説明

加熱処理方法および加熱処理装置

【課題】より迅速に加熱処理ができるようにする
【解決手段】容器101を密閉した状態とし、排気管103より排出されるガスの量を圧力制御弁104で制御することで、容器101の内部圧力が、例えば0.5MPa程度となるように制御できる状態とする。次に、圧縮ポンプ105により圧縮したガスを、輸送管106および加熱部107を経由し、導入管108より容器101の内部に導入し、容器101の内部圧力を上昇させる。例えば、圧縮ポンプ105により、圧縮ガスを20リットル/minで、容器101の内部に導入する。次に、容器101の内部圧力が設定値(例えば0.5MPa)に到達したら、加熱部107を動作させて導入している圧縮ガスの加熱を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大規模集積回路(LSI)、マイクロエレクトロマイクロシステムデバイス(MEMS)の半導体チップの製造およびこれらの実装やパッケージにおいて行われる加熱を行うための加熱処理方法および加熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体チップなどを積層する技術が開発されており、深い接続孔に導電性材料などを埋め込む要求が強くなっている。接続孔内に導電性材料を充填する技術としては、めっき法や導電性樹脂を埋め込む技術などがある。しかしながら、めっき法では、接続孔の中央付近にボイド(空隙)が発生し、接続不良の問題が生じている。また、導電性樹脂を埋め込む場合も同様であり、深い孔内に均一に導電性樹脂を埋め込むことが難しいという問題が生じていた。
【0003】
また、実装においては、半導体素子や接続部を保護するために樹脂封止を行うが、クラック耐性を高めるために金属酸化物粒子などのフィラーを充填する方法が一般的となっている。しかしながら、これらの材料は流動性が乏しく、樹脂封止するときの成形性が劣ってくるという問題が生じていた。また、パッケージ基板のサイズ縮小により端子間隔が狭くなり、封止樹脂が端子間に入らず、未充填部やボイド(空隙)が生じている。この結果、長期信頼性に乏しくなるという問題が生じていた。
【0004】
これらの問題を解決するため、一般には、樹脂を押し込んで成型する射出成形(トランスファ成形)の技術が用いられている。しかしながらこの技術においては、樹脂が流動する際に端子に接続しているボンディングワイヤ部分が動いてショートしてしまうなど問題がある。従って、上述した技術では、近年の狭端子化傾向には対応できず、新たな樹脂封止の方法が期待されている。
【0005】
これらに対し、均一に加圧する方法として、パッケージ基板全体を均一に加圧加熱する方法が提案されている(非特許文献1参照)。この方法では、ボンディングワイヤ部分が動く問題は生じない。また、ウェハへの直接封止が可能になるため、WLCSP(wafer level chip size package)にも対応できることになる。さらには、上記方法によれば、樹脂内に発生してた気泡を加熱加圧することにより分散させ、充填した樹脂の内部における気泡を消滅させる効果があることが判明している。この方法では、基板を密閉容器に導入して窒素などで所定の圧力をかけると同時に、容器内部を昇温して加熱成形するものである。
【0006】
この方法で用いられる装置では、図11に示すように、容器1101を構成している内容器1102と外容器1103との間に断熱材1104を充填し、内容器1102の側にヒータ1105を埋め込むようにしているのが一般的である。容器1101の内側底部に処理対象の基板を載置する基板台1111が配置される。ヒータ1105の加熱により内容器1102およびこの内部を加熱することで、基板台1111の上に載置される基板を加熱する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】二階堂 広基、「封止樹脂」、日経BP社、日経マイクロデバイス、10月号、66−69頁、2008年。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した加熱の方法では、昇温に1時間以上と時間がかかるため、生産性に劣る問題が生じていた。また、容器の内部にヒータを設置する内部ヒータ方式によれば、昇温を速くすることができるが、降温に時間がかかるため、やはり生産性を満足するまでには至っていなかった。
【0009】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、より迅速に加熱処理ができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る加熱処理方法は、容器の内部に処理対象の基板を配置する第1工程と、気体を加熱して容器の内部に導入して容器の内部を加熱する第2工程と、気体の加熱を停止して容器の内部に導入して容器の内部を冷却する第3工程とを少なくとも備える。
【0011】
また、本発明に係る加熱処理方法は、容器の内部に処理対象の基板を配置する第1工程と、排出される気体の量を制御することで容器の内部圧力を制御している状態で、圧縮した気体を容器の内部に導入して容器の内部圧力を上昇させる第2工程と、圧縮した気体を容器の内部に導入して容器の内部圧力を上昇させている状態で、圧縮した気体を加熱して容器の内部に導入して容器の内部を加熱する第3工程と、圧縮した気体を容器の内部に導入して容器の内部圧力を上昇させている状態で、圧縮した気体の加熱を停止して容器の内部に導入して容器の内部を冷却する第4工程とを少なくとも備える。
【0012】
上記加熱処理方法において、圧縮した気体の導入を停止し、容器内部の気体を放出することで容器の内部圧力を低下させる第5工程を備えるようにしてもよい。また、上記加熱処理方法において、圧縮した気体は、複数の箇所から容器の内部に導入するようにしてもよい。なお、気体は、空気、窒素、アルゴンの中より選択されたものである
【0013】
本発明に係る加熱処理装置は、容器およびこの容器の内部と外部とを連通する排気管と、容器の内部に加熱した気体を供給する加熱気体供給手段と、この加熱気体供給手段より供給される気体を容器に導入する導入管とを少なくとも備える。なお、加熱気体供給手段は、加熱動作をせずに気体を供給することも可能である。
【0014】
上記加熱処理装置において、容器は、内側容器およびこの内側容器を収容する外側容器から構成されているとよい。また、内側容器に形成された排出口と、内側容器と外側容器との間に形成された排気流通層と、内側容器の内部に加熱した気体を供給する加熱気体供給手段と、加熱気体供給手段より供給される気体を内側容器に導入する上記導入管とを少なくとも備え、内側容器と排気流通層とは、排出口で連通し、排気流通層と外側容器の外部とは、排気管で連通しているとよい。
【0015】
上記加熱処理装置において、内側容器と外側容器との間に配置された中間容器と、この中間容器に設けられた連通口とを備え、排気流通層は、内側容器と中間容器との間に形成された内側排気流通層、および中間容器と外側容器との間に形成された外側排気流通層とから構成され、内側容器と内側排気流通層とは、排出口で連通し、内側排気流通層と外側排気流通層とは、連通口で連通しているようにしてもよい。
【0016】
上記加熱処理装置において、内側容器と外側容器との間に設けられた断熱材を備えるようにしてもよい。また、内側容器は、加熱により遠赤外線を放射する材料から構成されているようにしてもよい。
【0017】
上記加熱処理装置において、気体を圧縮して供給する圧縮供給手段と、排気管より排出される気体の量を制御する圧力制御手段とを備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、加熱した気体を容器の内部に導入するようにしたので、昇温しまた降温するなどの加熱処理が、より迅速にできるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱処理方法を実施するための加熱処理装置の構成例を示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1における加熱処理方法を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態1における加熱処理方法における圧力および温度の変化について示すタイミングチャートである。
【図4A】本発明の実施の形態1における加熱処理方法を実施するための他の加熱処理装置の構成を上方より見た構成図である。
