説明

加熱調理器

【課題】 製造コストが安くさらに加熱室の断熱が向上する加熱調理器を提供することを
目的とする。
【解決手段】 箱型の本体内に加熱室5の空間を有し、この加熱室5内を加熱する熱風ヒ
ータ62を有する加熱調理器において、前記加熱室5を形成する少なくとも一つの壁は、
内壁4aと外壁4bが2重構造に形成されて、内壁4aと外壁4bの間は空気が封入され
ることで構成され、外壁4bは、内壁4aに比して熱容量が大きくなうように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱物を加熱する加熱手段を備えた加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、オーブン機能を有する加熱調理器は、食品を加熱するスピードを向上させる
為にさまざまな方法が考えられてきた。
例えば、加熱室内の蓄熱効率を上げて、エネルギーロスを削減する為に、加熱室の外表
面に断熱パネルを設け、ヒータからの熱が調理物に向かい、加熱室の壁から外に熱が逃げ
るのを遮断する加熱調理器が提供されていた(例えば特許文献1参照)。
また熱風を加熱室に送風する熱風ファンを有する加熱調理器において、熱風ファンから
加熱室に熱風を送るダクトに断熱材19を設けて、加熱室の中にダクトを送る熱風の熱エ
ネルギーがダクト外に逃げないように構成したものが提供されている(特許文献2参照)

またこの他、加熱室を収納する外箱を2重の構造とし、内部を真空状態にすることで、
ステンレス製真空2重容器の中に加熱室を収納するようにした加熱調理器が提供されてい
る(例えば特許文献3参照)。
これらに対して、外箱内に収納される加熱室の構成を2重構造として断熱を図る加熱調
理器が考えられている。
【0003】
例えば、加熱室を内壁と外壁との2重構造により囲い、その内壁3aと外壁である真空
断熱壁15の間に、外殻3bが装着されている加熱調理器が提供されている(例えば特許
文献4参照)。
【特許文献1】特開2001ー147021号公報
【特許文献2】特開平04−126389号公報
【特許文献3】特開平06−117642号公報
【特許文献4】特開2005−203299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献4の加熱調理器にあっては、内壁と外壁の二重構造の間に断熱
材である外殻3bを装着しており、隙間に断熱材を加えないとならず、製造コストが高い
という問題があった。
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、製造コストが安くさらに加熱室
の断熱が向上する加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係わる加熱調理器は、箱型の本体内に加熱室の空
間を有し、この加熱室内を加熱するヒータ加熱手段を有する加熱調理器において、前記加
熱室を形成する少なくとも一つの壁は、内壁と外壁が2重構造に形成されて、内壁と外壁
の間は空気が封入されることで構成され、外壁は、内壁に比して熱容量が大きく構成され
ることを主たる特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、加熱室の2重壁で構成し、その隙間に空気を封入して、内壁に比べて
熱容量が大きい外壁により2重壁を構成したため、加熱室の断熱効果が高く、加熱スピー
ドを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
【0008】
本発明の加熱調理器を電子レンジに適用した一実施例を示す図1乃至図7を参照して説
明する。
図1は、電子レンジの扉を閉塞した状態の正面図である。図2は扉を開放した状態で示
す正面図である。図3は縦断正面図である。図4は横断平面図である。図5は縦断側面図
である。図6は電気的構成図。図7は本実施例と従来の加熱調理器との比較を示す実験デ
ータである。
図1、2に示すように電子レンジの本体1は、外郭が矩形状の外箱2で形成されていて
、底部下面に脚部3が設けられている。
外箱2の内部には前面が開口した内箱4が設けられており、この内箱4の内部を加熱室
5としている。またこの加熱室5の前面開口部5dは本体1の前面のほぼ全幅にわたる大
きさの矩形状をなしている。この加熱室5の寸法は、前面開口部5dが、横幅415mm
×高さ415mmであり、前面開口部5dから背面までの奥行き290mmで構成されて
いる。
そして、本体1の前面には加熱室5の前面開口部5dを開閉可能な扉6が設けられてい
る。この扉6は図示しないヒンジ部を介して本体1の前下部に上下方向に可動可能に枢支
されている。
【0009】
また扉6の前面部には図1に示すように、上部に手掛け部7が設けられていると共に、
下部に複数の操作部9及び表示部10を有する操作パネル8が設けられている。この操作
パネル8は、操作部9は加熱調理の調理方法等を選択設定するもので、表示部10は選択
された調理方法や調理温度などを表示するためのものである。
またこの扉6には、扉6をロックする扉ロックスイッチ11(図6参照)が設けられて
おり、この扉ロックスイッチ11は加熱室5内が高温時は扉6を開放できないように扉6
をロックするロック機能を有している。
そして外箱2と内箱4の間には図4、図5に示すように空間が設けられており、内箱4
の右方には右側空間12、左方には左側空間13、下方には下側空間14、上方には、上
側空間40が設けられている。
そして詳細は後述するが、この内箱4の一部は2重構造で構成されており、内壁4aと
外壁4bとが所定の隙間を有して接続されて構成されている。
【0010】
また図5に示すように加熱室5の後方には機械室15が形成されていて、この機械室1
5には下部にマグネトロン16と、このマグネトロン16の駆動装置17が設けられてい
る。
このマグネトロン16はマイクロ波を発生するもので、その発生したマイクロ波は、下
