説明

削孔ビット及び削孔方法

【課題】マンホールの壁に一度の作業で2段形状の取付け孔を削孔する。
【解決手段】取付け管16aと接続するための接続孔を空けるための小径用削孔部材と、マンホールの壁に前記取付け管16aを接続させるための、前記接続孔よりも大きい径を有する結合穴16bを空けるための大径用削孔部材と、を備え、前記小径用削孔部材は、前記大径用削孔部材よりも所定量突出しており、前記接続孔と前記結合穴とを同時に削孔することができることを特徴とする削孔ビットを用いて、マンホールの壁を削孔する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組立マンホール等のマンホールについて、流入出管用の取付け穴を削孔する削孔ビット及び削孔方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組立マンホールとは、工場等で製造され、所定の位置に接続するための取付け孔を削孔したマンホールの部材を施工現場に運び込み、施工現場で前記部材を組み立てて成る一組のマンホールをいう。
【0003】
施工現場においては、組立マンホールに取付け管を接続し、部材を組み立てて組立マンホールを構成する作業などが行われる。これらの作業のうち、組立マンホールに取付け孔を削孔する作業について、例えば以下のような方法で行われている。
【0004】
(I)例えば、マンホール躯体の壁(以下、管取付け壁とよぶ)に一つの直径の取付け孔を削孔する方法がある。図9(1)は、この方法によって管取付け壁91に直径d3の取付け孔93を削孔したときの、管取付け壁91を垂直方向に切って側面から見たときの断面図である。また、図9(2)は、図9(1)と同様に、この方法によって管取付け壁91に直径d3の取付け孔93を削孔したときの、管取付け壁91を平面方向に切って上から見たときの断面図である。取付け孔93は、削孔ビット92を用いて管取付け壁91の外側から内部に向かって削孔した孔である。
【0005】
図10(1)は、図9中の削孔ビット92の断面図である。図10(1)に示すように、削孔ビット92は円筒状の削孔ビット本体101とダイヤモンドチップ102から構成される。削孔ビット本体101は、その端面上に幅が10mm以下のダイヤモンドチップ102が配置されている。削孔ビット92を、ダイヤモンドチップ102側から見た場合には、例えば図10(2)のように、ダイヤモンドチップ102が円周状に並んで見えることとなる。
【0006】
図11(1)は、上記(I)の方法によって、管取付け壁111の底部に取付け孔113を削孔した場合の、管取付け壁111を垂直方向に切って、削孔した方向に対して垂直な側面から見たときの断面図である。また、図11(2)は、図11(1)と同様に、管取付け壁111の底部に取付け孔113を削孔した場合の、管取付け壁111を垂直方向に切って、削孔した方向に対して平行な方向から見たときの断面図である。管取付け壁111の底部にはインバート112が配置されている。
【0007】
上記(I)の方法によって管取付け壁111に取付け孔113を削孔した場合には、管取付け壁111を削孔すると同時にインバート112も削孔される。そのため、取付け管を接続するためには、図11(2)中のインバート欠損部114を修理してから行う必要がある。
【0008】
(II)次に、例えば、下記特許文献1に示されているように、管取付け壁に、接続孔と、可撓継手が取付け可能な結合穴と、から構成する2段形状の内周面を有する取付け孔を削孔する方法がある。この2段形状の取付け孔は以下に説明する工程によって形成される。
【0009】
