加工装置、加工装置の制御方法及び加工処理システム
【課題】寸法と質量を測定し加工対象物の特徴を推定して、特徴に適した加工制御を行う。
【解決手段】加工対象物Wが取り付けられる加工台11と、加工対象物を加工する工具を支持するための支持部18に接触子Tcを備え、支持部18と加工台11とを相対移動させ接触子Tcの接触位置をエンコーダ45で検知することにより加工対象物Wの寸法を測定する。また、重量検知センサーMwにより加工対象物の質量を測定する。得られた情報とデータ記憶部35cに記憶している情報から加工対象物Wの特徴を推定し加工制御を行う加工装置を用いる。またその制御方法、加工処理システムを提供する。
【解決手段】加工対象物Wが取り付けられる加工台11と、加工対象物を加工する工具を支持するための支持部18に接触子Tcを備え、支持部18と加工台11とを相対移動させ接触子Tcの接触位置をエンコーダ45で検知することにより加工対象物Wの寸法を測定する。また、重量検知センサーMwにより加工対象物の質量を測定する。得られた情報とデータ記憶部35cに記憶している情報から加工対象物Wの特徴を推定し加工制御を行う加工装置を用いる。またその制御方法、加工処理システムを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工台に固定したワーク等の加工対象物に対して切削などの加工を行う加工装置、加工装置の制御方法及び加工処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
加工装置は、主軸に工具を取り付け、この主軸と加工台とを例えば3軸(x、y、z軸)方向に相対移動させることにより、加工台に固定した加工対象物に所定の加工を施す。このような加工装置として、加工台を固定のままとし、主軸を3軸方向に移動させる構造の他、加工台をx軸方向(或いはy軸方向)に移動させ、主軸をz軸方向及びy軸方向(或いはx軸方向)に移動させる構造もある。何れの場合も、加工指示を行うプログラムに従って加工対象物を加工する。
【0003】
各種切削加工において精度の高い形状の完成物を得るためには、ワーク(加工対象物)の寸法を確認する必要がある。そのため、使用者が加工対象物を加工台に固定する前に、ノギスや工具顕微鏡などの測定器を用いて寸法を確認してから、プログラムを設定していた。また加工対象物には、樹脂、金属、木材などの種類がありそれぞれ適した工具、加工条件などがあり、加工の前に加工装置のプログラムに設定を行う必要があった。
【0004】
また、特許文献1のように、加工対象物の加工プログラムと重量が対応関係にある場合に、測定した重量に応じて、加工プログラムを設定する加工装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−83420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
加工装置等の工作機械において、精度の高い形状の完成物を得るためには、加工対象物の材質に適した工具の選択や、工具の回転速度、送り量の決定など、適切な加工の条件を設定する必要がある。加工の条件を設定するためには、加工対象物の寸法だけでなく、加工対象物の特徴についても考慮する必要がある。特許文献1に記載の加工装置は、加工対象物の重量に応じて加工プログラムを変更する。しかしながら、加工対象物の重量が一致していても寸法が異なっている場合は、加工対象物に不適な加工条件が実行されてしまう可能性がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、加工対象物の寸法と質量とを測定し、加工対象物の特徴の推定を行うことで適切な加工制御を実現しつつ、使用者の負担を軽減することができる加工装置、加工装置の制御方法及び加工処理システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の加工装置は、加工対象物が取り付けられる加工台と、前記加工台に対向して配置されて前記加工対象物を加工するための工具を支持する支持部と、前記支持部と前記加工台とを相対移動させる移動手段と、前記支持部に設けられて前記加工対象物の寸法を測定する寸法測定手段と、前記加工対象物の質量を測定する質量測定手段と、前記寸法測定手段によって測定された寸法と前記質量測定手段によって測定された質量とに基づいて前記加工対象物の特徴を推定する特徴推定手段と、前記特徴推定手段の推定結果に基づいて前記加工対象物への加工制御を行う加工制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の加工装置の制御方法は、加工台に取り付けられる加工対象物を加工する加工装置の制御方法であって、前記加工対象物の寸法を測定する寸法測定ステップと、前記加工対象物の質量を測定する質量測定ステップと、各測定ステップで測定された前記加工対象物の寸法及び質量に基づいて、前記加工対象物の特徴を推定する推定ステップと、前記推定ステップの推定結果に基づいて前記加工対象物への加工制御を行う加工制御ステップとを備えたことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の加工処理システムは、加工対象物が取り付けられる加工台に対向して配置された前記加工対象物を加工する工具を支持するための支持部と、前記支持部と前記加工台とを相対移動させる移動手段と、前記加工対象物の寸法を測定する寸法測定手段と、前記加工対象物の質量を測定する質量測定手段と、前記寸法測定手段によって測定された寸法と前記質量測定手段によって測定された質量とに基づいて前記加工対象物の特徴を推定する特徴推定手段と、前記特徴推定手段の推定結果に基づいて前記加工対象物への加工制御を行う加工制御手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、測定した寸法、質量から加工対象物の特徴を推定し、加工対象物の特徴に適した加工制御を行うことができる。また、加工装置の機能で測定を行うことで使用者の測定の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態における加工装置の概略構成断面図。
【図2】第1の実施形態の加工台周辺及び主軸部分の概略斜視図。
【図3】堆積物が散乱している加工台をy軸方向の寸法測定動作開始位置に移動させた概略構成断面図。
【図4】堆積物が散乱している加工台をy軸方向の寸法測定動作終了位置に移動させた概略構成断面図。
【図5】加工対象物が直方体形状のときの測定点の模式図。
【図6】カバー付加工台を移動させて、堆積物をカバー部材中央に集める工程を順番に示す模式図。
【図7】第1の実施形態に係る加工装置がエアーを放出している状態を示す横断面図。
【図8】第1の実施形態に係る加工装置の制御ブロック図。
【図9】第1の実施形態に係る加工対象物の材質判定処理の流れ図。
【図10】第2の実施形態に係る加工対象物の材質判定処理の流れ図。
【図11】第2の実施形態に係る比較処理結果の表示例。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について、図1ないし図9を用いて説明する。まず、本実施形態の加工装置Aの全体構成について、図1及び図2により説明する。図1は、加工装置Aの概略構成断面図であり、図2は加工台周辺及び主軸部分の概略斜視図である。
【0014】
加工装置Aは、加工対象物W(ワーク)を固定する加工台11と、カバー部材12、サイドワイパー13a、13b、回収ボックス14、主軸15、前側ワイパー16、後側ワイパー17、支持部18、収納部19を備える。また加工台11と支持部18を対向して配置され相対移動させる各軸方向への送り移動手段として、各軸方向に駆動部20を備える。それぞれの駆動部の構成であることを示す添え字を省略すると駆動部20は、モータ21と、送りねじ22と、移動部材23(x軸駆動部に関しては不図示)と、トルクセンサー24を備える。
【0015】
以下の説明では、図1に示すx軸送りねじ22xに平行な方向をx軸とし、加工装置Aの載置面に対して略水平方向でx軸に直角な(直交または交差する)方向をy軸、x軸及びy軸に対して垂直な方向(鉛直方向)をz軸と呼ぶ。
【0016】
主軸15の先端には、工具などを支持する支持部18が設けられている。また、主軸15内には、工具の冷却や、切粉を吹き飛ばすために用いることができるエアーブロー部Rを備える。加工台11上の加工対象物Wの質量を測定するための接触式の重量検知センサーMwを加工台11の下方に備え、加工台11上に加工対象物Wが載置された際における質量の変化を測定する質量測定手段として機能する。
【0017】
本実施形態においては、加工対象物Wの寸法を測定するために支持部18に接触子Tcを支持している。接触子Tcが接触した位置を記憶することによって寸法を測定する寸法測定手段として機能する。また、接触子Tcは、加工台11上の加工対象物Wを傷つけることのないように、先端が丸みを帯びた形状となっている。送り量や加工対象物の材質等によっては、工具を用いることもできる。接触子Tcは図示しない工具自動交換装置(ATC)によって支持部18の下端に挿入され交換可能に装着される。
【0018】
本実施形態では、加工台11をy軸方向(所定方向)に、接触子Tcを支持部18により把持した主軸15をx軸方向とz軸方向とに、それぞれ移動させる。このために、加工台11をy軸方向(所定方向)に移動させる加工台移動手段としてy軸駆動部20yと、主軸15をx軸方向とz軸方向とにそれぞれ移動させる接触子Tcの支持部移動手段としてx軸駆動部20x及びz軸駆動部20zとを備える。各軸駆動部により、加工台11と支持部18とをx軸、y軸、z軸の各方向に相対移動可能に構成されている。
【0019】
y軸駆動部20yを設置した空間を有する収納部19の上方には、収納部19を覆うように、シート状のカバー部材12が設置されている。カバー部材12は加工領域Swを区画し底面の一部を構成している。即ち、収納部19は、y軸駆動部20yを設置した空間の周囲を囲むようにそれぞれ配置された、前側フレーム19a、後側フレーム19b、側方フレーム19c(不図示)から構成されている。そして、これら各フレーム19a、19bらの上面にカバー部材12を配置している。
【0020】
カバー部材12は、加工台11に固定され、y軸駆動部20yの駆動により加工台11と共に移動する。言い換えれば、カバー部材12は、加工台11を介してy軸駆動部20yによりy軸方向に駆動され加工台11とカバー部材12はともに移動しカバー付加工台として機能する。加工台11の上面は、カバー部材12の表面に露出するように固定されている。このために、カバー部材12の一部に開口部を設け、この開口部内に加工台11の上半部を挿入した状態で、加工台11とカバー部材12とを例えば接着などにより固定している。
【0021】
このようなカバー部材12は、例えば、ゴムベルトやスチールベルトなどのある程度のコシがあり弾性変形可能な部材で、ベルト状の形状を有し、表面(上面)が段差や凹凸がない単一の面により構成される。なお、単一の面とは、加工装置Aによる加工時に生じる切粉などの堆積物が入り込んだり引っ掛かったりするような、段差や凹凸がない面を指す。スチールベルトであれば、より滑らかで堆積物の分離及び回収が行い易い。
【0022】
また、カバー部材12は、所定方向一端部である前側(図1の左側)の端部12aが収納部19の下方に回り込むように案内されている。一方、カバー部材12の後側(図1の右側)の端部12bは、躯体Bの後側に配置された第2のカバー収納部S2に収納される。第2のカバー収納部S2は、後側フレーム19bと一体に形成され、カバー部材12の厚さよりも僅かに大きな隙間を有する空間が、後側フレーム19bから上方に延出されるように構成されている。
【0023】
