下部枠体と、前記上部枠体と前記下部枠体との間に、上下に引っ張られた状態で取り付けられた振動吸収部とを含み、前記振動吸収部は、前記上部枠体と前記下部枠体との相対的な水平変位によりせん断変形される粘弾性体を有することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、前記上部枠体及び前記下部枠体は、平行に向き合う一対の竪材、及び該竪材の上部側を継ぐ上桟、該竪材の下部側を継ぐ下桟を含んで矩形枠を有し、かつ前記矩形枠内を斜めにのびる一対の斜材を含む請求項1記載の制振装置である。
【0009】
また、請求項3記載の発明は、前記各竪材は、建物の間仕切り壁内を上下にのびるスタッドに添着される請求項2記載の制振装置である。
【0010】
また、請求項4記載の発明は、前記上部枠体と前記下部枠体との間には、上部枠体の竪材と下部枠体の竪材とを連結する連結竪材が設けられ、前記連結竪材は、前記上部枠体及び前記下部枠体の水平相対変位を可能に連結する連結材を介して前記上部枠体及び下部枠体にそれぞれ取り付けられる請求項1乃至3のいずれかに記載の制振装置である。
【0011】
また、請求項5記載の発明は、前記振動吸収部は、前記上部枠体側に取り付けられた上部側ブラケットと、前記下部枠体に取り付けられた下部側ブラケットと、前記上部側ブラケットと前記下部側ブラケットとを水平変位可能に連結する板バネ片とを含み、かつ前記上部側ブラケットは、下方にのびる第1支持片を具える一方、前記下部側ブラケットは、上方にのびるとともに前記第1支持片と隙間を隔てて対向する第2支持片を具え、これら第1支持片と第2支持片との間に前記粘弾性体が固着されてなる請求項1乃至4のいずれかに記載の制振装置である。
【0012】
また、請求項6記載の発明は、前記上部側ブラケットは、前記上部枠体にボルトにて固定され、前記下部側ブラケットは、長さ調整可能なブレースを介して前記下部枠体に固定される請求項5記載の制振装置である。
【0013】
また、請求項7記載の発明は、前記上部側ブラケットは、長さ調整可能なブレースを介して前記上部枠体に固定され、前記下部側ブラケットは、前記下部枠体にボルトにて固定される請求項5記載の制振装置である。
【0014】
また、請求項8記載の発明は、前記上部側ブラケット及び下部側ブラケットは、それぞれボルトにて上部枠体及び下部枠体に固定される請求項5記載の制振装置である。
【0015】
また、請求項9記載の発明は、前記上部側ブラケット及び前記下部側ブラケットは、それぞれ長さ調整可能なブレースを介して前記上部枠体及び下部枠体に固定される請求項5記載の制振装置である。
【0016】
また、請求項10記載の発明は、前記振動吸収部は、前記上部枠体側に取り付けられた上部側ブラケットと、前記下部枠体に取り付けられた下部側ブラケットと、これらの間を上下にのびて継ぐ一対の端部側リンクとを回転自在に枢結した四節回転連鎖をなす変位ユニット、前記上部側ブラケット、前記下部側ブラケット、又は一対の端部側リンクの何れかに設けられる第1支持片、及び前記上部側ブラケット、前記下部側ブラケット、又は一対の端部側リンクの何れかに設けられかつ前記第1支持片と向き合う第2支持片を具え、前記支持部の第1支持片と前記第2支持片との間に挟まれて固着された前記粘弾性体を含むことを特徴とする請求項1乃至4に記載の制振装置である。
【0017】
また、請求項11記載の発明は、請求項1乃至10のいずれかに記載された制振装置の両側面が面材で覆われていることを特徴とする間仕切り壁である。
【0018】
また、請求項12記載の発明は、前記面材は、前記上支持体側のみに固着される上の面材と、前記下支持体側のみに固着される下の面材とを有し、前記上の面材と前記下の面材との間には、小隙間が設けられる請求項11に記載の間仕切り壁である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の制振装置は、上側水平部材に固着されかつトラス構造を有した枠組からなる上部枠体と、下側水平部材に固着されかつトラス構造を有した枠組からなる下部枠体と、上部枠体と下部枠体との間に、上下に引っ張られた状態で取り付けられた振動吸収部とを有する。振動吸収部は、上部枠体と下部枠体との相対的な水平変位によりせん断変形される粘弾性体を有する。
【0020】
このような制振装置は、上部枠体と下部枠体とがトラス構造を有して高い剛性を具えるため、上側水平部材と下側水平部材との間に生じた小さな水平力でも、該上部枠体及び該下部枠体の変形等により吸収されるのが抑制される。これにより、上部枠体と下部枠体は、前記水平力による相対的な水平変位を、振動吸収部に確実に伝達でき、粘弾性体をせん断変形させて、該水平力に伴う振動エネルギーを吸収することができる。従って、本発明の制振装置は、大振動はもとより、微振動に対しても応答性良く振動エネルギーを吸収して振動を早期に減衰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態を示す制振構造を用いた間仕切り壁の正面図である。