図12に示す6つの図は、2段形状の取付け孔を削孔する方法を説明するための、管取付け壁を垂直方向に切って側面から見た断面図である。まず、最初に、図12(1)に示すように、管取付け壁121がある。次に、図12(2)に示すように、削孔ビット122を用いて、管取付け壁121に接続孔123を削孔する。なお、削孔ビット122は、図10(1)に示す削孔ビット92と同様に、円筒状部材の一方の端面上にダイヤモンドチップを配置した構造の削孔ビットである。次に、図12(3)に示すように、削孔ビット122よりも大きな直径を有する削孔ビット124を用いて、管取付け壁121に切削部125を切削する。なお、削孔ビット124は、図10(1)に示す削孔ビット92と同様の構造の削孔ビットである。そして、図12(4)に示すように、コンクリート残り127をハンマー126によって破砕する。すると、図12(5)に示すように、粗面128が形成される。最後に、図12(6)に示すように、粗面128を研磨削孔ビット129を用いて研磨することによって、滑らかな垂直面130が形成される。このような工程を経て、2段形状の取付け孔を形成できる。
【0010】
2段の取付け孔を削孔した場合には、例えば以下のような3つの特徴を有する。
【0011】
第1の特徴は、削孔工程における修理に関する。図11(1)及び(2)に示すように、上記(I)の方法によって、管取付け壁111に一つの直径の取付け孔113を削孔した場合には、インバート112を大きく欠損した。一方、上記(II)の方法によれば、インバートを欠損せずに取付け孔を削孔できる。図13(1)は、上記(II)の方法によって、管取付け壁131に、結合穴135と、取付け管134の内径と同一の径を有する接続孔136と、を削孔した場合の、管取付け壁131を平面方向に切って上から見たときの断面図である。また、図13(2)は、上記(II)の方法によって、管取付け壁131に、結合穴135と、取付け管134の内径と同一の径を有する接続孔136と、を削孔した場合の、管取付け壁131を垂直方向に切って削孔した方向と同じ方向から見たときの断面図である。2段形状の取付け孔を削孔した場合には、図13(1)及び(2)に示すように、インバート132が欠損されることはない。この結果、削孔後に管取付け壁131及びインバート132の修理することを考慮せずに、取付け管134を取り付けることができる。
【0012】
第2の特徴は、目地部の仕上げ作業に関する。図11(1)及び(2)に示すように、上記(I)の方法によって、管取付け壁111に一つの直径の取付け孔113を削孔した場合には、取付け孔113を削孔した後に、目地部を仕上げる作業を行う必要がある。しかし、図13(1)及び(2)及び(3)に示すように、上記(II)の方法によって、管取付け壁131に、結合穴135と、取付け管134の内径と同一の径を有する接続孔136と、を削孔した場合には、削孔と同時に目地部133が形成される。この結果、削孔後に内目地作業を行う必要がなくなる。
【0013】
第3の特徴は、取付け管の取付け角度に関する。図14は、上記(I)の方法によって、管取付け壁141に、取付け孔142と取付け孔143を削孔した場合の、管取付け壁141を平面方向に切って、上から見たときの断面図である。また、図15は、上記(II)の方法によって、管取付け壁151に、2段形状の取付け孔152と取付け孔153を削孔した場合の、管取付け壁151を平面方向に切って、上から見たときの断面図である。図14中の取付け角度a1と、図15中の取付け角度a2は同一の角度である。また、図14中の幅l1及び図15中の幅l2は、それぞれ取付け孔の間に残された管取付け壁の幅を示す。削孔残りは、管取付け壁の強度を確保するために広い方が好ましい。図14中の幅l1と、図15中の幅l2を比較すると、幅l2の方が長い。従って、2段形状の取付け孔を削孔する方法は、一つの直径の取付け孔を削孔する方法よりも、幅が広い削孔残りを確保できる点で優れている。
【0014】
(3)さらに、例えば、下記特許文献2には、コンクリート製のユニットの壁について、貫通孔を開ける部位の壁を薄くすることによって、現場での削孔作業を軽減することが記載されている。
【0015】
(4)また、さらに、下記特許文献3には、配管ボックスの壁体に継手本体を差し込むための孔が開けられており、その孔には螺旋状の切り込みが施されている。さらに、孔の内周面には水分を吸収したときに膨張する膨張体が構成する旨が記載されている。
【0016】
【特許文献1】特開平08−302717号公報
【特許文献2】特開平08−300322号公報
【特許文献3】特開2005−057970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