カバー部材12の後側の端部12bは、カバー部材12が後側に移動すると、第2のカバー収納部S2の入り口に構成されたフレームによる立ち上がり部との間に案内されて、上述のように構成される第2のカバー収納部S2に収納される。カバー部材12は第1のカバー収納部S1と第2のカバー収納部S2との間を移動しても加工領域Swに完全に露出しない構造となっており、弾性変形の撓みにより前側ワイパー16、後側ワイパー17と摺接する押圧力を得て堆積物が除去されやすくなっている。またカバー部材12の加工領域Swに露出しない部分には、目印となる段差等を設けることも可能である。
【0024】
本実施形態の場合、このように、カバー部材12の前側の端部12aが収納部19の下方に配置された第1のカバー収納部S1に、カバー部材12の後側の端部12bが躯体Bの後側にz軸方向に配置された第2のカバー収納部S2にそれぞれ収納される。このため、加工装置Aの前後方向の寸法を小さくでき、小型化を図れる。
【0025】
また、図2に示すように、カバー部材12はy軸方向と直交する幅方向から落下することを防止する摺接部材としてサイドワイパー13a、13bを備える。サイドワイパー13a、13bは堆積物落下防止手段として機能し、駆動部20yに堆積物dが落下しないようになっている。サイドワイパー13a、13bは、後側ワイパー17に向かって幅方向に狭くなるように傾斜を持って設置されている。加工台11の移動方向両側にそれぞれ配置され、対向する一対のサイドワイパー13a、13bの間隔は他方側に沿って除々に小さくなっている。
【0026】
また、摺接部材である前側ワイパー16、後側ワイパー17を、それぞれ固定しカバー部材12の表面に摺接させている。これにより、カバー部材12が前側に移動した場合には、カバー部材12上の堆積物dが、前側ワイパー16によりカバー部材12から分離され、カバー部材12が後側に移動した場合には、カバー部材12上の堆積物dが、後側ワイパー17により堰き止められる。そして、カバー部材12上の堆積物dが各収納部S1、S2に入り込むことを防止している。後側ワイパー17は、立ち上がって収納されているカバー部材12に対して、堆積物dの除去を行っているため、カバー部材12の弾性変形による復元力と後側ワイパー17による分離作用で堆積物dを除去しやすい。また、前側ワイパー16は、カバー部材12の構成する曲面に接しているため堆積物dの自重と前側ワイパー16の分離作用により除去が行い易い。
【0027】
(加工装置の駆動構成)
三次元加工のための送り移動手段について説明する。まず、各駆動部20x、20y、20zの共通する構造について説明する。なお、共通する構造については、それぞれの駆動部の構成であることを示す添え字を省略して、総括的に説明する。
【0028】
モータ21は、加工装置Aの躯体Bに固定され、例えば、装置内もしくは接続された外部端末などの指令に基づいて駆動制御される。送りねじ22は、外周面に雄ねじ部を有し、各軸方向とそれぞれ平行に配置され、モータ21の駆動により回転する。移動部材23は、送りねじ22の雄ねじ部と螺合する雌ねじ部を有し、送りねじ22の回転に伴い、雄ねじ部と雌ねじ部との螺合に基づいて送りねじ22に沿って移動する。トルクセンサー24は、トルク変化の検出を行い、接触子Tcが加工対象物Wに触れた際のトルク変化を検出する。
【0029】
次に、各駆動部のそれぞれの構成について説明する。y軸駆動部20yの移動部材23yには、加工台11が固定されており、移動部材23yと共に加工台11が、送りねじ22yの配設方向であるy軸方向に移動する。このようなy軸駆動部20yは、加工台11の下方に配置される。
【0030】
x軸駆動部20xの移動部材23xには、主軸15をz軸方向の移動自在に支持しており、移動部材23xと共に主軸15が、送りねじ22xの配設方向であるx軸方向に移動する。なお、z軸駆動部20zは、移動部材23xに支持されており、x軸駆動部20xの駆動により主軸15と共にx軸方向に移動する。
【0031】
z軸駆動部20zの移動部材23zには、主軸15が固定されており、移動部材23zと共に主軸15が、送りねじ22zの配設方向であるz軸方向に移動する。
【0032】
したがって、本実施形態の加工装置Aは、主軸15を備えた移動機構(x軸駆動モータ21x及びz軸駆動モータ21z)を含む接触子Tcや工具等の加工手段側でのxz方向への移動と、加工台11側でのy軸方向への移動とを相対的に制御できる三次元加工装置となる。つまり、x軸駆動モータ21xやz軸駆動モータ21zは、加工台11に対して主軸15を移動させる主軸移動手段として機能する。一方、y軸駆動モータ21yは、主軸15に対して加工台11を移動させる加工台移動手段として機能する。なお、加工手段側と加工台11とでxyz軸の移動方向の組み合わせは、上述したものに特に限定されず、例えば、加工台11をz軸方向、あるいはx軸方向に移動させ、これに対応させて接触子Tcや加工手段側を所定の方向に移動させるようにしてもよい。
【0033】
x軸駆動部20xとz軸駆動部20zは、躯体Bと一体又は躯体Bに固定の覆い部材Cに覆われている。覆い部材Cは、工具による加工領域Swを確保できるように、段付き形状を有し、x軸駆動部20x及びz軸駆動部20zと加工領域Swとの間に配置される。これにより、加工時に生じる切粉などの堆積物が、x軸駆動部20x及びz軸駆動部20zに侵入しにくくしている。即ち、加工領域Swは、不図示の前面の開閉材、上面の覆い部材C、と不図示の左右側板または覆い部材と、底面となるカバー部材12と加工台11などで区画された加工対象物Wを加工した際の堆積物dが飛散してしまう領域である。
【0034】
なお、y軸駆動部20yのモータ21yを収納部19の外に配置しても良い。したがって、収納部19内に配置される駆動部は、少なくとも加工台11を移動させる機構の一部であれば良い。また、駆動部の構成は、上述したような送りねじ機構に限らず、例えばラックアンドピニオンのような他の機構であっても良い。
【0035】
図3、図4は、本発明の実施形態に係る寸法測定動作を行う際の横断面図である。図5に直方体形状の加工対象物Wの接触子Tcによる測定点を示す。接触子Tcにより、加工対象物Wの図5(a)に示すMx1とMx2の接触点の位置を検出してx軸方向の長さXを求め、My1とMy2の接触点の位置を検出しy軸方向の長さYを求める。z軸方向については、図5(b)に示すMz1とMz2の接触点の位置を検出して長さZを求める。また、図3は、接触子Tcが加工台11を移動させ、加工対象物Wのy軸方向の長さ測定を開始した図である。図4がy軸方向の長さの他端部を測定している図である。このように、加工台11と主軸15とを相対的に移動させることによって、寸法測定を行う。この間、加工対象物Wは、図6に示すように、堆積物dの回収動作も行うことができる。
【0036】
また、カバー部材12の前側の下方には、回収部である回収ボックス14が、躯体Bと着脱自在に配置されている。そして、図4に示すように、カバー部材12が前側(所定方向一端部側)に移動して収納部19の下方に回り込む際に、前側ワイパー16により分離された堆積物dが回収ボックス14内に落下するようにしている。また図3から図4までに移動させている間に、エアーブロー部Rからエアーを噴出し、加工装置A内部等からこぼれ落ちた堆積物dを吹き飛ばすことができる。これにより、重量検知センサーMwが加工対象物Wの質量を測定する前に、清掃することで、重量検知センサーMwが加工対象物Wの質量の測定する精度を向上させることができる。
【0037】
図7は、図3から図4に示すような測定動作で加工対象物Wの上方を主軸15が移動する際に加工対象物Wに切粉dをエアーブロー部Rが吹き飛ばしを行っている図である。また、この吹き飛ばし動作は、主軸15がx軸、y軸、z軸各軸方向加工台11に対して相対的に移動する場合において各々行うことができる。エアーRaが主軸15内のエアーであり、支持部18から加工領域Swに放出されたエアーがエアーRb、エアーRbが加工対象物Aに衝突して、加工対象物W上の堆積物dを吹き飛ばす旋回流に変化したエアーがエアーRcである。加工対象物W上の堆積物dの吹き飛ばしを行うため、質量測定において、加工対象物W以外の質量を極力減らすことができる。また、堆積物の回収部は、カバー付加工台の移動方向一方側に設けられていれば、その形状等は各種変形可能である。エアーブロー部Rも主軸15内に設けた例を示したが、主軸15とともに移動する形態であれば、その設置場所は問わない。なお、本実施形態では、主軸15にエアーブロー部Rを設けたが、本発明はこれに限定されず、エアーブロー部を設けない構成をとることも可能である。
【0038】
加工対象物Wを加工する際に生じた切粉などの堆積物dは、図6(a)に示すように、カバー部材12上に溜まる。加工対象物Wの寸法測定を開始する場合には、まず、カバー部材12を、図6(b)に示すように、y軸方向一方(図6の上方、矢印イ方向)に移動させる。この際、カバー部材12の幅方向両端側に存在する異物dは、サイドワイパー13a、13bと摺接して、カバー部材12から落下することを防止されると共に、サイドワイパー13a、13bの傾斜に基づいて、カバー部材12の幅方向中央寄りにかき集められる。なお、カバー部材12のy軸方向一方に存在する堆積物dは、前述したように、後側ワイパー17により堰き止められ、かき集められる。
【0039】
そして、この状態から、図6(c)に示すように、カバー部材12をy軸方向他方(図6の下方、矢印ロ方向)に移動させる際に主軸15をz軸方向に下げると、接触子Tcが加工対象物Wに接触する(図4参照)。このときのトルク変化をトルクセンサー24yで読み取り、接触位置を後述のエンコーダ45yによりトルク変化検出位置としてCPU31が処理しデータ記憶部35cに記憶する。その後、主軸5をz軸方向上方に移動させた後に、加工台11をy軸方向へ移動させ加工対象物Wをy軸方向に送る。堆積物dがカバー部材12の幅方向中央側に集まったまま、装置の前側に運ばれる。
【0040】
この際、カバー部材12のy軸方向他方に存在する堆積物dは、前述したように、前側ワイパー16によりカバー部材12の表面に前側ワイパー16によりかき集められ、堆積量が前側ワイパー16の高さを超えるとカバー部材12上から分離され、回収ボックス4により回収される。前側ワイパー16は、カバー部材12の屈曲面に接しているため、サイドワイパー13a、13bと同様にカバー部材12との摺接位置を通る接線に直角な方向から傾斜して接している。そのため、カバー部材12からの堆積物dの分離性が良い。
【0041】
その後、主軸15をz軸方向に下げ、再度y軸方向一方(図6の上方、矢印イ方向)に移動させる。このとき、接触子Tcは加工対象物Wに接触(図4参照)し、そのときのトルク変化をトルクセンサー24yで検知し接触位置を後述のエンコーダ45yによりトルク変化検出位置としてCPU31が処理しデータ記憶部35cに記憶する。接触子Tcを支持している支持部18移動させて、トルク変化を検知した座標または基準位置からの距離から計算することで長さを測定することができる。寸法測定手段は、寸法測定の基となる各軸の座標がわかれば、支持部18に設けられ、支持部18とともに移動する手段であれば、接触子Tcに限ったものではない。また、エンコーダに限らず、支持部18の位置を各種センサーでセンシングして、加工対象物Wとの接触点を決定しても良い。
【0042】
<加工装置の制御構成>
図8は、本発明の第1の実施形態に係る切削加工装置の構成を示すブロック図である。上述の加工装置Aの制御手段である制御部30について、図8を用いて説明する。図8に示すように、加工装置Aは、制御部30と加工装置本体40とを備える。このうちの制御部30は、演算手段であるCPU31、入出力ポート(I/O)32、各モータドライバ33x、33y、33z、主軸コントローラ34、データ入力部35などを備える。CPU31は、入力されたデータや信号に基づいて各種の演算を行う。
【0043】
I/O32は、加工装置本体40の重量検知センサーMw、エアーブロー部R、操作部41、表示部42、警告ライト43、主軸(スピンドル)44に接続される。主軸コントローラ34は、主軸15を回転させる不図示のスピンドルモータである主軸(スピンドル)44を制御して、主軸(スピンドル)44の回転速度を制御するためのプログラムを実行する。また、データ入力部35は、加工対象である被加工物の形状データ入力部35aと、加工データ読み込み部35bと、データ記憶部35cとを有する。