側空間14に設けられ加熱室5の下面の中央に延びる導波管18を通して開口部(図示せ
ず)から加熱室5内に供給可能としている。
また機械室15の中央部から上部にかけては、左右方向の中央部に後述する熱風循環機
構60(ヒータ加熱手段に相当)が設けられている。
さらに機械室15の上部には加熱室5内の温度と、被加熱物の温度を測定する温度セン
サ19が設けられている。
【0011】
一方、加熱室5内には図3に示すように両側壁に突起状の段部30が形成されており、
上方に上段部30a、下方に下段部30bが形成されている。
またその段部30上に加熱調理用の角皿31が載置できるように構成されていて、上段
角皿31aと下段角皿31bが其々配置されている。
これら角皿31はいずれも段部30上をスライド移動することが可能で、角皿31を前
面開口部5d方向にスライド移動させることによりに加熱室5から取出し可能である。
【0012】
一方、加熱室5の後壁側には熱風循環機構60が配設されている。
図5に示すようにこの熱風循環機構60は、熱風ファン61と、熱風ヒータ62、ケー
シング65、及びファンモータ66で構成されており、そのうち、熱風ファン61は遠心
ファンが用いられている。
この熱風ファン61はケーシング65に覆われており、このケーシング65の後側の機
械室15にはファンモータ66が取付けている。このファンモータ66の回転軸がケーシ
ング65内に挿入されており、これに熱風ファン61の中心ボス部が取付けられ、この熱
風ファン61を回転駆動するように構成されている。
そして、熱風ヒータ62は、2本のシーズヒータで構成され熱風ファン61の周囲部を
囲うように配設されている。
この2本のヒータからなる熱風ヒータ62は、定格出力が異なる第1の熱風ヒータ63
と第2の熱風ヒータ64で構成されており、これら第1の熱風ヒータ63と第2の熱風ヒ
ータ64は其々独立して電源101に接続され、第1の熱風ヒータ63は1300Wの定
格出力で、第2の熱風ヒータ64は1000Wの定格出力で構成されている。
これらに対して、図2に示すように加熱室5の後壁5cには、熱風ファン61の中央部
と対応する位置に循環空気の吸入口67が多数の小孔により形成され、熱風ファン61の
外周部より外側の位置に循環空気の吹出口68を同じく多数の小孔により形成している。
【0013】
また吹出口68は熱風ヒータ62と対応するように環状に配置して形成されている。
なお、前述の上段角皿31aと下段角皿31bについては、循環空気の吸入口67と吹
出口68とを遮断するように、吸入口67を上下より挟むように配置されている。
【0014】
ここで、前述した加熱室5を構成する内壁4の2重構造について説明する。
加熱室5を2重構造の壁で囲う箇所は、上面と左右の面の3面で構成され、機械室15
にある背面と、導波管18が接続される底面は1重で形成されている。
これら2重構造の壁のうち1面につき以下説明する。
まず、加熱室5と接触する内壁4aは、板厚が0.4mmのSUSで形成されている。
【0015】
そしてその外側に、板厚が0.6mmのSUSで形成された外壁4bが所定の隙間5mm
を有して覆うように位置されている。
この外壁4bは、外方向に凸状の形状を有していて、周縁が内壁4aと対向するフラン
ジ部4b1を有する構造をしている。
そしてこのフランジ部4b1と内壁4aの間に断熱材4cが設置されており、フランジ
と内壁4aが断熱材4cを介してネジで接続固定されていて、内壁4aと外壁4bが直接
接触しないように構成されている。
そして、外壁4bの内壁4aで囲われた空間には、空気が存在しているだけであり、こ
の空気が加熱室5の断熱層として効果を奏する構成である。
【0016】
次に、電子レンジの概略的な電気的構成を図6を参照して説明する。
電子レンジが備える制御装置100には、前述の操作パネル8の操作部9、加熱室5内
の温度を検出する温度センサ19、及び電子レンジに電源を供給する電源101が接続さ
れている。
操作部9では、調理方法等を設定した信号を制御装置100に入力し、温度センサ19
は温度検出信号を入力する。
そして制御装置100には、操作パネル8の表示部10、マグネトロン16の駆動装置
17が接続されていると共に、熱風循環機構60のファンモータ66、及び熱風ヒータ6
2である第1の熱風ヒータ63、第2の熱風ヒータ64に接続されている。また扉6の開
閉をロックする扉ロックスイッチ11も接続されている。
また制御部100は、記憶手段であるメモリーを有していて、加熱手段の制御方法のプ
ログラムが予め記憶されており、操作部9で操作されることにより、制御装置100は、
メモリーからプログラムを読みこんで所定の加熱動作を行うように構成されている。
例えば、操作部9の調理方法の項目のうち「レンジ」が選択されると、マグネトロンに
より食品を加熱する調理方法「レンジ調理メニュー」が選択される。また「オーブン」の
場合には、熱風循環機構が生成する熱風により食品を加熱する調理方法「オーブン調理メ
ニュー」が選択される。
【0017】
次に、上記構成の電子レンジの作用について述べる。
まず、扉6を開け図示しない調理物を加熱室5内に収容載置し、後述するが使用者は調
理方法と加熱条件を決めて操作部9から「レンジ」、「オーブン」の調理方法や加熱時間
、加熱設定温度などの加熱条件を入力操作する。
そして、操作部9のうちのスタートスイッチを操作して加熱開始を指示すると、制御装
置100は設定された調理方法や加熱条件に基づき予め設定された制御プログラムに従っ
てマグネトロン16や熱風循環機構60を駆動させて加熱調理を実行する。
ここでまず、加熱室5内の調理物をマイクロ波により加熱調理を実行する調理メニュー
(以下、「レンジ調理メニュー」と称する)が設定された場合の動作について説明する。
【0018】
これは、例えば牛乳のあたためや、冷凍食品の解凍等の加熱調理に利用される。
加熱室5の底に直接調理物を載置収容し、「レンジ調理メニュー」の開始が指示される