【図4B】本発明の実施の形態1における加熱処理方法を実施するための他の加熱処理装置の内部構成を側方より見た構成図である。
【図5】本発明の実施の形態1における加熱処理方法を実施するための他の加熱処理装置の構成を示す構成図である。
【図6】本発明の実施の形態2における加熱処理装置の構成を示す構成図である。
【図7】本発明の実施の形態3における加熱処理装置の構成を示す構成図である。
【図8】本発明の実施の形態4における加熱処理装置の構成を示す構成図である。
【図9】本発明の実施の形態5における加熱処理装置の構成を示す構成図である。
【図10】加熱処理装置の構成を示す構成図である。
【図11】従来よりある加熱処理装置の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0021】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1における加熱処理方法について説明する。図1は、本発明の実施の形態1における加熱処理方法を実施するための加熱処理装置の構成例を示す構成図である。この加熱処理装置は、まず、密閉可能な容器101と、処理対象の基板Wを載置する基板台102を備える。容器101は、例えば内容積が40リットルである。また、容器101には、容器101の内部のガスを排気するための排気管103が接続し、排気管103の途中に圧力制御弁(圧力制御手段)104を備える。排気管103は、容器101の内部と外部とを連通している。
【0022】
また、この加熱処理装置は、空気などのガス(気体)を圧縮して圧力を高めて出力する圧縮ポンプ(圧縮供給手段)105と、圧縮ポンプ105で圧縮されたガスを輸送する輸送管106と、輸送管106で輸送されている圧縮されたガス(圧縮ガス)を加熱する加熱部(加熱気体供給手段)107と、加熱部107で加熱された圧縮ガスを容器101に導入する導入管108とを備えている。また、導入管108のガス導入口付近には、温度センサー109が設けられ、温度センサー109で測定された温度をもとに、制御部110が加熱部107の動作を制御する。
【0023】
ここで、加熱部107は、耐圧構造とした方がよい。例えば、加熱機構が耐圧容器に収容された構造とすればよい。圧縮ポンプ105により加圧されたガスを、上記耐熱容器の内部に流通させ、流通する高圧ガスを加熱機構により加熱して供給する。一般に用いられているガスを加熱する装置は、高圧ガスを対象とした場合にガス漏れなどが発生する場合がある。このようなガス加熱装置を、耐圧容器内に収容して用いることで、ガス漏れなどの問題が解消できる。
【0024】
次に、本実施の形態における加熱処理方法について、図2のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS201で、容器101の内部に基板Wを搬入して基板台102の上に載置する。次に、容器101を密閉した状態とし、排気管103より排出されるガスの量を圧力制御弁104で制御することで、容器101の内部圧力が、例えば0.5MPa程度となるように制御できる状態とする(ステップS202)。次に、圧縮ポンプ105により圧縮したガスを、輸送管106および加熱部107を経由し、導入管108より容器101の内部に導入し、容器101の内部圧力を上昇させる(ステップS203)。例えば、圧縮ポンプ105により、圧縮ガスを20リットル/minで、容器101の内部に導入する。
【0025】
次に、容器101の内部圧力が設定値(例えば0.5MPa)に到達したら(ステップS204)、加熱部107を動作させて導入している圧縮ガスの加熱を開始する(ステップS205)。例えば、圧縮ガスの導入により上昇する容器101の内部圧力が、圧力制御弁104に設定した圧力を超えると、排気管103よりガスが排気されるようになる。この排気の状態により、容器101の内部圧力が設定値に到達したことを検出することができる。圧力制御弁104により排出されるガスを制御している状態で、圧縮ポンプ105により圧縮ガスを導入し続けることで、容器101の内部圧力を設定値一定に制御する。
【0026】
次に、容器101に導入している圧縮ガスの温度が設定値(例えば200℃)に到達した後(ステップS206)、規定の処理時間の加熱処理を行う(ステップS207)。導入管108の排出口の温度は、温度センサー109により測定されており、制御部110は、測定している温度が設定値になるように、加熱部107の動作を制御する。加熱処理がなされている間は、一定の温度に加熱された圧縮ガスが容器101に導入される。また、前述したように、圧力制御弁104の制御により、容器101の内部は設定圧力に一定とされている。従って、設定されている加熱処理の時間内において、容器101の内部は、設定された圧力および設定された温度に一定の状態とされている。この結果、基板台102の上に載置されている基板Wは、0.5MPa程度に加圧された状態で、200℃程度に加熱されることになる。
【0027】
次に、規定の処理時間の加熱処理が終了すると(ステップS207)、加熱部107による圧縮ガスの加熱を停止する(ステップS208)。この加熱の停止により、輸送管106および加熱部107を経由して導入管108より容器101の内部に導入されている圧縮ガスの温度は急速に低下する。このように温度が低下した圧縮ガスの供給により、容器101の内部を冷却(降温)する。
【0028】
この後、容器101の内部が設定温度(例えば50℃)にまで冷却されたら(ステップS209)、圧縮ポンプ105の動作を停止して圧縮ガスの導入を停止し(ステップS210)、圧力制御弁104を開放状態とすることで容器101内のガスを外部に放出する(ステップS211)。圧力制御弁104を徐々に開放状態とすることで、容器101内のガスを徐々に放出するようにしてもよい。また、他に設けた開放用バルブ(図示せず)を用い、この開放用バルブを開放することで、容器101内のガスを外部に放出してもよい。以上のことにより、容器101の内部圧力が大気圧程度となった段階で、処理対象の基板Wを容器101より搬出する(ステップS212)。
【0029】
次に、上述した加熱処理における圧力および温度の変化について、図3のタイミングチャートを用いて説明する。まず、基板Wを搬入して容器101を密閉状態とし、圧縮ガスを導入し始めることで、大気圧程度(0MPa)の容器101内の圧力は上昇し、例えば、2分で規定の圧力である0.5MPaに到達する。この状態より圧縮ガスの加熱を開始すれば、1分程度で容器101の内部温度が200℃程度にまで到達させることができる。
【0030】
この状態を例えば10分間継続した後、圧縮ガスの加熱を停止すれば、室温(20〜25℃)程度の圧縮ガスが容器101の内部に供給されるようになり、容器101の内部は、2分程度で50℃程度にまで急速に冷却される。この後、圧縮ガスの供給を停止して容器101の内部よりガスを放出すれば、例えば、1分程度で容器101内部の圧力は低下して大気圧程度となり、基板Wの搬出が可能となる。
【0031】
このように、本実施の形態によれば、加熱部107により加熱したガスを容器101の内部に供給(導入)するので、昇温および降温(冷却)をより迅速に行えるようになる。冷却においては、気体の加熱を停止してこれを容器の内部に導入する。また、圧力制御弁104および圧縮ポンプ105などの圧力調整機構により容器101の内部圧力を制御しているので、容器101の内部圧力を維持した状態で、昇温および降温(冷却)をより迅速に行えるようになる。本実施の形態と同様の容量の容器の内部を、内部に設けたヒータにより加熱する場合、容器内部を冷却するためには数時間を要することになる。これに対し、本実施の形態によれば、非常に迅速に冷却を行うことが可能となる。また、加熱と冷却とを、同一の機構(加熱気体供給手段)で行えるので、装置の大型化を抑制できるようになり、装置の小型化にとっては非常に有利である。
【0032】
ところで、容器内部に対する圧縮ガスの導入は、1箇所に限らず、図4Aおよび図4Bに示すように、容器401に2箇所以上の導入管408を設けるようにしてもよい。図4Aは、基板台402を下側として装置を上方より見た模式的な断面図であり、図4Bは図4AのBB線における断面を模式的に示す断面図である。図4Aおよび図4Bでは、圧縮ポンプ,加熱部,圧力制御弁など、他の構成は省略している。このように、複数の導入管408を設けることで、容器401内の圧力および温度を、より迅速に上昇させることが可能となる。
【0033】
