説明

加熱調理器

【課題】ふきこぼれの誤検知を低減することができる加熱調理器を得る。
【解決手段】ふきこぼれ検知手段7は、透過部を透過する第1波長の光と、透過部を透過し、かつ、第1波長の光より水に対する透過率が高い第2波長の光と、を発光する発光手段8、9と、透過部から入射された、第1波長および第2波長の光を検出する光検出手段10と、を有し、制御部16は、光検出手段10による第1波長の光の検出値が第2波長の光の検出値より小さい場合、ふきこぼれが発生したと判定するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱物のふきこぼれを検知する加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術においては、例えば、「前記トッププレートの下に設けられた電極と、この電極と所定電位との間の静電容量を計測する静電容量測定手段と、を備え、前記制御回路は、前記加熱コイルを駆動中に前記電極と所定電位との間の静電容量が所定値よりも増加した場合、ふきこぼれが発生したと判定することを特徴とする誘導加熱調理器。」が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、例えば、「前記静電容量検出部は、前記被調理物が前記基準電位に接続された前記トッププレート上にふきこぼれ、前記被調理物に含まれる水分が誘電体として機能し、前記被調理物のふきこぼれの量の増加によって前記電極と前記基準電位との容量結合による接続がより強まることを利用して、前記電極の静電容量の変化を検出する、加熱調理器。」が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−159494号公報(請求項18)
【特許文献2】WO2010/084752号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、電極の静電容量によりふきこぼれの発生を検出しているため、電極上に載置されたものが水(内容物)であるか鍋や人体などの誘電率の異なる材質のものであるか分からない。このため、電極上に鍋が載置された場合でも静電容量が変化し、ふきこぼれを誤検知する、という問題点があった。
【0006】
また、水が電極上にふきこぼれた場合、電極上に水が占める割合により静電容量の検出値が異なる。このため、静電容量の変化量を用いてふきこぼれを検知する方法では、ふきこぼれた後の水の広がりが緩やかな場合には、ふきこぼれを検知することができず、または検知するタイミングが遅くなる、という問題点があった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、ふきこぼれの誤検知を低減することができる加熱調理器を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る加熱調理器は、少なくとも所定波長の光を透過させる透過部を形成した天板と、前記天板の下方に設けられ、前記天板に載置された被加熱物を加熱する加熱手段と、前記透過部の下方に設けられ、前記透過部に向けて光を発光し、該透過部から入射された光を検出するふきこぼれ検知手段と、前記ふきこぼれ検知手段の検知結果に基づき、前記加熱手段を制御する制御手段と、を備え、前記ふきこぼれ検知手段は、前記透過部を透過する第1波長の光と、前記透過部を透過し、かつ、前記第1波長の光より水に対する透過率が高い第2波長の光と、を発光する発光手段と、前記透過部から入射された、前記第1波長および前記第2波長の光を検出する光検出手段と、を有し、前記制御手段は、前記光検出手段による前記第1波長の光の検出値が前記第2波長の光の検出値より小さい場合、ふきこぼれが発生したと判定するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、第1波長の光と、第1波長の光より水に対する透過率が高い第2波長の光とを発光し、透過部から入射された、第1波長および第2波長の光を検出する。そして、第1波長の光の検出値が第2波長の光の検出値より小さい場合、ふきこぼれが発生したと判定する。このため、ふきこぼれの誤検知を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態1における加熱調理器を示す上面図である。
【図2】実施の形態1における加熱調理器を示す横断面概念図である。
【図3】実施の形態1におけるふきこぼれ検知手段の構成図である。
【図4】水の吸収スペクトルを示した図である。
【図5】実施の形態1に用いている天板の透過特性図である。
【図6】可視光領域カットオフ塗料の透過特性図である。
【図7】実施の形態1におけるふきこぼれ検知手段によるふきこぼれ検出時出力説明図である。
【図8】代表的な物質の屈折率である。
【図9】実施の形態1におけるふきこぼれ検知手段操作部側配置図である。
【図10】実施の形態1におけるふきこぼれ検知手段加熱コイル間の配置図である。
【図11】実施の形態1におけるふきこぼれ検知手段排気口側配置図である。
【図12】実施の形態2におけるふきこぼれ検知手段構成図である。
【図13】実施の形態3におけるふきこぼれ検知手段構成図である。
【図14】実施の形態4におけるふきこぼれ検知手段構成図である。
【図15】実施の形態6における加熱調理器を示す上面図である。
【図16】実施の形態6における加熱調理器を示す横断面概念図である。
【図17】実施の形態6におけるふきこぼれ検知手段の構成図である。
【図18】実施の形態7における加熱調理器を示す上面図である。
【図19】実施の形態8における加熱調理器を示す上面図である。
【図20】実施の形態8におけるスリット部の他の形状を示す図である。
【図21】実施の形態9における加熱調理器を示す上面図である。
【図22】実施の形態9におけるスリット部の他の形状を示す図である。
【図23】実施の形態10におけるスリット部の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
(全体構成)
本実施の形態においては加熱調理器として、誘導加熱を行うIHクッキングヒータを一例に説明を行う。
図1は実施の形態1における加熱調理器を示す上面図である。
図2は実施の形態1における加熱調理器を示す横断面概念図である。
図3は実施の形態1におけるふきこぼれ検知手段の構成図である。
図1〜図3に示すように、誘導加熱調理器は、本体1と、本体1の上に設けられ、鍋などの被加熱物11が載置される天板2と、天板2の下方に設けられ、天板2に載置された被加熱物11を加熱する加熱コイル12と、インバータ回路により構成され加熱コイル12に高周波電流を供給し、加熱コイル12を駆動する駆動部17と、駆動部17の動作を制御して被加熱物11への投入電力(出力)を制御する制御部16と、被加熱物11から放射される赤外線を検出し、赤外線量から鍋の温度を検出する赤外線温度検知手段13と、天板2の下面と接触し、該天板2の温度を検出する接触式温度検知手段14と、使用者からの操作を入力する操作部3と、動作状態や操作部3からの入力・操作内容等を表示する表示部4と、を備えている。
また、天板2の下方には、天板2の透過部(後述)に向けて、水に対する透過率が異なる複数の光を発光し、該透過部から入射された反射光を検出するふきこぼれ検知手段7と、このふきこぼれ検知手段7の検知結果に基づき、被加熱物11からの水を主体とする内容物のふきこぼれの発生を判定する検知部15と、を備えている。なお、ふきこぼれ検知手段7の詳細および配置位置については後述する。
また、本体1の上面後方には、本体1内部と連通し、本体1内部に冷却風を取り込むための吸気口6と、本体1内部に取り込んだ冷却風を排出するための排気口5とが設けられている。
【0012】
なお、「操作部3」は、本発明における「操作手段」に相当する。
なお、「加熱コイル12」は、本発明における「加熱手段」に相当する。
なお、「検知部15」および「制御部16」は、本発明における「制御手段」に相当する。
なお、本体1の手前側に配置した2つの加熱コイル12は、内コイルと外コイルとを同心円状に配置した比較的加熱出力が大きい加熱口を構成している。また、本体1の中央後方側に配置した加熱コイル12は、比較的加熱出力が小さい加熱口を構成している。
なお、本発明はこれに限るものではなく、任意の数の加熱コイル12を配置することができる。
なお、本実施の形態では、加熱コイル12に高周波電流を供給して誘導加熱を行う誘導加熱調理器について説明するが、本発明はこれに限るものではない。例えば、輻射によって加熱する輻射型熱源を用いる電気ヒータ(例えばニクロム線やハロゲンヒータ、ラジエントヒータ)を加熱手段として用いるようにしても良い。
【0013】
(天板2およびふきこぼれ検知手段7の構成)