前述したように、組立マンホールに取付け孔を削孔する作業について、種々の工夫がなされているが、例えば以下のような課題も未だ残されている。
【0018】
例えば、上記特許文献1においては、2段形状の取付け孔を削孔するために複数の工程を経なければならず、施工作業が複雑なものであった。また、1箇所の取付け孔を削孔するために、その削孔の工程で削孔ビットを交換する必要がある。そのため、1個の削孔ビットを装着したまま、連続して複数箇所に2段形状の取付け孔を削孔することは困難であった。
【0019】
また、例えば上記特許文献2においては、予め定められた壁の部位に貫通孔を開けなければ効果がない。そのため、マンホールのように、施工現場によって取付け孔の位置や大きさが変わるような用途に適用するのは不便であった。
【0020】
また、例えば上記特許文献3においては、孔の内周面に螺旋形状の切り込みを入れるなど、特殊な加工が必要であり、汎用性に欠けていた。また、予め定められた壁の部位に貫通孔を開けなければ効果がないので、マンホールのように、施工現場によって取付け孔の位置や大きさが変わるような用途に適用するのは不便であった。
【0021】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、組立マンホールに容易に流入出管を取り付けるための取付け孔を開ける技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
(1)本発明は、上記課題を解決するために、マンホールの壁に取付け管を接続するための取付け孔を削孔する際に用いられる削孔ビットであって、前記取付け管と接続するための接続孔を空けるための小径用削孔部材と、前記マンホールの壁に前記取付け管を嵌合させるための、前記接続孔よりも大きい径を有する結合穴を空けるための大径用削孔部材と、を備え、前記小径用削孔部材は、前記大径用削孔部材よりも所定の距離だけ突出しており、前記接続孔と前記結合穴とを同時に削孔することができることを特徴とする削孔ビットである。
【0023】
(2)本発明は、上記課題を解決するために、上記(1)に記載の削孔ビットにおいて、前記小径用削孔部材が、一方の端面に設けられた第2の円筒状部材、を備え、前記大径用削孔部材は、前記第2の円筒状部材の一方の端面から他方の端面に向かって所定の距離だけ離れた箇所に、前記第2の円筒状部材の周囲を取り囲むように取り付けられていることを特徴とする削孔ビットである。
【0024】
(3)本発明は、上記課題を解決するために、上記(2)に記載の削孔ビットにおいて、前記第2の円筒状部材の外側に配置され、かつ前記第2の円筒状部材と同軸の位置に配置された第1の円筒状部材を有し、前記大径用削孔部材は、前記第1の円筒状部材の一方の端面上に取り付けられていることを特徴とする削孔ビットである。
【0025】
(4)本発明は、上記課題を解決するために、上記(3)に記載の削孔ビットにおいて、前記第2の円筒状部材のうち前記第1の円筒状部材から突出した部分の側面に第1の開口を設け、前記第2の円筒状部材の内側に供給された水が、前記第1の開口を通じて、外部に吐出することを特徴とする削孔ビットである。
【0026】
(5)本発明は、上記課題を解決するために、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の削孔ビットにおいて、前記大径用削孔部材に第2の開口を設け、前記第1の円筒状部材と前記第2の円筒状部材との間隙に、水をためるための水だまりの空間が形成され、この空間にためられた水が、前記第2の開口から前記大径用削孔部材の切削面上に供給されることを特徴とする削孔ビットである。
【0027】
(6)本発明は、上記課題を解決するために、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の削孔ビットを用いて、前記接続孔と前記結合穴とを同時に削孔することを特徴とする削孔方法である。
【0028】