また、図4Aに示すように、容器401を円筒形状とし、容器401の側面に導入管408を設け、導入管408の圧縮ガス排出口を容器401の側壁の円周方向に沿う向きに配置し、圧縮ガス排出口の排出先に拡散板411を設けるようにしてもよい。拡散板411の傾斜状態により、導入管408より導入される圧縮ガスが拡散する方向を最適化することで、容器401内部の温度均一性を向上させることができる。
【0034】
また、図5に示すように、容器401の内部に配置された基板台402にヒータ511を内蔵するようにしてもよい。図5は、基板台402を下側とした装置側方の模式的な断面図であり、圧縮ポンプ,加熱部,圧力制御弁など、他の構成は省略しており、他の構成は図4Bと同様である。このように、容器401の内部にヒータ511が配置されているようにすることで、容器401の内部温度の均一性をより向上させることができる。
【0035】
なお、容器内部の圧力は、0.5〜0.6MPa程度とすることができれば、めっきや樹脂の充填に必要な圧力が得られる。なお、容器の内部圧力は、1MPaを超えないようにした方がよい。よく知られているように、1MPa以上の高圧を用いる場合、装置は高圧ガス製造保安法の規制対象となり、装置価格や装置管理の点でコストの上昇を招くことになる。また、用いるガスは、例えば、空気が最も一般的である。また、用いるガスは、窒素やアルゴンなどの不活性ガスでもよい。例えば、ボンベ内に加圧充填されたアルゴンガスを用いる場合、圧縮ポンプを用いることなく、圧縮ガスを供給することができる。また、コストの増大を招くことになるが、ヘリウムを用いるようにしてもよい。
【0036】
次に、実施例に基づいて、より詳細に説明する。
【0037】
[実施例1]
フレキシブルパッケージ基板とチップとを、アクリル系熱可塑性接着剤で貼り付け、これらを、図1に示す加熱処理装置の基板台102の上に載置し、容器101を密閉状態とする。次いで、圧縮ポンプ105で作製した高圧空気(圧縮ガス)を容器101内に導入し、また、圧力制御弁104を設定して容器101の内部圧力を0.6MPaとする。次に、加熱部107を動作させて導入している高圧空気を150℃に加熱し、高圧空気が導入されている容器101の内部を150℃に昇温する。昇温時間は、2分程度である。
【0038】
上述したように、容器101の内部を150℃に昇温してから、所定の処理時間が経過した後、加熱部107の動作を停止して導入している高圧空気の加熱を終了し、0.6MPaの圧力を保持したまま室温の高圧空気を導入する。これにより、容器101内部の温度を50℃以下とする。降温時間は5分程度である。この後、高圧空気の導入を停止し、容器101内の高圧空気を外部に放出し、容器101内の圧力を大気圧とし、処理した基板を取り出す。取り出した基板を検査した結果、ボイド無くパッケージ基板とチップとが貼り合わされていることが確認された。
【0039】
[実施例2]
基板上にペーストを塗布し、塗布したペーストの上に細孔の開いたカバーを付ける。このように製造した基板を、容器101の基板台102の上に載置し、容器101を密閉状態とする。次いで、0.8MPaの圧力の窒素(圧縮窒素)を容器101内に導入し、また、圧力制御弁104を設定して容器101の内部圧力を0.6MPaとする。次に、加熱部107を動作させて導入している加圧窒素を200℃に加熱し、加圧窒素が導入されている容器101の内部を200℃に昇温する。昇温時間は5分程度である。
【0040】
上述したように、容器101の内部を200℃に昇温して所定時間維持することで、細孔の開いたカバーで覆われたペーストは、飽和蒸気下で熱処理される。この後、加熱部107の動作を停止して導入している高圧窒素の加熱を終了し、0.6MPaの圧力を保持したまま室温の窒素を導入する。これにより、容器101内部の温度を50℃以下とする。降温時間は5分程度である。この後、高圧窒素の導入を停止し、容器101内の高圧窒素を外部に放出し、容器101内の圧力を大気圧とし、処理した基板を取り出す。取り出した基板を検査した結果、ペーストに割れなどが発生することなく熱処理されていることが確認された。
【0041】
[実施例3]
接着樹脂を介し、液晶基板を導光板に貼り合わせ、これら基板を図1に示す加熱処理装置の基板台102の上に載置し、容器101を密閉状態とする。次いで、0,8MPaの高圧窒素を容器101内に導入し、また、圧力制御弁104を設定して容器101の内部圧力を0.8MPaとする。次に、加熱部107を動作させて導入している高圧窒素を100℃に加熱し、容器101の内部を100℃に昇温する。昇温時間は1分程度である。
【0042】
上述したように、容器101の内部を100℃に昇温してから、所定の処理時間が経過した後、加熱部107の動作を停止して導入している高圧窒素の加熱を終了し、0.8MPaの圧力を保持したまま室温の高圧窒素を導入する。これにより、容器101内部の温度を50℃以下とする。降温時間は3分程度である。この後、高圧窒素の導入を停止し、容器101内の高圧窒素を外部に放出し、容器101内の圧力を大気圧とし、処理した基板を取り出す。取り出した基板を検査した結果、導光板と液晶基板とが、気泡なく張り合わされていることが確認された。
【0043】
[実施例4]
細孔の開いたシリコン基板に導電性樹脂を塗布し、この基板を図1に示す加熱処理装置の基板台102の上に載置する。次いで、高圧窒素を容器101内に導入し、また、圧力制御弁104を設定して容器101の内部圧力を0.9MPaとする。次に、加熱部107を動作させて導入している高圧窒素を150℃に加熱し、容器101の内部を150℃に昇温する。昇温時間は1分程度である。次いで、導入している高圧窒素を250℃に加熱し、容器101の内部を250℃に昇温する。この昇温時間も1分程度である。
【0044】
上述したように、容器101の内部を250℃に昇温してから、所定の処理時間が経過した後、加熱部107の動作を停止して導入している高圧窒素の加熱を終了し、0.9MPaの圧力を保持したまま室温の高圧窒素を導入する。これにより、容器101内部の温度を50℃以下とする。降温時間は5分程度である。この後、高圧窒素の導入を停止し、容器101内の高圧窒素を外部に放出し、容器101内の圧力を大気圧とし、処理した基板を取り出す。取り出したシリコン基板を検査した結果、ボイド無く細孔に導電性樹脂が埋め込まれていることが確認された。
【0045】
なお、上述した0.5MPaなどの圧力の数字は、図の表記も含めて、ゲージ圧である。従って、大気圧を0MPaとしているが、これもゲージ圧であり、実際には絶対圧で0.1MPaである。
【0046】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について説明する。以下では、本発明の加熱処理方法を実施する他の加熱処理装置について説明する。図6は、本発明の実施の形態2における加熱処理方法を実施するための加熱処理装置の構成例を示す構成図である。この加熱処理装置は、まず、排出口602を備える内側容器601と、内側容器601を収容する外側容器603と、内側容器601と外側容器603との間に形成された排気流通層604とを備える。内側容器601と排気流通層604とは、排出口602で連通している。本実施の形態においては、一例として、内側容器601の上部に排出口602を備えている。ここで、上部は、内側容器601内部に基板が配置される側を下側として本装置を設置した場合の位置を示すものであり、以降では、これを基準として位置を説明する。なお、外側容器603は、例えば耐圧容器であればよい。また、外側容器603は、断熱材を備えるなど断熱構造としてもよい。
【0047】
また、排気流通層604と外側容器603の外部とを連通する排気管605と、内側容器601の内部に加熱した気体を供給する熱風発生部(加熱気体供給手段)606と、熱風発生部606より供給される加熱されたガスを内側容器601に導入する導入管(導入配管)607と、排気管605より排出されるガスの量を制御する圧力制御弁(圧力制御手段)608とを少なくとも備える。本実施の形態では、一例として、排気管605を、外側容器603の底部の側に配置し、導入管607は、内側容器601の底部の側に接続している。
【0048】
熱風発生部606は、空気などのガスを圧縮して圧力を高めて出力する圧縮ポンプ機構と、圧縮ポンプ機構で圧縮されたガスをガス(圧縮ガス)を加熱する加熱機構とを備えている。例えば、熱風発生部606は、測温部(不図示)で測定される内側容器601の内部温度をもとにした制御により、温度を100〜200℃とした高温ガスを供給可能としている。熱風発生部606は、前述した実施の形態1の圧縮ポンプ105および加熱部107などにより構成してもよい。