【0044】
なお、入出力ポート(I/O)32には、外部のコンピュータと接続するポートを設けることができ、加工指示データを外部のPCから無線または有線のLAN等を経由して受信することで加工指示を実行するように構成してもよい。また、データ入力部35に外部コンピュータを接続するポートを設けてデータ入力部の各処理を外部コンピュータで実行することも可能である。外部コンピュータと接続した場合は、各種処理を外部のコンピュータで行い、処理結果のデータを加工装置Aに送信または制御部30と処理を分散して加工装置の制御動作を行う加工処理システムとして構成することもできる。
【0045】
データ入力部35aで入力されたデータ及び読み込み部35bで読み込んだデータをデータ記憶部35cに記憶する。CPU31は、データ記憶部35cに記憶されたデータに基づいて各種の演算を行い、各モータドライバ33x、33y、33zなどに指令を送る。トルク変化位置を検出したデータや、主軸(スピンドル)44の回転数、各ステージ23x、23y、23zの送り量もデータ記憶部35cに記憶され、CPU31に読み出され各種処理の実行や比較等に使用される。制御部30のCPU31が重量検知センサーMwの質量の測定結果とトルクセンサー24が検出した位置を演算する。検出した位置から長さを求め、求めた長さを演算することで立体的な寸法を算出する。CPU31が、測定した質量を各方向の寸法から求めた体積で割る演算を行うことで加工対象物Wの密度を算出することができる。
【0046】
各モータ21x、21y、21zは、上述のように、データ入力部35で入力されたデータに基づいてCPU31が演算した指令により、各モータドライバ33x、33y、33zにより駆動される。この時、CPU31は、各モータドライバ33x、33y、33zに指令した各ステージ23x、23y、23zの移動量(位置)をデータ記憶部35cに記憶させる。これと同時に、各トルクセンサー24x、24y、24zや各エンコーダ45x、45y、45zにより検知した検知結果も、データ記憶部35cに記憶される。
トルクセンサー24のトルク変化検知結果をエンコーダ45によりトルク変化検知位置を検出することで、送り移動手段の作動に伴う支持部18と加工台11との相対位置に関する情報を検出する位置検出手段として機能する。
【0047】
本実施形態では、上述した制御部30により加工装置本体40の各部を制御することにより、工具を回転させつつ主軸15又は加工台11を移動させながら、加工台11上に固定した加工対象物Wに所定の加工を施す。また、加工は、連続して行う場合と、所定量加工する毎に主軸5及び加工台1を停止させる場合がある。何れにしても、各ステージ23x、23y、23zは、各モータ21x、21y、21zが指令に基づいて駆動されることにより移動する。
【0048】
CPU31が、エアーブロー部Rのエアー出力を制御するエアー放出制御手段及び、加工対象物Wの質量を測定する重量検知センサーMwの検知結果や寸法の測定結果から加工装置の制御を行い加工制御手段として機能する。加工制御には、所定形状に加工することと異常対応として、警告や停止処理を行うことも含まれる。
【0049】
<加工対象物Wの寸法測定>
図3〜図5を用いて、各方向の長さを測定するための加工装置の動作を詳細に説明する。図5(a)は、加工台11上の加工対象物Wを上面から見た図である。また図5(b)は加工台1上の加工対象物Wをx軸方向の側方から見た図である。本実施形態において測定対象である加工対象物Wは直方体形状のものを用いた。加工対象物Wと接触子Tcが接触した点を接触点My1とする。(図3(a)参照)加工対象物Wと接触子Tcが接触した点を接触点My2とする。エンコーダ45yによって、記録された座標からCPU31は、ステージ23yが最もモータ21yに近づいている位置を基準位置として、基準位置からのMy1、My2の距離を求める。(図4参照)My1とMy2の差の絶対値を演算することでCPU31は長さYを算出することができる。
【0050】
上述の方法が簡便であるが、加工対象物Wの形状次第で、各種変形が可能であり、直方体であれば、3軸に備えられたエンコーダ45の検出位置が異なっていても、y軸方向の二点のみを演算することで長さYを求めることもできる。他の形状であれば、初期形状を記憶し演算する長さを複数設けることで算出できる。
【0051】
また、x軸、z軸もステージ23x、24zが最もモータ21x、21zに近づいている位置を基準位置とする。基準位置は、x軸、y軸、z軸ともに接触点の相対位置を検知し長さを計算することができれば、各種変更可能である。y軸方向と同様に各ステージ23x、23zの移動量(位置)を、データ記憶部35cに記憶させる。各トルクセンサー24x、24zや各エンコーダ45x、45zにより検知した検知結果を各座標方向の長さを制御部30のCPU31で演算し求める。
【0052】
x軸方向の長さXについては、加工対象物Wにおけるx軸方向の異なる2面の点、図5(a)記載の接触点Mx1、Mx2から長さXを求める。z軸方向の長さZについては、加工対象物Wにおけるz軸方向の加工対象物Wの上面と加工台11もしくは、加工台11の高さが等しい点のカバー部材12の異なる2点、図5(b)に示す接触点Mz1、Mz2から長さZを求める。
【0053】
直方体形状の加工対象物Wが、各軸方向一方側に固定具等によって固定されている場合は、固定されている位置をデータ記憶部35c等に記憶し、基準位置からの加工対象物Wの接触点と固定部の距離の差を求めることで演算できる。そのため、当該方向については接触点1点のみで長さを演算することができる。また、測定対象の長さ方向について、両側からを固定具等で位置決めが行われ、固定している方向についての長さをデータ記憶部35cに記憶している場合は、当該方向について測定を省略することもできる。
【0054】
加工対象物Wの密度dは、d=(加工対象物Wの質量)/(長さX)*(長さY)*(長さZ)
で求めることができる。上述のように加工対象Wの3方向の長さと質量から密度を演算することができる。各トルクセンサー24x、24zや各エンコーダ45x、45zにより検知した検知結果を各座標方向の長さをCPU31で演算し密度算出手段として機能する。
【0055】
下記表1には、加工対象物Wの材質の候補として、F、G、Hがデータ記憶部35cにデータテーブルとして記憶されている場合を示す。F、G、Hの材質はそれぞれ異なり、それぞれ異なった特徴を有している。Fが木材、Gがプラスチック、Hが軽金属であるとする。
【0056】
(表1)
【0057】
データ記憶部35cには、各々の素材に合わせた加工条件である主軸(スピンドル)44の回転数、所定の工具における適切な送り量が記憶されている。また、加工時に工具交換を行って加工を行う場合は、各種素材に合った工具を選択する等の他の要素や、工具ごとの最適な回転数、送り量等もデータ記憶部35cに記憶して読み出しできるようにすることもできる。データ記憶部35cが密度情報を記憶する密度記憶手段として機能し、演算した密度に対応した加工条件も記憶する加工条件記憶手段としても機能する。
【0058】
データ記憶部35cには、材質Fについては、回転数Fr、送り量Ff、質量Fm、寸法Fv、密度Fdが記憶されている。材質Gについては、回転数Gr、送り量Gf、質量Gm、寸法Gv、密度Gdが記憶されている。材質Hについては、回転数Hr、送り量Hf、質量Hm、寸法Hv、密度Hdが記憶されており、加工対象物Wの測定結果と記憶されている複数の材質情報との比較処理を行い、一致した場合に、CPU31は、加工対象物Wの特徴に合った加工条件で加工制御を行う。
【0059】
<加工対象物Wの密度比較>
以下に、密度がdである場合についての特徴推定処理を示す。
材質Fの密度データ=Fd
材質Gの密度データ=Gd
材質Hの密度データ=Hd
測定誤差の許容値をτとすると、算出された密度がdである場合、
Fd−τ<d<Fd+τ のとき、ワークの特徴は材質Fであると推定する。
Gd−τ<d<Gd+τ のとき、ワークの特徴は材質Gであると推定する。
Hd−τ<d<Hd+τ のとき、ワークの特徴は材質Hであると推定する。
【0060】
上記のいずれかの推定結果にも当てはまらない場合は、CPU31は、材質エラー判定処理を行い、警告または停止処理を行う。また、許容値は材質ごとに変更してもよい。CPU31が推定結果から各種処理を行う加工対象物Wの異常に対応する異常対応手段として機能する。
【0061】
<加工装置の判定処理制御フローチャート>
図9を参照し、具体的に加工装置Aの特徴の一つである材質を検知するための方法を説明する。Sは制御工程のステップを表す。S101でCPU31は、データ記憶部35cから加工対象物Wの特徴の一つである材質を判定するために加工対象物Wの加工を行う形状の初期の概形情報を読み込む。読み込んだ概形情報により加工対象物Wのおおよその位置を特定し、加工対象物Wの概形に対応した寸法測定制御を行う。
【0062】
S101で直方体であるとの情報であれば、上述のようにステージ23を移動させる。接触子Tcが加工対象物Wに接触しトルクセンサー24がトルクの変化を検知した位置でのステージ23の位置をエンコーダ45でCPU31に伝達する。寸法情報を演算するのに必要な接触点について、ステージ23の位置をエンコーダ45で検出し、データ記憶部35cに記憶する。複数の測定した接触点及び記憶されている情報から寸法を求めるのに必要な情報を揃えCPU31は寸法を算出する。このときの測定動作中にエアーブロー部Rにより堆積物dの吹き飛ばしを行う。また、先にエアーによる清掃を行ってから、寸法測定処理や質量測定処理を行っても良い。
【0063】
S102において、重量検知センサーMwを用いて、加工台11上の加工対象物Wの質量を測定する。質量測定データは、CPU31がデータ記憶部35cに記憶する。堆積物dの影響がない場合は、質量を先に求めても良いが、堆積物dの影響を軽減するためには、寸法測定動作から行うのが好ましい。S103で、CPU31は、S101及びS102で得た寸法情報と質量情報に基づいて密度情報を演算し、データ記憶部35cに記憶している情報と上述の密度比較処理を行い特徴推定手段として機能する。なお、このような特徴推定手段は、本実施形態では加工装置AのCPU31で機能させたが、本発明は勿論これに限定されず、加工装置本体とこの加工装置本体を制御する制御部とを備えた加工処理システムにおいては、制御部側、即ち、加工装置本体に接続されるコントローラ、PC等のCPU等において加工対象物Wの特徴推定の少なくとも一部又は全部を行うようにしてもよい。
【0064】
S104において、S103で比較処理を行った結果、適合する密度情報を持った材質があるかを判定する。密度比較処理によって、データ記憶部35cに記憶されている密度情報に適合するとCPU31が判定した場合は、S105へ進み、記憶されている許容値にも適合する密度情報がないと判定した場合は、S107へ進む。S105では、加工対象物Wの特徴としての材質及び寸法情報をデータ記憶部35cからCPU31に出力する。
【0065】
S106では、推定された特徴である材質に対する適切な、主軸(スピンドル)44の回転速度や送り量等をデータ記憶部35cから読み出して、指定された形状に加工するための加工指示データを作成する。
【0066】
S107では、算出した密度dがデータ記憶部35cに記憶している密度情報及び許容値の範囲内にも該当しない場合に、CPU31は加工対象物Wの材質が推定できないとしてエラー判定処理を行う。S108では、警告ライト43の点灯または、加工装置Aの作動停止処理を行う。また、加工装置Aの作動停止処理を行っても、警告ライト43を点灯させたままとしても良い。異常対応処理として使用者へ警告ライト43を用いて赤色を点灯させ警告を行う。
【0067】