と、マグネトロン16が駆動し、マイクロ波が導波管18を通り、加熱室5下方から回転
アンテナ(図示せず)によりマイクロ波が加熱室5内にむらなく照射されて加熱調理が行
なわれる。
【0019】
さらに、加熱室5内に熱風を循環供給しながら加熱調理を実行する調理メニュー(以下
、「オーブン調理メニュー」と称する)が設定された場合の動作について説明する。
これは、例えばトーストや肉類のロースト等の加熱調理に使用される。
「オーブン調理メニュー」の開始が指示されると、ファンモータ66と熱風ヒータ62
が通電される。
これによって、ファンモータ66は熱風ファン61を回転駆動し、熱風ファン61は図
5の矢印Mに示すように加熱室5内の空気を加熱室後壁5cの吸入口67から吸入する。
【0020】
そして、熱風ファン61により円周方向に送風され熱風ヒータ62によって加熱される

その加熱された空気が加熱室後壁5cの吹出口68から吹出されることにより加熱室5内
の空気が循環され、加熱室5内の温度が高まる。
この熱風循環機構60の動作により調理物は強制対流加熱される。またこの際、加熱室
5内は熱風ヒータ62の熱輻射による加熱も行われる。
【0021】
このときの加熱室5内の加熱温度状況を説明する。
加熱室5が予熱されていない状態から、熱風循環機構60の熱風ヒータ62の合計出力
を一定の出力で加熱すると、加熱室5内は熱風ファン61により送り込まれた熱風により
、徐々に加熱されていく。
この時、加熱室5の内壁4aは、板厚が小さく熱容量が小さい為、内壁4aはすぐに加
熱室5内の温度と平衡状態となり、加熱室5は、内壁4aと外壁4bの間の断熱層となる
空気により断熱される。
さらに外壁4bは、板厚が大きく熱容量が大きいため、外壁4bより外側の冷気が外壁
4bを冷却するのには時間がかかる。さらに外壁4bの内側には断熱層である空気がある
ため外気は、熱容量の大きい外壁4bと内部の空気により、効果的に冷気が内壁4aに伝
わりにくい。
従って、加熱室5は、内部の温度を上昇させやすく、外部の冷気の影響を受けにくく冷
めにくいという二つの効果を有しており、加熱室5内の温度を早く所望温度に到達させる
ことができる。
さらには、熱容量が高く冷めにくい外壁4bであっても時間が立つと温度が低下してく
るが、内壁4aと外壁4bとを断熱材4cを介して接続している為、この低下した温度が
内壁4aに伝わらず、より効果的に加熱室5内の断熱と加熱スピードを上げることができ
る。
【0022】
ここで以上述べた効果に基づく、実験データを図7を参照して説明する。
これは、本実施例と同様な構成の加熱調理器と、従来の加熱調理器の加熱性能を比較し
たものであり、比較対照は、従来の加熱室が1重で構成された加熱調理器A、加熱室が2
重であるが、内壁と外壁の熱容量が同じ板材(すなわち材質が同じ(SUS)で、厚さも
同じ(0.6mm)であって隙間に断熱材(セラミック断熱材)が挟まれている加熱調理
器Bある。
これら加熱調理器Bも本実施例と同様に加熱室の上壁、左右の壁が2重壁で構成されて
いるものである。そして、これらに加熱調理器の加熱室を加熱する熱風循環機構も同様の
形、出力を使用しているものであって、異なる点は、内箱4の壁の形状である。
また測定条件としては、加熱室が予熱されていない時に、熱風ヒータを100V電圧で
1330Wに維持して加熱を行った。
その結果、図7に示すように加熱室が1重の壁で構成された加熱調理器Aは、加熱室内
の温度が200度Cに到達するまで560秒かかり、断熱材を有する2重壁の加熱調理器
Bは、加熱室内の温度が200度Cに到達するまで505秒必要とした。
これらの結果に対して、本実施例の加熱調理器は、加熱室内の温度が200度Cに48
0秒で到達した。
すなわち、本実施例の加熱調理器は、1重の壁で構成された加熱調理器Aに比して、8
0秒早く200度Cに到達し、加熱室5内を早く温度上昇させることができている。
また、断熱材を有する2重壁の加熱調理器Bに比べては、25秒早く到達することがで
き、加熱室5内の温度の上昇スピードは本実施例の加熱調理器が速いことが分かる。
【0023】
特に加熱調理器Bに対して本実施例の加熱調理器は、33.25kWh(1330[W
]×Δ25[S])もの消費電力を抑制して、200℃まで到達できていることを示して
おり、2重壁にして、断熱材を内部に配置するよりも、断熱材を設けないで、さらに外壁
4bの熱容量を大きくするほうが効果的に加熱室5内の加熱スピードを向上させることが
でき、さらに消費電力も削減することができる。
なお、外壁4bの熱容量を大きくする為に、本実施例では外壁4bと内壁4aの板厚を
変えて、外壁4bを厚くしたが、外壁4bと内壁4aが同じ板厚であっても、比熱が大き
い材料を外壁4bに使用(例えば、内壁4aの材料はSUS、外壁の材料はガラス)する
ことで同じ効果を得ることができる。
また当然、外壁4bの外側に断熱材を配置することにより、外壁4bの断熱がさらに高
まり加熱室5内の温度が低下することを効果的に抑制することができる。
【0024】
以上のような本発明の実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
すなわち、箱型の本体内に、加熱室5の空間を有し、その加熱室5内を加熱する熱風循
環機構60を有する加熱調理器において、加熱室5を形成する上側、右側、左側の壁が、
内壁4aと外壁4bによる2重構造に形成されて、内壁4aと外壁4bの間に空気が封入
されて構成され、外壁4bは、内壁4aに比して熱容量が大きく構成しているため、加熱
室5内は温度上昇スピードが速くすることができ、調理物を早く調理することができ、調
理の消費電力を削減することができる。
また外壁4bの板厚を内壁4aの板厚より大きくするだけでよいため、設計が簡単で、
製造コストも安くすることができる。
また外壁4bの材料を内壁4aの材料に比べて、比熱が高いものを使用すればよいので
、同様に、設計が簡単で、製造コストを安くすることができる。