天板2は、例えばネオセラムのような耐熱性のガラス等の素材により構成され、所定の波長帯の光を透過する。また、天板2の下面には、塗料の塗布または印刷等により天板下面塗装21a、21bが施されている。
天板下面塗装21aは、本体1内の構成部品の目隠しやデザイン性の向上のため、可視光を透過しない塗料を塗布し、内部構造物が見えないようにするためのものである。
天板下面塗装21bは、ふきこぼれ検知手段7の上方の位置に形成され、所定の波長帯における光の透過率が高い塗料等を用いている。この天板下面塗装21bと天板2とにより、所定波長の光を透過させる透過部を構成している。なお、波長については後述する。
なお、本実施の形態においては、天板2の下面に天板下面塗装21a、21bを施す場合を説明するが、本発明はこれに限らず、天板2の上面にさらに塗装を施すようにしても良いし、上面のみに塗装を施すようにしても良い。この場合においてもふきこぼれ検知手段7の上方の位置の塗装については、所定の波長帯の光の透過率が高い塗料を用いる。
【0014】
ふきこぼれ検知手段7は、それぞれ異なる波長帯にピーク波長を有する光を発光する発光手段8、9と、入射した光の光量を検出する光検出手段10とを有している。
発光手段8、9は、例えば発光ダイオード(LED)またはレーザーダイオード(LD)などの発光波長が狭帯域の発光素子により構成され、それぞれ水に対する透過率が異なる波長帯にピーク波長を有している。また、発光手段8、9は、天板2の透過部に対する光の入射角が、所定角度となるように配置されている。以下、発光手段8が発光する光のピーク波長を「第1波長」と称し、発光手段9が発光する光のピーク波長を「第2波長」と称する。
【0015】
光検出手段10は、天板2の透過部から入射された光を検出する位置に配置されており、入射された光のエネルギー(光量)に応じた出力値(例えば電圧)を出力する。光検出手段10は、例えばフォトダイオードにより構成され、発光手段8、9のピーク波長に感度を有している。また例えば、光検出手段10は、発光手段8、9の波長帯に関係なく全波長帯に対して感度を有するサーモパイルを用いても良い。
【0016】
また、発光手段8、9、および光検出手段10は、同一のケースに取り付けし、発光手段8、9の上方(天板2の透過部)に被加熱物11が載置された際に、透過部を透過した光が反射し、該反射光が光検出手段10に入射するよう設置角度を所定の角度にて管理している。
【0017】
なお、本実施の形態においては、それぞれピーク波長が異なる2つの発光手段8、9を備える場合を説明するが、本発明はこれに限るものではない。例えば、複数の波長帯にピーク波長成分を有する多波長LEDを用いても良い。また、後述する波長帯ごとに2つ以上の発光手段を設けるようにしても良い。
なお、ふきこぼれ検知手段7は、後述するように水に対する透過率が異なる光の検知結果によりふきこぼれを検出するため、発光手段8、9が発光する光は、LEDやLDのように、発光波長を絞って発光することが可能な素子を使用することが望ましい。
【0018】
(波長の説明)
次に、発光手段8、9が発光する光の波長について説明する。
発光手段8、9が発光する光は、それぞれ、天板2および天板下面塗装21b(透過部)を透過する波長帯にピーク波長を有する。
また、発光手段9が発光する第2波長の光は、発光手段8が発光する第1波長の光より水に対する透過率が高い波長帯の光である。
このような水の透過率および天板2の透過率の一例について図4、図5により説明する。
【0019】
図4は水の吸収スペクトルを示した図である。
図5は実施の形態1に用いている天板の透過特性図である。
図4に示すように、水に対する光の透過率が低く、光が水に吸収され易い波長帯は、1.3〜1.5μm、1.8〜2.0μm、2.5〜3.0μmの波長帯である。
また、水に対する光の透過率が高く、光が水に吸収され難い波長帯は、0.5〜1.3μm、1.5〜1.8μm、2.0〜2.5μmの波長帯である。
図5に示すように、天板2に対する光の透過率が高い波長帯は、0.5〜2.85μm、3.0〜4.5μmの波長帯である。
【0020】
上記の例では、水の透過率と天板2の透過率を考慮して、発光手段8が発光する第1波長の光(水に吸収され易い光)として、1.3μm以上1.5μm未満、1.8μm以上2.0μm未満、または、2.55μm以上2.85μm未満の範囲にピーク波長を有する光を発光する。例えば、発光手段8は、1.470μmにピーク波長を有するLEDを用いる。
また、発光手段9が発光する第2波長の光(水に吸収され難い光)として、0.5μm以上1.3μm未満、1.5μm以上1.8μm未満、または、2.0μm以上2.5μm未満の範囲にピーク波長を有する光を発光する。例えば、発光手段9は、0.700μmにピーク波長を有するLEDを用いる。
【0021】
(天板2の塗装)
前述の通り、発光手段8、9の発光波長帯は、天板2の透過率、水の吸収スペクトルより限定されているが、天板2下面または上面の塗装の透過特性も発光波長を透過する特性を有する必要がある。
このため、天板2の天板下面塗装21bは、第1波長および第2波長の光を略透過する塗料等を用いる。例えば、天板2の天板下面塗装21bは、天板2の透過特性を考慮し、0.5〜4.5μmの間で透過率が高い塗料等を用いる。
但し、一概に天板2の透過波長のすべてにおいて高くある必要はなく、前記波長帯の間で特に使用する2つの発光手段8、9のピーク波長帯において透過率が高ければよい。
例えば、第1波長に1.470μm、第2波長に0.700μmにピーク波長を有する発光手段を用いた場合は、当該波長帯に透過率の高い特性を有する塗料を用いればよい。
【0022】
なお、例えば0.700μmなどの可視光帯の波長を用いた場合に、天板2下面の塗料に前記波長帯を透過する塗料を用いると、本体1の内部の構造物が使用者に見えてしまうことになる。
そこで、発光手段8、9が発光する光は、可視光を外した波長帯を用いて、天板2の天板下面塗装21bとしては、可視光帯の波長をカットする塗料を塗布し、内部構造物が見えなくなるようにしても良い。
例えば図6に示した塗料の透過特性は、可視光領域を透過しない可視光領域カットオフ塗料の特性であり、この場合は可視光領域を外した波長帯にピークを有する波長を発光する発光手段を用いる。
【0023】
(加熱動作)
次に、本実施の形態における加熱調理器の動作について説明する。
まず、使用者は被加熱物11を加熱するため、天板2上に被加熱物11を載置し、操作部3により所望の火力で調理を行うよう火力を設定し、加熱開始のスイッチ等を押下する。
制御部16は、操作部3から加熱開始の指令が入力されると、駆動部17のインバータの出力を決定し高周波電流を加熱コイル12へ流す。そして、加熱コイル12に高周波電流が流れることで、天板2上に載置された被加熱物11に誘導電流が流れ、被加熱物11自身が抵抗発熱より発熱する。発熱により、被加熱物11内部に装填された食品や水、油等の内容物が熱伝導により加熱される。
【0024】
被加熱物11が加熱されると、被加熱物11の熱が天板2へと熱伝導する。接触式温度検知手段14は、天板2に伝導した熱を天板温度として検出し、制御部16に入力する。
また、加熱コイル12下方に設置されている赤外線温度検知手段13は、被加熱物11の底から放射され、天板2を透過した赤外線を捉え、その赤外線量に応じた出力を制御部16に入力する。
制御部16は、接触式温度検知手段14および赤外線温度検知手段13が検出した温度に応じて、駆動部17を制御して指定火力となるように電力制御を行う。
【0025】
このような加熱調理において、例えば素麺やパスタなどの麺類を茹でる際に、調理温度が高く、火力が強い場合には鍋から湯などの内容物がふきこぼれてしまうことがある。
加熱調理中において検知部15は、ふきこぼれ検知手段7の検知結果に基づき、ふきこぼれ検知手段7の上方の天板2に、水を主体とする被加熱物11の内容物の載置を検知してふきこぼれの発生を判定する。
制御部16は、検知部15が、ふきこぼれが発生したと判定した場合、駆動部17の動作を停止させるか、または駆動部17を制御して加熱コイル12に流す電流を減らして出力を低下させる。
【0026】
(ふきこぼれ検知動作)
次に、ふきこぼれ検知手段7によるふきこぼれ検知の動作の詳細について説明する。
図7は実施の形態1におけるふきこぼれ検知手段によるふきこぼれ検出時出力説明図である。
図7(i)は、水を主体とする被加熱物11の内容物30が、ふきこぼれ検知手段7の上方(天板2の透過部)に載置された状態を示している。
図7(ii)は、鍋などの被加熱物11が、ふきこぼれ検知手段7の上方(天板2の透過部)に載置された状態を示している。
図7(iii)は、ふきこぼれ検知手段7の上方(天板2の透過部)に載置物がない状態を示している。
また、図7の(i)〜(iii)の上段(a)は、発光手段8が第1波長の光(水に吸収され易い光)を発光する状態を示している。