【0049】
例えば、排気管605より排出されるガスの量を圧力制御弁608で制御することで、外側容器603の内部圧力が、例えば0.5MPa程度となるように制御できる状態とし、ここに、熱風発生部606により圧縮して加熱したガスを、導入管607より導入すれば、外側容器603の内部圧力を上昇させることができる。例えば、上述したように圧力制御弁608で制御している状態で、熱風発生部606の圧縮ポンプ機構により、圧縮ガスを20リットル/minで導入すれば、外側容器603の内部圧力を0.5MPa程度に制御することができる。
【0050】
内側容器601は、内側容器601の内部と排気流通層604と間で、高い効率で熱交換が可能とされていればよい。例えば、内側容器601は、ステンレス合金やアルミニウム合金などの熱伝導率の高い金属で構成すればよい。また、金属材料から構成し、表面に金属以外の材料をコーティングした構成としてもよい。また、内側容器601は、例えば、重力に対して十分に構造体として維持できる程度の強度があればよく、上述した高い熱伝導率を得る観点からは、厚さを可能な範囲で薄くした方がよい。内側容器601は、排出口602によりこの外側の外側容器603内部(排気流通層604)と連通しているので、外側容器603の内部圧力は、内側容器601の外側および内側に共通となる。このため、内側容器601は、耐圧構造とする必要がない。
【0051】
本実施の形態における加熱処理装置では、加熱機構を動作させた熱風発生部606より供給される高温とされたガス(高温ガス)は、まず、導入管607を通って内側容器601の底部側に導入される。内側容器601の底部側に導入された高温ガスは、内側容器601の内部を上昇し、排出口602を通って排気流通層604に排出(導出)される。排気流通層604に排出された高温ガスは、排気流通層604を外側容器603の上部側より下部側に移動する。このとき、排気流通層604を流通する高温ガスは、内側容器601の外側に触れており、内側容器601を加熱していく。このようにして排気流通層604を流通した高温ガスは、排気管605より外側容器603の外部に排気される。
【0052】
このように、熱風発生部606より供給される高温ガスは、初期段階では、外側容器603の内側に触れることがなく、内側容器601より排出された後、排気流通層604において外側容器603の内側に触れることになる。また、内側容器601は、この内側および外側が、高温ガスに触れていることになる。
【0053】
従って、外側容器603の温度が所望とする高温に到達していない動作初期において、外側容器603の温度を上昇させる熱源は、排気流通層604を流通する高温ガスとなる。言い換えると、内側容器601に導入された高温ガスは、低温状態の外側容器603に熱を奪われることがない。また、内部に導入された高温ガスにより加熱されている内側容器601は、この外側の排気流通層604に高温ガスが流通しているため、内側容器601の内部と外部との温度差が低下され、内側容器601内の温度の拡散が抑制された状態となる。
【0054】
これらの結果、本実施の形態における加熱処理装置によれば、内側容器601の内部温度を、より迅速に上昇させることが可能となり、内側容器601の内部に載置される処理対象の基板の温度をより迅速に上昇させることができる。
【0055】
また、本実施の形態における加熱処理装置では、加熱機構の動作を停止した熱風発生部606より20〜25℃程度の常温とした低温ガスを供給可能としている。このように、加熱動作を停止した熱風発生部606より供給される低温ガスは、まず、導入管607を通って内側容器601の底部側に導入される。内側容器601の底部側に導入された低温ガスは、内側容器601の内部を上昇し、排出口602を通って排気流通層604に排出(導出)される。排気流通層604に排出された低温ガスは、排気流通層604を外側容器603の上部側より下部側に移動する。このとき、排気流通層604を流通する低温ガスは、内側容器601の外側に触れており、内側容器601を冷却していく。このようにして排気流通層604を流通した低温ガスは、排気管605より外側容器603の外部に排気される。
【0056】
このように、熱風発生部606より供給される低温ガスは、加熱処理の動作を行った後で高温となっている外側容器603の内側に触れることがなく、内側容器601より排出された後、排気流通層604において外側容器603の内側に触れることになる。また、内側容器601は、この内側および外側が、低温ガスに触れていることになる。
【0057】
従って、内側容器601に導入された内側容器601の内部の低温ガスは、高温状態の外側容器603に触れることがない。低温ガスは、内側容器601より排気流通層604に排出されることで、外側容器603に触れることになり、この状態となって初めて外側容器603との間で熱交換(顕熱交換)がなされることになる。言い換えると、内側容器601に導入された低温ガスは、内側容器601内部に配置されている物体との間で熱交換をし、例えば、上記物体の冷却を行うが、外側容器603の冷却を行うことがない。
【0058】
これらの結果、本実施の形態における加熱処理装置によれば、内側容器601の内部温度を、より迅速に低下させることが可能となり、内側容器601の内部に載置される処理対象の基板などをより迅速に冷却することができる。
【0059】
次に、本実施の形態における加熱処理装置を用いた加熱処理について説明する。まず、外側容器603を開放して内側容器601の内部に基板を搬入し、図示しない基板台の上に載置する。次に、外側容器603を密閉した状態とし、排気管605より排出されるガスの量を圧力制御弁608で制御することで、外側容器603の内部圧力が、例えば0.5MPa程度となるように制御できる状態とする。
【0060】
次に、熱風発生部606より圧縮して加熱したガスを、導入管607より内側容器601に導入し、外側容器603の内部圧力を上昇させる。例えば、圧縮ガスを20リットル/minで導入する。これにより、外側容器603の内部圧力を、設定値(例えば0.5MPa)にすることができる。
【0061】
例えば、圧縮ガスの導入により上昇する外側容器603の内部圧力が、圧力制御弁608に設定した圧力を超えると、排気管605よりガスが排気されるようになる。この排気の状態により、外側容器603の内部圧力が設定値に到達したことを検出することができる。圧力制御弁608により排出されるガスを制御している状態で、熱風発生部606により圧縮ガスを導入し続けることで、外側容器603の内部圧力を設定値一定に制御する。
【0062】
次に、加熱した圧縮ガスが導入されている内側容器601の内部温度が設定値(例えば200℃)に到達した後、規定の処理時間の加熱処理を行う。本実施の形態における加熱処理装置によれば、内容積40リットルの内側容器601の場合、10分以内で200℃に到達する。加熱処理をしている間は、一定の温度に加熱された圧縮ガスが内側容器601に導入されるように制御する。また、前述したように、圧力制御弁608の制御により、外側容器603の内部は設定圧力に一定とされている。従って、設定されている加熱処理の時間内において、内側容器601の内部は、設定された圧力および設定された温度に一定の状態とされている。この結果、基板台(不図示)の上に載置されている基板は、0.5MPa程度に加圧された状態で、200℃程度に加熱されることになる。
【0063】
次に、規定の処理時間の加熱処理が終了したら、熱風発生部606において加熱機構の動作を停止し、供給している圧縮ガスの加熱を停止する。この加熱の停止により、熱風発生部606より供給される圧縮ガスの温度は急速に低下し、20〜25℃程度となる。このように温度が低下した圧縮ガスの供給により、内側容器601の内部を冷却する
【0064】
この後、内側容器601の内部が設定温度(例えば50℃)にまで冷却されたら、熱風発生部606の動作を停止して圧縮ガスの導入を停止し、また、圧力制御弁608を開放状態とし、外側容器603内のガスを外部に放出する。圧力制御弁608を徐々に開放状態とすることで、外側容器603内のガスを徐々に放出するようにしてもよい。また、他に設けた開放用バルブ(図示せず)を用い、この開放用バルブを開放することで、外側容器603内のガスを外部に放出してもよい。以上のことにより、内側容器601の内部圧力が大気圧程度となった段階で、処理対象の基板を内側容器601より搬出する。本実施の形態によれば、加熱機構を停止した後に、内側容器601の内部は、10分程度で設定温度にまで冷却される。
【0065】