【図2】上部枠体を拡大して示す斜視図である。
【図3】下部枠体を拡大して示す斜視図である。
【図4】上部枠体の竪材、連結竪材、及び連結材を拡大して示す部分断面図である。
【図5】下部枠体の竪材、連結竪材、及び連結材を拡大して示す部分断面図である。
【図6】竪材と連結竪材との間で水平相対変位させた状態を説明する図である。
【図7】振動吸収部を拡大して示す斜視図である。
【図8】図7のA1−A1断面図である。
【図9】振動吸収部が変形した状態を示す正面図である。
【図10】図9のA2−A2断面図である。
【図11】他の実施形態の振動吸収部を拡大して示す斜視図である。
【図12】図11のA3−A3断面図である。
【図13】図11の振動吸収部が変形した状態を示す正面図である。
【図14】(a)は振幅0.05mmの「荷重−上部枠体と下部枠体との相対変位」、(b)は振幅0.3mmの「荷重−上部枠体と下部枠体との相対変位」を示すグラフである。
【図15】(a)は振幅0.05mmの「粘弾性体の変形−上部枠体と下部枠体との相対変位」、(b)は振幅0.3mmの「粘弾性体の変形−上部枠体と下部枠体との相対変位」を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1〜3に示されるように、本実施形態の制振装置1は、例えば、住宅等の建物の上部側で水平にのびる上側水平部材2と、この上側水平部材2よりも下方を水平にのびる下側水平部材3との間に取り付けられ、上側水平部材2と下側水平部材3との間の水平力を吸収して振動を減衰させるものである。なお、本実施形態では、上側水平部材2が1階部分の天井板2aであり、下側水平部材3が1階部分の床板3aである場合を示している。
【0023】
本実施形態では、制振装置1が工業化住宅の間仕切り壁Wの内部に設けられたものを示す。
【0024】
前記間仕切り壁Wは、図1に示されるように、上側水平部材2に添着されかつ水平にのびる上側ランナー30Aと、下側水平部材3に添着されかつ水平にのびる下側ランナー30Bと、上側、下側水平部材2、3間を上下にのびる例えば断面角パイプ状の縦スタッド31、31とを含む軽鉄等の壁下地材、及びこの壁下地材の両側面を覆う例えば石膏ボードからなる面材33から構成され、内部に中空部iが形成される。そして、本実施形態の制振装置1は、この中空部i内に納められている。
【0025】
前記上側、下側ランナー30A、30Bは、図2に示されるように、ウエブ30aとその両端からのびる一対のフランジ30bとを有する断面略溝型状をなす。また、上側ランナー30Aは、その溝部を下側に向けて、ウエブ30aを上側水平部材2にビス又は釘等によって固着される。一方、下側ランナー30Bは、図1に示されるように、溝部を上側に向けて、ウエブ(図示省略)を下側水平部材3に当接させて固着される。
【0026】
前記縦スタッド31は、図1〜3に示されるように、断面角パイプ状に形成される。また、縦スタッド31は、上下方向に略等間隔に3分割され、上側に配される上の縦スタッド31A、下側に配される下の縦スタッド31B、及び該上、下の縦スタッド31A、31B間に配される中の縦スタッド31Cを含んで構成される。各縦スタッド31A、31B、31Cは、互いに連結しない非連結状態で配されている。
【0027】
また、本実施形態では、横スタッド32が設けられる。該横スタッド32は、縦スタッド31と同様に断面角パイプ状に形成され、上の縦スタッド31A、31Aの下端間を水平にのびる上の横スタッド32Aと、下の縦スタッド31B、31Bの上端間を水平にのびる下の横スタッド32Bとを含んで構成される。
【0028】
前記制振装置1は、図1に示されるように、上側水平部材2に固着される上部枠体5と、下側水平部材3に固着される下部枠体6と、該上部枠体5と該下部枠体6との間に取り付けられた振動吸収部7とを含んで構成される。
【0029】
前記上部枠体5は、平行に向き合う一対の竪材11、11、及び該竪材11、11の上部側を継ぐ上桟12、該竪材11、11の下部側を継ぐ下桟13を含む矩形枠を有する。さらに、上部枠体5には、この矩形枠内を、例えば竪材11の上部側から斜め下方にのびて下桟13にピン接合される一対の斜材14が含まれる。本実施形態の竪材11、上桟12、下桟13及び斜材14は、例えば、断面略溝型の軽鉄材料からなる。このような上部枠体5は、トラス構造を含むため、各部材の曲げ変形が抑制され、高い剛性を発揮できる。
【0030】
前記竪材11は、例えば、ウエブ11aとフランジ11b、11bとからなる断面略溝型をなし、上の縦スタッド31Aと略同長さに形成される。また、竪材11は、その溝部が内側に向けられるとともに、ウエブ11aが上の縦スタッド31Aに当接されて固着される。さらに、竪材11の上端は、上側ランナー30Aの溝部の内部に嵌め込まれてビスにて固着される。これにより、上部枠体5は、上側水平部材2に一体に固着される。
【0031】
また、竪材11の下端には、図4に拡大して示されるように、該竪材11の長手方向と直角な面を有して溝部を塞ぐ端部プレート15が設けられる。この端部プレート15には、その厚さ方向に貫通する孔部15hが設けられる。