また、図7の(i)〜(iii)の中段(b)は、発光手段9が第2波長の光(水に吸収され難い光)を発光する状態を示している。
さらに、図7の(i)〜(iii)の下段は、上記(a)(b)における光検出手段10の出力値(電圧V)とその出力タイミングを示している。
なお、本実施の形態においては、発光手段8、9は、第1波長の光の光量と、第2波長の光の光量とを略同一とし、第1波長の光と第2波長の光とを交互に発光する。
【0027】
(i)水載置
図7(i)に示すように、ふきこぼれの発生により、ふきこぼれ検知手段7の上方に水を主体とする内容物30が載置された場合、(a)発光手段8からの第1波長の光(水に吸収され易い光)は、そのほとんどが、水を主体とする内容物30に吸収され、透過・反射はほとんど起きない。このため、第1波長の光は、光検出手段10にはほとんど入射しない。
【0028】
一方、(b)発光手段9からの第2波長の光(水に吸収され難い光)は、水を主体とする内容物30には吸収されず、一部は内容物30を透過して天板2の上方に抜けていく。また第2波長の光の一部は、天板2と水との境界面と、水と空気との境界面とにおける屈折率の違いから反射する。
ここで、天板2(ガラス)、水、空気の代表的な屈折率をそれぞれ図8に示す。
図8に示すように、屈折率の関係は、ガラス>水>空気となり、屈折率が大きい方から小さい方へ光が境界を越えると反射が生じる。このため、内容物30(透過部)への光の入射角が、臨界角よりも小さい所定角度となるように発光手段9を配置することで、第2波長の光は、水を主体とする内容物30で透過・反射を行い、反射光が光検出手段10へと入射する。
これにより、ふきこぼれにより水を主体とする内容物30が、ふきこぼれ検知手段7の上方に載置されている場合、光検出手段10による(a)第1波長の光の検出値が、(b)第2波長の光の検出値より小さくなる。
このため、検知部15は、光検出手段10による第1波長の光の検出値が第2波長の光の検出値より小さい場合、ふきこぼれが発生したと判定する。例えば、発光手段8の発光タイミング(a)での検出値が閾値未満であり、発光手段9の発光タイミング(b)での検出値が閾値以上である場合、ふきこぼれの発生を判定する。
【0029】
なお、ここでは、検出値の大小によりふきこぼれの発生を判定したが、本発明はこれに限るものではない。上述のように第1波長の光はほとんど反射されないため、発光タイミング(a)(b)での出力の有無によりふきこぼれを判定するようにしても良い。
【0030】
(ii)鍋載置
図7(ii)に示すように、鍋などの被加熱物11が、ふきこぼれ検知手段7の上方に載置された場合、(a)発光手段8からの第1波長の光は、そのほとんどが被加熱物11の底面で反射し、光検出手段10に入射する。
また、(b)発光手段9からの第2波長の光も、そのほとんどが被加熱物11の底面で反射し、光検出手段10に入射する。
これにより、鍋などの被加熱物11が、ふきこぼれ検知手段7の上方に載置されている場合、光検出手段10による(a)第1波長の光の検出値と、(b)第2波長の光の検出値とは略同じ値となる。
このため、検知部15は、光検出手段10による第1波長の光の検出値と第2波長の光の検出値とが略同じ値である場合、ふきこぼれが発生していないと判定する。例えば、発光手段8の発光タイミング(a)での検出値と、発光手段9の発光タイミング(b)での検出値と差分が、閾値以下である場合には、ふきこぼれが発生していないと判定する。
【0031】
なお、上記説明では、第1および第2波長の光が共に被加熱物11の底面で反射する場合を説明したが、被加熱物11の材質によっては光を吸収する場合もある。この場合でも、第1および第2波長の光がともに反射せず光検出手段10に入射しないので、第1波長の光と第2波長の光の検出値は略同じ値となり、ふきこぼれが発生していないと判定できる。
【0032】
(iii)載置なし
図7(iii)に示すように、ふきこぼれ検知手段7の上方に載置物がない場合、(a)発光手段8からの第1波長の光、および、(b)発光手段9からの第2波長の光は、共に天板2の透過部を透過して、天板2の上方に抜けていく。
これにより、ふきこぼれ検知手段7の上方に載置物がない場合、光検出手段10による(a)第1波長の光の検出値、および、(b)第2波長の光の検出値は、略ゼロとなる。
このため、検知部15は、光検出手段10による第1波長の光の検出値と第2波長の光の検出値とが略同じ値である場合、ふきこぼれが発生していないと判定する。例えば、発光手段8の発光タイミング(a)での検出値と、発光手段9の発光タイミング(b)での検出値と差分が、閾値以下である場合には、ふきこぼれが発生していないと判定する。
【0033】
なお、上記の説明では、第1波長の光の光量と、第2波長の光の光量とを略同一とし、第1波長の光と第2波長の光とを交互に発光することで、波長の異なる光を交互にパルス状に照射する場合を説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、第1および第2の波長の光を同時に照射して、光検出手段10に入射された光の波長成分とその大きさを検出することで、ふきこぼれの発生を判定するようにしても良い。
また、第1波長の光の光量と、第2波長の光の光量とが異なるようにしても良い。この場合には、例えば、第1波長の光の照射光に対する反射光の割合が、第2波長の光の照射光に対する反射光の割合より小さいとき、ふきこぼれの発生を判定する。
【0034】
また、上記の説明では、水に対する透過率が異なる2つ光を発光してその反射光を検知する場合を説明したが、本発明はこれに限らず、水に対する透過率が異なる3つ以上の光(波長成分)を発光するようにしても良い。この場合にも、各波長の反射光の出力値を比較することで、ふきこぼれの発生を検知することができる。また、照射する光のピーク波長の数を増やすことで、例えば一部のピーク波長についての鍋に対する透過率と水に対する透過率が近似する場合でも、その他の波長の光を用いてふきこぼれの発生を検知することができ、検知精度をさらに向上することができる。
【0035】
以上のように本実施の形態においては、天板2の透過部を透過する第1波長の光と、透過部を透過し、かつ、第1波長の光より水に対する透過率が高い第2波長の光とを発光し、天板2の透過部から入射された、第1波長および第2波長の光を検出する。そして、光検出手段10による第1波長の光の検出値が第2波長の光の検出値より小さい場合、ふきこぼれが発生したと判定する。
このため、水を主体とする内容物30がふきこぼれ検知手段7の上方にふきこぼれた場合、ふきこぼれの発生を検知することができる。また、ふきこぼれ検知手段7の上方に、例えば鍋などの被加熱物11が載置された場合や、ふきこぼれ検知手段7の上方に載置物がない場合には、ふきこぼれの発生を検知しない。よって、ふきこぼれの誤検知を低減することができる。
また、天板2の透過部からの光を検出することで、ふきこぼれの発生を判定するので、ふきこぼれた内容物30の広がりが穏やかな場合であっても、ふきこぼれの発生を検知することができる。
また、静電容量の変化量を用いてふきこぼれを検知する方法では困難であった、ふきこぼれ時に広がり速度がゆっくりである場合でも、ふきこぼれの検知が可能となる。よって、更なる安全性・利便性が向上した加熱調理器を提供できる。
【0036】
また本実施の形態においては、ふきこぼれが発生したと判定した場合、加熱コイル12の出力を低下または停止させる。
このため、天板2上面に湯などの高温の内容物30が広がり、使用者にやけどなどの危害を加えることなく、また、本体1に水が浸入し故障させてしまうといった危険を回避することが可能となる。よって、使用者に安全性と利便性を提供することができる。
【0037】
また本実施の形態においては、第1波長の光の光量と第2波長の光の光量とを略同一とし、第1波長の光と第2波長の光とを交互に発光する。
このように、波長の異なる光を交互にパルス状に照射することで、光検出手段10での出力値は、第1波長の光の反射光と、第2波長の光の反射光とを区別して出力できるため、互いの反射光が干渉して出力されることがなく、天板2上のふきこぼれの発生を精度よく検知できる。
また、外乱光や内部構造物から発生する熱赤外線などのノイズと、反射光とを区別することが可能となり、天板2上のふきこぼれの発生を精度よく検知できる。
【0038】
また本実施の形態においては、発光手段8、9は、透過部に対する、第1波長および第2波長の光の入射角が、所定角度となるように配置されている。
このため、水を主体とする内容物30がふきこぼれ検知手段7の上方にふきこぼれた場合、第2波長の光が内容物30で透過・反射を行い、反射光を光検出手段10へ入射させることができる。また、被加熱物11が載置された場合には、第1および第2波長の光を共に反射(吸収)させることができる。よって、天板2上のふきこぼれの発生を精度よく検知できる。