(7)本発明は、上記課題を解決するために、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の削孔ビットを用いて、前記接続孔と前記結合穴とを同時に削孔されたことを特徴とするマンホールである。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、1工程の作業によって、マンホール躯体に対して2段形状の取付け孔を削孔できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づき説明する。
【0031】
A.取付け孔の削孔
まず、図1(1)は取付け孔15を削孔する前の管取付け壁12の斜視図である。また、図2(1)は取付け孔15を削孔する前の管取付け壁12の側面図である。さらに、図3(1)は取付け孔15を削孔する前の取付け壁12を垂直方向に切って側面から見たときの断面図である。また、さらに、図4(1)は取付け孔15を削孔する前の管取付け壁12を平面方向に切って上から見たときの断面図である。
【0032】
管取付け壁12は、図1(1)に示すように、削孔台11上に固定される。そして、削孔ビット13を削孔方向14の方向に、回転させながら動かして、管取付け壁12に取付け孔15を削孔する。
【0033】
図6(1)は、大径用削孔ビット60の側面図である。また、図6(2)は、小径用削孔ビット66の側面図である。さらに、図6(3)は、削孔ビット13の側面図である。またさらに、図6(4)は、削孔ビット13を小径用削孔部材65側から見たときの削孔ビット13の断面図である。
【0034】
削孔ビット13は、図6(3)に示すように、小径用削孔ビット66の外側に大径用削孔ビット60を被せて、小径用削孔ビット66の上部と大径用削孔ビット60の内側とを固定して構成される。大径用削孔ビット60は、図6(1)に示すように、第1の円筒状部材61と、円環状の大径用削孔部材62と、大径用削孔刃63と、から構成される。また、小径用削孔ビット66は、図6(2)に示すように、第2の円筒状部材64と、削孔刃を備えた小径用削孔部材65と、から構成される。削孔ビット13を、小径用削孔部材65側から見ると、小径用削孔部材65が円周状に並び、さらに小径用削孔部材65の外周を囲むように大径用削孔刃63が配置されることとなる。このことが、図6(4)に示されている。
【0035】
例えば、図1(1)において、削孔ビット13を、第1の円筒状部材61及び第2の円筒状部材64の軸を中心に回転させながら、削孔方向14の方向に動かす。そして、削孔ビット13を構成する部材のうち、最初に小径用削孔ビット66が管取付け壁12に接触して、接続孔15aが削孔され、内周面51aが形成される。さらに削孔ビット13を削孔方向14の方向に所定量だけ動かすと、大径用削孔刃63が管取付け壁12に接触して、接続孔15bが削孔され、内周面51b及び垂直面51cが形成される。所望の取付け孔15を削孔したのち、削孔ビット13を削孔方向14に対して反対の方向に動かして、削孔が終了する。図1(2)は、取付け孔15が削孔された後の管取付け壁12の斜視図である。図1(2)に示すように、取付け孔15は取付け壁12の側面に形成される。
【0036】
図2(2)は、取付け孔15を削孔した後の取付け壁12の側面図である。また、図3(2)は、取付け孔15を削孔した後の取付け壁12を垂直に切って側面から見たときの断面図である。さらに、図4(2)は、取付け孔15を削孔した後の取付け壁12を平面方向に切って上から見たときの断面図である。管取付け壁12に形成された取付け孔15は、例えば図2(2)に示すように、直径d1の接続孔15aと、直径d1よりも大きな直径d2を有する結合穴15bと、から構成される。また、この取付け孔15は、例えば図3(2)や図4(2)に示すように、2段形状の内周面を有する。図5(1)は、図4(2)の図のうち、取付け孔15の内周面付近を拡大した図である。取付け孔15の内周面は、図5(1)に示すように、内周面51aと内周面51bと、垂直面51cと、から構成される。内周面51aは、図6中の小径用削孔ビット66によって形成された面である。また、内周面51b及び垂直面51cは、図6中の大径用削孔ビット60によって形成された面である。