図11を用いて説明した装置の場合、処理対象の基板が配置される容器801の内部の温度を、室温(20℃程度)から200℃まで上昇させるのに1時間以上必要とし、また、200℃から50℃まで冷却するためには、3時間以上必要となる。これに対し、上述した実施の形態によれば、各々10分程度となり、大幅な工程時間の短縮が見込める。また、この処理時間の差は、処理温度が高くなるほどより大きくなる。
【0066】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3について説明する。以下では、本発明の加熱処理方法を実施する他の加熱処理装置について説明する。図7は、本発明の実施の形態3における加熱処理方法を実施するための加熱処理装置の構成例を示す構成図である。この加熱処理装置は、まず、排出口702を備える内側容器701と、内側容器701を収容する外側容器703と、内側容器701と外側容器703との間に配置された中間容器711と、中間容器711に設けられた連通口712とを備える。本実施の形態では、一例として、内側容器701の上部に排出口702を備え、中間容器711の底部の側に連通口712を配置している。外側容器703は、例えば耐圧容器であればよい。また、外側容器703は、断熱材を備えるなど断熱構造としてもよい。
【0067】
なお、処理対象の搬入および搬出は、外側容器703の開閉により行うが、これを容易にするために、中間容器711と内側容器701とを連結して構成してもよく、また、中間容器711と外側容器703とを連結して構成してもよい。ただし、連結する構造は、各排気流通層などにおけるガスの流れを妨げない構成とすることが重要である。
【0068】
また、本実施の形態における加熱処理装置では、内側容器701と外側容器703との間に形成された排気流通層が、内側容器701と中間容器711との間に形成された内側排気流通層741、および中間容器711と外側容器703との間に形成された外側排気流通層742と、排気流通層を構成している外側排気流通層742と外側容器703の外部とを連通する排気管705と、内側容器701の内部に加熱した気体を供給する熱風発生部(加熱気体供給手段)706と、排気管705より排出されるガスの量を制御する圧力制御弁(圧力制御手段)708とを備える。なお、内側容器701と内側排気流通層741とは、排出口702で連通し、内側排気流通層741と外側排気流通層742とは、連通口712で連通している。また、排気管705は、外側容器703の上部の側に形成されている
【0069】
熱風発生部706は、空気などのガスを圧縮して圧力を高めて出力する圧縮ポンプ機構と、圧縮ポンプ機構で圧縮されたガスをガス(圧縮ガス)を加熱する加熱機構とを備えている。例えば、熱風発生部706は、測温部(不図示)で測定される内側容器701の内部温度をもとにした制御により、温度を100〜200℃とした高温ガスを供給可能としている。
【0070】
例えば、排気管705より排出されるガスの量を圧力制御弁708で制御することで、外側容器703の内部圧力が、例えば0.5MPa程度となるように制御できる状態とし、ここに、熱風発生部706により圧縮して加熱したガスを、導入管707より導入すれば、外側容器703の内部圧力を上昇させることができる。例えば、上述したように圧力制御弁708で制御している状態で、熱風発生部706の圧縮ポンプ機構により、圧縮ガスを20リットル/minで導入すれば、外側容器703の内部圧力を0.5MPa程度に制御することができる。
【0071】
内側容器701は、内側容器701の内部と内側排気流通層741と間で、高い効率で熱交換が可能とされていればよい。例えば、内側容器701は、ステンレス合金やアルミニウム合金などの熱伝導率の高い金属で構成すればよい。これは、中間容器711についても同様である。また、内側容器701は、金属材料から構成し、表面に金属以外の材料をコーティングした構成としてもよい。
【0072】
また、内側容器701および中間容器711は、例えば、重力に対して十分に構造体として維持できる程度の強度があればよく、上述した高い熱伝導率を得る観点からは、厚さを可能な範囲で薄くした方がよい。内側容器701は、排出口702によりこの外側の外側容器703内部(内側排気流通層741)と連通し、中間容器711は、連通口712によりこの外側の外側容器703内部(外側排気流通層742)と連通している。このため、外側容器703の内部圧力は、内側容器701の外側および内側、中間容器711の外側および内側に共通となる。このため、内側容器701および中間容器711は、耐圧構造とする必要がない。
【0073】
本実施の形態における加熱処理装置では、加熱機構を動作させた熱風発生部706より供給される高温とされたガス(高温ガス)は、まず、導入管707を通って内側容器701の底部側に導入される。内側容器701の底部側に導入された高温ガスは、内側容器701の内部を上昇し、排出口702を通って内側排気流通層741に排出(導出)される。内側排気流通層741に排出された高温ガスは、内側排気流通層741を内側容器701の上部側より下部側に移動する。このとき、内側排気流通層741を流通する高温ガスは、内側容器701の外側に触れており、内側容器701を加熱していく。
【0074】
次に、内側排気流通層741を流通する高温ガスは、連通口712を通って外側排気流通層742に流れていき、外側排気流通層742を、外側容器703の下部側より上部側に移動する。このようにして、内側排気流通層741および外側排気流通層742からなる排気流通層を流通した高温ガスは、排気管705より外側容器703の外部に排気される。
【0075】
このように、熱風発生部706より供給される高温ガスは、初期段階では、外側容器703の内側に触れることがなく、内側容器701より排出されて内側排気流通層741を流通した後、外側排気流通層742において外側容器703の内側に触れることになる。また、内側容器701は、この内側および外側が、高温ガスに触れていることになる。
【0076】
従って、外側容器703の温度が所望とする高温に到達していない動作初期において、外側容器703の温度を上昇させる熱源は、外側排気流通層742を流通する高温ガスとなる。言い換えると、内側容器701に導入された高温ガスは、低温状態の外側容器703に熱を奪われることがない。また、内部に導入された高温ガスにより加熱されている内側容器701は、この外側の内側排気流通層741に高温ガスが流通しているため、内側容器701の内部と外部との温度差が低下され、内側容器701内の温度の拡散が抑制された状態となる。加えて、本実施の形態によれば、内側容器701と外側容器703との間の排気流通層が、内側排気流通層741および外側排気流通層742からなる2重の構造となっているため、内側容器701と外側容器703との間の断熱効果がより高められる。
【0077】
これらの結果、本実施の形態における加熱処理装置によれば、内側容器701の内部温度を、より迅速に上昇させることが可能となり、内側容器701の内部に載置される処理対象の基板の温度をより迅速に上昇させることができる。
【0078】
また、本実施の形態における加熱処理装置では、加熱機構の動作を停止した熱風発生部706より20〜25℃程度の常温とした低温ガスを供給可能としている。このように、加熱動作を停止した熱風発生部706より供給される低温ガスは、まず、導入管707を通って内側容器701の底部側に導入される。内側容器701の底部側に導入された低温ガスは、内側容器701の内部を上昇し、排出口702を通って内側排気流通層741に排出される。
【0079】
内側排気流通層741に排出された低温ガスは、内側排気流通層741を内側容器701の上部側より下部側に移動する。このとき、内側排気流通層741を流通する低温ガスは、内側容器701の外側に触れており、内側容器701を冷却していく。このようにして内側排気流通層741した低温ガスは、連通口712を通って外側排気流通層742に流れていき、外側排気流通層742を、外側容器703の下部側より上部側に移動する。このようにして、内側排気流通層741および外側排気流通層742からなる排気流通層を流通した低温ガスは、排気管705より外側容器703の外部に排気される。
【0080】
このように、熱風発生部706より供給される低温ガスは、加熱処理の動作を行った後で高温となってい外側容器703の内側に触れることがなく、内側容器701より排出されて内側排気流通層741を流通した後、外側排気流通層742において外側容器703の内側に触れることになる。また、内側容器701は、この内側および外側が、低温ガスに触れていることになる。