【0039】
なお、光検出手段10として検知可能な波長帯が広いサーモパイルを用いる場合、光検出手段10により、天板2から放射される熱赤外線量を検出して天板2の温度を検出するようにしても良い。つまり、広い波長帯に対して感度を有するサーモパイルの出力から、天板2温度が測定可能となる。
ふきこぼれが生じて湯がこぼれた場合は天板温度も上昇することから、前述までの2つの波長帯の反射光出力に加えて、天板2の温度情報も判定の要素として判定を行うことで、ふきこぼれの誤検知を低減することができる。
【0040】
(ふきこぼれ検知手段7の配置)
上述したように、ふきこぼれ検知手段7の上方(天板2の透過部)に水を主体とする内容物30が載置されることで、ふきこぼれの発生を検知することができる。
加熱においては被加熱物11である鍋の大きさや水量、火力などは毎回異なるため、ふきこぼれる内容物30の量や天板2上での広がり方向などが予測できない場合がある。
このため、ふきこぼれ検知手段7を複数個具備し、その配置を適切に行う必要がある。
以下、ふきこぼれ検知手段7の配置例を説明する。
【0041】
[加熱コイル12の外側]
図1〜図3に示したように、ふきこぼれ検知手段7は、平面視において、加熱コイル12より外側に配置している。つまり、ふきこぼれ検知手段7を加熱コイル12の最外径よりも外側に配置している。
仮に、加熱コイル12の内側にふきこぼれ検知手段7を載置すると、加熱コイル12や天板2が高温となり、ふきこぼれ検知手段7の構成素子に悪影響を与える。また、高温度となると発光手段8、9の波長帯の赤外線も放射されるため、これが光検出手段10に入射すると誤検知を招く外乱となり得る。
そのため、ふきこぼれ検知手段7と加熱コイル12は極力離すことが望ましく、ふきこぼれ検知手段7の配置位置としては加熱コイル12の最外径よりも外側に配置するのが望ましい。
また、ふきこぼれ検知手段7の構成上、天板2下部に近接して設置した方が望ましいため、加熱コイル12の最外径位置よりも外側に設置する構成としている。
このように、ふきこぼれ検知手段7を加熱コイル12より外側に配置することで、天板2上のふきこぼれの発生を精度よく検知できる。
【0042】
[操作部3側]
図9は実施の形態1におけるふきこぼれ検知手段操作部側配置図である。
高温度の湯などの内容物30が操作部3側にふきこぼれた場合は、使用者にやけどなどの危険を与える可能性がある。このためふきこぼれを迅速に検知して加熱を停止または出力の低下を行うことが望ましい。
このため、図9に示すように、ふきこぼれ検知手段7は、操作部3と加熱コイル12との間に配置している。
これにより、操作部3側へ内容物30が流動した際、ふきこぼれを迅速に検知することができる。よって、使用者が火力停止させようとして操作部3を操作しようとしたところに湯が流れ込み、使用者へやけどの危険を与えることを回避し、安全性を確保することが可能となる。
【0043】
[加熱コイル12間]
図10は実施の形態1におけるふきこぼれ検知手段加熱コイル間の配置図である。
図10に示すように、ふきこぼれ検知手段7は、加熱コイル12と加熱コイル12との間に配置している。
これにより、1つのふきこぼれ検知手段7で2つの加熱コイル12(2口の加熱口)のふきこぼれを検知することが可能になる。よって、設置スペースの有効利用と、コスト削減の効果を得ることができる。
【0044】
[排気口5・吸気口6側]
図11は実施の形態1におけるふきこぼれ検知手段排気口側配置図である。
本体1の奥面に具備された排気口5および吸気口6より水が入ることで、本体1の内部に収納された部品へ水がかかってしまった場合は、機器に対して故障の危険性を与えてしまう。
このため、図11に示すように、ふきこぼれ検知手段7は、加熱コイル12と排気口5との間、または、加熱コイル12と吸気口6との間に配置している。
これにより、排気口5および吸気口6側へ内容物30が流動した際、ふきこぼれを迅速に検知することができる。よって、ふきこぼれが生じた際に排気口5および吸気口6のいずれかに水が浸入し、機器内部へ水が誘導され故障やショートさせてしまう不具合を生じる可能性を回避することが可能となる。
【0045】
実施の形態2.
図12は実施の形態2におけるふきこぼれ検知手段構成図である。
図12において、天板2の下面のうち、ふきこぼれ検知手段7の上方以外には天板下面塗装21aが施され、ふきこぼれ検知手段7の上方には塗装が施されていない。本実施の形態においては、天板下面塗装21aが施されていない部分と天板2とにより、透過部を構成している。
なお、その他の構成、ふきこぼれ発生の判定動作は上記実施の形態1と同様である。
【0046】
このような構成によっても、上記実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
また、天板2の透過部に塗料を施さないことで発光手段8、9の光がより透過し易くすることができる。
また、第2波長の光として、例えば0.700μmの波長帯のような可視光波長帯の光を用いる場合、使用者が当該光を視認することが可能となり、センサの位置を判別することや、動作状態を確認することが可能となる。
【0047】
実施の形態3.
図13は実施の形態3におけるふきこぼれ検知手段構成図である。
図13に示すように、本実施の形態においては、天板2とふきこぼれ検知手段7との間に導光筒18を設けている。
この導光筒18は、筒状に形成され、ふきこぼれ検知手段7から透過部に向けて発光された光の経路、および、透過部からふきこぼれ検知手段に入射する光の経路を囲むように配置されている。
なお、その他の構成、ふきこぼれ発生の判定動作は上記実施の形態1と同様である。
【0048】
このような導光筒18を設けることで、天板2の透過部に可視光を透過する天板下面塗装21bを施す場合、または、透過部に塗装を施さない場合でも、天板2の透過部から本体1の内部構造物を見えなくすることができ、デザイン性を向上できる。
また、導光筒18を設けることで、加熱された天板2や加熱コイル12などの内部構造物から放射される熱赤外線、または、天板2の透過部以外からの太陽光や照明光などの外乱光を遮断することができる。
【0049】
さらに、導光筒18を樹脂製とすることで、本体内部の構成部品である加熱コイル12や被加熱物11が加熱され、天板2が熱伝導で加熱されて発生する赤外放射を、熱容量が大きく、また、熱伝導率の低い樹脂性筒で受けることにより直接、光検出手段10が影響を受けることなく、ノイズ耐性が強くなる。
【0050】
実施の形態4.
図14は実施の形態4におけるふきこぼれ検知手段構成図である。
図14において、本実施の形態における導光筒18は、外周面18aが金属製である。
なお、その他の構成は上記実施の形態3と同様である。
【0051】
このように、上述した導光筒18の外郭表面を金属とすることで内部構造物から放射される光を反射することができる。また、筒内部の光検出手段10に外乱光が入射することがなくなる。
また、熱伝導率の高く、かつ熱容量の小さい金属製の筒を表面に用いることで吸収した熱を拡散し、集中的に高い温度となることがなくなり、光検出手段10が感度を有する短波長の光が筒内面より放射される可能性は小さくなる。
【0052】
実施の形態5.
本実施の形態5では、ふきこぼれ検知手段7の発光手段9から可視光を発光して、当該光による報知を行う形態を説明する。
【0053】
本実施の形態における発光手段9は、第2波長の光として、水に対する光の透過率が高く光が水に吸収され難い波長帯であり、かつ、可視光領域(0.38〜0.78μm)の光を発光する。例えば、発光手段9は、0.700μmにピーク波長を有する光を発光する。
そして、制御部16は、ふきこぼれの判定結果、および、加熱コイル12の動作状態の少なくとも一方に応じて、発光手段9の第2波長の光の発光状態を変化させる。
例えば、発光手段9を発光することで、使用者にふきこぼれ検知手段7の設置箇所を知らせたり、ふきこぼれが生じた箇所を報知したり、加熱動作中の報知としても使用することが可能となる。
なお、その他の構成、ふきこぼれ発生の判定動作は上記実施の形態1と同様である。
【0054】
このように、第2波長の光として可視光領域の光を用いることで、使用者は発光手段9の光を視認することができる。
このため、例えばふきこぼれ検知を行う箇所を加熱場所に応じて変更する場合は、ふきこぼれ検知を実施している箇所の発光手段のみ点滅を行ったり、ふきこぼれが生じて火力を低下させた場合、どのふきこぼれ検知手段7が検知をしたかを、点滅スピードを変えることで使用者に当該ふきこぼれの発生した箇所を報知することに利用できる。
また、加熱動作中の加熱コイル12近傍のふきこぼれ検知手段7のみ点滅することより、加熱を実施している箇所か、使用者に知らせることにもなり、別途使用中であることを報知する手段を設ける必要がなくなる。
【0055】
実施の形態6.