警告の種類としては、使用者に警告を促すためのもので、液晶などの画面、LEDなどの表示、音、振動などにより警告を出すものでもよい。またI/O32等や無線を介して外部機器によって警告が出力されるものでもよい。警告の出し方は上記に限定されるものではなく、使用者に分かるものであれば良い。また、CPU31による異常対応処理としてモータ21の緊急停止を行っても良い。警告等の異常対応処理の出力は、寸法測定結果や材質判定結果に基づいて、CPU31によって行われ、CPU31が異常対応処理手段として機能する。
【0068】
S106の加工指示データにおいては、上述の表1には、材質に対して、回転速度、送り量が一対のみ記載してあるが、加工する部位、工具等によって、最適値を加工部位や工具等に対応させ複数記憶しても良い。
【0069】
本発明の実施形態では、寸法と質量の測定結果から密度を求め記録されている材質の密度情報と比較することによって、加工対象物の特徴の一つである材質を推定した。記憶されている密度情報には、材質と加工条件が対応させて記憶されている。加工指示データを作成する前段階で上述のように寸法と質量から特徴を推定して、加工制御を行うことによって、加工条件に対応する情報である寸法と質量から推定できる情報を使用者が測定し入力することなく加工指示データを作成することができる。加工装置の機能で測定を行うことで使用者の測定の負担を軽減することができ使用者の利便性を向上させることができる。
【0070】
また、作成された加工指示データの中からワークの寸法および質量それらから求められる情報が、例えば加工用のコードが加工条件としての形式で記述されている場合には、測定した情報と記憶された情報を比較することができる。比較処理を行い一致しない場合には、加工動作を開始しないようにすることや、警告表示手段を持つことで、使用者に加工対象物の特徴を推定できないことを伝えることができる。その結果、加工装置が、加工対象物の特徴に不適な工具や送り量といった加工条件で加工してしまうといったことを防止することができる。
【0071】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態には、第1の実施形態と同様な装置構成の加工装置Aを用いる。
第1の実施形態とは、測定データから加工条件を新たに追加するか否かの判定をすることが異なる。S201〜S207は、第1の実施形態とS101〜S107と同様な処理を行う。第1の実施形態とは、S208以降の処理が異なる。
【0072】
S208において、S204で記憶された複数のデータの許容値内にも適合する情報がない場合、S207で材質エラーであると判定した後にS208で登録を行うかの選択処理の指令がCPU31から出される。警告ライト43に選択用の黄色点灯を行い使用者に連絡する。使用者が、加工装置Aの操作部41、もしくは、制御部30等に接続しているコンピュータから登録を行うことを選択するとS209へ進み、登録を行わないことを選択するとS212へ進み停止処理を行う。
【0073】
S209では、記憶されている複数の密度情報を算出した密度情報で割った比率をパーセンテージ等の割合で診断し、表示部42で使用者に提示する。使用者は、S210で登録されている複数の密度情報からの比率を見て、登録するか否かを選択する。図11は、測定された加工対象物Wの密度情報が、比較処理の結果、データ記憶部35cに記憶されている材質Fの1.2倍、材質Gの1.1倍、材質Hの0.6倍であった場合の表示である。それぞれの密度から大きく異なっていると判断し、操作部41から登録しないと選択した場合は、S212で停止処理を行う。比較処理した密度情報が、登録されている許容値よりは大きいものの、およそ材質が推定できる場合は、登録されている複数の材質F、G、Hから加工条件として、どの材質がより適切かS210で選択する。
【0074】
S210で材質Gが操作部41から選択された場合は、登録されている材質の情報を基に加工条件を密度情報との比率から補正を行う。補正条件としては、密度が大きいと硬い可能性があるため、回転速度を比例させて大きくする。送り量は、硬い物では送り量を少なくする方が工具の痛みが少ないため、反比例させて小さくする。CPU31は選択された材質に密度情報からのずれの補正量を加え、新たな加工条件を材質Iとして回転数Ir、送り量If、質量Im、寸法Iv、密度Idをデータ記憶部35cに追加記憶処理を行う。使用者が材質Gを選択し、密度が1.1Gdであれば、CPU31は、Ir=1.1Gr、If=0.91Gfとし質量、寸法、密度は測定した値をデータ記憶部35cに追加記録する加工条件追加手段として機能する。
【0075】
S210を経てS205に至った場合は、CPU31が、特徴は材質Iであることをデータ記憶部35cから出力し、測定された寸法Iv及び追加記憶した加工条件である。回転数Ir、送り量IfからS206で材質Iに適した加工指示データを作成する。
【0076】
この追加記憶処理によって、測定結果が記憶されていない場合であっても、加工条件を簡便に追加記憶させることによって、加工指示を行うことができる。そのため、加工条件が記憶されていない場合でも、加工を続行できると判断できる場合には、簡便に加工条件を設定し加工を行うことができる。従って、上述の実施形態と比べて使用者の入力操作をさらに低減することができる。
【0077】
新たなデータの登録処理は、安全のためオペレータが操作するようにしたが、加工する材質に大きな密度差の材質を使用することがなく、プラスチックで複数の種類があるなど種類が限定されている場合には、エラー判定のための許容値と登録処理のための許容値を別途設けることで、CPU31が登録処理のための許容値を基にCPU31が判定してもよい。
【0078】
(他の実施形態)
上記第1、第2の実施形態においては、質量情報と寸法情報から密度情報を演算し求めたが、表1のように、質量情報と寸法情報が記憶されている場合は、密度情報を演算せずに、測定した質量情報と、データ記憶部35cに記憶されている質量情報と寸法情報を直接比較しても良い。質量情報と寸法情報を直接比較して加工対象物の材質等の特徴を求めて、特徴に適した加工を行うようにすることもできる。加工対象物の材質等の特徴を求めることで、質量のみに基づいて、加工対象物に所定の加工制御を行うよりも誤った加工条件が設定される可能性を低減できる。また、使用者が測定を行うこともなく利便性を高めることができる。
【符号の説明】
【0079】
11 加工台
12 カバー部材
15 主軸
18 支持部
21 モータ
22 送りねじ
23 移動部材(ステージ)
24 トルクセンサー
30 制御部
31 CPU
32 I/O
35 データ入力部
35c データ記憶部
41 操作部
42 表示部
43 警告ライト
44 主軸(スピンドル)
45 エンコーダ
A 加工装置
B 躯体
d 堆積物(切粉)
W 加工対象物
Sw 加工領域
Tc 接触子
R エアーブロー部
Mw 重量検知センサー
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工台に固定したワーク等の加工対象物に対して切削などの加工を行う加工装置、加工装置の制御方法及び加工処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
加工装置は、主軸に工具を取り付け、この主軸と加工台とを例えば3軸(x、y、z軸)方向に相対移動させることにより、加工台に固定した加工対象物に所定の加工を施す。このような加工装置として、加工台を固定のままとし、主軸を3軸方向に移動させる構造の他、加工台をx軸方向(或いはy軸方向)に移動させ、主軸をz軸方向及びy軸方向(或いはx軸方向)に移動させる構造もある。何れの場合も、加工指示を行うプログラムに従って加工対象物を加工する。
【0003】
各種切削加工において精度の高い形状の完成物を得るためには、ワーク(加工対象物)の寸法を確認する必要がある。そのため、使用者が加工対象物を加工台に固定する前に、ノギスや工具顕微鏡などの測定器を用いて寸法を確認してから、プログラムを設定していた。また加工対象物には、樹脂、金属、木材などの種類がありそれぞれ適した工具、加工条件などがあり、加工の前に加工装置のプログラムに設定を行う必要があった。
【0004】
また、特許文献1のように、加工対象物の加工プログラムと重量が対応関係にある場合に、測定した重量に応じて、加工プログラムを設定する加工装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−83420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
加工装置等の工作機械において、精度の高い形状の完成物を得るためには、加工対象物の材質に適した工具の選択や、工具の回転速度、送り量の決定など、適切な加工の条件を設定する必要がある。加工の条件を設定するためには、加工対象物の寸法だけでなく、加工対象物の特徴についても考慮する必要がある。特許文献1に記載の加工装置は、加工対象物の重量に応じて加工プログラムを変更する。しかしながら、加工対象物の重量が一致していても寸法が異なっている場合は、加工対象物に不適な加工条件が実行されてしまう可能性がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、加工対象物の寸法と質量とを測定し、加工対象物の特徴の推定を行うことで適切な加工制御を実現しつつ、使用者の負担を軽減することができる加工装置、加工装置の制御方法及び加工処理システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の加工装置は、加工対象物が取り付けられる加工台と、前記加工台に対向して配置されて前記加工対象物を加工するための工具を支持する支持部と、前記支持部と前記加工台とを相対移動させる移動手段と、前記支持部に設けられて前記加工対象物の寸法を測定する寸法測定手段と、前記加工対象物の質量を測定する質量測定手段と、前記寸法測定手段によって測定された寸法と前記質量測定手段によって測定された質量とに基づいて前記加工対象物の特徴を推定する特徴推定手段と、前記特徴推定手段の推定結果に基づいて前記加工対象物への加工制御を行う加工制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の加工装置の制御方法は、加工台に取り付けられる加工対象物を加工する加工装置の制御方法であって、前記加工対象物の寸法を測定する寸法測定ステップと、前記加工対象物の質量を測定する質量測定ステップと、各測定ステップで測定された前記加工対象物の寸法及び質量に基づいて、前記加工対象物の特徴を推定する推定ステップと、前記推定ステップの推定結果に基づいて前記加工対象物への加工制御を行う加工制御ステップとを備えたことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の加工処理システムは、加工対象物が取り付けられる加工台に対向して配置された前記加工対象物を加工する工具を支持するための支持部と、前記支持部と前記加工台とを相対移動させる移動手段と、前記加工対象物の寸法を測定する寸法測定手段と、前記加工対象物の質量を測定する質量測定手段と、前記寸法測定手段によって測定された寸法と前記質量測定手段によって測定された質量とに基づいて前記加工対象物の特徴を推定する特徴推定手段と、前記特徴推定手段の推定結果に基づいて前記加工対象物への加工制御を行う加工制御手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、測定した寸法、質量から加工対象物の特徴を推定し、加工対象物の特徴に適した加工制御を行うことができる。また、加工装置の機能で測定を行うことで使用者の測定の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態における加工装置の概略構成断面図。
【図2】第1の実施形態の加工台周辺及び主軸部分の概略斜視図。
【図3】堆積物が散乱している加工台をy軸方向の寸法測定動作開始位置に移動させた概略構成断面図。