また内壁4aと外壁4bとを、断熱材4cを介して接続するようにしたので、内壁4a
から外壁4bへ熱が伝わりづらく、加熱室5内の温度を効果的に断熱することができる。
【0025】
(実施例2)
次に、本発明に係る加熱調理器の第2の実施形態を、図8を参照して説明する。
図8は、第1の実施例の図3における電子レンジの縦断正面図の相当図を示している。
第1の実施形態と同一部分については同一の符号を付して説明を省略し、以下異なるとこ
ろについて説明する。
即ち、上記第1の実施形態と異なるところは、左右側壁5a、5bに対応する二重構造
壁の外壁の内壁に対する接続方法である。
【0026】
この構成は、加熱室を形成する壁のうち、上面の壁5e(断熱材介在壁に相当)が2重
構造となっており、その上面の壁と隣り合う壁、すなわち左右の面(隣接面に相当)の側
壁5a、5b(隣接壁)も2重構造で構成され、計3面が2重構造で構成されている。
その上側壁5eの外壁4bは外方向に凸状の形状を有していて、周縁が内壁4aと対向
するフランジ部4b1(接続部に相当)を有する構造をしている。
そしてこのフランジ部4b1と内壁4aの間に断熱材4cが設置されており、フランジ
部4b1と内壁4aが断熱材4cを介して接続されており、内壁4aと外壁4bが直接接
触しないように構成されている。
【0027】
そして、2重構造の左側壁5aの外壁114bは、加熱室5の上方に延出する延出部1
14dが設けられており、この延出部114dが上側壁5eの外壁4bのフランジ部4b
1を覆うように位置している。
この延出部114dは、上側壁5eの内壁4aに断熱材4c及び外壁4bのフランジ部
4bを介して、ネジ等により接続されている構成をしている。
また、外壁114bの下方は、周縁が内壁114aと対向するフランジ部114b1を
有し、そのフランジ部114b1が内壁114aの間に断熱材114cを挟持して接続さ
れている。
【0028】
この構成によれば、外壁114bの上方では、上側壁5eのフランジ部4b1を介して
接続して、断熱材4c共有している為、左右側壁5a、5bの上方に別の断熱材を設置す
る必要がなく、安価に容易に設計できる。
さらに延出部114dは、断熱材4c、フランジ部4b1の二つを介して接続されてい
る為、加熱室からの熱がさらに伝わりにくく断熱することができる。
なお、延出部114dはフランジ部4b1の外側に接続したが、フランジ部4b1の内
側(フランジ部4b1と断熱材4cの間)に接続してもよい。
【0029】
(実施例3)
次に、本発明に係る加熱調理器の第3の実施形態を、図9〜図16を参照して説明する

第1の実施形態と同一部分については同一の符号を付して説明を省略し、以下異なると
ころについて説明する。
即ち、上記第1の実施形態と異なるところは、左側壁5aには、加熱室5内に蒸気を供
給する蒸気発生容器41が設けられている点である。
【0030】
以降、次に示す図を用いて説明する。
図9は扉を開放した状態で示す正面図である。図10は縦断正面図である。図11は横
断平面図である。図12は、前記蒸気発生容器の縦断正面図、図13は蒸気発生容器の縦
断側面図を示している。図14は電子レンジの縦断側面図である。図15は、電気的構成
図である。図16は、温度別の調理物のビタミンC増加率のデータである。
【0031】
図10に示すように左側空間13における加熱室5の左側壁5aの外側であって、上段
部30aと下段部30bの間に位置して蒸気発生容器41(部品に相当)が配設されてい
る。
そして、図13に示すように、蒸気発生容器41は、正面側(図示右側)が開口してい
る凹状の容器本体42と、その開口を覆う容器カバー43とで構成され、容器本体42と
容器カバー43の間に容量が12ml程度の蒸気発生室41aが形成される。
これら容器本体42と容器カバー43は、例えば金属ダイカスト(例えばアルミダイカ
スト)から構成されている。
容器本体42の蒸気発生室41aの上下には棒状のシーズヒータからなる蒸気用ヒータ
44が2本鋳込まれている。この2本の蒸気用ヒータ44である第1の蒸気用ヒータ45
と第2の蒸気用ヒータ46は両端の端子が容器本体42から突出されており、電気的に独
立して電源101(図15参照)と接続されている。
また容器本体42の背面側(図示左側)には二点鎖線で示す給水口47が形成されてい
て、これに後述するパイプ55が取り付けられている。
また図12に示すように容器本体42の上部には蒸気発生容器41の温度を検出するサ
ーミスタ48が取り付けられている。
【0032】
一方、容器カバー43の上部には3個の筒状の蒸気吹出口49が横方向に並んで略等間
隔に形成されている。
蒸気吹出口49は容器カバー43を貫通しており、その右部は容器カバー43の右端面
から突出している。
また、蒸気発生室41aの内面を構成する容器本体42の左側部の右面には複数の放熱
フィン50が容器本体42と一体に形成されている。
放熱フィン50は、容器本体42の上部内面から下方に突出する2個の放熱フィン50
aと、各蒸気吹出口49の下部に位置する3個のコの字状の放熱フィン50bと、放熱フ
ィン50bよりも下方部に位置する2個のT字型の放熱フィン50cとから構成されてい
る。
また、放熱フィン50a〜50cの右端部は、容器本体42に容器カバー43を取り付
けたときに容器カバー43の内面に略当接するようになっている。
従って、図12の正面図に示すように放熱フィン50a〜50cにより蒸気発生室41
aの内部には迷路状に入り組んだ通路が形成される。
そして図13に示すように加熱室5の左側壁5aの内壁214bには、蒸気吹出口49
に対応する3個の蒸気開口部51が形成されている。また、加熱室5の左側壁5aの内側
には蒸気開口部51の周縁を覆うカバー部材52が取り付けられている。
このカバー部材52は、蒸気開口部51と連通する3個の筒状の蒸気口53を有してい
る。
【0033】
そしてこのように構成された蒸気発生容器41は、図13に示すように、加熱室左側壁