以下の実施の形態6〜10においては、ふきこぼれ検知手段7を局所的に配置する場合に、ふきこぼれの検知が可能となる領域を拡張し、ふきこぼれ検知精度を向上する形態について説明する。
【0056】
(全体構成)
本実施の形態においては加熱調理器として、誘導加熱を行うIHクッキングヒータを一例に説明を行う。
図15は実施の形態6における加熱調理器を示す上面図である。
図16は実施の形態6における加熱調理器を示す横断面概念図である。
図17は実施の形態6におけるふきこぼれ検知手段の構成図である。
図15〜図17に示すように、誘導加熱調理器は、本体1と、本体1の上に設けられ、鍋などの被加熱物11が載置される天板2と、天板2の下方に設けられ、天板2に載置された被加熱物11を加熱する加熱コイル12と、インバータ回路により構成され加熱コイル12に高周波電流を供給し、加熱コイル12を駆動する駆動部17と、駆動部17の動作を制御して被加熱物11への投入電力(出力)を制御する制御部16と、被加熱物11から放射される赤外線を検出し、赤外線量から鍋の温度を検出する赤外線温度検知手段13と、天板2の下面と接触し、該天板2の温度を検出する接触式温度検知手段14と、使用者からの操作を入力する操作部3と、動作状態や操作部3からの入力・操作内容等を表示する表示部4と、を備えている。
また、天板2の下方には、天板2の透過部(後述)に向けて光を発光し、該透過部から入射された反射光を検出するふきこぼれ検知手段7と、このふきこぼれ検知手段7の検知結果に基づき、被加熱物11からの内容物のふきこぼれの発生を判定する検知部15と、を備えている。なお、ふきこぼれ検知手段7の詳細および配置位置については後述する。
また、本体1の上面後方には、本体1内部と連通し、本体1内部に冷却風を取り込むための吸気口6と、本体1内部に取り込んだ冷却風を排出するための排気口5とが設けられている。
【0057】
なお、「操作部3」は、本発明における「操作手段」に相当する。
なお、「加熱コイル12」は、本発明における「加熱手段」に相当する。
なお、「検知部15」および「制御部16」は、本発明における「制御手段」に相当する。
なお、本体1の手前側に配置した2つの加熱コイル12は、内コイルと外コイルとを同心円状に配置した比較的加熱出力が大きい加熱口を構成している。また、本体1の中央後方側に配置した加熱コイル12は、比較的加熱出力が小さい加熱口を構成している。
なお、本発明はこれに限るものではなく、任意の数の加熱コイル12を配置することができる。
なお、本実施の形態では、加熱コイル12に高周波電流を供給して誘導加熱を行う誘導加熱調理器について説明するが、本発明はこれに限るものではない。例えば、輻射によって加熱する輻射型熱源を用いる電気ヒータ(例えばニクロム線やハロゲンヒータ、ラジエントヒータ)を加熱手段として用いるようにしても良い。
【0058】
(天板2の構成)
天板2は、例えばネオセラムのような耐熱性のガラス等の素材により構成され、所定の波長帯の光を透過する。
天板2の下面には、塗料の塗布または印刷等により天板下面塗装21a、21bが施されている。
天板下面塗装21aは、本体1内の構成部品の目隠しやデザイン性の向上のため、可視光を透過しない塗料を塗布し、内部構造物が見えないようにするためのものである。
天板下面塗装21bは、ふきこぼれ検知手段7の上方の位置に形成され、所定の波長帯における光の透過率が高い塗料等を用いている。この天板下面塗装21bと天板2とにより、所定波長の光を透過させる透過部を構成している。なお、波長については後述する。
【0059】
また、天板2の上面には、被加熱物11の横ずれの防止や、天板2の保護を目的として、塗料の塗布または印刷等により天板上面塗装20が施されている。なお、図16、図17の例では天板上面塗装20をストライプ状に塗布した場合を示している。なお、これに限らず、ドット状や均一塗布(べた塗り)としても良い。
さらに、天板上面塗装20のうち、ふきこぼれ検知手段7の上方(透過部と対向する部分)を少なくとも含む領域(検知領域)にスリット部19を形成している。
このスリット部19は、天板上面塗装20の粗密状態を、周辺の塗装に対して相違させて形成している。
例えば、天板上面塗装20を省略することでスリット部19を形成する。
また例えば、天板上面塗装20の厚みを周辺より薄くすることでスリット部19を形成する。
また例えば、天板上面塗装20の塗装の密度を周辺より粗く(開口率を大きく)することでスリット部19を形成する。
【0060】
なお、「スリット部19」が形成された領域は、本発明における「検知領域」に相当する。
なお、透過部の上面に天板上面塗装20を施す場合には、後述する所定の波長帯における光の透過率が高い塗料等を用いる。
【0061】
このスリット部19は、被加熱物11の内容物が天板2上にふきこぼれた際に、内容物がふきこぼれ検知手段7の上方に流動し易くする水路としての役割と、ふきこぼれ検知手段7の上方に留める溜まり部としての役割がある。
これにより、ふきこぼれた内容物が、ふきこぼれ検知手段7の上方に到達するまでの速度を速くすることができる。また、ふきこぼれた内容物が、ふきこぼれ検知手段7の上方に溜まることなく通過してしまうことを防止でき、確実にふきこぼれを検知することができる。
また、スリット部19を、透過部(ふきこぼれ検知手段7の上方)よりも幅広に形成することで、スリット部19上に流動した内容物を、ふきこぼれ検知手段7の上方に誘導することが可能となり、ふきこぼれの検知が可能となる領域を拡張することができる。
【0062】
(ふきこぼれ検知手段7の構成)
本実施の形態においては、水に対する透過率が異なる複数の光を用いてふきこぼれの発生を判定する場合を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
ふきこぼれ検知手段7は、それぞれ異なる波長帯にピーク波長を有する光を発光する発光手段8、9と、入射した光の光量を検出する光検出手段10とを有している。
発光手段8、9は、例えば発光ダイオード(LED)またはレーザーダイオード(LD)などの発光波長が狭帯域の発光素子により構成され、それぞれ水に対する透過率が異なる波長帯にピーク波長を有している。また、発光手段8、9は、天板2の透過部に対する光の入射角が、所定角度となるように配置されている。以下、発光手段8が発光する光のピーク波長を「第1波長」と称し、発光手段9が発光する光のピーク波長を「第2波長」と称する。
【0063】
光検出手段10は、天板2の透過部から入射された光を検出する位置に配置されており、入射された光のエネルギー(光量)に応じた出力値(例えば電圧)を出力する。光検出手段10は、例えばフォトダイオードにより構成され、発光手段8、9のピーク波長に感度を有している。また例えば、光検出手段10は、発光手段8、9の波長帯に関係なく全波長帯に対して感度を有するサーモパイルを用いても良い。
【0064】
また、発光手段8、9、および光検出手段10は、同一のケースに取り付けし、発光手段8、9の上方(天板2の透過部)に被加熱物11が載置された際に、透過部を透過した光が反射し、該反射光が光検出手段10に入射するよう設置角度を所定の角度にて管理している。
【0065】
また、天板2とふきこぼれ検知手段7との間に導光筒18を設けている。
この導光筒18は、筒状に形成され、ふきこぼれ検知手段7から透過部に向けて発光された光の経路、および、透過部からふきこぼれ検知手段に入射する光の経路を囲むように配置されている。
このような導光筒18を設けることで、天板2の透過部から本体1の内部構造物を見えなくすることができ、デザイン性を向上できる。また、導光筒18を設けることで、加熱された天板2や加熱コイル12などの内部構造物から放射される熱赤外線、または、天板2の透過部以外からの太陽光や照明光などの外乱光を遮断することができる。
さらに、導光筒18を樹脂製とすることで、本体内部の構成部品である加熱コイル12や被加熱物11が加熱され、天板2が熱伝導で加熱されて発生する赤外放射を、熱容量が大きく、また、熱伝導率の低い樹脂性筒で受けることにより直接、光検出手段10が影響を受けることなく、ノイズ耐性が強くなる。
【0066】
なお、本実施の形態においては、それぞれピーク波長が異なる2つの発光手段8、9を備える場合を説明するが、本発明はこれに限るものではない。例えば、複数の波長帯にピーク波長成分を有する多波長LEDを用いても良い。また、後述する波長帯ごとに2つ以上の発光手段を設けるようにしても良い。