【0032】
図2に示されるように、前記上桟12も、竪材11と同様、ウエブ12aとフランジ12b、12bとを有する断面略溝型状をなす。上桟12は、その溝部が下側に向けられるとともに、上側ランナー30Aよりも下方の位置で、その両端が竪材11の溝部に嵌め込まれて溶接により一体に接合される。
【0033】
前記下桟13も、ウエブ13aと、フランジ13b、13bとを有する断面略溝型をなす。また、下桟13は、その溝部が上側に向けられるとともに、その両端が、竪材11の下端側の溝部に嵌め込まれて一体に接合される。また、下桟13には、その中央部側の下端から垂下する固定板16が設けられるとともに、該固定板16の両側に前記上の横スタッド32A、32Aが固着される。本実施形態の固定板16には、その下端が凹状に切り取られた凹部16cが形成される。
【0034】
前記斜材14は、断面略溝型をなし、その溝部が下側へ向けられて固定される。また、斜材14の上端は、上桟12よりも下側で、竪材11の溝部に嵌め込まれてビスを用いてピン接合される。また、斜材14の下端は、下桟13の幅方向の中央部側で、該下桟13の溝部に嵌め込まれてピン接合される。これにより、上部枠体5内にトラス構造を提供する。本実施形態では、斜材14、14の下端が互いに離間して接合されているが、取付形状は適宜変更してもよい。
【0035】
次に、前記下部枠体6は、図3に示されるように、竪材21、上桟22、下桟23及び斜材24を含んで構成される。さらに、下部枠体6には、竪材21の上端側から斜め上方に突出する一対の突片25が含まれる。
【0036】
前記竪材21は、上部枠体5の前記竪材11と同様、ウエブ21aと、フランジ21b、21bとを含む断面略溝型をなし、下の縦スタッド31Bと略同長さに設定される。この竪材21は、ウエブ21aを下の縦スタッド31Bに当接させて固着される。
【0037】
また、竪材21の上端には、その溝部を塞ぐ端部プレート27が設けられる。この端部プレート27には、その厚さ方向に貫通する孔部27hが形成される。さらに、竪材21の下端には、フランジ状で水平にのびる脚部プレート26が設けられる。この脚部プレート26が、例えばビスや釘等によって床板3a(図1に示す)に固着されることにより、下部枠体6と下側水平部材3とが一体に固着される。
【0038】
前記上桟22も、ウエブ22aと、フランジ22b、22bとからなる断面略溝型をなす。また、上桟22は、その溝部が下側に向けられるとともに、その両端が、竪材21の溝部に嵌め込まれて接合される。また、上桟22のウエブ22aには、下の横スタッド32Bが添着される
【0039】
前記下桟23も、断面略溝型をなし、その溝部が上側に向けられるとともに、下側ランナー30Bよりも上方の位置で、その両端が竪材21の下側の溝部に嵌め込まれて接合される。
【0040】
前記斜材24は、例えばウエブ24aと、フランジ24b、24bとからなる断面略溝型をなす。この斜材24は、溝部が下側へ向けられるとともに、その上端が上桟22よりも下側で、竪材21の溝部に嵌め込まれてピン接合される。また、斜材24の下端は、下桟23の幅方向の中央部側で、該下桟23の溝部に嵌め込まれてピン接合される。
【0041】
前記突片25も、ウエブ25aと、フランジ25bとを有する断面略溝型をなす。該突片25は、その溝部が上側に向けられるとともに、上桟22よりも上方の位置で、竪材21の溝部に嵌め込まれて、溶接等により接合される。
【0042】

本実施形態では、図1に示されるように、上部枠体5と下部枠体6との間に、上部枠体5の竪材11と下部枠体6の竪材21とを連結する連結竪材28が設けられる。この連結竪材28は、図4、図5に示されるように、上部枠体5及び下部枠体6の相対変位を可能に連結する連結材29を介して、竪材11、21にそれぞれ突き合わせて固着される。
【0043】
前記連結竪材28は、例えば、ウエブ28aと、その両側からのびる一対のフランジ28b、28bとからなる断面略溝型をなし、竪材11、21と同様に軽鉄材料から構成される。この連結竪材28は、その溝部を内側に向けて配される。また、連結竪材28は、前記中の縦スタッド31Cと略同長さを有して形成され、連結竪材28のウエブ28aが中の縦スタッド31C(図1に示す)に固着される。
【0044】
また、連結竪材28の両端には、その溝部を塞ぐ端部プレート34、35が設けられる。端部プレート34、35には、その厚さ方向に貫通する孔部34h、35hがそれぞれ形成されている。
【0045】
前記連結材29は、連結竪材28と上部枠体5の竪材11とを連結する上部連結材29Aと、連結竪材28と下部枠体6の竪材21とを連結する下部連結材29Bとを含む。
【0046】
前記上部連結材29Aは、連結竪材28と上部枠体5の竪材11との間に配される座金状のスペーサ41、該スペーサ41を介して連結竪材28の端部プレート34の孔部34hから竪材11の端部プレート15の孔部15hへ挿通されるボルト42、及び該ボルト42に螺合するナット43とを含んで構成される。
【0047】