【0037】
このように、本実施の形態においては、削孔ビット13を、取付け壁12の外側から内側に向かって、所定の距離を1往復させるだけで、管取付け壁12に2段形状の内周面を有する取付け孔15を形成できる。
【0038】
B.取付け管の接続
まず、取付け管の接続に係る図を説明する。図1(3)は、マンホール底版17上に管取付け壁12を固定し、管取付け壁12に取付け管16aを接続させたときの管取付け壁12の斜視図である。また、図2(3)は、管取付け壁12に取付け管16aを接続させたときの管取付け壁12の側面図である。図3(3)は、管取付け壁12に取付け管16aを接続させたときの管取付け壁12を垂直方向に切って側面から見たときの断面図である。また、図4(3)は、管取付け壁12に取付け管16aを接続させたときの管取付け壁12を平面方向に切って上から見たときの断面図である。さらに、図5(2)は、図4(3)に示す図のうち、取付け孔15の内周面付近を拡大した図である。
【0039】
例えば図2(3)に示すように、結合穴15bには取付け管16aと可撓継手16bとが配置されている。図5(2)に示すように、垂直面51cに取付け管16aの断面が接するように、管取付け壁12に対して取付け管16aが接続される。接続孔15aの直径d1は、取付け管16aの内径と同一の大きさなので、接続孔15aの内周面51aと取付け管16aの内周面との間には段差がなく、滑らかな接続面を形成できる。この結果、削孔後に内周面51aの修理等を行うことなく、取付け管16aを接続できる。
【0040】
本実施の形態においては、削孔ビットの種類を変えることなく、1個の削孔ビットによって、2段形状の内周面を有する取付け孔を、複数箇所に連続して削孔することができる。また、削孔ビットの交換作業を省くことによって、削孔作業の負担を軽減することができる。
【0041】
本実施の形態においては、図15に示すように、取付け孔を2箇所に形成した場合には、従来から知られている手法によって削孔された2段形状の取付け孔と同様に、例えば以下の3つの効果が得られる。
【0042】
第1の効果は、削孔残りを広くする効果である。図15に示すように、管取付け壁151に2段形状の内周面を有する取付け孔152及び取付け孔153を削孔した場合には、取付け孔の間に幅l2の削孔残りが形成される。一方、従来の方法によって、図14に示すように、一つの直径の取付け孔142及び143を削孔した場合には、取付け孔142及び143との間に幅l1の削孔残りが形成される。図15中の幅l2は、図14中の幅l1よりも広い。すなわち、本実施の形態によれば、削孔残りの幅を広くする効果が得られる。
【0043】
一般的に、削孔残りの幅は少なくとも5cm〜10cm程度は必要である。そのため、特に内径の小さいマンホール(内径が30cmのマンホール等)に取付け孔を削孔する場合には、削孔残りの幅を確保するために、取付け角度(図14中の取付け角度a1、及び図15中の取付け角度a2を参照)の設定できる範囲を狭めざるを得なかった。本実施の形態によれば、一つの直径の取付け孔を削孔する場合よりも、取付け角度の設定できる範囲を広くすることができる。
【0044】
第2の効果は、削孔に係る作業の量を軽減する効果である。図13(1)及び(2)及び(3)に示すように、管取付け壁131に、結合穴135と、取付け管134の内径と同一の径を有する接続孔136と、から構成される、2段形状の内周面を有する取付け孔を削孔した場合には、削孔と同時に目地部133が形成される。この結果、削孔後に内目地作業を行う必要がなくなり、すなわち、作業の量を軽減することができる。
【0045】
第3の効果は、インバートの修理が不必要になる効果である。図11(1)及び(2)に示すように、管取付け壁111に一つの直径の取付け孔113を削孔した場合には、インバート112を大きく欠損してしまう。そのため、インバート欠損部114を修理してから、取付け管を接続する必要があった。一方、図13(1)及び(3)に示すように、本実施の形態によって、管取付け壁131に、結合穴135と、取付け管134の内径と同一の径を有する接続孔136と、を削孔した場合には、接続孔136の内周面がそのままインバートとして機能する。すなわち、本実施の形態によれば、削孔後にインバートを修理することを考慮する必要はない。