5aと所定の隙間を有して固定されており、この左側壁5aと蒸気発生容器41との間に
断熱材120を挟持して設けている。
この断熱材120は、蒸気吹出口49に位置する箇所は開口されて構成され、セラミッ
クファイバー製で形成されているため、蒸気発生容器41の熱を左側壁5aに伝わらない
ように伝熱を抑制する機能を有するものである。なお、断熱材120は、この外グラスフ
ァイバー製や、ロックウール製のものも考えられる。
また、これら蒸気発生容器41と断熱材120の組合せは、左側壁5aから連通される
金属製のネジ等の係止部材により固定されており、これら蒸気発生容器41と断熱材12
0は当該ネジ部121によってのみ左側壁5aの内壁214aに固定されている。
その固定方法は、容器カバー43と容器本体42とにネジ切が形成されており、断熱材
には、連通孔が形成されることにより、左側壁5aのネジ穴よりネジを挿入係止すること
で固定されている。そして奥方向に二つのネジにより固定されている(図14参照)。
【0034】
そしてこのように構成される蒸気発生容器41は、内壁214aに設けられ、内壁21
4aと外壁214bとで形成された2重構造の間に設置されているもので、外壁21の開
口部214d(空間部に相当)内に設置されている。
すなわちこの外壁214bは突部を環状に形成して成るものであって、その中心に開口
部214dが形成されるように構成されている。
従って、この外壁214bは外周端部と内周端部とにフランジ部214b1を有してお
り、これらの箇所で断熱材214cを介して内壁214aにネジ等で接続されるように構
成されている。
【0035】
一方、図10に示すように、加熱室5の下側空間14には水タンク54が配設されてい
る。水タンク54は約400mlの水を収容可能な大きさを有しており、外箱2に対して
着脱可能に構成されている。
外箱2に装着された水タンク54はパイプ55を介して蒸気発生容器41の給水口47
と接続される。パイプ55の途中には給水ポンプ56が接続されており、給水ポンプ56
が駆動されると水タンク54内の水は蒸気発生室41a内に供給されるようになっている

これら蒸気発生容器41、水タンク54、パイプ55、給水ポンプ56などから蒸気発
生装置80が構成されている。
【0036】
また加熱室5内には、蒸気を排出する排出口が設けられており(図示せず)、その排出
口は二重壁の外側に連通するダクトにつながることで加熱室5内の蒸気は、ダクトを介し
て加熱庫の外に排出されるように構成されている。
この蒸気排気構造は前記ダクト等の内部に排出口を開閉する排気ダンパが設けられてお
り、排気ダンパをダンパモータ78の駆動により回転駆動し蒸気の排出を制御できるよう
に構成されている。
【0037】
つづいて、電子レンジの電気的構成について説明する。
図15は、電子レンジの概略的な電気的構成を示すブロック図である。第1の実施例と
異なるところは、蒸気供給機構等が追加されている点である。
制御装置100には、操作パネル8の表示部10、マグネトロン16の駆動装置17が
接続されていると共に、蒸気発生装置80の蒸気用ヒータ44、及び給水ポンプ56が接
続されている。また蒸気排気構造のダンパモータ78も接続されている。
【0038】
また制御部100は、メモリー100aを有していて、加熱手段の制御方法のリストが
予め記憶されており、これらのリストは、階層化されて分かれ記憶されており、第1の階
層には、複数の加熱手段の「レンジ」「オーブン」「スチーム」「低温スチーム」と、「
お好み温度」がリスト項目として記憶されており、これら項目が設定されることにより予
めプログラムされた加熱手段が選択されて調理されるように構成されている。
このうちレンジ調理と、オーブン調理については、第1の実施例と同様である。
【0039】
その他、例えば調理方法の項目のうち「スチーム」の場合は、蒸気発生装置80による
高温スチームにより食品を加熱する調理方法「スチーム調理メニュー」が選択される。「
低温スチーム」の場合は、蒸気発生装置80からの蒸気の供給を制御することで加熱室内
の温度を100度C以下の蒸気環境下にして食品を加熱する調理方法「低温スチーム調理
メニュー」が選択される。なお「お好み温度」が選択されると、調理温度が設定できる状
態になる。
また、第1の階層の下位に位置する第2の階層は、加熱条件である調理温度を設定する
ためのリストで構成されていて、30度Cから250度Cまで1度間隔で設定可能として
いる。
なお第1の階層の他の領域には調理方法のリストである複数の料理メニューも記憶され
ており、そのうち、「低温スチーム」の下位層には、「ビタミンC増加」なる料理メニュ
ーが記憶されている。
またこの「ビタミンC増加」の下位層には、ほうれん草やパプリカなどの緑黄色野菜の
調理物が記憶され、それについての調理方法が記憶されている。
【0040】
次に、上記構成の電子レンジの作用について述べる。
まず、扉6を開け図示しない調理物を加熱室5内に収容載置し、後述するが使用者は調
理方法と加熱条件を決めて操作部9から「レンジ」、「スチーム」、「オーブン」「低温
スチーム」の調理方法や加熱時間、加熱設定温度などの加熱条件を入力操作する。
そして、操作部9のうちのスタートスイッチを操作して加熱開始を指示すると、制御装
置100は設定された調理方法や加熱条件に基づき予め設定された制御プログラムに従っ
てマグネトロン16や蒸気発生装置80、熱風循環機構60を駆動させて加熱調理を実行
する。
【0041】
ここでまず、加熱室5内に蒸気を供給しながら加熱調理を実行する調理メニュー(以下
、「スチーム調理メニュー」と称する)が設定された場合の動作について説明する。
これは、例えばケーキやシュークリームのシューを焼くためや、シューマイや肉まん等
の加熱調理に利用される。
「スチーム調理メニュー」の開始が指示されると蒸気用ヒータ44がオンされる。この
結果、蒸気発生容器41及が加熱される。そして、蒸気発生容器41に設置されているサ