前記ボルト42は、各孔部15h、34hに挿通されるネジ軸部42aと、該ネジ軸部42aの一端に形成される頭部42hと含んで構成される。このネジ軸部42aの山径(外径)L1は、各孔部15h、34hの径L2よりも小さく設定される。これにより、竪材11及び連結竪材28は、図6に示されるように、互いに微小角度で相対変位可能なピン接合として連結される。
【0048】
前記下部連結材29Bも、図5に示されるように、上部連結材29Aと同様の構成からなり、連結竪材28と下部枠体6の竪材21との間に配されるスペーサ41、該スペーサ41を介して連結竪材28の下側の端部プレート35の孔部35hから竪材21の端部プレート27の孔部27hへ挿通されるボルト42、及び該ボルト42に螺合するナット43を含んで構成される。
【0049】
このような連結竪材28は、竪材11、21と微小角度で相対変位可能に連結されるとともに、各竪材11、21、28に固着される各スタッド31A、31B、31C(図1に示す)が、非連結状態で配されている。これにより、上部枠体5及び下部枠体6は、それぞれ相対変位を可能に連結される。
【0050】
次に、本実施形態の振動吸収部7は、図7に示されるように、上部枠体5側に取り付けられた上部側ブラケット51と、下部枠体6に取り付けられた下部側ブラケット52と、上部側ブラケット51と下部側ブラケット52とを、本実施形態では両側で連結する一対の板バネ片53、53とを含む。
【0051】
前記上部側ブラケット51は、例えば上部枠体5の下桟13に設けられた固定板16にボルトB1、ナットN1で固着されている。この上部側ブラケット51は、固定板16の前側に固着される上部前板部56、固定板16の後側に固着される上部後板部57、及びこれらの間に挟まれて支持されるとともに下方にのびる第1支持片58を含む。
【0052】
前記上部前板部56は、垂直面内をのびかつ固定板16に当接する主部56Aと、該主部56Aの両端から一方側へ突出する一対のフランジ56B、56Bとを含むコ字状をなす。また、上部後板部57も、上部前板部56と同様に、主部57Aとフランジ57B、57Bとを含む。
【0053】
上部前板部56及び上部後板部57は、前記固定板16に、主部56A、57Aを向き合わせて、ボルトB1及びナットN1で固着される。これにより、上部側ブラケット51には、図8に示されるように、主部56A、56Bと固定板16の凹部16cとで囲まれる空間S1が形成される。
【0054】
前記第1支持片58は、図7、図8に示されるように、正面視略矩形の板状に形成され、その上端が空間S1に挿入される。そして、第1支持片58は、上部前板部56の主部56A及び上部後板部57の主部57Aとの間にボルトB2及びナットN2で固着される。
【0055】
本実施形態の下部側ブラケット52は、前記上部前板部56の下方に配される下部前板部61、該下部前板部61の後側に配される下部後板部62、該下部前板部61と下部後板部62との間に挟まれる中板部63、及び上方にのびるとともに第1支持片58と隙間を隔てて対向する一対の第2支持片64、64を含む。また、下部側ブラケット52は、図1及び図7に示されるように、一対のブレース67、67を介して下部枠体6に固定される。
【0056】
前記下部前板部61及び下部後板部62は、図7、図8に示されれるように、上部側ブラケット51と同様に、主部61A、62Aと、フランジ61B、61B、62B、62Bとをそれぞれ含むコ字状に構成される。中板部63は、主部61A、62Aと略同一の大きさを有して略矩形の薄板状に形成される。
【0057】
前記第2支持片64は、正面視略矩形の板状に形成される。一対の第2支持片64は、主部61A、61B及び中板部63を挟み込み、これらにボルトB3及びナットN3で固着される。これにより、下部前板部61、下部後板部62、中板部63、及び第2支持片64が一体に固着される。
【0058】
また、第2支持片64は、下部前板部61及び下部後板部62から上方にのび、第1支持片58と隙間G1、G1を隔てて対向する。この隙間G1、G1には、粘弾性体8が配されて固着される。
【0059】
前記粘弾性体8には、種々のものが採用でき、本実施形態ではゴムが採用される。粘弾性体8は、せん断変形が加えられると、応力と歪とがヒステリシスループを描き、該ループ内で囲まれた面積に相当するエネルギーを熱に変換して吸収することができる。
【0060】
前記粘弾性体8には、損失正接tanδが大きい高減衰性を有する粘弾性ゴム(制振ゴム)が好適に用いられる。かかる粘弾性ゴム(制振ゴム)としては、例えば、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)及びクロロプレンゴム(CR)の一種又は二種以上のゴムポリマーに、高減衰性を発揮させるための種々の添加剤を配合して製造することができる。高減衰性を発揮させる添加剤としては、例えば、カーボンブラックなど、種々の添加剤が知られている。
【0061】