【0046】
C.変形例
本実施の形態では、図1(1)に示すように、管取付け壁12を削孔台11上に固定して、管取付け壁12の側面に平面方向から取付け孔15を削孔しているが、管取付け壁の固定方法や削孔方向などは特に決められているものではなく、他の固定方法や削孔方向によって削孔しても良い。例えば、管取付け壁を削孔台車等の上に横方向に載置して、削孔ビットを、管取付け壁の垂直上方から管取付け壁に向かって所定の距離だけ動かすことによって、管取付け壁に取付け孔を削孔することも好ましい。
【0047】
本実施の形態では、例えば図7(1)及び(2)に示す削孔ビット70も用いることができる。図7(1)は、削孔ビット70を第1の円筒状部材71及び第2の円筒状部材72の軸に対して平行に切ったときの、側面から見た断面図である。また、図7(2)は、削孔ビット70を小径用削孔部材74側から見たときの断面図である。
【0048】
図7(1)及び(2)に示す削孔ビット70は、大径用削孔部材73と第2の円筒状部材72とを隙間なく接続したことを第1の特徴とする。ここでは、大径用削孔部材73と第2の円筒状部材72とを溶接することによって、大径用削孔部材73と第2の円筒状部材72とを接続している。大径用削孔部材73は、図7(2)に示すように、板状削孔部材76とチップ状削孔部材77と、を備える。第1の円筒状部材71と第2の円筒状部材72との隙間をなくすことによって、削孔ビット70の内部にコンクリート粕などが挟まることを防止できる。
【0049】
また、図7(1)及び(2)に示す削孔ビット70は、第2の円筒状部材72のうち、第1の円筒状部材71の一方の端面から突出した部分に開口75を設けたことを第2の特徴とする。削孔ビット70を使用する場合には、削孔ビット70を、ポンプを備えた電動機ユニット等に接続し、ポンプから第2の円筒状部材72の内部に水を注入することが好ましい。この場合、開口75を通じて、切削面付近に水を供給することによって、削孔によって発生する熱を逃がすことができる。すなわち、小径用削孔部材74及び板状削孔部材76及びチップ状削孔部材77の寿命を延ばす効果が得られる。
【0050】
このように、図7(1)及び(2)に示す削孔ビット70によれば、削孔時に削孔ビット70内部にコンクリート粕等を挟むことなく、さらに小径用削孔部材74及び板状削孔部材76及びチップ状削孔部材77の寿命を温存させて、2段形状の内周面を有する取付け孔を削孔できる。
【0051】
なお、図7(1)及び(2)に示す削孔ビット70は、大径用削孔部材73と第2の円筒状部材72と、をネジの噛み合わせによって固定しても良い。すなわち、大径用削孔部材73の中心側と第2の円筒状部材72の外側に螺旋状切り込みを入れておき、大径用削孔部材73に第2の円筒状部材72をはめ込むように固定しても良い。
【0052】
本実施の形態では、例えば図8(1)及び(2)に示す削孔ビット80も用いることができる。図8(1)は、削孔ビット80を第1の円筒状部材81及び第2の円筒状部材82の軸に対して平行に切ったときの、側面から見た断面図である。また、図8(2)は、削孔ビット80を小径用削孔部材84側から見たときの断面図である。
【0053】
図8(1)及び(2)に示す削孔ビット80は、図7(1)及び(2)に示した削孔ビット70と同様に、大径用削孔部材83と第2の円筒状部材82とを隙間なく接続したことを第1の特徴とする。ここでは、大径用削孔部材83と第2の円筒状部材82とを溶接することによって、大径用削孔部材83と第2の円筒状部材82とを接続している。まず、第1の円筒状部材81と第2の円筒状部材82と、を隙間なく接続したことが第1の特徴である。大径用削孔部材83は、図8(2)に示すように、板状削孔部材86とチップ状削孔部材87と、を備える。第1の円筒状部材81と第2の円筒状部材82との隙間をなくすことによって、削孔ビット80の内部にコンクリート粕などが挟まることを防止できる。
【0054】
