説明

加工装置

【課題】装置の稼動を停止する際に、水供給配管内の水分を排出可能な加工装置を提供する。
【解決手段】親配管68と、子配管72a、72b、72cと、エア供給源66からのエアを供給するエア供給配管78と、親開閉バルブ82と、エア開閉バルブ86と、子開閉バルブ84a、84b、84cと、親開閉バルブ82、複数の子開閉バルブ84a、84b、84c及びエア開閉バルブ86の開閉タイミングを制御する制御手段とを具備し、制御手段は、選択された水噴出部位に水を供給する際は、エア開閉バルブ86を閉じ、親開閉バルブ82を開け、子開閉バルブを開けるように制御し、親配管68及び子配管内に残留する水を排出する際は、親開閉バルブ82を閉じ、エア開閉バルブ86を開け、子開閉バルブ84a、84b、84cを全て閉じた後、子開閉バルブ84a、84b、84cを一つずつ開けてから閉じるように制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を供給する配管内の残留水分を排出する手段を備えた加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置の一種である研削装置、切削装置等の加工装置は、装置内の複数個所において水を使用して各工程を遂行している(例えば、特開2003−326458号公報参照)。
【0003】
例えば、研削装置では、チャックテーブルに吸引保持されたウエーハを研削加工する際に研削水を供給しながら研削を遂行し、研削後にチャックテーブルからのウエーハの剥離を補助するためにチャックテーブルの下側から水を噴出し、更に研削後のウエーハを洗浄する際に水を使用している。
【0004】
切削装置では、ウエーハの切削中に切削水を供給しながら切削を遂行し、切削後のウエーハは水を使用して洗浄している。こうした加工装置は通常24時間稼動であり、装置内の水供給配管には常に水が流入している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−326458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、加工方法の変更や工場の稼動状況に伴い、長期間に渡り加工装置の稼動を停止する場合もある。そうした場合、通常、水供給配管のバルブは閉められて配管は密閉状態となるため、装置外部へ水を排出しきれず水供給配管中に残存した水分がバクテリア発生の原因となったり、配管中に挿入されたバルブや継ぎ手に錆を誘発させたりする原因となってしまうという問題があった。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、稼働中の加工装置の稼動を停止する際に、水供給配管内の水分を完全に除去可能な加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、加工に寄与する複数の水噴出部位を有する加工装置であって、水供給源からの水を加工装置に供給する親配管と、加工装置内で該親配管から分岐して該複数の水噴出部位へ水を供給する複数の子配管と、該親配管に接続されエア供給源からのエアを該親配管に供給するエア供給配管と、該エア供給配管が接続される接続点の上流側の該親配管に挿入された親開閉バルブと、該エア供給配管に挿入されたエア開閉バルブと、該子配管の各々に挿入された複数の子開閉バルブと、該親開閉バルブ、該複数の子開閉バルブ及び該エア開閉バルブの開閉タイミングを制御する制御手段とを具備し、該制御手段は、加工装置内の選択された該水噴出部位に水を供給する際は、該エア開閉バルブを閉じ、該親開閉バルブを開け、該選択された水噴出部位に連通する該子配管に挿入された該子開閉バルブを開けるように制御し、加工装置内の該親配管及び該複数の子配管内に残留する水を加工装置外へ排出する際は、該親開閉バルブを閉じ、該エア開閉バルブを開け、該子開閉バルブを全て閉じた後、該複数の子開閉バルブを一つずつ順番に所定時間開けてから閉じるように制御することを特徴とする加工装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、水を供給する親配管にエア供給配管を接続し、装置の稼動停止時に制御手段により各バルブの開閉タイミングを制御して、親配管中にエアを吹き込むようにしたので、容易に親配管及び子配管中の水分を排出することができる。
【0010】
即ち、装置の稼動を停止する際は、子開閉バルブを全て閉じた状態でエア開閉バルブを開けることにより、親配管及び子配管中のエアの圧力を高め、その後各水噴出部位の子開閉バルブを逐次開け閉めすることで、分岐した子配管中の水分を各水噴出部位から高圧となったエアで確実に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明が適用されるのに適した研削装置の概略斜視図である。
【図2】図2(A)は研削用ノズル及び洗浄用ノズルに水を供給している状態の回路図、図2(B)は閉鎖された親配管及び子配管にエアを注入している状態の回路図である。
【図3】研削用ノズルから子配管内の水分をエアによって排出している状態の回路図である。
【図4】配管中の水分排出動作を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明が適用される研削装置2の斜視図を示している。4は研削装置2のベースであり、ベース4の後方には二つのコラム6a,6bが垂直に立設されている。コラム6aには、上下方向に延びる一対のガイドレール(一本のみ図示)8が固定されている。