本実施形態の粘弾性体8は、略矩形状をなす一定厚さのゴムシートが用いられる。このようなシート状の粘弾性体8は、例えばゴムポリマーと添加剤とを例えば密閉式混練機などを用いて混練してゴム組成物を得、これをローラヘッド押出機等にてシート状に成形し、そこから予め定めた形状に打ち抜いたシートの1枚又は複数枚を積層して加硫成形することにより得ることができる。
【0062】
そして、このようなシート状の粘弾性体8は、第1支持片58と第2支持片64との間(これは、第1支持片58の両側に2個所ある)に挟まれてその両側面が固着されている。粘弾性体8と第1、第2支持片58、64との固着は、例えば、粘弾性体8の自己粘着力を利用する方法、通常の接着剤を用いる方法、又は加硫接着などのいずれかが採用できる。これにより、振動吸収部7の上部側ブラケット51に取付けられた第1支持片58と、下部側ブラケット52に取付けられた第2支持片64との間に、垂直面内を平面方向とするシート状の粘弾性体8が挟まれた状態で固着される。なお、粘弾性体8の厚さ等は、制振装置1を使用する建物の規模等に応じて適宜定めれば良いが、本実施形態では約3mmで形成されている。
【0063】
前記一対のブレース67は、長さ調整可能な例えばターンバックル68(図1に示す)を有し、上端から下端に向かって互いに離間する向きで斜め下方にのびる。ブレース67の上端部は、下部側ブラケット52にそれぞれボルトB4及びナットN4で固着される。またブレース67の下端は、突片25(図1に示す)に固着される。このようなブレース67は、下部側ブラケット52を下方へ引っ張ることができる。
【0064】
前記板バネ片53は、略矩形の薄板状に形成され、上部前板部56及び上部後板部57のフランジ56B、57Bから、下部前板部61及び下部後板部62のフランジ61B、62Bまでを垂直方向にのびてボルトB5及びナットN5により固着される。これにより、上部側ブラケット51と該下部側ブラケット52とが、板バネ片53によって連結される。また、板バネ片53は、例えば、厚さが1.0〜3.0mm程度に形成されるため、曲げ剛性が弱められ可撓性を有する。従って、板バネ片53は、上部側ブラケット51と下部側ブラケット52との小さな水平変位に対して柔軟に変形しうる。
【0065】
一方、板バネ片53は、引っ張り剛性を有するため、ブレース67の引張力を、板バネ片53を介して上部側ブラケット51に作用させることができる。これにより、上部側ブラケット51及び下部側ブラケット52が、ボルト孔等のガタが吸収され、それぞれ上下方向へ引っ張られる。従って、本実施形態の振動吸収部7は、交通振動や強風に伴う微振動といった小さな揺れに対しても、その振動が確実に伝達されうる。なお、振動吸収部7への上下への張力は、ターンバックル68を用いてブレース67の長さを調節することにより、適宜調節できる。
【0066】
以上のように構成された本実施形態の制振装置1の作用について述べる。
上側水平部材2と下側水平部材3との間に水平力が作用すると、この水平力は、上側、下側ランナー30A、30B、上、下の縦スタッド31A、31Bを介して上部枠体5及び下部枠体6に伝えられる。
【0067】
上部枠体5及び下部枠体6は、上述のようにトラス構造を含むため高い剛性を有し、上側水平部材2と下側水平部材3との間に生じた小さな水平力によって、該上部枠体5及び該下部枠体6自体が曲げ変形等することがない。
【0068】
また、上部枠体5及び下部枠体6は、連結竪材28を介して、それぞれ相対変位を可能に連結される。これにより、その水平変位は、図9に示されるように、該上部枠体5から固定板16を介して振動吸収部7の上部側ブラケット51に伝達されるとともに、該下部枠体6からブレース67を介して下部側ブラケット52に伝達される。上部側ブラケット51と下部側ブラケット52は、可撓性を有する板バネ片53により、水平変位可能に連結されるため、第1支持片58及び第2支持片64を水平変位させることができる。
【0069】
第1支持片58と第2支持片64との間で挟まれた粘弾性体8には、図10に示されるように、相対的な水平変位によりせん断変形が生じ、そのヒステリシスロスによって振動エネルギーが吸収できる。これにより、振動が早期に減衰する。
【0070】
このように、本実施形態の制振装置1は、上部枠体5と下部枠体6とが高い剛性を有するため、上側水平部材2と下側水平部材3との間に生じた水平力によって、該上部枠体5及び該下部枠体6自身の変形等が抑制される。また、振動吸収部7は、上下に引っ張られた状態にあるため、上部枠体5と下部枠体6は、小さな水平力による相対的な水平変位を、振動吸収部7に確実に伝達でき、粘弾性体8をせん断変形させて、該水平力に伴う振動エネルギーを吸収することができる。従って、本発明の制振装置1は、大振動はもとより、微振動に対しても応答性良く振動エネルギーを吸収して振動を早期に減衰させることができる。
【0071】
また、制振装置1は、縦方向の長さを有する上部枠体5と下部枠体6とを介して振動吸収部7が配されるため、水平力により振動や変形が比較的生じやすいブレース67の長さを、従来の制振装置に比べて短くできる。これにより、制振装置1は、ブレース67の振動や変形により、水平力が吸収されるのを抑制でき、小さな水平力が振動吸収部7に確実に伝達され得る。