【図4】堆積物が散乱している加工台をy軸方向の寸法測定動作終了位置に移動させた概略構成断面図。
【図5】加工対象物が直方体形状のときの測定点の模式図。
【図6】カバー付加工台を移動させて、堆積物をカバー部材中央に集める工程を順番に示す模式図。
【図7】第1の実施形態に係る加工装置がエアーを放出している状態を示す横断面図。
【図8】第1の実施形態に係る加工装置の制御ブロック図。
【図9】第1の実施形態に係る加工対象物の材質判定処理の流れ図。
【図10】第2の実施形態に係る加工対象物の材質判定処理の流れ図。
【図11】第2の実施形態に係る比較処理結果の表示例。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について、図1ないし図9を用いて説明する。まず、本実施形態の加工装置Aの全体構成について、図1及び図2により説明する。図1は、加工装置Aの概略構成断面図であり、図2は加工台周辺及び主軸部分の概略斜視図である。
【0014】
加工装置Aは、加工対象物W(ワーク)を固定する加工台11と、カバー部材12、サイドワイパー13a、13b、回収ボックス14、主軸15、前側ワイパー16、後側ワイパー17、支持部18、収納部19を備える。また加工台11と支持部18を対向して配置され相対移動させる各軸方向への送り移動手段として、各軸方向に駆動部20を備える。それぞれの駆動部の構成であることを示す添え字を省略すると駆動部20は、モータ21と、送りねじ22と、移動部材23(x軸駆動部に関しては不図示)と、トルクセンサー24を備える。
【0015】
以下の説明では、図1に示すx軸送りねじ22xに平行な方向をx軸とし、加工装置Aの載置面に対して略水平方向でx軸に直角な(直交または交差する)方向をy軸、x軸及びy軸に対して垂直な方向(鉛直方向)をz軸と呼ぶ。
【0016】
主軸15の先端には、工具などを支持する支持部18が設けられている。また、主軸15内には、工具の冷却や、切粉を吹き飛ばすために用いることができるエアーブロー部Rを備える。加工台11上の加工対象物Wの質量を測定するための接触式の重量検知センサーMwを加工台11の下方に備え、加工台11上に加工対象物Wが載置された際における質量の変化を測定する質量測定手段として機能する。
【0017】
本実施形態においては、加工対象物Wの寸法を測定するために支持部18に接触子Tcを支持している。接触子Tcが接触した位置を記憶することによって寸法を測定する寸法測定手段として機能する。また、接触子Tcは、加工台11上の加工対象物Wを傷つけることのないように、先端が丸みを帯びた形状となっている。送り量や加工対象物の材質等によっては、工具を用いることもできる。接触子Tcは図示しない工具自動交換装置(ATC)によって支持部18の下端に挿入され交換可能に装着される。
【0018】
本実施形態では、加工台11をy軸方向(所定方向)に、接触子Tcを支持部18により把持した主軸15をx軸方向とz軸方向とに、それぞれ移動させる。このために、加工台11をy軸方向(所定方向)に移動させる加工台移動手段としてy軸駆動部20yと、主軸15をx軸方向とz軸方向とにそれぞれ移動させる接触子Tcの支持部移動手段としてx軸駆動部20x及びz軸駆動部20zとを備える。各軸駆動部により、加工台11と支持部18とをx軸、y軸、z軸の各方向に相対移動可能に構成されている。
【0019】
y軸駆動部20yを設置した空間を有する収納部19の上方には、収納部19を覆うように、シート状のカバー部材12が設置されている。カバー部材12は加工領域Swを区画し底面の一部を構成している。即ち、収納部19は、y軸駆動部20yを設置した空間の周囲を囲むようにそれぞれ配置された、前側フレーム19a、後側フレーム19b、側方フレーム19c(不図示)から構成されている。そして、これら各フレーム19a、19bらの上面にカバー部材12を配置している。
【0020】
カバー部材12は、加工台11に固定され、y軸駆動部20yの駆動により加工台11と共に移動する。言い換えれば、カバー部材12は、加工台11を介してy軸駆動部20yによりy軸方向に駆動され加工台11とカバー部材12はともに移動しカバー付加工台として機能する。加工台11の上面は、カバー部材12の表面に露出するように固定されている。このために、カバー部材12の一部に開口部を設け、この開口部内に加工台11の上半部を挿入した状態で、加工台11とカバー部材12とを例えば接着などにより固定している。
【0021】
このようなカバー部材12は、例えば、ゴムベルトやスチールベルトなどのある程度のコシがあり弾性変形可能な部材で、ベルト状の形状を有し、表面(上面)が段差や凹凸がない単一の面により構成される。なお、単一の面とは、加工装置Aによる加工時に生じる切粉などの堆積物が入り込んだり引っ掛かったりするような、段差や凹凸がない面を指す。スチールベルトであれば、より滑らかで堆積物の分離及び回収が行い易い。
【0022】
また、カバー部材12は、所定方向一端部である前側(図1の左側)の端部12aが収納部19の下方に回り込むように案内されている。一方、カバー部材12の後側(図1の右側)の端部12bは、躯体Bの後側に配置された第2のカバー収納部S2に収納される。第2のカバー収納部S2は、後側フレーム19bと一体に形成され、カバー部材12の厚さよりも僅かに大きな隙間を有する空間が、後側フレーム19bから上方に延出されるように構成されている。
【0023】
カバー部材12の後側の端部12bは、カバー部材12が後側に移動すると、第2のカバー収納部S2の入り口に構成されたフレームによる立ち上がり部との間に案内されて、上述のように構成される第2のカバー収納部S2に収納される。カバー部材12は第1のカバー収納部S1と第2のカバー収納部S2との間を移動しても加工領域Swに完全に露出しない構造となっており、弾性変形の撓みにより前側ワイパー16、後側ワイパー17と摺接する押圧力を得て堆積物が除去されやすくなっている。またカバー部材12の加工領域Swに露出しない部分には、目印となる段差等を設けることも可能である。
【0024】
本実施形態の場合、このように、カバー部材12の前側の端部12aが収納部19の下方に配置された第1のカバー収納部S1に、カバー部材12の後側の端部12bが躯体Bの後側にz軸方向に配置された第2のカバー収納部S2にそれぞれ収納される。このため、加工装置Aの前後方向の寸法を小さくでき、小型化を図れる。
【0025】
また、図2に示すように、カバー部材12はy軸方向と直交する幅方向から落下することを防止する摺接部材としてサイドワイパー13a、13bを備える。サイドワイパー13a、13bは堆積物落下防止手段として機能し、駆動部20yに堆積物dが落下しないようになっている。サイドワイパー13a、13bは、後側ワイパー17に向かって幅方向に狭くなるように傾斜を持って設置されている。加工台11の移動方向両側にそれぞれ配置され、対向する一対のサイドワイパー13a、13bの間隔は他方側に沿って除々に小さくなっている。
【0026】
また、摺接部材である前側ワイパー16、後側ワイパー17を、それぞれ固定しカバー部材12の表面に摺接させている。これにより、カバー部材12が前側に移動した場合には、カバー部材12上の堆積物dが、前側ワイパー16によりカバー部材12から分離され、カバー部材12が後側に移動した場合には、カバー部材12上の堆積物dが、後側ワイパー17により堰き止められる。そして、カバー部材12上の堆積物dが各収納部S1、S2に入り込むことを防止している。後側ワイパー17は、立ち上がって収納されているカバー部材12に対して、堆積物dの除去を行っているため、カバー部材12の弾性変形による復元力と後側ワイパー17による分離作用で堆積物dを除去しやすい。また、前側ワイパー16は、カバー部材12の構成する曲面に接しているため堆積物dの自重と前側ワイパー16の分離作用により除去が行い易い。
【0027】
(加工装置の駆動構成)
三次元加工のための送り移動手段について説明する。まず、各駆動部20x、20y、20zの共通する構造について説明する。なお、共通する構造については、それぞれの駆動部の構成であることを示す添え字を省略して、総括的に説明する。
【0028】
モータ21は、加工装置Aの躯体Bに固定され、例えば、装置内もしくは接続された外部端末などの指令に基づいて駆動制御される。送りねじ22は、外周面に雄ねじ部を有し、各軸方向とそれぞれ平行に配置され、モータ21の駆動により回転する。移動部材23は、送りねじ22の雄ねじ部と螺合する雌ねじ部を有し、送りねじ22の回転に伴い、雄ねじ部と雌ねじ部との螺合に基づいて送りねじ22に沿って移動する。トルクセンサー24は、トルク変化の検出を行い、接触子Tcが加工対象物Wに触れた際のトルク変化を検出する。
【0029】
次に、各駆動部のそれぞれの構成について説明する。y軸駆動部20yの移動部材23yには、加工台11が固定されており、移動部材23yと共に加工台11が、送りねじ22yの配設方向であるy軸方向に移動する。このようなy軸駆動部20yは、加工台11の下方に配置される。
【0030】
x軸駆動部20xの移動部材23xには、主軸15をz軸方向の移動自在に支持しており、移動部材23xと共に主軸15が、送りねじ22xの配設方向であるx軸方向に移動する。なお、z軸駆動部20zは、移動部材23xに支持されており、x軸駆動部20xの駆動により主軸15と共にx軸方向に移動する。
【0031】
z軸駆動部20zの移動部材23zには、主軸15が固定されており、移動部材23zと共に主軸15が、送りねじ22zの配設方向であるz軸方向に移動する。
【0032】
したがって、本実施形態の加工装置Aは、主軸15を備えた移動機構(x軸駆動モータ21x及びz軸駆動モータ21z)を含む接触子Tcや工具等の加工手段側でのxz方向への移動と、加工台11側でのy軸方向への移動とを相対的に制御できる三次元加工装置となる。つまり、x軸駆動モータ21xやz軸駆動モータ21zは、加工台11に対して主軸15を移動させる主軸移動手段として機能する。一方、y軸駆動モータ21yは、主軸15に対して加工台11を移動させる加工台移動手段として機能する。なお、加工手段側と加工台11とでxyz軸の移動方向の組み合わせは、上述したものに特に限定されず、例えば、加工台11をz軸方向、あるいはx軸方向に移動させ、これに対応させて接触子Tcや加工手段側を所定の方向に移動させるようにしてもよい。
【0033】
x軸駆動部20xとz軸駆動部20zは、躯体Bと一体又は躯体Bに固定の覆い部材Cに覆われている。覆い部材Cは、工具による加工領域Swを確保できるように、段付き形状を有し、x軸駆動部20x及びz軸駆動部20zと加工領域Swとの間に配置される。これにより、加工時に生じる切粉などの堆積物が、x軸駆動部20x及びz軸駆動部20zに侵入しにくくしている。即ち、加工領域Swは、不図示の前面の開閉材、上面の覆い部材C、と不図示の左右側板または覆い部材と、底面となるカバー部材12と加工台11などで区画された加工対象物Wを加工した際の堆積物dが飛散してしまう領域である。
【0034】
なお、y軸駆動部20yのモータ21yを収納部19の外に配置しても良い。したがって、収納部19内に配置される駆動部は、少なくとも加工台11を移動させる機構の一部であれば良い。また、駆動部の構成は、上述したような送りねじ機構に限らず、例えばラックアンドピニオンのような他の機構であっても良い。
【0035】
図3、図4は、本発明の実施形態に係る寸法測定動作を行う際の横断面図である。図5に直方体形状の加工対象物Wの接触子Tcによる測定点を示す。接触子Tcにより、加工対象物Wの図5(a)に示すMx1とMx2の接触点の位置を検出してx軸方向の長さXを求め、My1とMy2の接触点の位置を検出しy軸方向の長さYを求める。z軸方向については、図5(b)に示すMz1とMz2の接触点の位置を検出して長さZを求める。また、図3は、接触子Tcが加工台11を移動させ、加工対象物Wのy軸方向の長さ測定を開始した図である。図4がy軸方向の長さの他端部を測定している図である。このように、加工台11と主軸15とを相対的に移動させることによって、寸法測定を行う。この間、加工対象物Wは、図6に示すように、堆積物dの回収動作も行うことができる。