【0013】
この一対のガイドレール8に沿って粗研削ユニット10が上下方向に移動可能に装着されている。粗研削ユニット10は、そのハウジング20が一対のガイドレール8に沿って上下方向に移動する移動基台12に取り付けられている。
【0014】
粗研削ユニット10は、ハウジング20と、ハウジング20中に回転可能に収容された図示しないスピンドルと、スピンドルを回転駆動するサーボモータ22と、スピンドルの先端に固定された複数の粗研削用の研削砥石26を有する研削ホイール24を含んでいる。
【0015】
粗研削ユニット10は、粗研削ユニット10を一対の案内レール8に沿って上下方向に移動するボールねじ14とパルスモータ16とから構成される粗研削ユニット移動機構18を備えている。パルスモータ16をパルス駆動すると、ボールねじ14が回転し、移動基台12が上下方向に移動される。
【0016】
他方のコラム6bにも、上下方向に伸びる一対のガイドレール(一本のみ図示)19が固定されている。この一対のガイドレール19に沿って仕上げ研削ユニット28が上下方向に移動可能に装着されている。
【0017】
仕上げ研削ユニット28は、そのハウジング36が一対のガイドレール19に沿って上下方向に移動する図示しない移動基台に取り付けられている。仕上げ研削ユニット28は、ハウジング36と、ハウジング36中に回転可能に収容された図示しないスピンドルと、スピンドルを回転駆動するサーボモータ38と、スピンドルの先端に固定された仕上げ研削用の研削砥石42を有する研削ホイール40を含んでいる。
【0018】
仕上げ研削ユニット28は、仕上げ研削ユニット28を一対の案内レール19に沿って上下方向に移動するボールねじ30とパルスモータ32とから構成される仕上げ研削ユニット移動機構34を備えている。パルスモータ32を駆動すると、ボールねじ30が回転し、仕上げ研削ユニット28が上下方向に移動される。
【0019】
特に図示しないが、粗研削ユニット10は、研削時に研削水を供給する研削用ノズルを有している。同様に、仕上げ研削ユニット28も、研削時に研削水を供給する研削用ノズルを有している。
【0020】
研削装置2は、コラム6a,6bの前側においてベース4の上面と略面一となるように配設されたターンテーブル44を具備している。ターンテーブル44は比較的大径の円盤状に形成されており、図示しない回転駆動機構によって矢印45で示す方向に回転される。
【0021】
ターンテーブル44には、互いに円周方向に120°離間して3個のチャックテーブル(保持テーブル)46が水平面内で回転可能に配置されている。チャックテーブル46は、ポーラスセラミック材によって円盤状に形成された吸着部を有しており、吸着部の保持面上に載置されたウエーハを真空吸引手段を作動することにより吸引保持する。
【0022】
各チャックテーブル46は、ウエーハの研削終了後に吸引保持を解除してから、ウエーハの吸着部からの剥離を容易にするために、吸着部の下方から水を噴出する機構を有している。
【0023】
ターンテーブル44に配設された3個のチャックテーブル46は、ターンテーブル44が適宜回転することにより、ウエーハ搬入・搬出領域A、粗研削加工領域B、仕上げ研削加工領域C、及びウエーハ搬入・搬出領域Aに順次移動される。
【0024】
ベース4の前側部分には、第1のウエーハカセット50と、第2のウエーハカセット52と、ウエーハ搬送ロボット54と、複数の位置決めピン58を有する位置決めテーブル56と、ウエーハ搬入機構(ローディングアーム)60と、ウエーハ搬出機構(アンローディングアーム)62と、スピンナ洗浄装置63が配設されている。スピンナ洗浄装置63には洗浄用ノズルが配設されている。
【0025】
このような構成を有する研削装置2は、研削加工に寄与する複数の水噴出部位、即ち粗研削ユニット10、仕上げ研削ユニット28、チャックテーブル46及びスピンナ洗浄装置63にそれぞれ配設された水噴射部位を有している。以下、図2乃至図4を参照して、各水噴出部位に必要に応じて水又はエアを供給する回路の実施形態について説明する。
【0026】
図2(A)を参照すると、粗研削ユニット10又は仕上げ研削ユニット28の研削用ノズル74及び洗浄用ノズル76に研削水を供給している状態の回路図が示されている。研削装置2は、水供給源64又はエア供給源66に選択的に接続される。
【0027】
水供給源64に接続された親配管68を介して、研削装置2に水が供給される。親配管68は分岐点70で分岐されて、複数の子配管72a,72b,72cに接続されている。子配管72aは研削用ノズル74に接続されており、子配管72bは研削用保持テーブル46に接続されており、子配管72cは洗浄用ノズル76に接続されている。
【0028】
エア供給源66に接続されたエア供給配管78が接続点80で親配管68に接続されている。接続点80の上流側の親配管68には親開閉バルブ82が挿入されており、親開閉バルブ82は水供給源64からの水を研削用ノズル74及び洗浄用ノズル76に供給するために開位置となっている。
【0029】
親開閉バルブ82は出来るだけ研削装置2の端部に設けるのが好ましく、接続点80は出来るだけ親開閉バルブ82に近接させるのが好ましい。このように構成することにより、後で説明する水抜き処理を実施すると、親配管68の大部分について配管内に残留した水分を排出することができる。
【0030】