【0072】
しかも、ブレース67は、その長さを短くすることにより、竪材21とブレース67との角度θ(図1に示す)を大きくできる。このため、本実施形態の制振装置1は、水平力に対する剛性を高めることができ、大振動も効果的に減衰しうる。さらに、本実施形態では、一対のブレース67のみで構成されるため、水平力の吸収を最小限に抑えうる。
【0073】
さらに、上部側ブラケット51及び下部側ブラケット52は、可撓性を有する板バネ片53によって連結されるため、小さな水平変位でも該板バネ片53が柔軟に撓み、粘弾性体8のせん断変形を阻害することもない。しかも、板バネ片53は、引っ張り剛性が強いため、上部枠体5と下部枠体6との相対的な水平変位が過度に大きくなると、その引張力を働かせて、粘弾性体8の過度のせん断変形を一定の大きさに規制する変位規制手段として機能し、粘弾性体8等の破損を抑制できる。
【0074】
また、本実施形態の制振装置1は、振動吸収部7が、建物の梁等の構造躯体に直接取り付けられるのではなく、上部枠体5及び下部枠体6に固着される。これにより、振動吸収部7の張力が、例えば梁等の構造躯体に直接作用しないため、梁等の曲げ変形を抑制するのに役立つ。また、このような架設方法は、梁等の躯体が無い場所にも制振装置1を設置することを可能としてプランニングの自由度を高める他、既設の間仕切り壁のスタッドを利用して容易に制振装置1を後付施工することもできる。
【0075】
なお、ブレース67は、該ブレース67自体の振動や変形が振動エネルギーを吸収するのを阻害するため、該ブレース67の軸径を大きくして剛性を高めるのが好ましい。これにより、ブレース67は、小さな揺れであっても、それを振動吸収部7に確実に伝達しうる。
【0076】
本実施形態では、上部側ブラケット51が上部枠体5にボルトB1にて固定されるとともに、下部側ブラケット52がブレース67を介して下部枠体6に固定されるものが例示されたが、この態様に限定されることはない。例えば、上部側ブラケット51がブレース67を介して上部枠体5に固定されるとともに、下部側ブラケット52が下部枠体6にボルトB1にて固定されるものでもよい。さらには、上部側ブラケット51及び下部側ブラケット52のそれぞれが、ボルトB1を介して上部枠体5、及び下部枠体6に固定されるものでも、又はブレース67を介して固定されるものでもよい。前者の場合、上部枠体5及び下部枠体6の縦方向の長さを上記実施形態よりも大きくすればよい。
【0077】
なお、本実施形態の制振装置1を組み込んだ間仕切り壁Wでは、図1に示したように、両側面にそれぞれ配される面材33は、例えば2分割されかつ2mm程度の小隙間を介在させてそれぞれ独立して配された上下の面材33A、33Bからなる。各面材33A、33Bは、例えば、上側、下側ランナー30A、30B、上、下の縦スタッド31A、31B、及び横スタッド32に固着される。これにより、振動時、上下の面材33A、33B間に相対変位を作り出し、制振壁パネルの面内せん断剛性が過度に上昇するのを防止できる。これは、粘弾性体8に確実に振動エネルギーを伝達するのに役立つ。なお、面材は、左右に2分割することもできる。
【0078】
図11乃至図13には、本発明の他の実施形態の振動吸収部7が示される。
この実施形態の振動吸収部7は、図11及び図12に示されるように、上部側ブラケット76、その下方に配される下部側ブラケット77、これら上部側ブラケット76と下部側ブラケット77との間を上下にのびて継ぐ左右一対の端部側リンク78、79、前記リンク等の何れかに設けられる第1支持片81、該第1支持片81と向き合う第2支持片82、及び第1支持片81と第2支持片82との間に接着される粘弾性体8とを含む変位ユニット70として構成される。
【0079】
本実施形態では、上部側ブラケット76と下部側ブラケット77とが、同一の長さを有するとともに、両側の端部側リンク78、79が互いに同一の長さを有する。
【0080】
本実施形態の上部側ブラケット76は、例えば、垂直面内をのびる前板部76Aと、この前板部76Aに固定板16を介して固着される後板部76Bとを含んで構成される。前板部76Aと後板部76Bには、その両側から下方へ突出する凸部76c、76cが設けられ、実質的に同一形状を有する。
【0081】
前記下部側ブラケット77も、例えば、垂直面内をのびる前板部77Aと、この前板部77Aにスペーサ77Sを介して固着される後板部77Bとを含んで構成される。前板部77Aと後板部77Bには、その両側から上方へ突出する凸部77c、77cが設けられ、実質的に同一形成を有する。
【0082】
前記端部側リンク78、79は、垂直面内を上下にのびる略矩形の板状に形成される。また、端部側リンク78、79は、上部側ブラケット76の凸部76c、76cと下部側ブラケット77の凸部77c、77cとの間に配されて、ボルトB6及びナットN6等で回転自在に連結される。
【0083】