【0036】
また、カバー部材12の前側の下方には、回収部である回収ボックス14が、躯体Bと着脱自在に配置されている。そして、図4に示すように、カバー部材12が前側(所定方向一端部側)に移動して収納部19の下方に回り込む際に、前側ワイパー16により分離された堆積物dが回収ボックス14内に落下するようにしている。また図3から図4までに移動させている間に、エアーブロー部Rからエアーを噴出し、加工装置A内部等からこぼれ落ちた堆積物dを吹き飛ばすことができる。これにより、重量検知センサーMwが加工対象物Wの質量を測定する前に、清掃することで、重量検知センサーMwが加工対象物Wの質量の測定する精度を向上させることができる。
【0037】
図7は、図3から図4に示すような測定動作で加工対象物Wの上方を主軸15が移動する際に加工対象物Wに切粉dをエアーブロー部Rが吹き飛ばしを行っている図である。また、この吹き飛ばし動作は、主軸15がx軸、y軸、z軸各軸方向加工台11に対して相対的に移動する場合において各々行うことができる。エアーRaが主軸15内のエアーであり、支持部18から加工領域Swに放出されたエアーがエアーRb、エアーRbが加工対象物Aに衝突して、加工対象物W上の堆積物dを吹き飛ばす旋回流に変化したエアーがエアーRcである。加工対象物W上の堆積物dの吹き飛ばしを行うため、質量測定において、加工対象物W以外の質量を極力減らすことができる。また、堆積物の回収部は、カバー付加工台の移動方向一方側に設けられていれば、その形状等は各種変形可能である。エアーブロー部Rも主軸15内に設けた例を示したが、主軸15とともに移動する形態であれば、その設置場所は問わない。なお、本実施形態では、主軸15にエアーブロー部Rを設けたが、本発明はこれに限定されず、エアーブロー部を設けない構成をとることも可能である。
【0038】
加工対象物Wを加工する際に生じた切粉などの堆積物dは、図6(a)に示すように、カバー部材12上に溜まる。加工対象物Wの寸法測定を開始する場合には、まず、カバー部材12を、図6(b)に示すように、y軸方向一方(図6の上方、矢印イ方向)に移動させる。この際、カバー部材12の幅方向両端側に存在する異物dは、サイドワイパー13a、13bと摺接して、カバー部材12から落下することを防止されると共に、サイドワイパー13a、13bの傾斜に基づいて、カバー部材12の幅方向中央寄りにかき集められる。なお、カバー部材12のy軸方向一方に存在する堆積物dは、前述したように、後側ワイパー17により堰き止められ、かき集められる。
【0039】
そして、この状態から、図6(c)に示すように、カバー部材12をy軸方向他方(図6の下方、矢印ロ方向)に移動させる際に主軸15をz軸方向に下げると、接触子Tcが加工対象物Wに接触する(図4参照)。このときのトルク変化をトルクセンサー24yで読み取り、接触位置を後述のエンコーダ45yによりトルク変化検出位置としてCPU31が処理しデータ記憶部35cに記憶する。その後、主軸5をz軸方向上方に移動させた後に、加工台11をy軸方向へ移動させ加工対象物Wをy軸方向に送る。堆積物dがカバー部材12の幅方向中央側に集まったまま、装置の前側に運ばれる。
【0040】
この際、カバー部材12のy軸方向他方に存在する堆積物dは、前述したように、前側ワイパー16によりカバー部材12の表面に前側ワイパー16によりかき集められ、堆積量が前側ワイパー16の高さを超えるとカバー部材12上から分離され、回収ボックス4により回収される。前側ワイパー16は、カバー部材12の屈曲面に接しているため、サイドワイパー13a、13bと同様にカバー部材12との摺接位置を通る接線に直角な方向から傾斜して接している。そのため、カバー部材12からの堆積物dの分離性が良い。
【0041】
その後、主軸15をz軸方向に下げ、再度y軸方向一方(図6の上方、矢印イ方向)に移動させる。このとき、接触子Tcは加工対象物Wに接触(図4参照)し、そのときのトルク変化をトルクセンサー24yで検知し接触位置を後述のエンコーダ45yによりトルク変化検出位置としてCPU31が処理しデータ記憶部35cに記憶する。接触子Tcを支持している支持部18移動させて、トルク変化を検知した座標または基準位置からの距離から計算することで長さを測定することができる。寸法測定手段は、寸法測定の基となる各軸の座標がわかれば、支持部18に設けられ、支持部18とともに移動する手段であれば、接触子Tcに限ったものではない。また、エンコーダに限らず、支持部18の位置を各種センサーでセンシングして、加工対象物Wとの接触点を決定しても良い。
【0042】
<加工装置の制御構成>
図8は、本発明の第1の実施形態に係る切削加工装置の構成を示すブロック図である。上述の加工装置Aの制御手段である制御部30について、図8を用いて説明する。図8に示すように、加工装置Aは、制御部30と加工装置本体40とを備える。このうちの制御部30は、演算手段であるCPU31、入出力ポート(I/O)32、各モータドライバ33x、33y、33z、主軸コントローラ34、データ入力部35などを備える。CPU31は、入力されたデータや信号に基づいて各種の演算を行う。
【0043】
I/O32は、加工装置本体40の重量検知センサーMw、エアーブロー部R、操作部41、表示部42、警告ライト43、主軸(スピンドル)44に接続される。主軸コントローラ34は、主軸15を回転させる不図示のスピンドルモータである主軸(スピンドル)44を制御して、主軸(スピンドル)44の回転速度を制御するためのプログラムを実行する。また、データ入力部35は、加工対象である被加工物の形状データ入力部35aと、加工データ読み込み部35bと、データ記憶部35cとを有する。
【0044】
なお、入出力ポート(I/O)32には、外部のコンピュータと接続するポートを設けることができ、加工指示データを外部のPCから無線または有線のLAN等を経由して受信することで加工指示を実行するように構成してもよい。また、データ入力部35に外部コンピュータを接続するポートを設けてデータ入力部の各処理を外部コンピュータで実行することも可能である。外部コンピュータと接続した場合は、各種処理を外部のコンピュータで行い、処理結果のデータを加工装置Aに送信または制御部30と処理を分散して加工装置の制御動作を行う加工処理システムとして構成することもできる。
【0045】
データ入力部35aで入力されたデータ及び読み込み部35bで読み込んだデータをデータ記憶部35cに記憶する。CPU31は、データ記憶部35cに記憶されたデータに基づいて各種の演算を行い、各モータドライバ33x、33y、33zなどに指令を送る。トルク変化位置を検出したデータや、主軸(スピンドル)44の回転数、各ステージ23x、23y、23zの送り量もデータ記憶部35cに記憶され、CPU31に読み出され各種処理の実行や比較等に使用される。制御部30のCPU31が重量検知センサーMwの質量の測定結果とトルクセンサー24が検出した位置を演算する。検出した位置から長さを求め、求めた長さを演算することで立体的な寸法を算出する。CPU31が、測定した質量を各方向の寸法から求めた体積で割る演算を行うことで加工対象物Wの密度を算出することができる。
【0046】
各モータ21x、21y、21zは、上述のように、データ入力部35で入力されたデータに基づいてCPU31が演算した指令により、各モータドライバ33x、33y、33zにより駆動される。この時、CPU31は、各モータドライバ33x、33y、33zに指令した各ステージ23x、23y、23zの移動量(位置)をデータ記憶部35cに記憶させる。これと同時に、各トルクセンサー24x、24y、24zや各エンコーダ45x、45y、45zにより検知した検知結果も、データ記憶部35cに記憶される。
トルクセンサー24のトルク変化検知結果をエンコーダ45によりトルク変化検知位置を検出することで、送り移動手段の作動に伴う支持部18と加工台11との相対位置に関する情報を検出する位置検出手段として機能する。
【0047】
本実施形態では、上述した制御部30により加工装置本体40の各部を制御することにより、工具を回転させつつ主軸15又は加工台11を移動させながら、加工台11上に固定した加工対象物Wに所定の加工を施す。また、加工は、連続して行う場合と、所定量加工する毎に主軸5及び加工台1を停止させる場合がある。何れにしても、各ステージ23x、23y、23zは、各モータ21x、21y、21zが指令に基づいて駆動されることにより移動する。
【0048】
CPU31が、エアーブロー部Rのエアー出力を制御するエアー放出制御手段及び、加工対象物Wの質量を測定する重量検知センサーMwの検知結果や寸法の測定結果から加工装置の制御を行い加工制御手段として機能する。加工制御には、所定形状に加工することと異常対応として、警告や停止処理を行うことも含まれる。
【0049】
<加工対象物Wの寸法測定>
図3〜図5を用いて、各方向の長さを測定するための加工装置の動作を詳細に説明する。図5(a)は、加工台11上の加工対象物Wを上面から見た図である。また図5(b)は加工台1上の加工対象物Wをx軸方向の側方から見た図である。本実施形態において測定対象である加工対象物Wは直方体形状のものを用いた。加工対象物Wと接触子Tcが接触した点を接触点My1とする。(図3(a)参照)加工対象物Wと接触子Tcが接触した点を接触点My2とする。エンコーダ45yによって、記録された座標からCPU31は、ステージ23yが最もモータ21yに近づいている位置を基準位置として、基準位置からのMy1、My2の距離を求める。(図4参照)My1とMy2の差の絶対値を演算することでCPU31は長さYを算出することができる。
【0050】
上述の方法が簡便であるが、加工対象物Wの形状次第で、各種変形が可能であり、直方体であれば、3軸に備えられたエンコーダ45の検出位置が異なっていても、y軸方向の二点のみを演算することで長さYを求めることもできる。他の形状であれば、初期形状を記憶し演算する長さを複数設けることで算出できる。
【0051】
また、x軸、z軸もステージ23x、24zが最もモータ21x、21zに近づいている位置を基準位置とする。基準位置は、x軸、y軸、z軸ともに接触点の相対位置を検知し長さを計算することができれば、各種変更可能である。y軸方向と同様に各ステージ23x、23zの移動量(位置)を、データ記憶部35cに記憶させる。各トルクセンサー24x、24zや各エンコーダ45x、45zにより検知した検知結果を各座標方向の長さを制御部30のCPU31で演算し求める。
【0052】
x軸方向の長さXについては、加工対象物Wにおけるx軸方向の異なる2面の点、図5(a)記載の接触点Mx1、Mx2から長さXを求める。z軸方向の長さZについては、加工対象物Wにおけるz軸方向の加工対象物Wの上面と加工台11もしくは、加工台11の高さが等しい点のカバー部材12の異なる2点、図5(b)に示す接触点Mz1、Mz2から長さZを求める。
【0053】
直方体形状の加工対象物Wが、各軸方向一方側に固定具等によって固定されている場合は、固定されている位置をデータ記憶部35c等に記憶し、基準位置からの加工対象物Wの接触点と固定部の距離の差を求めることで演算できる。そのため、当該方向については接触点1点のみで長さを演算することができる。また、測定対象の長さ方向について、両側からを固定具等で位置決めが行われ、固定している方向についての長さをデータ記憶部35cに記憶している場合は、当該方向について測定を省略することもできる。
【0054】
加工対象物Wの密度dは、d=(加工対象物Wの質量)/(長さX)*(長さY)*(長さZ)
で求めることができる。上述のように加工対象Wの3方向の長さと質量から密度を演算することができる。各トルクセンサー24x、24zや各エンコーダ45x、45zにより検知した検知結果を各座標方向の長さをCPU31で演算し密度算出手段として機能する。