子配管72aには子開閉バルブ84aが挿入されており、子開閉バルブ84aは研削用ノズル74に水を供給するために開位置となっている。子配管72bには子開閉バルブ84bが挿入されており、子開閉バルブ84bは閉位置となっている。子配管72cには子開閉バルブ84cが挿入されており、子開閉バルブ84cは洗浄用ノズル76に水を供給するために開位置となっている。
【0031】
エア供給配管78にはエア開閉バルブ86が挿入されており、エア開閉バルブ86は閉位置となっている。本実施形態では、親開閉バルブ82、子開閉バルブ84a,84b,84c及びエア開閉バルブ86は電磁バルブから構成される。
【0032】
図2(A)に示した状態は、粗研削ユニット10又は仕上げ研削ユニット28の研削用ノズル74から研削水を供給しながらウエーハの研削を遂行するとともに、スピンナ洗浄装置63の洗浄用ノズル76から洗浄水を噴射しながら研削済みのウエーハを洗浄している状態である。
【0033】
次に、図2(B)、図3及び図4を参照して、本発明実施形態に係る水抜き処理について説明する。図2(B)を参照すると、閉鎖された親配管68及び子配管72a〜72cにエアを注入している状態の回路図が示されている。
【0034】
即ち、図4の水抜き処理のフローチャートに示すように、まずステップS10で親開閉バルブ82を閉じ、ステップS11でエア開閉バルブ86を開け、ステップS12で全ての子開閉バルブ84a〜84cを閉じることにより、図2(B)に示した状態が得られる。
【0035】
ステップS11とステップS12はその順序を入れ替えてもよい。このように各バルブの開閉を制御することにより、閉鎖された親配管68及び子配管72a〜72c内に高圧エアが注入される。
【0036】
図3を参照すると、子開閉バルブ84aを開き、研削用ノズル74から子配管72a内の水分をエアによって排出している状態の回路図が示されている。子開閉バルブ84aを第1子開閉バルブとすると、図4のステップS13で第1子開閉バルブ84aをn秒間開いて子配管72a内の水分を研削用ノズル74を介して排出した後、第1子開閉バルブ84aを閉じるように制御する。
【0037】
次いで、ステップS14へ進んで、第2子開閉バルブ84bをn秒間開いて子配管72b内の水分を研削用保持テーブル46を介して排出した後、第2子開閉バルブ84bを閉じる。
【0038】
更に、ステップS15へ進んで、第3子開閉バルブ84cをn秒間開いて子配管72c内の水分を洗浄用ノズル76を介して排出した後、第3子開閉バルブ84cを閉じるように制御する。
【0039】
次いで、ステップS16へ進んで、全ての子開閉バルブ84a〜84cをm秒間開いた後、ステップS17で研削装置の電源をオフにする。このように制御することにより、親配管68及び子配管72a〜72c内の水分はほぼ完全に除去されて研削装置2の稼動を停止することができるため、従来問題であった水供給配管中でのバクテリアの発生、及び配管中に挿入されたバルブや継ぎ手に錆が発生することを防止できる。
【0040】
本実施形態では、親開閉バルブ82、子開閉バルブ84a〜84c及びエア開閉バルブ86として、電源がオフされると自動的にバルブが閉められる無電源時閉タイプのバルブを使用している。よって、電源オン時にはバルブが開いていても、電源がオフされると自動的に全てのバルブが閉められるようになっている。
【0041】
以上説明した実施形態では、本発明を研削装置に適用した例について説明したが、本発明は加工時に水を使用する切削装置、研磨装置等の他の加工装置にも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
2 研削装置
10 粗研削ユニット
28 仕上げ研削ユニット
46 チャックテーブル(保持テーブル)
63 スピンナ洗浄装置
64 水供給源
66 エア供給源
68 親配管
72a〜72c 子配管
74 研削用ノズル
76 洗浄用ノズル
78 エア供給配管
82 親開閉バルブ
84a〜84c 子開閉バルブ
86 エア開閉バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工に寄与する複数の水噴出部位を有する加工装置であって、
水供給源からの水を加工装置に供給する親配管と、
加工装置内で該親配管から分岐して該複数の水噴出部位へ水を供給する複数の子配管と、
該親配管に接続されエア供給源からのエアを該親配管に供給するエア供給配管と、
該エア供給配管が接続される接続点の上流側の該親配管に挿入された親開閉バルブと、
該エア供給配管に挿入されたエア開閉バルブと、
該子配管の各々に挿入された複数の子開閉バルブと、
該親開閉バルブ、該複数の子開閉バルブ及び該エア開閉バルブの開閉タイミングを制御する制御手段とを具備し、
該制御手段は、加工装置内の選択された該水噴出部位に水を供給する際は、該エア開閉バルブを閉じ、該親開閉バルブを開け、該選択された水噴出部位に連通する該子配管に挿入された該子開閉バルブを開けるように制御し、
加工装置内の該親配管及び該複数の子配管内に残留する水を加工装置外へ排出する際は、該親開閉バルブを閉じ、該エア開閉バルブを開け、該子開閉バルブを全て閉じた後、該複数の子開閉バルブを一つずつ順番に所定時間開けてから閉じるように制御することを特徴とする加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−167811(P2011−167811A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34194(P2010−34194)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】