これにより、変位ユニット70は、上部側ブラケット76、下部側ブラケット77、端部側リンク78、79が回転自在な回り対偶83で環状に枢結されることにより四節回転連鎖として、平行リンク機構を構成している。なお、変位ユニット70は、金属材料からなるが、その具体的な形状や長さ等は、例示の態様に限定されることなく種々の態様に変形することができるのは言うまでもない。
【0084】
本実施形態において、第1支持片81は、図において、左側(一方)の端部側リンク78の例えば前側(図11において紙面の手前側を前、紙面の奥側を後とする。)にボルトB7及びナットN7によって固着される。また、第1支持片81の右側(他方)の端部は、上部側ブラケット76、下部側ブラケット77、端部側リンク78、79が囲む略矩形の空間内に突出している。ただし、第1支持片81は、右側(他方)の端部側リンク79とは干渉しない長さで突出している。
【0085】
他方、第2支持片82は、図において右側(他方)の端部側リンク79の後側にボルトB8及びナットN8によって固着されている。また、第2支持片82の左側(一方)の端部は、上部側ブラケット76、下部側ブラケット77、端部側リンク78、79が囲む略矩形の空間内に突出するとともに、第1支持片81と互いに平行に向き合うように配置されている。第2支持片82も、左側(一方)の端部側リンク78とは干渉しない長さで突出している。このように、第1支持片81と第2支持片82は、互いに干渉することなく、それぞれ互い違いにかつ隙間を隔てて向き合って配される。そして、これらの間に、粘弾性体8が固着されている。
【0086】
以上のように構成された本実施形態の振動吸収部7(変位ユニット70)の作用について述べる。
上部枠体5及び下部枠体6の水平変位は、上部枠体5の下桟13から変位ユニット70の上部側ブラケット51に伝達されるとともに、該下部枠体6からブレース67を介して下部側ブラケット52に伝達される。
【0087】
前記変位ユニット70は、回動自在な四節回転連鎖をなすため、小さな外力でも容易に変形できる。従って、変位ユニット70は、上部枠体5及び下部枠体6を介して伝達される上側水平部材2と下側水平部材3との間の僅かな水平力(相対水平変位)でも、確実に菱形に変形する。
【0088】
このように、変位ユニット70が変形することにより、第1支持片81と第2支持片82との間で挟まれた粘弾性体8には、せん断変形が生じ、そのヒステリシスロスによって振動エネルギーを吸収できる。これにより、振動が早期に減衰する。
【0089】
また、本実施形態では、変位ユニット70において、上部側ブラケット76(及び下部側ブラケット77)のリンク長さaが、端部側リンク78及び79のリンク長さbよりも大きく形成されている。この例では、リンク長さの比(a/b)が、約4.0である。
【0090】
このような変位ユニット70では、水平方向のせん断変位を、約4倍に増幅させて粘弾性体8に与えることができる。換言すれば、より小さな水平力(微振動)でも確実に粘弾性体8に大きなせん断変形を与えて振動エネルギーを吸収できる点で好ましい。
【0091】
前記リンク長さの比(a/b)については、特に限定されるものではなく、使用される建物の規模や想定される水平力に応じて種々定めることができるが、小さすぎると、前記効果が十分に発現しないし、逆に、大きすぎるとブレース等にも大きな負荷が作用するため補強構造が必要になる他、納まり上の問題もある。このような観点より、工業化住宅の間仕切り壁等に設置する場合には、前記リンク長さの比(a/b)は、例えば2〜4程度で定めるのが好ましい。
【0092】
なお、この実施形態では、上述の通り、粘弾性体8に増幅させてせん断変位を伝えることができる。しかしながら、粘弾性体8に生じるせん断変形が大きくなると、粘弾性体8の損傷等のおそれがある。そこで、図13に示されるように、粘弾性体8のせん断変位を一定の大きさに規制する変位規制手段84を設けることが望ましい。
【0093】
この変位規制手段84は、粘弾性体8のせん断変位が一定量(本実施形態では、粘弾性体8の厚さに相当する3mm以上)になると、第1支持片81の先端部が上部側ブラケット76の下縁面76eに、かつ第2支持片82の先端が下部側ブラケット77の上縁部77eにそれぞれ当接し、変位ユニット70の変形が拘束される。これにより、粘弾性体8に過度のせん断変形が生じることによる損傷を効果的に防止することができる。
【0094】
この実施形態の変位ユニット70では、第1支持片81及び第2支持片82が、端部側リンク78、79に設けられるものが例示されたが、上部側ブラケット76及び下部側ブラケット77にそれぞれ設けられるものでもよい。
【0095】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0096】
図1に示される制振装置を用いた間仕切り壁を試作し、振動台を用いて微小振幅載荷実験を行い、本制振装置の性能を確認した。本実験では、上側水平部材を反力架台に、下側水平部材を振動台にそれぞれ固定し、振動数0.01Hz、振幅0.05mm、0.3mmの正弦波で該振動台を加振して、間仕り切壁に水平方向の強制変位を与えた。実験結果は、「荷重(N)−上部枠体と下部枠体との相対変位(mm)」を図14に、及び「粘弾性体の変形(mm)−上部枠体と下部枠体との相対変位(mm)」を図15に、それぞれ示す。