ーミスタ48が蒸気発生室41aの温度を120度C以上に達したと判断したら、給水ポ
ンプ56を駆動して、水タンク54から蒸気発生容器41への給水を開始する。
蒸気発生容器41に給水ポンプ56により少量の水が供給されると、その水は蒸気発生
室41a内に落下し、瞬時に蒸発する。
この蒸気発生室41aで発生した蒸気は、蒸気吹出口49を通り、上段角皿31aと下
段角皿31bの間の蒸気開口部51から加熱室5内に放出される。このとき、蒸気吹出口
49及び蒸気口53が筒状であるため、蒸気は図10の矢印Sのように加熱室5の左壁部
に対して略垂直な方向に放出される。
そして加熱室5内に載置されている調理物に蒸気が当たり凝縮熱効果により調理物は加
熱される。
【0042】
またここで、蒸気発生装置80と熱風循環機構60を併用して過熱スチームを生成し、
この過熱スチームで調理物の加熱調理を実行する調理メニュー(以下、「過熱スチームメ
ニュー」と称する)が設定された場合の動作について説明する。
この過熱スチームメニューは例えば鳥の丸焼きや、ハンバーグの加熱等の加熱調理に利
用される。
まず、加熱室5内の上段部30aと下段部30bにそれぞれ上段角皿31a及び下段角
皿31bをセットする。
そして、上段角皿31a及び下段角皿31bに調理物を載置収容する。
次いで、操作パネル8の操作部9により「過熱スチーム調理メニュー」が選択されて、
スタート指示を受けると、制御装置100は所定のプログラムに基づいて指令を出す。
まず、熱風循環機構60の第1の熱風ヒータ63と第2の熱風ヒータ64に電力が供給
されると共にファンモータ66が駆動して、加熱室5内の予熱を行い、加熱室5内を10
0度Cに達するまで加熱する。
つづいて、蒸気発生装置80の蒸気用ヒータ44を発熱させ120度Cまで蒸気発生室
41aを高温にする。そして給水ポンプ56を駆動させて、蒸気発生室41aへの給水を
開始する。このとき、制御装置100は所定容量の水が間欠的に、例えば2秒おきに蒸気
発生室41aに供給されるように給水ポンプ56を駆動させ、1回当たりの給水量は「過
熱スチーム調理メニュー」の種類に応じて制御する。例えばケーキやシュークリームのシ
ューを焼くための「過熱スチーム調理メニュー」が設定されたときの1回当たりの給水量
は0.5mlに、シューマイや肉まん等の「過熱スチーム調理メニュー」が設定されたと
きの1回当たりの給水量は1.0mlにそれぞれ設定されている。
そして、120度Cまで温度上昇している蒸気発生容器41に少流量の水が供給される
ことにより、その水は蒸気発生室41a内に落下し、瞬時に蒸発し、蒸気吹出口49に至
った蒸気は、蒸気吹出口49を通り、蒸気口53から加熱室5内に放出される。
加熱室内に充満した蒸気は、加熱室5の後壁5cに位置する吸入口67から熱風循環機
構60に吸入され、熱風循環機構60内で、蒸気は熱風ヒータ62により過熱される。
そして、蒸気は過熱され温度が上昇していき、飽和温度以上の過熱スチームとなる。
この飽和温度以上の過熱スチームは、加熱室5の後壁5cの吹出口68から加熱室5内へ
吹出され調理物に満遍なく過熱スチームが行き渡るようになり、過熱スチーム調理をする
ことができる。
またこれら調理方法の調理時間が終了すると、夫々の加熱手段がオフされ、制御装置1
00によりダンパモータ78が回転駆動し、排出口が開放される。これにより、加熱室5
内の熱風、蒸気、過熱スチームは排出口から排気されダクトを介して外箱2外に排気され
ることで調理が完了する。
【0043】
ここで調理方法として「低温スチーム」が選択されて、「ビタミンC増加」なる料理メ
ニューが選択された場合(以下、「ビタミンC増加メニュー」と称する)について説明す
る。
この「ビタミンC増加」なる料理メニューは、メモリー100aに記憶されている調理
物のビタミンC増加方法を実行することで、調理物のビタミンCを増加させつつ調理する
という使用者の健康を考えた料理メニューであり、この「ビタミンC増加」メニューを選
択した後に、メモリー100aに記憶されている食材を選択してスタートをさせることに
よって実行される。
ここでは、ビタミンCを増加させる調理物として、緑黄色野菜であるほうれん草を使っ
た調理方法について説明する。
【0044】
まず、加熱室内5の下段部30bに、角皿31bを支持載置し、ほうれん草をその下角
皿31bに広げて載置する。
そして、「低温スチーム」―「ビタミンC増加」―「ほうれん草」を操作部9により選
択し、スタートをする。
すると、制御装置100は、メモリー100aに記憶された「ほうれん草のビタミンC
を増加させる調理方法プログラム」に基づいて実行する。
まず、蒸気用ヒータ44がオンされて、蒸気発生容器41が加熱される。
【0045】
そして、蒸気発生容器41に設置されているサーミスタ48が蒸気発生室41aの温度
が120度Cに達したと判断したら、給水ポンプ56を駆動して、水タンク54から蒸気
発生容器41への給水を開始する。
蒸気発生容器41に給水ポンプ56により少量の水が供給されると、その水は蒸気発生
室41a内に落下し、瞬時に蒸発する。
この蒸気発生室41aで発生した蒸気は、蒸気吹出口49を通り、加熱室5内に放出さ
れる。そして、制御装置100は、加熱室5内の温度が40度Cになるまで、連続して蒸
気を加熱室5内に供給し、加熱室内を略飽和蒸気の状態とする。
【0046】
そして、加熱室内の温度が40度Cに到達したと、温度センサ19が検知したとき、蒸
気発生室41aの温度と、蒸気の供給を可変的に切り替えて、加熱室内を40度Cに維持
し、且つ略飽和蒸気の状態を維持するように制御することで、ほうれん草は40度Cの略
飽和蒸気の環境下で、凝縮熱効果により調理物が調理される。
そして、温度センサ19が40度Cを検知してから、例えば10分経過したときに、蒸
気供給を停止し、蒸気排気機構であるダンパモータ78を駆動して排気口を開き、蒸気を
加熱室外に放出する。
以上のような「ビタミンC増加」メニューを実行することによりほうれん草のビタミン