なお、ふきこぼれ検知手段7は、後述するように水に対する透過率が異なる光の検知結果によりふきこぼれを検出するため、発光手段8、9が発光する光は、LEDやLDのように、発光波長を絞って発光することが可能な素子を使用することが望ましい。
【0067】
(波長の説明)
次に、発光手段8、9が発光する光の波長について説明する。
発光手段8、9が発光する光は、それぞれ、天板2および天板下面塗装21b(透過部)を透過する波長帯にピーク波長を有する。
また、発光手段9が発光する第2波長の光は、発光手段8が発光する第1波長の光より水に対する透過率が高い波長帯の光である。
このような水の透過率および天板2の透過率の一例については、上述した図4、図5と同様である。
【0068】
(天板2の塗装)
前述の通り、発光手段8、9の発光波長帯は、天板2の透過率、水の吸収スペクトルより限定されているが、天板2上面および下面の印刷の透過特性も発光波長を透過する特性を有する必要がある。
このため、天板2の天板下面塗装21bは、第1波長および第2波長の光を略透過する塗料等を用いる。例えば、天板2の天板下面塗装21bは、天板2の透過特性を考慮し、0.5〜4.5μmの間で透過率が高い塗料等を用いる。
但し、一概に天板2の透過波長のすべてにおいて高くある必要はなく、前記波長帯の間で特に使用する2つの発光手段のピーク波長帯において透過率が高ければよい。
例えば、第1波長に1.470μm、第2波長に0.700μmにピーク波長を有する発光手段を用いた場合は、当該波長帯に透過率の高い特性を有する塗料を用いればよい。
【0069】
なお、例えば0.700μmなどの可視光帯の波長を用いた場合に、天板2下面の塗料に前記波長帯を透過する塗料を用いると、本体1の内部の構造物が使用者に見えてしまうことになる。
そこで、発光手段8、9が発光する光は、可視光を外した波長帯を用いて、天板2の天板下面塗装21bとしては、可視光帯の波長をカットする塗料を塗布し、内部構造物が見えなくなるようにしても良い。
例えば上記図6で説明したように、可視光領域を透過しない可視光領域カットオフ塗料の特性の場合は、可視光領域を外した波長帯にピークを有する波長を発光する発光手段を用いる。
【0070】
また、天板上面塗装20の塗装の厚み、または密度を周辺と相違させることで、スリット部19を形成する場合には、少なくとも、ふきこぼれ検知手段7の上方(透過部)の対向面の塗装に、上記天板下面塗装21bと同様に、発光手段8、9の発光波長を透過する塗装を用いる。
【0071】
(加熱動作)
次に、本実施の形態における加熱調理器の動作について説明する。
まず、使用者は被加熱物11を加熱するため、天板2上に被加熱物11を載置し、操作部3により所望の火力で調理を行うよう火力を設定し、加熱開始のスイッチ等を押下する。
制御部16は、操作部3から加熱開始の指令が入力されると、駆動部17のインバータの出力を決定し高周波電流を加熱コイル12へ流す。そして、加熱コイル12に高周波電流が流れることで、天板2上に載置された被加熱物11に誘導電流が流れ、被加熱物11自身が抵抗発熱より発熱する。発熱により、被加熱物11内部に装填された食品や水、油等の内容物が熱伝導により加熱される。
【0072】
被加熱物11が加熱されると、被加熱物11の熱が天板2へと熱伝導する。接触式温度検知手段14は、天板2に伝導した熱を天板温度として検出し、制御部16に入力する。
また、加熱コイル12下方に設置されている赤外線温度検知手段13は、被加熱物11の底から放射され、天板2を透過した赤外線を捉え、その赤外線量に応じた出力を制御部16に入力する。
制御部16は、接触式温度検知手段14および赤外線温度検知手段13が検出した温度に応じて、駆動部17を制御して指定火力となるように電力制御を行う。
【0073】
このような加熱調理において、例えば素麺やパスタなどの麺類を茹でる際に、調理温度が高く、火力が強い場合には鍋から湯などの内容物がふきこぼれてしまうことがある。
このようなふきこぼれ方は、鍋の形状、傾き、火力などの違いから毎回同様ではなく、ふきこぼれ検知手段7の上方に水が流れて来るまでに時間がかかる可能性がある。
そこで、本実施の形態においては、天板2上面の天板上面塗装20の粗密状態を、周辺の塗装に対して相違させてスリット部19を形成し、ふきこぼれた内容物をふきこぼれ検知手段7の上方に導いている。
図15の例では、加熱コイル12の最外径よりも外側であり、かつ、ふきこぼれ検知手段7直上から前後、もしくは、左右方向に、スリット部19を形成している。
スリット部19にふきこぼれた内容物が載置されると、このスリット部19が流路となり、スリット部19には水が溜まっていき、ふきこぼれ検知手段7の上方へと誘導される。
また、加熱コイル12の最外径より内側は、鍋が載置される可能性が高い箇所であり、加熱コイル12の内側上面には、ふきこぼれた水や食材が溜まると、鍋底表面にて加熱され焦げ付きやスケールがこびりつき検知精度低下の原因となってしまうため、加熱コイル12の最外径よりも外側にふきこぼれ検知手段とスリット部19を形成することとしている。
【0074】
加熱調理中において検知部15は、上記スリット部19により内容物が上方に誘導されたふきこぼれ検知手段7の検知結果に基づき、ふきこぼれ検知手段7の上方の天板2に、水を主体とする被加熱物11の内容物の載置を検知してふきこぼれの発生を判定する。
制御部16は、検知部15が、ふきこぼれが発生したと判定した場合、駆動部17の動作を停止させるか、または駆動部17を制御して加熱コイル12に流す電流を減らして出力を低下させる。
【0075】
(ふきこぼれ検知動作)
ふきこぼれ検知手段7によるふきこぼれ検知の動作の詳細については、上記実施の形態1(図7)と同様である。
【0076】
以上のように本実施の形態においては、天板2の上面に設けられた天板上面塗装20のうち、透過部と対向する部分を少なくとも含むスリット部19(検知領域)の粗密状態を、周辺の塗装に対して相違させた。
このため、天板2上にふきこぼれた内容物30が、ふきこぼれ検知手段7の上方に到達するまでの速度を速くすることができる。また、ふきこぼれた内容物30が、ふきこぼれ検知手段7の上方に溜まることなく通過してしまうことを防止でき、確実にふきこぼれを検知することができる。よって、ふきこぼれの検知精度を向上することができる。
【0077】
また本実施の形態においては、スリット部19(検知領域)は、透過部より幅広に形成されている。
このため、スリット部19上に流動した内容物を、ふきこぼれ検知手段7の上方に誘導することが可能となり、ふきこぼれの検知が可能となる領域を拡張することができる。よって、ふきこぼれの検知精度を向上することができる。
【0078】
また本実施の形態においては、天板2の透過部を透過する第1波長の光と、透過部を透過し、かつ、第1波長の光より水に対する透過率が高い第2波長の光とを発光し、天板2の透過部から入射された、第1波長および第2波長の光を検出する。そして、光検出手段10による第1波長の光の検出値が第2波長の光の検出値より小さい場合、ふきこぼれが発生したと判定する。
このため、水を主体とする内容物30がふきこぼれ検知手段7の上方にふきこぼれた場合、ふきこぼれの発生を検知することができる。また、ふきこぼれ検知手段7の上方に、例えば鍋などの被加熱物11が載置された場合や、ふきこぼれ検知手段7の上方に載置物がない場合には、ふきこぼれの発生を検知しない。よって、ふきこぼれの誤検知を低減することができる。
また、天板2の透過部からの光を検出することで、ふきこぼれの発生を判定するので、ふきこぼれた内容物30の広がりが穏やかな場合であっても、ふきこぼれの発生を検知することができる。
また、静電容量の変化量を用いてふきこぼれを検知する方法では困難であった、ふきこぼれ時に広がり速度がゆっくりである場合でも、ふきこぼれの検知が可能となる。よって、更なる安全性・利便性が向上した加熱調理器を提供できる。
【0079】
また本実施の形態においては、ふきこぼれが発生したと判定した場合、加熱コイル12の出力を低下または停止させる。
このため、天板2上面に湯などの高温の内容物30が広がり、使用者にやけどなどの危害を加えることなく、また、本体1に水が浸入し故障させてしまうといった危険を回避することが可能となる。よって、使用者に安全性と利便性を提供することができる。
【0080】
また本実施の形態においては、第1波長の光の光量と第2波長の光の光量とを略同一とし、第1波長の光と第2波長の光とを交互に発光する。