【0055】
下記表1には、加工対象物Wの材質の候補として、F、G、Hがデータ記憶部35cにデータテーブルとして記憶されている場合を示す。F、G、Hの材質はそれぞれ異なり、それぞれ異なった特徴を有している。Fが木材、Gがプラスチック、Hが軽金属であるとする。
【0056】
(表1)
【0057】
データ記憶部35cには、各々の素材に合わせた加工条件である主軸(スピンドル)44の回転数、所定の工具における適切な送り量が記憶されている。また、加工時に工具交換を行って加工を行う場合は、各種素材に合った工具を選択する等の他の要素や、工具ごとの最適な回転数、送り量等もデータ記憶部35cに記憶して読み出しできるようにすることもできる。データ記憶部35cが密度情報を記憶する密度記憶手段として機能し、演算した密度に対応した加工条件も記憶する加工条件記憶手段としても機能する。
【0058】
データ記憶部35cには、材質Fについては、回転数Fr、送り量Ff、質量Fm、寸法Fv、密度Fdが記憶されている。材質Gについては、回転数Gr、送り量Gf、質量Gm、寸法Gv、密度Gdが記憶されている。材質Hについては、回転数Hr、送り量Hf、質量Hm、寸法Hv、密度Hdが記憶されており、加工対象物Wの測定結果と記憶されている複数の材質情報との比較処理を行い、一致した場合に、CPU31は、加工対象物Wの特徴に合った加工条件で加工制御を行う。
【0059】
<加工対象物Wの密度比較>
以下に、密度がdである場合についての特徴推定処理を示す。
材質Fの密度データ=Fd
材質Gの密度データ=Gd
材質Hの密度データ=Hd
測定誤差の許容値をτとすると、算出された密度がdである場合、
Fd−τ<d<Fd+τ のとき、ワークの特徴は材質Fであると推定する。
Gd−τ<d<Gd+τ のとき、ワークの特徴は材質Gであると推定する。
Hd−τ<d<Hd+τ のとき、ワークの特徴は材質Hであると推定する。
【0060】
上記のいずれかの推定結果にも当てはまらない場合は、CPU31は、材質エラー判定処理を行い、警告または停止処理を行う。また、許容値は材質ごとに変更してもよい。CPU31が推定結果から各種処理を行う加工対象物Wの異常に対応する異常対応手段として機能する。
【0061】
<加工装置の判定処理制御フローチャート>
図9を参照し、具体的に加工装置Aの特徴の一つである材質を検知するための方法を説明する。Sは制御工程のステップを表す。S101でCPU31は、データ記憶部35cから加工対象物Wの特徴の一つである材質を判定するために加工対象物Wの加工を行う形状の初期の概形情報を読み込む。読み込んだ概形情報により加工対象物Wのおおよその位置を特定し、加工対象物Wの概形に対応した寸法測定制御を行う。
【0062】
S101で直方体であるとの情報であれば、上述のようにステージ23を移動させる。接触子Tcが加工対象物Wに接触しトルクセンサー24がトルクの変化を検知した位置でのステージ23の位置をエンコーダ45でCPU31に伝達する。寸法情報を演算するのに必要な接触点について、ステージ23の位置をエンコーダ45で検出し、データ記憶部35cに記憶する。複数の測定した接触点及び記憶されている情報から寸法を求めるのに必要な情報を揃えCPU31は寸法を算出する。このときの測定動作中にエアーブロー部Rにより堆積物dの吹き飛ばしを行う。また、先にエアーによる清掃を行ってから、寸法測定処理や質量測定処理を行っても良い。
【0063】
S102において、重量検知センサーMwを用いて、加工台11上の加工対象物Wの質量を測定する。質量測定データは、CPU31がデータ記憶部35cに記憶する。堆積物dの影響がない場合は、質量を先に求めても良いが、堆積物dの影響を軽減するためには、寸法測定動作から行うのが好ましい。S103で、CPU31は、S101及びS102で得た寸法情報と質量情報に基づいて密度情報を演算し、データ記憶部35cに記憶している情報と上述の密度比較処理を行い特徴推定手段として機能する。なお、このような特徴推定手段は、本実施形態では加工装置AのCPU31で機能させたが、本発明は勿論これに限定されず、加工装置本体とこの加工装置本体を制御する制御部とを備えた加工処理システムにおいては、制御部側、即ち、加工装置本体に接続されるコントローラ、PC等のCPU等において加工対象物Wの特徴推定の少なくとも一部又は全部を行うようにしてもよい。
【0064】
S104において、S103で比較処理を行った結果、適合する密度情報を持った材質があるかを判定する。密度比較処理によって、データ記憶部35cに記憶されている密度情報に適合するとCPU31が判定した場合は、S105へ進み、記憶されている許容値にも適合する密度情報がないと判定した場合は、S107へ進む。S105では、加工対象物Wの特徴としての材質及び寸法情報をデータ記憶部35cからCPU31に出力する。
【0065】
S106では、推定された特徴である材質に対する適切な、主軸(スピンドル)44の回転速度や送り量等をデータ記憶部35cから読み出して、指定された形状に加工するための加工指示データを作成する。
【0066】
S107では、算出した密度dがデータ記憶部35cに記憶している密度情報及び許容値の範囲内にも該当しない場合に、CPU31は加工対象物Wの材質が推定できないとしてエラー判定処理を行う。S108では、警告ライト43の点灯または、加工装置Aの作動停止処理を行う。また、加工装置Aの作動停止処理を行っても、警告ライト43を点灯させたままとしても良い。異常対応処理として使用者へ警告ライト43を用いて赤色を点灯させ警告を行う。
【0067】
警告の種類としては、使用者に警告を促すためのもので、液晶などの画面、LEDなどの表示、音、振動などにより警告を出すものでもよい。またI/O32等や無線を介して外部機器によって警告が出力されるものでもよい。警告の出し方は上記に限定されるものではなく、使用者に分かるものであれば良い。また、CPU31による異常対応処理としてモータ21の緊急停止を行っても良い。警告等の異常対応処理の出力は、寸法測定結果や材質判定結果に基づいて、CPU31によって行われ、CPU31が異常対応処理手段として機能する。
【0068】
S106の加工指示データにおいては、上述の表1には、材質に対して、回転速度、送り量が一対のみ記載してあるが、加工する部位、工具等によって、最適値を加工部位や工具等に対応させ複数記憶しても良い。
【0069】
本発明の実施形態では、寸法と質量の測定結果から密度を求め記録されている材質の密度情報と比較することによって、加工対象物の特徴の一つである材質を推定した。記憶されている密度情報には、材質と加工条件が対応させて記憶されている。加工指示データを作成する前段階で上述のように寸法と質量から特徴を推定して、加工制御を行うことによって、加工条件に対応する情報である寸法と質量から推定できる情報を使用者が測定し入力することなく加工指示データを作成することができる。加工装置の機能で測定を行うことで使用者の測定の負担を軽減することができ使用者の利便性を向上させることができる。
【0070】
また、作成された加工指示データの中からワークの寸法および質量それらから求められる情報が、例えば加工用のコードが加工条件としての形式で記述されている場合には、測定した情報と記憶された情報を比較することができる。比較処理を行い一致しない場合には、加工動作を開始しないようにすることや、警告表示手段を持つことで、使用者に加工対象物の特徴を推定できないことを伝えることができる。その結果、加工装置が、加工対象物の特徴に不適な工具や送り量といった加工条件で加工してしまうといったことを防止することができる。
【0071】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態には、第1の実施形態と同様な装置構成の加工装置Aを用いる。
第1の実施形態とは、測定データから加工条件を新たに追加するか否かの判定をすることが異なる。S201〜S207は、第1の実施形態とS101〜S107と同様な処理を行う。第1の実施形態とは、S208以降の処理が異なる。
【0072】
S208において、S204で記憶された複数のデータの許容値内にも適合する情報がない場合、S207で材質エラーであると判定した後にS208で登録を行うかの選択処理の指令がCPU31から出される。警告ライト43に選択用の黄色点灯を行い使用者に連絡する。使用者が、加工装置Aの操作部41、もしくは、制御部30等に接続しているコンピュータから登録を行うことを選択するとS209へ進み、登録を行わないことを選択するとS212へ進み停止処理を行う。
【0073】
S209では、記憶されている複数の密度情報を算出した密度情報で割った比率をパーセンテージ等の割合で診断し、表示部42で使用者に提示する。使用者は、S210で登録されている複数の密度情報からの比率を見て、登録するか否かを選択する。図11は、測定された加工対象物Wの密度情報が、比較処理の結果、データ記憶部35cに記憶されている材質Fの1.2倍、材質Gの1.1倍、材質Hの0.6倍であった場合の表示である。それぞれの密度から大きく異なっていると判断し、操作部41から登録しないと選択した場合は、S212で停止処理を行う。比較処理した密度情報が、登録されている許容値よりは大きいものの、およそ材質が推定できる場合は、登録されている複数の材質F、G、Hから加工条件として、どの材質がより適切かS210で選択する。
【0074】
S210で材質Gが操作部41から選択された場合は、登録されている材質の情報を基に加工条件を密度情報との比率から補正を行う。補正条件としては、密度が大きいと硬い可能性があるため、回転速度を比例させて大きくする。送り量は、硬い物では送り量を少なくする方が工具の痛みが少ないため、反比例させて小さくする。CPU31は選択された材質に密度情報からのずれの補正量を加え、新たな加工条件を材質Iとして回転数Ir、送り量If、質量Im、寸法Iv、密度Idをデータ記憶部35cに追加記憶処理を行う。使用者が材質Gを選択し、密度が1.1Gdであれば、CPU31は、Ir=1.1Gr、If=0.91Gfとし質量、寸法、密度は測定した値をデータ記憶部35cに追加記録する加工条件追加手段として機能する。
【0075】
S210を経てS205に至った場合は、CPU31が、特徴は材質Iであることをデータ記憶部35cから出力し、測定された寸法Iv及び追加記憶した加工条件である。回転数Ir、送り量IfからS206で材質Iに適した加工指示データを作成する。
【0076】
この追加記憶処理によって、測定結果が記憶されていない場合であっても、加工条件を簡便に追加記憶させることによって、加工指示を行うことができる。そのため、加工条件が記憶されていない場合でも、加工を続行できると判断できる場合には、簡便に加工条件を設定し加工を行うことができる。従って、上述の実施形態と比べて使用者の入力操作をさらに低減することができる。
【0077】
新たなデータの登録処理は、安全のためオペレータが操作するようにしたが、加工する材質に大きな密度差の材質を使用することがなく、プラスチックで複数の種類があるなど種類が限定されている場合には、エラー判定のための許容値と登録処理のための許容値を別途設けることで、CPU31が登録処理のための許容値を基にCPU31が判定してもよい。
【0078】
(他の実施形態)
上記第1、第2の実施形態においては、質量情報と寸法情報から密度情報を演算し求めたが、表1のように、質量情報と寸法情報が記憶されている場合は、密度情報を演算せずに、測定した質量情報と、データ記憶部35cに記憶されている質量情報と寸法情報を直接比較しても良い。質量情報と寸法情報を直接比較して加工対象物の材質等の特徴を求めて、特徴に適した加工を行うようにすることもできる。加工対象物の材質等の特徴を求めることで、質量のみに基づいて、加工対象物に所定の加工制御を行うよりも誤った加工条件が設定される可能性を低減できる。また、使用者が測定を行うこともなく利便性を高めることができる。
【符号の説明】
【0079】
11 加工台
12 カバー部材