【0081】
従って、内側容器701に導入された内側容器701の内部の低温ガスは、高温状態の外側容器703に触れることがない。低温ガスは、内側容器701より排出されて内側排気流通層741を流通した後、外側排気流通層742において外側容器703に触れることになり、この状態となって初めて外側容器703との間で熱交換(顕熱交換)がなされることになる。言い換えると、内側容器701に導入された低温ガスは、内側容器701内部に配置されている物体との間で熱交換をし、例えば、上記物体の冷却を行うが、外側容器703の冷却を行うことがない。
【0082】
これらの結果、本実施の形態における加熱処理装置によれば、内側容器701の内部温度を、より迅速に低下させることが可能となり、内側容器701の内部に載置される処理対象の基板の温度をより迅速に低下させることができる。
【0083】
次に、本実施の形態における加熱処理装置を用いた加熱処理について説明する。まず、外側容器703を開放して内側容器701の内部に基板を搬入し、図示しない基板台の上に載置する。次に、外側容器703を密閉した状態とし、排気管705より排出されるガスの量を圧力制御弁708で制御することで、外側容器703の内部圧力が、例えば0.5MPa程度となるように制御できる状態とする。
【0084】
次に、熱風発生部706より圧縮して加熱したガスを、導入管707より内側容器701に導入し、外側容器703の内部圧力を上昇させる。例えば、圧縮ガスを20リットル/minで導入する。これにより、外側容器703の内部圧力を、設定値(例えば0.5MPa)にすることができる。
【0085】
例えば、圧縮ガスの導入により上昇する外側容器703の内部圧力が、圧力制御弁708に設定した圧力を超えると、排気管705よりガスが排気されるようになる。この排気の状態により、外側容器703の内部圧力が設定値に到達したことを検出することができる。圧力制御弁708により排出されるガスを制御している状態で、熱風発生部706により圧縮ガスを導入し続けることで、外側容器703の内部圧力を設定値一定に制御する。
【0086】
次に、加熱した圧縮ガスが導入されている内側容器701の内部温度が設定値(例えば200℃)に到達した後、規定の処理時間の加熱処理を行う。本実施の形態における加熱処理装置によれば、内容積40リットルの内側容器701の場合、10分以内で200℃に到達する。加熱処理をしている間は、一定の温度に加熱された圧縮ガスが内側容器701に導入されるように制御する。また、前述したように、圧力制御弁708の制御により、外側容器703の内部は設定圧力に一定とされている。従って、設定されている加熱処理の時間内において、内側容器701の内部は、設定された圧力および設定された温度に一定の状態とされている。この結果、基板台(不図示)の上に載置されている基板は、0.5MPa程度に加圧された状態で、200℃程度に加熱されることになる。
【0087】
次に、規定の処理時間の加熱処理が終了したら、熱風発生部706において加熱機構の動作を停止し、供給している圧縮ガスの加熱を停止する。この加熱の停止により、熱風発生部706より供給される圧縮ガスの温度は急速に低下し、20〜25℃程度となる。このように温度が低下した圧縮ガスの供給により、内側容器701の内部を冷却する
【0088】
この後、内側容器701の内部が設定温度(例えば50℃)にまで冷却されたら、熱風発生部706の動作を停止して圧縮ガスの導入を停止し、また、圧力制御弁708を開放状態とし、外側容器703内のガスを外部に放出する。圧力制御弁708を徐々に開放状態とすることで、外側容器703内のガスを徐々に放出するようにしてもよい。また、他に設けた開放用バルブ(図示せず)を用い、この開放用バルブを開放することで、外側容器703内のガスを外部に放出してもよい。以上のことにより、内側容器701の内部圧力が大気圧程度となった段階で、処理対象の基板を内側容器701より搬出する。本実施の形態によれば、加熱機構を停止した後に、内側容器701の内部は、10分程度で設定温度にまで冷却される。
【0089】
図11を用いて説明した装置の場合、処理対象の基板が配置される容器801の内部の温度を、室温(20℃程度)から200℃まで上昇させるのに1時間以上必要とし、また、200℃から50℃まで冷却するためには、3時間以上必要となる。これに対し、上述した実施の形態によれば、各々10分程度となり、大幅な工程時間の短縮が見込める。また、この処理時間の差は、処理温度が高くなるほどより大きくなる。
【0090】
[実施の形態4]
次に、本発明の実施の形態4について説明する。図8は、本発明の実施の形態4における加熱処理方法を実施するための加熱処理装置の構成例を示す構成図である。この加熱処理装置は、まず、排出口802を備える内側容器801と、内側容器801を収容する外側容器803と、内側容器801と外側容器803との間に形成された排気流通層804とを備える。本実施の形態においては、一例として、内側容器801の下部に排出口802を備えている。内側容器801と排気流通層804とは、排出口802で連通している。
【0091】
また、排気流通層804と外側容器803の外部とを連通する排気管805と、内側容器801の内部に加熱した気体を供給する熱風発生部806と、熱風発生部806より供給される加熱されたガスを内側容器801に導入する導入管807と、排気管805より排出されるガスの量を制御する圧力制御弁808とを少なくとも備える。本実施の形態では、一例として、排気管805を、外側容器803の上部に配置し、導入管807も、内側容器801の上部に接続している。
【0092】
内側容器801,外側容器803,熱風発生部806,圧力制御弁808については、前述した実施の形態2,3と同様である。
【0093】
本実施の形態における加熱処理装置においても、内側容器801の内部温度を、より迅速に上昇させることが可能となり、内側容器801の内部に載置される処理対象の基板の温度をより迅速に上昇させることができる。また、内側容器801の内部温度を、より迅速に低下させることが可能となり、内側容器801の内部に載置される処理対象の基板などをより迅速に冷却することができる。
【0094】
[実施の形態5]
次に、本発明の実施の形態5について説明する。図9は、本発明の実施の形態5における加熱処理方法を実施するための加熱処理装置の構成例を示す構成図である。この加熱処理装置は、まず、排出口902を備える内側容器901と、内側容器901を収容する外側容器903と、内側容器901と外側容器903との間に形成された排気流通層904とを備える。本実施の形態においては、一例として、内側容器901の横側に排出口902を備えている。なお、横側は、内側容器901内部に基板が配置される側を下側として本装置を設置した場合の位置を示すものである。内側容器901と排気流通層904とは、排出口902で連通している。
【0095】
また、排気流通層904と外側容器903の外部とを連通する排気管905と、内側容器901の内部に加熱した気体を供給する熱風発生部906と、熱風発生部906より供給される加熱されたガスを内側容器901に導入する導入管907と、排気管905より排出されるガスの量を制御する圧力制御弁908とを少なくとも備える。本実施の形態では、一例として、排気管905を、外側容器903の横側に配置し、導入管907も、内側容器901の横側に接続している。また、排気管905および導入管907は、排出口902に対向して配置している。
【0096】
内側容器901,外側容器903,熱風発生部906,圧力制御弁908については、前述した実施の形態2,3と同様である。
【0097】
本実施の形態における加熱処理装置においても、内側容器901の内部温度を、より迅速に上昇させることが可能となり、内側容器901の内部に載置される処理対象の基板の温度をより迅速に上昇させることができる。また、内側容器901の内部温度を、より迅速に低下させることが可能となり、内側容器901の内部に載置される処理対象の基板などをより迅速に冷却することができる。
【0098】
次に、実施例に基づいて、より詳細に説明する。
【0099】
[実施例5]
フレキシブルパッケージ基板とチップを、アクリル系熱可塑性接着剤で貼り付け、この試料を、図6を用いて説明した加熱処理装置の内側容器601に載置(搬入)し、外側容器603を密閉状態とする。なお、内側容器601は、板厚0.5mmのステンレス鋼から構成されている。次に、外側容器603の内部圧力が0.6MPaとなる条件に圧力制御弁608を設定し、熱風発生部606より150℃に熱した高圧空気を供給する。この高温高圧の空気を、導入管607より内側容器601に導入し、内側容器601の内部を150℃に昇温し、150℃に到達したらこの状態を維持する。昇温時間は3分程度である。