また、図8(1)及び(2)に示す削孔ビット80は、大径用削孔部材83に開口85を設けていることが第2の特徴である。削孔ビット80を使用する場合には、削孔ビット80を、ポンプを備えた電動機ユニット等に接続し、ポンプから第1の円筒状部材81と第2の円筒状部材82との間隙に水を注入する。この場合、第1の円筒状部材81と第2の円筒状部材82との間隙に水溜まりが形成され、開口85を通じて、切削面上に水が供給される。この供給された水によって、削孔に伴って発生する熱を逃がすことができるので、小径用削孔部材84及び板状削孔部材86及びチップ状削孔部材87の寿命を延ばす効果が得られる。
【0055】
このように、図8(1)及び(2)に示す削孔ビット80によれば、削孔時に削孔ビット80内部にコンクリート粕等を挟むことなく、さらに小径用削孔部材84及び板状削孔部材86及びチップ状削孔部材87の寿命を温存させて、2段形状の内周面を有する取付け孔を削孔できる。
【0056】
なお、図8(1)及び(2)に示す削孔ビット80は、大径用削孔部材83と第2の円筒状部材82と、をネジの噛み合わせによって固定しても良い。すなわち、大径用削孔部材83の中心側と第2の円筒状部材82の外側に螺旋状切り込みを入れておき、大径用削孔部材83に第2の円筒状部材82をはめ込むように固定しても良い。
【0057】
本実施の形態においては、図5(1)中の内表面51b及び垂直面51cには、コンクリートや樹脂の充填剤などを塗布することも好ましい。
【0058】
本実施の形態では、コンクリート製の組立マンホールを想定しているが、本発明は特に材料を限定するものではなく、例えばレジンコンクリート製の組立マンホールにも適用することができる。
【0059】
本実施の形態では、削孔ビットは、金属製の円筒状部材と、ダイヤモンドチップを含む研磨部材及び削孔部材と、から構成しているが、特に材料を限定するものではなく、使用条件に応じて適切な材料を選択できる。
【0060】
図7に示す削孔ビット70の開口75、及び図8に示す削孔ビット80の開口85は、切削面上に水を供給できれば、スリットを設けても良い。この場合には、切削面上に水を供給できれば、実施者が、スリットの大きさや数を決めることができる。
【0061】
本実施の形態では、組立マンホールに取付け孔を削孔することを想定しているが、組立式ではないマンホールにも適用することができる。
【0062】
まとめ
本発明によれば、組立マンホールの施工現場において、一度の削孔作業によって、容易に、組立マンホールの壁に対して任意の位置に2段形状の取付け孔を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】管取付け壁の斜視図である。
【図2】管取付け壁の側面図である。
【図3】管取付け壁を垂直方向に切って側面から見たときの断面図である。
【図4】管取付け壁を平面方向に切って上から見たときの断面図である。
【図5】管取付け壁を平面方向に切って上から見たときの断面のうち、取付け孔の内周面付近を拡大した図である。
【図6】削孔ビットの構成を示す図である。
【図7】削孔ビットの縦方向の断面図である。
【図8】削孔ビットの縦方向の断面図である。
【図9】一つの直径の取付け孔を削孔した管取付け壁の断面図である。
【図10】削孔ビットの断面図である。
【図11】マンホール底部におけるインバートの欠損を示す図である。
【図12】従来の2段形状の取付け孔を削孔する削孔方法を説明する図である。
【図13】マンホール底部においてインバートの欠損がないことを示す図である。
【図14】一つの直径の取付け孔を2つ削孔したときの断面図である。
【図15】2段形状の取付け孔を2つ削孔したときの断面図である。
【符号の説明】
【0064】
11 削孔台
12 管取付け壁
13 削孔ビット
14 削孔方向
15 取付け孔
15a 接続孔
15b 結合穴
16a 取付け管
16b 可撓継手
17 マンホール底版
51a 内周面
51b 内周面
51c 垂直面
60 大径用削孔ビット
61 第1の円筒状部材
62 大径用削孔部材
63 大径用削孔刃
64 第2の円筒状部材
65 小径用削孔部材
66 小径用削孔ビット
70 削孔ビット
71 第1の円筒状部材