【0097】
実験の結果、実施例の制振装置は、図14(a)に示されるように、振幅0.05mmという極微小変形時からループを描き、エネルギー吸収効果を発揮していることが分かった。また、実施例の制振装置は、図15(a)に示されるように、振幅0.05mmから粘弾性体がせん断変位し、振動エネルギーを吸収できることが確認できた。
【符号の説明】
【0098】
1 制振装置
2 上側水平部材
3 下側水平部材
5 上部枠体
6 下部枠体
7 振動吸収部
8 粘弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の上部側で水平にのびる上側水平部材と、前記上側水平部材よりも下方を水平にのびる下側水平部材との間に取り付けられ、前記上側水平部材と下側水平部材との間の水平力を吸収する制振装置であって、
前記上側水平部材に固着されかつトラス構造を有した枠組からなる上部枠体と、
前記下側水平部材に固着されかつトラス構造を有した枠組からなる下部枠体と、
前記上部枠体と前記下部枠体との間に、上下に引っ張られた状態で取り付けられた振動吸収部とを含み、
前記振動吸収部は、前記上部枠体と前記下部枠体との相対的な水平変位によりせん断変形される粘弾性体を有することを特徴とする制振装置。
【請求項2】
前記上部枠体及び前記下部枠体は、平行に向き合う一対の竪材、及び該竪材の上部側を継ぐ上桟、該竪材の下部側を継ぐ下桟を含んで矩形枠を有し、かつ
前記矩形枠内を斜めにのびる一対の斜材を含む請求項1記載の制振装置。
【請求項3】
前記各竪材は、建物の間仕切り壁内を上下にのびるスタッドに添着される請求項2記載の制振装置。
【請求項4】
前記上部枠体と前記下部枠体との間には、上部枠体の竪材と下部枠体の竪材とを連結する連結竪材が設けられ、
前記連結竪材は、前記上部枠体及び前記下部枠体の水平相対変位を可能に連結する連結材を介して前記上部枠体及び下部枠体にそれぞれ取り付けられる請求項1乃至3のいずれかに記載の制振装置。
【請求項5】
前記振動吸収部は、前記上部枠体側に取り付けられた上部側ブラケットと、前記下部枠体に取り付けられた下部側ブラケットと、前記上部側ブラケットと前記下部側ブラケットとを水平変位可能に連結する板バネ片とを含み、かつ
前記上部側ブラケットは、下方にのびる第1支持片を具える一方、前記下部側ブラケットは、上方にのびるとともに前記第1支持片と隙間を隔てて対向する第2支持片を具え、これら第1支持片と第2支持片との間に前記粘弾性体が固着されてなる請求項1乃至4のいずれかに記載の制振装置。
【請求項6】
前記上部側ブラケットは、前記上部枠体にボルトにて固定され、
前記下部側ブラケットは、長さ調整可能なブレースを介して前記下部枠体に固定される請求項5記載の制振装置。
【請求項7】
前記上部側ブラケットは、長さ調整可能なブレースを介して前記上部枠体に固定され、
前記下部側ブラケットは、前記下部枠体にボルトにて固定される請求項5記載の制振装置。
【請求項8】
前記上部側ブラケット及び下部側ブラケットは、それぞれボルトにて上部枠体及び下部枠体に固定される請求項5記載の制振装置。
【請求項9】
前記上部側ブラケット及び前記下部側ブラケットは、それぞれ長さ調整可能なブレースを介して前記上部枠体及び下部枠体に固定される請求項5記載の制振装置。
【請求項10】
前記振動吸収部は、前記上部枠体側に取り付けられた上部側ブラケットと、前記下部枠体に取り付けられた下部側ブラケットと、これらの間を上下にのびて継ぐ一対の端部側リンクとを回転自在に枢結した四節回転連鎖をなす変位ユニット、
前記上部側ブラケット、前記下部側ブラケット、又は一対の端部側リンクの何れかに設けられる第1支持片、及び
前記上部側ブラケット、前記下部側ブラケット、又は一対の端部側リンクの何れかに設けられかつ前記第1支持片と向き合う第2支持片を具え、
前記支持部の第1支持片と前記第2支持片との間に挟まれて固着された前記粘弾性体を含むことを特徴とする請求項1乃至4に記載の制振装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載された制振装置の両側面が面材で覆われていることを特徴とする間仕切り壁。
【請求項12】
前記面材は、前記上支持体側のみに固着される上の面材と、前記下支持体側のみに固着される下の面材とを有し、
前記上の面材と前記下の面材との間には、小隙間が設けられる請求項11に記載の間仕切り壁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−247027(P2011−247027A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123151(P2010−123151)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】