【0100】
上述したように、内側容器601の内部を150℃に昇温してから、設定されている処理時間が経過した後、熱風発生部606の加熱機構の動作を停止し、熱風発生部606より、室温程度の高圧空気(冷却空気)が供給される状態とする。圧力制御弁608による圧力制御は継続した状態とする。この冷却空気の供給により、内側容器601の内部温度を50℃以下に降温する。降温時間は5分程度である。この後、熱風発生部606の動作を停止し、外側容器603の高圧空気を外部に放出し、外側容器603の内圧を大気圧とし、処理した試料を搬出する。搬出した試料を検査した結果、ボイド無くパッケージ基板とチップとが貼り合わされていることが確認された。
【0101】
[実施例6]
基板上にペーストを塗布し、塗布したペーストの上に細孔の開いたカバーを付ける。このように作製した試料を、図6を用いて説明した加熱処理装置の内側容器601に載置(搬入)し、外側容器603を密閉状態とする。なお、内側容器601は、板厚1mmのアルミニウム板から構成されている。上述したようにカバーを付けることで、ペーストから蒸発する溶剤の飽和蒸気下で、試料が加熱処理されるようになる。
【0102】
次に、外側容器603の内部圧力が0.6MPaとなる条件に圧力制御弁608を設定し、熱風発生部606より400℃に熱した高圧窒素(0.8MPa)を供給する。この高温高圧の窒素を、導入管607より内側容器601に導入し、内側容器601の内部を220℃に昇温し、220℃に到達したらこの状態を維持する。昇温時間は3分程度である。
【0103】
上述したように、内側容器601の内部を220℃に昇温してから、設定されている処理時間が経過した後、熱風発生部606の加熱機構の動作を停止し、熱風発生部606より、室温程度の高圧窒素(冷却窒素)が供給される状態とする。圧力制御弁608による圧力制御は継続した状態とする。この冷却窒素の供給により、内側容器601の内部温度を50℃以下に降温する。降温時間は5分程度である。この後、熱風発生部606の動作を停止し、外側容器603の高圧窒素を外部に放出し、外側容器603の内圧を大気圧とし、処理した試料を搬出する。搬出した試料を検査した結果、ペーストの割れなどがなく熱処理がされていることが確認された。
【0104】
[実施例7]
液晶基板を、接着樹脂を介して導光板に貼り合わせ、この試料を、図6を用いて説明した加熱処理装置の内側容器601に搬入し、外側容器603を密閉状態とする。次に、外側容器603の内部圧力が0.8MPaとなる条件に圧力制御弁608を設定し、熱風発生部606より150℃に熱した高圧空気を供給する。この高温高圧の空気を、導入管607より内側容器601に導入し、内側容器601の内部を100℃に昇温し、100℃に到達したらこの状態を維持する。昇温時間は3分程度である。
【0105】
上述したように、内側容器601の内部を100℃に昇温してから、設定されている処理時間が経過した後、熱風発生部606の加熱機構の動作を停止し、熱風発生部606より、室温程度の高圧空気(冷却空気)が供給される状態とする。圧力制御弁608による圧力制御は継続した状態とする。この冷却空気の供給により、内側容器601の内部温度を50℃以下に降温する。降温時間は3分程度である。この後、熱風発生部606の動作を停止し、外側容器603の高圧空気を外部に放出し、外側容器603の内圧を大気圧とし、処理した試料を搬出する。搬出した試料を検査した結果、気泡無く導光板が基板に貼り合わされていることが確認された。
【0106】
[実施例8]
プリント基板の実装位置において、各端子部にハンダボールを介して実装対象のチップを仮設置し、この試料を、図6を用いて説明した加熱処理装置の内側容器601に搬入し、外側容器603を密閉状態とする。
【0107】
次に、外側容器603の内部圧力が大気圧程度となる条件に圧力制御弁608を設定し、熱風発生部606より300℃に熱した窒素を供給する。この高温の窒素を、導入管607より内側容器601に導入し、内側容器601の内部を150℃に昇温し、150℃に到達したらこの状態を維持する。昇温時間は1分程度である。さらに、供給する窒素の温度を500℃にし、内側容器601の温度を220℃に昇温する。昇温時間は1.5分程度である。
【0108】
上述したように、内側容器601の内部を220℃に昇温してから、設定されている処理時間が経過した後、熱風発生部606の加熱機構の動作を停止し、熱風発生部606より、室温程度の高圧窒素(冷却窒素)が供給される状態とする。この冷却窒素の供給により、内側容器601の内部温度を50℃以下に降温する。降温時間は5分程度である。この後、熱風発生部606の動作を停止し、処理した試料を搬出する。この実施例では、外側容器603の内部圧力を大気圧程度として処理をしているため、降温した後に直ちに搬出することができる。搬出した試料を検査した結果、良好な状態でハンダボールが溶融して接合(実装)されていることが確認された。
【0109】
[実施例9]
以下、実施例9について説明する。以下では、内側容器が加熱機構を備え、導入される加熱ガスとは別に、上記加熱機構により加熱可能とした場合について説明する。
【0110】
まず、内側容器について説明すると、厚さが1mmのアルミニウム板から構成され、この内側に、遠赤外線放射塗料が塗布され、膜厚30μm程度の遠赤外線放射膜が形成されている。遠赤外線放射塗料としては、例えば、オキツモ株式会社製W−500,W−600、およびセラミックコート株式会社製B−KSシリーズなどを用いることができる。また、本実施例においては、内側容器に加熱機構が備えられている。他の構成は、前述した実施の形態2と同様である。
【0111】
上述した加熱処理装置を用い、以下の加熱処理を行う。まず、上記装置の内側容器に設けられた加熱機構を動作させ、内側容器を250℃に加熱する。次に、フレキシブルパッケージ基板とチップを、アクリル系熱可塑性接着剤で貼り付け、この試料を、上記加熱処理装置の加熱されている内側容器に載置し、外側容器を密閉状態とする。この段階で、搬入した試料は、加熱された内側容器の内側に塗布されている遠赤外線放射膜より放射される遠赤外線により加熱されている。
【0112】
次に、外側容器の内部圧力が0.6MPaとなる条件に圧力制御弁を設定し、熱風発生部より250℃に熱した高圧窒素を供給する。この高温高圧の窒素を、導入管より内側容器に導入し、この導入する高温の窒素と遠赤外線放射膜からの遠赤外線放射との両作用により、内側容器の内部を250℃に昇温し、250℃に到達したらこの状態を維持する。昇温時間は1分程度である。
【0113】
上述したように、内側容器の内部を250℃に昇温してから、設定されている処理時間が経過した後、熱風発生部の加熱機構の動作を停止し、また、内部容器の加熱機構の動作を停止し、熱風発生部より、室温程度の高圧窒素(冷却窒素)が供給される状態とする。圧力制御弁による圧力制御は継続した状態とする。この冷却窒素の供給により、内側容器の内部温度を50℃以下に降温する。降温時間は5分程度である。この後、熱風発生部の動作を停止し、外側容器の高圧窒素を外部に放出し、外側容器の内圧を大気圧とし、処理した試料を搬出する。搬出した試料を検査した結果、ボイド無くパッケージ基板とチップとが貼り合わされていることが確認された。
【0114】
以上に説明したように、本実施の形態の加熱処理装置では、外側容器の中に内側容器を設け、内側容器と外側容器との間に排気流通層を形成し、内側容器の内部に加熱した気体を供給するようにしたところに特徴がある。内側容器と排気流通層との接続、排気流通層(外側容器)と外部との接続、または、内側排気流通層と外側排気流通層との接続は、接続の形態や接続箇所は上述した形態に限定されるものではなく、例えば、導入したガスが効率よく流通するように適宜に設定すればよい。このように構成した加熱処理装置を用いることで、より迅速に加熱処理ができるようになる。
【0115】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形が実施可能であることは明白である。
【0116】
本発明は、気体を加熱して容器の内部に導入して容器の内部を加熱するところに特徴があるが、容器は前述したように、外側容器と内側容器とから構成してもよい。前述した実施の形態では、外側容器と内側容器と間に排気流通層を設けるようにしたが、これに限るものではなく、外側容器と内側容器とが接触した構成としてもよい。内側容器を設けることで、内側容器に導入された高温ガスが、外側容器に熱を奪われることが抑制されるようになり、内側容器の内部温度の拡散が抑制できる。