15 主軸
18 支持部
21 モータ
22 送りねじ
23 移動部材(ステージ)
24 トルクセンサー
30 制御部
31 CPU
32 I/O
35 データ入力部
35c データ記憶部
41 操作部
42 表示部
43 警告ライト
44 主軸(スピンドル)
45 エンコーダ
A 加工装置
B 躯体
d 堆積物(切粉)
W 加工対象物
Sw 加工領域
Tc 接触子
R エアーブロー部
Mw 重量検知センサー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物が取り付けられる加工台と、
前記加工台に対向して配置されて前記加工対象物を加工するための工具を支持する支持部と、
前記支持部と前記加工台とを相対移動させる移動手段と、
前記支持部に設けられて前記加工対象物の寸法を測定する寸法測定手段と、
前記加工対象物の質量を測定する質量測定手段と、
前記寸法測定手段によって測定された寸法と前記質量測定手段によって測定された質量とに基づいて前記加工対象物の特徴を推定する特徴推定手段と、
前記特徴推定手段の推定結果に基づいて前記加工対象物への加工制御を行う加工制御手段とを備えたことを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記寸法測定手段によって測定された寸法と前記質量測定手段によって測定された質量に基づいて前記加工対象物の密度を算出する密度算出手段と、
前記加工対象物の特徴に対応した所定の密度情報を記憶する密度記憶手段とを更に備え、
前記特徴推定手段は、前記密度算出手段が算出する前記加工対象物の密度と前記所定の密度情報とに基づいて前記加工対象物の特徴を推定することを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
前記特徴推定手段は、前記加工対象物の特徴として材質を推定することを特徴とする請求項1又は2に記載の加工装置。
【請求項4】
前記加工対象物の特徴に対応する加工条件を記憶する加工条件記憶手段を更に備え、
前記加工制御手段は、前記特徴推定手段によって、前記加工対象物の特徴の推定結果と当該推定結果と対応する加工条件とに基づいて前記加工対象物の加工を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項5】
前記寸法測定手段によって測定された寸法と前記質量測定手段によって測定された質量とに基づく新しい特徴及び加工条件を前記加工条件記憶手段に追加記憶させる加工条件追加手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項6】
前記加工条件追加手段は、前記加工条件記憶手段に記憶されている特徴に対応する複数の加工条件に基づいて、前記寸法測定手段によって測定された寸法と前記質量測定手段によって測定された質量に基づいた特徴と対応づけた加工条件を前記加工条件記憶手段に追加記憶させることを特徴とした請求項5に記載の加工装置。
【請求項7】
前記寸法測定手段は、前記移動手段の作動に伴う前記支持部と前記加工台との相対位置に関する情報を検出する位置検出手段を用いて前記加工対象物の寸法を測定することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項8】
前記特徴推定手段によって推定されない場合に、異常対応処理を行う異常対応処理手段とを更に備えたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項9】
前記支持部に設けられ前記加工対象物にエアーを吹き付けるエアーブロー部を更に備え、
前記質量測定手段が前記加工対象物の質量測定を行う前に、前記加工対象物にエアーを吹き付けることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項10】
前記支持部に設けられ前記加工対象物にエアーを吹き付けるエアーブロー部を更に備え、
前記寸法測定手段が前記加工対象物の測定を行う前に、前記加工対象物にエアーを吹き付けることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項11】
前記移動手段は、前記支持部を前記加工台に対して略水平方向へ移動させる支持部移動手段と、
前記支持部移動手段の移動方向と交差する方向に前記加工台の周囲をカバーで覆ったカバーを当該加工台とともに移動させる加工台移動手段とを有し、
前記加工台の周囲には、前記加工台の移動に伴って当該カバーの表面に摺接する摺接部材が配置されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項12】
前記摺接部材は、前記加工台の移動方向両側にそれぞれ配置され、対向する一対の摺接部材の間隔は前記加工台の移動方向の一方側から他方側に沿って除々に小さくなっていることを特徴とする請求項11に記載の加工装置。
【請求項13】
加工台に取り付けられる加工対象物を加工する加工装置の制御方法であって、
前記加工対象物の寸法を測定する寸法測定ステップと、
前記加工対象物の質量を測定する質量測定ステップと、
各測定ステップで測定された前記加工対象物の寸法及び質量に基づいて前記加工対象物の特徴を推定する推定ステップと、
前記推定ステップの推定結果に基づいて前記加工対象物への加工制御を行う加工制御ステップとを備えたことを特徴とする制御方法。
【請求項14】
加工対象物が取り付けられる加工台に対向して配置された前記加工対象物を加工する工具を支持するための支持部と、
前記支持部と前記加工台を相対移動させる移動手段と、
前記加工対象物の寸法を測定する寸法測定手段と、
前記加工対象物の質量を測定する質量測定手段と、
前記寸法測定手段によって測定された寸法と前記質量測定手段によって測定された質量とに基づいて前記加工対象物の特徴を推定する特徴推定手段と、
前記特徴推定手段の推定結果に基づいて前記加工対象物への加工制御を行う加工制御手段を備えたことを特徴とする加工処理システム。
【請求項1】
加工対象物が取り付けられる加工台と、
前記加工台に対向して配置されて前記加工対象物を加工するための工具を支持する支持部と、
前記支持部と前記加工台とを相対移動させる移動手段と、
前記支持部に設けられて前記加工対象物の寸法を測定する寸法測定手段と、
前記加工対象物の質量を測定する質量測定手段と、
前記寸法測定手段によって測定された寸法と前記質量測定手段によって測定された質量とに基づいて前記加工対象物の特徴を推定する特徴推定手段と、
前記特徴推定手段の推定結果に基づいて前記加工対象物への加工制御を行う加工制御手段とを備えたことを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記寸法測定手段によって測定された寸法と前記質量測定手段によって測定された質量に基づいて前記加工対象物の密度を算出する密度算出手段と、
前記加工対象物の特徴に対応した所定の密度情報を記憶する密度記憶手段とを更に備え、
前記特徴推定手段は、前記密度算出手段が算出する前記加工対象物の密度と前記所定の密度情報とに基づいて前記加工対象物の特徴を推定することを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
前記特徴推定手段は、前記加工対象物の特徴として材質を推定することを特徴とする請求項1又は2に記載の加工装置。
【請求項4】
前記加工対象物の特徴に対応する加工条件を記憶する加工条件記憶手段を更に備え、
前記加工制御手段は、前記特徴推定手段によって、前記加工対象物の特徴の推定結果と当該推定結果と対応する加工条件とに基づいて前記加工対象物の加工を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項5】
前記寸法測定手段によって測定された寸法と前記質量測定手段によって測定された質量とに基づく新しい特徴及び加工条件を前記加工条件記憶手段に追加記憶させる加工条件追加手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項6】
前記加工条件追加手段は、前記加工条件記憶手段に記憶されている特徴に対応する複数の加工条件に基づいて、前記寸法測定手段によって測定された寸法と前記質量測定手段によって測定された質量に基づいた特徴と対応づけた加工条件を前記加工条件記憶手段に追加記憶させることを特徴とした請求項5に記載の加工装置。
【請求項7】
前記寸法測定手段は、前記移動手段の作動に伴う前記支持部と前記加工台との相対位置に関する情報を検出する位置検出手段を用いて前記加工対象物の寸法を測定することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項8】
前記特徴推定手段によって推定されない場合に、異常対応処理を行う異常対応処理手段とを更に備えたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項9】
前記支持部に設けられ前記加工対象物にエアーを吹き付けるエアーブロー部を更に備え、
前記質量測定手段が前記加工対象物の質量測定を行う前に、前記加工対象物にエアーを吹き付けることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項10】
前記支持部に設けられ前記加工対象物にエアーを吹き付けるエアーブロー部を更に備え、
前記寸法測定手段が前記加工対象物の測定を行う前に、前記加工対象物にエアーを吹き付けることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項11】
前記移動手段は、前記支持部を前記加工台に対して略水平方向へ移動させる支持部移動手段と、
前記支持部移動手段の移動方向と交差する方向に前記加工台の周囲をカバーで覆ったカバーを当該加工台とともに移動させる加工台移動手段とを有し、
前記加工台の周囲には、前記加工台の移動に伴って当該カバーの表面に摺接する摺接部材が配置されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項12】
前記摺接部材は、前記加工台の移動方向両側にそれぞれ配置され、対向する一対の摺接部材の間隔は前記加工台の移動方向の一方側から他方側に沿って除々に小さくなっていることを特徴とする請求項11に記載の加工装置。
【請求項13】
加工台に取り付けられる加工対象物を加工する加工装置の制御方法であって、
前記加工対象物の寸法を測定する寸法測定ステップと、
前記加工対象物の質量を測定する質量測定ステップと、
各測定ステップで測定された前記加工対象物の寸法及び質量に基づいて前記加工対象物の特徴を推定する推定ステップと、
前記推定ステップの推定結果に基づいて前記加工対象物への加工制御を行う加工制御ステップとを備えたことを特徴とする制御方法。
【請求項14】
加工対象物が取り付けられる加工台に対向して配置された前記加工対象物を加工する工具を支持するための支持部と、
前記支持部と前記加工台を相対移動させる移動手段と、
前記加工対象物の寸法を測定する寸法測定手段と、
前記加工対象物の質量を測定する質量測定手段と、
前記寸法測定手段によって測定された寸法と前記質量測定手段によって測定された質量とに基づいて前記加工対象物の特徴を推定する特徴推定手段と、
前記特徴推定手段の推定結果に基づいて前記加工対象物への加工制御を行う加工制御手段を備えたことを特徴とする加工処理システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−22679(P2013−22679A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159428(P2011−159428)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】
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