このように、波長の異なる光を交互にパルス状に照射することで、光検出手段10での出力値は、第1波長の光の反射光と、第2波長の光の反射光とを区別して出力できるため、互いの反射光が干渉して出力されることがなく、天板2上のふきこぼれの発生を精度よく検知できる。
また、外乱光や内部構造物から発生する熱赤外線などのノイズと、反射光とを区別することが可能となり、天板2上のふきこぼれの発生を精度よく検知できる。
【0081】
また本実施の形態においては、発光手段8、9は、透過部に対する、第1波長および第2波長の光の入射角が、所定角度となるように配置されている。
このため、水を主体とする内容物30がふきこぼれ検知手段7の上方にふきこぼれた場合、第2波長の光が内容物30で透過・反射を行い、反射光を光検出手段10へ入射させることができる。また、被加熱物11が載置された場合には、第1および第2波長の光を共に反射(吸収)させることができる。よって、天板2上のふきこぼれの発生を精度よく検知できる。
【0082】
なお、光検出手段10として検知可能な波長帯が広いサーモパイルを用いる場合、光検出手段10により、天板2から放射される熱赤外線量を検出して天板2の温度を検出するようにしても良い。つまり、広い波長帯に対して感度を有するサーモパイルの出力から、天板2温度が測定可能となる。
ふきこぼれが生じて湯がこぼれた場合は天板温度も上昇することから、前述までの2つの波長帯の反射光出力に加えて、天板2の温度情報も判定の要素として判定を行うことで、ふきこぼれ以外の場合の誤検知可能性が低減することができる。
【0083】
なお、本実施の形態においては、水に対する透過率が異なる複数の光を用いてふきこぼれの発生を判定する場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
ふきこぼれ検知手段7としては、透過部に向けて光を発光し、この透過部から入射された光を検出するものであればよく、ピーク波長が1つの波長帯の光を用いても良い。
このような構成においても、ふきこぼれた内容物の検知範囲を拡張することができ、ふきこぼれの検知精度を向上する効果を得ることができる。
【0084】
実施の形態7.
図18は実施の形態7における加熱調理器を示す上面図である。
図18に示すように、加熱コイル12は、平面視において略円形形状に形成されている。そして、本実施の形態におけるスリット部19は、円形形状の加熱コイル12の外周の一部に沿うように、円弧状に形成されている。
例えば、各加熱コイル12の最外形外側の手前側に形成している。
なお、本実施の形態においても、スリット部19は、ふきこぼれ検知手段7の上方(透過部)が含むように形成されている。
なお、その他の構成、ふきこぼれ発生の判定動作は上記実施の形態6と同様である。
【0085】
以上のように本実施の形態においては、スリット部19は、加熱コイル12の外周の一部に沿うように、円弧状に形成しているので、上記実施の形態6の効果に加え、ふきこぼれが発生した場合、加熱コイル12からの距離が同距離となる為、ふきこぼれの方向によらず、素早くふきこぼれを検知することができる。
【0086】
また、ふきこぼれ検知手段7は、平面視において、加熱コイル12より外側に配置している。つまり、ふきこぼれ検知手段7を加熱コイル12の最外径よりも外側に配置している。
このため、ふきこぼれ検知手段7をから離すこととなり、加熱コイル12や天板2が高温となった場合に、ふきこぼれ検知手段7の構成素子に悪影響を与えることを防止できる。また、高温度となる加熱コイル12や天板2から放射された赤外線が、光検出手段10に入射することを低減することができ、ふきこぼれの発生精度を向上することができる。
【0087】
実施の形態8.
図19は実施の形態8における加熱調理器を示す上面図である。
図19に示すように、加熱コイル12は、平面視において略円形形状に形成されている。そして、本実施の形態におけるスリット部19は、円形形状の加熱コイル12の外側に同心円状に形成されている。
なお、本実施の形態においても、スリット部19は、ふきこぼれ検知手段7の上方(透過部)が含むように形成されている。
なお、その他の構成、ふきこぼれ発生の判定動作は上記実施の形態6と同様である。
【0088】
以上のように本実施の形態においては、スリット部19は、加熱コイル12の外側に同心円状に形成しているので、上記実施の形態6の効果に加え、被加熱物11からふきこぼれた内容物30が、どの方向に流動しても、内容物30をふきこぼれ検知手段7の上方へ導くことが可能となる。
【0089】
なお、上記図18、図19に示すように、スリット部19を、操作部3と加熱コイル12との間に形成することで、被加熱物11から操作部3へ向かう方向にふきこぼれた場合、迅速にふきこぼれの発生を検知をすることができる。
また、操作部3に向かう方向に流動する内容物30は、スリット部19に沿って流れ、操作部3へ向かいにくくなり、またスリット部19内にふきこぼれた内容物30が溜まることで、操作部3へ内容物が到達しにくくすることができる。
これにより、ふきこぼれが生じ、使用者が火力停止させようとして操作部3を操作しようとしたところに湯が流れ込み、使用者へやけどの危険を与えることを回避し安全性を確保することが可能となる。
なお、スリット部19の形状はこれに限るものではない、例えば図20に示すように、操作部3と加熱コイル12との間に形成するスリット部19を、略長方形となるようにしても良い。このような構成であっても、被加熱物11から操作部3へ向かう方向にふきこぼれた場合、迅速に、かつ、確実にふきこぼれの発生を検知をすることができる。
【0090】
実施の形態9.
図21は実施の形態9における加熱調理器を示す上面図である。
図21に示すように、本実施の形態におけるスリット部19は、加熱コイル12と加熱コイル12との間に形成されている。
さらに、本体1の中央後方に配置した加熱コイル12と吸気口6と間に、スリット部19を形成している。例えば、中央後方に配置した加熱コイル12の外周に沿うように円弧状に形成している。
なお、本体1の手前側に配置した加熱コイル12の手前側には、上記実施の形態7と同様に円弧上のスリット部19を形成している。
なお、その他の構成、ふきこぼれ発生の判定動作は上記実施の形態6と同様である。
【0091】
なお、図21の例では、中央後方に配置した加熱コイル12と吸気口6と間に、スリット部19を形成しているが、本発明はこれに限るものではない。
例えば、図22に示すように、図21の構成に加えまたはこれに代えて、加熱コイル12と排気口5との間にスリット部19を形成しても良い。
また、図21では、スリット部19が円弧状の場合を説明したが、これに限るものではない。例えば図22に示すように、加熱コイル12と吸気口6と間、または、加熱コイル12と排気口5と間に形成するスリット部19を、略長方形となるように形成しても良い。このような構成においても同様の効果を奏することができる。
【0092】
以上のように本実施の形態においては、スリット部19を加熱コイル12と加熱コイル12との間に形成した。
このため、上記実施の形態6の効果に加え、2つの加熱コイル12(2口の加熱口)のふきこぼれを誘導するスリット部19を1つのスリット部19で兼用して使用することができる。よって、設置スペースの有効利用と、コスト削減の効果を得ることができる。
また、加熱コイル12と加熱コイル12との間に形成した1つのスリット部19に対応して、1つのふきこぼれ検知手段7を設ければ良く、1つのふきこぼれ検知手段7で2つの加熱コイル12(2口の加熱口)のふきこぼれを検知することが可能になる。よって、設置スペースの有効利用と、コスト削減の効果を得ることができる。
【0093】
また本実施の形態においては、スリット部19は、加熱コイル12と吸気口6との間、または、加熱コイル12と排気口5との間に形成したので、被加熱物11から吸気口6や排気口5へ向かう方向にふきこぼれた場合、迅速にふきこぼれの発生を検知をすることができる。
また、吸気口6や排気口5に向かう方向に流動する内容物30は、スリット部19に沿って流れ、吸気口6や排気口5へ向かいにくくなり、またスリット部19内にふきこぼれた内容物30が溜まることで、吸気口6や排気口5へ内容物が到達しにくくすることができる。
これにより、ふきこぼれが生じた際に排気口5および吸気口6のいずれかに水が浸入し、機器内部へ水が誘導され故障やショートさせてしまう不具合を生じる可能性を回避することが可能となる。
【0094】
実施の形態10.