72 第2の円筒状部材
73 大径用削孔部材
74 小径用削孔部材
75 開口
76 板状削孔部材
77 チップ状削孔部材
80 削孔ビット
81 第1の円筒状部材
82 第2の円筒状部材
83 大径用削孔部材
84 小径用削孔部材
85 開口
86 板状削孔部材
87 チップ状削孔部材
91 管取付け壁
92 削孔ビット
93 取付け孔
101 削孔ビット本体
102 ダイヤモンドチップ
111 管取付け壁
112 インバート
113 取付け孔
114 インバート欠損部
121 管取付け壁
122 削孔ビット
123 接続孔
124 削孔ビット
125 切削部
126 ハンマー
127 コンクリート残り
128 粗面
129 研磨削孔ビット
130 垂直面
131 管取付け壁
132 インバート
133 目地部
134 取付け管
135 結合穴
136 接続孔
141 管取付け壁
142 取付け孔
143 取付け孔
151 管取付け壁
152 取付け孔
153 取付け孔
a1 取付け角度
a2 取付け角度
d1 直径
d2 直径
d3 直径
l1 幅
l2 幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホールの壁に取付け管を接続するための取付け孔を削孔する際に用いられる削孔ビットであって、
前記取付け管と接続するための接続孔を空けるための小径用削孔部材と、
前記マンホールの壁に前記取付け管を嵌合させるための、前記接続孔よりも大きい径を有する結合穴を空けるための大径用削孔部材と、
を備え、
前記小径用削孔部材は、前記大径用削孔部材よりも所定の距離だけ突出しており、
前記接続孔と前記結合穴とを同時に削孔することができることを特徴とする削孔ビット。
【請求項2】
請求項1に記載の削孔ビットにおいて、
前記小径用削孔部材が、一方の端面に設けられた第2の円筒状部材、
を備え、
前記大径用削孔部材は、前記第2の円筒状部材の一方の端面から他方の端面に向かって前記所定の距離だけ離れた箇所に、前記第2の円筒状部材の周囲を取り囲むように取り付けられていることを特徴とする削孔ビット。
【請求項3】
請求項2に記載の削孔ビットにおいて、
前記第2の円筒状部材の外側に配置され、かつ前記第2の円筒状部材と同軸の位置に配置された第1の円筒状部材を有し、
前記大径用削孔部材は、前記第1の円筒状部材の一方の端面上に取り付けられていることを特徴とする削孔ビット。
【請求項4】
請求項3に記載の削孔ビットにおいて、前記第2の円筒状部材のうち前記第1の円筒状部材から突出した部分の側面に第1の開口を設け、
前記第1の円筒状部材の内側に供給された水が、前記第1の開口を通じて、外部に吐出することを特徴とする削孔ビット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の削孔ビットにおいて、
前記大径用削孔部材に第2の開口を設け、
前記第1の円筒状部材と前記第2の円筒状部材との間隙に、水をためるための水だまりの空間が形成され、この空間にためられた水が、前記第2の開口から前記大径用削孔部材の切削面上に供給されることを特徴とする削孔ビット。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の削孔ビットを用いて、前記マンホールに前記接続孔と前記結合穴とを同時に削孔することを特徴とする削孔方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の削孔ビットを用いて、前記接続孔と前記結合穴とを同時に削孔されたことを特徴とするマンホール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−307760(P2008−307760A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156816(P2007−156816)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(000120146)株式会社ハネックス (56)
【Fターム(参考)】