【0117】
また、例えば、外側容器と内側容器との間に断熱材を配置して容器を断熱構造としてもよい。図10に示すように、圧縮ポンプ機能と加熱機能とを備える熱風発生部1006により加圧/加熱されたガスが供給される内側容器1001と、この外側の外側容器1003との二重構造とし、外側容器1003と内側容器1001との間に断熱材1004を充填する。この場合、上述した排気流通層が断熱材1004で埋め尽くされた状態となる。熱風発生装置1007より供給するガスは、導入管1007により内側容器1001の内部に導入され、排出口1002を通り、圧力制御弁1008で量(排出量)が制御されて外部に排出される。このようにすることで、内側容器に導入された高温ガスが、外側容器に熱を奪われることがより抑制できるようになる。ただし、排気流通層を設ける構成とした方がよりよい。
【0118】
また、図1を用いて説明した加熱処理装置の容器、および図6〜図9を用いて説明した加熱処理装置の内側容器は、内側表面が遠赤外線を放射する作用を有する材料から構成されていてもよい。例えば、内側容器を、遠赤外線を放射する作用を有する材料から構成することが考えられる。また、容器の内壁に、上述したような材料の層を形成しておくことが考えられる。
【0119】
このようにすることで、加熱された上記材料より放射される遠赤外線により、処理対象の基板などをより効果的に昇温させることができる。これは、処理対象の基板を構成する分子が、遠赤外線を吸収することでより大きく振動し、自身が熱を発生するようになるためである。遠赤外線を放射する材料としては、例えば、セラミックなどが挙げられる。また、試料台がガラスやアルミナなどの金属酸化物で構成されていれば、処理対象物と共に試料台も加熱され、より効率的である。
【0120】
また、上述では、容器内に供給するガスの加熱を停止することで、冷却(降温)を行うようにしたが、これに限るものではない。例えば、供給するガスの加熱温度を所望とする降温速度で低下させてから加熱を停止するようにしてもよい。例えば、図1を用いた装置において、制御部110により加熱部107の加熱温度の低下(降温)速度を制御することで、供給するガスの降温速度が制御できる。このようにすることで、導入されるガスの降温速度に対する処理対象物の降温速度の追従性をよくすることができる。例えば、導入されるガス温度の低下速度に対し、処理対象物の温度低下速度が遅い場合、処理対象物においては、周囲との温度差が大きな状態となる。このような状態では、処理対象物に損傷を与える場合もある。これに対し、上述したように制御することで徐々に降温すれば、処理対象物とこの周囲との温度差が大きくなることが抑制され、上述したような損傷が抑制できるようになる。
【0121】
また、熱風発生部は、1つであってもよいが、容器内部の温度の均一性を考慮すると、より多くの熱風発生部を用い、より多くの排気管により容器内部に導入した方がよい。なお、熱風発生部は、外側容器に対してどのような位置に配置してもよいことはいうまでもない。また、圧力調整弁に限らず、背圧弁などの他の圧力調整手段を用いるようにしてもよい。なお、容器内部を大気圧程度で用いる場合、ガスを圧縮して供給する機構や、圧力調整手段などは必要がない。また、用いるガスは、空気、窒素に限らず、ヘリウムやアルゴンなどの不活性ガスを用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0122】
101…容器、102…基板台、103…排気管、104…圧力制御弁(圧力制御手段)、105…圧縮ポンプ(圧縮供給手段)、106…輸送管、107…加熱部(加熱気体供給手段)、108…導入管、109…温度センサー、110…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の内部に処理対象の基板を配置する第1工程と、
排出される気体の量を制御することで前記容器の内部圧力を制御している状態で、圧縮した気体を前記容器の内部に導入して前記容器の内部圧力を上昇させる第2工程と、
圧縮した気体を前記容器の内部に導入して前記容器の内部圧力を上昇させている状態で、圧縮した気体を加熱して前記容器の内部に導入して前記容器の内部を加熱する第3工程と、
圧縮した気体を前記容器の内部に導入して前記容器の内部圧力を上昇させている状態で、圧縮した気体の前記加熱を停止して前記容器の内部に導入して前記容器の内部を冷却する第4工程と
を少なくとも備えることを特徴とする加熱処理方法。
【請求項2】
請求項2記載の加熱処理方法において、
圧縮した前記気体の導入を停止し、前記容器内部の気体を放出することで前記容器の内部圧力を低下させる第5工程
を備えることを特徴とする加熱処理方法。
【請求項3】
容器の内部に処理対象の基板を配置する第1工程と、
気体を加熱して前記容器の内部に導入して前記容器の内部を加熱する第2工程と、
前記気体の前記加熱を停止して前記容器の内部に導入して前記容器の内部を冷却する第3工程と
を少なくとも備えることを特徴とする加熱処理方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に2記載の加熱処理方法において、
前記気体は、複数の箇所から前記容器の内部に導入することを特徴とする加熱処理方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の加熱処理方法において、
前記気体は、空気、窒素、アルゴンの中より選択されたものであることを特徴とする加熱処理方法。
【請求項6】
容器およびこの容器の内部と外部とを連通する排気管と、
前記容器の内部に加熱した気体を供給する加熱気体供給手段と、
この加熱気体供給手段より供給される気体を前記容器に導入する導入管と
を少なくとも備えることを特徴とする加熱処理装置。
【請求項7】
請求項6記載の加熱処理装置において、
前記容器は、
内側容器およびこの内側容器を収容する外側容器から構成されている
ことを特徴とする加熱処理装置。
【請求項8】
請求項7記載の加熱処理装置において、
前記内側容器に形成された排出口と、
前記内側容器と前記外側容器との間に形成された排気流通層と、
前記内側容器の内部に加熱した気体を供給する加熱気体供給手段と、
前記加熱気体供給手段より供給される気体を前記内側容器に導入する前記導入管と
を少なくとも備え、
前記内側容器と前記排気流通層とは、前記排出口で連通し、
前記排気流通層と前記外側容器の外部とは、前記排気管で連通している
ことを特徴とする加熱処理装置。
【請求項9】
請求項8記載の加熱処理装置において、
前記内側容器と前記外側容器との間に配置された中間容器と、この中間容器に設けられた連通口とを備え、
前記排気流通層は、前記内側容器と前記中間容器との間に形成された内側排気流通層、および前記中間容器と前記外側容器との間に形成された外側排気流通層とから構成され、
前記内側容器と前記内側排気流通層とは、前記排出口で連通し、
前記内側排気流通層と前記外側排気流通層とは、前記連通口で連通している
ことを特徴とする加熱処理装置。
【請求項10】
請求項7記載の加熱処理装置において、
前記内側容器と前記外側容器との間に設けられた断熱材を備えることを特徴とする加熱処理装置。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれか1項に記載の加熱処理装置において、
前記内側容器は、加熱により遠赤外線を放射する材料から構成されている
ことを特徴とする加熱処理装置。
【請求項12】
請求項6〜11のいずれか1項に記載の加熱処理装置において、
前記気体を圧縮して供給する圧縮供給手段と、
前記排気管より排出される気体の量を制御する圧力制御手段と
を備えることを特徴とする加熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−171383(P2010−171383A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257969(P2009−257969)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000102739)エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社 (265)
【Fターム(参考)】