本実施の形態では、スリット部19の長手方向に伸びるストライプ状の溝を形成した形態について説明する。
【0095】
図23は実施の形態10におけるスリット部の形状を示す図である。
図23に示すように、スリット部19は、上記実施の形態8(図19)のように、加熱コイル12と同心円状の円周により形成している。
さらに、本実施の形態におけるスリット部19は、天板上面塗装20の塗布により厚みを異ならせることで形成し、長手方向(円周方向)に伸びるストライプ状の溝部19aを形成している。
例えば、スリット部19を塗装を施さないことで形成した場合には、ストライプ状に塗装を塗布することで溝部19aを形成する。また例えば、スリット部19を塗装の厚みや塗装密度を相違させて形成した場合には、ストライプ状に塗装を施さないことで溝部19aを形成する。
なお、溝部19aの構成はこれに限らず、例えば複数の溝をストライプ状に設けても良いし、各ストライプ状の溝の深さ(厚さ)を変化させるようにしても良い。
なお、その他の構成、ふきこぼれ発生の判定動作は上記実施の形態6と同様である。
【0096】
以上のように本実施の形態においては、天板上面塗装20により、当該スリット部19の長手方向に伸びるストライプ状の溝を形成した。
このため、上記実施の形態6の効果に加え、スリット部19の長手方向への水の流れを向上することができる。よって、ふきこぼれの検知を迅速に行うことができる。
【0097】
なお、上記実施の形態6〜10においては、ふきこぼれ検知手段7として、透過部に向けて光を発光し、該透過部から入射された光を検出する構成について説明したが、本発明はこれに限るものではない。
例えば、加熱コイル12の周辺に1つ又は複数の電極を設置して、この電極と所定電位間の静電容量を測定するようにしても良い。この場合、ふきこぼれ検知手段7は、電極と所定電位(例えばアース電位)との間に交流電圧を印加する。印加した交流電圧は静電容量(寄生容量)が大きいと振幅が小さくなり、その振幅の減衰量から静電容量を計測する。ふきこぼれが無い状態では、電極と所定電位との間には主に比誘電率1の空気が存在するが、ふきこぼれが発生すると比誘電率80の水を主体とする内容物が入ってくる為、静電容量は変化する。そこで、静電容量の変化の有無を調べることで、ふきこぼれの検出が可能になる。
また、スリット部19の一部に上記電極を配置することで、スリット部19上に流動した内容物を、電極の上方に誘導することが可能となり、ふきこぼれの検知が可能となる領域を拡張することができる。
【符号の説明】
【0098】
1 本体、2 天板、3 操作部、4 表示部、5 排気口、6 吸気口、7 ふきこぼれ検知手段、8 発光手段、9 発光手段、10 光検出手段、11 被加熱物、12 加熱コイル、13 赤外線温度検知手段、14 接触式温度検知手段、15 検知部、16 制御部、17 駆動部、18 導光筒、18a 外周面、19 スリット部、19a 溝部、20 天板上面塗装、21a 天板下面塗装、21b 天板下面塗装、30 内容物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも所定波長の光を透過させる透過部を形成した天板と、
前記天板の下方に設けられ、前記天板に載置された被加熱物を加熱する加熱手段と、
前記透過部の下方に設けられ、前記透過部に向けて光を発光し、該透過部から入射された光を検出するふきこぼれ検知手段と、
前記ふきこぼれ検知手段の検知結果に基づき、前記加熱手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記ふきこぼれ検知手段は、
前記透過部を透過する第1波長の光と、前記透過部を透過し、かつ、前記第1波長の光より水に対する透過率が高い第2波長の光と、を発光する発光手段と、
前記透過部から入射された、前記第1波長および前記第2波長の光を検出する光検出手段と、
を有し、
前記制御手段は、
前記光検出手段による前記第1波長の光の検出値が前記第2波長の光の検出値より小さい場合、ふきこぼれが発生したと判定する
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記ふきこぼれが発生したと判定した場合、前記加熱手段の出力を低下または停止させる
ことを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記発光手段は、
前記透過部に対する、前記第1波長および前記第2波長の光の入射角が、所定角度となるように配置された
ことを特徴とする請求項1または2記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記発光手段は、
前記第1波長の光として、1.3μm以上1.5μm未満、1.8μm以上2.0μm未満、または、2.55μm以上2.85μm未満の範囲にピーク波長を有する光を発光する
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記発光手段は、
前記第2波長の光として、0.5μm以上1.3μm未満、1.5μm以上1.8μm未満、または、2.0μm以上2.5μm未満の範囲にピーク波長を有する光を発光する
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記発光手段は、
前記第1波長の光の光量と前記第2波長の光の光量とを略同一とし、
前記第1波長の光と前記第2波長の光とを交互に発光する
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記ふきこぼれ検知手段は、
平面視において、前記加熱手段より外側に配置された
ことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記天板と同一平面上に設けられ、前記加熱手段の火力制御のための操作を入力する操作手段を備え、
前記ふきこぼれ検知手段は、
前記操作手段と前記加熱手段との間に配置された
ことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項9】
前記加熱手段を複数備え、
前記ふきこぼれ検知手段は、
前記加熱手段と前記加熱手段との間に配置された
ことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項10】
前記天板と同一平面上に設けられ、当該加熱調理器内に冷却風を取り込む吸気口と、
前記天板と同一平面上に設けられ、前記冷却風を当該加熱調理器内外へ排出する排気口と、
を備え、
前記ふきこぼれ検知手段は、
前記加熱手段と前記吸気口との間、または、前記加熱手段と前記吸気口との間に配置された
ことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項11】
前記天板には塗装が施されており、
前記塗装のうち、前記透過部と対向する部分の塗装は、前記第1波長および前記第2波長の光を略透過する
ことを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項12】
前記塗装のうち、前記透過部と対向する部分の塗装は、0.5μm以上4.5μm未満の光を略透過する
ことを特徴とする請求項11記載の加熱調理器。
【請求項13】
前記天板のうち、前記透過部と対向する部分以外には塗装が施され、
前記透過部と対向する部分には塗装が施されていない
ことを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項14】
前記天板と前記ふきこぼれ検知手段との間に設けられ、
前記ふきこぼれ検知手段から前記透過部に向けて発光された光の経路、および、前記透過部から前記ふきこぼれ検知手段に入射する光の経路を囲む導光筒を備えた
ことを特徴とする請求項1〜13の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項15】
前記導光筒は、樹脂製である
ことを特徴とする請求項14記載の加熱調理器。
【請求項16】
前記導光筒は、外周面が金属製である
ことを特徴とする請求項14または15記載の加熱調理器。
【請求項17】
前記発光手段は、
前記第2波長の光として、可視光領域の光を発光し、
前記制御手段は、
ふきこぼれの判定結果、および、前記加熱手段の動作状態の少なくとも一方に応じて、前記発光手段の前記第2波長の光の発光状態を変化させる
ことを特徴とする請求項1〜4、6〜16の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項18】
前記発光手段は、
発光ダイオードまたはレーザーダイオードにより構成された
ことを特徴とする請求項1〜17の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項19】
前記光検出手段は、
フォトダイオードまたはサーモパイルにより構成された
ことを特徴とする請求項1〜18の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項20】
前記天板の上面に設けられた塗装のうち、前記透過部と対向する部分を少なくとも含む検知領域の粗密状態を、周辺の塗装に対して相違させた
ことを特徴とする請求項1〜19の何れか1項に記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−255625(P2012−255625A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129956(P2011−129956)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】