Cの含有率を大きく増加することができる。
【0047】
このビタミンCを増加させる調理方法は、予め実験によって判明したデータに基づいて
行われている方法であり、その実験データの一例を図16に示す。
図16は、ほうれん草40gを蒸気を加熱室に供給した状態で各種調理温度を変えてビ
タミンCの増加率を測定したデータグラフであって、調理前のビタミンC含有量を1とし
ている。縦軸がビタミンCの増加率を示しており、横軸が調理時間を示している。なお、
ここでのビタミンCは還元型ビタミンCのデータである。
この実験データを見ると、調理温度が20度Cから35度Cの条件、及び調理温度が5
0度Cから100度Cの条件でも、ビタミンC含有量は、調理前に比べて減少しているこ
とがわかる。
その中で、調理温度が40度C、45度Cの条件については、加熱開始後、すぐにビタ
ミンCの含有量が増加していることがわかる。そして、徐々に増加し、調理開始後10分
経過したときに、ビタミンCは、40度Cでは1.25倍、45度Cでは1.3倍まで増
加して極大値を向かえ、その後急激に減少していくことがわかる。
【0048】
これによれば、この調理条件では、調理前のほうれん草のビタミンC含有量に比べて、
1.25倍、1.3倍のビタミンCを含有したほうれん草ができあがることを示している

【0049】
すなわちこの実験データによれば、ほうれん草では、ある所定の温度雰囲気中で低温ス
チーム加熱調理すると、ビタミンCが増加する現象が起こり、またその所定温度雰囲気で
加熱を維持し、所定の時間が経過するときにビタミンCが急激に増加する現象が起こるこ
とがわかる。
このようなビタミンCを増加させる調理方法は、所定の温度帯が低温であることと、そ
の温度帯で所定時間ほど維持することが重要であることが分かっている。
そのため、「ビタミンC増加」メニューのプログラムをこのような実験データに基づい
て、蒸気を供給して所定の雰囲気温度で加熱し、ビタミンCが極増加した時に調理を停止
するように設定することにより、ビタミンC含有量が最大となった時にほうれん草を取り
出すことができる。
したがって、この状態のほうれん草を使用者が食することにより、調理前のほうれん草
に比べて、ビタミンCが増加したほうれん草を食することができ、使用者にとってヘルシ
ーな調理物を提供することができる。
【0050】
以上のような調理を行うに際し、いずれの調理方法に関しても、加熱室側壁を2重構造
にしたことにより調理室5を断熱することで保温することができ、さらに調理物の加熱ム
ラを抑制することができる。
【0051】
特に前述した低温スチーム調理をする際は、効果的に加熱ムラを抑えることができる。
2重構造に加えて、左側壁5aの2重構造の加熱室5側壁と蒸気発生容器41との間に断
熱材が挟持されているので、蒸気発生容器41から側壁への熱の伝達も防止することがで
きるため、加熱室内の加熱室5内の温度分布に不平衡が生じることも防止することができ
る。
また、加熱室5内を100℃以下の低い温度に維持してコントロールする調理において
は、加熱室5内の温度分布は、加熱室5内の蒸気発生容器41側の温度が高く、逆に蒸気
発生容器41の反対側の温度が低くなるような温度勾配が生じてしまうことがあったが、
この断熱材120により、効果的に加熱室5内の温度分布に不平衡が生じることも防止で
きる。
【0052】
そして加熱室の側壁を2重構造にしたので、内部の空気が断熱層となりるため断熱効果
が高く、外気が加熱室5内に影響して冷却されることが抑制できる。
特にその空気層は略密閉構造となり空気の対流がないため効果的に断熱することができ
る。
【0053】
また外壁214bの熱容量を大きくする為に、本実施例においても外壁214bの板厚
を内壁214aの板厚に比して厚くしており、外壁214bの熱容量がおおきくなり、実
施例1に記載した効果同様に効果的に断熱をすることができる。
なお、外壁214bの熱容量を大きくする為には他に外壁214bを樹脂製にすること
も考えられ、さらに外壁214bと内壁214aの材料が同じ場合、外壁214bの体積
を内壁214aより大きくすることによっても熱容量を大きくすることができる。
【0054】
また、2重壁の外壁214bと内壁214aとの間のみに断熱材214cを介して接続
したため、断熱材214cを大量に使用しなくて良く、安価に設計できる効果とともに、
内壁214aから外壁214bへの伝熱を効果的に防ぐことができ、加熱室5内の温度を
維持することができる。
【0055】
また低温スチーム調理をする場合においては、温度制御が困難であったが、このように
加熱室の側壁を2重構造にしたため、加熱室内を断熱することができ、低温のスチーム調
理においても、加熱室5の温度変化が少なくでき、所望の温度帯を維持して調理すること
ができる。
特に上記した低温調理におけるビタミンCを増加させる調理を行う場合には、温度管理
が重要であり、所定の温度帯を維持しなくてはならないので、このように加熱ムラを抑制
する本発明は温度を一定に制御する調理をする場合には、非常に有効である。
【0056】
また、本実施例は、蒸気供給手段である蒸気発生容器41(を加熱室5の左側壁5aに
ネジ部120により固定し、この蒸気発生容器41は、外壁214bの開口部214d内
に取り付けられるようにしている。そのため、外壁214bを取り外すことなく蒸気発生
容器41を取り外すことができ、メンテナンス容易となる。
またこの場合、開口部と蒸気発生容器41との隙間にも断熱材を設けるとより断熱効果
が増加する。
【0057】
またこの他の例として、図17のように外壁214bの外部にさらに外壁214bを覆
う覆い壁215を設けても良い。
これによれば、内壁214aと外壁214b、外壁214bと覆い壁215との間に2
重に空気の断熱層ができるので、より高い断熱を図ることができる。
【0058】
また本実施例では、蒸気発生容器41は、環状の中央の開口部214bに設けたが、こ
の他、外壁の外周端部から切り欠くことで形成した空間部に設けても良い。
【0059】
また、外壁214bの空間部内であって、内壁214aに設けられた部品は、加熱室内
に所定の動作を及ぼすような部品であればよく、蒸気発生容器41の他に、例えば加熱室
内に排気口やその排気ダンパのような動作をする部品でもよい。またこの他、当該部品は
、加熱室内の状態を検知するような部品でもよく、赤外線温度センサ等の各種センサなど
でも良い。
当該部品は、内壁214aに設けることでその機能が果たすことができ、外壁214b
に設ける場合は機能が損なわれる部品であればよい。
すなわち、そのような部品を本実施例の構成で内壁214aに設けたため、外壁214
bを設けるとその外側に部品を設けるしかなくその部品の機能を果たすことができない問
題を解決でき、当該部品の機能を果たすことができるという効果を有している。そして上
記したように部品のメンテナンスの面においても有効である。なお、勿論内壁214bと
当該部品との間に介在物があってもよい。
その他、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、外壁214bの外面に断熱材
を貼付したり、内壁214aと外壁214bとの間には、ヒータ等を設けるなど、実施に
際して本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明を適用した電子レンジの扉を閉塞した状態の正面図。
【図2】電子レンジの扉を開放した状態を示す正面図。
【図3】電子レンジの縦断正面図。
【図4】電子レンジの横断平面図。
【図5】電子レンジの縦断側面図。
【図6】電気的構成図
【図7】本実施例と従来例との比較を示す実験データ。
【図8】第2の実施例の図3相当図
【図9】第3の実施例の図2相当図
【図10】第3の実施例の図3相当図
【図11】第3の実施例の図4相当図
【図12】蒸気発生容器41の縦断正面図。
【図13】蒸気発生容器41の縦断側面図。
【図14】第3の実施例の図5相当図
【図15】第3の実施例の図6相当図
【図16】温度別の調理物のビタミンC増加率のデータ
【図17】他の実施形態の図3相当図
【符号の説明】
【0061】
1は本体、2は外箱、3は脚部、4は内箱、4aは内壁、4bは外壁、4b1はフランジ
部、4cは断熱材、5は加熱室、5aは左側壁、5bは右側壁、5cは後壁、5dは前面
開口部、5e上側壁、6は扉、7は手掛け部、8は操作パネル、9は操作部、10は表示
部、11は扉ロックスイッチ、12は右側隙間空間、13は左側隙間空間、14は下側隙
間空間、15は機械室、16はマグネトロン、17は駆動装置、18は導波管、19は温
度センサ、30は段部、30aは上段部、30bは下段部、31は角皿、31aは上段角
皿、31bは下段角皿、40は上側隙間空間、41は蒸気発生容器、41aは蒸気発生室
、44は蒸気用ヒータ、47は給水口、48はサーミスタ、49は蒸気吹出口、52はカ
バー部材、53は蒸気口、54は水タンク、55はパイプ、56は給水ポンプ、60は熱
風循環機構、61は熱風ファン、62は熱風ヒータ、63は第1の熱風ヒータ、64は第
2の熱風ヒータ、65はケーシング、66はファンモータ、67は吸入口、68は吹出口
、80は蒸気発生装置、100は制御装置、101は電源、114aは内壁、114bは
外壁、114cは断熱材、120は断熱材、121はネジ部、214aは内壁、24bは
外壁、214cは断熱材、215は覆い壁を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱型の本体内に加熱室の空間を有し、この加熱室内を加熱するヒータ加熱手段を有する
加熱調理器において、
前記加熱室を形成する少なくとも一つの壁は、
内壁と外壁が2重構造に形成されて、内壁と外壁の間は空気が封入されることで構成され

外壁は、内壁に比して熱容量が大きく構成されることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
外壁は内壁に比べて厚さが大きいことを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
外壁は内壁に比べて比熱が大きい材料で構成することを特徴とする請求項1または請求
項2記載の加熱調理器。
【請求項4】
内壁と外壁は、断熱材を介して接続されることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載
の加熱調理器。
【請求項5】
加熱室は、
内壁に断熱材を介して外壁が接続される二重構造の壁(以下、断熱材介在壁と称す)を
有する面に隣合う少なくとも一つの隣接面に二重構造の壁を有し、
前記断熱材介在壁は、内壁に断熱材を介して接続される接続部を外壁に有し、
前記隣接面の二重構造壁は、前記接続部に固定されることを特徴とする請求項4記載の
加熱調理器。
【請求項6】
2重構造に形成される壁の内壁外側に部品を設け、
外壁は、この部品が位置する箇所に空間部を有することを特徴とする請求項1乃至請求
項5記載の加熱調理器。
【請求項7】
外壁の外面に断熱材を貼付することを特徴とする請求項1乃至請求項6記載の加熱調理
器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−107070(P2008−107070A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59987(P2007−59987)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューママーケティング株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝家電製造株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】